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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077410
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189493
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】杉山 龍平
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】吉永 洋
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
(72)【発明者】
【氏名】松田 諒平
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033AA39
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA26
2H033BA27
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BC03
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】揮発性物質の温度上昇に伴う微粒子及び超微粒子の発生を抑制することが可能な加熱装置を提供する。
【解決手段】中空円筒状の回転部材(42)と、回転部材とニップ部を形成する加圧部材(41)と、回転部材の幅方向両端部で回転をガイドする回転ガイド部材(70)と、回転部材の中空内部に配置した加熱源(143)と、加熱源からの輻射熱を回転部材の内周面に向けて反射する反射部材とを備えた加熱装置(40)である。反射部材は、内周面に向けて反射する反射部(48a)と、加圧部材の加圧力を回転部材を介して受ける加圧受け部(48b)とが一体、もしくは熱的に接続されている。反射部材は、反射部の幅方向の少なくとも一方の端部に、幅方向の外側ほど反射面が加熱源に接近するように傾斜した傾斜反射面部(71)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒状の回転部材と、
前記回転部材とニップ部を形成する加圧部材と、
前記回転部材の幅方向両端部で回転をガイドする回転ガイド部材と、
前記回転部材の中空内部に配置した加熱源と、
前記加熱源からの輻射熱を前記回転部材の内周面に向けて反射する反射部材とを備えた加熱装置において、
前記反射部材は、前記内周面に向けて反射する反射部と、前記加圧部材の加圧力を前記回転部材を介して受ける加圧受け部とが一体、もしくは熱的に接続されており、かつ、前記反射部の幅方向の少なくとも一方の端部に、面の法線方向が幅方向で中央側を向くように傾斜した傾斜反射面部を有することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置において、
前記傾斜反射面部の幅方向の位置は加熱対象物の最大幅よりも外側であることを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱装置において、
前記傾斜反射面部の幅方向の位置は前記加熱源の発光強度が最大の50%以下になる位置であることを特徴とする加熱装置。
【請求項4】
請求項1に記載の加熱装置において、
前記反射部材は前記加圧受け部に切り込みを有することを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
請求項4に記載の加熱装置において、
前記反射部材は前記加圧受け部と一体の板材であり、前記切り込みは、前記反射部とは反対側からの切り込みであり、これが拡がるように傾斜した前記反射部の端部が前記傾斜反射面部になっていることを特徴とする加熱装置。
【請求項6】
請求項1に記載の加熱装置において、
前記傾斜反射面部の傾斜角度は30°以下であることを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
請求項1に記載の加熱装置において、
前記加圧受け部は、前記加圧受け部の表面よりも前記回転部材の内周面に対する摺動性が高い摺動部材を介して前記回転部材の内周面に当接することを特徴とする加熱装置。
【請求項8】
請求項1に記載の加熱装置において、
前記加圧受け部は、前記加圧受け部より熱伝導率の高い熱移動部材を介して前記回転部材の内周面に当接することを特徴とする加熱装置。
【請求項9】
中空円筒状の回転部材と、
前記回転部材の内周面に当接して前記回転部材の幅方向の温度を均一化する均熱部材と、
前記回転部材とニップ部を形成する加圧部材と、
前記均熱部材を介して前記加圧部材の加圧力を受けるステー部材と、
前記回転部材の幅方向両端部で回転をガイドする回転ガイド部材と、
前記回転部材の中空内部に配置した加熱源と、
前記加熱源からの輻射熱を前記回転部材の内周面に向けて反射する反射部材とを備えた加熱装置において、
前記反射部材は、前記ステー部材と前記均熱部材との間であって、前記ステー部材が前記均熱部材を介して前記加圧部材の加圧力を受ける領域まで延設されおり、かつ、前記反射部材の幅方向の少なくとも一方の端部に、面の法線方向が幅方向で中央側を向くように傾斜した傾斜反射面部を有することを特徴とする加熱装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一に記載の加熱装置を用いて未定着画像を担持する記録材を加熱し、前記未定着画像を前記記録材に定着させることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項10に記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、中空円筒状の回転部材と、回転部材とニップ部を形成する加圧部材と、回転部材の幅方向両端部で回転をガイドする回転ガイド部材と、回転部材の中空内部に配置した加熱源と、加熱源からの輻射熱を回転部材の内周面に向けて反射する反射部材とを備えた加熱装置が知られている。
