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特開2024-77691プリプレグ、積層板、プリント配線板、半導体パッケージ及び積層板の製造方法
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  • 特開-プリプレグ、積層板、プリント配線板、半導体パッケージ及び積層板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077691
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】プリプレグ、積層板、プリント配線板、半導体パッケージ及び積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20240603BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240603BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240603BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20240603BHJP
【FI】
B29B11/16
H05K1/03 610T
H05K3/00 R
B29K105:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189781
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】登内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 貴代
(72)【発明者】
【氏名】中西 晃太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 広明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD18
4F072AD27
4F072AD45
4F072AE01
4F072AE02
4F072AF03
4F072AF06
4F072AG03
4F072AG19
4F072AH02
4F072AH25
4F072AJ22
4F072AK14
4F072AL13
(57)【要約】
【課題】目付量が110g/m以上である繊維基材を用いた場合においても厚さ精度に優れる積層板が得られ、かつ成形性に優れるプリプレグ、該プリプレグを用いた積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供する。
【解決手段】繊維基材及び樹脂組成物を含有し、前記繊維基材の目付量が、110g/m以上であり、前記樹脂組成物が、測定温度範囲60~180℃、昇温速度3℃/分の動的粘弾性測定によって求められる温度-溶融粘度曲線において、溶融粘度が10,000Pa・s以下である温度域Aを有し、前記温度域Aの最低温度a1と最高温度a2との温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕が、50~60℃である、プリプレグ、該プリプレグを用いた積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ並びに積層板の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材及び樹脂組成物を含有し、
前記繊維基材の目付量が、110g/m以上であり、
前記樹脂組成物が、測定温度範囲60~180℃、昇温速度3℃/分の動的粘弾性測定によって求められる温度-溶融粘度曲線において、溶融粘度が10,000Pa・s以下である温度域Aを有し、
前記温度域Aの最低温度a1と最高温度a2との温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕が、50~60℃である、プリプレグ。
【請求項2】
前記繊維基材が、ガラスクロスである、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記ガラスクロスを構成する経糸の織密度が55本/25mm以上であり、緯糸の織密度が50本/25mm以上である、請求項2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記繊維基材の厚さが、50~150μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記温度域Aの最低温度a1が、60~140℃である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記樹脂組成物の最低溶融粘度が、500~5,000Pa・sである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグの硬化物と、金属箔と、を有する積層板。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグの硬化物を有するプリント配線板。
【請求項9】
