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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077278
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189270
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】福岡 博之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄三
(72)【発明者】
【氏名】今井 祐輝
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AH02B
4F100AH03B
4F100AK36B
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100AK53B
4F100AL05B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA02B
4F100CC00B
4F100DE01B
4F100EJ91C
4F100GB41
4F100HB31C
4F100JB09B
4F100JK06
4F100JK07B
4F100JL11
4F100JN30
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】携帯デジタル機器のカバーウィンドウに好適な、印刷によって形成されるベゼルの外観や密着性に優れた、インク印刷性を有する積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【解決手段】ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂組成物により形成された樹脂層とを有する積層フィルムであって、前記樹脂組成物は、バインダー樹脂及び架橋剤を含み、前記樹脂層は、動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独のtanδピーク温度が10℃以上であり、前記樹脂層は、動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独の貯蔵弾性率E´が200℃において1.5×10Pa以下である、積層ポリエステルフィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂組成物により形成された樹脂層とを有する積層ポリエステルフィルムであって、
前記樹脂組成物は、バインダー樹脂及び架橋剤を含み、
前記樹脂層は、動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独のtanδピーク温度が10℃以上であり、
前記樹脂層は、動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独の貯蔵弾性率E´が200℃において1.5×10Pa以下である、積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記架橋剤が、オキサゾリン化合物、メラミン化合物及びエポキシ化合物からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記架橋剤の含有量が、前記樹脂組成物中の全不揮発成分全体に占める割合として、50質量%以下である、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記樹脂組成物が、無機粒子を含む、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記樹脂層が、水系塗料組成物で形成される、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記樹脂層が、前記ポリエステルフィルムに直接接している、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記樹脂層は、動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独のtanδピーク高さが0.60以上である、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項9】
ヘーズが2%以下である、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記樹脂層上に、印刷によりベゼルを形成する、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記ベゼルは、熱転写方式の印刷によって形成される、請求項10に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項12】
画像表示装置のカバーウィンドウ用フィルムである、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルムを搭載した画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯デジタル機器の表示画面のカバーウィンドウに好適に使用でき、特に、印刷によって形成されるベゼルの外観やインク密着性に優れた積層ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルや有機ELパネルなどの表示部材は、硝子基板上に電気回路や表示素子を形成した構造からなり、外部からの物理的な力や化学物質の接触により破損しやすい。このため、表示画面部は表示部材を筐体の内部に封止し保護する構造がとられている。この際、物理的に割れることがなく表示画面の視認性を損なわない透明性の高いガラス基板やプラスチック基板、又はこれらを積層した基板からなるカバーウィンドウを最表面に配置している。プラスチック基板の例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられ、機械的特性、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れるため使用されている。
【0003】
カバーウィンドウは液晶パネルや有機ELパネルなどの表示部材を保護する目的に加え、表示部材の外周部に配置された電極や内部配線を隠すためや、携帯デジタル機器にデザイン性を付与するために、額縁パターンを含むベゼルが形成されている。
ここで、ベゼルとは、携帯電話等の携帯デジタル機器の表示画面の額縁パターンと、それに付随する意匠や機能を有するパターン全てのことである。
表示画面上には視認性を阻害するパターンは設けないが、その周囲の額縁部分には額縁パターンの他、携帯デジタル機器のデザインによって、カメラレンズ用の開口窓、スピーカー用の開口窓、光センサー用の開口窓などのパターンが形成されている。
【0004】
カバーウィンドウに対するベゼルの形成方法としては、スクリーン印刷や熱転写印刷が用いられ、額縁パターン、カメラレンズ用の開口窓、スピーカー用の開口窓、光センサー用の開口窓などのパターンをデザインや要求機能に合わせて製造している。特に熱転写印刷は、ベゼルとなる印刷インクを乾燥不要のプロセスで連続的に高速転写することが可能である。
【0005】
例えば、特許文献1には、容易な方法で製造可能なデコレーション機能を有する光学フィルム及びそれを含む画像表示装置が開示され、MDD(Micro Dry process Decoration)熱転写工程でベゼルを印刷する方法が記載されている。
また、特許文献2には、色偏差のないパステルトーンの色及び淡色を効果的に具現できるタッチウィンドウ用デコフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-2309720号公報