例えば特許文献1には係る加熱装置を用いて未定着画像を担持する記録材を加熱し、未定着画像を記録材に定着させる定着装置が記載されている。この定着装置は、反射部材に、加熱源の延長方向長さ、つまり長手方向長さよりも長くなる位置において屈曲させた反射面を設けている。この屈曲させた反射面で反射させて定着ベルト(中空円筒状の回転部材)の幅方向中央に向けて導き、熱源からの輻射熱が保持部材(回転ガイド部材)に向けて不用意に出射されて異常加熱されることによる変形を防止できるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
定着装置などの加熱装置においては、回転部材の回転を円滑に行えるようにするため、一般的にオイルまたはグリースなどの潤滑剤が用いられている。また、このような潤滑剤は、装置内に設けられる加熱源の熱などにより温度上昇すると揮発するため、潤滑剤の揮発に伴って潤滑剤中に含まれるシロキサンなどの微粒子が排出される。
【0004】
近年、製品から排出される微粒子(粒径が100[nm]~2500[nm]の粒子)に関する規制が強化されてきており、例えば、ドイツのブルーエンジェル規格においては、粒径が5.6[nm]~560[nm]の微粒子及び超微粒子の発生個数(個/10分)についての基準値が定められている。そのため、潤滑剤などの揮発性物質に含まれる微粒子及び超微粒子の発生を効果的に抑制する対策が求められている。
【0005】
上記特許文献1においては、回転部材の非通紙領域における過剰な温度上昇を抑制する方法については提案されているが、揮発性物質の温度上昇に伴う微粒子及び超微粒子の発生を抑制することについての記載はない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、中空円筒状の回転部材と、前記回転部材とニップ部を形成する加圧部材と、前記回転部材の幅方向両端部で回転をガイドする回転ガイド部材と、前記回転部材の中空内部に配置した加熱源と、前記加熱源からの輻射熱を前記回転部材の内周面に向けて反射する反射部材とを備えた加熱装置において、前記反射部材の幅方向の少なくとも一方の端部の反射面は外側ほど加熱源に接近するように傾斜した傾斜反射面部を有し、前記反射部材は、前記内周面に向けて反射する反射部と、前記加圧部材の加圧力を前記回転部材を介して受ける加圧受け部とが一体、もしくは熱的に接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、揮発性物質の温度上昇に伴う微粒子及び超微粒子の発生を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の画像形成装置の概略構成図。
図2】本実施形態における定着装置の概略構成図。
図3】フランジの配置を示す斜視図。
図4】リフレクタとニップ形成部材と定着ステーとを示す斜視図。
図5】熱の主要な流れの説明図。
図6】潤滑剤の温度と微粒子及び超微粒子の発生濃度との関係を示すグラフ。
図7】リフレクタの端部構造の説明図。
図8】フランジの温度変化を示すグラフ。
図9】熱源の発光強度の説明図。
図10】切り込みの有無による熱移動の相違の説明図。
図11】従来の定着装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[画像形成装置の概略構成]
以下、本発明を、電子写真式の画像形成装置であるレーザープリンタ(以下、「プリンタ」という。)に適用した実施形態について説明する。図1は本実施形態の画像形成装置1の概略構成図である。この画像形成装置1は、記録材である用紙P上に画像を形成する画像形成部100を備えている。画像形成部100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の色ごとの作像部10Y,10M,10C,10Kが中間転写体としての中間転写ベルト20の回転方向に沿って配列されたタンデム型の画像形成装置である。各作像部10Y,10M,10C,10Kは、それぞれ、潜像担持体としての感光体11Y,11M,11C,11Kを備えている。
【0010】
また、各作像部10Y,10M,10C,10Kは、感光体11Y,11M,11C,11Kの周囲に、帯電手段としての帯電装置と、静電潜像形成手段としての光書込装置9と、現像手段としての現像装置とを備えている。さらに、感光体11Y,11M,11C,11Kの周囲には、一次転写手段としての一次転写装置と、クリーニング手段としてのクリーニング装置も備えている。帯電装置は、感光体表面を一様に所定電位に帯電するものであり、光書込装置9は、帯電装置によって一様に帯電された感光体表面上に画像情報に応じて露光して静電潜像を書き込むものである。現像装置は、感光体上の静電潜像にそれぞれの色(Y、M、C、K)のトナーを付着させる現像処理によりトナー像を作成するものである。一次転写装置は、感光体上のトナー像を中間転写ベルト20上に転写するものであり、クリーニング装置は、感光体上の転写残トナーを除去してクリーニングするものである。
【0011】
