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特開2024-77592樹脂粒子、トナー、トナー収容ユニット、画像形成装置及び画像形成方法
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  • 特開-樹脂粒子、トナー、トナー収容ユニット、画像形成装置及び画像形成方法 図1
  • 特開-樹脂粒子、トナー、トナー収容ユニット、画像形成装置及び画像形成方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077592
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】樹脂粒子、トナー、トナー収容ユニット、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20240531BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240531BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20240531BHJP
   C08G 63/12 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G03G9/087 331
C08L67/02 ZAB
C08L101/12
C08G63/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175708
(22)【出願日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2022189373
(32)【優先日】2022-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】溝口 由花
(72)【発明者】
【氏名】武井 章生
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 純一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 彰法
(72)【発明者】
【氏名】行川 真広
【テーマコード(参考)】
2H500
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500CA06
2H500CA44
2H500EA39B
2H500EA40B
2H500EA42B
2H500EA45B
2H500EA60B
4J002AA01Y
4J002CF03Y
4J002CF05Z
4J002CF06X
4J002CF07X
4J002CF09W
4J002CF09X
4J002GS00
4J029AA05
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD10
4J029AE18
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BF24
4J029CA02
4J029CA04
4J029CB06A
4J029FC36
4J029JB131
4J029JF321
4J029KE03
4J029KE05
(57)【要約】
【課題】環境への負荷が少なく、低温定着性および耐熱保存性に優れた樹脂粒子を提供すること。
【解決手段】非晶質樹脂と、結晶性樹脂Cと、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートと、を含有する樹脂粒子であって、前記樹脂粒子は、コア樹脂とシェル樹脂とからなるコアシェル構造を有し、前記コア樹脂は、前記結晶性樹脂Cを含み、前記結晶性樹脂Cはバイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂を含み、前記樹脂粒子100質量%中におけるバイオマス由来樹脂と、前記ポリエチレンテレフタレート及び前記ポリブチレンテレフタレートとの合計質量が30質量%以上である、ことを特徴とする樹脂粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質樹脂と、結晶性樹脂Cと、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートと、を含有する樹脂粒子であって、
前記樹脂粒子は、コア樹脂とシェル樹脂とからなるコアシェル構造を有し、
前記コア樹脂は、前記結晶性樹脂Cを含み、
前記結晶性樹脂Cはバイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記樹脂粒子100質量%中におけるバイオマス由来樹脂と、前記ポリエチレンテレフタレート及び前記ポリブチレンテレフタレートとの合計質量が30質量%以上である、
ことを特徴とする樹脂粒子。
【請求項2】
前記バイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂のSP値と、前記樹脂粒子の前記コア樹脂のSP値と、の差が1.7以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
前記バイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂のSP値と、前記樹脂粒子の前記コア樹脂のSP値と、の差が1.6以下である、請求項2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
前記バイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂のSP値と、前記樹脂粒子の前記シェル樹脂のSP値と、の差が1.8以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
前記バイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂のSP値と、前記樹脂粒子の前記シェル樹脂のSP値と、の差が2.0以上である、請求項4に記載の樹脂粒子。
【請求項6】
前記樹脂粒子中のバイオマス由来樹脂と、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びPBT(ポリブチレンテレフタレート)と、の樹脂比率が、50%以上である、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂粒子を含むトナー。
【請求項8】
請求項7に記載のトナーを収容したことを特徴とするトナー収容ユニット。
【請求項9】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する、トナーを備える現像手段と、
前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を含み、
前記トナーが、請求項7に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着工程と、を含み、
前記トナーが、請求項7に記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子、トナー、トナー収容ユニット、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トナーには環境への負荷低減が求められている。その対応として、例えばトナー自体の低温定着性向上による消費電力の低減や、製造でのエネルギー削減や結着樹脂での植物(バイオマス)由来樹脂の採用などが検討されている。
【0003】
また、近年、人口の増加に伴いエネルギーの使用が拡大し資源の枯渇化に伴って、省資源・省エネルギー・資源のリサイクル等の必要性が重要視され始めている。PET(ポリエチレンテレフタレート)およびPBT(ポリブチレンテレフタレート)ボトルについても、各自治体がリサイクルを行い始めて、各種衣類や容器に利用され始めており、リサイクルPETやリサイクルPBTの再利用を可能とする新規用途開発の要望も高い。そのような観点から、回収ポリエチレンテレフタレートを原料として、トナー用結着樹脂を製造し、これを含有させたトナー(リサイクルトナー)が知られている。
【0004】
今日、上記植物由来の樹脂を使用して環境対応性を高めながらトナーとしての機能を向上させることが強く求められている。しかしながら、低温定着性を求めると、耐熱保存性が悪化してしまう傾向にある。
【0005】
特許文献1及び特許文献2ではバイオマスを含む結晶性樹脂を多く用いている技術が開示されており、結晶性樹脂のドメイン形状を規定した技術が開示されている。しかしながら、環境への負荷低減と低温定着性、保存性の両立は達成できていない。
しかしながら、先述したような環境への負荷低減性、低温定着性、及び耐熱保存性等のトナー品質としては満足のいくようなものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、環境への負荷が少なく、低温定着性および耐熱保存性に優れた樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に記載する通りの樹脂粒子に係るものである。
非晶質樹脂と、結晶性樹脂Cと、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートと、を含有する樹脂粒子であって、
前記樹脂粒子は、コア樹脂とシェル樹脂とからなるコアシェル構造を有し、
前記コア樹脂は、前記結晶性樹脂Cを含み、
前記結晶性樹脂Cはバイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記樹脂粒子100質量%中におけるバイオマス由来樹脂と、前記ポリエチレンテレフタレート及び前記ポリブチレンテレフタレートとの合計質量が30質量%以上である、
ことを特徴とする樹脂粒子。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、環境への負荷が少なく、低温定着性および耐熱保存性に優れた樹脂粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態の画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂粒子はコア樹脂およびシェル樹脂からなるコアシェル構造を持つ。
環境に配慮した樹脂粒子を達成するためには、バイオマス樹脂やリサイクル樹脂をより多く樹脂粒子に導入する必要があり、コアの非晶質樹脂だけでなく、シェルやその他の材料にもバイオマス樹脂やリサイクル樹脂を用いることが求められる。低温定着性を達成するために、結晶性ポリエステル樹脂を用いて、樹脂の可塑性を高めることができる。
【0011】
