(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007826
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20240112BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M3/155 C
H02M3/155 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109169
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 猛昭
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AA20
5H730BB13
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FF01
5H730FG05
5H730XC01
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM01
(57)【要約】
【課題】高耐圧素子の使用数を減らして、小型、低コスト化を図ったスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】制御部31が、トランジスタQ1をオンオフ制御する。イネーブルラッチ回路32が、トランジスタQ1がオフ制御されるオフ期間においてイネーブル信号の状態に応じたラッチ信号を出力し、トランジスタQ1がオン制御されるオン期間においてオン期間直前のラッチ信号の状態を保持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を降圧変換した出力電圧を出力する出力部にパルス状の前記入力電圧を供給するための第1スイッチ素子をオンオフ制御し、パルス状の前記入力電圧をブートコンデンサの両端電圧だけ高圧側にシフトした電源電圧を生成するブートストラップ部から電源供給を受けて動作するスイッチング電源装置であって、
前記第1スイッチ素子をオンオフ制御する制御部と、
外部から制御信号が入力されるラッチ部とを備え、
前記ラッチ部は、前記制御部が前記第1スイッチ素子をオフ制御するオフ期間において前記制御信号の状態に応じたラッチ信号を出力し、前記制御部が前記第1スイッチ素子をオン制御するオン期間において前記オン期間直前の前記ラッチ信号の状態を保持する、
スイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記制御信号は、イネーブル信号であり、
前記制御部は、前記ラッチ信号の状態に応じて前記第1スイッチ素子のオンオフ制御の実行及び停止を行う、
スイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記ラッチ部には、逆流防止素子を介して前記制御信号が入力される、
スイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチング電源装置において、
前記逆流防止素子は、前記オン期間中にオフされ、前記オフ期間中にオンされるトランジスタから構成されている、
スイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項2に記載のスイッチング電源装置において、
前記ブートストラップ部は、起動時には起動電源により前記ブートコンデンサが充電され、起動後は前記出力部により前記ブートコンデンサが充電され、
前記起動電源と前記ブートコンデンサとの間に設けた第2スイッチ素子を備え、
前記第2スイッチ素子は、前記制御部が前記第1スイッチ素子のオンオフ制御を実行中にオンされ、前記制御部が前記第1スイッチ素子のオンオフ制御を停止中にオフされる、
スイッチング電源装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のスイッチング電源装置において、
前記ラッチ部の前記制御信号の入力と前記ブートストラップ部から供給される電源電圧の負側との間に設けられたノード固定素子を備え、
前記ノード固定素子は、前記オフ期間中であって前記制御信号がLレベルの間に前記ラッチ部の入力を前記電源電圧の負電位に固定する、
スイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタをオンオフ制御することにより、パルス状の入力電圧をコイル、コンデンサから構成される出力部に供給して、所望の出力電圧を生成するスイッチング電源装置が知られている。スイッチング電源装置において、ブートストラップ回路からの電源供給を受けるものも提案されている(特許文献1)。ブートストラップ回路は、パルス状の入力電圧をブートコンデンサの両端電圧だけ高圧側にシフトした電源電圧を生成する。