各感光体11Y,11M,11C,11K上に形成された各色トナー像は、一次転写装置によって、中間転写ベルト20上に互いに重なり合うように一次転写され、中間転写ベルト20上にカラートナー像が形成される。中間転写ベルト20上のカラートナー像は、中間転写ベルト20の回転に伴って二次転写装置30との対向領域(二次転写領域)へと搬送される。
【0012】
一方、画像形成部100の下部には、保持する用紙Pを給送する給送部としての給紙カセット60が配置されている。給紙カセット60からピックアップローラ61により用紙Pが1枚ずつ給紙される。そして、搬送経路に沿って、レジストローラ対62により二次転写領域へと用紙Pが搬送される。
【0013】
中間転写ベルト20上のカラートナー像は、二次転写領域において、所定のタイミングでレジストローラ対62により搬送されてくる用紙P上に、二次転写装置30により二次転写される。カラートナー像が形成された用紙Pは、その後、定着手段としての定着装置40へと搬送され、熱と圧力の作用により、カラートナー像が用紙P上に定着される。定着後の用紙Pは、搬送経路に沿って搬送され、排紙ローラ63により排紙トレイ50へと排出される。
【0014】
[定着装置の概略構成]
図2は本実施形態における定着装置40の概略構成図であり、図3は斜視図である。図2に示すように、定着装置40は、加圧部材たる加圧ローラ41と、中空円筒状の回転部材であるとともに定着部材である定着ベルト42と、熱源43(図の例ではハロゲンヒータ)とを備え、加熱加圧によって定着を行う。定着ベルト42内には、ステー部材たる定着ステー44によって保持されたニップ形成部材45が配置されている。定着ベルト42は図3に示すように、両端部でガイド部材たるフランジ部材70により回転ガイドされるとともに保持される。
【0015】
図3に示すフランジ部材70は、定着ベルト42の長手方向端部内に挿入される断面C字状の挿入部70aと、挿入部70aよりも大きい外径に形成された規制部70bと、定着装置の側板に固定される固定部70cを有している。
【0016】
図2において、ニップ形成部材45は、ニップ面に配置される摺動部材であり熱移動部材である均熱部材45aと、これを支持する樹脂パッド45bとで構成されている。樹脂パッド45bの役割のひとつは、断熱であり、ニップ形成部材45を介した定着ステー44への定着ベルト42の熱吸収を抑制してウォームアップタイムやTEC値の増加を抑制する。均熱部材45aは定着ベルト42の幅方向に延在する例えばパット形状である。この均熱部材45aは定着ベルトの軸方向の温度を平均化するために配置される。すなわち、定着ベルト42の温度が高い箇所から熱を奪い、奪った熱を定着ベルト42の温度の低い箇所へ移動させて定着ベルト42の軸方向の温度を均一化する。
【0017】
図2の構成ではニップ部の形状は平坦であるが、凹形状やその他の形状であってもよい。凹形状のニップを形成することで、用紙先端の排出方向がより加圧ローラ寄りになり、用紙の定着ベルト42に対する分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される。
【0018】
均熱部材45aは、熱伝導率が50[W/m・K]以上の熱伝導性の高いアルミや銅などの金属部材であり、均熱部材45aの表面に摺動性能に優れたコーティングが施されている。コーティングの材料としては、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、または飽和ポリエステル樹脂などの樹脂ベースのものが挙げられる。 または、このような樹脂ベースのコーティング材に、ガラス繊維,カーボン,グラファイト,フッ化グラファイト,炭素繊維,二硫化モリブデン,フッ素樹脂など混合してもよい。
【0019】
また、コーティングの材料として、金属ベースのものも用いることができる。金属ベースのコーティング材としては、二硫化モリブデン,ニッケル,ニッケルとフッ素樹脂の複合めっきなどが挙げられる。また、金属ベースのコーティング材としては、アルマイトもしくはアルマイトに樹脂や金属を含浸したものも挙げられる。また、コーティング材としてセラミックを用いることもできる。コーティング材として用いるセラミックとしては、炭化ケイ素セラミック、室化ケイ素セラミック、アルミナセラミックおよびそれらと二硫化モリブデン、フッ素樹脂など混合したものを挙げることができる。
【0020】
また、アルミニウムもしくはアルミニウム合金にて形成された均熱部材45aの表層にアルマイト層を形成し、そのアルマイト層の微細孔に二次電解にて生成した二硫化モリブデンを微細孔の最深部から最表層に亘って充填したものなども有効である。
【0021】
加圧ローラ41は金属ローラの外周にシリコーンゴム層が設けられており、離型性を得るためにシリコーンゴム層の表面に離型層(PFAまたはPTFE層)が設けてある。また、加圧ローラ41はスプリングなどにより定着ベルト側に押し付けられており、ゴム層が押しつぶされて変形することにより、所定のニップ幅を有している。
【0022】
加圧ローラ41は画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。定着ベルト42は、ニップ部で加圧ローラ41から駆動力が伝達されることにより連れ回り回転する。
【0023】
加圧ローラ41は中実のローラであってもよいが、中空のほうが熱容量は少ないため好ましい。また、加圧ローラ41にハロゲンヒータなどの加熱源を有していてもよい。シリコーンゴム層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルトの熱が奪われにくくなるので、より好ましい。
【0024】
