(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077295
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】基板着脱ロボット、基板着脱方法、及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240531BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20240531BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H01L21/68 A
C23C14/56 G
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189303
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100108187
【弁理士】
【氏名又は名称】横山 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森 隆之
【テーマコード(参考)】
3C707
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS24
3C707BS15
3C707NS13
4K029CA05
4K029JA01
4K029JA05
4K029KA01
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA03
5F131BA04
5F131BB12
5F131CA09
5F131CA17
5F131DA02
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB12
5F131DB32
5F131DB52
5F131EB32
(57)【要約】
【課題】基板の着脱時における各種部品の破損を防止する。
【解決手段】基板着脱ロボットは、基板を保持する基板保持部材と、基板保持部材を移動させるロボットアームと、基板保持部材とロボットアームの先端とを接続する少なくとも3本の線状部材と、を備え、3本の線状部材は形状記憶合金で形成されており、基板を着脱自在に保持可能な基板ホルダに対する基板の着脱時の基板保持部材の温度が形状記憶合金の形状回復温度の範囲内である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材を移動させるロボットアームと、
前記基板保持部材と前記ロボットアームの先端とを接続する少なくとも3本の線状部材と、を備え、
前記3本の前記線状部材は形状記憶合金で形成されており、
前記基板を着脱自在に保持可能な基板ホルダに対する前記基板の着脱時の前記基板保持部材の温度が前記形状記憶合金の形状回復温度の範囲内である、
基板着脱ロボット。
【請求項2】
前記形状記憶合金がNiTi系合金であり、前記形状回復温度の範囲が20℃~80℃である、請求項1に記載の基板着脱ロボット。
【請求項3】
基板を保持する基板保持部材と、前記基板保持部材を移動させるロボットアームの先端とを、形状記憶合金で形成された少なくとも3本の線状部材により接続する準備工程と、
前記基板の着脱時の前記基板保持部材の温度を前記形状記憶合金の形状回復温度の範囲内とする準備工程と、
前記基板保持部材を前記基板の開口に挿入して前記基板保持部材により前記基板を保持可能にする保持工程と、
前記基板を着脱自在に保持可能な基板ホルダに対して前記基板の着脱を実行する着脱工程と、
を含む、基板着脱方法。
【請求項4】
基板に対して成膜処理を行うチャンバと、
前記基板を着脱自在に保持可能な基板ホルダが設けられたキャリアと、
前記キャリアを搬送する搬送機構と、
前記基板ホルダに対して前記基板の着脱を実行する、請求項1又は2に記載の基板着脱ロボットと、
を備える、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板着脱ロボット、基板着脱方法、及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板を着脱する基板着脱ロボットが知られている。また、基板を着脱する基板着脱方法、および、基板に対して成膜処理を行う成膜装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、基板着脱ロボットが基板ホルダに設けられる支持部材に基板を過剰に押し付けてしまい、基板の端部が支持部材によって傷付けられることがある。また基板着脱ロボットに設けられる基板支持部材が偶発的に基板又は基板ホルダに接触し、接触時の衝撃により各種部品が破損する場合がある。