請求項8に記載のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージ。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグと、金属箔と、を積層する、積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、プリプレグ、積層板、プリント配線板、半導体パッケージ及び積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化及び高機能化が進んでおり、電子機器に搭載される半導体装置の高集積化が進展している。これに伴い、プリント配線板に使用される金属張積層板、半導体パッケージ等に対しては、従来より高い品質が要求されるようになっている。
例えば、金属張積層板に対しては、得られるプリント配線板の生産性を高める観点から、従来よりも高度な厚さ精度が求められている。
【0003】
特許文献1には、基材を樹脂液中に通して浸漬後、乾燥させる方法によってプリプレグを製造する方法において、乾燥過程又は乾燥終了後にプリプレグをロールで加圧することによってプリプレグ表面に発生する凸状の樹脂突起物をつぶし、表面の平滑性を向上させることを特徴とするプリプレグの製造方法が記載されている。
特許文献2には、樹脂組成物を織布基材に含浸させ、加熱乾燥して形成されるプリプレグであって、前記樹脂組成物が所定の樹脂流れ及び粘度挙動を満たす、プリプレグが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01-272416号公報
【特許文献2】特開2016-69389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、プリプレグの表面を機械的に加圧して平滑性の向上を図るものである。しかしながら、近年において要求されるレベルの厚さ精度を、特許文献1の技術によって達成することは困難である。
また、近年、プリプレグの機械強度、低熱膨張性等の向上を目的として、目付量が大きい繊維基材が使用される場合がある。本発明者等の検討によると、目付量が大きい繊維基材を使用する際に、プリプレグの成形性が悪化することが判明している。
そのため、プリプレグに対しては、目付量が大きい繊維基材を用いた場合においても厚さ精度に優れる積層板が得られ、かつ成形性に優れることが要求されている。しかしながら、特許文献1及び2の技術は、これらの要求に十分に応えられていなかった。
【0006】
本実施形態は、このような現状に鑑み、目付量が110g/m以上である繊維基材を用いた場合においても厚さ精度に優れる積層板が得られ、かつ成形性に優れるプリプレグ、該プリプレグを用いた積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ並びに積層板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の本実施形態によって、上記課題を解決できることを見出した。
[1]繊維基材及び樹脂組成物を含有し、
前記繊維基材の目付量が、110g/m以上であり、
前記樹脂組成物が、測定温度範囲60~180℃、昇温速度3℃/分の動的粘弾性測定によって求められる温度-溶融粘度曲線において、溶融粘度が10,000Pa・s以下である温度域Aを有し、
前記温度域Aの最低温度a1と最高温度a2との温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕が、50~60℃である、プリプレグ。
[2]前記繊維基材が、ガラスクロスである、上記[1]に記載のプリプレグ。
[3]前記ガラスクロスを構成する経糸の織密度が55本/25mm以上であり、緯糸の織密度が50本/25mm以上である、上記[2]に記載のプリプレグ。
[4]前記繊維基材の厚さが、50~150μmである、上記[1]~[3]のいずれかに記載のプリプレグ。
[5]前記温度域Aの最低温度a1が、60~140℃である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のプリプレグ。
[6]前記樹脂組成物の最低溶融粘度が、500~5,000Pa・sである、上記[1]~[5]のいずれかに記載のプリプレグ。
[7]上記[1]~[5]のいずれかに記載のプリプレグの硬化物と、金属箔と、を有する積層板。
[8]上記[1]~[5]のいずれかに記載のプリプレグの硬化物を有するプリント配線板。
[9]上記[8]に記載のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージ。
[10]上記[1]~[5]のいずれかに記載のプリプレグと、金属箔と、を積層する、積層板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によると、目付量が110g/m以上である繊維基材を用いた場合においても厚さ精度に優れる積層板が得られ、かつ成形性に優れるプリプレグ、該プリプレグを用いた積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ並びに積層板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】温度域Aを説明するための温度-溶融粘度曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
例えば、数値範囲「X~Y」(X、Yは実数)という表記は、X以上、Y以下である数値範囲を意味する。そして、本明細書における「X以上」という記載は、X及びXを超える数値を意味する。また、本明細書における「Y以下」という記載は、Y及びY未満の数値を意味する。
