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特開2024-77980液体吐出装置、液体吐出方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077980
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240603BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190253
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】前山 雄一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB07
2C056EB13
2C056EB36
2C056EB37
2C056EB46
2C056EC07
2C056EC37
2C056FA13
2C056FA14
2C056HA42
(57)【要約】
【課題】回転部材上のシート材の厚みに依るノズル列の吐出タイミングのずれを調整してシート材への液体の着弾位置精度を向上させる。
【解決手段】液体吐出装置は、シート材を周面に保持して搬送する回転部材と、シート材に液体を吐出する複数のノズルがシート材の搬送方向と直行する方向に並んだノズル列を搬送方向に複数配置した吐出部と、シート材の位置を検知するシート材位置検知部と、回転部材の回転量に応じたタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、シート材の位置の検知結果と、生成されたタイミング信号と、に基づいて吐出部の各々のノズル列の吐出タイミングを生成する吐出タイミング生成部と、回転部材上のシート材の厚みに基づいて基準のノズル列に対する他のノズル列の吐出タイミングを調整する吐出タイミング調整部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を周面に保持して搬送する回転部材と、
前記シート材に液体を吐出する複数のノズルが前記シート材の搬送方向と直行する方向に並んだノズル列を前記搬送方向に複数配置した吐出部と、
前記シート材の位置を検知するシート材位置検知部と、
前記回転部材の回転量に応じたタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、
前記シート材の前記位置の検知結果と、生成された前記タイミング信号と、に基づいて前記吐出部の各々の前記ノズル列の吐出タイミングを生成する吐出タイミング生成部と、
前記回転部材上の前記シート材の厚みに基づいて基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングを調整する吐出タイミング調整部と、
を備える、液体吐出装置。
【請求項2】
前記吐出タイミング調整部は、基準の前記ノズル列と他の前記ノズル列のいずれか一つとの間の距離と、前記シート材の厚みと、前記回転部材の半径と、に基づいて基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングを調整する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記吐出タイミング調整部は、基準の前記シート材の厚みに基づいて前記吐出タイミングの第1調整値を算出すると共に、基準の前記シート材の厚みと実際の前記シート材の厚みとに基づいて前記吐出タイミングの第2調整値を算出する、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記吐出タイミング調整部は、基準の前記ノズル列と他の前記ノズル列のいずれか一つとの間の距離をLとし、基準の前記シート材の厚みをt0とし、実際の前記シート材の厚みをtとし、前記回転部材の半径をRとした場合に、
【数3】
式(3)により前記第2調整値ΔLを算出する、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記吐出部が3列以上の前記ノズル列を備える場合、前記吐出タイミング調整部は、前記搬送方向で最も上流側の前記ノズル列と他の前記ノズル列のいずれか一つとの間の距離に基づいて他の前記ノズル列の前記第2調整値を算出する、請求項3または4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体吐出装置は、前記回転部材の回転方向に複数の前記吐出部を備え、
前記吐出タイミング調整部は、各々の前記吐出部の前記搬送方向で最も上流側の前記ノズル列同士の間では、前記シート材の厚みに応じた前記吐出タイミングの調整を実行せず、各々の前記吐出部の基準の前記ノズル列と他の前記ノズル列との間で前記シート材の厚みに応じた前記吐出タイミングの調整を実行する、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出装置は、前記回転部材の回転方向に複数の前記吐出部と、複数の前記吐出部を前記回転部材の半径方向に同時に昇降させる昇降機構と、を備え、
前記吐出タイミング調整部は、前記昇降機構の昇降方向と、複数の前記吐出部のうちの少なくとも一つの液体吐出方向と、が平行でない場合に、
前記昇降方向と前記液体吐出方向との間の角度と、
前記吐出部のノズル面と基準の前記シート材の表面との間の隙間の距離と、前記吐出部のノズル面と実際の前記シート材の表面との間の隙間の距離との間の差分と、
に基づいて基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングをさらに補正する、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記吐出タイミング調整部は、前記昇降方向と前記液体吐出方向との間の角度をθとし、前記吐出部の前記ノズル面と基準の前記シート材の表面との間の隙間の距離をg0とし、前記吐出部の前記ノズル面と実際の前記シート材の表面との間の隙間の距離をgとした場合に、
【数4】
式(4)により、基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングを補正する、請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
液体吐出装置により実行される液体吐出方法であって、前記液体吐出装置が、
シート材を回転部材の周面に保持して搬送するステップと、
複数のノズルが前記シート材の搬送方向と直行する方向に並んだノズル列を前記搬送方向に複数配置した吐出部から液体を前記シート材に吐出するステップと、
前記シート材の位置を検知するステップと、