定着ベルト42は、ニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を基材とする無端ベルト(もしくはフィルム)である。定着ベルト42の表層はPFAまたはPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性をもたせている。
【0025】
定着ベルト42の基材と離型層の間にはシリコーンゴムの層などで形成する弾性層があってもよい。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押しつぶして定着するときにベルト表面の微妙な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の跡が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微妙な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0026】
定着ステー44は、中空のパイプ状金属体であり、アルミ、または鉄、ステンレスなどの金属からなる。本実施形態では、定着ステー44は、角型であるが、その他の断面形状であってもよい。加圧ローラ41により圧力を受けるニップ形成部材45の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅が得られるようにしている。
【0027】
定着ベルト42を昇温させる熱源は、定着ベルト42の内部に2つ設けられている。本実施形態では熱源43は、ハロゲンヒータであり、定着ベルト42は、内周側から熱源43の輻射熱で直接加熱される。ここで、熱源43は、定着ベルト42を輻射で加熱できればよくカーボンヒータ等であってもよい。
【0028】
また、定着ベルト42内には、熱源43からの輻射熱のロスをできるかぎり低減するために、定着ベルト側へ熱を反射させる反射部材としてのリフレクタ48が配置されている。リフレクタ48には金属部材としての高純度のアルミ材をベースとして表層に複数の増反射膜や保護膜を形成した高輝度アルミなどが用いられる。また構成によってはアルミ板の上に銀を蒸着させて、さらに反射率を向上させたものなどを用いてもよい。
【0029】
[リフレクタの加圧受け部]
本実施形態のリフレクタ48は、輻射熱を定着ベルト側へ熱を反射させる反射部48aと、加圧ローラ41の加圧力を受ける加圧受け部48bとを有している。反射部48aは、熱源43と定着ステー44との間に配置されている。加圧受け部48bは、摺動部材たる均熱部材45aと樹脂パッド45bとに挟まれる形で配設されている。
【0030】
図4は、リフレクタ48とニップ形成部材45と、定着ステー44とを示す斜視図である。リフレクタ48は、加圧受け部48bが均熱部材45aと樹脂パッド45bとに挟まれることで保持され、この加圧受け部48b以外は、他の部材と非接触となっている。
【0031】
図11は、従来の定着装置の概略構成図である。従来、リフレクタ148は加圧受け部48bを有していない構成であった。リフレクタ148の反射率は、約95~98%である。反射率は分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製の紫外可視赤外分光光度計UH4150)を用いて測定し、測定時の入射角は5°である。熱源143の輻射熱を100%反射できるわけでなく、リフレクタ自身も数%は輻射熱を吸収するため、次第に温度上昇していく。特に、大量の連続通紙を行った場合などは、図11に示す従来の定着装置においては、300℃~400℃程度までリフレクタ148が温度上昇していた。リフレクタ148にある一定以上の熱負荷が加えられるとリフレクタ148のアルミや銀層が変色を起こしてしまう。そうなると反射率が低下して本来の性能を出せないだけでなく、熱負荷の課題は安全の観点からも好ましくない。よって従来はその温度域まで到達しないような生産性までしか出すことはできず、マシンの生産性向上に対してはボトルネックとなっていた。
【0032】
これに対し、本実施形態では、図2図4を用いて説明したように、リフレクタ48は、均熱部材45aと樹脂パッド45bとの間で、加圧ローラ41からの加圧力を受ける領域に延在された加圧受け部48bを有している。リフレクタ48は、上述したように熱伝導性の良い金属部材としてのアルミで構成されているため、反射部48aで吸収された熱は、すばやく部品全体に伝導する。そして、均熱部材45aと接触している加圧受け部48bから、均熱部材45aへリフレクタ48の熱が移動し、リフレクタ48の温度上昇を抑制することができる。
【0033】
図5は熱の主要な流れを矢印で示した説明図である。この均熱部材45aへ移動したリフレクタ48の熱は、均熱部材45aを通して定着ベルト42に伝わり、トナー溶融に利用される。これにより、リフレクタ48の熱を定着ステー44などの他の部材へ排熱する場合に比べて、リフレクタ48の熱を有効利用でき、熱源43の点灯時間の短縮化を図ることができ、消費電力の低減を図ることができる。
【0034】
また、加圧受け部48bは、加圧ローラ41の加圧力を受ける加圧領域に位置している。これにより、均熱部材45aと加圧受け部48bとの密着性が上がり、熱の伝達性を向上させることができ、リフレクタ48の排熱効率を高めることができる。さらに、均熱部材45aおよびリフレクタ48は、熱伝導性が良好な金属部材であるため、リフレクタ48の熱を効率よく、定着ベルト42に排熱することができる。
【0035】
また、図2図4に示すように、均熱部材45aの曲げ部分、および、定着ステー44とは、クリアランスを設けて、非接触となっている。これによって、熱の有効利用の観点では不要となる均熱パッドの曲げ部分や定着ステーへの熱伝達を防止することができる。