さらに、結晶性ポリエステル樹脂としてバイオマス由来の樹脂を用いることで、環境配慮との両立が可能となる。さらに、リサイクル品であるポリエチレンテレフタレート以下「PET」という)やポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」という)を用いると、低温定着のために不利となる耐熱保存性の課題に対しても、PETやPBTが有する芳香環骨格のために、トナーの強度を補い耐熱保存性との両立が可能となる。樹脂粒子中におけるバイオマス由来樹脂と、PET及びPBTとの樹脂比率が30質量%以上であると、環境配慮への効果は高いと認知されやすい。
本発明の樹脂粒子は、バイオマス由来樹脂並びにPET及び/又はPBTのそれぞれを5質量%以上含む。
さらに、樹脂比率を50質量%以上とすることで環境配慮への効果を格段に上げることができ、世の中へのインパクトも大きくなる。
【0012】
また、バイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂のSP値と樹脂粒子のコア樹脂のSP値との差を1.7以下にすることによって、樹脂粒子内部の相溶性に十分に効果が発揮でき、低温定着性に有利となる。
さらに、SP値の差が1.6以下とすることがより好ましい。
【0013】
また、バイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂のSP値と樹脂粒子のシェル樹脂のSP値の差が1.8以上であることで、コアに存在する結晶性ポリエステル樹脂とシェルを形成する樹脂とが相溶しにくくなり、熱特性に弱いコアをシェル部で守ることができ、耐熱保存性に効果がある。
さらに、SP値の差を2.0以上とすることがより好ましい。
本発明の樹脂粒子は上記条件を満たすものであれば本発明に含まれるが、トナーであると得られる効果がさらに高い。
【0014】
以下、本発明に係る樹脂粒子およびトナーについて説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0015】
本発明の樹脂粒子は以下のようにして製造することができる。
(油相作製工程)
本発明の樹脂粒子の製造方法においては、まず有機溶媒中に樹脂、着色剤、架橋成分、ワックスなどを溶解あるいは分散させた油相を作製する。油相作製方法としては、有機溶媒中に攪拌をしながら樹脂、着色剤などを徐々に添加していき、溶解あるいは分散させればよい。分散手段としては公知のものが使用でき、例えばビーズミルやディスクミルなどの分散機を用いることができる。
油相作製工程で使用する材料について説明する。
【0016】
<バイオマス由来樹脂>
バイオマス由来樹脂とは、植物由来の化合物を原料として含む樹脂である。アルコールと酸の成分を石油由来のものと植物由来のものとの比率を調整することで、環境対応比率とトナー品質を調整することができる。本発明におけるバイオマス樹脂量は、製造時のモノマー仕込量から算出したものである。
樹脂モノマー組成が不明な場合は下記のような方法によって、放射性炭素同位体14C濃度およびモノマーを特定することによって可能となる。
【0017】
(放射性炭素同位体14C濃度)
一実施形態に係る樹脂粒子の放射性炭素同位体14C濃度(以下、「14C濃度」と称することがある)は、10.8pMC以上であり、11pMC以上が好ましく、20pMC以上がより好ましく、30pMC以上がさらに好ましい。樹脂粒子の放射性炭素同位体14C濃度が10.8pMC未満であると、一般的に、後述するバイオマス度が低いと認知され易く、環境への負荷低減を実現できない。
【0018】
14C濃度は、自然界(大気中)に存在し、植物内が活動している間は光合成によって取り込まれ、大気中に存在する14C濃度と平衡(107.5pMC)となっている。しかし、生物が生命活動を停止した段階から光合成による取り込みが停止し、14Cの半減期である5,730年に従い14C濃度は減少する。生物を源とする化石資源は、生命活動停止から数万年~数億年を経過しているため、14C濃度は殆ど検出されない。
【0019】
ここで、「pMC」とは、パーセントモダンカーボン(percent Modern Carbon)の略であり、1950年のバイオマス中の14Cと12Cとの比(14C/12C)を100pMCと定義したものである。ただし、現在の大気中の炭素14濃度は、年々増加しているため補正のためにこの値に係数をかけることが規定されている。補正係数はその年度に応じた係数を使用することとする。
【0020】
14C濃度は、下記式(1)で算出されるバイオマス度としても表すことができる。
バイオマス度(%)=14C濃度(pMC)/107.5×100・・・式(1)
14C濃度が10.8pMC以上であるとは、バイオマス度が10%以上であることを意味している。前記バイオマス度が10%以上であることは、カーボンニュートラルの観点からも要望される濃度である。
【0021】
14C濃度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、放射性炭素年代測定法が特に好ましい。
放射性炭素年代測定法の測定手順としては、樹脂粒子を燃焼させて、その二酸化炭素(CO)を還元し、グラファイト(C)を得る。グラファイトの14C濃度を加速器質量分析装置(AMS:Accelerator Mass Spectroscopy、Beta Analytic社製)を用いて計測する。このAMSによる測定は、例えば、特許第4050051号等に開示されている。
【0022】
<リサイクル由来樹脂>
本発明で用いるリサイクル由来樹脂とは、原料の1つであるPETおよびPBTはリサイクル品をフレーク状に加工したものであり、重量平均分子量(Mw)で30,000~90,000程度のものであるが、PETおよびPBTの分子量分布、組成、製造方法、使用する際の形態等に制限されることはない。また、本発明におけるリサイクル由来樹脂とは、樹脂製品をリサイクルしたものだけでなく、製品化されなかったもの、例えばオフスペックの繊維クズやペレット等を含むものとする。ポリエステル樹脂合成時に、リサイクルPETを導入する比率を調整することで、環境対応比率とトナー品質を調整することができる。
【0023】
(非晶質樹脂)
非晶質樹脂は非晶質ポリエステル樹脂が好ましく、中でも線状のポリエステル樹脂が好ましく、また未変性ポリエステル樹脂が好ましい。さらには環境対応樹脂が好ましい。
前記未変性ポリエステル樹脂とは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるポリエステル樹脂であって、イソシアネート化合物などにより変性されていないポリエステル樹脂である。
前記非晶質ポリエステル樹脂としては、ウレタン結合及びウレア結合を有しないことが好ましい。
【0024】
<非晶質ポリエステル樹脂>
本発明で使用される非晶質ポリエステル樹脂としては、環境対応比率を調整するために、植物由来のアルコール及び酸成分を用いることが好ましい。同時に、PET(ポリエチレンテレフタレート)及びPBT(ポリブチレンテレフタレート)より合成されたポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
植物由来のアルコール成分としてはプロピレングリコール、酸成分としてはテレフタル酸やコハク酸を使用することが好ましい。これらに特に制限されることはなく、植物由来の成分であれば制限されない。
PET(ポリエチレンテレフタレート)及びPBT(ポリブチレンテレフタレート)はリサイクル品をフレーク状に加工したものであり、重量平均分子量(Mw)で30,000~100,000程度のものであるが、PET及びPBTの分子量分布、組成、製造方法、使用する際の形態等に制限されることはない。また、リサイクル品に制限されることはなく、オフスペックの繊維クズやペレットを用いても良い。
【0026】
前記非晶質ポリエステル樹脂は、構成成分としてジカルボン酸成分を含み、前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を50mol%以上含有することが好ましい。そうすることにより、耐熱保存性の点で有利である。
前記多価アルコールとしては、例えば、ジオールなどが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記多価カルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸;ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸などが挙げられる。
【0028】
これらの中でも、植物由来の飽和脂肪族のコハク酸を含むことが好ましい。
植物由来であることによりカーボンニュートラル性を高めることができる。飽和脂肪族は結晶性ポリエステル樹脂の再結晶化性を高める効果があり、結晶性ポリエステル樹脂のアスペクト比を高め、低温定着性を向上させることが出来る。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
また、酸価、水酸基価を調整する目的で、前記非晶質ポリエステル樹脂は、その樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸及び3価以上のアルコールの少なくともいずれかを含んでいてもよい。
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はそれらの酸無水物などが挙げられる。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0030】
前記非晶質ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、重量平均分子量(Mw)3,000~10,000であることが好ましい。数平均分子量(Mn)は、1,000~4,000であることが好ましい。Mw/Mnは、1.0~4.0であることが好ましい。
【0031】
分子量が上記下限値以上の場合、トナーの耐熱保存性や現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性が低下することを抑制することができる。分子量が上記上限値以下の場合、トナーの溶融時の粘弾性が高くなることを抑え、低温定着性が低下することを抑制することができる。
【0032】
前記重量平均分子量(Mw)は、4,000~7,000がより好ましい。前記数平均分子量(Mn)は、1,500~3,000がより好ましい。前記Mw/Mnは、1.0~3.5がより好ましい。
【0033】
前記非晶質ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。1mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gがより好ましい。前記酸価が、1mgKOH/g以上であることにより、トナーが負帯電性となりやすく、更には、紙への定着時に、紙とトナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。前記酸価が、50mgKOH/g以下であることにより、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することを抑制することができる。
前記非晶質ポリエステル樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0034】