【特許文献2】大韓民国登録特許第10-1808177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、被転写体となるカバーウィンドウの表面にインク受容性があるものとないものでは、転写されたベゼルの外観やインク密着性に違いがあらわれる。特許文献2では、カバーウィンドウとなるベースフィルム表面に直接ベゼルを印刷しているが、ベースフィルム表面のインク受容性が十分とは言えないため、熱転写されたベゼルの外観や密着性に課題があると考えられる。
【0008】
したがって、本発明は携帯デジタル機器のカバーウィンドウに好適な、印刷によって形成されるベゼルの外観や密着性に優れた、すなわちインク印刷性を有する積層ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、次の構成を有することで、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、以下の態様を有する。
【0010】
[1]ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂組成物により形成された樹脂層とを有する積層ポリエステルフィルムであって、前記樹脂組成物は、バインダー樹脂及び架橋剤を含み、前記樹脂層は、動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独のtanδピーク温度が10℃以上であり、前記樹脂層は、動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独の貯蔵弾性率E´が200℃において1.5×10Pa以下である、積層ポリエステルフィルム。
[2]前記バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含む、上記[1]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[3]前記架橋剤が、オキサゾリン化合物、メラミン化合物及びエポキシ化合物からなる群から選ばれる1種以上を含む、上記[1]又は[2]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[4]前記架橋剤の含有量が、前記樹脂組成物中の全不揮発成分全体に占める割合として、50質量%以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[5]前記樹脂組成物が、無機粒子を含む、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[6]前記樹脂層が、水系塗料組成物で形成される、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[7]前記樹脂層が、前記ポリエステルフィルムに直接接している、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[8]前記樹脂層は、動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独のtanδピーク高さが0.60以上である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[9]ヘーズが2%以下である、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[10]前記樹脂層上に、印刷によりベゼルを形成する、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[11]前記ベゼルは、熱転写方式の印刷によって形成される、上記[10]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[12]画像表示装置のカバーウィンドウ用フィルムである、上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルム。
[13]上記[1]~[12]のいずれか1つに記載の積層ポリエステルフィルムを搭載した画像表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、携帯デジタル機器のカバーウィンドウに好適な、印刷によって形成されるベゼルの外観や密着性に優れた、インク印刷性を有する積層ポリエステルフィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。ただし、本発明は、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリル」という表現を用いる場合、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の一方又は両方を意味するものとする。また、同様に「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の一方又は両方、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の一方又は両方、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の一方又は両方を意味するものとする。その他についても、上記と同様である。
【0014】
<<積層ポリエステルフィルム>>
本発明の実施形態の一例に係る積層ポリエステルフィルム(以下、「本積層ポリエステルフィルム」とも称する)は、ポリエステルフィルム(以下、「本ポリエステルフィルム」とも称する)と、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、樹脂組成物を用いて形成された樹脂層とを備える。
【0015】
本積層ポリエステルフィルムの積層構成としては、ポリエステルフィルムの片面側に樹脂層を形成し、他方の面側はポリエステルフィルムの表面をそのままにした構成であってもよいし、該他方の片面側に他の層を形成してなる構成であってもよい。
また、ポリエステルフィルムの両面側に樹脂層を形成してなる構成であってもよい。
さらにまた、ポリエステルフィルムと樹脂層との間に他の層を設けてもよいが、樹脂層はポリエステルフィルムに直接接していることが好ましい。
【0016】
<ポリエステルフィルム>
本ポリエステルフィルムは、本積層ポリエステルフィルムの基材としての役割を果たすものである。本ポリエステルフィルムは、単層構造であっても多層構造であってもよい。本ポリエステルフィルムが多層構造の場合、本ポリエステルフィルムは2層構造、3層構造などでもよいし、本発明の要旨を逸脱しない限り、4層又はそれ以上の多層であってもよく、層数は特に限定されない。
また、本ポリエステルフィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。その中でも、力学特性のバランスや平面性に優れる点で、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。
【0017】
本ポリエステルフィルムの原料であるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。
ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なホモポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等を例示することができ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0018】
一方、共重合ポリエステルは、例えばジカルボン酸成分とグリコール成分の重縮合ポリマーであることが好ましい。ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸及びオキシカルボン酸(例えば、p-オキシ安息香酸等)等の1種又は2種以上が挙げられる。また、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール等の1種又は2種以上が挙げられる。共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含み、グリコール成分としてエチレングリコールを含むことが好ましい。