【0036】
以上の構成により、リフレクタ48の温度上昇を防止し、かつ、リフレクタ48の熱を有効利用でき、電力消費も抑えることができる定着装置を得ることができる。
【0037】
また、均熱部材45aは、上述したように摺動性能に優れたコーティングを施しており、加圧受け部48b表面の定着ベルト42の内周面に対する摩擦係数より、定着ベルト42の内周面に対する摩擦係数が低くなるようにしている。これにより、リフレクタ48の加圧受け部48bを定着ベルト42の内周面に接触させてリフレクタ48の熱を、均熱部材45aを介さずに定着ベルト42に排熱する場合に比べて、定着ベルトの摺動抵抗を低減できる。これにより、定着ベルト42を回転させるためのトルクの上昇を抑制することができ、かつ、定着ベルト42の内周面の摩耗も抑制できる。
【0038】
なお、リフレクタ48の加圧受け部48bに摺動性能に優れたコーティングを施して、加圧受け部48bを定着ベルト42の内周面に接触させるようにした場合は、以下の不具合が予測される。すなわち、上記摺動性能に優れたコーティング材が、リフレクタ48の反射部48aに付着すると、反射率が低下するおそれがある。そのため、例えば、反射部48aにマスキング等を施すなどして、反射部48aに摺動性能に優れたコーティング材が付着しないようにする必要がある。反射部48aにマスキングを施す場合は、マスキングを施す工程、マスキングを剥がす工程、反射部48aに付着したマスキングの粘着剤を除去する工程等が必要となる。また、これらの工程を機械等で行うには、難易度が高く、できたとしても高コストになるという不具合が予想される。
【0039】
一方、本実施形態のように、リフレクタ48の熱を、均熱部材45aを介して、定着ベルト42に伝達することで、リフレクタ48に定着ベルト42の内周面に対する良好な摺動性を有する機能を備える必要が無くなる。これにより、加圧受け部48bに摺動性能に優れたコーティングを施す必要がなくなり、製作難度およびコストの増加を抑制できる。
【0040】
[リフレクタの傾斜反射面部]
そして、本実施形態のリフレクタ48は、反射部48aの幅方向の少なくとも一方の端部に、面の法線方向が幅方向で中央側を向くように傾斜した傾斜反射面部を有する。ここで幅方向とは定着ベルト42の移動方向に直交する方であり、熱源143の長手方向である。まず、この傾斜反射面部を設けることになった背景について説明する。
【0041】
ベルト方式の定着装置では、ニップ形成部材45及びフランジ部材70などの定着ベルト42との摺動部材と定着ベルト42の摺動性を向上させるため、一般的に、シリコーンオイルまたはフッ素グリースなどの潤滑剤が、摺動部材と定着ベルト42の内面との間に介在するよう塗布等されている。しかしながら、このような潤滑剤は、定着装置の温度上昇に伴い揮発すると、潤滑剤中に含まれるシロキサンなどの微粒子及び超微粒子(以下、「FP/UFP」という。)が発生するため、定着装置からFP/UFPが放出される虞がある。
【0042】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、製品から放出されるFP/UFPの発生を抑制する対策が望まれており、画像形成装置においてもFP/UFPの発生が少ない製品の開発が求められている。
【0043】
そこで、本発明者らは、定着装置からのFP/UFPの発生を抑制する対策を検討するにあたって、まず、潤滑剤として用いられるシリコーンオイル及びフッ素グリースの温度上昇と、これらの潤滑剤から生じるFP/UFPの発生濃度(1cmあたりのFP/UFPの発生個数)との関係を調べる試験を行った。その結果を、図6に示す。
【0044】
本試験は、ドイツ環境ラベル「ブルーエンジェルマーク」の認証試験所に設置される試験装置(容積1m3で、換気回数5回のチャンバー)内において、潤滑剤を入れたシャーレをホットプレート上に載置して250℃まで加熱し、ホットプレートの温度をモニターしながら、ブルーエンジェル規格において規定される粒径が5.6[nm]~560[nm]のFP/UFPの発生濃度を測定することにより行った。FP/UFPの発生濃度は、粒子計測器FMPS(東京ダイレック社製のモデル3091 Fast Mobility Sizer)を用いて測定した。潤滑剤としては、フッ素グリース:70[mg]と、シリコーンオイル:35[mg]を用いた。図6における実線が、フッ素グリースから生じるFP/UFPの発生濃度を示し、同図中の一点鎖線が、シリコーンオイルから生じるFP/UFPの発生濃度を示す。また、図6においては、横軸にホットプレートの温度が示されているが、ホットプレートの温度上昇と潤滑剤の温度上昇はほぼ同期して変化するため、ここでは、ホットプレートの温度を潤滑剤の温度とみなす。
【0045】
図6の実線にて示されるフッ素グリースにおいては、温度が185℃に達したあたりからFP/UFPが発生し始め、温度が195℃を超えたあたりから発生するFP/UFPの濃度が急激に上昇した。一点鎖線にて示されるシリコーンオイルにおいては、温度が200℃に達したあたりからFP/UFPが発生し始め、温度が210℃を超えたあたりから発生するFP/UFPの濃度が急激に上昇した。
【0046】
このように、フッ素グリースにおいては温度が185℃に達するとFP/UFPが発生し、シリコーンオイルにおいては温度が200℃に達するとFP/UFPが発生することから、200℃を超える温度となり得る定着装置においては、潤滑剤が揮発してFP/UFPが発生する虞がある。したがって、このようなFP/UFPを効果的に低減するには、FP/UFPが発生しやすい部分の温度上昇を抑制することが重要である。