【0005】
そこで、本開示の技術は、上記課題に鑑み、基板の着脱時における各種部品の破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板を保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材を移動させるロボットアームと、
前記基板保持部材と前記ロボットアームの先端とを接続する少なくとも3本の線状部材と、を備え、
前記3本の前記線状部材は形状記憶合金で形成されており、
前記基板を着脱自在に保持可能な基板ホルダに対する前記基板の着脱時の前記基板保持部材の温度が前記形状記憶合金の形状回復温度の範囲内である、
基板着脱ロボットが提供される。
【0007】
本開示の他の態様によれば、
基板を保持する基板保持部材と、前記基板保持部材を移動させるロボットアームの先端とを、形状記憶合金で形成された少なくとも3本の線状部材により接続する準備工程と、
前記基板の着脱時の前記基板保持部材の温度を前記形状記憶合金の形状回復温度の範囲内とする準備工程と、
前記基板保持部材を前記基板の開口に挿入して前記基板保持部材により前記基板を保持可能にする保持工程と、
前記基板を着脱自在に保持可能な基板ホルダに対して前記基板の着脱を実行する着脱工程と、
を含む、基板着脱方法が提供される。
【0008】
本開示の別の態様によれば、
基板に対して成膜処理を行うチャンバと、
前記基板を着脱自在に保持可能な基板ホルダが設けられたキャリアと、
前記キャリアを搬送する搬送機構と、
前記基板ホルダに対して前記基板の着脱を実行する、本開示の一態様に係る基板着脱ロボットと、
を備える、成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、基板の着脱時における各種部品の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る成膜装置により製造される記録媒体の一例の断面図である。
【
図3】一実施形態に係る成膜装置のチャンバの側面図である。
【
図4】一実施形態に係る成膜装置の基板ホルダの側面図である。
【
図5】一実施形態に係る基板着脱ロボットの要部の側面図である。
【
図6】一実施形態に係る基板着脱ロボットの要部の正面図(A)及び側面図(B)である。
【
図7】一実施形態に係る基板着脱方法の概略手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。
【0012】
近年、磁気記録装置の適用範囲が著しく増大され、磁気記録装置の重要性が増すと共に、磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体の記録密度の著しい向上が図られつつある。
【0013】
磁気記録媒体の製造方法としては、例えば、非磁性基板の上に、軟磁性層、中間層、及び記録磁性層等を形成した後、記録磁性層の上に保護層を形成する方法がある。
【0014】
斯かる製造方法の場合、なるべく1つの成膜装置を用いて連続的に行うことが好ましい。連続的に成膜処理を行うことにより、ハンドリングに際して基板の汚染が防止され、また、ハンドリング工程等を少なくして製造工程の効率化及び製品歩留まりを良くし、磁気記録媒体の生産性を高めることができる。
【0015】
そこで、斯かる磁気記録媒体の製造に際し、複数枚の非磁性基板を保持したキャリアを複数のチャンバの間で順次搬送させながら、非磁性基板の両面に、磁性層等を順次成膜するインライン式成膜装置を用いることが提案されている。
【0016】
インライン式成膜装置では、基板着脱ロボットを用いて基板ホルダに対する基板の着脱を実行するが、着脱の際に、基板着脱ロボットが、基板を基板ホルダの支持部材に過剰に押し付けてしまい、基板の端部が支持部材によって傷付けられることがある。また、基板着脱ロボット側の基板支持部材が、偶発的に基板ホルダ又は基板と衝突し、衝突時の衝撃により基板支持部材が破損する場合がある。
【0017】
斯かる問題を解決するため、本実施形態に係る基板着脱ロボットは、基板の着脱時における各種部品の破損を防止する。なお、各種部品には、成膜装置の各種構成部品に加え、成膜対象である基板が含まれる。
【0018】
本実施形態では、複数のチャンバ間で円盤状基板を順次搬送させながら成膜処理を行うインライン式成膜装置を用いて、ハードディスク装置に搭載される磁気記録媒体を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0019】
(磁気記録媒体)