前記回転部材の回転量に応じたタイミング信号を生成するステップと、
前記シート材の前記位置の検知結果と、生成された前記タイミング信号と、に基づいて前記吐出部の各々の前記ノズル列の吐出タイミングを生成するステップと、
前記回転部材上の前記シート材の厚みに基づいて基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングを調整するステップと、
を実行する、液体吐出方法。
【請求項10】
液体吐出装置のコンピュータに、
シート材を回転部材の周面に保持して搬送する指令を行うステップと、
複数のノズルが前記シート材の搬送方向と直行する方向に並んだノズル列を前記搬送方向に複数配置した吐出部から液体を前記シート材に吐出する指令を行うステップと、
前記シート材の位置を検知するステップと、
前記回転部材の回転量に応じたタイミング信号を生成するステップと、
前記シート材の前記位置の検知結果と、生成された前記タイミング信号と、に基づいて前記吐出部の各々の前記ノズル列の吐出タイミングを生成するステップと、
前記回転部材上の前記シート材の厚みに基づいて基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングを調整するステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置、液体吐出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート材に液体を吐出する液体吐出装置が知られている。また、液体吐出装置による液体吐出方法、および、液体吐出方法を液体吐出装置のコンピュータに実行させるプログラムが知られている。
【0003】
特許文献1には、回転部材上にシート材を保持し、シート材の搬送方向に沿って複数の位置に配置された吐出部の吐出タイミングを決定することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の吐出タイミングの決定方法では、回転部材上のシート材の厚みに依ってシート材の搬送方向に沿って配置された複数のノズル列の間で吐出タイミングがずれてしまうことがある。
【0005】
そこで、本開示の技術は、上記課題に鑑み、回転部材上のシート材の厚みに依るノズル列の吐出タイミングのずれを調整してシート材への液体の着弾位置精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の一態様によれば、
シート材を周面に保持して搬送する回転部材と、
前記シート材に液体を吐出する複数のノズルが前記シート材の搬送方向と直行する方向に並んだノズル列を前記搬送方向に複数配置した吐出部と、
前記シート材の位置を検知するシート材位置検知部と、
前記回転部材の回転量に応じたタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、
前記シート材の前記位置の検知結果と、生成された前記タイミング信号と、に基づいて前記吐出部の各々の前記ノズル列の吐出タイミングを生成する吐出タイミング生成部と、
前記回転部材上の前記シート材の厚みに基づいて基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングを調整する吐出タイミング調整部と、
を備える、液体吐出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、回転部材上のシート材の厚みに依るノズル列の吐出タイミングのずれを調整してシート材への液体の着弾位置精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る液体吐出装置の概略構成図である。
図2】一実施形態に係る吐出部の平面図である。
図3】一実施形態に係る回転部材周りの側面図である。
図4】一実施形態に係る吐出部およびタイミング信号生成部の平面図である。
図5】一実施形態に係る液体吐出装置のハードウェア構成図である。
図6】一実施形態に係る液体吐出装置の機能構成図である。
図7】一実施形態に係る液体吐出装置の処理手順を示すフローチャートである。
図8】一実施形態に係る液体吐出装置のタイミングチャートである。
図9】一実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル列とノズル列との間の距離を示す図である。
図10】一実施形態に係る吐出ユニットと吐出ユニットとの間の距離を示す図である。
図11】一実施形態に係る上流側ヘッドと下流側ヘッドとの間の着弾位置のずれを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
(液体吐出装置の全体構成および要部構成)
図1は一実施形態に係る液体吐出装置の概略構成図である。図2は一実施形態に係る吐出部の平面図である。
【0011】
インクジェットプリンタ1は、液体吐出装置の一例であり、例えばライン型インクジェットプリンタである。インクジェットプリンタ1は、搬入部10、印刷部20、乾燥部30、および搬出部40を備えている。インクジェットプリンタ1は、搬入部10から搬入されるシート状部材である用紙等のシート材Pに対し、印刷部20でインク等の液体を付与して印刷を行い、乾燥部30でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部40に排出する。
【0012】
搬入部10は、複数のシート材Pが積載される搬入トレイ11と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12と、シート材Pを印刷部20へ送り込むレジストローラ対13と、を備えている。
【0013】
給送装置12には、ローラまたはコロを用いた装置、および、エア吸引を利用した装置等のいずれか一つの給送装置を用いることが可能である。給送装置12により搬入トレイ11から送り出されたシート材Pは、シート材Pの先端がレジストローラ対13に到達した後、レジストローラ対13が所定のタイミングで駆動することにより、印刷部20へ送り出される。
【0014】
印刷部20は、シート材Pを周面に保持して搬送する搬送ドラム21と、搬送ドラム21に保持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部22と、を備えている。搬送ドラム21は、回転部材の一例である。
【0015】
また印刷部20は、送り込まれたシート材Pを受け取って搬送ドラム21へ渡す渡し胴24と、搬送ドラム21によって搬送されたシート材Pを乾燥部30へ受け渡す受け渡し胴25と、を備えている。
【0016】