前記非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上70℃以下がより好ましい。前記ガラス転移温度が、40℃以上であることにより、トナーの耐熱保存性、及び現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性が十分なものとなり、また、耐フィルミング性も良好となる。前記ガラス転移温度が、80℃以下であることにより、トナーの定着時における加熱及び加圧による変形が十分なものとなり、低温定着性が良好となる。
【0035】
前記非晶質ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを非晶質ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0036】
前記非晶質ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、50質量部~90質量部が好ましく、60質量部~80質量部がより好ましい。前記含有量が、50質量部以上であると、トナー中の顔料、離型剤の分散性が悪化することを抑制でき、画像のかぶりや乱れが生じることを抑制することができる。90質量部以下であると、結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量が少なくなることを防止し、低温定着性が低下することを抑制することができる。前記含有量が、前記のより好ましい範囲であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0037】
(結晶性樹脂)
本発明のトナーには、低温定着性向上のために、結晶性樹脂を添加することが好ましい。
結晶性樹脂としては、結晶性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、変性結晶性樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
(結晶性ポリエステル樹脂)
以下、結晶性ポリエステル樹脂について説明する。
前記結晶性ポリエステル樹脂(以下、「結晶性ポリエステル樹脂C」と称することがある。)は、高い結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度変化を示す熱溶融特性を示す。
【0039】
このような特性を有する前記結晶性ポリエステル樹脂Cを前記非晶質ポリエステル樹脂と共に用いることで、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。
例えば、共に用いることにより、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では結晶性ポリエステル樹脂Cの融解による急激な粘度低下(シャープメルト性)を起こし、それに伴い前述する非晶質ポリエステル樹脂と相溶し、共に急激に粘度低下することで良好に定着させることができる。
【0040】
結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体から得られる。なお、本発明において結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のように、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えばプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0041】
<<多価アルコール>>
前記多価アルコールとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、及び3価以上のアルコールが挙げられる。前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。
【0042】
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
<<多価カルボン酸>>
前記多価カルボン酸としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられる。更に、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルも挙げられる。
中でも、カーボンニュートラルの観点から、植物由来の炭素数が12以下の飽和脂肪族が好ましい。
【0044】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4~12の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。これにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れるため、優れた低温定着性を発揮できる。
また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性および軟化点を制御する方法として、ポリエステル合成時にアルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステルなどを設計、使用するなどの方法が挙げられる。
【0046】
本発明における結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができるが、簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1もしくは990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを例としてあげることができる。
【0047】
分子量については、上記の分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が悪化するという観点から、鋭意検討した結果、o-ジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる分子量分布で、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5~4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)で3,000~30,000、数平均分子量(Mn)で1,000~10,000、Mw/Mnが1~10であることが好ましい。
更には、重量平均分子量(Mw)で5,000~15,000、数平均分子量(Mn)で2,000~10,000、Mw/Mnが1~5であることが好ましい。
【0048】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、紙と樹脂との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するためにはその酸価が5mgKOH/g以上、転相乳化法による微粒子の作製のためには、7mgKOH/g以上であることがより好ましく、一方、ホットオフセット性を向上させるには45mgKOH/g以下のものであることが好ましい。また、結晶性高分子の水酸基価については、所定の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには0mgKOH/g~50mgKOH/g、より好ましくは5mgKOH/g~50mgKOH/gのものが好ましい。
【0049】
(着色剤)
本発明における着色剤としては公知の染料及び顔料が使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。
【0050】
(有機溶媒)
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の有機溶媒除去が容易になる点から好ましい。
このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。有機溶媒中に溶解あるいは分散させる樹脂がポリエステル骨格を有する樹脂である場合、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系の溶媒もしくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系の溶媒を用いた方が溶解性が高いので好ましく、この中では溶媒除去性の高い酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0051】
(プレポリマー)
本発明の樹脂粒子は、プレポリマーを含んでいてもよい。
反応性前駆体としては、活性水素基と反応可能な基を持つポリエステルが挙げられる。
前記活性水素基と反応可能な基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基などが挙げられる。これらの中でも、前記非晶質ポリエステル樹脂にウレタン結合又はウレア結合を導入可能な点で、イソシアネート基が好ましい。
前記反応性前駆体は、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかによって付与される分岐構造を有していても良い。
【0052】
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂としては、例えば、活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。前記活性水素基を有するポリエステル樹脂は、例えば、ジオールと、ジカルボン酸と、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかと重縮合することにより得られる。前記3価以上のアルコール及び前記3価以上のカルボン酸は、前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂に分岐構造を付与する。
【0053】
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂(A)のガラス転移点を20℃以下に制御する観点から、例えば、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の炭素数3以上10以下の脂肪族ジオールを使用することが好ましく、樹脂中のアルコール成分の50mol%以上使用することがより好ましい。これらのジオールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
プレポリマーは、樹脂鎖に立体障害を持たせることで定着時の溶融粘度が低下し、低温定着性がより発現しやすくなる。このため、前記脂肪族ジオールの主鎖は下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【化1】