図1は、一実施形態に係る成膜装置により製造される記録媒体の一例の断面図である。記録媒体は、例えば磁気記録媒体である。
【0020】
磁気記録媒体は、円盤状基板9の両面に、軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83、及び保護層84が順次積層された構造を有し、さらに最表面に潤滑膜85が形成される。
【0021】
円盤状基板9としては、Alを主成分とした例えばAl-Mg合金等のAl合金基板、又は、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、及び各種樹脂等のいずれか一つからなる基板等が用いられる。つまり円盤状基板9には、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。
【0022】
(インライン式成膜装置の構成)
図2は、一実施形態に係るインライン式成膜装置1の平面図である。磁気記録媒体を製造する際は、例えば
図2に示すようなインライン式成膜装置1を用いて、成膜対象となる円盤状基板9の両面に、少なくとも軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83、及び保護層84を順次積層する。斯かる工程を経ることにより、磁気記録媒体を高い生産性で得ることができる。
【0023】
具体的に、インライン式成膜装置1は、ロボット台8と、ロボット台8上に載置された基板カセット移載ロボット3と、ロボット台8に隣接する基板着脱ロボット2と、キャリア7を回転させる複数のコーナー室4と、を備えている。また、インライン式成膜装置1は、コーナー室4とコーナー室4の間に配置された複数のチャンバ5と、複数のコーナー室4及び複数のチャンバ5の中を搬送される複数のキャリア7と、を備えている。
【0024】
また、各チャンバ5の接続部には、ゲートバルブ6がそれぞれ設けられ、各ゲートバルブ6が閉状態のとき、各チャンバ5内はそれぞれ独立した密閉空間となる。
【0025】
また、各チャンバ5には、非図示の真空ポンプがそれぞれ接続されており、各真空ポンプの動作によって減圧状態となされた各チャンバ5内に、搬送機構により複数のキャリア7が順次搬送される。複数のキャリア7を順次搬送させながら、各チャンバ5内において、キャリア7に保持された円盤状基板9の両面に、軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83、及び保護層84が順次成膜される。
【0026】
保護層84を成膜した後、インライン式成膜装置1から円盤状基板9を取り出し、円盤状基板9の両面に潤滑膜85を成膜し、最終的に
図1に示す磁気記録媒体が得られる。また、各コーナー室4は、キャリア7の移動方向を変更する室であり、コーナー室4の内部にはキャリア7を回転させて次のチャンバ5に移動させる機構が設けられている。
【0027】
図3は、一実施形態に係る成膜装置のチャンバ5の側面図である。インライン式成膜装置1は、キャリア7を搬送する搬送機構11を備えている。搬送機構11としては、例えば、非接触状態で駆動するリニアモータ駆動機構が用いられる。
【0028】
リニアモータ駆動機構は、キャリア7の下部に複数の磁石をN極とS極とが交互に並ぶように配置すると共に、キャリア7の磁石の下方に隔壁を介してN極とS極とが螺旋状に交互に並ぶ回転磁石を搬送路に沿って配置している。リニアモータ駆動機構は、キャリア7側の磁石と回転磁石とを非接触で磁気的に結合させながら、回転磁石を軸回りに回転させることにより、キャリア7を搬送させる。
【0029】
(基板ホルダの構成)
図4は、一実施形態に係る成膜装置の基板ホルダ10の側面図である。キャリア7には、円盤状基板9を縦置きに保持する2個の基板ホルダ10が設けられている。なお、縦置きとは、円盤状基板9の主面(表面または裏面)が重力方向と平行となる状態を意味する。キャリア7は、2個の基板ホルダ10を搬送方向に一列で並べて配置する。
【0030】
基板ホルダ10は、円盤状基板9の厚さの1倍~数倍程度の厚さを有する。また、基板ホルダ10には、保持された円盤状基板9の外周端部から半径方向に10mm程度の隙間を形成するように、円盤状基板9よりも大径となる円形状の孔部12が穿設されている。基板ホルダ10は、基板ホルダ10の内側に設けられた孔部12に円盤状基板9を着脱自在に保持する。
【0031】
基板ホルダ10の孔部12の周囲には、4個の支持部材13が弾性変形可能に取り付けられている。4個の支持部材13は、孔部12の内側に配置される円盤状基板9の各々の外周端部を支持する。
【0032】
