(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078062
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】接着剤フィルム、接着剤テープ、剥離フィルム付き接着剤テープ、半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20240603BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240603BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20240603BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240603BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240603BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J201/00
C09J7/40
C09J4/02
H01L21/60 311S
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190392
(22)【出願日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】林出 明子
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】田澤 強
(72)【発明者】
【氏名】石毛 紘之
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
4M109
5F044
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004BA02
4J004DB02
4J004FA05
4J040EC002
4J040FA131
4J040HC23
4J040HC25
4J040JA09
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4J040JB08
4J040KA13
4J040KA16
4J040KA42
4J040LA01
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4J040MB03
4M109AA01
4M109EA02
4M109EA12
4M109EA15
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB11
4M109EB17
5F044KK02
5F044KK05
5F044LL11
5F044RR17
5F044RR19
(57)【要約】
【課題】フィレットの発生量を抑えることができる、半導体用の接着剤フィルムを提供すること。
【解決手段】半導体チップを基体に接合するとともに、半導体チップと基体との隙間を封止するために用いられる接着剤フィルムであって、光硬化性及び熱硬化性を有する接着剤組成物からなる単層フィルムである、接着剤フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを基体に接合するとともに、前記半導体チップと前記基体との隙間を封止するために用いられる接着剤フィルムであって、
光硬化性及び熱硬化性を有する接着剤組成物からなる単層フィルムである、接着剤フィルム。
【請求項2】
前記接着剤組成物が、光重合性化合物と、光重合開始剤と、熱硬化性樹脂と、熱硬化剤と、を含有する、請求項1に記載の接着剤フィルム。
【請求項3】
前記光重合性化合物がラジカル重合性化合物であり、前記光重合開始剤が光ラジカル重合開始剤である、請求項2に記載の接着剤フィルム。
【請求項4】
前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリル化合物を含む、請求項3に記載の接着剤フィルム。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項2に記載の接着剤フィルム。
【請求項6】
前記熱硬化剤が、イミダゾール系硬化剤を含む、請求項5に記載の接着剤フィルム。
【請求項7】
前記イミダゾール系硬化剤がトリアジン環を有する、請求項6に記載の接着剤フィルム。
【請求項8】
前記接着剤組成物における、前記光重合性化合物の含有量に対する前記熱硬化性樹脂の含有量の質量比が、3~11である、請求項2に記載の接着剤フィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤フィルムと、
前記接着剤フィルム上に設けられたバックグラインドテープと、を備える、接着剤テープ。
【請求項10】
請求項9に記載の接着剤テープと、
前記接着剤テープ上であって、前記接着剤フィルムからみて、前記バックグラインドテープとは反対側に設けられた剥離フィルムと、を備える、剥離フィルム付き接着剤テープ。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤フィルムに光を照射する光照射工程と、
半導体チップと該半導体チップが搭載される基体とを、光照射後の前記接着剤フィルムを介して互いの接続部が対向するように配置された状態で、加熱し接合する工程と、を備え、
前記光照射工程は、前記接着剤フィルムが、前記半導体チップ若しくはその前駆体の接続面、又は、前記基体若しくはその前駆体の接続面に貼り付けられた状態で行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記接着剤フィルムと、前記接着剤フィルム上に設けられたバックグラインドテープと、を備える、接着剤テープを用意し、該接着剤テープを、前記接着剤フィルム側から、前記半導体チップの前駆体、又は、前記基体の前駆体の接続面に貼り付けるラミネート工程と、
前記接着剤テープが貼り付けられた前記前駆体を前記接着剤テープとは反対側から研削するバックグラインド工程と、を更に備える、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記光照射工程は、前記バックグラインド工程後に前記バックグラインドテープを除去してから行われる、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
第1接続部を有する半導体チップと、前記第1接続部と電気的に接続された第2接続部を有する基体と、前記半導体チップと前記基体とを接着するとともに、前記半導体チップと前記基体との隙間を充填する封止部と、を備え、
前記封止部が、請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤フィルムの硬化物である、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤フィルム、接着剤テープ、剥離フィルム付き接着剤テープ、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと基板とを接続するには、金ワイヤ等の金属細線を用いるワイヤーボンディング方式が広く適用されている。一方、半導体装置に対する高機能化、高集積化、高速化等の要求に対応するため、半導体チップ又は基板にバンプと呼ばれる導電性突起を形成して、半導体チップと基板とを直接接続するフリップチップ接続方式(FC接続方式)が広まりつつある。
【0003】
例えば、半導体チップ及び基板間の接続に関して、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等に盛んに用いられているCOB(Chip On Board)型の接続方式もFC接続方式に該当する。また、FC接続方式は、半導体チップ上に接続部(例えば、バンプ及び配線)を形成して、半導体チップ間を接続するCOC(Chip On Chip)型の接続方式にも広く用いられている。
【0004】
また、さらなる小型化、薄型化、高機能化が強く要求されるパッケージでは、上述した接続方式を用いてチップを積層し多段化した、チップスタック型パッケージ、POP(Package On Package)、TSV(Through-Silicon Via)等も広く普及し始めている。このような積層・多段化技術は、半導体チップ等を三次元的に配置することから、二次元的に配置する手法と比較してパッケージを小さくできる。また、半導体の性能向上、ノイズ低減、実装面積の削減、省電力化にも有効であることから、次世代の半導体配線技術として注目されている。
【0005】
また、生産性向上の観点から、半導体ウエハ上に半導体チップを圧着(接続)した後に個片化して半導体パッケージを作製するCOW(Chip On Wafer)も注目されている。さらに、同様の観点から、半導体ウエハ上又はマップ基板上に複数の半導体チップを位置合わせして仮圧着した後、これら複数の半導体チップを一括で本圧着して接続を確保するギャングボンディング方式も注目されている。
【0006】