[式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、nは3~9の奇数を表す。但し、n個の繰り返し単位において、R及びRはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0055】
ここで、本発明における前記脂肪族ジオールの主鎖とは、前記脂肪族ジオールが有する二つのヒドロキシル基間を最短数で結ばれた炭素鎖のことである。前記主鎖の炭素数は奇数である場合、偶奇性により結晶性が低下するので好ましい。また、少なくとも1つ以上の炭素数1~3のアルキル基を側鎖に有する場合、立体性により主鎖分子間の相互作用エネルギーが低下するのでより好ましい。
【0056】
前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。また、これらの無水物や低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、ハロゲン化物を用いても良い。これらの中でも、ポリエステル樹脂(A)のTgを20℃以下に制御する観点から、炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、樹脂中のカルボン酸成分の50質量%以上使用することがより好ましい。これらのジカルボン酸は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0057】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上の脂肪族アルコール;トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の3価以上のポリフェノール類;3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等の3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0058】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、3価以上の芳香族カルボン酸などが挙げられ、特にはトリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数9以上20以下の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。また、これらの無水物や、低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、ハロゲン化物を用いても良い。
【0059】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアネート、3価以上のイソシアネートなどが挙げられる。
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’-及び/又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)又はその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5~20質量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-及びp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-及び2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;m-及びp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香脂肪族ジイソシアネート;リジントリイソシアネート、3価以上のアルコールのジイソシアネート変性物等の3価以上のポリイソシアネート;これらのイソシアネートの変性物が挙げられ、これらの2種以上の混合物であっても良い。前記イソシアネートの変性物としては、例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物などが挙げられる。
【0060】
油相には、帯電制御剤などを添加してもよい。
【0061】
(帯電制御剤)
帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。 具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。帯電制御剤は性能を発現し定着性などへの阻害がない範囲の量で用いられればよく、トナー中に0.5~5質量%、好ましくは0.8~3質量%含まれるのが良い。
【0062】
(ワックス)
ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50℃~120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、前記樹脂と分散されることにより、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でもホットオフセット性が良好となる。
【0063】
離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類、等が好適に挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
環境負荷低減の観点からは、植物系ワックスが好ましい。
【0064】
ワックスの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃~120℃が好ましく、60℃~90℃がより好ましい。融点が、50℃以上であれば、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えるのを防止でき、120℃以下であれば、低温での定着時にコールドオフセットを起こすという問題を有効に防止できる。ワックスの溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5cps~1,000cpsが好ましく、10cps~100cpsがより好ましい。溶融粘度が、5cps以上であれば、離型性の低下を防止でき、1,000cps以下であれば、耐ホットオフセット性、低温定着性の効果が十分発揮できる。ワックスの前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0質量%~40質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましい。
【0065】
<樹脂粒子の製造方法>
一実施形態に係る樹脂粒子の製造方法について説明する。一実施形態に係る樹脂粒子の製造方法は、油相作製工程、水相作製工程、転相乳化工程、脱溶媒工程、凝集工程及び融着工程を含み、更に必要に応じて、シェル化工程、洗浄工程、乾燥工程、アニーリング工程及び外添工程等のその他の工程を含む。
【0066】
(油相作製工程)
油相作製工程では、まず有機溶媒中に、前記樹脂粒子の原料である、樹脂(非晶質樹脂及び結晶性樹脂等)、及びPET又はPBTと、更に必要に応じて、着色剤、プレポリマー(非晶質ポリエステル樹脂の前駆体)、ワックス等の材料等を溶解又は分散させて、油相を調製する。なお、前記材料の一部は後述する凝集工程で添加してもよい。
油相の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶媒中に、攪拌しながら、樹脂等の原料を徐々に添加し、溶解又は分散させる方法等が挙げられる。
分散に際しては、公知のものが使用でき、例えば、ビーズミル及びディスクミル等の分散機を用いることができる。
【0067】
油相調製工程に用いられる各原料は、上記の<樹脂粒子>の項目で説明したものを使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。樹脂(非晶質樹脂及び結晶性樹脂)の少なくとも何れか1つは、バイオマス由来樹脂であることが好ましい。
【0068】
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、沸点が100℃未満の揮発性溶媒であることが、後の有機溶媒除去が容易になる点から好ましい。
このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
有機溶媒中に溶解又は分散させる樹脂がポリエステル骨格を有する樹脂である場合、有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、又はメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒が、溶解性が高い点で好ましい。これらの中でも、有機溶媒としては、溶媒除去性が高い、酢酸メチル、酢酸エチル又はメチルエチルケトンが好ましい。
有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂粒子の原料100質量部に対し、40質量部以上300質量部以下が好ましく、60質量部以上140質量部以下がより好ましく、80質量部以上120質量部以下が更に好ましい。
【0070】
(水相調製工程)
水相調製工程では、水相(水系媒体)を調製する。
水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶剤、又はこれらの混合物が挙げられる。有機溶剤濃度は、造粒性の点からイオン交換水に対する飽和濃度以下であることが好ましい。
【0071】
水と混和可能な溶剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類又はエステル類等が挙げられる。
アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、又はエチレングリコール等が挙げられる。
低級ケトン類としては、例えば、アセトン、又はメチルエチルケトンが挙げられる。
エステル類としては、例えば、酢酸エチルが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
(転相乳化工程)
転相乳化工程では、油相作製工程で得られた油相を微粒子化する。
油相を中和した後、中和した油相にイオン交換水を添加していき、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる転相乳化によって微粒子分散液を得る。
転相乳化は、攪拌により行う。
通常の撹拌機や、分散装置を用いて均一に混合、分散させながら行う。
【0073】
攪拌翼としては、特に制限はなく、溶液の粘度に応じて適宜選択ができる。例として、パドルやプロペラ等の低粘度攪拌翼、アンカーやマックスブレンド等の中粘度攪拌翼、ヘリカルリボン等の高粘度攪拌翼があげられる。分散装置としては、特に限定は無く、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。通常の撹拌機と分散装置は併用しても良い。
これらの中でも、分散体(油滴)の体積平均粒径を前記好ましい範囲に制御することができる点で、パドルやアンカーが好ましい。