また、共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分及びグリコール成分以外の二官能性化合物由来の構成単位を含んでもよい。ジカルボン酸成分及びグリコール成分以外の二官能性化合物由来の構成単位は、ポリエステルを構成する全構成単位の総モルに対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。二官能性化合物としては、各種のヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール等が挙げられる。
【0019】
本ポリエステルフィルムを構成する全ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の含有量は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
また、本ポリエステルフィルムを構成する全グリコール成分中のエチレングリコールの含有量は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
なお、テレフタル酸及びエチレングリコールの含有量の上限値は、100モル%である。
【0020】
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えばチタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物等が挙げられる。
【0021】
オリゴマー成分の析出量を抑えるために、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルを原料としてフィルムを製造してもよい。オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えばポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。
また、本ポリエステルフィルムを3層以上の構成とし、本ポリエステルフィルムの最外層を、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステル原料を用いた層とすることで、オリゴマー成分の析出量を抑えてもよい。
また、ポリエステルは、エステル化又はエステル交換反応をした後に、さらに反応温度を高くして減圧下で溶融重縮合して得てもよい。
【0022】
本ポリエステルフィルム中には、易滑性の付与及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。
配合する粒子の種類は、易滑性を付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子;アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0023】
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0024】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01~3μmの範囲である。5μm以下であると、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎず、後工程において各種の表面機能層を形成させる場合等に不具合が生じず好ましい。また、平均粒径がかかる範囲であれば、ヘーズが低く抑えられ、積層ポリエステルフィルム全体として透明性を確保しやすい。
【0025】
さらに、ポリエステルフィルム中の粒子含有量は、通常5質量%未満、好ましくは0.0003~3質量%の範囲である。粒子が無い場合、あるいは少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり、良好なフィルムとなるが、滑り性が不十分となる場合があるため、樹脂層中に粒子を入れることにより、滑り性を向上させる等の工夫が必要な場合がある。また、粒子含有量が5質量%未満であるとフィルムの透明性が十分担保できる。
粒子を含有させる場合、例えば、表層と、中間層を設けて、表層に粒子を含有させることが好ましい。この場合、より好ましくは、粒子を含有する表層、中間層、及び粒子を含有する表層をこの順に有する多層構造とするとよい。
【0026】
本ポリエステルフィルム中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、多層のポリエステルフィルムであれば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化又はエステル交換反応終了後、添加するのが好ましい。
【0027】
なお、本ポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0028】
本ポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、機械的強度、ハンドリング性及び生産性などの観点から、好ましくは5~350μm、より好ましくは8~125μm、さらに好ましくは10~100μm、特に好ましくは12~75μmの範囲である。
【0029】
次に、本ポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。例えば二軸延伸フィルムを製造する場合、先に述べたポリエステル原料の乾燥したペレットを、押出機を用いてダイから溶融シートとして押し出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0030】
次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7.0倍、好ましくは3.0~6.0倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70~170℃であり、延伸倍率は通常3.0~7.0倍、好ましくは3.5~6.0倍である。
そして、引き続き、通常180~270℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0031】
また、本ポリエステルフィルムの製造に同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向及び幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で好ましくは4~50倍、より好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。
そして、引き続き、通常170~250℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式及びリニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0032】
<樹脂層>
本積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面側に、樹脂組成物から形成されてなる樹脂層(以下、「本樹脂層」とも称する)を備えるものである。樹脂層を備えることで、ベゼル印刷した際にインク転写面のヌケを抑制することができる。
本樹脂層は、上述のとおり、樹脂組成物(以下、「本組成物」とも称する)から形成され、本組成物はバインダー樹脂及び架橋剤を含む。
【0033】
((バインダー樹脂))
本組成物は、バインダー樹脂を含有する。前記バインダー樹脂は、「高分子化合物安全性評価フロースキーム」(昭和60年11月、化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ、造膜性を有するものと定義する。ただし、バインダー樹脂としては、後述する架橋剤として例示されるものは除く。
そのようなバインダー樹脂としては、特に制限はなく、従来公知のバインダー樹脂を使用することができる。例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。中でも、透明性とインク受容性の観点から、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。本組成物において、バインダー樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂としては、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。
すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩及びそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、p-キシリレングリコール、ビスフェノールA-エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これら多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0035】
また、上記多価カルボン酸の一部として、5-ソジウムスルホイソフタル酸などのスルホイソフタル酸類を共重合して、ポリエステル骨格にスルホン酸基を導入し、中和して親水化した物が好ましく用いられる。共重合する量は、多価カルボン酸全体に対し通常1~13モル%、好ましくは3~10モル%、より好ましくは5~9モル%である。スルホン酸基を適量導入することで、さらに水分散安定性を向上させることができる。
【0036】
((メタ)アクリル樹脂)
(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体のいずれでもよい。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル類由来の構成単位を有する重合体である。(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも1種の重合体でもよいし、これらから選択される少なくとも1種と、これら以外のモノマー類、例えば、スチレン又はスチレン誘導体、水酸基を含有するモノマーなどから選択される少なくとも1種との共重合体であってもよい。
また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えばブロック共重合体、グラフト共重合体である。すなわち、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂や、(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂であってもよい。
あるいは、ポリエステル溶液、又はポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれ、これらも本明細書では、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂や、(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂とする。なお、(メタ)アクリル樹脂において使用される上記したポリエステル、ポリウレタンは、後述するバインダー樹脂に使用されるポリエステル、ポリウレタンとして例示されたものから適宜選択して使用できる。
また、(メタ)アクリル樹脂は、ポリエステルフィルムとの密着性をより向上させるために、ヒドロキシ基、アミノ基を含有することも可能である。
【0037】
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等の各種カルボキシル基含有モノマー類、及びそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキシフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート等の各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種のアルキル(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、又は(メタ)アクリロニトリル等の種々の窒素含有モノマー類;N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有の窒素含有モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等の各種スチレン誘導体;プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエン等の各種共役ジエン類が挙げられる。
【0038】
上記の(メタ)アクリル樹脂の中では、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体が好ましく、重合性モノマーがアルキル(メタ)アクリル酸エステル類を含むことがより好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂を含む本組成物は、後述するように溶媒で希釈して塗布液とするのが好ましく、かかる溶媒が水を主溶媒(50質量%以上)とするのが好ましい。すなわち、塗布液を水系とした場合に溶解又は分散しやすくする観点から、重合性モノマーは水酸基やカルボキシル基などの親水性基を有することが好ましい。
したがって、(メタ)アクリル樹脂は、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類と、水酸基を含有するモノマー、カルボキシル基含有モノマーなどの親水性基含有モノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体も好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂は、例えば界面活性剤の存在下に重合性モノマーを重合した乳化重合体でもよい。
【0039】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物で、水分散性又は水溶性のものが好ましい。本発明では、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0040】
水分散性又は水溶性を付与させるために、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をポリウレタン樹脂に導入することが一般的であり好ましい。前記親水性基のなかでも、樹脂層とポリエステルフィルムの密着性の点から、カルボキシル基又はスルホン酸基が特に好ましい。
【0041】
ポリウレタン樹脂を作製する方法の一つに、水酸基含有化合物とイソシアネートとの反応によるものがある。原料として用いられる水酸基含有化合物としては、ポリオールが好適に用いられ、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネート系ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
【0042】
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0043】
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸又はそれらの酸無水物と多価アルコールの反応から得られるものが挙げられる。多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等が挙げられる。
【0044】
ポリカーボネート系ポリオール類としては、多価アルコール類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコール反応によって得られるポリカーボネートジオール、例えばポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
上記した中でも、ポリエステルフィルムとの密着性の観点から、ポリエステルポリオール類が好ましい。
【0045】
ポリウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0046】
ポリウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基又はアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
【0047】
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール;キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール;ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。
【0048】
アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えばトリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン;1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0049】
本組成物中のバインダー樹脂の含有量は、樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは10~99質量%、より好ましくは30~95質量%、さらに好ましくは50~90質量%、特に好ましくは60~90質量%の範囲である。当該含有量を10質量%以上とすることで、樹脂層のインク受容性が良好となる。また、当該含有量を99質量%以下とすることで、樹脂層の耐久性と耐ブロッキング性が良好となる。
【0050】
((架橋剤))
本組成物は、架橋剤を含有する。本組成物が架橋剤を含有することで、樹脂層の耐久性及び基材(ポリエステルフィルム)との密着性を向上させることができる。すなわち、本樹脂層は、架橋剤により架橋されていてもよく、架橋剤由来の化合物を含有してもよい。
架橋剤としては、樹脂層の耐久性を向上できるという観点から、オキサゾリン化合物、メラミン化合物及びエポキシ化合物からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これら以外の架橋剤としては、従来公知の架橋剤が使用でき、例えばカルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0051】
(オキサゾリン化合物)
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン及び2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限はなく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基及びシクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン等のα,β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上のモノマーを使用することができる。
また、オキサゾリン化合物は、ポリエチレンオキサイド鎖などのポリアルキレンオキサイド鎖を有してもよく、例えばポリアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレートなどを他のモノマーとして使用してもよい。
樹脂層のポリエステルフィルムに対する密着性向上の観点から、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基量は、好ましくは0.5~10mmol/g、より好ましくは1~9mmol/g、さらに好ましくは3~8mmol/gの範囲である。
【0052】
(メラミン化合物)
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えばアルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。アルキロール化としては、メチロール化、エチロール化、イソプロピロール化、n-ブチロール化、イソブチロール化等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、メチロール化が好ましい。エーテル化に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール及びイソブタノール等が好適に用いられ、これらの中では、メタノールがより好ましい。
また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために、本組成物にはさらに触媒を使用することも可能である。
【0053】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えばエピクロロヒドリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン及びビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物や、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物並びにグリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えばソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
ジエポキシ化合物としては、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
モノエポキシ化合物としては、例えばアリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。樹脂層のポリエステルフィルムに対する密着性向上の観点から、ポリエーテル系のエポキシ化合物が好ましい。
また、エポキシ基の量としては、2官能より、3官能以上の多官能であるポリエポキシ化合物が好ましい。
【0054】
なお、上記した架橋剤は、乾燥過程や製膜過程において反応させて、樹脂層の性能を向上させるように設計するとよい。形成される樹脂層中には、架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測される。
【0055】
本組成物中の架橋剤の含有量は、樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは3~40質量%、さらに好ましくは5~30質量%の範囲である。当該含有量を1質量%以上とすることで、樹脂層の耐久性やポリエステルフィルムとの密着性を高めることができる。また、当該含有量を40質量%以下とすることで、優れた柔軟性にすることができる。
【0056】
((無機粒子))
本組成物は、さらに無機粒子を含有することが好ましい。本組成物が無機粒子を含有することで、ブロッキング、滑り性などの取り扱い性を向上させることができる。
前記無機粒子としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等を挙げることができる。これらの中では、シリカ、酸化ジルコニウムが好ましい。本組成物において、無機粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
前記無機粒子の平均粒径は、5~500nmであることが好ましく、より好ましくは10~300nm、さらに好ましくは20~150nmである。当該平均粒径が、500nm以下であれば、フィルムの透明性が良好となる。一方、当該平均粒径が、5nm以上であれば、取り扱い性をより効果的に向上させることができる。
【0058】
本組成物がさらに無機粒子を含有する場合、その含有量は、樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは0.5~40質量%、より好ましくは2~30質量%、さらに好ましくは5~20質量%の範囲である。当該含有量を0.5質量%以上とすることで、取り扱い性を適切に改良できる。また、当該含有量を40質量%以下とすることで、フィルムの透明性が良好となる。
【0059】
((その他の成分))
本発明の主旨を損なわない範囲において、上記成分以外にも、消泡剤、塗布性改良剤、界面活性剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤をさらに適宜配合してもよい。