上記のような半導体チップ等の接続部材同士の接続には、接続時の温度で適度な流動性を示す熱硬化性の接着剤フィルムが使用されており、接続時(圧着時)に加熱を行うことで接着剤フィルムが硬化され、接続部材同士が接続される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、パッケージの高機能化及び高集積化に伴い、層間のギャップ及び配線間のピッチが狭くなってきていることから、接続時に流動した接着剤が接続部材(例えば半導体チップ)の端からはみ出すことで、フィレット(はみ出し部)が形成されやすくなってきている。フィレットは接続部材の破損の原因となり得るため、接続部材間の導通性(接続信頼性)を確保しつつ、フィレットの発生量を低減する手法の開発が求められている。
【0009】
そこで、本発明は、フィレットの発生量を抑えることができる、半導体用の接着剤フィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の[1]~[14]を提供する。
【0011】
[1]
半導体チップを基体に接合するとともに、前記半導体チップと前記基体との隙間を封止するために用いられる接着剤フィルムであって、
光硬化性及び熱硬化性を有する接着剤組成物からなる単層フィルムである、接着剤フィルム。
【0012】
[2]
前記接着剤組成物が、光重合性化合物と、光重合開始剤と、熱硬化性樹脂と、熱硬化剤と、を含有する、[1]に記載の接着剤フィルム。
【0013】
[3]
前記光重合性化合物がラジカル重合性化合物であり、前記光重合開始剤が光ラジカル重合開始剤である、[2]に記載の接着剤フィルム。
【0014】
[4]
前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリル化合物を含む、[3]に記載の接着剤フィルム。
【0015】
[5]
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、[2]~[4]のいずれかに記載の接着剤フィルム。
【0016】
[6]
前記熱硬化剤が、イミダゾール系硬化剤を含む、[2]~[5]のいずれかに記載の接着剤フィルム。
【0017】
[7]
前記イミダゾール系硬化剤がトリアジン環を有する、[6]に記載の接着剤フィルム。
【0018】
[8]
前記接着剤組成物における、前記光重合性化合物の含有量に対する前記熱硬化性樹脂の含有量の質量比が、3~11である、[2]~[7]のいずれかに記載の接着剤フィルム。
【0019】
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載の接着剤フィルムと、
前記接着剤フィルム上に設けられたバックグラインドテープと、を備える、接着剤テープ。
【0020】
[10]
[9]に記載の接着剤テープと、
前記接着剤テープ上であって、前記接着剤フィルムからみて、前記バックグラインドテープとは反対側に設けられた剥離フィルムと、を備える、剥離フィルム付き接着剤テープ。
【0021】
[11]
[1]~[8]のいずれかに記載の接着剤フィルムに光を照射する光照射工程と、
半導体チップと該半導体チップが搭載される基体とを、光照射後の前記接着剤フィルムを介して互いの接続部が対向するように配置された状態で、加熱し接合する工程と、を備え、
前記光照射工程は、前記接着剤フィルムが、前記半導体チップ若しくはその前駆体の接続面、又は、前記基体若しくはその前駆体の接続面に貼り付けられた状態で行われる、半導体装置の製造方法。
【0022】
[12]
前記接着剤フィルムと、前記接着剤フィルム上に設けられたバックグラインドテープと、を備える、接着剤テープを用意し、該接着剤テープを、前記接着剤フィルム側から、前記半導体チップの前駆体、又は、前記基体の前駆体の接続面に貼り付けるラミネート工程と、
前記接着剤テープが貼り付けられた前記前駆体を前記接着剤テープとは反対側から研削するバックグラインド工程と、を更に備える、[11]に記載の半導体装置の製造方法。
【0023】
[13]
前記光照射工程は、前記バックグラインド工程後に前記バックグラインドテープを除去してから行われる、[12]に記載の半導体装置の製造方法。
【0024】
[14]
第1接続部を有する半導体チップと、前記第1接続部と電気的に接続された第2接続部を有する基体と、前記半導体チップと前記基体とを接着するとともに、前記半導体チップと前記基体との隙間を充填する封止部と、を備え、
前記封止部が、[1]~[8]のいずれかに記載の接着剤フィルムの硬化物である、半導体装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、フィレットの発生量を抑えることができる、半導体用の接着剤フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の剥離フィルム付き接着剤テープの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図2の(a)は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図であり、
図2の(b)は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、及び、それに対応するメタクリルの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリレート」等の他の類似の表現においても同様である。また、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該複数の物質の合計量を意味する。
【0028】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
<接着剤フィルム>
一実施形態の接着剤フィルムは、半導体チップを基体に接合するとともに、半導体チップと基体との隙間を封止するために用いられる接着剤フィルムであって、光硬化性及び熱硬化性を有する接着剤組成物からなる単層フィルムである。
【0030】
上記接着剤フィルムは、光硬化性を有することから、光の照射によって、容易に部分的に低流動化する。具体的には、例えば、上記接着剤フィルムを2つの接続部材のうちの一方(半導体チップ、基体、又はこれらの前駆体)に貼り付けた後に光照射を行うことで、接着剤フィルムを構成する接着剤の流動性を低くすることができる。また、光照射による硬化方法では、加熱等による硬化方法と比較して、接着剤フィルムに含有させる成分の種類及び光照射の条件を調整することで、容易に所望の流動性に調整可能である。そのため、接着剤フィルムによれば、接続部材同士の接続に必要な流動性を維持しながら、接着剤の過剰な流動を抑えることができ、結果としてフィレットの発生量を抑えることができる。また、上記接着剤フィルムは、光硬化性に加えて熱硬化性も有していることから、光硬化後に加熱によって更に硬化(熱硬化)することができ、接続部材同士を充分な強度で接合することができる。
【0031】
さらに、本発明者らの検討の結果、光硬化性を有しない層と光硬化性を有する層とを備える多層構成の接着剤フィルムでは、上記実施形態の接着剤フィルムと同様にフィレットの発生は抑制できるものの、上記実施形態の接着剤フィルムよりもボイドが発生しやすいことが明らかとなった。換言すれば、上記実施形態の接着剤フィルムによれば、光硬化性を有しない層と光硬化性を有する層とを備える多層構成の接着剤フィルムと比較して、ボイドの発生が低減する傾向にある。
【0032】
(接着剤組成物)
接着剤フィルムを構成する接着剤組成物は、例えば、光重合性化合物と、光重合開始剤と、熱硬化性樹脂と、熱硬化剤と、を含有する。ここで、「光重合性化合物」とは、光(例えば紫外光)の照射によって光重合開始剤が発生する活性種(ラジカル、カチオン又はアニオン)により重合する化合物を意味し、「熱硬化性樹脂」とは、熱により熱硬化剤との反応によって硬化する化合物を意味する。
【0033】
[光重合性化合物]
光重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であってよく、カチオン重合性化合物であってもよく、アニオン重合性化合物であってもよい。光重合性化合物の重合性は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤の反応を阻害しないように、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤の硬化性との関係で選択されてよい。例えば、熱硬化性樹脂がカチオン硬化性又はアニオン硬化性を有する場合、光重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物を用いることが好ましい。
【0034】
光重合性化合物は、反応速度の観点から、好ましくはラジカル重合性化合物である。この場合、光重合開始剤としては光ラジカル重合開始剤が用いられる。
【0035】
ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル化合物、ビニル化合物等が挙げられる。ラジカル重合性化合物としては、耐久性、電気絶縁性及び耐熱性に優れる観点から、(メタ)アクリル化合物が好ましい。(メタ)アクリル化合物は、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であればよい。(メタ)アクリル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ナフタレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノールアラルキル型、ビフェニル型、トリフェニルメタン型、ジシクロペンタジエン型、フルオレン型、アダマンタン型又はイソシアヌル酸型の骨格を含有する(メタ)アクリル化合物;各種多官能(メタ)アクリル化合物(前記骨格を含有する(メタ)アクリル化合物を除く)等を使用することができる。多官能(メタ)アクリル化合物としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、多官能(メタ)アクリル化合物が好ましく、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートがより好ましい。多官能(メタ)アクリル化合物の官能基数((メタ)アクリロイル基の数)は、好ましくは2~8であり、より好ましくは3~7であり、更に好ましくは4~6である。
【0036】
光重合性化合物の分子量は、例えば、400~2000である。光重合性化合物の分子量は、2000より小さいことが好ましく、1000以下であることがより好ましい。光重合性化合物の分子量が小さいほど反応が進行しやすく、硬化反応率が高くなる。
【0037】
光重合性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
光重合性化合物の含有量は、フィレットの発生量をより低減する観点では、接着剤組成物の全量を基準として、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。光重合性化合物の含有量は、封止性を向上させる観点及びボイドの発生を抑制する観点では、接着剤組成物の全量を基準として、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、光重合性化合物の含有量は、接着剤組成物の全量を基準として、1~10質量%が好ましく、3~7質量%がより好ましく、3~5質量%が更に好ましい。
【0039】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、光重合性化合物の種類に応じて選択可能であり、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤又は光アニオン重合開始剤であってよい。光重合開始剤としては、光重合性化合物と同様の理由から光ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
【0040】
光ラジカル重合開始剤は、例えば、150~750nmの範囲内の波長を含む光、好ましくは254~405nmの範囲内の波長を含む光、更に好ましくは365nmの波長を含む光(例えば紫外光)の照射により分解して遊離ラジカルを発生する化合物である。光ラジカル重合開始剤としては、一種の化合物を単独で用いてよく、複数種の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン系光重合開始剤、αアミノアルキルケトン系光重合開始剤、ホスフィンオキサイド系光重合開始剤が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、アルキルフェノン系光重合開始剤が好ましく、α-ヒドロキシアセトフェノン光重合開始剤がより好ましい。
【0042】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0043】
光ラジカル重合開始剤の分子量は、膜形成時、貼り付け時等の熱による揮発を抑制する観点から、400以上(例えば300~600)であることが好ましい。
【0044】
接着剤組成物中の光重合開始剤の含有量は、硬化を充分に進行させやすい観点から、光重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上が更に好ましい。光重合開始剤の含有量は、硬化反応の急激な進行により分子鎖が短くなること、及び、未反応基が残存することが抑制される観点から、光重合性化合物100質量部に対して、5.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、1.5質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、光重合開始剤の含有量は、光重合性化合物100質量部に対して、0.1~5.0質量部が好ましく、0.5~3.0質量部がより好ましく、0.5~1.5質量部が更に好ましい。接着剤組成物中の光ラジカル重合開始剤の含有量は、上記と同様の観点から、光ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.1~5.0質量部が好ましく、0.5~3.0質量部がより好ましく、0.5~1.5質量部が更に好ましい。
【0045】
[熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂(硬化剤として含有される場合を除く)、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。熱硬化性樹脂中、エポキシ樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂の全量を基準として、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。エポキシ樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂の全量を基準として100質量%であってもよい。
【0046】
エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び各種多官能エポキシ樹脂を使用することができる。これらは単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。これらの中でも、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂(トリフェノールメタン骨格含有エポキシ樹脂)を用いる場合、フィレットの発生量がより低減される傾向がある。
【0047】
エポキシ樹脂は、高温での接続時に分解して揮発成分が発生することを抑制する観点から、接続時の温度における熱重量減少量率が5%以下のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。例えば、接続時の温度が250℃の場合は、250℃における熱重量減少量率が5%以下のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、接続時の温度が300℃の場合は、300℃における熱重量減少量率が5%以下のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0048】
エポキシ樹脂としては、フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、25℃で液状のエポキシ樹脂(以下、単に「液状エポキシ樹脂」という。)を用いてもよい。ここで、「25℃で液状」とは、E型粘度計で測定した25℃における粘度が400Pa・s以下であることをいう。液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、ビスフェノールAD型のグリシジルエーテル、ビスフェノールS型のグリシジルエーテル、ビスフェノールF型のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン等が挙げられる。
【0049】
熱硬化性樹脂中の液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、熱硬化性樹脂の全量を基準として、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルムのタック性が過剰に高まることを抑制しやすい観点、及び、エッジフュージョンを抑制しやすい観点から、熱硬化性樹脂の全量を基準として、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0050】
熱硬化性樹脂の反応性官能基当量(例えば、エポキシ樹脂のエポキシ当量)は、100~3000g/eqであってよく、100~2000g/eq又は100~1500g/eqであってもよい。反応性官能基当量が上記範囲にあると、加熱時の反応性と流動性のバランスが良好となりやすい。
【0051】