搬入部10から印刷部20へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴24の表面に設けられたシートグリッパによって先端が把持され、渡し胴24の回転に伴って搬送される。渡し胴24により搬送されたシート材Pは、搬送ドラム21との対向位置で搬送ドラム21へ受け渡される。
【0017】
搬送ドラム21の表面にもシートグリッパが設けられており、シート材Pの先端がシートグリッパにより把持される。搬送ドラム21の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されている。吸着装置26によって搬送ドラム21の吸引孔から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0018】
そして、渡し胴24から搬送ドラム21へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸着装置26による吸い込み気流によって搬送ドラム21上に吸着され、搬送ドラム21の回転に伴って搬送される。
【0019】
液体吐出部22は、第1吐出ユニット23Aから第6吐出ユニット23Fまでの6色の吐出ユニット23を備える。第1吐出ユニット23Aは、例えばシアン(C)の液体を吐出し、第2吐出ユニット23Bは、例えばマゼンタ(M)の液体を吐出する。第3吐出ユニット23Cは、例えばイエロー(Y)の液体を吐出し、第4吐出ユニット23Dは、例えばブラック(K)の液体を吐出する。第5吐出ユニット23Eおよび第6吐出ユニット23Fは、白色、金色、銀色、および蛍光色等のいずれか一つの特殊な液体の吐出に使用する。さらに液体吐出部22には、表面コート液等の処理液を吐出する吐出ユニット23を設けることができる。
【0020】
各色の吐出ユニット23は、例えば図2に示すように、液体を吐出する複数の液体吐出ヘッド100をシート材Pの搬送方向と直交する方向に並べたフルライン型ヘッドアレイである。複数の液体吐出ヘッド100は、ベース部材102に配置される。液体吐出ヘッド100は、シート材Pの搬送方向と直交する方向に複数のノズルが並んだノズル列101を搬送方向に複数配置しており、各々のノズル列101の液体の吐出タイミングをずらして印字する。液体吐出ヘッド100は、吐出部の一例である。
【0021】
各色の吐出ユニット23は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。搬送ドラム21に保持されたシート材Pが液体吐出部22との対向領域を通過するときに、各色の吐出ユニット23から各色の液体が吐出され、印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0022】
乾燥部30は、印刷部20でシート材Pに付着した液体を乾燥させるための乾燥機構部31と、印刷部20から搬送されてくるシート材Pを吸引した状態で搬送する吸引搬送機構部32と、を備えている。
【0023】
印刷部20から搬送されてきたシート材Pは、吸引搬送機構部32に受け取られた後、乾燥機構部31を通過するように搬送され、搬出部40へ受け渡される。
【0024】
乾燥機構部31を通過するとき、シート材Pに付着した液体には乾燥処理が施される。乾燥処理により液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材Pに付着した液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0025】
搬出部40は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ41を備える。乾燥部30から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ41に順次積み重ねられて保持される。
【0026】
なお、インクジェットプリンタ1には、例えば、シート材Pに対して前処理を行う前処理部を印刷部20の上流側に配置することも可能である。また例えば、液体が付着したシート材Pに対して後処理を行う後処理部を乾燥部30と搬出部40との間に配置することも可能である。
【0027】
前処理部としては、例えば、液体と反応して滲みを抑制するための処理液をシート材Pに塗布する先塗り処理を行うものが挙げられる。また、後処理部としては、例えば、印刷部20で印刷されたシート材Pを反転させて再び印刷部20へ送ってシート材Pの両面に印刷するためのシート反転搬送処理を行うもの、および、複数枚のシート材Pを綴じる処理を行うもの等が挙げられる。
【0028】
次に図3および図4を参照して液体吐出装置における吐出タイミング制御を行うための構成について説明する。
【0029】
図3は一実施形態に係る回転部材周りの側面図であり、図4は一実施形態に係る吐出部およびタイミング信号生成部の平面図である。説明を簡略化するため、図4では1個の吐出ユニット23のみが図示されている。
【0030】
図3に示す各色の吐出ユニット23には、図示を省略するが、搬送ドラム21の半径方向に吐出ユニット23を昇降させる昇降機構がそれぞれ設けられる。昇降機構は、吐出ユニット23を搬送ドラム21の半径方向に昇降させることにより、シート材Pの厚みに応じたシート材Pの表面と吐出ユニット23のノズル面との間の隙間を一定の距離に保つ。
【0031】
また搬送ドラム21の軸21aにはエンコーダホイール202が設けられ、エンコーダホイール202を読み取る第1エンコーダセンサ203が配置される。エンコーダホイール202および第1エンコーダセンサ203により、第1エンコーダ201が構成される。第1エンコーダ201は、ロータリエンコーダであり、搬送ドラム21の回転量(回転駆動量)に応じたパルス波の第1タイミング信号を生成する。
【0032】
また図4に示すように、搬送ドラム21の周面にはエンコーダスケール212が設けられ、エンコーダスケール212を読み取る第2エンコーダセンサ213が配置される。エンコーダスケール212および第2エンコーダセンサ213により、第2エンコーダ211が構成される。第2エンコーダ211は、リニアエンコーダであり、搬送ドラム21の周面の移動量に応じたパルス波の第2タイミング信号を生成する。第2タイミング信号は、搬送ドラム21の周面におけるシート材Pの移動量に相関する信号である。
【0033】
ここで、第2エンコーダ211を構成する第2エンコーダセンサ213は、各色の吐出ユニット23の近傍に配置される。例えば第2エンコーダセンサ213は、各色の吐出ユニット23のベース部材102に取り付けられる。したがって、各色の吐出ユニット23の第2エンコーダセンサ213と、搬送ドラム21のエンコーダスケール212と、により、第2エンコーダ211が構成される。第1エンコーダ201および第2エンコーダ211は、回転部材の回転量に応じたタイミング信号を生成するタイミング信号生成部の一例である。なお、第1エンコーダ201と第2エンコーダ211という2種類のエンコーダを併用するのではなく、いずれか1種類のエンコーダを用いてもよい。