【0060】
((溶媒))
本樹脂層は、水系塗料組成物で形成されることが好ましい。例えば本組成物は、溶媒で希釈して塗布液としてもよい。すなわち、本組成物は、液状の塗布液として、例えば本ポリエステルフィルムに塗布し、必要に応じて乾燥、かつ、硬化させて樹脂層を形成させるとよい。
なお、本組成物を構成する各成分(バインダー樹脂及び架橋剤、任意に添加される無機粒子、その他の成分等)は、溶媒に溶解させてもよいし、溶媒中に分散させてもよい。
塗布液とした場合、塗布液中における本組成物の全不揮発成分の濃度は、0.1~50質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であれば、効率的に所望の厚みの樹脂層を形成することができる。一方、50質量%以下であれば、塗工時の粘度を抑えることで樹脂層の外観を向上させることができ、また、塗布液中の安定性を高めることができる。
【0061】
前記溶媒としては、特に制限はなく、水及び有機溶剤のいずれも使用することができる。環境保護の観点から、水を主溶媒(50質量%以上)として水性塗布液とすることが好ましい。水の含有量に関して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であるのがよい。水性塗布液には、少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤の具体的な量は、質量基準で水の量以下とするとよく、例えば、溶媒中の50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下とするのがよい。
水と併用する有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;エチルセロソルブ、t-ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジメチルエタノールアミン等のアミン類等を例示することができる。これらは単独、もしくは複数を組み合わせて用いることができる。水性塗布液に、必要に応じてこれらの有機溶剤を適宜選択し、含有させることで、塗布液の安定性、塗工性を良好にできる場合がある。
【0062】
また、上記溶媒として有機溶剤のみを使用する場合、かかる有機溶剤としては、トルエン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類;エタノール、2-プロパノール等のアルコール類;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類などを挙げることができる。これらは、溶解性、塗工性や沸点等を考慮して単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
【0063】
樹脂層中には、本組成物を構成する各成分(バインダー樹脂及び架橋剤、任意に添加される無機粒子、その他の成分等)の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
なお、樹脂層中の各成分の分析は、例えば、TOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等によって行うことができる。
【0064】
((樹脂層の形成方法))
次に、本積層ポリエステルフィルムを構成する樹脂層の形成方法について説明する。
本樹脂層の形成方法は、特に限定されず、例えばリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
また、樹脂層の形成方法としては、インラインコーティング及びオフラインコーティングがある。乾燥及び硬化条件に関しては、特に限定されるわけではなく、例えばオフラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、80~200℃で3~40秒間、好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。一方、インラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
【0065】
本発明では、樹脂層は、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより形成されるのが好ましい。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押し出ししてから延伸後、熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻き上げ前のフィルムのいずれかにコーティングする。
【0066】
以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に幅方向(横方向)に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と樹脂層形成を同時に行うことができるため、製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、樹脂層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングフィルムに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。
【0067】
また、延伸前にフィルム上に樹脂層を設けることにより、樹脂層をポリエステルフィルムと共に延伸することができ、それにより樹脂層をポリエステルフィルムに強固に密着させることができる。
【0068】
さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦及び横方向に拘束することができ、その後の熱処理(熱固定工程)において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。
それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、樹脂層の造膜性が向上し、強固な樹脂層とすることができ、樹脂層上に形成され得る各種の機能層との密着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。
【0069】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングにかかわらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0070】
樹脂層の厚みは、最終的に得られる積層ポリエステルフィルムにおける樹脂層の厚さとして、好ましくは0.005~0.150μm、より好ましくは0.007~0.100μm、さらに好ましくは0.009~0.100μmである。樹脂層の厚みを0.005~0.150μmの範囲とすることで、樹脂層とポリエステルフィルムをより強固に密着させることができる。
【0071】
<積層ポリエステルフィルムの物性>
動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独のtanδピーク温度は、10℃以上であり、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。当該tanδピーク温度が10℃以上であれば、ベゼル印刷した際にインク転写面の端部のキレが良好となる。なお、上限値は特に制限されず、120℃程度である。
【0072】
動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独のtanδピーク高さは、0.60以上であることが好ましく、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは1.00以上である。当該tanδピーク高さが0.60以上であれば、架橋剤が硬化反応した後も樹脂層の粘性が確保でき、インク印刷工程で加わる変形に対する耐性に優れるため、インクが剥がれにくくインク密着性が良好となる。なお、上限値は特に制限されず、2.50程度である。