【0003】
ブートストラップ回路から電源を供給することにより、入力電圧が高電圧であったとしても、スイッチング電源装置としては、ブートコンデンサの両端電圧が耐えられる低耐圧部品から構成することができる。
【0004】
このようなスイッチング電源装置において、外部から入力されたイネーブル信号のような制御信号を入力ためには、イネーブル信号をレベルシフトするレベルシフト回路が必要となる。ブートストラップ回路が生成した電源電圧の負電位は、0Vと入力電圧(例えば100V)との間で変動する。このため、レベルシフト回路としては、入力電圧とブートコンデンサの両端電圧とを加算した電圧が耐えられる高耐圧部品が必要となるため、大型化するとともに、コスト的に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高耐圧素子の使用数を減らして、小型、低コスト化を図ったスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るスイッチング電源装置は、下記[1]~[6]を特徴としている。
[1]
入力電圧を降圧変換した出力電圧を出力する出力部にパルス状の前記入力電圧を供給するための第1スイッチ素子をオンオフ制御し、パルス状の前記入力電圧をブートコンデンサの両端電圧だけ高圧側にシフトした電源電圧を生成するブートストラップ部から電源供給を受けて動作するスイッチング電源装置であって、
前記第1スイッチ素子をオンオフ制御する制御部と、
外部から制御信号が入力されるラッチ部とを備え、
前記ラッチ部は、前記制御部が前記第1スイッチ素子をオフ制御するオフ期間において前記制御信号の状態に応じたラッチ信号を出力し、前記制御部が前記第1スイッチ素子をオン制御するオン期間において前記オン期間直前の前記ラッチ信号の状態を保持する、
スイッチング電源装置であること。
[2]
[1]に記載のスイッチング電源装置において、
前記制御信号は、イネーブル信号であり、
前記制御部は、前記ラッチ信号の状態に応じて前記第1スイッチ素子のオンオフ制御の実行及び停止を行う、
スイッチング電源装置であること。
[3]
[1]に記載のスイッチング電源装置において、
前記ラッチ部には、逆流防止素子を介して前記制御信号が入力される、
スイッチング電源装置であること。
[4]
[3]に記載のスイッチング電源装置において、
前記逆流防止素子は、前記オン期間中にオフされ、前記オフ期間中にオンされるトランジスタから構成されている、
スイッチング電源装置であること。
[5]
[2]に記載のスイッチング電源装置において、
前記ブートストラップ部は、起動時には起動電源により前記ブートコンデンサが充電され、起動後は前記出力部により前記ブートコンデンサが充電され、
前記起動電源と前記ブートコンデンサとの間に設けた第2スイッチ素子を備え、
前記第2スイッチ素子は、前記制御部が前記第1スイッチ素子のオンオフ制御を実行中にオンされ、前記制御部が前記第1スイッチ素子のオンオフ制御を停止中にオフされる、
スイッチング電源装置であること。
[6]
[1]~[5]の何れか1項に記載のスイッチング電源装置において、
前記ラッチ部の前記制御信号の入力と前記ブートストラップ部から供給される電源電圧の負側との間に設けられたノード固定素子を備え、
前記ノード固定素子は、前記オフ期間中であって前記制御信号がLレベルの間に前記ラッチ部の入力を前記電源電圧の負電位に固定する、
スイッチング電源装置であること。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高耐圧素子の使用数を減らして、小型、低コスト化を図ったスイッチング電源装置を提供することができる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態における本発明のスイッチング電源装置を組み込んだDC/DCコンバータを示す回路図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す高電圧、イネーブル信号、トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧、トランジスタQ1のオンオフ、グランド端子の電位、イネーブルラッチ回路の動作、ラッチ信号のタイムチャートである。
【
図3】
図3は、
図1に示す高電圧、起動電圧、イネーブル信号、電源端子-グランド端子間の電圧、トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧、出力電圧のタイムチャートである。
【
図4】