【0047】
しかしながら、これまで、FP/UFPが定着装置のどの部分から多く発生しているかについて特定できていなかった。そのため、本発明者らは、FP/UFPの主な発生源についての鋭意検討を行い、その結果、主にフランジ部材70に付着する潤滑剤から多くのFP/UFPが発生することが分かった。フランジ部材70の温度上昇によって潤滑剤が温められると、潤滑剤の一部の成分が高温のガスとして揮発し、そのガスが冷却されて凝結することによりFP/UFPになると考えられる。なお、FP/UFPが発生する200°Cといった温度は、特許文献1で屈曲させた反射面を採用する保持部材の変形を起こさせる温度よりも格段に低い。保持部材の一般的な材質である樹脂製の場合の変形する温度は300°C程度ある。
【0048】
そこで、本実施形態のリフレクタ48の反射部48aの幅方向の少なくとも一方の端部に、面の法線方向が幅方向で中央側を向くように傾斜した傾斜反射面部を形成し、フランジ部材70の温度上昇をFP/UFPが発生しない範囲に抑えるようにした。
【0049】
図7(a)は傾斜反射面部を幅方向の両端側に設けたリフレクタ48の斜視図、図7(b)は、幅方向に沿って切断した定着ベルトの端部側の断面図である。図7(a)に示すように、このリフレクタ48は板材からなり、幅方向の端部に傾斜反射面部を形成するため、幅方向の外縁から幅方向に延びる切り込みS1、S2を形成し、定着ベルト42の内周面に対向する面の折り目OR1~OR3を谷折りにしている。
【0050】
反射部48aにおける折り目OR1~OR3から幅方向外側の端部までの領域が傾斜反射面部71になる(図7(b)参照)。加圧受け部48bから屈曲部49を介して連なる反射部48aの部分に折り目OR1を形成するため加圧受け部48bは、屈曲部49に向けて直交する切り込みS3を有する。この切り込みS3は折り目OR1を谷折りすることで開いている。
【0051】
リフレクタ48では、図7(b)に示すようにこの折り目OR1~0R3により折り目から幅方向端部までの傾斜反射面部71が幅方向の中央側(内側)に向かう角度θの傾斜がつく。この傾斜を持たせるのはリフレクタ48端部に照射された輻射光がフランジ部材70に反射されることを抑制するためである。従来の傾斜が付けられていないリフレクタ48では、端部で反射された輻射光がフランジ部材70へと照射されフランジ部材70の温度が上昇していた。図7(b)には輻射光を模式的に示している。傾斜反射面部71からの反射光は細い破線で示している。
【0052】
加圧受け部48bから屈曲部49を介して連なる反射部48aの部分の折り目OR1より外側の箇所は、図2に示すように均熱部材45aで覆う場合には、この均熱部材45aの両端部にも面の法線方向が幅方向で中央側を向くように傾斜した傾斜反射面部を形成するか、また、両端部のみ切り欠いて反射部48aを露出させるか、する。
【0053】
図8はフランジ部材70の温度を本実施形態のリフレクタ48の端部での傾斜ありと従来構成の傾斜なしで比較した例である。傾斜ありが実線、傾斜なしが破線である。傾斜をつけることによってFP/UFPの発生量が増加する180℃よりもフランジ部材70の温度を抑制することが可能となる。画像形成装置から発生するFP/UFPの量を減らすことは、画像形成装置がブルーエンジェルマークというエコラベル制度の認証を受けるために必要である。ブルーエンジェルマークの認証を受けていない製品であっても、販売ができなくなるわけではないが、認証を受けていないと言うことは、環境へ配慮されていない製品と受け取られることが多く、特に公官庁においてその傾向が強い。そのため、ブルーエンジェルマークの認証があるかないかでは、製品の販売に大きな影響を与えてしまう。したがって、フランジ部材70の温度上昇を抑制しFP/UFPの発生量を低減することが重要となる。
【0054】
リフレクタ48に傾斜をつける位置(板材であれば折り目OR1~OR3を付ける位置)は、その定着装置で通紙される最大紙幅よりも外側であることが好ましい。最大紙幅よりも外側で傾斜をつけることにより、最大紙幅の用紙が通紙された際も用紙へのトナー定着性に影響を与えずに済む。
【0055】
また、傾斜の角度θは30°以下であることが好ましい。傾斜が急になると、傾斜反射面部71で反射された輻射熱が定着ベルト42の長手方向中央付近に照射される。定着装置の温度制御は定着ベルト中央付近の温度をセンサで検出して制御することが一般的であるため、定着ベルト中央付近に輻射光が集中して中央付近だけ定着ベルト温度が上昇すると、相対的に定着ベルト端部温度が低下して用紙端部でのトナーオフセットを引き起こす可能性がある。
【0056】
傾斜をつけるさらに好ましい位置は図9に示すように対向する熱源143の発光強度が長手方向の最大値に対して50%以下となる位置である。発光強度が弱い位置から傾斜をつけることで、傾斜反射面部71部で反射された輻射光が定着ベルト42に照射されても定着ベルト42の局所的な温度上昇が発生しづらくなり、定着ベルト42の長手方向の温度均一性が保たれる。
【0057】
上述したようにリフレクタ48の端部で傾斜をつけることにより、フランジ部材70の温度上昇を抑制することが可能となるが、一方で傾斜反射面部71で熱源143とリフレクタ48の距離が近くなることにより、リフレクタ48に吸収される輻射熱が多くなり、リフレクタ48の温度上昇が懸念される。しかし、本実施形態では図2図5を用いて説明したように、リフレクタ48に吸収された輻射熱はリフレクタ48の加圧受け部48bを通して均熱部材45a、定着ベルト42へと伝わる。伝わった熱はトナー溶融に活用されるため、リフレクタ48の温度は従来構成よりも低くなる。したがって、リフレクタ48端部に傾斜をつけてもリフレクタ48の温度は従来構成ほどは上昇せず、リフレクタ48変色のリスクを回避できる。