【0074】
前記油相を中和するための塩基としては、塩基性無機化合物、塩基性有機化合物のいずれを用いても良い。塩基性無機化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、アンモニアなどが挙げられる。塩基性有機化合物としては、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、イソプロピルアミン、モノメタノールアミン、モルホリン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、ビニルピリジン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0075】
攪拌翼を用いた場合の、回転数、攪拌時間、及び攪拌温度等の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
回転数としては、特に制限はなく、100rpm~1,000rpmが好ましく、200rpm~600rpmがより好ましい。
攪拌時間及び攪拌温度は、特に制限されず、目的に応じて適宜任意に選択してよい。
【0076】
また、必要に応じて分散剤を使用してもかまわない。分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0077】
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
陰イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0078】
(脱溶剤)
得られた着色微粒子分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を攪拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、得られた着色微粒子分散体を攪拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶媒を完全に除去することも可能である。もしくは、着色微粒子分散体を攪拌しながら減圧し、有機溶媒を蒸発除去しても良い。後の2つの手段は、最初の手段と併用することも可能である。
着色微粒子分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレードライヤー、ベルトドライヤー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分に目的とする品質が得られる。
以上の方法で、着色微粒子分散液を得ることが出来る。
【0079】
(凝集工程)
次に、得られた着色微粒子分散液を攪拌しながら任意の粒径になるまで凝集させる。
凝集させるためには、凝集剤を添加したり、pHを調整したりするなど、既存の方法が使用できる。凝集剤を添加する場合、そのまま添加してもよいが、凝集剤の水溶液にしたほうが局所的な高濃度化を避けることができるため好ましい。また、凝集塩は着色粒子の粒径を見ながら、徐々に添加することが好ましい。
【0080】
凝集時の分散液の温度は、使用する樹脂のTg付近であることが好ましい。液温が低すぎると凝集があまり進まないため効率が悪く、液温が高すぎると凝集速度が速くなり、粗大粒子が発生するなど粒径分布が悪化する。
【0081】
狙いの粒径に達したら、凝集を停止させる。凝集を停止させる方法としては、イオン価数の低い塩やキレート剤を添加する方法や、pHを調整する方法、分散液の温度を下げる方法、水系媒体を多量に添加して濃度を薄める方法などが使用できる。
以上の方法により、着色凝集粒子の分散液を得ることが出来る。
【0082】
凝集工程においては、離型剤としてワックスを添加してもよい。その場合、ワックスを水系媒体に分散させた分散液や、前記着色微粒子分散液と混合した上で凝集させていくことで、均一にワックスや結晶性樹脂が分散した凝集粒子を得ることが出来る。
【0083】
(凝集剤)
凝集剤としては、公知ものが使用できる。例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩や、カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩などが使用できる。
【0084】
(融着工程)
次に、得られた前記凝集粒子を熱処理によって融着させて凹凸を減らし、球形化を行う。融着は、着色凝集粒子の分散液を攪拌しながら加熱すればよい。液の温度は、使用している樹脂のTgを超えた温度付近が好ましい。
【0085】
(シェル化工程)
シェル化工程では、融着工程で得られた球形化粒子にシェル層を形成する。
シェル層を形成する方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。シェル層を形成する方法としては、例えば、融着工程で目的とする粒径の球形化した粒子を作製した後、非晶性樹脂を添加し、凝集工程及び融着工程を繰り返すことで、シェル層を形成する方法等が挙げられる。
【0086】
(洗浄、乾燥工程)
上記の方法で得られたトナー粒子分散液には、トナー粒子のほかに凝集塩などの副材料が含まれているため、分散液からトナー粒子のみを取り出すために洗浄を行う。トナー粒子の洗浄方法としては、遠心分離法、減圧濾過法、フィルタープレス法などの方法があるが、本発明においては特に限定されるものではない。いずれの方法によってもトナー粒子のケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合は、得られたケーキを再度水系溶媒に分散させてスラリーにして上記のいずれかの方法でトナー粒子を取り出す工程を繰り返しても良いし、減圧濾過法やフィルタープレス法によって洗浄を行うのであれば、水系溶媒をケーキに貫通させて着色樹脂粒子が抱き込んだ副材料を洗い流す方法を採っても良い。この洗浄に用いる水系溶媒は水あるいは水にメタノール、エタノールなどのアルコールを混合した混合溶媒を用いるが、コストや排水処理などによる環境負荷を考えると、水を用いるのが好ましい。
【0087】
洗浄されたトナー粒子は水系媒体を多く抱き込んでいるため、乾燥を行い水系媒体を除去することでトナー粒子のみを得ることができる。乾燥方法としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などの乾燥機を使用することができる。乾燥されたトナー粒子は最終的に水分が1%未満になるまで乾燥を行うのが好ましい。また、乾燥後の着色樹脂粒子は軟凝集をしており使用に際して不都合が生じる場合には、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、フードプロセッサーなどの装置を利用して解砕を行い、軟凝集をほぐしても良い。
【0088】
(アニーリング工程)
結晶性樹脂を添加した場合、乾燥後にアニーリング処理を行うことで、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とが相分離し、定着性が向上する。具体的には、Tg付近の温度で10時間以上保管すればよい。
【0089】
(外添工程)
本発明で得られたトナー粒子には、流動性、帯電性、クリーニング性などを持たせるために、無期微粒子や高分子系微粒子、クリーニング助剤などを添加、混合してもよい。
具体的な混合手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0090】
(外添剤)
無機微粒子の一次粒子径は、5nm~2μmであることが好ましく、特に5nm~500nmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20~500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01~5質量%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0091】
高分子系微粒子としては、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0092】
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコンオイル、変性シリコンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0093】
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μm~1μmのものが好ましい。
【0094】
一実施形態に係る樹脂粒子は、上記のような特性を有することから、トナー、現像剤、トナーセット、トナー収容ユニット及び画像形成装置等の画像形成用の材料として有効に用いることができる。
【0095】
<トナー>
一実施形態に係るトナーは、一実施形態に係る樹脂粒子を含み、一実施形態に係る樹脂粒子からなってもよい。
一実施形態に係る樹脂粒子をトナーに用いることで、環境負荷が抑えられ、植物由来樹脂を用いても、低温定着性及び帯電性に優れ、優れた画像品質を有する画像を提供することができる。
【0096】
<現像剤>
一実施形態に係る現像剤は、一実施形態に係るトナーを含み、必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含むことができる。これにより、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定して形成することができる。
現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上の点から、二成分現像剤であることが好ましい。
【0097】
一実施形態に係るトナーを一成分現像剤に用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミング及びトナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく抑えられ、現像装置において高画質な画像が得られる。
【0098】
一実施形態に係る現像剤を二成分現像剤に用いる場合には、キャリアと混合して現像剤として用いることができる。一実施形態に係るトナーを二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0099】
二成分現像剤中のキャリアの含有量は、目的に応じて適宜選択することができるが、二成分現像剤100質量部に対して、90質量部~98質量部が好ましく、93質量部~97質量部がより好ましい。
【0100】
一実施形態に係る現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0101】
[キャリア]
キャリアは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層(被覆層)とを有するものであることが好ましい。
【0102】
(芯材)
