(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077530
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】液体物性測定装置、液体物性測定システム、液体物性測定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 11/06 20060101AFI20240531BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240531BHJP
G01N 13/02 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G01N11/06 Z
B41J2/01 451
B41J2/01 501
G01N13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189666
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 秀二
(72)【発明者】
【氏名】田熊 健一
(72)【発明者】
【氏名】小橋川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】外川 博都
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB06
2C056EB32
(57)【要約】
【課題】液体物性を確実に測定し、装置の大型化および高価格化を抑制することができる液体物性測定装置、液体物性測定システム、液体物性測定方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】ノズルから吐出される液体が前記ノズルの吐出口から離脱するまでの伸長挙動についての特徴量を算出する第1算出部と、前記第1算出部により算出された前記特徴量に基づいて、前記液体の液体物性を算出する第2算出部と、を備えた液体物性測定装置である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから吐出される液体が前記ノズルの吐出口から離脱するまでの伸長挙動についての特徴量を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により算出された前記特徴量に基づいて、前記液体の液体物性を算出する第2算出部と、
を備えた液体物性測定装置。
【請求項2】
前記第1算出部は、前記ノズルから吐出される前記液体が撮像装置により撮像された撮像画像に基づいて、前記特徴量を算出する請求項1に記載の液体物性測定装置。
【請求項3】
前記第2算出部は、前記特徴量と前記液体物性との相関性に基づいて、該液体物性を算出する請求項1に記載の液体物性測定装置。
【請求項4】
前記第1算出部は、前記液体の伸張挙動中の長さである液柱長さを前記特徴量として算出する請求項1に記載の液体物性測定装置。
【請求項5】
前記第1算出部は、前記液体の伸張挙動中の先端の速度である瞬間速度を前記特徴量として算出する請求項1に記載の液体物性測定装置。
【請求項6】
前記第1算出部は、前記液体の伸張挙動中の先端が第1位置から第2位置まで通過するまでの速度である区間速度を前記特徴量として算出する請求項1に記載の液体物性測定装置。
【請求項7】
前記第1算出部は、前記液体が前記ノズルから離脱したときの時刻である離脱時刻を前記特徴量として算出する請求項1に記載の液体物性測定装置。
【請求項8】
前記第1算出部は、前記液体が前記ノズルから離脱したときの該液体が形成する液柱の長さである離脱時液柱長さを前記特徴量として算出する請求項1に記載の液体物性測定装置。
【請求項9】
前記第2算出部は、前記特徴量に基づいて、前記液体物性として、前記液体の粘度または表面張力のうち少なくともいずれかを算出する請求項1~8のいずれか一項に記載の液体物性測定装置。
【請求項10】
ノズルから吐出される液体を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置により撮像された撮像画像に基づいて、前記液体が前記ノズルの吐出口から離脱するまでの伸長挙動についての特徴量を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により算出された前記特徴量に基づいて、前記液体の液体物性を算出する第2算出部と、
を有する液体物性測定システム。
【請求項11】
ノズルから吐出される液体が前記ノズルの吐出口から離脱するまでの伸長挙動についての特徴量を算出する第1算出ステップと、
算出した前記特徴量に基づいて、前記液体の液体物性を算出する第2算出ステップと、
を有する液体物性測定方法。
【請求項12】
コンピュータに、
ノズルから吐出される液体が前記ノズルの吐出口から離脱するまでの伸長挙動についての特徴量を算出する第1算出ステップと、
算出した前記特徴量に基づいて、前記液体の液体物性を算出する第2算出ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体物性測定装置、液体物性測定システム、液体物性測定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット装置により形成される画像の画質は、吐出ヘッドのノズルから吐出されたインクの液滴の飛翔状態によって変化する。また、その液滴の飛翔状態は、用いられているインクの粘度および表面張力によって影響を受けることが分かっている。インクの粘度を測定する装置としては、試料にかかるせん断応力を計測して粘度を求める回転粘度計およびレオメータが知られている。また、インクの表面張力を測定する技術としては、垂直に設置した細管先端から垂らした滴の形状解析により表面張力を算出する懸滴法、試料中に挿入された細管の先端に形成させた気泡にかかる圧力から表面張力を算出するバブルプレッシャー法、および、ノズルから吐出された液滴が空中で、縦長楕円から横長楕円への変形を繰り返しながら円形になる際の振動数から表面張力を算出する液滴振動法等が知られている。
【0003】
また、インクジェット装置に用いられるインクは、ニュートン性よりも非ニュートン性である場合が多い。これは、吐出時には吐出しやすいように粘度が低く、着弾後は垂れないように粘度が高いことが望まれるためである。また、表面張力制御のために界面活性剤が入っている場合が多い。これは、着弾時にインクが印刷対象物上に均一に濡れ広がるように、表面張力が低いことが望まれるためである。非ニュートン性のインクの場合、数十[μm]径のノズルを通過する際、非常に速いせん断速度(106[1/s]オーダー)でせん断力がかかり、そのせん断速度に応じた粘度(せん断粘度)に変化する。吐出ヘッドのノズルを通過した直後のインクは、このせん断速度に応じたせん断粘度となっており、インクの液滴の飛翔状態を予測するためには、このせん断速度(106[1/s]オーダー)でのせん断粘度の把握が望まれる。しかし、上述の回転粘度計およびレオメータでは、105[1/s]オーダーのせん断粘度までしか計測できないという問題がある。また、界面活性剤が入っているインクの場合、吐出ヘッドのノズルを通過した直後のインクは、空気との界面を新たに形成するため、その界面に向かって界面活性剤が継続的に移動していく。その結果、ノズルから吐出していく液柱および液滴の表面張力は、動的に変化していく(動的表面張力)。吐出ヘッドのノズルから吐出されるインクは、典型的には吐出し始めてから、液柱として伸長、液柱として離脱、液柱のまま飛翔、液柱が収縮、液滴として飛翔、というように形状を変化させながら数[μs]~数十[μs]に渡って飛翔し、百[μs]~数百[μs]後に着弾する。このノズル吐出開始から数[μs]~数十[μs]時の伸長・離脱・飛翔時の形状変化は表面張力の影響を受けているため、数[μs]~数十[μs]の時間オーダーでの動的表面張力の測定が望まれる。しかし、上述の懸滴法では静的表面張力しか測定できず、バブルプレッシャー法では動的表面張力が計測可能なものの、[ms]オーダーでしか表面張力変化を測定できないという問題がある。また、液滴振動法ではノズルから吐出された液滴を[μs]オーダーのサンプリングレートで撮影して画像解析するため、数[μs]~数十[μs]の時間オーダーでの動的表面張力測定が可能である。しかし、液滴に振動を起こさせるために、通常の吐出観察装置に電極または電界印加機構等を追加して設置する必要があるため、装置が大型化および高価格化するという問題がある。