【0058】
以上により、本実施形態ではフランジ部材70の温度上昇を抑制しつつ、リフレクタ48の過度な温度上昇抑制も両立可能である。
【0059】
[加圧受け部の切り込みの作用効果]
本実施形態では、上述したように加圧受け部48bと均熱部材45aとにより定着ベルト42の温度が高い箇所から熱を奪い、奪った熱を定着ベルト42の温度の低い箇所へ移動させて定着ベルト42の軸方向の温度を均一化する。これにより、小サイズ紙を連続給紙時に用紙に熱を奪われない定着ベルトの端部側の非通紙領域の熱を加圧受け部48bと均熱部材45aとを用いて軸方向中央側の通紙領域へ移動させることができ、定着ベルト21の非通紙領域の異常高温を抑制している。
【0060】
しかし、高温の非通紙領域の熱が、加圧受け部48bと均熱部材45aとにより通紙領域へ移動することで、定着ベルト42の通紙領域の端部付近が定着温度よりも高くなってしまう。その結果、用紙の端部領域の画像にホットオフセット(以下、端部ホットオフセットという)が発生するおそれがある。
【0061】
図10(a)は、加圧受け部48bに切り込みS3が無い場合の熱移動と、定着ベルト42の温度分布とを示す図であり、図10(b)は、用紙の幅方向エッジに付近に切り込みS3を設けた場合の熱移動と定着ベルト42の温度分布とを示す図である。
図10(a1)に示すように、用紙の幅方向エッジに付近に切り込みS3がない場合は、均熱部材45aを介してリフレクタ48の加圧受け部48bへ移動した定着ベルト42の非通紙領域の熱の一部は、通紙領域の端部付近で、均熱部材45aを介して、定着ベルト42の通紙領域の端部付近へと移動する。その結果、図10(a2)に示すように、定着ベルト42の通紙領域の端部付近の温度が高くなり、端部ホットオフセットが発生するおそれがある。
【0062】
一方、加圧受け部48bに切り込みS3を設けた場合は、均熱部材45aを介して加圧受け部48bへ移動してきた定着ベルト42の熱は、図10(b1)に示すように、切り込みを迂回して軸方向へ移動する。具体的には、均熱部材45aを介してリフレクタ48の加圧受け部48bへ移動した定着ベルト42の非通紙領域の熱の一部は、切り込みS3まで移動すると、用紙の搬送方向へと移動する。切り込みS3まで移動した熱は、リフレクタ48の反射部48aと加圧受け部48bとを接続する接続部へ移動し、切り込みS3を回り込んだ後に、再び加圧受け部48bへと移動する。そして、加圧受け部48bへ移動してきた熱の一部が、均熱部材45aを介して定着ベルト42へと戻る。
【0063】
このように、用紙の幅方向エッジに付近に設けた切り込みS3を迂回した熱は、定着ベルト42の通紙領域の端部からXmm内側で、均熱部材45aを介して定着ベルト42へ戻される。このように、均熱部材45aを介して加圧受け部48bへ移動してきた定着ベルト42の軸方向端部の熱の一部は、切り込みS3を迂回することで、定着ベルト42の通紙領域の端部からXmm内側へ移動する。よって、加圧受け部48bを介して、定着ベルト42の通紙領域の端部付近へ戻される非通紙領域の熱を低減することができ、図10(b2)に示すように、定着ベルト42の通紙領域端部付近の温度上昇を抑えることができる。この折り目OR1を形成するための切り込みS3とは別に用紙の幅方向サイズに応じた切り込みを設けることで、端部ホットオフセットを抑えることもできる。
【0064】
なお、製造コストが高くなるおそれがあるが、リフレクタ48の加圧受け部48bを直接、定着ベルト42の内周面に当接させてもよい。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、本発明の加熱装置は、定着装置ではなく、画像形成装置の他の加熱用の装置に適用したり、画像形成装置以外の加熱用の装置に適用したりできる。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0066】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。態様の記載において構成名の後の括弧書きの符号は対応する部材の一例のものでありこの部材例に限られるものではない。
【0067】
(態様1)
中空円筒状の回転部材(42)と、回転部材とニップ部を形成する加圧部材(41)と、回転部材の幅方向両端部で回転をガイドする回転ガイド部材(70)と、回転部材の中空内部に配置した加熱源(143)と、加熱源からの輻射熱を回転部材の内周面に向けて反射する反射部材とを備えた加熱装置(40)において、反射部材は、内周面に向けて反射する反射部(48a)と、加圧部材の加圧力を回転部材を介して受ける加圧受け部(48b)とが一体、もしくは熱的に接続されており、かつ、反射部の幅方向の少なくとも一方の端部に、幅方向の外側ほど反射面が加熱源に接近するように傾斜した傾斜反射面部(71)を有する。これによれば、実施形態で説明したように、揮発性物質の温度上昇に伴う微粒子及び超微粒子の発生を抑制することが可能になる。
【0068】
(態様2)
態様1に記載の加熱装置において、傾斜反射面部の幅方向の位置(OR1~OR3)は加熱対象物(P)の最大幅よりも外側である。これによれば、加熱対象の最大幅よりも外側で反射部材に傾斜をつけることで、加熱対象幅内の回転部材の温度に悪影響を及ぼさないようできる。
【0069】
(態様3)
態様1または2に記載の加熱装置において、傾斜反射面部の幅方向の位置は加熱源の発光強度が最大の50%以下になる位置である。これによれば、傾斜反射面部で反射された輻射光が回転部材の内側に照射された際に、照射部での局所的な回転部材の温度上昇を抑制できる。