芯材の材料は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50emu/g~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、50emu/g~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料等が挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75emu/g~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30emu/g~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
芯材の体積平均粒径は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm~150μmが好ましく、40μm~100μmがより好ましい。体積平均粒径が10μm以上であれば、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがあるという問題を有効に防止できる。一方、150μm以下であれば、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがあるという問題を有効に防止することができる。
【0104】
(樹脂層)
樹脂層は、樹脂及び必要に応じてその他の成分を含有することができる。樹脂層に用いられる樹脂としては、必要な帯電性を付与できる公知の材料を使用できる。具体的にはシリコーン樹脂、アクリル樹脂、又はこれらを併用して使用することが好ましい。また樹脂層を形成するための組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
樹脂層の平均膜厚は、0.05μm~0.50μmであることが好ましい。
【0105】
(測定方法)
<樹脂のSP値>
本発明における樹脂のSP値は製造時のモノマー仕込量からFedors法により算出したものであり、単位は(cal/cm0.5である。
樹脂モノマー組成が不明な場合は下記のような方法によって、モノマーを特定することが可能である。
【0106】
<トナー構成成分のPETの算出方法及び分析方法>
前記PETの配合量は、どのような手法を用いて算出してもよい。例えば、トナーからゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等により分離を行い、その分離した各成分について後述の分析手法を採ることで、構成成分の質量比を算出することができる。
また、反応試薬(10%Tetramethyl ammonium hydroxide(TMAH)/Methanol溶液)による300℃のガスクロマトグラフ質量分析法により、樹脂構造中のエステル結合部をメチル化によるソフトな分解から、主な構成成分を推定し、TICC強度の検量線を引くことで定量分析が可能となる。
【0107】
GPCによる各成分の分離は、例えば、以下の方法により行うことができる。
THF(テトラヒドロフラン)を移動相としたGPC測定において、溶出液についてフ
ラクションコレクターなどにより分取を行い、溶出曲線の全面積分のうちの所望の分子量
部分に相当するフラクションをまとめる。
このまとめた溶出液をエバポレーターなどにより濃縮及び乾燥した後、固形分を重クロ
ロホルム又は重THFなどの重溶媒に溶解させ、H-NMR測定を行い、各元素の積分
比率から、溶出成分における樹脂の構成モノマー比率を算出する。
また、他の手法としては、溶出液を濃縮後、水酸化ナトリウムなどにより加水分解を行
い、分解生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより定性定量分析する
ことで構成モノマー比率を算出する。
【0108】
<<トナー構成成分の分離手段>>
前記トナーを分析する際の各成分の分離手段の一例を詳細に示す。
まず、トナー1gを100mLのTHF中に投入し、25℃の条件下、30分間攪拌しながら可溶分が溶解した溶解液を得る。
これを目開き0.2μmのメンブランフィルターにてろ過し、トナー中のTHF可溶分を得る。
次いで、これをTHFに溶解してGPC測定用の試料とし、前述の各樹脂の分子量測定に用いるGPCに注入する。
一方、GPCの溶出液排出口にフラクションコレクターを配置して、所定のカウントごとに溶出液を分取しておき、溶出曲線の溶出開始(曲線の立ち上がり)から面積率で5%毎に溶出液を得る。
【0109】
次いで、各溶出分について、1mLの重クロロホルムに30mgのサンプルを溶解させ、基準物質として0.05体積%のテトラメチルシラン(TMS)を添加する。
溶液を5mm径のNMR測定用ガラス管に充填し、核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製JNM-AL400)を用い、23℃~25℃の温度下、128回の積算を行い、スペクトルを得る。
トナーに含まれる前記PET樹脂などのモノマー組成、及び構成比率は得られたスペクトルのピーク積分比率から求めることができる。
【0110】
<放射性同位体14C濃度の測定方法>
トナーの放射性炭素同位体14C濃度は、放射性炭素年代測定により測定した。トナーを燃焼させて、そのCO(二酸化炭素)を還元し、C(グラファイト)を得た。該C(グラファイト)の14C濃度をAMS(Accelerator Mass Spectroscopy、Beta Analytic社製)を用いて計測した。
【0111】
<コアシェル構造の確認>
[TEMによる観察及び測定]
作製したトナーをエポキシ系樹脂に包埋して硬化させる。ウルトラミクロトーム(Leica社製 ULTRACUT UCT、ダイヤナイフ使用)でトナーの超薄切片(100nm厚さ前後)を作製する。
四酸化ルテニウム、あるいは四酸化オスミウム、あるいは別の染色剤で試料をガス暴露し、結晶性ポリエステル樹脂相とそれ以外の部分に識別染色する。暴露時間は観察時のコントラストにより適宜調整する。結晶性ポリエステル樹脂相はラメラ構造が観察される場合が多い。その後透過型電子顕微鏡(JEM-2100 JEOL社製)により加速電圧100kVで観察する。なお結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂の組成により、未染色で識別可能な場合もあり、その場合は未染色で評価する。また選択エッチング等別の手段で組成コントラストを付与することも可能で、そのような前処理後に透過型顕微鏡で観察し、結晶性ポリエステル樹脂部を評価してもよい。
【0112】
(トナー収容ユニット)
本発明におけるトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものをいう。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えばトナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジ等があげられる。
トナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
プロセスカートリッジとは、少なくとも像担持体と現像手段とを一体とし、トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、クリーニング手段から選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。
【0113】
(画像形成装置)
次に、本発明の画像形成装置により画像を形成する方法を実施する一の態様について、
図1を参照しながら説明する。本実施形態の画像形成装置としては、プリンターが例として示されているが、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、複合機等のトナーを用いて画像を形成することが可能であれば、特に限定されない。
画像形成装置は、給紙部210と、搬送部220と、作像部230と、転写部240と、定着器250とを備えている。
給紙部210は、給紙される紙Pが積載された給紙カセット211と、給紙カセット211に積載された紙Pを一枚ずつ給紙する給紙ローラ212を備えている。
【0114】
搬送部220は、給紙ローラ212により給紙された紙Pを転写部240の方向へ搬送するローラ221と、ローラ221により搬送された紙Pの先端部を挟み込んで待機し、紙を所定のタイミングで転写部240に送り出す一対のタイミングローラ222と、カラートナー像が定着した紙Pを排紙トレイ224に排出する排紙ローラ223を備えている。
【0115】
作像部230は、所定の間隔をおいて、図中、左方から右方に向かって順に、イエロートナーを有した現像剤を用いて画像を形成する画像形成ユニットYと、シアントナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットCと、マゼンタトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットMと、ブラックトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットKと、露光器233を備えている。
なお、画像形成ユニット(Y,C,M,K)のうち、任意の画像形成ユニットを示す場合には、単に「画像形成ユニット」という。
【0116】
また、現像剤は、トナーとキャリアを有する。4つの画像形成ユニット(Y,C,M,
K)は、それぞれに用いられる現像剤が異なるのみで、機械的な構成は実質的に同一である。
【0117】
転写部240は、駆動ローラ241及び従動ローラ242と、駆動ローラ241の駆動に伴い、図中、反時計回りに回転することが可能な中間転写ベルト243と、中間転写ベルト243を挟んで、感光体ドラム231に対向して設けられた一次転写ローラ(244Y,244C,244M,244K)と、トナー像の紙への転写位置において中間転写ベルト243を挟んで対向して設けられた二次対向ローラ245及び二次転写ローラ246を備えている。
【0118】
定着器250は、ヒータが内部に設けられており、紙Pを加熱する定着ベルト251と、該定着ベルト251に対して回転可能に加圧することによりニップを形成する加圧ローラ252とを備えている。これにより、紙P上のカラートナー像に熱と圧力が印加されて、カラートナー像が定着する。カラートナー像が定着した紙Pは、排紙ローラ223により排紙トレイ224に排紙され、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0119】
(プロセスカートリッジ)
本発明に関するプロセスカートリッジは、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に担持された静電潜像を本発明の現像剤で現像してトナー像を形成する現像手段を少なくとも有する。なお、本発明のプロセスカートリッジは、必要に応じて、他の手段をさらに有していてもよい。
【0120】
前記現像手段としては、本発明の現像剤を収容する現像剤収容部と、現像剤収容部内に収容された現像剤を担持するとともに搬送する現像剤担持体を少なくとも有する。なお、現像手段は、担持する現像剤の厚さを規制するため規制部材等をさらに有してもよい。