接着剤組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、フィレットの発生を抑制しやすくする観点では、接着剤組成物の全量基準で、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上が更に好ましい。熱硬化性樹脂の含有量は、良好な封止性が得られやすくなる観点、及び、ボイドの発生が抑制されやすくなる観点では、接着剤組成物の全量を基準として、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
【0052】
上記熱硬化性樹脂の含有量は、光重合性化合物の含有量との関係で設定されてもよい。接着剤組成物における、光重合性化合物の含有量に対する熱硬化性樹脂の含有量の質量比が3~11であると、高い接続信頼性が得られやすくなり、フィレットの発生量もより低減される傾向がある。上記比は、フィレットの発生量が更に低減される観点から、5以上、7以上又は9以上であってもよく、上記効果に加えて、良好な封止性が得られやすくなる観点、及び、ボイドの発生が抑制されやすくなる観点から、10以下であってもよい。
【0053】
[熱硬化剤]
熱硬化剤としては、熱硬化性樹脂の硬化剤として知られる公知の硬化剤を用いることができる。熱硬化剤には、一般に硬化促進剤として知られる材料も包含される。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、熱硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ホスフィン系硬化剤等を用いることができる。これらの中でも、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤は、接続部に酸化膜が生じることを抑制するフラックス活性を示すため、これらの熱硬化剤を用いることで、接続信頼性を向上させることができる。加熱を低温で実施した場合に速やかに硬化を進行させることができる観点では、イミダゾール系硬化剤を用いることが好ましい。
【0054】
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体が挙げられる。また、これらをマイクロカプセル化した潜在性硬化剤を用いることもできる。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、より良好な封止性が得られやすくなる観点及びボイドの発生を抑制しやすくなる観点では、トリアジン環を有する化合物が好ましく用いられる。
【0055】
接着剤組成物中の熱硬化剤の含有量は、加熱時の硬化性が向上する観点から、熱硬化性樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましい。熱硬化剤の含有量は、接続部間への接着剤組成物の介入をより起こり難くすることができる観点では、熱硬化性樹脂100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。
【0056】
[その他の成分]
接着剤組成物は、上記以外の成分として、例えば、熱可塑性樹脂、フィラー(充填剤)等が挙げられる。
【0057】
熱可塑性樹脂は、耐熱性の向上及びフィルム形成性の向上に寄与する。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルゴムが挙げられる。これらの中でも、優れた耐熱性及びフィルム形成性が得られやすくなる観点から、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリルゴム、シアネートエステル樹脂及びポリカルボジイミド樹脂が好ましく、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びアクリルゴムがより好ましい。これらの熱可塑性樹脂は単独で又は2種以上の混合物若しくは共重合体として使用することもできる。
【0058】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、例えば10000以上であり、20000以上又は30000以上であってもよい。このような熱可塑性樹脂によれば、接着剤組成物の耐熱性及びフィルム形成性を一層向上させることができる。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、耐熱性の向上効果が得られやすくなる観点から、1000000以下であってよく、500000以下であってもよい。なお、本明細書において、重量平均分子量とは、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、商品名:C-R4A)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。測定には、例えば、下記の条件を用いることができる。
検出器:LV4000 UV Detector(株式会社日立製作所製、商品名)
ポンプ:L6000 Pump(株式会社日立製作所製、商品名)
カラム:Gelpack GL-S300MDT-5(計2本)(日立化成株式会社製、商品名)
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)+LiBr(0.03mol/L)+H3PO4(0.06mol/L)
流量:1mL/分
【0059】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、接着剤フィルムの接続部材(例えば半導体チップ)への貼付性に優れる観点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、85℃以下が更に好ましい。上記Tgとは、DSC(パーキンエルマー社製、商品名:DSC-7型)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分、測定雰囲気:空気の条件で測定したときのTgである。
【0060】
接着剤組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、接着剤組成物の耐熱性及びフィルム形成性が向上しやすくなる観点から、接着剤組成物の全量基準で、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。熱可塑性樹脂の含有量は、フィレットの発生を抑制しやすくする観点では、接着剤組成物の全量を基準として、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0061】
フィラーは、接着剤組成物の粘度、接着剤組成物の硬化物の物性等の制御に有効である。具体的には、フィラーを用いることで、接続時のボイド発生の抑制、接着剤組成物の硬化物の吸湿率の低減等を図ることができる。フィラーは、無機フィラー(無機粒子)であっても、有機フィラー(有機粒子)であってもよい。無機フィラーとしては、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、窒化ホウ素等の絶縁性無機フィラーが挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタン及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、シリカ、アルミナ及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。有機フィラーとしては、例えば、樹脂フィラー(樹脂粒子)が挙げられる。樹脂フィラーとしては、ポリウレタン、ポリイミド等が挙げられる。樹脂フィラーによれば、260℃等の高温での柔軟性を付与することができる。なお、熱可塑性樹脂で構成される有機フィラーは、上記熱可塑性樹脂には該当しないものとする。
【0062】
絶縁信頼性に更に優れる観点から、フィラーは絶縁性であることが好ましい。接着剤組成物は、銀、はんだ、カーボンブラック等の導電性材料を含むフィラー(導電性フィラー)を含有していないことが好ましい。
【0063】
フィラーの物性は、表面処理によって適宜調整されてもよい。フィラーは、分散性又は接着力が向上する観点から、表面処理を施したフィラーであってよい。表面処理剤としては、グリシジル系(エポキシ系)、アミン系、フェニル系、フェニルアミノ系、(メタ)アクリル系、ビニル系の化合物等が挙げられる。
【0064】
フィラーの平均粒径は、例えば、0.5~1.5μmである。フィラーの平均粒径は、フリップチップ接続時のかみ込み防止の観点から、1.5μm以下が好ましく、視認性(透明性)に優れる観点から、1.0μm以下がより好ましい。なお、フィラーの平均粒径は、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径であり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0065】