【0034】
さらに図3に示すように、搬送方向で最も上流側の第1吐出ユニット23Aの上流側には、シート材Pの先端を検出するシート材位置センサ220が配置される。シート材位置センサ220は、シート材位置検知部の一例である。
【0035】
シート材位置センサ220は、シート材Pの先端を検知するが、シート材Pに付したマーク(レジストレーションマーク等)を読み取る構成としてもよい。マークを読み取る構成とすることにより、カットシート材だけでなく、連帳紙等の連続媒体を使用する場合にも対応可能となる。
【0036】
(液体吐出装置のハードウェア構成例)
次に図5を参照して、液体吐出装置のハードウェア構成について説明する。図5は、一実施形態に係る液体吐出装置のハードウェア構成図である。インクジェットプリンタ1は、CPU301(Central Processing Unit)301、ROM(Read Only Memory)302、およびRAM(Random Access Memory)303を備える。またインクジェットプリンタ1は、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)304を備える。
【0037】
またインクジェットプリンタ1は、外部機器接続I/F308、ネットワークI/F309、およびバスライン310を備える。さらにインクジェットプリンタ1は、シート搬送部311、搬送ドライバ312、および操作パネル330を備える。各色の吐出ユニット23は、液体吐出ヘッドドライバ322と、複数の液体吐出ヘッド100と、を備える。
【0038】
CPU301は、インクジェットプリンタ1の全体の動作を制御する。ROM302は、IPL等のCPU301の駆動に用いられるプログラム等を記憶する。RAM303は、CPU301のワークエリアとして使用される。NVRAM304は、プログラム等の各種データを記憶し、インクジェットプリンタ1の電源が遮断されている間も各種データを保存する。
【0039】
外部機器接続I/F308は、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等により、PC(Personal Computer)に接続され、PCとの間で、制御信号および印刷データの通信を行う。ネットワークI/F309は、インターネット等の通信ネットワークを利用してデータ通信をするためのインターフェースである。バスライン310は、CPU301等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスおよびデータバス等である。
【0040】
シート搬送部311は、例えばローラおよびローラを駆動するモータ等であって、インクジェットプリンタ1内の搬送経路に沿って搬送方向へシート材Pを搬送する。搬送ドライバ312は、シート搬送部311の搬送方向への移動を制御する。
【0041】
液体吐出ヘッド100は、液体を吐出する複数のノズルが搬送方向に直交する方向に並んだノズル列101を複数有する。液体吐出ヘッド100は、吐出面(ノズル面)がシート材Pの方向に向くようにベース部材102に配置されている。液体吐出ヘッド100は、搬送方向に間欠的に搬送されるシート材Pの所定位置に液体を吐出することによりシート材Pに画像を形成する。液体吐出ヘッドドライバ322は、液体吐出ヘッド100の駆動を制御する駆動回路である。
【0042】
操作パネル330は、現在の設定値または選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネルおよびアラームランプ等により構成されている。
【0043】
なお、液体吐出ヘッドドライバ322は、各色の吐出ユニット23に搭載されず、吐出ユニット23の外部に配置されてバスラインに接続されるように構成してもよい。また、搬送ドライバ312および液体吐出ヘッドドライバ322は、プログラムに従ったCPU301の命令により実現する機能により構成されてもよい。
【0044】
(液体吐出装置の機能構成例)
次に図6を参照して、液体吐出装置の吐出タイミング制御に関する機能構成について説明する。図6は一実施形態に係る液体吐出装置の機能構成図である。
【0045】
インクジェットプリンタ1は、吐出開始タイミング決定部501、吐出タイミング生成部502、吐出タイミング調整部503、およびヘッド駆動制御部504等の各種機能部位を備える。これら機能部位は、例えば各種機能をCPU301等のプロセッサに実行させるプログラムにより実現される。
【0046】
吐出開始タイミング決定部501は、シート材位置センサ220の検知結果がシート材Pの先端位置を検知したとき、第1エンコーダ201の第1タイミング信号のパルス数のカウントを開始する。吐出開始タイミング決定部501は、第1エンコーダ201の第1タイミング信号のパルス数のカウント値が所定値に達したとき、各色の吐出ユニット23の吐出開始タイミングを決定する。吐出開始タイミング決定部501は、吐出ユニット23の吐出開始タイミングを吐出タイミング生成部502およびヘッド駆動制御部504に通知する。
【0047】
吐出タイミング生成部502は、シート材Pが吐出開始タイミングの位置に到達したとき、第2エンコーダ211の第2タイミング信号のパルス数のカウントを開始する。吐出タイミング生成部502は、第2エンコーダ211の第2タイミング信号のパルス数のカウント値に基づいて、吐出ユニット23における各々の液体吐出ヘッド100の各々のノズル列101の吐出タイミングを生成する。
【0048】
なお、搬送ドラム21の軸21aの中心から搬送ドラム21上のシート材Pの表面までの回転半径は、シート材Pの厚みに応じて変動する。したがって、第2エンコーダ211の第2タイミング信号のパルス数のカウント値が所定値に達しても、シート材Pの表面の実際の移動量は想定した目標移動量に一致しない。
【0049】
そこで、吐出タイミング調整部503は、シート材Pの厚みに基づいて吐出ユニット23における各々の液体吐出ヘッド100の基準のノズル列101に対する他のノズル列101の吐出タイミングを調整する。なお、各種シート材Pの厚みは、NVRAM304等の不揮発性メモリまたはHD(Hard Disk)等のストレージに保存される。なお、シート材Pの厚みは、インクジェットプリンタ1と通信可能な外部装置のストレージに保存されてもよい。
【0050】
ヘッド駆動制御部504は、決定された吐出開始タイミングで吐出開始タイミング信号を各色の吐出ユニット23の液体吐出ヘッドドライバ322に送出する。また、ヘッド駆動制御部504は、調整された吐出タイミングで吐出タイミング信号を各色の吐出ユニット23の液体吐出ヘッドドライバ322に送出する。