【0121】
図2に、本発明に関するプロセスカートリッジの一例を示す。プロセスカートリッジ110は、感光体ドラム10、コロナ帯電器58、現像器40、転写ローラ80及びクリーニング装置90を有する。
【実施例0122】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記実施例に何ら限定されるものではない。
また、以下の記載においては特に明記しない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
【0123】
<非晶質ポリエステル樹脂A-1の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、プロピレングリコールとビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とがモル比(プロピレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で60/40であり、テレフタル酸とコハク酸とがモル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1となるように仕込み、さらに、フレーク状のリサイクルPETを15%の割合で仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]を得た。
【0124】
<非晶質ポリエステル樹脂A-2の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、プロピレングリコールとビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とがモル比(プロピレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で60/40であり、テレフタル酸とコハク酸とがモル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1となるように仕込み、さらに、フレーク状のリサイクルPETを25%の割合で仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂A-2]を得た。
【0125】
<非晶質ポリエステル樹脂A-3の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、テレフタル酸とコハク酸とがモル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1となるように仕込み、さらに、フレーク状のリサイクルPETを30%の割合で仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂A-3]を得た。
【0126】
<非晶質ポリエステル樹脂A-4の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、テレフタル酸とコハク酸とがモル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1となるように仕込み、さらに、フレーク状のリサイクルPETを45%の割合で仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂A-4]を得た。
【0127】
<非晶質ポリエステル樹脂A-5の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、プロピレングリコールとビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とがモル比(プロピレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で60/40であり、テレフタル酸とコハク酸とがモル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1となるように仕込み、さらに、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂A-5]を得た。
【0128】
<非晶質ポリエステル樹脂B-1の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、プロピレングリコールとビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とがモル比(プロピレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で30/70であり、テレフタル酸とコハク酸とがモル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1となるように仕込み、さらにフレーク状のリサイクルPETを10%の割合で仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を得た。
【0129】
<非晶質ポリエステル樹脂B-2の合成>
前記[非晶質ポリエステル樹脂A-1]を[非晶質ポリエステル樹脂B-2]とした。
【0130】
<非晶質ポリエステル樹脂B-3の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、プロピレングリコールとビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とがモル比(プロピレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で60/40であり、テレフタル酸とコハク酸とがモル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1となるように仕込み、さらに、フレーク状のリサイクルPETを30%の割合で仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-3]を得た。
【0131】
<非晶質ポリエステル樹脂B-4の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、プロピレングリコールとビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とがモル比(プロピレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で30/70であり、テレフタル酸とコハク酸とがモル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1となるように仕込み、さらにチタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-4]を得た。
【0132】
<非晶質ポリエステル樹脂B-5の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、プロピレングリコールとビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とがモル比(プロピレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で60/40であり、テレフタル酸とコハク酸とがモル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1となるように仕込み、さらにチタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-5]を得た。
【0133】
<マスターバッチ用非晶質ポリエステル樹脂MBの合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、テレフタル酸とコハク酸とがモル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1となるように仕込み、さらに、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[マスターバッチ用非晶質ポリエステル樹脂MB]を得た。
【0134】
<結晶性ポリエステル樹脂C-1の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、植物由来の1、12-ドデカン二酸、及び植物由来の1,9-ノナンジオールを、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1、さらに無水トリメリット酸を0.047モル比となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、更に8.3kPaの圧力にて2時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を得た。
【0135】
<結晶性ポリエステル樹脂C-2の合成>
無水トリメリット酸の量を0.086モル比に変えた以外は、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の合成と同様にして、[結晶性ポリエステル樹脂C-2]を得た。
【0136】
<結晶性ポリエステル樹脂C-3の合成>
植物由来のセバシン酸、及び植物由来の1,6-ヘキサンジオール、無水トリメリット酸の量を0.055モル比に変えた以外は、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の合成と同様にして、[結晶性ポリエステル樹脂C-3]を得た。
【0137】
<結晶性ポリエステル樹脂C-4の合成>
植物由来のセバシン酸、及び植物由来のエチレングリコール、無水トリメリット酸の量を0.055モル比に変えた以外は、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の合成と同様にして、[結晶性ポリエステル樹脂C-4]を得た
【0138】
<結晶性ポリエステル樹脂C-5の合成>
石油由来の1、12-ドデカン二酸、及び石油由来の1,9-ノナンジオール、及び無水トリメリット酸の量を0.086モル比に変えた以外は、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の合成と同様にして、[結晶性ポリエステル樹脂C-5]を得た。
【0139】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液1の作製>
[結晶性ポリエステル樹脂C-1]350部と、メチルエチルケトン210部、イソプロピルアルコール61.8部をセパラブルフラスコに入れ、これを50℃で充分混合、溶解した後、10%アンモニア水溶液を16.24部滴下した。加熱温度を65℃に下げ、攪拌しながらイオン交換水を、送液ポンプを用いて送液速度8g/minで滴下し、液が均一に白濁したのち、送液速度12g/minに上げ、総液量が1400部になったところで、イオン交換水の滴下を止めた。その後、減圧下で溶媒の除去を行い、[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]を得た。