【0004】
このような、インクの物性の変化を測定する技術として、ノズルと基板との間を飛翔する液滴をカメラにより検出し、ノズルから吐出された直後から、縦長の楕円、横長の楕円の振動を経て、安定的な球状に達する液滴振動の振動周期(振動数)により表面張力を測定し、その振動の減衰により粘性を測定する装置および方法が開示されている(例えば特許文献1)。当該技術では、ノズル吐出直後の液滴の挙動を[μs]オーダーのサンプリングレートで観察することにより、吐出ヘッドのノズル通過直後の106[1/s]オーダーのせん断粘度の測定、および、数[μs]~数十[μs]オーダーでの動的表面張力の測定という問題も解消できる。
【0005】
また、ノズルからインクが吐出された直後に時々刻々と変化する動的表面張力等のインク物性を測定する技術として、吐出後に球状になって飛翔しているインクの液滴に対し、電界を作用させて変形させることにより縦長の楕円状態と横長の楕円状態との振動を起こし、その角振動数により表面張力を測定し、その振動の減衰定数より粘性を測定する装置および方法が開示されている(例えば特許文献2)。これにより、インクの吐出直後のインクの液滴の挙動を、[μs]オーダーのサンプリングレートで観察し、吐出ヘッドのノズル通過直後の106[1/s]オーダーのせん断粘度の測定、および、数[μs]~数十[μs]オーダーでの動的表面張力の測定という問題は解消できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、観察対象としているインクにおいて縦長の楕円状態と横長の楕円状態との振動を経て安定的な球状に達する液滴振動が明確に現れない場合も多くあるため、確実にインク物性を測定することが難しいという問題があった。また、特許文献2に記載された技術では、液滴振動のために、電界を作用させるための電極を設け、それを制御するための制御部が必要になるため、装置が大型化および高価格化するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液体物性を確実に測定し、装置の大型化および高価格化を抑制することができる液体物性測定装置、液体物性測定システム、液体物性測定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ノズルから吐出される液体が前記ノズルの吐出口から離脱するまでの伸長挙動についての特徴量を算出する第1算出部と、前記第1算出部により算出された前記特徴量に基づいて、前記液体の液体物性を算出する第2算出部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体物性を確実に測定し、装置の大型化および高価格化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドのノズル構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドの内部構造の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドの内部構造の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る吐出挙動評価システムのコントローラのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの情報処理装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドから吐出されるインクの挙動を説明する図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドから吐出されるインクの挙動の実例を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドから吐出されるインクの挙動から導出する特徴量について説明する図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る吐出挙動評価システムにおいて導出される特徴量である液柱長さとインク物性との相関性について説明する図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る吐出挙動評価システムにおいて導出される特徴量である瞬間速度とインク物性との相関性について説明する図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る吐出挙動評価システムにおいて導出される特徴量である区間速度とインク物性との相関性について説明する図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る吐出挙動評価システムにおいて導出される特徴量である離脱時刻とインク物性との相関性について説明する図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る吐出挙動評価システムにおいて導出される特徴量である離脱時液柱長さとインク物性との相関性について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係る液体物性測定装置、液体物性測定システム、液体物性測定方法およびプログラムの実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0012】
また、コンピュータソフトウェアとは、コンピュータの動作に関するプログラム、その他コンピュータによる処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものをいう(以下、コンピュータソフトウェアは、ソフトウェアという)。アプリケーションソフトとは、ソフトウェアの分類のうち、特定の作業を行うために使用されるソフトウェアの総称である。一方、オペレーティングシステム(OS)とは、コンピュータを制御し、アプリケーションソフト等がコンピュータ資源を利用可能にするためのソフトウェアのことである。オペレーティングシステムは、入出力の制御、メモリやハードディスク等のハードウェアの管理、プロセスの管理といった、コンピュータの基本的な管理・制御を行っている。アプリケーションソフトウェアは、オペレーティングシステムが提供する機能を利用して動作する。プログラムとは、コンピュータに対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わせたものをいう。また、プログラムに準ずるものとは、コンピュータに対する直接の指令ではないためプログラムとは呼べないが、コンピュータの処理を規定するという点でプログラムに類似する性質を有するものをいう。例えば、データ構造(データ要素間の相互関係で表される、データの有する論理的構造)がプログラムに準ずるものに該当する。
【0013】
(吐出挙動評価システムの全体構成)
図1は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの全体構成の一例を示す図である。
図1を参照しながら、実施形態に係る吐出挙動評価システム1の全体構成について説明する。
【0014】
吐出挙動評価システム1は、吐出ヘッド100のノズルから吐出されるインク500(液体の一例)の伸長挙動および飛翔挙動を観察および測定するためのシステムである。吐出挙動評価システム1は、
図1に示すように、情報処理装置400と、吐出ヘッド100と、コントローラ150と、パルス光源200と、レンズ210と、カメラ300と、を含む。
【0015】
情報処理装置400は、吐出挙動評価システム1の全体の動作を制御するPC(Personal Computer)またはワークステーション等の情報処理装置である。情報処理装置400は、カメラ300から画像信号を受信して当該画像信号を画像に変換し、情報処理装置400内に備える記憶装置に記憶させると共に、当該画像を吐出画像1000として表示装置に表示させる。また、情報処理装置400は、当該画像に示されるインク500の伸長状態および飛翔状態に基づいて、インク物性(液体物性の一例)を測定する。
【0016】