本明細書中に記載されている数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の下限値又は上限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本明細書において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
本明細書において「固形分」とは、溶媒以外の成分を意味し、室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含む。ここで、本明細書において室温とは25℃を意味する。
【0014】
本明細書における「半硬化物」とは、JIS K 6800(2006)におけるB-ステージの状態にある樹脂組成物と同義であり、「硬化物」とは、JIS K 6800(2006)におけるC-ステージの状態にある樹脂組成物と同義である。
【0015】
本明細書に記載されている作用機序は推測であって、本実施形態の効果を奏する機序を限定するものではない。
【0016】
本明細書の記載事項を任意に組み合わせた態様も本実施形態に含まれる。
【0017】
[プリプレグ]
本実施形態のプリプレグは、
繊維基材及び樹脂組成物を含有し、
前記繊維基材の目付量が、110g/m以上であり、
前記樹脂組成物が、測定温度範囲60~180℃、昇温速度3℃/分の動的粘弾性測定によって求められる温度-溶融粘度曲線において、溶融粘度が10,000Pa・s以下である温度域Aを有し、
前記温度域Aの最低温度a1と最高温度a2との温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕が、50~60℃である、プリプレグである。
【0018】
本実施形態のプリプレグが、目付量が110g/m以上である繊維基材を用いた場合においても厚さ精度に優れる積層板が得られ、かつ成形性に優れる理由は定かではないが、次のように推測される。
目付量が大きい繊維基材を含むプリプレグ中の樹脂組成物は、繊維基材が流動の障害になるため、十分な成形性が得られ難い。一方、プリプレグ中の樹脂組成物の流動性を高くしすぎると、プリプレグを成形する際に樹脂の流れ出しが生じ、得られる積層板に厚さバラつきが生じ易くなる。本実施形態のプリプレグが有する温度域Aは、樹脂組成物が適度に流動可能な温度域であり、当該温度域Aの幅、つまり、最低温度a1と最高温度a2との温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕は、プレス成形時に生じ得る樹脂組成物の流動の程度の指標になり得る。すなわち、本実施形態のプリプレグは、樹脂組成物の上記温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕を50~60℃という範囲に調整することによって、良好な成形性が得られる程度に樹脂組成物が流動し、かつ、積層板の厚さ精度が良好に保たれる程度に樹脂組成物の流動性が抑えられたと推測される。
更には、本実施形態のプリプレグは、上記のように樹脂組成物の流動性の制御によって積層板の厚さ精度及びプリプレグの成形性を良好にできるため、プリプレグの製造方法は、特に制限されず、製造方法の制約が少ない。本実施形態のプリプレグの製造方法は、有機溶媒で希釈した熱硬化性樹脂組成物に繊維基材を浸漬後、乾燥させる方法であってもよく、繊維基材の両面にフィルム状の熱硬化性樹脂組成物をラミネートする方法であってもよい。
【0019】
<繊維基材>
本実施形態のプリプレグが含有する繊維基材の目付量は、110g/m以上である。
繊維基材の目付量が、110g/m以上であることによって、本実施形態のプリプレグは、機械強度、低熱膨張性等に優れる傾向にある。
繊維基材の目付量は、好ましくは111~150g/m、より好ましくは112~130g/m、さらに好ましくは113~120g/mである。
繊維基材の目付量が上記下限値以上であると、プリプレグの機械強度及び低熱膨張性をより向上させ易い傾向にある。
【0020】
繊維基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有する。
繊維基材は、樹脂組成物の含浸性等の観点から、カップリング剤で表面処理したものであってもよく、機械的に開繊処理を施したものであってもよい。
【0021】
繊維基材を構成する繊維としては、例えば、ガラス繊維等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、低熱膨張性の観点から、無機物繊維が好ましく、ガラス繊維がより好ましい。ガラス繊維としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Tガラス、Sガラス等が挙げられる。
【0022】
繊維基材は、機械強度、低熱膨張性、汎用性等の観点から、ガラスクロスであることが好ましい。
ガラスクロスを構成する経糸の織密度は、好ましくは55本/25mm以上であり、緯糸の織密度は、好ましくは50本/25mm以上である。
ガラスクロスを構成する経糸及び緯糸の織密度が上記範囲であると、プリプレグの機械強度及び低熱膨張性がより良好になる傾向にある。
同様の観点から、ガラスクロスを構成する経糸の織密度は、より好ましくは57~75本/25mm、さらに好ましくは60~70本/25mm、特に好ましくは63~67本/25mmであり、ガラスクロスを構成する緯糸の織密度は、より好ましくは54~72本/25mm、さらに好ましくは57~67本/25mm、特に好ましくは60~64本/25mmである。