4個の支持部材13のうちの鉛直方向で上側の2個の支持部材13は、鉛直方向で上側の第1側外周端部14と、鉛直方向で上側の第2側外周端部15と、をそれぞれ支持する。4個の支持部材13のうちの鉛直方向で下側の2個の支持部材13は、鉛直方向で下側の第3側外周端部16と第4側外周端部17をそれぞれ支持する。
【0033】
なお、
図4では、第1側外周端部14と第3側外周端部16が左側外周端部であり、第2側外周端部15と第4側外周端部17が右側外周端部であるが、
図4の裏側から見た場合は、それぞれ反対側になる。
【0034】
基板ホルダ10は、4個の支持部材13により円盤状基板9を支持することにより、孔部12の内側に嵌め込まれた円盤状基板9を着脱自在に保持する。
【0035】
支持部材13は、例えばL字状に折り曲げられた板バネ部材である。支持部材13の基端側は、基板ホルダ10の本体に固定される。4個の支持部材13は、基板ホルダ10の孔部12の周囲に形成された4個の通路に配置される。支持部材13の先端側は、孔部12の内側に向かって突出している。また、支持部材13の先端には、円盤状基板9の落下を防止するため、円盤状基板9の外周端部に係合するV字溝又はU字溝が設けられている。なお、本実施形態では4個の支持部材13を用いているが、円盤状基板9を保持するためには支持部材13が3個以上あれば良い。
【0036】
支持部材13には、鉄、ステンレス、インコネル、ニッケル、コバルト、モリブデン、及びタングステン等、また、いずれかを主成分とする合金を用いることができる。また支持部材13による円盤状基板9の支持力は、円盤状基板9の材質及び厚さ等によって適宜選択されるが、例えば2N~6Nの範囲内である。
【0037】
また、孔部12の周囲に形成された4個の通路のうちの下側の2個の通路には、解除孔41がそれぞれ設けられている。2個の解除孔41には、下側の2個の支持部材13を押し下げて支持部材13による円盤状基板9の支持を解除する2本の解除棒が挿入される。
【0038】
(基板着脱ロボットの構成)
図5は、一実施形態に係る基板着脱ロボット2の要部の側面図である。
図6は、一実施形態に係る基板着脱ロボット2の要部の正面図(A)及び側面図(B)である。
【0039】
基板着脱ロボット2は例えば多関節ロボットである。基板着脱ロボット2は、基板保持部材51と、ロボットアーム52と、基板保持部材51とロボットアーム52の先端とを接続する少なくとも3本の線状部材53と、を備えている。また基板着脱ロボット2は、基板保持部材51を固定する第1板状部材54Aと、ロボットアーム52の先端に固定される第2板状部材54Bと、を備えている。
【0040】
基板保持部材51は円盤状基板9を保持する。基板保持部材51は例えば円盤状基板9の開口に挿入されて円盤状基板9を吊り下げて保持する。基板保持部材51は側面視でV字溝を備えていてい円盤状基板9をV字溝に係止して吊り下げる。
【0041】
ロボットアーム52は少なくとも1軸以上の関節を有するロボットアームである。ロボットアーム52は予め教示された位置及び姿勢へ基板保持部材51を移動させる。
【0042】
3本の線状部材53は、各々の一端が第1板状部材54Aに固定され、各々の他端が第2板状部材54Bに固定される。3本の線状部材53は、第1板状部材54Aと第2板状部材54Bとを直接的に接続するが、基板保持部材51とロボットアーム52の先端とを直接的に接続してもよい。
【0043】
3本の線状部材53は、第1板状部材54Aの主面と、第2板状部材54Bの主面との間で互いに平行に配置される。第1板状部材54Aの主面と、第2板状部材54Bの主面とは互いに平行に配置される。
【0044】
第1板状部材54Aと第2板状部材54Bには、基板保持部材51の固定領域の周辺に3個の固定孔がそれぞれ形成されている。3本の線状部材53の各々の一端は第1板状部材54Aの3個の固定孔に挿入されて固定され、3本の線状部材53の各々の他端は第2板状部材54Bの3個の固定孔に挿入されて固定される。
【0045】
基板保持部材51、第1板状部材54A、及び第2板状部材54Bの材料としては、鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルト、モリブデン、及びタングステン等のいずれかを主成分とする合金を用いることができる。
【0046】
一方、3本の線状部材53はいずれも形状記憶合金で形成されている。形状記憶合金としては、NiTi系合金、NiTiCo系合金、及びNiTiCu系合金等のいずれか一つの材料を使用することができるが、特にNiTi系合金を用いることが好ましい。NiTi系合金を用いる場合には、3本の線状部材53の形状回復温度を20℃~80℃の範囲内とすることが好ましい。
【0047】