【0051】
液体吐出ヘッドドライバ322は、各々の液体吐出ヘッド100の各々のノズル列101の吐出タイミング信号に応じて各々のノズル列101から液体を吐出させる。
【0052】
(液体吐出装置の処理手順例)
次に、吐出タイミング制御の処理の流れについて図7を参照して説明する。図7は一実施形態に係る液体吐出装置の処理手順を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、各種処理をCPU301等に実行させるプログラムにより実現される。
【0053】
<ステップS001>
インクジェットプリンタ1は、渡し胴24によりシート材Pを搬送ドラム21に渡した後、吸着装置26によりシート材Pの吸着を開始し、搬送ドラム21の回転によりシート材Pを搬送する。
【0054】
<ステップS002>
インクジェットプリンタ1は、シート材位置センサ220によりシート材Pの先端位置を検知する。
【0055】
<ステップS003>
インクジェットプリンタ1は、吐出開始タイミング決定部501により、シート材Pの先端位置を検知したとき、第1エンコーダ201の第1タイミング信号のパルス数のカウントを開始する。インクジェットプリンタ1は、吐出開始タイミング決定部501により、第1エンコーダ201の第1タイミング信号のパルス数のカウント値が所定値に達したとき、各色の吐出ユニット23の吐出開始タイミングを決定する。インクジェットプリンタ1は、吐出開始タイミング決定部501により、各色の吐出ユニット23の吐出開始タイミングを吐出タイミング生成部502およびヘッド駆動制御部504に通知する。
【0056】
<ステップS004>
インクジェットプリンタ1は、吐出タイミング生成部502により、シート材Pが吐出開始タイミングの位置に到達したとき、第2エンコーダ211の第2タイミング信号のパルス数のカウントを開始する。インクジェットプリンタ1は、吐出タイミング生成部502により、吐出ユニット23における各々の液体吐出ヘッド100の各々のノズル列101の吐出タイミングを生成する。
【0057】
<ステップS005>
インクジェットプリンタ1は、吐出タイミング調整部503により、シート材Pの厚みに基づいて吐出ユニット23における各々の液体吐出ヘッド100の基準のノズル列101に対する他のノズル列101の吐出タイミングを調整する。インクジェットプリンタ1は、吐出タイミング調整部503により、調整した吐出タイミングをヘッド駆動制御部504に通知する。インクジェットプリンタ1は、ヘッド駆動制御部504により、各々のノズル列101の吐出タイミング信号を各色の吐出ユニット23の液体吐出ヘッドドライバ322に送出する。
【0058】
(吐出タイミング)
ここで図8を参照して、第1エンコーダ201を用いた各色の吐出ユニット23の吐出開始タイミングと、第2エンコーダ211を用いた各々の液体吐出ヘッド100の各々のノズル列101の吐出タイミングと、について詳細に説明する。図8は、一実施形態に係る液体吐出装置のタイミングチャートである。
【0059】
インクジェットプリンタ1は、CPU301により、シート材Pの先端位置を示すシート材位置センサ220の位置検知信号PSの立ち下りを検出したとき、第1エンコーダ201の第1タイミング信号ES1のパルス数のカウントを開始する。
【0060】
インクジェットプリンタ1は、第1エンコーダ201の第1タイミング信号ES1のパルス数のカウント値が所定値に達したとき、CPU301により、各色の吐出ユニット23の吐出開始タイミングを決定する。インクジェットプリンタ1は、CPU301により、決定された吐出開始タイミング信号を各色の吐出ユニット23の液体吐出ヘッドドライバ322に送出する。
【0061】
吐出開始タイミング信号には、Y印字信号YS、M印字信号MS、C印字信号CS、K印字信号KS、5ST印字信号5STS、および6ST印字信号6STSのうちのいずれか一つが含まれる。
【0062】
またインクジェットプリンタ1は、第1エンコーダ201の第1タイミング信号ES1のパルス数のカウント値が所定値に達したとき、CPU301により、第2エンコーダ211の第2タイミング信号ES2のパルス数のカウントを開始する。インクジェットプリンタ1は、CPU301により、第2エンコーダ211の第2タイミング信号ES2のパルス数のカウント値に基づいて、吐出ユニット23における各々の液体吐出ヘッド100の各々のノズル列101の吐出タイミングを生成する。
【0063】
またインクジェットプリンタ1は、CPU301により、シート材Pの厚みに基づいて吐出ユニット23における各々の液体吐出ヘッド100の基準のノズル列101に対する他のノズル列101の吐出タイミングを調整する。インクジェットプリンタ1は、CPU301により、調整された吐出タイミング信号を各色の吐出ユニット23の液体吐出ヘッドドライバ322に送出する。
【0064】
インクジェットプリンタ1は、各色の吐出ユニット23の液体吐出ヘッドドライバ322により、液体吐出ヘッド100の各々のノズル列101から液体を吐出させてシート材Pに画像を形成する。
【0065】
以上のように、各色の重ね合わせ精度は、第1エンコーダ201の第1タイミング信号ES1のパルス数により制御される。また、搬送方向におけるドットの間隔およびドットの位置精度は、第2エンコーダ211の第2タイミング信号ES2のパルス数により制御される。
【0066】
各色の吐出開始タイミング信号が各色の液体吐出ヘッドドライバ322に送出された後、各々の液体吐出ヘッド100からの液体の吐出は、第2エンコーダ211の第2タイミング信号ES2のパルス数から生成される吐出タイミング信号により行う。
【0067】
以上により、精度が高く求められる同色間の吐出精度を、第2エンコーダ211の第2タイミング信号ES2のパルス数から得られる搬送ドラム21上のシート材Pの位置により規定することができる。第2エンコーダ211は、搬送ドラム21の表面の移動量を検出することになり、搬送ドラム21の回転精度と、搬送ドラム21の部品精度とによる誤差をキャンセルすることができる。したがって、第1エンコーダ201に高精度のエンコーダを使用しない場合であっても、高精度な液体の着弾位置精度を得ることができ、印刷品質が向上する。
【0068】
(ノズル列の吐出タイミングの調整方法)
以下、ノズル列101の吐出タイミングの調整方法について詳細に説明する。
【0069】
インクジェットプリンタ1はシート材Pを搬送ドラム21に吸着して印字するため、搬送ドラム21の軸21aの中心から搬送ドラム21上のシート材Pの表面までの回転半径が搬送ドラム21の半径Rに対してシート材Pの厚みtの分だけ大きくなる。したがって、第2エンコーダ211の第2タイミング信号ES2から得られるシート材Pの表面の実際の移動量はシート材Pの厚みtに応じて変動する。