【0023】
繊維基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは50~150μm、より好ましくは70~130μm、さらに好ましくは90~110μmである。
繊維基材の厚さが上記下限値以上であると、プリプレグの機械強度及び低熱膨張性をより向上させ易い傾向にある。また、繊維基材の厚さが上記上限値以下であると、プリプレグを用いて作製するプリント配線板を高密度配線化させ易い傾向にある。
【0024】
<樹脂組成物>
本実施形態のプリプレグが含有する樹脂組成物は、測定温度範囲60~180℃、昇温速度3℃/分の動的粘弾性測定によって求められる温度-溶融粘度曲線において、溶融粘度が10,000Pa・s以下である温度域Aを有し、前記温度域Aの最低温度a1と最高温度a2との温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕が、50~60℃である。
【0025】
図1に、温度域Aを説明するための温度-溶融粘度曲線を示す。
本実施形態のプリプレグが含有する樹脂組成物は、室温で固体であるため、昇温条件下の動的粘弾性測定を開始後、溶融し粘度が低下する。溶融粘度は図1に示す点1で10,000Pa・sに到達し、さらに10,000Pa・sを下回って、最低溶融粘度(図1の点2)に到達する。その後は、硬化反応の進行に伴って溶融粘度は上昇し、図1に示す点3で10,000Pa・sに到達する。
上記のようにして、本実施形態のプリプレグが含有する樹脂組成物は、温度-溶融粘度曲線において、溶融粘度が10,000Pa・s以下である「温度域A」が形成される。図1における点1の温度が、温度域Aの最低温度a1であり、図1における点3の温度が、温度域Aの最高温度a2である。
なお、より具体的には、温度域A、温度域Aの最低温度a1、温度域Aの最高温度a2、温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕及び最低溶融粘度は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0026】
温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕は、プリプレグに含有される樹脂組成物の組成、熱履歴等を調整することによって調整することができる。具体的には、例えば、特定の樹脂組成物の温度-溶融粘度曲線を取得し、当該曲線において、温度域Aが存在しない場合或いは温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕が50℃未満である場合は、樹脂組成物を低粘度化する、或いは樹脂組成物の硬化の進行を遅らせるように調整する。当該方法としては、例えば、樹脂種の変更、硬化促進剤の減量、付与する熱量の低減等が挙げられる。一方、温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕が60℃超である場合は、樹脂組成物を高粘度化する、或いは樹脂組成物の硬化の進行を早めるように調整する。当該方法としては、樹脂種の変更、硬化促進剤の増量、付与する熱量の増加等が挙げられる。これの調整によって、本実施形態のプリプレグを製造する条件を容易に把握することができる。
【0027】
本実施形態のプリプレグに含有される樹脂組成物は、温度域Aの最低温度a1と最高温度a2との温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕が、50~60℃である。
上記温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕は、成形性をより向上させるという観点からは、好ましくは52℃以上、より好ましくは54℃以上、さらに好ましくは56℃以上である。
また、上記温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕は、厚さ精度をより向上させるという観点からは、好ましくは59℃以下、より好ましくは57℃以下、さらに好ましくは55℃以下である。
【0028】
温度域Aの最低温度a1は、特に限定されないが、好ましくは60~140℃、より好ましくは70~130℃、さらに好ましくは80~120℃である。
温度域Aの最低温度a1が上記下限値以上であると、厚さ精度をより向上させ易い傾向にある。また、温度域Aの最低温度a1が上記上限値以下であると、成形性をより向上させ易い傾向にある。
【0029】
温度域Aの最高温度a2は、特に限定されないが、好ましくは120~190℃、より好ましくは130~180℃、さらに好ましくは140~170℃である。
温度域Aの最高温度a2が上記下限値以上であると、成形性をより向上させ易い傾向にある。また、温度域Aの最高温度a2が上記上限値以下であると、厚さ精度をより向上させ易い傾向にある。
【0030】
樹脂組成物の最低溶融粘度は、特に限定されないが、好ましくは500~5,000Pa・s、より好ましくは800~4,000Pa・s、さらに好ましくは1,000~3,000Pa・sである。
最低溶融粘度が上記下限値以上であると、成形性をより向上させ易い傾向にある。また、最低溶融粘度が上記上限値以下であると、厚さ精度をより向上させ易い傾向にある。
【0031】