3本の線状部材53を斯かる形状記憶合金で形成することにより、基板保持部材51の実際の使用温度が形状記憶合金の形状回復温度の範囲内に含まれるため、基板保持部材51を元の位置に復帰させる効果を得ることできる。なお、基板保持部材51の元の位置とは、基板保持部材51の設計時の初期位置を意味する。
【0048】
線状部材53の長さ、線径、及び本数等は、円盤状基板9の大きさ及び重さに応じて適宜選定することができる。基板着脱ロボット2が、例えば、外径95mm(約3.5インチ)、内径25mm、及び厚さ1mmのアルミニウム合金製の円盤状基板9を同時に2枚保持する場合、NiTi合金では、長さ5mm~30mm、及び線形0.3mm~2mm程度の線状部材53を使用することができる。
【0049】
(基板着脱方法)
基板着脱ロボット2は、基板カセットから成膜対象となる円盤状基板9を取り出し、円盤状基板9をキャリア7へ搬送して、円盤状基板9を基板ホルダ10に取り付ける。また、基板着脱ロボット2は、基板ホルダ10から成膜処理後の円盤状基板9を取り出し、成膜処理後の円盤状基板9を基板カセットへ搬送して、成膜処理後の円盤状基板9を基板カセットに取り付ける。
【0050】
ここで
図7を参照して本開示の基板着脱方法の概略手順について説明する。
図7は一実施形態に係る基板着脱方法の概略手順を示す工程図である。なお、
図7に示す各種工程の順序は限定されるものではない。また工程S10と工程S13は準備工程であるため、基板の着脱時には工程S10と工程S13を毎回行わず、最初に1回限り行えばよい。
【0051】
<工程S10>
まず準備工程として、基板着脱ロボット2の基板保持部材51と、ロボットアーム52の先端とを、形状記憶合金で形成された少なくとも3本の線状部材53により接続する。例えば基板保持部材51を固定する第1板状部材54Aの主面と、ロボットアーム52に固定される第2板状部材54Bの主面とを、形状記憶合金で形成された3本の線状部材53により固定する。つまり基板保持部材51と、ロボットアーム52の先端とを、3本の線状部材53により間接的に接続する。
【0052】
<工程S11>
次に保持工程として、基板着脱ロボット2は円盤状基板9を基板保持部材51により保持可能にする。例えば基板着脱ロボット2は基板保持部材51を円盤状基板9の開口に挿入して基板保持部材51により円盤状基板9を保持可能にする。
【0053】
例えば基板ホルダ10への円盤状基板9の取り付け時は、基板着脱ロボット2が基板カセットにある円盤状基板9の開口に基板保持部材51を挿入して基板保持部材51により円盤状基板9を保持する。一方、基板ホルダ10からの円盤状基板9の取り外し時は、基板着脱ロボット2が基板ホルダ10にある円盤状基板9の開口に基板保持部材51を挿入して基板保持部材51により円盤状基板9を保持可能にする。
【0054】
円盤状基板9の開口への基板保持部材51の挿入時に、基板着脱ロボット2は基板保持部材51が円盤状基板9の開口周辺に接触しないように基板保持部材51を移動させる。しかし、基板保持部材51が円盤状基板9に接触したとしても3本の線状部材が変形することにより接触時の衝撃を吸収するため、円盤状基板9又は基板保持部材51の破損を防止することができる。また3本の線状部材の形状記憶効果により基板保持部材51は元の位置に復帰するため、基板着脱ロボット2による基板保持部材51の位置制御及び姿勢制御が損なわれることもない。
【0055】
<工程S12>
次に着脱工程として、基板着脱ロボット2は基板ホルダ10に対して円盤状基板9の着脱を実行する。
【0056】
基板ホルダ10への円盤状基板9の取り付け時は、基板着脱ロボット2とは異なる別の装置が2本の解除棒を2個の解除孔41にそれぞれ差し込んで下側の2個の支持部材13を下方に押し下げる。基板着脱ロボット2は基板保持部材51により保持された円盤状基板9を基板ホルダ10の孔部12に挿入する。2本の解除棒が別の装置により引き抜かれて支持部材13を元の位置に復帰させることで円盤状基板9を複数の支持部材13により支持させて円盤状基板9を基板ホルダ10に取り付ける。
【0057】
基板ホルダ10からの円盤状基板9の取り外し時は、2本の解除棒が別の装置により差し込まれて支持部材13を下方に押し下げることにより支持部材13による円盤状基板9の支持を解除させる。基板着脱ロボット2は円盤状基板9を基板保持部材51に吊り下げて保持し、円盤状基板9が複数の支持部材13に衝突しないように円盤状基板9を基板ホルダ10から取り出す。
【0058】