吐出ヘッド100は、コントローラ150からの吐出駆動信号に従って、下方に向けてインクの吐出を行う装置である。吐出ヘッド100は、例えば、1つの筐体にノズルが複数配列された通常の複数ノズルタイプのインクジェットヘッドであってもよく、毛細管(キャピラリ)にピエゾ素子、発熱素子、またはポンプおよび弁等で圧力を発生させて吐出させる単ノズルタイプのインクジェットヘッドであってもよい。
【0017】
コントローラ150は、情報処理装置400からの制御に従って、吐出ヘッド100への吐出駆動信号の送信、およびパルス光源200への発光信号の送信を行うコントローラである。
【0018】
パルス光源200は、コントローラ150からの発光信号に従って、パルス光を照射し、レンズ210を介して所望の光束に整え、伸長中または飛翔中のインク500を照明する光源である。また、パルス光源200は、例えば、パルスレーザー、キセノンランプ、LED(Light Emitting Diode)ランプ等である。パルス光源200によるパルス光の照射は、吐出駆動信号の出力から所望の遅延時間となるようにコントローラ150が発光信号の出力を制御することにより行われ、伸長中または飛翔中のインク500に対して任意のタイミングでパルス光を照射することができる。
【0019】
レンズ210は、パルス光源200から照射されパルス光を、インク500に対して照明するように収束させる光学系部材である。なお、レンズ210は、パルス光源200のタイプ、またはパルス光源200からカメラ300までの距離により設置の是非が変わるため、設置は任意とする。
【0020】
カメラ300は、パルス光源200から照射されたパルス光により照明されたインク500を撮像するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等の産業用撮像装置である。カメラ300は、例えば、パルス光源200に対向して設置される。カメラ300は、撮像したインク500の像を画像信号(撮像画像)として取り込み、当該画像信号を情報処理装置400に送信する。
【0021】
パルス光源200およびカメラ300を用いたインク500の撮影は、いわゆる同期法によって行う。具体的には、コントローラ150は、一定周期で吐出駆動信号によりインク500を吐出ヘッド100から吐出させる動作において、当該吐出駆動信号を基準に任意の遅延時間を経過したタイミングで発光信号によりパルス光源200を発光させることにより、任意のタイミングにおけるインク500の状態をカメラ300に撮像させることができる。この発光信号の遅延時間をずらしながらの撮像を繰り返すことによって、吐出ヘッド100から伸長および飛翔していくインク500の状態を時分割で把握することができる。なお、上述では、パルス光源200とCMOSカメラ等であるカメラ300の組合せとしているが、通常の連続発光光源とハイスピードカメラとの組合せとしてもよい。ハイスピードカメラであれば、インク500を繰り返し吐出しながら撮像を繰り返す必要はなく、一滴の挙動を時分割で撮影することで必要な情報を得ることができる。
【0022】
(吐出ヘッドの構成)
図2は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドのノズル構成の一例を示す図である。
図3は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドの内部構造の一例を示す図である。
図4は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドの内部構造の一例を示す図である。
図2~
図4を参照しながら、本実施形態に係る吐出挙動評価システム1の吐出ヘッド100の構成について説明する。
【0023】
図2に示すように、吐出ヘッド100は、例えば、複数のノズル104が所定のピッチpで2列に配列されているタイプのヘッドである。各列のノズルは、ノズル列方向にそれぞれ1/2×pずつずらして配列されており、高解像度印刷を可能としている。なお、吐出ヘッド100は、ノズル列が1列であっても3列以上であってもよい。
図1に示した吐出挙動評価システム1でインクの吐出状態の解析を行う場合には、着目するノズル104を限定した上で、そのノズル104の部分を拡大して観察および解析を行う。
【0024】
図3および
図4では、吐出ヘッド100の液室長手方向(ノズル列方向と直交する方向)に沿う断面図を示している。吐出ヘッド100の内部には、圧電素子112が内蔵されており、
図3では圧電素子112に加える電圧を基準電位から下げた状態(振動板102が上方に引き上げられた位置)を示し、
図4では圧電素子112に加える電圧を基準電位から上げた状態(振動板102が下方に押し下げられた位置)を示している。
【0025】
図3および
図4により、吐出ヘッド100からインクが吐出される過程を説明する。吐出ヘッド100は、流路板101と振動板102とノズル板103とを接合して、インクを吐出するノズル104が貫通孔105を介して通じる個別液室106、当該個別液室106にインクを供給する連通部107、および液体導入部108が形成されている。フレーム部材117に形成された共通液室110内に貯留されているインクは、振動板102に形成されたフィルタ109を介して液体導入部108に導入された後、連通部107を経由して個別液室106に供給される。
【0026】
流路板101は、形状加工したSUS(Stainless Used Steel)等の金属板を複数枚積層して構成され、貫通孔105、個別液室106、連通部107、および液体導入部108等が形成されている。なお、流路板101は、SUS等の金属板に限らず、シリコン基板をエッチングして形成することもできる。
【0027】
振動板102は、個別液室106、連通部107および液体導入部108等の壁面を形成する壁面部材であり、フィルタ109が形成された部材である。
【0028】
振動板102の個別液室106と反対側の面には、個別液室106内のインクを加圧してノズル104から吐出させるエネルギーを発生させる駆動素子として、柱状の圧電素子112が接合されている。この圧電素子112の一端はベース部材113に接合され、かつ圧電素子112に駆動信号を伝達するFPC(Flexible Printed Circuits)115が接続されている。上述の圧電素子112、ベース部材113およびFPC115により、圧電ユニット111が構成されている。
【0029】
なお、
図3および
図4の例では、圧電素子112を積層方向に伸縮させるモードで使用しているが、積層方向と直交する方向に伸縮させるモードで使用してもよい。
【0030】
以上のように構成された吐出ヘッド100では、
図3に示すように、圧電素子112に印加する電圧を基準電位から下げることにより圧電素子112が収縮し、振動板102が上方に屈曲して個別液室106の容積を拡張することにより、連通部107方向から個別液室106に向かってインクが流入する。その後、
図4に示すように、圧電素子112に印加する電圧を上げて圧電素子112を積層方向に伸長させ、振動板102を下方に屈曲させて個別液室106の容積を収縮させることにより、個別液室106内のインクが加圧され、ノズル104から液滴303として吐出される。その後、圧電素子112に印加する電圧を基準電位まで戻すことにより、振動板102が初期位置まで戻り、個別液室106が拡張して負圧が発生する。この負圧の発生により、相対的に圧力の高い共通液室110から圧力の低い個別液室106へ連通部107を通ってインクの流れが発生し、圧力差がなくなるまで個別液室106にインクが流入する。
【0031】
また、ノズル104から吐出された液滴303は、距離Lの位置にある図示しない記録媒体に時間Ti後に着弾する。このとき、液滴303が飛翔する速度Vjは、Vj=L/Tiで求められる。この速度Vjは、ノズル104から液滴303を吐出させる際の、圧電素子112の変動量による個別液室106の圧力変化量によって変動する。
【0032】
なお、上述の説明では、圧電素子(ピエゾ素子)を用いた吐出方式の吐出ヘッド100の構成を説明しているが、別の吐出方式(例えばサーマル方式、弁開閉方式等)の構成であってもよい。また、インクとしては、溶媒として水を用いた水系インク、溶媒として有機溶剤を用いた有機溶剤系インク、各インクに対し固形分を添加した固形分含有インク等が考えられ、流体の性質としてニュートン性を示すもの、非ニュートン性を示すもの、のいずれの場合も考えられる。また、インクの組成および性質については、特に限定するものではない。