本実施形態のプリプレグが含有する樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の他に、必要に応じて、例えば、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、有機充填材、カップリング剤、レベリング剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、揺変性付与剤、増粘剤、可撓性材料、界面活性剤及び光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
以下、樹脂組成物が含有し得る各成分について説明する。
なお、各成分は、各々について、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
〔熱硬化性樹脂〕
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、変性マレイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、成形性及び電気絶縁性の観点から、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、変性マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、変性マレイミド樹脂がより好ましい。
【0033】
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。ここで、エポキシ樹脂は、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等に分類される。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂は、主骨格の違いによっても種々のエポキシ樹脂に分類される。例えば、上記それぞれのタイプのエポキシ樹脂において、さらに、ビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;脂肪族鎖状エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂などに分類される。これらの中でも、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂が好ましい。
【0034】
マレイミド樹脂としては、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド樹脂が好ましく、N-置換マレイミド基を2個以上有するマレイミド樹脂がより好ましい。
また、マレイミド樹脂としては、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を有する芳香族マレイミド樹脂であることが好ましい。
マレイミド樹脂としては、例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を2個有する芳香族ビスマレイミド樹脂;ポリフェニルメタンマレイミド、ビフェニルアラルキル型マレイミド等の芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を3個以上有する芳香族ポリマレイミド樹脂;インダン環骨格を有するマレイミド樹脂;1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、ピロリン酸バインダ型長鎖アルキルビスマレイミド等の脂肪族マレイミド樹脂などが挙げられる。
【0035】
変性マレイミド樹脂としては、例えば、マレイミド樹脂由来の構造単位とジアミン化合物由来の構造単位とを有するアミノマレイミド樹脂が挙げられる。
ジアミン化合物としては、第1級アミノ基を2個有する化合物が好ましい。
また、ジアミン化合物としては、芳香環に直接結合する第1級アミノ基を2個有する芳香族ジアミン化合物であることが好ましい。
ジアミン化合物としては、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ベンジジン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノ-3,3’-ビフェニルジオール等の芳香環に直接結合する第1級アミノ基を2個有する芳香族ジアミン;第1級アミノ基を2個有するシリコーン化合物などが挙げられる。
【0036】
アミノマレイミド樹脂は、マレイミド樹脂及びジアミン化合物を、公知の方法によって、マイケル付加反応させることによって合成することができる。
アミノマレイミド樹脂中における、ジアミン化合物の-NH基由来の基の合計当量(Ta2)と、マレイミド樹脂のN-置換マレイミド基由来の基の合計当量(Ta1)との当量比(Ta2/Ta1)は、特に限定されないが、誘電特性、耐熱性、難燃性及びガラス転移温度の観点から、好ましくは0.05~10、より好ましくは1~8、さらに好ましくは3~7である。なお、上記ジアミン化合物の-NH基由来の基とは、-NH自体も含めるものとする。また、上記マレイミド樹脂のN-置換マレイミド基由来の基とは、N-置換マレイミド基自体も含めるものとする。
【0037】
樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、耐熱性、成形性、加工性及び導体接着性の観点から、樹脂組成物の固形分総量(100質量%)に対して、好ましくは10~70質量%、より好ましくは15~50質量%、さらに好ましくは20~40質量%である。