図4は、第2実施形態における本発明のスイッチング電源装置を組み込んだDC/DCコンバータを示す回路図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態における本発明のスイッチング電源装置を組み込んだDC/DCコンバータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本発明に関する第1実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0012】
本実施形態のDC/DCコンバータ1は、入力電圧としての高電圧VHを降圧した出力電圧VOUTを負荷10に供給する。高電圧VHは、高圧電源11から供給され、例えば、100Vである。DC/DCコンバータ1は、出力部2と、第1スイッチ素子としてのトランジスタQ1及びダイオードD1と、スイッチング電源装置としての制御IC3と、ブートストラップ部4と、分圧抵抗R1、R2と、逆流防止素子としてのダイオードD2とを備えている。
【0013】
出力部2は、高電圧VHを降圧変換して出力電圧VOUTとして出力する。出力部2は、コイルL1と、出力コンデンサC1とを備えている。コイルL1は、グランド端子TGND、トランジスタQ1のソース及びダイオードD1のカソードと、負荷10との間に接続されている。負荷10は、一端がコイルL1に接続され、他端がグランドに接続されている。出力コンデンサC1は、一端が負荷10に接続され、他端がグランドに接続されている。
【0014】
トランジスタQ1及びダイオードD1は、出力部2にパルス状の高電圧VHを供給する。トランジスタQ1は、Nchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタQ1は、ソースがグランド端子TGND、ダイオードD1のカソード及びコイルL1に接続され、ドレインが高圧電源11に接続され、ゲートが制御IC3のドライバ端子TDRVに接続されている。ダイオードD1は、カソードがトランジスタQ1のソースに接続され、アノードがグランドに接続されている。
【0015】
トランジスタQ1がオンすると、トランジスタQ1のソース電位が高電圧VHとなり、出力部2には高電圧VHが入力される。これに対して、トランジスタQ1がオフすると、出力部2への高電圧VHの入力が遮断され、ダイオードD1から出力部2への電流が供給され、出力部2には-VF1が入力される。なお、VF1はダイオードD1の順方向電圧である。即ち、トランジスタQ1がオンオフを繰り返すことにより、出力部2にはHレベルが高電圧VH、Lレベルが-VF1のパルス信号が入力される。出力部2は、このパルス信号をコイルL1と出力コンデンサC1とで平滑化することにより、パルス信号のデューティに応じた出力電圧VOUTを負荷10に供給することができる。
【0016】
制御IC3は、トランジスタQ1をオンオフ制御するICである。制御IC3は、電源端子TVDD及びグランド端子TGND間に電源電圧が供給され、この電源電圧の供給を受けて動作する。制御IC3は、フィードバック端子TFBに入力されるフィードバック電圧に応じたデューティのパルス信号をドライバ端子TDRVから出力する。このドライバ端子TDRVは、トランジスタQ1のゲートに接続され、ドライバ端子TDRVから出力されるパルス信号により、トランジスタQ1をオンオフ制御することができる。制御IC3の詳細な構成については後述する。
【0017】
ブートストラップ部4は、トランジスタQ1のソースに入力されるパルス状の高電圧VHをブートコンデンサCINの両端電圧だけ高圧側にシフトした電源電圧VDDを生成し、制御IC3に供給する回路である。
【0018】
ブートストラップ部4は、起動電源41と、ブートコンデンサCINと、逆流防止用のダイオードD3、D4とを有している。起動電源41は、高電圧VHから所定の起動電圧VS(例えば5V)を生成する定電圧回路から構成されている。本実施形態では、起動電圧VSは出力電圧VOUTの目標電圧(例えば10V)よりも低い値に設定されている。起動電源41は、トランジスタQ2と、抵抗R3と、ツェナーダイオードDZとを有している。
【0019】
トランジスタQ2は、Nchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタQ2は、ドレインが高圧電源11に接続されている。抵抗R3は、高圧電源11とトランジスタQ2のゲートとの間に接続されている。ツェナーダイオードDZは、カソードがトランジスタQ2のゲート及び抵抗R3に接続され、アノードがグランドに接続されている。起動電源41は、下記の式(1)で表される起動電圧VSを出力する。
【0020】
VS=VZ-VGS …(1)
VZ:ツェナーダイオードDZのツェナー電圧、VGS:トランジスタQ2のゲート・ソース間電圧