【0033】
(コントローラのハードウェア構成)
図5は、実施形態に係る吐出挙動評価システムのコントローラのハードウェア構成の一例を示す図である。
図5を参照しながら、本実施形態に係るコントローラ150のハードウェア構成について説明する。
【0034】
図5に示すように、コントローラ150は、制御部150aと、ヘッドドライバ166と、照射駆動回路167と、を備えている。
【0035】
制御部150aは、CPU(Central Processing Unit)151と、ROM(Read Only Memory)152と、RAM(Random Access Memory)153と、NVRAM(Non-Volatile RAM)154と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)155と、吐出制御部156と、照射制御部157と、通信I/F159と、を備えている。
【0036】
CPU151は、コントローラ150全体の制御を行う演算装置である。ROM152は、CPU151が実行するプログラム等の固定データを記憶する不揮発性記憶装置である。RAM153は、CPU151による演算処理のワークエリアとなる揮発性記憶装置である。また、RAM153は、画像データ等を一時的に記憶する。
【0037】
NVRAM154は、コントローラ150の電源が遮断されている間もデータおよびプログラム等を保持する不揮発性記憶装置である。
【0038】
ASIC155は、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理、その他のコントローラ150全体を制御するための入出力信号を処理する集積回路である。
【0039】
吐出制御部156は、CPU151による制御に従って、ヘッドドライバ166を介して吐出ヘッド100のインクの吐出動作を制御する制御回路である。吐出制御部156は、吐出ヘッド100を駆動するためのデータをヘッドドライバ166へ転送する。例えば、吐出制御部156は、画像データをシリアルデータで転送すると共に、画像データの転送に要する転送クロック、ラッチ信号、制御信号等をヘッドドライバ166に出力する。ヘッドドライバ166は、シリアルに入力される吐出ヘッド100の一行分に相当する画像データに基づいて、吐出制御部156から受信した駆動波形を構成する吐出駆動信号を、吐出ヘッド100の圧力発生手段に対して選択的に与えることにより、吐出ヘッド100を駆動してインクを吐出させる。
【0040】
照射制御部157は、CPU151による制御に従って、照射駆動回路167を介してパルス光源200のパルス光の照射動作を制御する制御回路である。照射駆動回路167は、照射制御部157による制御に従って、発光信号をパルス光源200に出力することにより、パルス光源200からパルス光を照射させる。
【0041】
通信I/F159は、情報処理装置400との間でデータおよび信号の送受信を行うインターフェース回路である。具体的には、通信I/F159は、情報処理装置400からケーブルまたはネットワークを介してデータや信号の送受信を行う。通信I/F159がネットワークを介して情報処理装置400と通信する場合、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)に準拠しているものとすればよい。通信I/F159の受信バッファに格納された印刷データは、CPU151によって解析され、ASIC155によって画像処理およびデータの並び替え処理等が行われ、吐出制御部156によって吐出データとしてヘッドドライバ166に転送される。
【0042】
なお、
図5に示したコントローラ150のハードウェア構成は一例を示すものであり、
図5に示した構成要素を全て含む必要はなく、または、その他の構成要素を含むものとしてもよい。
【0043】
(情報処理装置のハードウェア構成)
図6は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6を参照しながら、本実施形態に係る情報処理装置400のハードウェア構成について説明する。
【0044】
図6に示すように、情報処理装置400は、CPU601と、ROM602と、RAM603と、補助記憶装置605と、メディアドライブ607と、ディスプレイ608と、ネットワークI/F609と、キーボード611と、マウス612と、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ614と、を備えている。
【0045】
CPU601は、情報処理装置400全体の動作を制御する演算装置である。ROM602は、情報処理装置400用のプログラムを記憶している不揮発性記憶装置である。RAM603は、CPU601のワークエリアとして使用される揮発性記憶装置である。
【0046】
補助記憶装置605は、印刷データ等の各種データおよびプログラム等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。
【0047】
メディアドライブ607は、CPU601の制御に従って、フラッシュメモリ等の記録メディア606に対するデータの読み出しおよび書き込みを制御する装置である。
【0048】
ディスプレイ608は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字または画像等の各種情報を表示する液晶または有機EL(Electro Luminescence)等によって構成された表示装置である。
【0049】
ネットワークI/F609は、ネットワークを利用してコントローラ150とデータを通信するためのインターフェースである。ネットワークI/F609は、例えば、イーサネット(登録商標)に対応し、TCP/IP等に準拠した通信が可能なNIC(Network Interface Card)等である。
【0050】
キーボード611は、文字、数字、各種指示の選択、およびカーソルの移動等を行う入力装置である。マウス612は、各種指示の選択および実行、処理対象の選択、ならびにカーソルの移動等を行うための入力装置である。
【0051】
DVDドライブ614は、着脱自在な記憶媒体の一例としてのDVD-ROMまたはDVD-R(Digital Versatile Disk Recordable)等のDVD613に対するデータの読み出しおよび書き込みを制御する装置である。
【0052】
上述のCPU601、ROM602、RAM603、補助記憶装置605、メディアドライブ607、ディスプレイ608、ネットワークI/F609、キーボード611、マウス612およびDVDドライブ614は、アドレスバスおよびデータバス等のバス610によって互いに通信可能に接続されている。
【0053】
なお、
図6に示した情報処理装置400のハードウェア構成は一例を示すものであり、
図6に示した構成要素を全て含む必要はなく、または、その他の構成要素を含むものとしてもよい。
【0054】
(情報処理装置の機能ブロックの構成および動作)
図7は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの情報処理装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。
図7を参照しながら、本実施形態に係る情報処理装置400の機能ブロックの構成および動作について説明する。
【0055】
図7に示すように、情報処理装置400は、画像処理部401と、画像解析部402(第1算出部)と、演算処理部403(第2算出部)と、画像記憶部411と、パラメータ記憶部412と、解析結果記憶部413と、を有する。
【0056】
吐出挙動評価システム1において吐出ヘッド100から吐出されたインクの観察及び解析を行う場合、情報処理装置400は、上述のように、インク500の挙動に対して発光信号の遅延時間をずらしながら時分割で撮像された画像を、画像記憶部411に順次記憶させる。
【0057】
画像処理部401は、吐出挙動評価システム1においてインク物性の算出に必要な画像の撮像が終了した場合、画像記憶部411に記憶された画像データを順次読み出し、当該画像データに対して二値化処理を行う機能部である。この場合、画像処理部401は、二値化処理の際の閾値として、パラメータ記憶部412に記憶されたパラメータを読み出して使用する。この二値化処理によって、画像データにおいてインク部分と背景部分とが切り分けられ、インク領域が明確に認識可能な二値化画像が得られる。