【0038】
〔硬化剤〕
硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、活性エステル基含有化合物等が挙げられる。これらの中でも、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤としては、フェノール系硬化剤が好ましい。
フェノール系硬化剤としては、例えば、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック型フェノール樹脂、ナフチレンエーテル型フェノール樹脂、トリアジン骨格含有フェノール樹脂等が好ましく挙げられる。
【0039】
樹脂組成物が硬化剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、良好な硬化性を得るという観点から、熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは20~200質量部、より好ましくは25~150質量部、さらに好ましくは30~100質量部である。
樹脂組成物が硬化剤を含有する場合、熱硬化性樹脂の官能基と、硬化剤の官能基との当量比〔熱硬化性樹脂の官能基/硬化剤の官能基〕は、特に限定されないが、硬化剤の官能基がフェノール性水酸基である場合は0.8~1.2、アミノ基である場合は0.2~0.4、活性エステル基である場合は0.3~0.6が好ましい。
【0040】
〔硬化促進剤〕
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、イミダゾール化合物の誘導体等のイミダゾール系硬化促進剤;リン系化合物;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物等が挙げられる。これらの中でも、十分な硬化促進効果を得るという観点から、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。
イミダゾール化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン等のイミダゾール化合物等が挙げられる。
イミダゾール化合物の誘導体としては、例えば、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート等のイミダゾール化合物とトリメリト酸との塩;イミダゾール化合物とイソシアヌル酸との塩;イミダゾール化合物と臭化水素酸との塩などが挙げられる。
【0041】
樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、硬化促進効果及び保存安定性の観点から、熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部、より好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.4~2質量部である。
【0042】
〔無機充填材〕
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらの中でも、熱膨張率の低減、比誘電率及び誘電正接の低減の観点からは、シリカ、アルミナが好ましく、また、耐熱性の観点からは、シリカ、水酸化アルミニウムが好ましい。
無機充填材は、例えば、シランカップリング剤等の表面処理剤を用いて表面処理されていてもよい。
【0043】
樹脂組成物が無機充填材を含有する場合、その質量基準の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の固形分総量(100質量%)に対して、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~75質量%、さらに好ましくは40~70質量%、特に好ましくは45~65質量%である。
無機充填材の含有量が上記下限値以上であると、低熱膨張性及び耐熱性がより良好になり易い傾向にある。また、無機充填材の含有量が上記上限値以下であると、成形性及び導体接着性がより良好になり易い傾向にある。
【0044】
(プリプレグの厚さ)
本実施形態のプリプレグの厚さは、特に限定されないが、好ましくは60~300μm、より好ましくは80~200μm、さらに好ましくは100~150μmである。
プリプレグの厚さが上記下限値以上であると、プリプレグの機械強度及び低熱膨張性をより向上させ易い傾向にある。また、プリプレグの厚さが上記上限値以下であると、プリプレグを用いて作製するプリント配線板を高密度配線化させ易い傾向にある。
本明細書において、プリプレグの厚さは、任意の5ヵ所をデジマチックインジケータで測定して得られる値の平均値である。
【0045】
(樹脂組成物の含有量、繊維基材と樹脂組成物の合計含有量)
本実施形態のプリプレグ中における、樹脂組成物の含有量は、特に限定されないが、成形性の観点から、好ましくは30~80質量%、より好ましくは35~70質量%、さらに好ましくは40~60質量%である。
本実施形態のプリプレグ中における、樹脂組成物及び繊維基材の合計含有量は、特に限定されないが、成形性の観点から、好ましくは99質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0046】
<プリプレグの製造方法>