【0021】
ブートコンデンサCINは、一端が後述するダイオードD3を介して起動電源41に接続されると共に後述するダイオードD4を介して出力部2の出力(出力コンデンサC1と負荷10との接続点)に接続されている。ブートコンデンサCINは、他端がグランド端子TGND、トランジスタQ1のソース及びダイオードD1のカソードに接続されている。ダイオードD3は、カソードがブートコンデンサCINに接続され、アノードが起動電源41に接続され、ブートコンデンサCINから起動電源41に電流が逆流するのを防止する。ダイオードD4は、カソードがブートコンデンサCINに接続され、アノードが出力部2の出力に接続され、ブートコンデンサCINから出力部2の出力に電流が逆流するのを防止する。
【0022】
制御IC3が、グランド端子TGNDに入力された電位をトランジスタQ1のゲートに出力すると、トランジスタQ1がオフとなる。トランジスタQ1がオフのとき、トランジスタQ1のソース、グランド端子TGNDの電位は起動時にはグランド電位0V、起動後には-VF1となる。グランド端子TGNDの電位がグランド電位0V又は-VF1となると、起動時には起動電源41から、起動後には出力部2からの電流が、ダイオードD3、D4を介してブートコンデンサCINに供給され、ブートコンデンサCINが充電される。詳しく説明すると、出力電圧VOUTが低い起動時にはブートコンデンサCINは起動電源41によりに充電され、起動後、即ち出力電圧VOUTが目標電圧に向かって上昇し起動電圧VSを超えると、ブートコンデンサCINは出力部2により充電される。
【0023】
これにより、ブートコンデンサCINの両端電圧が起動時にはVS-VF3に、起動後にはVOUT-VF4+VF1に向かって上昇する。なお、VF3は、ダイオードD3の順方向電圧、VF4は、ダイオードD4の順方向電圧を示す。
【0024】
次に、制御IC3が、電源端子TVDDに入力された電位をトランジスタQ1のゲートに出力すると、トランジスタQ1がオンとなる。トランジスタQ1がオンのとき、トランジスタQ1のソース、グランド端子TGNDがグランド電位0V又は-VF1から高電圧VHまで上昇する。しかしながら、ブートコンデンサCINはゆっくりと放電するものの、その両端電圧はほぼ(VS-VF3)または(VOUT-VF4+VF1)を保ったままである。このため、電源端子TVDDに入力される電位は、トランジスタQ1のソース電位+(VS-VF3)または(VOUT-VF4+VF1)となり、トランジスタQ1のオンが継続する。
【0025】
制御IC3のグランド端子TGND-電源端子TVDD間には、ブートコンデンサCINの両端電圧が電源電圧として印加される。よって、制御IC3は、高電圧VHに耐えられる高耐圧部品を用いる必要はなく、ブートコンデンサCINの両端電圧である(VS-VF3)または(VOUT-VF4+VF1)が耐えられる低耐圧部品を用いることができる。
【0026】
分圧抵抗R1、R2は、ブートコンデンサCINの両端電圧、即ち(VOUT-VF4+VF1)を分圧してフィードバック端子TFBに供給する。
【0027】
次に、制御IC3の詳細について説明する。制御IC3は、トランジスタQ1をオンオフ制御する制御部31と、ラッチ部としてのイネーブルラッチ回路32と、ノード固定素子、抵抗としてのプルダウン抵抗RPDとを有している。制御部31は、誤差検出部311と、基準電圧生成部VREFと、発振器312と、PWM制御部313と、ドライバ314とを有している。誤差検出部311は、フィードバック端子TFBに入力される電圧と基準電圧VREFとの差分である誤差信号をPWM制御部313に出力する。基準電圧VREFは、出力電圧VOUTが目標電圧になったときにフィードバック端子TFBに入力される電圧と等しく設定される。
【0028】
発振器312は、所定周波数で発振するパルス信号をPWM制御部313に出力する。PWM制御部313は、誤差信号に応じたデューティとなるように発振器312からのパルス信号を変調して、ドライバ314に出力する。ドライバ314は、パルス信号に応じてパルス状の駆動信号をトランジスタQ1のゲートに出力する。パルス状の駆動信号はHレベルが電源端子TVDDに供給される電位、Lレベルがグランド端子TGNDに供給される電位となる。そして、トランジスタQ1のオンオフによって、出力電圧VOUTが下記の式(2)のようになる。
【0029】
VOUT=VREF×(R1+R2)/R2+VF4-VF1
≒VREF×(R1+R2)/R2 …(2)
【0030】
プルダウン抵抗RPDは、イネーブル端子TENとグランド端子TGNDとの間に接続されている。イネーブル端子TENにはダイオードD2が接続されている。ダイオードD2は、外部からイネーブル端子TENに向かって順方向となるように接続されている。