【0070】
そこで、インクジェットプリンタ1は、吐出ユニット23における各々の液体吐出ヘッド100の各々のノズル列101の吐出タイミングにずれが生じないように、シート材Pの厚みに応じて吐出タイミングを調整する。吐出タイミングは、基準のシート材Pの厚みt0をもとに調整される。
【0071】
ただし、実際のシート材Pに印字を行う場合、基準のシート材Pの厚みt0と実際のシート材Pの厚みtとの間で搬送ドラム21上のシート材Pの表面までの回転半径が異なる分、吐出タイミングにずれが生じる。
【0072】
したがって、インクジェットプリンタ1は、基準のシート材Pの厚みt0と実際のシート材Pの厚みtとの間の差分だけ吐出タイミングのずれをさらに調整する。
【0073】
図9は、一実施形態に係る液体吐出ヘッド100のノズル列101とノズル列101との間の距離を示す図である。図10は、一実施形態に係る吐出ユニット23と吐出ユニット23との間の距離を示す図である。
【0074】
図9に示すように、液体吐出ヘッド100は、例えば8ラインのノズル列101、すなわち第1ノズル列L1から第8ノズル列L8までを備える。また、図10に示すように、複数の液体吐出ヘッド100は、シート材Pの搬送方向に直交する方向に1200dpiずつずらされてベース部材102に配置されている。
【0075】
図9に示すように、基準の第1ノズル列L1と他の第2ノズル列L2との間の距離は距離L12だけ離れており、基準の第1ノズル列L1と他の第3ノズル列L3との間の距離は距離L13だけ離れている。また基準の第1ノズル列L1と他の第4ノズル列L4との間の距離は距離L14だけ離れており、基準の第1ノズル列L1と他の第5ノズル列L5との間の距離は距離L15だけ離れている。
【0076】
さらに基準の第1ノズル列L1と他の第6ノズル列L6との間の距離は距離L15+L16だけ離れており、基準の第1ノズル列L1と他の第7ノズル列L7との間の距離は距離L15+L17だけ離れている。また基準の第1ノズル列L1と他の第8ノズル列L8との間の距離は距離L15+L18だけ離れている。
【0077】
まずインクジェットプリンタ1は、8ラインのノズル列101を用いて距離L12~L18だけ離れた理想距離で液体を基準のシート材Pに吐出する。インクジェットプリンタ1は、基準の第1ノズル列L1により印字した結果と、他の第2ノズル列L2~第8ノズル列L8のいずれか一つにより印字した結果との差分をもとに、他の第2ノズル列L2から第8ノズル列L8の吐出タイミングを補正する。斯かる補正を「ノズル列間タイミング補正」と呼ぶ。ノズル列間タイミング補正は、例えばインクジェットプリンタ1の出荷前に行われる。
【0078】
ノズル列間タイミング補正により、基準の第1ノズル列L1から他の第2ノズル列L2~第8ノズル列L8のいずれか一つまでの距離誤差が第1調整値として算出される。また、第1調整値は、NVRAM304等の不揮発性メモリまたはHD(Hard Disk)等のストレージに保存される。なお、第1調整値は、インクジェットプリンタ1と通信可能な外部装置のストレージに保存されてもよい。
【0079】
ノズル列間タイミング補正によれば、ノズル列間の距離誤差と、吐出ユニット23のノズル面と基準のシート材Pの表面との間の隙間の変動と、ノズル列間の液体の吐出速度の差と、が同時に補正される。
【0080】
次にインクジェットプリンタ1は、実際のシート材Pの厚みtに基づいてノズル列101の吐出タイミングを調整する。ノズル列間タイミング補正後に、基準のシート材Pの厚みt0から実際のシート材Pの厚みtへ変わるため、搬送ドラム21に吸着される実際のシート材Pの表面までの回転半径は、搬送ドラム21の半径Rに実際のシート材Pの厚みtを加算したものになる。
【0081】
一方、ノズル列間タイミング補正時の印字に用いた基準のシート材Pの表面までの回転半径は、搬送ドラム21の半径Rに基準のシート材Pの厚みt0を加算したものである。したがって、ノズル列間タイミング補正時の回転半径に対する実際の印字時の回転半径の比率は、(R+t)/(R+t0)になる。
【0082】
基準の第1ノズル列L1から他の第2ノズル列L2~第8ノズル列L8のいずれか一つまでの距離を第2エンコーダ211から得られる回転角度で調整する場合、シート材Pは搬送ドラム21により回転半径の比率(R+t)/(R+t0)分だけずれて搬送される。
【0083】
そこで、インクジェットプリンタ1は、例えば基準の第1ノズル列L1から他の第2ノズル列L2までの距離L12を補正する場合、以下の式(1)により計算される距離誤差ΔL12を第2調整値として算出する。第2調整値は、NVRAM304等の不揮発性メモリまたはまたはHD(Hard Disk)等のストレージに保存される。なお、第2調整値は、インクジェットプリンタ1と通信可能な外部装置のストレージに保存されてもよい。
【0084】
【数1】
【0085】
そしてインクジェットプリンタ1は、式(1)により算出される第2調整値をノズル列間タイミング補正時の第1調整値に加算することにより、実際のシート材Pの厚みに応じた基準の第1ノズル列L1に対する他の第2ノズル列L2の吐出タイミングを調整する。
【0086】
同様にインクジェットプリンタ1は、基準の第1ノズル列L1から他の第3ノズル列L3~第8ノズル列のいずれか一つまでの距離L13~L18についても距離誤差ΔL13~ΔL18を第2調整値として算出して、第2調整値を第1調整値に加算する。第2調整値を第1調整値に加算することにより、全ての他のノズル列L2~L8に対してシート材Pの厚みに応じた吐出タイミングを調整することが可能になる。
【0087】
通常、インクジェットプリンタ1は、色ごとにノズル列間タイミング補正を行うと共に、色ごとにシート材Pの厚みに応じた吐出タイミングの調整を行う。全ての色のノズル列間タイミング補正に対してシート材Pの厚みに応じた吐出タイミングの調整が適用されることにより、高品質な印字が可能となる。
【0088】
本例のインクジェットプリンタ1は、昇降機構により、シート材Pの厚さに応じて色ごとに吐出ユニット23を搬送ドラム21の半径方向に昇降させ、シート材Pの表面と吐出ユニット23のノズル面との間の距離を一定に保つ。
【0089】
つまり各色の吐出ユニット23に対する搬送ドラム21の回転角度は、シート材Pの厚さに応じて変動しない。したがって、インクジェットプリンタ1は、各色の吐出ユニット23における複数の液体吐出ヘッド100の基準の第1ノズル列L1同士の間では、シート材Pの厚みに応じた吐出タイミングの調整を行う必要はない。
【0090】