本実施形態のプリプレグは、例えば、上記の樹脂組成物を、繊維基材に含浸し、加熱等により半硬化させる方法によって製造することができる。
例えば、浸漬法による場合は、繊維基材を有機溶媒で希釈した樹脂組成物(以下、「樹脂ワニス」ともいう)に浸漬後、乾燥させることで、本実施形態のプリプレグが得られる。
【0047】
樹脂ワニスに用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブタノン、シクロヘキサノン、4-メチル-2-ペンタノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒などが挙げられる。
樹脂ワニスの固形分濃度は、特に限定されないが、好ましくは20~85質量%、より好ましくは40~80質量%、さらに好ましくは50~70質量%である。
【0048】
樹脂ワニスに繊維基材を浸漬した後の乾燥温度は、温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕を良好な範囲に調整し易くする観点から、好ましくは100~170℃、より好ましくは110~165℃、さらに好ましくは120~160℃である。
また、樹脂ワニスに繊維基材を浸漬した後の乾燥時間は、温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕を良好な範囲に調整し易くする観点から、好ましくは1~10分間、より好ましくは2~8分間、さらに好ましくは3~7分間である。
但し、樹脂ワニスに繊維基材を浸漬した後の乾燥温度及び乾燥時間は、上記の範囲に特に限定されず、有機溶媒の種類等を考慮して、適宜決定すればよい。
【0049】
[積層板及び積層板の製造方法]
本実施形態の積層板は、本実施形態のプリプレグの硬化物と、金属箔と、を有する積層板である。
また、本実施形態の積層板の製造方法は、本実施形態のプリプレグと、金属箔と、を積層する積層板の製造方法である。
なお、金属箔を有する積層板は、金属張積層板と称されることもある。
【0050】
金属箔の金属としては、特に限定されず、例えば、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、これらの金属元素を1種以上含有する合金等が挙げられる。
【0051】
本実施形態の積層板の製造方法は、例えば、本実施形態のプリプレグの片面又は両面に金属箔を配置してから、加熱加圧成形することによって製造する方法である。
通常、この加熱加圧成形によって、B-ステージ化されたプリプレグを硬化させて本実施形態の積層板が得られる。
加熱加圧成形する際、プリプレグは1枚のみを用いてもよいし、2枚以上のプリプレグを積層させて用いてもよい。
加熱加圧成形は、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用することができる。
加熱加圧成形の条件は、特に限定されないが、例えば、温度100~300℃、時間10~300分間、圧力1.5~5MPaとすることができる。
【0052】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態のプリプレグの硬化物を有するプリント配線板である。
本実施形態のプリント配線板は、例えば、本実施形態のプリプレグの硬化物及び本実施形態の積層板からなる群から選択される1種以上に対して、公知の方法によって、導体回路形成を行うことによって製造することができる。また、さらに必要に応じて多層化接着加工を施すことによって、多層プリント配線板を製造することもできる。導体回路は、例えば、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔のエッチング等を適宜施すことによって形成することができる。
【0053】
[半導体パッケージ]
本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージである。
本実施形態の半導体パッケージは、例えば、本実施形態のプリント配線板に、公知の方法によって、半導体チップ、メモリ等を搭載することによって製造することができる。
【実施例0054】
以下、実施例を挙げて、本実施形態を具体的に説明する。ただし、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[温度-溶融粘度曲線の測定方法]
各例で作製したプリプレグをもみほぐすことによって樹脂粉を採取した。該樹脂粉を一軸成形によって、厚さ1mmに成形したものを測定サンプルとした。
上記測定サンプルを用いて、レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名「DISCOVERY HR-2」)によって、測定温度範囲60~180℃、昇温速度3℃/分、空気雰囲気、加圧力0.5N、周波数1Hz、歪み5%の条件にて、温度-溶融粘度曲線を取得した。
得られた温度-溶融粘度曲線において、溶融粘度が10,000Pa・s以下である温度域Aを特定し、温度域Aの最高温度a2、最低温度a1、最低温度a1と最高温度a2との温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕を求めた。また、温度-溶融粘度曲線における最低溶融粘度を求めた。
【0056】
[変性マレイミド樹脂の合成]
合成例1