【0073】
動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独の貯蔵弾性率E´は、200℃において1.5×10Pa以下であり、好ましくは1.0×10Pa以下、より好ましくは5.0×10Pa以下である。当該貯蔵弾性率E´が200℃において1.5×10Pa以下であれば、架橋剤が硬化反応した後も樹脂層の柔軟性が確保でき、ベゼル印刷した際にインク受容性に優れるため、インク密着性が良好となる。なお、下限値は特に制限されず、1.0×10Pa程度である。
【0074】
動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独のtanδピーク温度、tanδピーク高さ及び貯蔵弾性率E´は、本組成物中の組成や含有量、樹脂層の形成方法や形成過程における各種条件などによって調整することができる。
【0075】
本積層ポリエステルフィルムのヘーズは、2.0%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.2%以下、特に好ましくは1.0%以下である。ヘーズがかかる範囲であれば、透明性が良好といえる。なお、下限値は特に制限されず、0.01%程度である。
【0076】
本積層ポリエステルフィルムの全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、より好ましくは87%以上、さらに好ましくは89%以上である。当該全光線透過率が85%以上であれば、視認性を十分に確保できる。当該全光線透過率の上限値は100%である。
【0077】
本積層ポリエステルフィルムのヘーズ及び全光線透過率は、本組成物中の組成や含有量、樹脂層の厚み、ポリエステルフィルム中に含まれる粒子の種類、平均粒径及び含有量などによって調整することができる。
【0078】
<積層ポリエステルフィルムの用途>
本積層ポリエステルフィルムは、インク印刷性を備えている。そのため、本積層ポリエステルフィルムの樹脂層上に、印刷によりベゼルを形成することが好ましく、中でも、前記ベゼルは熱転写方式の印刷によって形成されることが好ましい。本樹脂層上に形成されたベゼルは、外観や密着性に優れたものとなる。
したがって、本積層ポリエステルフィルムは、表面保護用、画像表示装置用、その中でも特に前面板用などの用途に用いることができる。例えば表面保護フィルム、中でも画像表示装置のカバーウィンドウ用フィルム、その中でも、フレキシブル画像表示装置のカバーウィンドウ用フィルムとして好適に用いることができる。本積層ポリエステルフィルムが優れた透明性や視認性をも具備する場合には、かかる用途に特に好適である。ただし、本積層ポリエステルフィルムの用途をこれらの用途に限定するものではない。
【0079】
<<語句の説明>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」あるいは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0080】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
ただし、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
<評価方法>
(1)ポリエステルの固有粘度(dl/g)
ポリエステルに非相溶な成分を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mLを加えて溶解させ、粘度(IV)測定装置「VMS-022UPC・F10」(株式会社離合社製)を用いて、30℃で測定した。
【0082】
(2)粒子の平均粒径
ポリエステルに含有される粒子の平均粒径については、株式会社島津製作所製の遠心沈降式粒度分布測定装置(SA-CP3型)を用いて測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径d50とした。
【0083】
(3)樹脂層の厚み
樹脂層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、樹脂層断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(株式会社日立ハイテク製、H-7650、加速電圧100kV)を用いて測定した。
【0084】
(4)全光線透過率及びヘーズ
JIS K 7136に準拠し、村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150を使用して、実施例及び比較例のフィルムの全光線透過率及びヘーズを測定した。
【0085】
(5)tanδ及び貯蔵弾性率E´
アイティー計測制御株式会社製動的粘弾性測定装置「itk DVA-200」を用い、-30℃から200℃の温度範囲において、昇温速度10℃/min、周波数10Hzの条件で動的粘弾性引張測定を行い、得られたtanδのピーク温度及びピーク高さを求めた。
また、上記と同様の測定方法にて、200℃における貯蔵弾性率E´を求めた。
【0086】
(6)印刷外観
5cm×10cmの大きさに切り出した黒色インクリボン(PANDUIT社製RMER2BL)のインク面を樹脂層上に重ね、80℃・10MPaで10分間熱プレスを行った。その後、インクリボンの基材フィルムを剥がしてインク転写面の外観(キレ・ヌケ)を目視確認し以下の基準で評価した。
キレ
◎:インク転写面の端部に凹みが0個以上10個以下。
〇:インク転写面の端部に凹みが11個以上20個以下。
×:インク転写面の端部に凹みが21個以上。
ヌケ
◎:インク転写面上にピンホールが0個以上10個以下。
〇:インク転写面上にピンホールが11個以上20個以下。
×:インク転写面上にピンホールが21個以上。
【0087】
(7)インク密着性
転写したインクの密着性をJIS K 5400の碁盤目剥離試験(碁盤目数:100個)に準じて測定し、以下の基準で評価した。
◎:試験後に残ったマス目の数が100個(=剥離が無い)。
〇:マス目の周辺に剥離があるものの、試験後に残ったマス目の数は100個。
×:試験後に残ったマス目の数が0個以上99個以下。
【0088】
<使用した材料>
実施例及び比較例において使用したポリエステルは、以下のとおりである。
【0089】
[ポリエステル(A)]
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール55質量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.04質量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.02質量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04質量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。温度は230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.65dl/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、固有粘度0.65dl/gのポリエステル(A)を得た。
【0090】
[ポリエステル(B)]
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール45質量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.06質量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.03質量部を添加した後、エチレングリコールに分散させた平均粒径2.7μmのシリカ粒子を0.2質量部、三酸化アンチモン0.03質量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。温度は230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.65dl/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、固有粘度0.65dl/gのポリエステル(B)を得た。