接着剤組成物中のフィラーの含有量は、放熱性が低くなることが抑制される観点、及び、ボイドの発生、吸湿率が大きくなること等を抑制しやすい観点から、接着剤組成物の全量を基準として、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上が更に好ましい。フィラーの含有量は、接続部へのフィラーの噛み込み(トラッピング)が生じることを抑制する観点から、接着剤組成物の全量を基準として、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0066】
フィラーが無機フィラーと有機フィラーとを含む場合、無機フィラーの含有量は、接着剤組成物中のフィラーの全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上又は80質量%以上であってよく、98質量%以下、95質量%以下又は90質量%以下であってよく、60~98質量%、70~95質量%又は80~90質量%であってよい。
【0067】
接着剤組成物には、酸化防止剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、レベリング剤、イオントラップ剤等の添加剤が更に含有されていてもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの含有量については、各添加剤の効果が発現するように適宜調整すればよい。接着剤組成物には、フラックス剤が含まれていてもよいが、フラックス剤の含有量は、接着剤組成物の全量を基準として、0.5質量%未満が好ましく、0.01質量%未満がより好ましく、0質量%が更に好ましい。特に接着剤組成物がラジカル重合性(ラジカル硬化性)を有する場合、接着剤組成物の硬化がフラックス剤によって阻害されやすいため、接着剤組成物がフラックス剤を含まないことが好ましい。なお、フラックス剤は、フラックス活性を有する化合物であり、例えば、カルボキシ基を有する化合物(モノ又はポリカルボン酸)である。上述したように、イミダゾール系硬化剤もフラックス活性を有し得るが、イミダゾール系硬化剤に該当する化合物は上記フラックス剤には該当しないものとする。フラックス剤の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等のジカルボン酸、並びに、これらのジカルボン酸の2位に電子供与性基が置換した化合物(例えば2-メチルグルタル酸)などが挙げられる。
【0068】
以上説明した接着剤フィルムは、例えば、以下の方法で作製できる。まず、接着剤フィルムを構成する各成分(光重合性化合物、光重合開始剤、熱硬化性樹脂、熱硬化剤、フィラー、熱可塑性樹脂、添加剤等)を、有機溶剤中に加え、攪拌混合、混練等により、溶解又は分散させて、接着剤組成物を含む塗液を調製する。その後、少なくとも一方面に離型処理が施された基材(フィルム又はテープ)の上に、上記塗液をナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター等を用いて塗布して塗膜を形成する。次いで、加熱により塗膜中から有機溶剤を減少させる。これにより、基材上に接着剤フィルム2を形成することができる。
【0069】
塗液の調製に用いる有機溶剤としては、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものが好ましく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、及び酢酸エチルが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。塗液を調製する際の攪拌混合及び混練は、例えば、攪拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル又はホモディスパーを用いて行うことができる。
【0070】
基材としては、有機溶剤を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム及びポリエーテルイミドフィルムを例示できる。基材は、これらのフィルムからなる単層のものに限られず、2種以上の材料からなる多層フィルムであってもよい。基材は、表面に離型処理が施されたフィルムであってもよい。
【0071】
基材上の塗膜から有機溶剤を揮発させる際の乾燥条件は、有機溶剤が充分に揮発する条件とすることが好ましく、具体的には、50~200℃、0.1~90分間の加熱を行うことが好ましい。実装後のボイド又は粘度調整に影響がなければ、有機溶剤は、接着剤組成物全量に対して1.5質量%以下まで除去されることが好ましい。
【0072】
<接着剤テープ及び剥離フィルム付き接着剤テープ>
図1は、一実施形態の剥離フィルム付き接着剤テープを示す模式断面図である。
図1に示される剥離フィルム付き接着剤テープ5は、剥離フィルム1と、接着剤フィルム2と、基材3と、を備える。基材3は接着剤フィルム2上に設けられており、接着剤フィルム2とともに接着剤テープ4を構成している。すなわち、
図1には、一実施形態の剥離フィルム付き接着剤テープ5とともに、一実施形態の接着剤テープ4が開示される。剥離フィルム1は、接着剤フィルム2からみて、基材3とは反対側に設けられている。
【0073】
剥離フィルム1は、接着剤フィルム2から剥離可能に構成されたフィルムであればよく、例えば、表面に離型処理が施されたフィルムであってよい。剥離フィルム1は、接着剤フィルム2の製造に用いられる基材であってもよい。剥離フィルム1は、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルイミド等を含むフィルムであってよい。剥離フィルム1の厚さは特に限定されないが、例えば、5~200μmであってよい。
【0074】
接着剤フィルム2は、上記実施形態の接着剤フィルムである。接着剤フィルム2の厚さは、接着剤フィルム2が光照射前に貼り付けられる接続部材における接続部の高さとの関係で適宜設定されてよい。上記接続部の高さをYとし、接着剤フィルム2の厚さをXとすると、XとYとの関係は、圧着時の接続性及び接着剤の充填性の観点から、0.70X≦Y≦1.3Xを満たすことが好ましく、0.80X≦Y≦1.2X満たすことがより好ましい。接着剤組成物の硬化物が接続部の間に介入し難くなり、接続信頼性がより一層向上する観点では、Y>Xを満たすことが好ましい。具体的には、接着剤フィルム2の厚さは、2~100μmであってよく、6~100μm、8~60μm又は10~40μmであってもよい。
【0075】
基材3は、例えば、接着剤フィルム2を支持可能なフィルム又はテープであり、好ましくはバックグラインドテープである。バックグラインドテープは、通常、一方の主面側が粘着層となるように構成されているが、この場合、バックグラインドテープは、粘着層側の面が接着剤フィルム2側となるように(例えば、粘着層と接着剤フィルムとが接するように)、接着剤フィルム2上に設けられる。基材3の厚さ(例えば、バックグラインドテープの厚さ)は、20~300μmであってよい。
【0076】
接着剤テープ4の基材3として、接着剤フィルム2の製造に用いられる上述した基材を用いる場合は、上記接着剤フィルムの製造方法、すなわち、基材上に塗液を塗布し、塗膜を形成し乾燥させる方法により得られた、基材と接着剤フィルムとの積層体をそのまま接着剤テープ4として用いてよい。また、接着剤フィルム2に基材3を貼り付ける(例えば、接着剤フィルム2と基材3とをラミネートする)ことにより接着剤テープ4を得てもよい。基材3がバックグラインドテープである場合、バックグラインドテープの粘着層の上で塗液の塗布及び乾燥が行われると、粘着層の破壊、粘着剤と接着剤との間の成分移行等の不具合が生じる可能性があるため、接着剤フィルム2にバックグラインドテープを貼り付けることにより接着剤テープ4を得ることが好ましい。
【0077】
剥離フィルム付き接着剤テープ5は、接着剤テープ4に剥離フィルム1を貼り付ける(例えば、接着剤テープ4と剥離フィルム1とをラミネートする)ことにより得てよく、剥離フィルム1上に接着剤フィルム2を設けた後、接着剤フィルム2上に基材3を設けることにより得てもよい。
【0078】
<半導体装置>
次に、上記実施形態の接着剤フィルムを用いて製造される半導体装置について説明する。
【0079】
図2の(a)は、半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図2(a)に示す半導体装置100は、互いに対向する半導体チップ20及び半導体チップが搭載される基体30と、半導体チップ20及び基体30の互いに対向する面にそれぞれ配置された配線(第1接続部及び第2接続部)25と、半導体チップ20及び基体30の配線25を互いに接続する接続バンプ40と、半導体チップ20と基体30との隙間を充填する接着剤組成物(上記実施形態の接着剤フィルムを構成する接着剤組成物)の硬化物からなる封止部50とを有している。半導体チップ20及び基体30は、配線25及び接続バンプ40によりフリップチップ接続されている。配線25及び接続バンプ40は、接着剤組成物の硬化物により封止されており外部環境から遮断されている。
【0080】
図2の(b)は、半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