(上流側ヘッドと下流側ヘッドとの間の吐出タイミングの調整方法)
以下、上流側ヘッドと下流側ヘッドとの間の吐出タイミングの調整方法について詳細に説明する。
【0091】
図10に示すように、各色の吐出ユニット23における複数の液体吐出ヘッド100は、シート材Pの搬送方向と、シート材Pの幅方向との双方においてずれて並んでいる。つまりシート材Pの上流側から奇数番目の液体吐出ヘッド100と、シート材Pの上流側から偶数番目の液体吐出ヘッド100とがシート材Pの搬送方向および幅方向の双方においてずれて並んでいる。
【0092】
斯かるヘッドアレイ構成では、1個の吐出ユニット23における上流側の液体吐出ヘッド100(上流側ヘッド)と、下流側の液体吐出ヘッド100(下流側ヘッド)との間でシート材Pへの液体の着弾位置がずれることがある。
【0093】
図11は、一実施形態に係る上流側ヘッドと下流側ヘッドとの間の着弾位置のずれを示す図である。
【0094】
本例の吐出ユニット23では、上流側の液体吐出ヘッド100(上流側ヘッド)と下流側の液体吐出ヘッド100(下流側ヘッド)とが、吐出ユニット23の昇降方向に対して傾いて配置される。インクジェットプリンタ1は、昇降機構により、上流側ヘッドと下流側ヘッドとの間の中央を基準に搬送ドラム21の半径方向に吐出ユニット23を昇降させる。
【0095】
インクジェットプリンタ1は、昇降機構により、ノズル列間タイミング補正時の吐出ユニット23のノズル面とシート材Pの表面との間の隙間の基準距離g0を、実際のシート材Pの厚みt0に応じて距離gまで伸縮させる。吐出ユニット23が昇降機構により昇降する場合、吐出ユニット23の昇降方向と液体吐出ヘッド100の吐出方向との間に所定の角度θを有することにより、シート材Pに着弾する液体の位置がずれる。
【0096】
つまり吐出ユニット23の昇降方向と液体吐出ヘッド100の吐出方向との間に所定の角度θがあり、且つ、上流側ヘッドと下流側ヘッドの吐出方向が異なる場合、吐出ユニット23の昇降時に上流側ヘッドと下流側ヘッドとの間の液体の着弾距離が変動する。
【0097】
斯かるヘッドアレイ構成では、インクジェットプリンタ1が、昇降機構により、シート材Pの厚みに応じて吐出ユニット23を昇降させる際に上流側ヘッドと下流側ヘッドとの間でノズル列の吐出タイミングをさらに調整する。
【0098】
例えばノズル列間タイミング補正時の吐出ユニット23のノズル面と基準のシート材Pの表面との間の隙間の基準距離g0から昇降時の距離gへ隙間を拡大する場合について考える。上流側ヘッドと下流側ヘッドの双方のノズル列101からシート材Pへの液体の着弾位置はそれぞれ内側にずれる。
【0099】
着弾位置のズレ量ΔLgは、以下の式(2)から求められる。つまり着弾位置のズレ量ΔLgは、吐出ユニット23の昇降変位量(ノズル面とシート材Pの表面との間の隙間の距離g-基準距離g0)と、吐出ユニット23の昇降方向と液体吐出ヘッド100の吐出方向との間の角度θと、に基づき求められる。基準距離g0および角度θは、NVRAM304等の不揮発性メモリまたはHD(Hard Disk)等のストレージに保存される。なお、基準距離g0および角度θは、インクジェットプリンタ1と通信可能な外部装置のストレージに保存されてもよい。
【0100】
【数2】
【0101】
本実施形態では、上流側ヘッドの吐出方向と下流側ヘッドの吐出方向とが吐出ユニット23の昇降方向に対して同じ角度θだけ傾いているため、上流側ヘッドと下流側ヘッドのどちらも同じ着弾位置のズレ量ΔLgが発生する。
【0102】
したがって、上流側ヘッドを基準にして下流側ヘッドのノズル列間タイミング補正の第1調整値を補正する補正値は、着弾位置のズレ量ΔLgを2倍したものになる。インクジェットプリンタ1は、吐出タイミング調整部503により、斯かる補正値(2×ΔLg)を、下流側ヘッドの各々のノズル列間距離L12~L18から減算する。
【0103】
反対に、ノズル列間タイミング補正時のノズル面と基準のシート材Pの表面との間の隙間の基準距離g0から距離g′へ隙間を縮小した場合、上流側ヘッドと下流側ヘッドの双方のノズル列101からシート材Pへの液体の着弾位置がそれぞれ外側にずれる。したがって、インクジェットプリンタ1は、吐出タイミング調整部503により、斯かる補正値(2×ΔLg)を、下流側ヘッドの各々のノズル列間距離L12~L18に加算する。
【0104】
また、インクジェットプリンタ1は、吐出タイミング調整部503により、斯かる補正値(2×ΔLg)により補正された各々のノズル列間距離L12~L18を式(1)に代入することにより、シート材Pの厚みに応じた吐出タイミングの調整を行う。
【0105】
以上により、インクジェットプリンタ1は、吐出ユニット23とシート材Pの表面との間の隙間を変更した場合であっても高品質な画像を形成できる。
【0106】
(本実施形態の作用効果)
以上の実施形態によれば、搬送ドラム21上のシート材Pの厚みに応じて基準のノズル列L1に対する他のノズル列L2~L8の吐出タイミング(ノズル列間距離L12~L18)を調整するため、シート材Pへの液体の着弾位置精度を向上させることができる。
【0107】
また、吐出ユニット23の昇降方向と液体吐出ヘッド100の吐出方向との間に所定の角度θがあり且つ上流側ヘッドと下流側ヘッドの吐出方向が異なる場合、吐出ユニット23の昇降時に上流側ヘッドと下流側ヘッドとの間の吐出タイミングを補正する。したがって、吐出ユニット23とシート材Pの表面との間の隙間を変更した場合であっても高品質な画像を形成することができる。
【0108】
上記で説明した実施形態の各種機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」には、電子回路で実装するプロセッサのようにソフトウェアで各機能を実行するようにプログラミングしたプロセッサが含まれる。また「処理回路」には、各機能を実行するように設計されたASICおよびDSP(Digital Signal Processor)等のいずれかのデバイスが含まれる。また「処理回路」には、FPGA(Field Programmable Gate Array)および従来の回路モジュール等のデバイスが含まれる。
【0109】
本開示の態様は、例えば以下の通りである。
<1> シート材を周面に保持して搬送する回転部材と、
前記シート材に液体を吐出する複数のノズルが前記シート材の搬送方向と直行する方向に並んだノズル列を前記搬送方向に複数配置した吐出部と、
前記シート材の位置を検知するシート材位置検知部と、
前記回転部材の回転量に応じたタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、
前記シート材の前記位置の検知結果と、生成された前記タイミング信号と、に基づいて前記吐出部の各々の前記ノズル列の吐出タイミングを生成する吐出タイミング生成部と、