基板ホルダ10に対する円盤状基板9の取り付け時及び取り外し時に、基板着脱ロボット2は円盤状基板9が複数の支持部材13又は基板ホルダ10の本体に接触しないように基板保持部材51を移動させる。しかし、円盤状基板9が基板ホルダ10の支持部材13又は本体に接触したとしても3本の線状部材が変形することにより接触時の衝撃を吸収するため、円盤状基板9又は基板ホルダ10の破損を防止することができる。また3本の線状部材の形状記憶効果により基板保持部材51は元の位置に復帰するため、基板着脱ロボット2による基板保持部材51の位置制御及び姿勢制御が損なわれることもない。
【0059】
<工程S13>
また準備工程として、円盤状基板9の着脱時の基板保持部材51の温度を3本の線状部材53を構成する形状記憶合金の形状回復温度の範囲内とする。基板保持部材51の温度制御は、基板着脱ロボット2が存在する基板搬入室又は基板搬出室により行われてもよいし、又はキャリア7が存在する基板装着室又は基板脱着室により行われてもよいし、又は基板着脱ロボット2自体により行われてもよい。
【0060】
円盤状基板9の着脱時の基板保持部材51の温度を形状記憶合金の形状回復温度の範囲内とすることにより、3本の線状部材が変形して各種部品の接触時の衝撃を吸収するだけでなく、基板保持部材51を元の位置に復帰させることが可能になる。ひいては円盤状基板9、基板保持部材51、及び基板ホルダ10等の各種部品の破損を防止することが可能になる。
【0061】
例えば円盤状基板9の着脱時にキャリア7の停止位置がずれて基板ホルダ10の孔部12の位置がずれた場合、基板保持部材51が円盤状基板9の開口周辺に接触したり、又は円盤状基板9が基板ホルダ10に接触したりすることがある。しかし、線状部材53の変形により接触時の衝撃が吸収されて各種部品の破損が防止される。また基板保持部材51は線状部材53の形状記憶効果により元の位置に復帰するため、基板着脱ロボット2による基板保持部材51の位置制御及び姿勢制御が損なわれることもない。
【0062】
対称的に従来技術では、基板着脱時の破損対策として、基板保持部材を弾性変形し易い構造にしたものがあるが、斯かる構造では強度が低下し、基板保持部材が元の位置に復帰しないことがある。
【0063】
また従来技術において基板着脱時にキャリアの停止位置がずれて基板保持部材が円盤状基板の開口周辺に接触したり又は円盤状基板が基板ホルダに接触したり場合には、接触時の衝撃により各種部品が破損し、基板保持部材51が元の位置に復帰しないことがある。
【0064】
(作用効果)
以上の基板着脱ロボット2によれば、基板保持部材51と、ロボットアーム52の先端とを、形状記憶合金で形成された少なくとも3本の線状部材53により接続し、円盤状基板9の着脱時の基板保持部材51の温度を形状記憶合金の形状回復温度の範囲内とする。
【0065】
したがって、基板保持部材51の変位可能な範囲は広く、また、基板保持部材51が線状部材53の形状記憶効果により元の位置に復帰可能である。円盤状基板9が基板ホルダ10の支持部材13に過剰に押し付けられることが抑制され、円盤状基板9の外周端部が支持部材13によって傷付けられることが防止される。
【0066】
また基板保持部材51が円盤状基板9又は基板ホルダ10に偶発的に接触した場合であっても、基板保持部材51は線状部材53の変形により衝撃を吸収し、線状部材53は基板保持部材51を元の位置に復帰させることが可能となる。
【0067】
すなわち、円盤状基板9の着脱時における基板保持部材51の温度を線状部材53の形状回復温度の範囲内とすることにより、線状部材53が形状回復して基板保持部材51を元の位置に復帰させることができる。
【0068】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0069】
例えば本開示の基板着脱ロボットは、ロボットアームの形態に限定されるものではなく、ヒューマノイド等の他の形態のロボットであってもよい。また本開示の成膜装置は、インライン式成膜装置に限定されるものではなく、バッチ式成膜装置等の他の形態の成膜装置であってもよい。また本開示の基板は、磁気記録媒体用の基板に限定されるものではなく、半導体ウエハ用のシリコンウエハであってもよい。
【0070】
また、上述した実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0071】
1…インライン式成膜装置
2…基板着脱ロボット
3…基板カセット移載ロボット
4…コーナー室
5…チャンバ
6…ゲートバルブ
7…キャリア
8…ロボット台
9…円盤状基板
10…基板ホルダ
11…搬送機構
12…孔部
13…支持部材
14…第1側外周端部
15…第2側外周端部
16…第3側外周端部
17…第4側外周端部
41…解除孔
51…基板保持部材
52…ロボットアーム
53…線状部材
54A…第1板状部材
54B…第2板状部材
81…軟磁性層
82…中間層
83…記録磁性層
84…保護層
85…潤滑膜
Z…鉛直方向