【0070】
(態様4)
態様1乃至3の何れか一に記載の加熱装置において、反射部材は加圧受け部に切り込み(S3)を有する。これによれば、切れ込みを設けることによって反射部における屈曲部(49)を介して加圧受け部に連なる部分を内側に向かって傾斜させることが可能となる。
【0071】
(態様5)
態様4に記載の加熱装置において、反射部材は加圧受け部と一体の板材であり、切り込みは、反射部とは反対側からの切り込みであり、これが拡がるように傾斜した反射部の端部が傾斜反射面部になっている。反射部材における屈曲部を介して加圧受け部に連なる部分の一部は熱源からの輻射光が当たるため、この部分も内側に向けて傾斜をつけることで、よりフランジ部材の温度を低減可能となる。
【0072】
(態様6)
態様1乃至5の何れか一に記載の加熱装置において、傾斜反射面部の傾斜角度(θ)は30°以下である。これによれば、実施形態で説明したように、回転部材の幅方向の中央付近に輻射光が集中して中央付近だけ回転部材の温度が上昇することによる不具合を回避できる。
【0073】
(態様7)
態様1乃至6の何れか一に記載の加熱装置において、加圧受け部は、加圧受け部の表面よりも回転部材の内周面に対する摺動性が高い摺動部材(45a)を介して回転部材の内周面に当接する。これによれば、回転部材の駆動トルクの増大を回避できる。
【0074】
(態様8)
態様1乃至7の何れか一に記載の加熱装置において、加圧受け部は、加圧受け部より熱伝導率の高い熱移動部材(45a)を介して回転部材の内周面に当接する。これによれば、加圧受け部から伝達された反射部材の熱を、効率よく回転部材へ排熱することができる。また、熱移動部材により回転部材の幅方向における熱量が多い箇所(温度が高い箇所)から熱を奪い、熱量が少ない箇所(温度が低い箇所)へ熱を付与することができ、回転部材の幅方向の温度の均一化を図ることができる。さらに、熱移動部材の回転部材の内周面に当接する当接面に低摩擦材などのコーティングを施せば、回転部材を回転させるための回転トルクを低減することができる。これにより、反射部材の加圧受け部に低摩擦材などのコーティングを施して加圧受け部を直接、回転部材の内周面に当接させるものに比べて、抵コストで回転部材を回転させるための回転トルクを低減することができる。
【0075】
(態様9)
中空円筒状の回転部材(42)と、回転部材の内周面に当接して回転部材の幅方向の温度を均一化する均熱部材(45a)と、回転部材とニップ部を形成する加圧部材(41)と、均熱部材を介して加圧部材の加圧力を受けるステー部材(44)と、回転部材の幅方向両端部で回転をガイドする回転ガイド部材(70)と、回転部材の中空内部に配置した加熱源(143)と、加熱源からの輻射熱を回転部材の内周面に向けて反射する反射部材とを備えた加熱装置において、反射部材は、ステー部材と均熱部材との間であって、ステー部材が均熱部材を介して加圧部材の加圧力を受ける領域まで延設されおり、かつ、反射部材の幅方向の少なくとも一方の端部に、幅方向の外側ほど反射面が加熱源に接近するように傾斜した傾斜反射面部(71)を有する。
【0076】
これによれば、加圧部材の加圧力により均熱部材と反射部材とを良好に密着させることができ、熱の伝達性を向上することができる。これにより、反射部材の熱を均熱部材を介して良好に回転部材に排熱することができ、反射部材の温度上昇を抑制し、かつ、反射部材の熱を回転部材の加熱に利用することができる。これにより、反射部材の熱をステー部材などの他の部材へ排熱する場合に比べて、反射部材の熱を有効利用でき、熱源の点灯時間の短縮化を図ることができ、消費電力の低減を図ることができる。また、反射部材が直接回転部材に当接するものに比べて、回転部材の回転部材を回転させるための回転トルクの上昇を抑制することができる。そして、揮発性物質の温度上昇に伴う微粒子及び超微粒子の発生を抑制することが可能になる。
【0077】
(態様10及び11)
態様1乃至9の何れか一に記載の加熱装置を用いて未定着画像を担持する記録材を加熱し、未定着画像を記録材に定着させる定着装置(40)および、これを備えた画像形成装置(1)によれば、態様1~9について記載した作用効果を奏する定着装置および画像形成装置を提供できる。
【符号の説明】
【0078】
1 :画像形成装置
9 :光書込装置
10 :作像部
11 :感光体
20 :中間転写ベルト
21 :定着ベルト
30 :二次転写装置
40 :定着装置
41 :加圧ローラ
42 :定着ベルト
43 :熱源
44 :定着ステー
45 :ニップ形成部材
45a :均熱部材
45b :樹脂パッド
48 :リフレクタ
48a :反射部
48b :加圧受け部
49 :屈曲部
50 :排紙トレイ
60 :給紙カセット
61 :ピックアップローラ
62 :レジストローラ対
63 :排紙ローラ
70 :フランジ部材
70a :挿入部
70b :規制部
70c :固定部
71 :傾斜反射面部
100 :画像形成部
143 :熱源
148 :リフレクタ
OR1 :折り目
OR2 :折り目
OR3 :折り目
P :用紙
S1 :切り込み
S2 :切り込み
S3 :切り込み
θ :角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特開2013-178511号公報
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
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