【0091】
下記表1に示す組成にて撹拌混合して得られる樹脂組成物を水で希釈して、塗布液1~7を調製した。使用した化合物は以下のとおりである。
【0092】
[バインダー樹脂(I):ポリエステル樹脂]
(IA)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
【0093】
(IB)
下記の組成で共重合した、縮合多環式芳香族を有するポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6-ナフタレンジカルボン酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(mol%)
【0094】
[バインダー樹脂(I):アクリル樹脂]
(IC)
下記の組成で重合した、アクリル樹脂水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(質量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
【0095】
[バインダー樹脂(I):ポリウレタン樹脂]
(ID)
下記組成のポリウレタン(メタ)アクリレート樹脂の水分散体
水添キシリレンジイソシアネートユニット/ペンタエリスリトール系アクリレートユニット/ポリエチレングリコールユニット=10/60/30(mol%)
【0096】
(IE)
下記組成A、Bで示すポリカーボネート系ウレタン樹脂とポリウレタン(メタ)アクリレートの混合物の水分散体
A:水添キシリレンジイソシアネートユニット/ヘキサンジオール型ポリカーボネートユニット/ペンタエリスリトール系アクリレートユニット/ジペンタエリスリトール系アクリレートユニット/ジメチロールプロパン酸ユニット
B:水添キシリレンジイソシアネートユニット/ペンタエリスリトール系アクリレートユニット/ジペンタエリスリトール系アクリレートユニット/トリメチロールプロパン系アクリレートユニット/ジメチロールプロパン酸ユニット
A/B=70/30(mol%)
【0097】
(IF)
下記組成D~Fで示すポリカーボネート系ウレタン樹脂の混合物の水分散体
D:水添キシリレンジイソシアネートユニット/末端OH変性ポリヘキサメチレンカーボネートユニット/ネオペンチルグリコールユニット/ジメチロールプロパン酸ユニット
E:水添ジフェニルメタンジイソシアネートユニット/イソホロンジイソシアネートユニット/末端OH変性ポリヘキサメチレンカーボネートユニット/プロピレングリコールユニット/ジメチロールプロパン酸ユニットからなるウレタン樹脂をトリエチルアミンで中和したもの
F:イソホロンジイソシアネートユニット/末端OH変性ポリヘキサメチレンカーボネートユニット/ポリオキシテトラメチレングリコールユニット/ジメチロールプロパン酸ユニットからなるウレタン樹脂をトリエチルアミンで中和したもの
D/E/F=50/20/30(mol%)
【0098】
[架橋剤(II)]
(IIA) オキサゾリン化合物:オキサゾリン基含有アクリルポリマー(エポクロス(登録商標)WS-500、オキサゾリン基量4.5mmol/g、重量平均分子量Mw=7×10、株式会社日本触媒製)
(IIB) オキサゾリン化合物:オキサゾリン基含有アクリルポリマー(エポクロス(登録商標)WS-700、オキサゾリン基量4.5mmol/g、重量平均分子量Mw=4×10、株式会社日本触媒製)
(IIC) メラミン化合物:ヘキサメトキシメチロールメラミン
(IID) エポキシ化合物:水溶性ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
(IIE) イソシアネート化合物:
ヘキサメチレンジイソシアネート1000部を60℃で攪拌し、触媒としてテトラメチルアンモニウム・カプリエート0.1部を加えた。4時間後、リン酸0.2部を添加して反応を停止させ、イソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物を得た。得られたイソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物100部、数平均分子量400のメトキシポリエチレングリコール42.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート29.5部を仕込み、80℃で7時間保持した。その後反応液温度を60℃に保持し、イソブタノイル酢酸メチル35.8部、マロン酸ジエチル32.2部、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液0.88部を添加し、4時間保持した。n-ブタノール58.9部を添加し、反応液温度80℃で2時間保持し、その後、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート0.86部を添加して得られたブロックポリイソシアネート。
【0099】
[無機粒子(III)]
(IIIA) 平均粒径25nmの球状シリカ粒子
(IIIB) 平均粒径65nmの球状シリカ粒子
(IIIC) 平均粒径140nmの球状シリカ粒子
(IIID) 平均粒径20nmの酸化ジルコニウム粒子
【0100】
(実施例1)
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ92質量%、8質量%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)のみを中間層の原料とした。最外層及び中間層の原料の各々を2台の押出機に供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=8/84/8の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.5倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。この一軸延伸フィルムの片面に、下記表1に示す組成を有する塗布液1を塗布し、次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.3倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、樹脂層の厚みが0.01μm、樹脂層を除いたポリエステルフィルムの厚みが50μmの積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0101】
(実施例2~6)
表1に示す塗布液2~6を用いると共に、樹脂層の厚みを表2に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0102】
(比較例1)
樹脂層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0103】
(比較例2)
表1に示す塗布液7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
表2の結果が示す通り、本発明の積層ポリエステルフィルムは、動的粘弾性引張測定によって得られる樹脂層単独のtanδピーク温度が10℃以上であり、貯蔵弾性率E´が200℃において1.5×10Pa以下である。これにより、インク転写面の外観や密着性などの印刷性の結果から、ベゼル印刷性は良好であったことが分かる。また、低へーズかつ高透過率であるため、十分な透明性と視認性を有する。
一方で、樹脂層を有さない比較例1は、インク転写面の外観や密着性が不十分であった。また、樹脂層単独のtanδピーク温度が10℃より低く、貯蔵弾性率E´が200℃において1.5×10Paより高い比較例2は、インク密着性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、熱転写されたベゼルの外観や密着性に優れており、優れた透明性と視認性をも備えていることから、特に画像表示装置のカバーウィンドウ用フィルム、その中でもフレキシブル画像表示装置のカバーウィンドウ用フィルムとして好適に用いることができる。