図2(b)に示す半導体装置200は、互いに対向する半導体チップ20及び基体30と、半導体チップ20及び基体30の互いに対向する面にそれぞれ配置されたバンプ(第1接続部及び第2接続部)42と、半導体チップ20と基体30との隙間を充填する接着剤組成物(上記実施形態の接着剤フィルムを構成する接着剤組成物)の硬化物からなる封止部50とを有している。半導体チップ20及び基体30は、対向するバンプ42が互いに接続されることによりフリップチップ接続されている。バンプ42は、接着剤組成物の硬化物により封止されており外部環境から遮断されている。
【0081】
半導体チップ20としては、特に限定はなく、シリコン、ゲルマニウム等の同一種類の元素から構成される元素半導体から構成される半導体チップ、ガリウムヒ素、インジウムリン等の化合物半導体から構成される半導体チップを用いることができる。
【0082】
基体30としては、半導体チップ20を搭載するために用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、半導体チップ、半導体ウエハ、配線回路基板等が挙げられる。
【0083】
基体30として用いることができる半導体チップの例は、上記半導体チップ20の例と同じであり、基体30として半導体チップ20と同じ半導体チップを用いてもよい。
【0084】
基体30として用いることができる半導体ウエハとしては、特に限定はなく、上記半導体チップ20に例示した半導体チップが複数連結した構成を有するものであってよい。
【0085】
基体30として用いることができる配線回路基板としては、特に制限はなく、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン等を主な成分とする絶縁基板の表面に、金属膜の不要な個所をエッチング除去して形成された配線(配線パターン)25を有する回路基板、上記絶縁基板の表面に金属めっき等によって配線25が形成された回路基板、上記絶縁基板の表面に導電性物質を印刷して配線25が形成された回路基板などを用いることができる。
【0086】
配線25、バンプ42等の接続部は、主成分として、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えばスズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅等)、ニッケル、スズ、鉛などを含有しており、複数の金属を含有していてもよい。
【0087】
上記金属の中でも、接続部の電気伝導性・熱伝導性に優れたパッケージとする観点では、金、銀及び銅が好ましく、銀及び銅がより好ましい。コストが低減されたパッケージとする観点では、安価な材料である、銀、銅及びはんだが好ましく、銅及びはんだがより好ましく、はんだが更に好ましい。室温において金属の表面に酸化膜が形成すると生産性が低下すること及びコストが増加することがあるため、酸化膜の形成を抑制する観点では、金、銀、銅及びはんだが好ましく、金、銀、はんだがより好ましく、金、銀が更に好ましい。
【0088】
上記配線25及びバンプ42の表面には、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅等)、スズ、ニッケルなどを主な成分とする金属層が、例えばメッキにより形成されていてもよい。この金属層は単一の成分のみで構成されていても、複数の成分から構成されていてもよい。また、上記金属層は、単層又は複数の金属層が積層された構造をしていてもよい。
【0089】
半導体装置は、上記実施形態の半導体装置100及び半導体装置200に示すような構造(パッケージ)が複数積層されたものであってもよい。この場合、半導体装置100及び半導体装置200は、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えばスズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅等)、スズ、ニッケルなどを含むバンプ、配線等で互いに電気的に接続されていてもよい。
【0090】
半導体装置を複数積層する手法としては、例えばTSV(Through-Silicon Via)技術が挙げられる。TSV技術で積層されてなる半導体装置の例を
図3に示す。
図3に示す半導体装置500では、インターポーザ60上に形成された配線25が半導体チップ20の配線25と接続バンプ40を介して接続されることにより、半導体チップ20とインターポーザ60とがフリップチップ接続されている。半導体チップ20とインターポーザ60との隙間には接着剤組成物の硬化物が充填されており、封止部50を構成している。上記半導体チップ20におけるインターポーザ60と反対側の表面上には、配線25、接続バンプ40及び封止部50を介して半導体チップ20が繰り返し積層されている。半導体チップ20の表裏におけるパターン面の配線25は、半導体チップ20の内部を貫通する孔内に充填された貫通電極44により互いに接続されている。なお、貫通電極44の材質としては、銅、アルミニウム等を用いることができる。
【0091】
このようなTSV技術により、通常は使用されない半導体チップの裏面からも信号を取得することが可能となる。さらには、半導体チップ20内に貫通電極44を垂直に通すため、対向する半導体チップ20間、並びに、半導体チップ20及びインターポーザ60間の距離を短くし、柔軟な接続が可能である。上記実施形態の接着剤フィルムは、このようなTSV技術において、対向する半導体チップ20間、並びに、半導体チップ20及びインターポーザ60間の半導体用接着剤フィルムとして適用することができる。
【0092】
また、エリヤバンプチップ技術等の自由度の高いバンプ形成方法では、インターポーザを介さないでそのまま半導体チップをマザーボードに直接実装できる。上記実施形態の接着剤フィルムは、このような半導体チップをマザーボードに直接実装する場合にも適用することができる。なお、上記実施形態の接着剤フィルムは、2つの配線回路基板を積層する場合に、基板間の隙間(空隙)を封止する際にも適用することができる。
【0093】
<半導体装置の製造方法>
次に、上記実施形態の接着剤フィルムを用いた半導体装置の製造方法について説明する。
【0094】
一実施形態の半導体装置の製造方法は、例えば、接着剤フィルムに光を照射する光照射工程と、半導体チップと該半導体チップが搭載される基体とを、光照射後の接着剤フィルムを介して互いの接続部が対向するように配置された状態で、加熱し接合する加熱接合工程と、を備える。上記光照射工程は、接着剤フィルムが、半導体チップ若しくはその前駆体の接続面、又は、基体若しくはその前駆体の接続面に貼り付けられた状態で行われる。ここで、半導体チップの前駆体とは、加工によって半導体チップとなる部材を意味する。半導体チップの前駆体の具体例は、半導体ウエハである。基体の前駆体についても同様である。
【0095】
以下では、半導体チップの前駆体として半導体ウエハを用いる態様を例に挙げて、半導体装置の製造方法について説明する。なお、以下の説明において、接続面とは、加熱接合工程において接続される接続部(配線、バンプ等)が設けられている面を意味する。
【0096】
図4~
図10は、半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。一実施形態の製造方法は、以下に示す工程(a)~(e)を含む。
工程(a):接着剤フィルム2と基材3(バックグラインドテープ)とを備える接着剤テープ4を用意し、該接着剤テープ4を、接着剤フィルム2側から、半導体ウエハAの接続面に貼り付けるラミネート工程(
図4参照。)
工程(b):工程(a)で得られた積層体7の半導体ウエハAを接着剤テープ4とは反対側から研削するバックグラインド工程(
図5参照。)
工程(c):積層体7から基材3を除去する工程(
図6参照。)
工程(d):接着剤フィルム2に光を照射する光照射工程(
図7参照。)
工程(e):工程dで得られた光硬化後の接着剤フィルム9を備える積層体10を個片化し、接着剤フィルム付き半導体チップ10’を得る工程(
図8参照。)
工程(f):接着剤フィルム付き半導体チップ10’をピックアップする工程(
図9参照。)
工程(g):接着剤フィルム付き半導体チップ10’を基体11の接続面上に配置し、加熱することにより、接着剤フィルム付き半導体チップ10’の接続部6と、基体11の接続部12とを、電気的に接続する工程(
図9参照。)
【0097】
(工程(a))
工程(a)では、例えば、まず、基材3としてバックグラインドテープを備える接着剤テープ4と、一方面に接続部6(第1接続部)を有する半導体ウエハAとを用意し、接着剤テープ4の接着剤フィルム2側の面と半導体ウエハAの接続面(接続部6が設けられている面)とが対向するように、接着剤テープ4を所定の装置に配置する(
図4の(a)参照。)。次いで、半導体ウエハAの接続面上に接着剤テープ4を貼り付け、半導体ウエハA、接着剤フィルム2及び基材3(バックグラインドテープ)がこの順に積層された積層体7を得る(
図4の(b)参照。)。
【0098】
接着剤テープ4の貼付は、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等によって行うことができる。接着剤テープ4の供給面積及び厚みは、半導体ウエハ及び基体のサイズ、接続部の高さ等によって適宜設定される。なお、