【0058】
画像解析部402は、画像処理部401により得られた二値化画像に基づいて、インクの挙動の特徴量を解析(算出)する機能部である。具体的には、画像解析部402は、二値化画像が示すインク液柱の先端の位置、インク液柱の長さ(液柱長さ)、インク液柱がノズル104から離脱した時刻(離脱時刻)、離脱時のインク液柱の長さ(離脱時液柱長さ)等を算出し、これらの数値化されたデータを解析結果記憶部413に記憶させる。なお、液柱長さ、離脱時刻、および離脱時液柱長さについての詳細は、後述する。さらに、画像解析部402は、解析結果記憶部413に記憶された数値化されたデータのうち、インク液柱の複数の先端の位置のデータを用いて、インク液柱の先端の瞬間速度、および区間速度を算出する。なお、瞬間速度および区間速度についての詳細は、後述する。すなわち、上述の液柱長さ、離脱時刻、離脱時液柱長さ、瞬間速度および区間速度は、吐出ヘッド100から吐出されるインクの吐出の挙動の特徴量の一例である。なお、画像解析部402は、上述の特徴量のすべてを算出する必要はなく、演算処理部403によるインク物性の算出に必要な特徴量が算出されればよい。
【0059】
演算処理部403は、上述のインクの挙動の特徴量としての液柱長さ、離脱時刻、離脱時液柱長さ、瞬間速度および区間速度のうち、少なくともいずれかを用いて、後述する
図11~
図15で示す相関性に基づいて、インク物性(例えばせん断粘度および動的表面張力)を算出する機能部である。インク物性として例えばせん断粘度および動的表面張力のうち少なくともいずれかを算出することによって、吐出ヘッド100のノズル104から離脱後の液滴の飛翔形状を推定することができ、飛翔形状が影響する着弾後の画質を推定できる。
【0060】
画像記憶部411は、カメラ300により撮像された画像信号から変換された画像データを記憶する機能部である。画像記憶部411は、
図6に示す補助記憶装置605によって実現される。
【0061】
パラメータ記憶部412は、画像処理部401による二値化処理で使用する閾値等のパラメータを記憶する機能部である。パラメータ記憶部412は、
図6に示す補助記憶装置605によって実現される。
【0062】
解析結果記憶部413は、画像解析部402による解析により数値化されたデータ(特徴量)を解析結果として記憶する機能部である。解析結果記憶部413は、
図6に示す補助記憶装置605によって実現される。
【0063】
上述の画像処理部401、画像解析部402および演算処理部403は、例えば、
図6に示したCPU601によりプログラムが実行されることによって実現される。なお、これらの機能部の一部または全部は、ソフトウェアであるプログラムではなく、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC等のハードウェア回路(集積回路)によって実現されてもよい。
【0064】
なお、
図7に示す情報処理装置400の各機能部は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、
図7に示す情報処理装置400で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、
図7に示す情報処理装置400で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
【0065】
(吐出ヘッドから吐出されるインクの挙動について)
図8は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドから吐出されるインクの挙動を説明する図である。
図9は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドから吐出されるインクの挙動の実例を説明する図である。
図8および
図9を参照しながら、本実施形態に係る吐出挙動評価システム1の吐出ヘッド100から吐出されるインクの挙動について説明する。
【0066】
まず、
図8(a)に示す「吐出開始」では、
図3および
図4に示した圧電素子112が駆動されることによる個別液室106の圧力増加でインクが圧力を受け、ノズル104の先端のノズル口120(吐出口)からインクの膨らみが形成される。次に、
図8(b)に示す「伸長」では、圧力を受けてノズル104の外に押し出されたインクが柱状になり、切れずに伸長して液柱301が形成される。
【0067】
次に、
図8(c)に示す「離脱」では、長い柱状になった液柱301の後端がノズル面のインクから離脱し、液柱302となって飛翔開始する。そして、
図8(d)に示す「飛翔(液柱状)」では、飛翔していく液柱302が、その先端と後端との速度差、および表面張力の働きにより、徐々に収縮していく。最後に、
図8(e)に示す「飛翔(液滴状)」のように、収縮し切ったインクが球状になって液滴303として飛翔していく。以上の動作がインクの吐出挙動の理想的な動作であるが、実際にはこのように最終的に一滴になって飛翔しない場合も多い。その実例を以下、
図9に示す。
【0068】
図9では、吐出ヘッド100のノズル口120近傍の拡大画像であり、実際のインクの吐出挙動が捉えられたものである。インクの吐出方向は上から下であり、上部に見えている黒丸はノズル口120から見えているインクである。
図9では、ノズル口120は上部に2か所見えており、インクの吐出挙動は2つのノズル分が見えている状態である。
図8においては、最終的に1つの液滴303になって飛翔する形態で描いているが、
図9においては一滴にならず、様々な形状に分離して飛翔していることが把握される。先頭を飛翔している大きい滴が主滴501であり、分離して飛翔する場合は先頭の滴が最も大きい主滴となる場合が多い。その後ろに続いているのは液柱502であり、この時点では主滴501と分離したまま液柱形状で飛翔している。しかし、左右どちらの液柱502も先端および後端(さらには中間)にインクの節が形成されており、この後、分裂していくと考えられ、分裂した後はサテライトとなる。その後ろを飛ぶのがサテライト503である。ここで、サテライトとは、主滴に対して小さい滴となって分離して飛翔する液滴をいう。サテライト503は、主滴501との速度差によっては着弾までに合一して一滴になる場合もあるが、分離したまま着弾する場合もある。分離したまま着弾する場合は、主滴501に対してずれた位置に着弾することにより画質不良(チリ)として顕在化してしまうため、サテライトの抑制はインクジェットプリンタの課題となっている。また、サテライト503の周辺および後続に小さい粒として見えているのは、ミスト504である。ミスト504は、インクがノズル面から離脱する際に細く糸状に伸びたり、リガメントが分裂する際に細く糸状に伸びたりした状態から、分裂して発生することが多い。ミスト504は、小径で質量が小さく、空気抵抗により速度が失われるため下方に向かって飛翔を継続できず、装置内を気流に乗って浮遊することになる。その結果、装置内面またはノズル面を汚してしまい、汚れがひどくなると画質不良を引き起こしてしまう場合が有るため、ミストの抑制もインクジェットプリンタの課題となっている。
【0069】
図9に示す画像では、吐出挙動におけるある時点での飛翔状態なので、この後に主滴501、液柱502およびサテライト503が合一して、ひとつの液滴となって飛翔および着弾する可能性もあるのだが、分裂したまま飛翔および着弾する場合もある。このインクが分裂してサテライト503およびミスト504が発生するか否かについて、および、サテライト503が主滴501と合一せず、分裂したまま着弾するか否かについては、インク物性によって影響を受けることが知られている。すなわち、インク物性を把握できれば、そのインクでの吐出挙動において、サテライト503およびミスト504が発生するか否かを推測することができるため、画質不良を引き起こす可能性を推測できることになる。本実施形態では、この点に着目し、画質不良の発生の抑制のためにサテライト503おおよびミスト504の発生を抑制するため、インクの吐出挙動におけるインク物性(例えばせん断粘度および動的表面張力)を測定するものとしている。
【0070】