前記回転部材上の前記シート材の厚みに基づいて基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングを調整する吐出タイミング調整部と、
を備える、液体吐出装置。
<2> 前記吐出タイミング調整部は、基準の前記ノズル列と他の前記ノズル列のいずれか一つとの間の距離と、前記シート材の厚みと、前記回転部材の半径と、に基づいて基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングを調整する、前記<1>に記載の液体吐出装置。
<3> 前記吐出タイミング調整部は、基準の前記シート材の厚みに基づいて前記吐出タイミングの第1調整値を算出すると共に、基準の前記シート材の厚みと実際の前記シート材の厚みとに基づいて前記吐出タイミングの第2調整値を算出する、前記<2>に記載の液体吐出装置。
<4> 前記吐出タイミング調整部は、基準の前記ノズル列と他の前記ノズル列のいずれか一つとの間の距離をLとし、基準の前記シート材の厚みをt0とし、実際の前記シート材の厚みをtとし、前記回転部材の半径をRとした場合に、
【数3】
式(3)により前記第2調整値ΔLを算出する、前記<3>に記載の液体吐出装置。
<5> 前記吐出部が3列以上の前記ノズル列を備える場合、前記吐出タイミング調整部は、前記搬送方向で最も上流側の前記ノズル列と他の前記ノズル列のいずれか一つとの間の距離に基づいて他の前記ノズル列の前記第2調整値を算出する、前記<3>または<4>に記載の液体吐出装置。
<6> 前記液体吐出装置は、前記回転部材の回転方向に複数の前記吐出部を備え、
前記吐出タイミング調整部は、各々の前記吐出部の前記搬送方向で最も上流側の前記ノズル列同士の間では、前記シート材の厚みに応じた前記吐出タイミングの調整を実行せず、各々の前記吐出部の基準の前記ノズル列と他の前記ノズル列との間で前記シート材の厚みに応じた前記吐出タイミングの調整を実行する、前記<1>から<5>のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
<7> 前記液体吐出装置は、前記回転部材の回転方向に複数の前記吐出部と、複数の前記吐出部を前記回転部材の半径方向に同時に昇降させる昇降機構と、を備え、
前記吐出タイミング調整部は、前記昇降機構の昇降方向と、複数の前記吐出部のうちの少なくとも一つの液体吐出方向と、が平行でない場合に、
前記昇降方向と前記液体吐出方向との間の角度と、
前記吐出部のノズル面と基準の前記シート材の表面との間の隙間の距離と、前記吐出部のノズル面と実際の前記シート材の表面との間の隙間の距離との間の差分と、
に基づいて基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングをさらに補正する、前記<1>から<6>のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
<8> 前記吐出タイミング調整部は、前記昇降方向と前記液体吐出方向との間の角度をθとし、前記吐出部の前記ノズル面と基準の前記シート材の表面との間の隙間の距離をg0とし、前記吐出部の前記ノズル面と実際の前記シート材の表面との間の隙間の距離をgとした場合に、
【数4】
式(4)により、基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングを補正する、前記<7>に記載の液体吐出装置。
<9> 液体吐出装置により実行される液体吐出方法であって、前記液体吐出装置が、
シート材を回転部材の周面に保持して搬送するステップと、
複数のノズルが前記シート材の搬送方向と直行する方向に並んだノズル列を前記搬送方向に複数配置した吐出部から液体を前記シート材に吐出するステップと、
前記シート材の位置を検知するステップと、
前記回転部材の回転量に応じたタイミング信号を生成するステップと、
前記シート材の前記位置の検知結果と、生成された前記タイミング信号と、に基づいて前記吐出部の各々の前記ノズル列の吐出タイミングを生成するステップと、
前記回転部材上の前記シート材の厚みに基づいて基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングを調整するステップと、
を実行する、液体吐出方法。
<10> 液体吐出装置のコンピュータに、
シート材を回転部材の周面に保持して搬送する指令を行うステップと、
複数のノズルが前記シート材の搬送方向と直行する方向に並んだノズル列を前記搬送方向に複数配置した吐出部から液体を前記シート材に吐出する指令を行うステップと、
前記シート材の位置を検知するステップと、
前記回転部材の回転量に応じたタイミング信号を生成するステップと、
前記シート材の前記位置の検知結果と、生成された前記タイミング信号と、に基づいて前記吐出部の各々の前記ノズル列の吐出タイミングを生成するステップと、
前記回転部材上の前記シート材の厚みに基づいて基準の前記ノズル列に対する他の前記ノズル列の前記吐出タイミングを調整するステップと、
を実行させる、プログラム。
【符号の説明】
【0110】
1 インクジェットプリンタ
10 搬入部
11 搬入トレイ
12 給送装置
13 レジストローラ対
20 印刷部
21 搬送ドラム
21a 軸
22 液体吐出部
23 吐出ユニット
24 渡し胴
25 受け渡し胴
26 吸着装置
30 乾燥部
31 乾燥機構部
32 吸引搬送機構部
40 搬出部
100 液体吐出ヘッド
101 ノズル列
102 ベース部材
201 第1エンコーダ
202 エンコーダホイール
203 第1エンコーダセンサ
211 第2エンコーダ
212 エンコーダスケール
213 第2エンコーダセンサ
220 シート材位置センサ
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 NVRAM
308 外部機器接続I/F
309 ネットワークI/F
310 バスライン
311 シート搬送部
312 搬送ドライバ
330 操作パネル
322 液体吐出ヘッドドライバ
501 吐出開始タイミング決定部
502 吐出タイミング生成部
503 吐出タイミング調整部
504 ヘッド駆動制御部
P シート材
PS 位置検知信号
ES1 第1タイミング信号
ES2 第2タイミング信号
YS Y印字信号
MS M印字信号
CS C印字信号
KS K印字信号
5STS 5ST印字信号
6STS 6ST印字信号
【先行技術文献】
【特許文献】
【0111】
【特許文献1】特開2019-155794号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11