図4では、接着剤フィルム2の厚さが半導体ウエハAの接続部6の高さよりも大きく、接続部6が接着剤フィルム2によって被覆されているが、接着剤フィルム2の厚さが接続部6の高さよりも小さくてもよい。
【0099】
(工程(b))
工程(b)では、例えば、グラインダーGを用いて、積層体7の半導体ウエハAを研削する(
図5の(a)及び
図5の(b)参照。)。研削後の半導体ウエハAの厚さは、例えば、10μm~300μmであってよい。半導体装置の小型化、薄型化の観点から、半導体ウエハの厚さを20μm~100μmとすることが好ましい。
【0100】
(工程(c))
工程(c)では、例えば、基材3を接着剤フィルム2から引き剥がすことにより、積層体7から基材3を除去する(
図6参照。)。
【0101】
(工程(d))
工程(d)では、接着剤フィルム2に光を照射することで、接着剤フィルム2中の接着剤組成物を硬化させる(
図7の(a)及び
図7の(b)参照。)。これにより、低流動化された接着剤フィルム9を備える積層体10が得られる。光の照射は、例えば、接着剤フィルム2側に配置した光源から活性光線Lを照射することにより行う。活性光線は、例えば、波長150~750nmの範囲内の光(例えば紫外光)であってよい。光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED光源等を使用することができる。光の照射量は、適宜調整可能であり、例えば、波長365nmの光の積算光量で、100mJ/cm
2以上であってよく、200mJ/cm
2以上であってよく、300mJ/cm
2以上であってよい。光の照射量は、例えば、波長365nmの光の積算光量で、1000mJ/cm
2以下であってよく、700mJ/cm
2以下であってよく、500mJ/cm
2以下であってよい。
【0102】
(工程(e))
工程(e)では、例えば、まず、積層体10の半導体ウエハA側にダイシングテープ8を貼付け、これを所定の装置に配置する(
図8の(a)参照。)。次いで、積層体10をダイシングソウDによりダイシングすることにより積層体10を個片化し、半導体チップA’上に接着剤フィルム9’を備える接着剤フィルム付き半導体チップ10’を得る(
図8の(b)参照。)。半導体チップA’の接着剤フィルム9’側の面には接続部6が設けられている。接着剤フィルム9’は光硬化後の接着剤組成物からなる。
【0103】
(工程(f))
工程(f)では、例えば、ダイシングテープ8をエキスパンド(拡張)することにより、上記ダイシングにより得られた接着剤フィルム付き半導体チップ10’を互いに離間させつつ、ダイシングテープ8側からニードルNで突き上げられた接着剤フィルム付き半導体チップ10’を、接着剤フィルム9’側からピックアップツールPでピックアップする(
図9参照。)。ピックアップされた接着剤フィルム付き半導体チップ10’は、ボンディングツールに受け渡されて工程(g)でのボンディングに使用される。
【0104】
(工程(g))
工程(g)では、例えば、まず、一方面に接続部12(第2接続部)を有する半導体チップ搭載用の基体11を用意し、接着剤フィルム付き半導体チップ10’と基体11との位置合わせを行う。次いで、ボンディングツールを用いて、接着剤フィルム付き半導体チップ10’を、接着剤フィルム9’側から基体11の接続面(接続部12が設けられている面)上に配置し加熱する。これにより、接着剤フィルム付き半導体チップ10’の接続部6と基体11の接続部12とが電気的に接続されるとともに、半導体チップA’と基体11との間に接着剤フィルム9’の硬化物からなる封止部13が形成され、接続部6及び接続部12が封止されて、接着剤フィルム付き半導体チップ10’と基体11との接合体である半導体装置15が得られる(
図10参照。)。基体11は、例えば、半導体チップ、半導体ウエハ又は配線回路基板である。
【0105】
接続部6及び接続部12の一方にはんだバンプが用いられる場合(例えば、接続部6又は接続部12が、はんだバンプが設けられた配線である場合)、接続部6と接続部12とがはんだ接合されることにより電気的かつ機械的に接続される。
【0106】
工程(g)の加熱は半導体チップを配置しながら行ってよく、半導体チップを配置した後に行ってもよい。工程(g)の加熱及び配置は、熱圧着であってよい。工程(g)は、位置合わせをした後に仮固定する工程(仮固定工程)と、加熱処理することによって、接続部に設けられたバンプ(例えばはんだバンプ)を溶融させて半導体チップA’と基体11とを接合するとともに接続部を封止する工程(封止工程)とを含んでいてもよい。仮固定の段階では、金属接合を形成することが必ずしも必要ではないため、仮固定工程は、低荷重、短時間及び低温度で実施することができる。そのため、工程(g)において仮固定工程と封止工程とを実施する場合、生産性が向上するとともに接続部の劣化を抑制することができる。
【0107】
仮固定のために加えられる荷重は、接続部(バンプ)の数、接続部(バンプ)の高さばらつきの吸収、接続部(バンプ)の変形量等の制御を考慮して適宜設定される。荷重は、ボイドを排除し、接続部を接触させやすくする観点では、大きいほど好ましい。荷重は、例えば、接続部(例えばバンプ)1個辺り、0.009N~0.2Nが好ましい。
【0108】
封止工程での加熱は、接続部の金属の融点以上に加熱可能な装置を用いて行ってよい。加熱温度は、接着剤フィルムの硬化が進行する温度が好ましく、完全に硬化する温度がより好ましい。加熱温度及び加熱時間は適宜設定される。
【0109】
封止工程での加熱時間は、接続部を構成する金属の種類により異なるが、生産性が向上する観点では、短時間であるほど好ましい。接続部にはんだバンプが用いられる場合、加熱時間は20秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましく、5秒以下が更に好ましい。銅-銅又は銅-金の金属接続の場合は、接続時間は60秒以下が好ましい。
【0110】
封止工程では、加熱及び加圧が可能な装置を用いて、加熱とともに加圧を行ってもよい。すなわち、封止工程での加熱は、熱圧着による加熱であってよい。この場合、荷重(接続荷重)は、接続部材のサイズ、接続部の数、高さのばらつき、加圧による接続部の変形量等を考慮して設定される。接続荷重は、例えば、大気圧を超えて1MPa以下であってよい。ボイド抑制及び接続性向上の観点では、荷重が大きいほど好ましく、フィレット抑制の観点では、荷重が小さいほど好ましい。これらの観点から、荷重は0.05~0.5MPaであることが好ましい。圧着時間(接続時間)は、接続部を構成する金属の種類により異なるが、生産性が向上する観点から短時間であるほど好ましい。接続部がはんだバンプである場合、圧着時間は20秒以下が好ましく、10秒以下又は5秒以下であってもよい。なお、圧着機を用いた直接的な加圧ではフィレットに圧着機の熱が伝わり難いため、フィレットまで充分に効果させやすい観点から、気圧による加圧が好ましい。一括封止及びフィレット抑制の観点からも、加熱時の加圧は気圧による加圧(加圧リフロー炉、加圧オーブン等による加圧)とすることが好ましい。
【0111】
半導体チップA’と基体11とを接続した後、オーブン等で加熱処理を行って、更に接続信頼性を高めてもよい。
【0112】
以上、半導体装置の製造方法の一実施形態について説明したが、本発明の半導体装置の製造方法は上記方法に限定されない。
【0113】
例えば、他の一実施形態では、工程(a)を実施せず、あらかじめ作製した積層体を用いてもよい。
【0114】
また、他の一実施形態では、工程(b)を実施せず、あらかじめ厚さが調整された半導体ウエハを用いてもよい。この場合、接着剤テープ4に代えて、接着剤フィルム2を単独で、又は、接着剤フィルム2とバックグラインドテープ以外の基材(例えば剥離フィルム)とを含む接着剤テープを用いることができる。基材を用いない場合、工程(c)も不要である。
【0115】
また、他の一実施形態では、工程(d)を工程(c)の前に実施してもよい。工程(c)の前に工程(d)を実施する場合、ダイシングテープ8への積層体の貼り付け前又は貼り付け後に基材3を剥離してよい。ただし、基材3(バックグラインドテープ)により接着剤フィルム2への光の入射が阻害されることでフィルムの硬化状態にばらつきが生じることを抑制し、フィレット量をより低減しやすくする観点では、工程(c)の後、工程(e)の前に工程(d)を実施することが好ましい。
【0116】
また、他の一実施形態では、半導体ウエハAに代えて、半導体チップを用いることもできる。この場合、接着剤テープ4に代えて、接着剤フィルム2を単独で、又は、接着剤フィルム2とバックグラインドテープ以外の基材(例えば剥離フィルム)とを含む接着剤テープを用いることができる。また、工程(b)及び工程(e)は不要であり、基材を用いない場合には、工程(c)も不要である。
【0117】