なお、測定対象としているインク物性であるせん断粘度および動的表面張力は、上述したように、インクの吐出過程でその値が変化する。インクのノズル通過時の強いせん断力の影響でせん断粘度が変化し、また、インク吐出直後には界面活性剤の働きにより動的表面張力が変化する。これらの変化するせん断粘度および動的表面張力は、既存の計測技術および計測器での計測が難しいことは上述した通りである。本実施形態においては、インクの吐出過程でのインクの吐出挙動から特徴量を導出し、せん断粘度および動的表面張力を算出することにより、インクの吐出過程で変化するせん断粘度および動的表面張力の把握を可能とする。
【0071】
(インクの吐出挙動から導出される特徴量について)
図10は、実施形態に係る吐出挙動評価システムの吐出ヘッドから吐出されるインクの挙動から導出する特徴量について説明する図である。
図10を参照しながら、吐出ヘッド100から吐出されるインクの挙動から導出される特徴量について説明する。
【0072】
図10に、インク物性(例えばせん断粘度および動的表面張力)を算出するために、インク吐出挙動から抽出する特徴量を示す。
【0073】
このうち
図10(a)では、特徴量としての液柱長さを示す。ここで、液柱長さとは、インクの伸長挙動中のある時刻での液柱の長さをいうものとする。画像解析部402は、ある時刻において撮影された画像に基づく二値化画像から、ノズル口120から液柱301の先端までの長さL1を画素数カウント等により算出し、これを液柱長さとして算出する。ここで、吐出駆動信号が出力されてからの経過時間を種々に振って複数の時刻での液柱長さを算出し、算出対象のインク物性と相関性のより高い時刻を、特徴量としての液柱長さを算出する「ある時刻」と定めればよい。「ある時刻」の最適値は、吐出ヘッド100の方式、構造および吐出条件等に影響を受ける吐出挙動によって変化するため、実際に当該方式、構造および吐出条件でデータを取って、最適な時刻を決定することになる。
【0074】
また、
図10(b)では、特徴量としての瞬間速度を示す。ここで、瞬間速度とは、ノズル面に対してある位置での伸長挙動中の液柱301の先端の瞬間の速度をいうものとする。画像解析部402は、例えば、十分に小さいサンプリングレートで撮像された2つの画像に基づく二値化画像から、液柱301の先端の移動量を求め、当該移動量をサンプリングレートで除算して得た速度V1を瞬間速度として算出する。ここで、ノズル面に近い位置での瞬間速度、またはノズル面から遠い位置での瞬間速度等の複数位置での速度を取り、算出対象のインク物性と相関性がより高い位置を、特徴量としての瞬間速度を算出する「ある位置」として定めればよい。「ある位置」の最適値は、吐出ヘッド100の方式、構造および吐出条件等に影響を受ける吐出挙動によって変化するため、実際に当該方式、構造および吐出条件でデータを取って、最適な位置を決定することになる。
【0075】
また、
図10(c)では、特徴量としての区間速度を示す。ここで、区間速度とは、伸長挙動中の液柱301の先端のノズル面に対してのある位置からある位置までの区間での平均速度をいうものとする。画像解析部402は、例えば、2つの位置でそれぞれ撮像された2つの画像に基づく二値化画像から、液柱301の先端の移動量を求め、当該移動量を移動時間で除算して得た速度V2を区間速度として算出する。ここで、瞬間速度と同様に、複数区間での区間速度をデータとして収集し、算出対象のインク物性と相関性がより高い区間を、特徴量としての区間速度を算出する区間として定めればよい。区間の最適値は、吐出ヘッド100の方式、構造および吐出条件等に影響を受ける吐出挙動によって変化するため、実際に当該方式、構造および吐出条件でデータを取って、最適な区間を決定することになる。
【0076】
また、
図10(d)では、特徴量としての離脱時刻を示す。ここで、離脱時刻とは、吐出駆動信号が出力された時刻を基準とし、液柱301の後端がノズル口120から離れる瞬間までの時間差分をいうものとする。より簡潔には、離脱時刻とは、液柱301の後端がノズル口120から離れたときの時刻である。画像解析部402は、撮影された画像に基づく二値化画像から、液柱301の後端がノズル口120から離れる瞬間の時刻Tを離脱時刻として算出する。離脱時刻は、一意に決定される値であるため、液柱長さ、瞬間速度または区間速度のように、複数データを収集するという手順を踏む必要はない。
【0077】
また、
図10(e)では、特徴量としての離脱時液柱長さを示す。ここで、離脱時液柱長さとは、
図10(d)示す離脱時刻に離脱した瞬間の液柱302の先端から後端までの長さをいうものとする。画像解析部402は、撮影された画像に基づく二値化画像から、液柱301の後端がノズル口120から離れる瞬間の時刻Tでの液柱302の長さL2を離脱時液柱長さとして算出する。離脱時液柱長さは、一意に決定される値であるため、液柱長さ、瞬間速度または区間速度のように、複数データを収集するという手順を踏む必要はない。
【0078】
(液柱長さとインク物性との相関性)
図11は、実施形態に係る吐出挙動評価システムにおいて導出される特徴量である液柱長さとインク物性との相関性について説明する図である。
図11を参照しながら、導出された特徴量である液柱長さとインク物性との相関性について説明する。
【0079】
図11では、インクの伸長挙動中における液柱長さと、測定対象としての粘度および表面張力の相関性を表すグラフを示している。すなわち、粘度および表面張力を様々に振ったインクを用い、特徴量である液柱長さとの関係を示している。
【0080】
図11(a)は、液柱長さと粘度との相関図を示し、吐出駆動信号の出力時点を原点として、3種類の時刻でのデータをプロットしたものである。吐出開始後a1[μs]のデータが最も早い時刻でのデータであり、吐出開始後c1[μs]のデータが最も遅い時刻でのデータであり、吐出開始時刻b1[μs]のデータがその中間の時刻でのデータである。どの時刻のデータも一様な傾向を示しており、液柱長さと粘度とは相関性が高いことが把握される。グラフの形状より、1次またはn次の回帰式で近似でき、粘度を算出するための特徴量として、液柱長さは適していると判断できる。
【0081】
また、吐出開始直後に近い時刻(液柱長さが短い吐出開始後a1[μs])ではグラフが立っており、わずかな液柱長さの差異で高感度に粘度を算出できる関係となっている。一方、吐出開始時刻から遠い時刻(液柱長さが長い吐出開始後c1[μs])ではグラフの角度がなだらかになっており、液柱長さの差異に対して、粘度の差異が相対的に小さくなっている。前者は感度が高いと言えるが、液柱長さに計測誤差が入る場合、当該計測誤差が粘度の誤差として大きく影響してしまう欠点がある。後者は前者に比べて感度が低いと言えるが、液柱長さに計測誤差が入っても、当該計測誤差が粘度の誤差として影響する程度が小さいという利点がある。いずれも回帰式で近似できるため粘度の算出は可能であるが、実用上は、吐出挙動評価システム1においてカメラ300の画素数またはパルス光源200の発光パルス幅等で定まる画像分解能から決まる液柱長さの計測誤差と感度との関係を考慮して、どの時刻での液柱長さを特徴量として採用するかを決定することになる。
【0082】
図11(b)は、液柱長さと表面張力との相関図を示し、吐出駆動信号の出力時点を原点として、3種類の時刻でのデータをプロットしたものである。
図11(a)に示した粘度についてのグラフとは異なり、表面張力に対しては、液柱長さは一様な傾向を示しておらず、相関性が低いことが把握される。したがって、回帰式での近似線は引けないため、表面張力を算出するための特徴量としては、液柱長さは不適当と判断できる。
【0083】
(瞬間速度とインク物性との相関性)
図12は、実施形態に係る吐出挙動評価システムにおいて導出される特徴量である瞬間速度とインク物性との相関性について説明する図である。
図12を参照しながら、導出された特徴量である瞬間速度とインク物性との相関性について説明する。
【0084】
図12では、インクの伸長挙動中でのある位置における液柱の先端の瞬間速度と、測定対象としての粘度および表面張力の相関性を表すグラフを示している。すなわち、粘度および表面張力を様々に振ったインクを用い、特徴量である瞬間速度との関係を収集している。
【0085】