温度計、撹拌装置及び還流冷却管付き水分定量器を備えた加熱及び冷却可能な容積2Lの反応容器に、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン595.8gと、4,4’-ジアミノジフェニルメタン54.2gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル350.0gとを投入した後、還流させながら5時間反応させることによって、変性マレイミド樹脂の溶液を得た。
【0057】
[樹脂ワニスの製造]
製造例1
(樹脂ワニスA)
合成例1で得た変性マレイミド樹脂の溶液107質量部、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂「EXA-4710」(DIC株式会社製)30質量部、水酸化アルミニウム17.5質量部、溶融シリカ130質量部、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1)’]-エチル-S-トリアジン0.5質量部、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンを加えて混合し、固形分濃度65質量%の樹脂ワニスAを作製した。
【0058】
製造例2
(樹脂ワニスB)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON(登録商標)N-770」(DIC株式会社製、エポキシ当量:188g/eq)60質量部、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、商品名「MEH-7700」)40質量部、水酸化アルミニウム17.5質量部、溶融シリカ86質量部、2-メチルイミダゾール0.5質量部、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンを加えて混合し、固形分濃度65質量%の樹脂ワニスBを作製した。
【0059】
実施例1~7、比較例1~5、参考例1~6
(プリプレグの作製)
表1に示すガラスクロスに対して、表1に示す樹脂ワニスを含浸した後、表1に示す乾燥温度及び乾燥時間で加熱乾燥し、樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)させて、プリプレグを得た。なお、樹脂ワニスは、得られるプリプレグ中の樹脂組成物の含有量が表1に示す含有量になるように含浸した。
【0060】
(両面銅張積層板の作製)
得られたプリプレグを12枚重ね、その上下に銅箔(古河電気工業株式会社製、商品名「GTS-12」、厚さ12μm)を配置した。次いで、下記条件にてプレスを行い、両面銅張積層板を作製した。
-プレス条件-
昇温速度3℃/分で25℃から185℃へ昇温し、185℃で90分間保持後、30分間冷却した。昇温開始から冷却終了まで、銅箔で挟まれた12枚のプリプレグにかかる圧力は4MPaとした。
【0061】
[評価方法]
下記方法に従って各評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(両面銅張積層板の厚さバラつきの測定方法)
各例で得られた両面銅張積層板の幅方向の中心から50mm単位で幅方向に10点、及び該10点各々を起点として長さ方向に50mm単位で10点ずつ(但し、それぞれ前記起点を含む10点である。すなわち、測定箇所は、10点×10点=計100点)の厚さを測定した。具体的には、水平に調整した台座とデジマチックインジケータ「ID-C112P」(株式会社ミツトヨ製)を用いて0.001mm単位で測定した。そして、下記式から求められる値を、厚さのバラつきの値とした。値が小さい方が厚さバラつきが小さいため、厚さ精度に優れることを示す。
厚さバラつき(%)=100×(厚さの最大値-厚さの平均値)/厚さの平均値
【0063】
(プリプレグの成形性)
各例で得た両面銅張積層板の両面の銅箔をエッチングによって除去し、表出したプリプレグの硬化物の表面を目視によって観察した。表面にボイド及びかすれが観察されなかったものを「A」、ボイド又はかすれが観察されたものを「C」とした。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すガラスクロスの詳細は以下の通りである。
ガラスクロス1:目付量115g/m、厚さ96μm、経糸の織密度65本/25mm、緯糸の織密度62本/25mm
ガラスクロス2:目付量104g/m、厚さ90μm、経糸の織密度60本/25mm、緯糸の織密度58本/25mm
【0066】
表1に示した結果から、本実施形態の実施例1~7のプリプレグを用いて作製した両面銅張積層板は厚さバラつきが小さく、かつ、本実施形態のプリプレグは成形性に優れていることが分かる。一方、温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕が50~60℃の範囲外である比較例1~5のプリプレグは、両面銅張積層板の厚さバラつき及びプリプレグの成形性のいずれかに劣っていた。また、目付量が110g/m未満であるガラスクロスを用いた参考例1~6は、温度差〔最高温度a2-最低温度a1〕に関わらず成形性が良好であることから、繊維基材の目付量が110g/m以上である場合に成形性に問題が生じ得ることが分かる。
【符号の説明】
【0067】
A 溶融粘度が10,000Pa・s以下である温度域A
a1 温度域Aの最低温度a1
a2 温度域Aの最高温度a2
1 溶融粘度が10,000Pa・sに到達する点
2 溶融粘度が最低溶融粘度に到達する点
3 溶融粘度が10,000Pa・sに到達する点
図1