【0140】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液2~5の作製>
[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-2~C-5]に変えた以外は、[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]の作製と同様にして、[結晶性ポリエステル樹脂分散液2~5]を得た。
【0141】
<WAX分散液の作製>
イオン交換水720部にエステルワックス180部(日油製、WE-11、植物由来モノマーの合成ワックス、融点67℃)、界面活性剤としてアニオン系界面活性剤17部(第一工業製薬製、ネオゲンSC、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を添加した。これを90℃に加熱しながらホモジナイザーで分散処理し、[WAX分散液W-1]を得た。得られたワックス分散液の固形分濃度は25%であった。
【0142】
<マスターバッチMB-1の調製>
水1,200部、カーボンブラック(Printex35、デクサ社製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕500部、及び[マスターバッチ用非晶質ポリエステル樹脂MB]500部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、混合物を、2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチMB-1]を得た。
【0143】
【表1】
【0144】
(実施例1)
<油相の調製>
[CPES分散液C-2]100部、[WAX分散液W-1]50部、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]550部、[マスターバッチMB-1]100部を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で5,000rpmで60分間混合し、[油相1]を得た。
なお、上記配合量は、各原材料における固形分の配合量を示す。
【0145】
<水相の調製>
水990部、ドデシル硫酸ナトリウム20部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とした。
【0146】
<乳化>
[油相1]700部をTKホモミキサーで、回転数8,000rpmで撹拌しながら28%アンモニア水20部を加え、10分間混合した後、[水相1]1,200部を徐々に滴下していき、[乳化スラリー1]を得た。
【0147】
<脱溶剤>
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃180分脱溶剤した後、[脱溶剤スラリー1]を得た。
【0148】
<シェル分散液の調製>
(シェル樹脂溶解液の作成)
[非晶質ポリエステル樹脂A-1]200部、メチルエチルケトン200部を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で5,000rpmで60分間混合し、[シェル樹脂溶解液A-1]を得た。得られた油相の固形分は50%であった。
【0149】
(シェル水相の調製)
水468部、メチルエチルケトン132部を混合撹拌した。これを[シェル水相1]とした。
【0150】
(シェルエマルジョン乳化)
[シェル樹脂溶解液A-1]の溶解液400部をTKホモミキサーで、回転数8,000rpmで撹拌しながら、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]の酸価に対して中和率100%になるようにして28%アンモニア水5.9部を加え、10分間混合した後、[シェル水相1]600部を徐々に滴下していき、[シェル樹脂溶解液1]を転相乳化した。さらに[シェル樹脂溶解液1]の転相乳化したものをエバポレーターで脱溶剤して[シェル分散液A-1]を得た。
【0151】
<凝集>
[脱溶剤スラリー1]に3%塩化マグネシウム溶液100部を滴下して更に5分攪拌した後、60℃に昇温し、粒径が5.0μmになったところで[シェル分散液A-1]200部を滴下し、3%塩化マグネシウム溶液100部を更に滴下して5分攪拌した後、硫酸ナトリウム水溶液を50部添加して凝集工程を終了し、[凝集スラリー1]を得た。
【0152】
<融着>
[凝集スラリー1]を攪拌しながら70℃に加熱して、所望の平均円形度である0.957になったところで冷却し、[分散スラリー1]を得た。
【0153】
<洗浄・乾燥>
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する、
という前記(1)~(4)の操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い[樹脂粒子母体1]を得た。
【0154】
<外添剤処理工程>
[樹脂粒子母体1]100部に対して、外添剤として疎水性シリカ(HDK-2000、クラリアント株式会社製)2.0部をヘンシェルミキサーにて混合し、目開き500メッシュの篩を通過させ、[樹脂粒子1]を得た。
【0155】
各工程で添加するWAX、結晶性樹脂、非結晶性樹脂の種類を、表1に記載した通りに変更した以外は[樹脂粒子1]と同様に作成し、[樹脂粒子2]~[樹脂粒子12]を作成した。
【0156】
これらの樹脂粒子のSP値と環境比率、低温定着性、耐熱保存性、耐フィルミング性の評価を行った結果を表2に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
(評価方法)
<低温定着性>
imagio MP C5503(株式会社リコー製)に使用されているキャリアと上記で得られた樹脂粒子とを、樹脂粒子の濃度が5質量%となるように混合し、現像剤を得た。
imagio MP C5503(株式会社リコー製)のユニットに現像剤を投入した後、PPC用紙タイプ6000<70W>A4 T目(株式会社リコー製)に2cm×15cmの長方形のベタ画像をトナーの付着量が0.40mg/cmとなるように形成した。このとき、定着ローラの表面温度を変化させ、ベタ画像の現像残画像が所望の場所以外の場所に定着されるコールドオフセットが発生するかどうかを観察し、低温定着性を評価した。
〔評価基準〕
◎:110℃未満
〇:110℃以上120℃未満
△:120℃以上130℃未満
×:130℃以上
【0159】
<耐熱保存性>
熱保存性の評価ガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽にて24時間放置した。
このトナーを24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235-1991)にて針入度を測定する。
針入度に基づく熱保存性の判定基準は次のとおりである。
〔評価基準〕
○:25mm以上
△:10mm以上25mm未満
×:10mm未満
【0160】
<環境対応性>
樹脂粒子の質量に対するバイオマス由来樹脂及びリサイクル樹脂の合計質量の割合(下記計算式参照)を「樹脂比率」と定義し、この樹脂比率について下記の評価基準によって環境対応性を評価した。
樹脂比率
=[(バイオマス由来樹脂+リサイクル樹脂)/樹脂粒子]×100
(評価基準)
◎:樹脂比率 50%以上
○:樹脂比率 40%以上50%未満
△:樹脂比率 30%以上40%未満
×:樹脂比率 30%未満
【0161】
本発明の態様は例えば以下の通りである。
(1)非晶質樹脂と、結晶性樹脂Cと、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートと、を含有する樹脂粒子であって、
前記樹脂粒子は、コア樹脂とシェル樹脂とからなるコアシェル構造を有し、
前記コア樹脂は、前記結晶性樹脂Cを含み、
前記結晶性樹脂Cはバイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記樹脂粒子100質量%中におけるバイオマス由来樹脂と、前記ポリエチレンテレフタレート及び前記ポリブチレンテレフタレートとの合計質量が30質量%以上である、
ことを特徴とする樹脂粒子。
(2)前記バイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂のSP値と、前記樹脂粒子の前記コア樹脂のSP値と、の差が1.7以下であることを特徴とする上記(1)に記載の樹脂粒子。
(3)前記バイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂のSP値と、前記樹脂粒子の前記コア樹脂のSP値と、の差が1.6以下である、上記(1)又は(2)に記載の樹脂粒子。
(4)前記バイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂のSP値と、前記樹脂粒子の前記シェル樹脂のSP値と、の差が1.8以上であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の樹脂粒子。
(5)前記バイオマス由来の結晶性ポリエステル樹脂のSP値と、前記樹脂粒子の前記シェル樹脂のSP値と、の差が2.0以上である、上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の樹脂粒子。
(6)前記樹脂粒子中のバイオマス由来樹脂と、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びPBT(ポリブチレンテレフタレート)と、の樹脂比率が、50%以上である、上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の樹脂粒子。
(7)上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の樹脂粒子を含むトナー。
(8)上記(7)に記載のトナーを収容したことを特徴とするトナー収容ユニット。
(9)静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する、トナーを備える現像手段と、
前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を含み、
前記トナーが、上記(7)に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
(10)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着工程と、を含み、
前記トナーが、上記(7)に記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0162】
【特許文献1】特許4512631号公報
【特許文献2】特許5717615号公報
図1
図2