図12(a)は、瞬間速度と粘度との相関図を示し、ノズル面に対する3種類の位置でのデータをプロットしたものである。位置a2のデータが最もノズル面に近い位置でのデータであり、位置c2のデータが最もノズル面から遠い位置でのデータであり、位置b2のデータがその中間位置でのデータである。どの位置のデータも一様な傾向を示しており、液柱の先端の瞬間速度と粘度とは相関性が高いことが把握される。グラフの形状より、1次またはn次の回帰式で近似でき、粘度を算出するための特徴量として、液柱の先端の瞬間速度は適していると判断できる。
【0086】
また、ノズル面に近い位置(液柱が短い位置a2)ではグラフが立っており、わずかな瞬間速度の差異で高感度に粘度を算出できる関係となっている。一方、ノズル面から遠い位置(液柱が長い位置c2)ではグラフの角度がなだらかになっており、瞬間速度の差異に対して、粘度の差異が相対的に小さくなっている。前者は感度が高いと言えるが、瞬間速度に計測誤差が入る場合、当該計測誤差が粘度の誤差として大きく影響してしまう欠点がある。後者は前者に比べて感度が低いと言えるが、瞬間速度に計測誤差が入っても、当該計測誤差が粘度の誤差として影響する程度が小さいという利点がある。いずれも回帰式で近似できるため粘度の算出は可能であるが、実用上は、吐出挙動評価システム1においてカメラ300の画素数またはパルス光源200の発光パルス幅等で決まる画像分解能から決まる瞬間速度の計測誤差と感度との関係を考慮して、どの位置での瞬間速度を特徴量として採用するかを決定することになる。
【0087】
図12(b)は、瞬間速度と表面張力との相関図を示し、ノズル面に対する3種類の位置でのデータをプロットしたものである。
図12(a)に示した粘度についてのグラフとは異なり、表面張力に対しては、瞬間速度は一様な傾向を示しておらず、相関性が低いことが把握される。したがって、回帰式での近似線は引けないため、表面張力を算出するための特徴量としては、瞬間速度は不適当と判断できる。
【0088】
(区間速度とインク物性との相関性)
図13は、実施形態に係る吐出挙動評価システムにおいて導出される特徴量である区間速度とインク物性との相関性について説明する図である。
図13を参照しながら、導出された特徴量である区間速度とインク物性との相関性について説明する。
【0089】
図13では、インクの伸長挙動中において液柱の先端がある位置からある位置までを通過する区間速度と、測定対象としての粘度および表面張力の相関性を表すグラフを示している。すなわち、粘度および表面張力を様々に振ったインクを用い、特徴量である区間速度との関係を収集している。
【0090】
図13(a)は、区間速度と粘度との相関図を示し、ノズル面に対しある位置からある位置までで区切った3種類の区間でのデータをプロットしたものである。区間Aのデータが最もノズル面に近い区間でのデータであり、区間Cのデータが最もノズル面から遠い区間でのデータであり、区間Bのデータがその中間区間でのデータである。どの区間のデータも一様な傾向を示しており、区間速度と粘度とは相関性が高いことが把握される。グラフの形状より、1次またはn次の回帰式で近似でき、粘度を算出するための特徴量として、区間速度は適していると判断できる。この
図13(a)に示す区間A~Cのグラフはほとんど差異がないため、どれを選択してもあまり差は無いが、区間の取り方によってはグラフの角度が変化する。どの区間を採用するかは、
図12の説明と同様、計測誤差および感度の兼ね合いから選択すればよい。
【0091】
図13(b)は、区間速度と表面張力との相関図を示し、
図13(a)と同様に3種類の区間でのデータをプロットしたものである。
図13(a)に示した粘度についてのグラフとは異なり、表面張力に対しては、区間速度は一様な傾向を示しておらず、相関性が低いことが把握される。したがって、回帰式での近似線は引けないため、表面張力を算出するための特徴量としては、区間速度は不適当と判断できる。
【0092】
(離脱時刻とインク物性との相関性)
図14は、実施形態に係る吐出挙動評価システムにおいて導出される特徴量である離脱時刻とインク物性との相関性について説明する図である。
図14を参照しながら、導出された特徴量である離脱時刻とインク物性との相関性について説明する。
【0093】
図14では、液柱の後端がノズル面から離脱する離脱時刻と、測定対象としての粘度および表面張力、ならびにこれらの比である粘度/表面張力の相関性を表すグラフを示している。すなわち、粘度および表面張力を様々に振ったインクを用い、特徴量である離脱時刻との関係を収集している。
【0094】
図14(a)は、離脱時刻と粘度との相関図である。傾向としては一様であり相関性はあると言えるが、プロットがややばらついており、
図11~
図13で上述した各特徴量に比べて、粘度との相関性はやや弱いと把握される。したがって、粘度を算出する特徴量としては、
図11~
図13で上述した各特徴量の方が適していると判断できる。
【0095】
図14(b)は、離脱時刻と表面張力との相関図である。表面張力に対しては、一様な傾向を示しておらず、相関性が低いことが把握される。
【0096】
図14(c)は、離脱時刻と、粘度/表面張力との相関図である。測定対象(縦軸)として、粘度と表面張力との比である粘度/表面張力を設定すると、一様な傾向を示し、かつプロットも固まっているため、高い相関性を示していることが把握される。グラフの形状より、1次またはn次の回帰式で近似することにより、離脱時刻から粘度/表面張力が算出できると判断される。
【0097】
ここで、
図11~
図13で上述した特徴量から粘度は求められているため、離脱時刻から粘度/表面張力が算出されれば、両者の値を用いて表面張力を算出することができる。離脱時刻は、粘度および表面張力の双方から強い影響を受けると考えられるため、その数値には両方の影響が反映されており、別の特徴量から求めた粘度の値を利用することにより、表面張力の数値を算出することができる。すなわち、表面張力は離脱時刻および粘度の重回帰式で表すことができる。重回帰式として表現して、離脱時刻、および、別の特徴量から求めた粘度を代入して、表面張力を求めることもできる。
【0098】
なお、
図14(c)においては、縦軸を粘度/表面張力で表しているが、粘度および表面張力のどちらか一方または両方を、べき乗または多項式として表した方が離脱時刻との相関性が高い場合もある。また、粘度および表面張力だけではなく、流体に関する他の物性(例えば密度、音速等)も加えて表した方が、離脱時刻との相関性が高い場合もある。
図14(c)の縦軸としては、これらのように表した式を用いてもよい。つまり、表面張力を求める回帰式として、離脱時刻、粘度若しくは粘度のべき乗または多項式、および流体に関する他の物性を用いた重回帰式として表現し、表面張力を求めるようにしてもよい。
【0099】
(離脱時液柱長さとインク物性との相関性)
図15は、実施形態に係る吐出挙動評価システムにおいて導出される特徴量である離脱時液柱長さとインク物性との相関性について説明する図である。
図15を参照しながら、導出された特徴量である離脱時液柱長さとインク物性との相関性について説明する。
【0100】
図15では、液柱の後端がノズル面から離脱した時の離脱時液柱長さと、測定対象としての粘度および表面張力の相関性を表すグラフを示している。すなわち、粘度および表面張力を様々に振ったインクを用い、特徴量である離脱時液柱長さとの関係を収集している。
【0101】
図15(a)は、離脱時液柱長さと粘度との相関図を示し、一様な傾向を示しており、離脱時液柱長さと粘度とは相関性が高いことが把握される。グラフの形状より、n次の回帰式で近似でき、粘度を算出するための特徴量として、離脱時液柱長さは適していると判断できる。
【0102】
図15(b)は、離脱時液柱長さと表面張力との相関図を示し、
図15(a)に示した粘度のグラフとは異なり、表面張力に対しては、離脱時液柱長さは一様な傾向を示しておらず、相関性が低いことが把握される。したがって、回帰式での近似線は引けないため、表面張力を算出するための特徴量としては、離脱時液柱長さは不適当と判断できる。
【0103】
以上のように、
図11~
図15で上述した通り、演算処理部403は、吐出ヘッド100から吐出されるインクの挙動の各特徴量のうち少なくともいずれかを用いて、当該特徴量とインク物性との相関性に基づいて、当該インク物性を算出することができる。演算処理部403は、例えば、液柱長さ、瞬間速度、区間速度、離脱時液柱長さの各特徴量の単回帰式により、インク物性の一例である粘度を算出でき、離脱時刻と粘度との重回帰式、または、離脱時刻と粘度と流体に関する他の物性(例えば密度、音速等)の重回帰式により、インク物性の一例である表面張力を算出できる。