また、半導体ウエハAに代えて、配線回路基板を用いることもできる。この場合、工程(g)に代えて、半導体チップを、接着剤フィルム付き配線回路基板の接着剤フィルムが設けられている接続面(接続部側の面)上に配置し、加熱することにより、半導体チップの接続部と、配線回路基板の接続部とを、電気的に接続する工程(g’)を実施する。また、接着剤テープ4に代えて、接着剤フィルム2を単独で、又は、接着剤フィルム2とバックグラインドテープ以外の基材(例えば剥離フィルム)とを含む接着剤テープを用いることができる。また、工程(b)、工程(e)及び工程(f)は不要であり、基材を用いない場合には、工程(c)も不要である。
【実施例0118】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0119】
実施例で使用した材料の詳細は以下のとおり。
【0120】
(フェノキシ樹脂)
・ZX-1356-2:フェノキシ樹脂、東都化成株式会社製、商品名、Tg=約71℃、重量平均分子量Mw=約63000
(固形エポキシ樹脂)
・EP1032:トリフェノールメタン骨格含有多官能固形エポキシ、三菱ケミカル株式会社製、商品名「jER1032H60」、「jER」は登録商標(以下同じ)
(液状エポキシ樹脂)
・YL983U:ビスフェノールF型液状エポキシ、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名
・YX7110B80:柔軟性エポキシ、三菱化学株式会社製、商品名
(イミダゾール系硬化剤)
・2MAOK-PW:2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、四国化成工業株式会社製、商品名
(アクリル化合物)
・A-DPH:ジペンタエリスリトールポリアクリレート、新中村化学工業株式会社製、商品名
(光重合開始剤)
・Omnirad 127:2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン、IGM RESINS B.V.社製、商品名(「Irgacure」は登録商標。以下同じ)
(有機フィラー)
・EXL-2655:コアシェルタイプ有機微粒子、ロームアンドハースジャパン(株)製、商品名
(シリカフィラー)
・KE180G-HLA:シリカフィラー、株式会社アドマテックス製、商品名
(フラックス剤)
・2-メチルグルタル酸:アルドリッチ社製、融点=約78℃
【0121】
<実施例1及び比較例1~2>
(接着剤フィルム形成用塗液の調製)
表1に示す成分のうち、光重合開始剤以外の成分を、NV値([乾燥後の塗料分質量]/[乾燥前の塗料分質量]×100)が60%になるように有機溶剤(シクロヘキサノン)に添加し、混合液を得た。この際、各成分の添加量は表1に示す量(単位:質量部)とした。その後、上記混合液に、Φ1.0mmのビーズ及びΦ2.0mmのビーズを加え、ビーズミル(フリッチュ・ジャパン株式会社、遊星型微粉砕機P-7)で30分撹拌した。ビーズの添加量は、混合液の不揮発分量(有機溶剤以外の成分の合計量)と同質量とした。撹拌後、ビーズをろ過によって除去した。次いで、接着剤フィルムB形成用の塗液を調製する際には、得られた混合物に表1に示す量(単位:質量部)の光重合開始剤を添加し、攪拌混合した。これにより、接着剤フィルムA形成用の塗液(I)及び接着剤フィルムB形成用の塗液(II)を得た。
【0122】
【0123】
(接着剤テープの作製)
上記で作製した塗液(I)及び塗液(II)をそれぞれ用いて、実施例1、比較例1及び参考例1の接着テープを作製した。
【0124】
具体的には、まず、上記で作製した塗液(I)を、剥離フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「ピューレックスA54」)上に、乾燥後の膜厚が12μmとなるように、小型精密塗工装置(廉井精機)で塗工した。次いで、塗膜をクリーンオーブン(ESPEC製)で乾燥(100℃/10min)することにより、剥離フィルム上に接着剤フィルムAを形成した。次いで、接着剤フィルムAにバックグラインドテープを貼り付けることにより、バックグラインドテープ、接着剤フィルムA及び剥離フィルムをこの順で備える、比較例1の剥離フィルム付き接着剤テープを得た。
【0125】
また、塗液(I)に代えて塗液(II)を用いたこと以外は上記と同様にして、バックグラインドテープ、接着剤フィルムB及び剥離フィルムをこの順で備える、実施例1の剥離フィルム付き接着剤テープを得た。
【0126】
また、乾燥後の接着剤フィルムの厚さが6μmとなるように塗工条件を変更したこと以外は、上記2つのテープの製造方法と同様にして、剥離フィルム上に接着剤フィルム(接着剤フィルムA又は接着剤フィルムB)を形成し、剥離フィルムと接着剤フィルムとを備える積層体を得た。次いで、得られた2つの積層体の接着剤フィルム同士をラミネートすることで接着剤フィルムAからなる層と接着剤フィルムBからなる層とを備える二層構成の接着剤フィルム(総厚12μm)を形成した。この際、ラミネート温度は50℃とした。次いで、接着剤フィルムA側(接着剤フィルムBとは反対側)の剥離フィルムを剥がし、代わりにバックグラインドテープを貼り付けることにより、バックグラインドテープ、二層構成の接着剤フィルム及び剥離フィルムをこの順で備える、参考例1の剥離フィルム付き接着剤テープを得た。
【0127】
<評価>
実施例1、比較例1及び参考例1で得られた剥離フィルム付き接着剤テープを用いて、以下の手順で接続構造体(半導体装置)を作製した。また、得られた接続構造体を用いて、以下に示す方法で、接続信頼性(初期導通性)、フィレット長さ、ボイド及び封止性の評価を行った。
【0128】
(接続構造体の作製)
実施例1、比較例1及び参考例1で作製した剥離フィルム付き接着剤テープを所定のサイズ(縦9mm×横11mm×厚さ12μm)に切り抜き、剥離フィルムを除去してからはんだバンプ付き半導体チップ(チップサイズ:縦8.0mm×横10.0mm×厚さ0.05mm、バンプ高さ:銅ピラー+はんだ計約12μm、バンプ数1914)の該はんだバンプが設けられている面(接続面)に貼付し、積層サンプルを得た。実施例1及び参考例1では、上記積層サンプルを2つずつ用意した。
【0129】
実施例1及び参考例1の剥離フィルム付き接着剤テープを用いて得た積層サンプルに対しては、接着剤フィルムへの光照射を実施した。この際、2つの積層サンプルうちの一方は、バックグラインドテープ越しに光の照射を行い、他方はバックグラインドテープを除去してから露出した面に光の照射を行った。また、光の照射は、メタルハライドランプを光源とし、主波長365nm、照度70mW光の照射量は、250mJ/cm2とした。
【0130】
次に、フリップ実装装置「FCB3」(パナソニック製、商品名)を用いて、上記積層サンプル(実施例1及び参考例1については光照射後の積層サンプル)を接着剤フィルム側からウエハ基材(ウエハ基材:100μm厚、銅配線:6μm厚)上に実装した。実装は、圧着ヘッド温度の最高到達温度を実温260℃とし、圧着時間を20秒とし、圧着圧力を110Nとする条件で行った。これにより、ウエハ基材と、はんだバンプ付き半導体チップとがデイジーチェーン接続された接続構造体(半導体装置)を得た。
【0131】
(接続信頼性)
上記で得られた接続構造体の40μmピッチエリアの接続抵抗値を、マルチメータ(ADVANTEST製、商品名「R6871E」)を用いて測定することにより、接続信頼性(初期導通性)を評価した。接続抵抗値が60.0Ω以上85.0Ω以下の場合を「A」とし、接続抵抗値が85.0Ωより大きく100Ω以下の場合を「B」とし、接続抵抗値が100Ωより大きい場合、接続抵抗値が60.0Ω未満の場合及び接続不良により抵抗値が表示されない場合を全て「C」とした。評価がBである場合に接続信頼性が充分であると判断し、評価がAである場合に接続信頼性が良好であると判断した。結果を表2に示す。
【0132】
(フィレット量)
上記で得られた接続構造体を、デジタルマイクロスコープVHX-6000(キーエンス製)を用いて、半導体チップ側から観察し、半導体チップの周囲4辺よりはみ出した接着剤(フィレット)の長さを測定した。各辺におけるフィレットの長さとしては、はみ出した接着剤の端部から半導体チップまでの最短距離の最大値を採用した。フィレット量は、4辺のそれぞれで測定したフィレットの長さの平均値により評価した。上記平均値が400μm未満であれば、フィレットの発生が充分に抑制されていると判断した。結果を表2に示す。表中の数値は、上記フィレットの長さの平均値を示す。
【0133】
【表2】
表中、「BGあり」とは、バックグラインドテープの存在下で光照射を行ったことを意味し、「BGなし」とは、バックグラインドテープを除去してから光照射を行ったことを意味する。
1…剥離フィルム、2…接着剤フィルム、3…基材、4…接着剤テープ、5…剥離フィルム付き接着剤テープ、6…接続部(第1接続部)、7,10…積層体、9…光硬化後の接着剤フィルム、10’…接着剤フィルム付き半導体チップ、11…基体、12…接続部(第2接続部)、13…封止部、15…半導体装置、20…半導体チップ、25…配線(第1接続部及び第2接続部)、30…基体、40…接続バンプ、42…バンプ(第1接続部及び第2接続部)、44…貫通電極、50…封止部、60…インターポーザ、100,200,300…半導体装置、A…半導体ウエハ、A’…半導体チップ。