【0104】
以上のように、本実施形態に係る吐出挙動評価システム1では、画像解析部402は、ノズル104から吐出されるインクがノズル104のノズル口120から離脱するまでの伸長挙動についての特徴量を算出し、演算処理部403は、画像解析部402により算出された特徴量に基づいて、インクのインク物性を算出するものとしている。これによって、インク物性を確実に測定し、装置の大型化および高価格化を抑制することができる。
【0105】
また、本実施形態に係る吐出挙動評価システム1では、演算処理部403は、特徴量に基づいて、インク物性として、インクの粘度または表面張力のうち少なくともいずれかを算出するものしている。これによって、吐出ヘッド100のノズル104から離脱後の液滴の飛翔形状を推定することができ、飛翔形状が影響する着弾後の画質を推定できる。
【0106】
なお、上述したインクの吐出挙動によるインク物性の測定方法は、通常のインクジェットプリンタでの吐出挙動だけではなく、例えば、3Dプリンタにおける吐出挙動にも適用することができる。3Dプリンタには様々な方式があるが、Jetting技術を用いたマテリアルジェット方式またはバインダージェット方式においては、材料または結合剤(液体の一例)を飛ばして造形物を形成している。通常のインクジェットプリンタの画質と同様に、材料または結合剤の飛翔状態によって、造形物の品質が影響を受けてしまう。したがって、上述の測定方法によって材料または結合剤の物性(液体物性の一例)を予め算出し、飛翔状態への影響を予測することにより、品質のよい造形物を作製可能な材料または結合剤であるかどうかを判断することができ、手戻りの少ない製品開発を行うことが可能となる。
【0107】
また、上述の実施形態において、情報処理装置400の機能の少なくともいずれかがプログラムの実行によって実現される場合、そのプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。また、上述の実施形態において、情報処理装置400で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk-Recordable)、またはDVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態において、情報処理装置400で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態において、情報処理装置400で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、上述の実施形態において、情報処理装置400で実行されるプログラムは、上述した各機能部のうち少なくともいずれかを含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上述の記憶装置からプログラムを読み出して実行することにより、上述の各機能部が主記憶装置上にロードされて生成されるようになっている。
【0108】
本発明の態様は、以下の通りである。
<1>ノズルから吐出される液体が前記ノズルの吐出口から離脱するまでの伸長挙動についての特徴量を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により算出された前記特徴量に基づいて、前記液体の液体物性を算出する第2算出部と、
を備えた液体物性測定装置である。
<2>前記第1算出部は、前記ノズルから吐出される前記液体が撮像装置により撮像された撮像画像に基づいて、前記特徴量を算出する前記<1>に記載の液体物性測定装置である。
<3>前記第2算出部は、前記特徴量と前記液体物性との相関性に基づいて、該液体物性を算出する前記<1>に記載の液体物性測定装置である。
<4>前記第1算出部は、前記液体の伸張挙動中の長さである液柱長さを前記特徴量として算出する前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の液体物性測定装置である。
<5>前記第1算出部は、前記液体の伸張挙動中の先端の速度である瞬間速度を前記特徴量として算出する前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の液体物性測定装置である。
<6>前記第1算出部は、前記液体の伸張挙動中の先端が第1位置から第2位置まで通過するまでの速度である区間速度を前記特徴量として算出する前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の液体物性測定装置である。
<7>前記第1算出部は、前記液体が前記ノズルから離脱したときの時刻である離脱時刻を前記特徴量として算出する前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の液体物性測定装置である。
<8>前記第1算出部は、前記液体が前記ノズルから離脱したときの該液体が形成する液柱の長さである離脱時液柱長さを前記特徴量として算出する前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の液体物性測定装置である。
<9>前記第2算出部は、前記特徴量に基づいて、前記液体物性として、前記液体の粘度または表面張力のうち少なくともいずれかを算出する前記<1>~<8>のいずれか一項に記載の液体物性測定装置である。
<10>ノズルから吐出される液体を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置により撮像された撮像画像に基づいて、前記液体が前記ノズルの吐出口から離脱するまでの伸長挙動についての特徴量を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により算出された前記特徴量に基づいて、前記液体の液体物性を算出する第2算出部と、
を有する液体物性測定システムである。
<11>ノズルから吐出される液体が前記ノズルの吐出口から離脱するまでの伸長挙動についての特徴量を算出する第1算出ステップと、
算出した前記特徴量に基づいて、前記液体の液体物性を算出する第2算出ステップと、
を有する液体物性測定方法である。
<12>コンピュータに、
ノズルから吐出される液体が前記ノズルの吐出口から離脱するまでの伸長挙動についての特徴量を算出する第1算出ステップと、
算出した前記特徴量に基づいて、前記液体の液体物性を算出する第2算出ステップと、
を実行させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0109】
1 吐出挙動評価システム
100 吐出ヘッド
101 流路板
102 振動板
103 ノズル板
104 ノズル
105 貫通孔
106 個別液室
107 連通部
108 液体導入部
109 フィルタ
110 共通液室
111 圧電ユニット
112 圧電素子
113 ベース部材
115 FPC
117 フレーム部材
120 ノズル口
150 コントローラ
150a 制御部
151 CPU
152 ROM
153 RAM
154 NVRAM
155 ASIC
156 吐出制御部
157 照射制御部
159 通信I/F
166 ヘッドドライバ
167 照射駆動回路
200 パルス光源
210 レンズ
300 カメラ
301 液柱
302 液柱
303 液滴
400 情報処理装置
401 画像処理部
402 画像解析部
403 演算処理部
411 画像記憶部
412 パラメータ記憶部
413 解析結果記憶部
500 インク
501 主滴
502 液柱
503 サテライト
504 ミスト
601 CPU
602 ROM
603 RAM
605 補助記憶装置
606 記録メディア
607 メディアドライブ
608 ディスプレイ
609 ネットワークI/F
610 バス
611 キーボード
612 マウス
613 DVD
614 DVDドライブ
1000 吐出画像
L1、L2 長さ
V1、V2 速度
T 時刻
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【特許文献1】特許第5455370号公報
【特許文献2】特許第5901064号公報