【0031】
イネーブルラッチ回路32は、外部から出力されたイネーブル信号SENが、イネーブル端子TENを介して入力される。外部から出力されたイネーブル信号SENは、例えばHレベルが5V、Lレベルが0Vのパルス信号である。イネーブルラッチ回路32は、PWM制御部313から出力されるパルス信号がLレベル、即ちトランジスタQ1がオフ期間においてイネーブル信号SENを読み取り、イネーブル信号SENの状態に応じたラッチ信号を出力する。
【0032】
トランジスタQ1がオフ期間中は、グランド端子TGNDの電位がグランド電位(0V)又は-VF1となり、イネーブルラッチ回路32はダイオードD2を介してイネーブル信号SENを取り込むことができる。イネーブルラッチ回路32は、読み取ったイネーブル信号SENがHレベルならば、Hレベルのラッチ信号を出力し、LレベルならばLレベルのラッチ信号を出力する。このとき、後述するように、イネーブル信号SENがLレベルの場合にはダイオードD2はオフとなるが、プルダウン抵抗RPDによりイネーブルラッチ回路32の入力はグランド端子TGNDと同電位レベル(Lレベル)となり、イネーブルラッチ回路32はLレベルのイネーブル信号SENを取り込むことができる。
【0033】
トランジスタQ1のオン期間中は、グランド端子TGNDの電位が高電圧VHとなり、イネーブルラッチ回路32はイネーブル信号SENを取り込むことができない。そこで、イネーブルラッチ回路32は、PWM制御部313から出力されるパルス信号がHレベル、即ちトランジスタQ1がオン期間において、オン期間直前のラッチ信号を保持する。イネーブルラッチ回路32は、オン直前のオフ期間中のイネーブル信号SENがHレベルならば、Hレベルのラッチ信号の出力を保持し、LレベルならばLレベルのラッチ信号の出力を保持する。
【0034】
次に、制御IC3の動作について
図2を参照して説明する。起動前において、高圧電源11から高電圧VHが出力されると、起動電源41によりブートコンデンサCINが充電され、制御IC3に電源が供給される。電源が投入されるとイネーブルラッチ回路32は、トランジスタQ1がオフ期間中であるため、イネーブル信号SENの読み取りを行う。イネーブル信号SENがLレベルの場合、ダイオードD2はオフとなるが、プルダウン抵抗RPDによりイネーブル端子TENはグランド端子TGNDと同電位レベル(Lレベル)となる。このため、イネーブルラッチ回路32はLレベルのイネーブル信号SENを取り込むことができる。このようにプルダウン抵抗RPDは、イネーブル信号SENがLレベルのとき、イネーブル端子TENをグランド端子TGNDと同電位レベル(Lレベル)にすると共に、イネーブル端子TENのノードインピーダンスを下げ、電位を安定化させることでノイズ等による誤検出を防止することができる。
【0035】
その後、イネーブル信号SENがHレベルになると、ダイオードD2が導通してイネーブル端子TENの電位もイネーブル信号SENのHレベルとなる。このため、イネーブルラッチ回路32はHレベルのイネーブル信号SENを取り込むことができ、ラッチ信号がHレベルとなる。ラッチ信号がHレベルとなると、制御IC3はトランジスタQ1のオンオフ制御の実行を開始する。
【0036】
オンオフ制御実行中は、トランジスタQ1のオンオフが繰り返されるため、イネーブルラッチ回路32も取り込みと保持を交互に繰り返す。例えば、トランジスタQ1のオン期間中にイネーブル信号SENがLレベルになると、このときはイネーブルラッチ回路32のラッチ信号はHレベルが保持されているため、制御IC3はオンオフ制御の実行を継続する。その後、トランジスタQ1がオフ期間となると、イネーブルラッチ回路32がイネーブル信号SENを取り込むため、ラッチ信号がLレベルとなる。これに応じて制御IC3は、オンオフ制御を停止する。
【0037】
次に、制御IC3の動作について
図3を参照して説明する。高電圧VH起動後、起動電源41の起動電圧VSが起動し、制御IC3がイネーブル信号SENを取り込める状態となる。イネーブル信号SENがLレベルからHレベルに切り替わると、イネーブルラッチ回路32はHレベルのラッチ信号を出力する。これにより、制御IC3は、トランジスタQ1のオンオフ制御を開始する。このとき、起動電圧VSにより制御IC3が駆動されており、トランジスタQ1のゲート・ソース間電圧も起動電圧VSに準じた電圧振幅レベルとなる。その後、トランジスタQ1のオンオフ制御とともに出力電圧VOUTは徐々に上昇し、目標電圧に到達すると制御IC3のフィードバック制御により、出力電圧VOUTは目標電圧を保つように動作する。
【0038】
なお、起動電圧VS<出力電圧VOUTの目標電圧の関係となるようにツェナーダイオードDZのツェナー電圧VZを設定しておけば、出力電圧VOUTの起動後、起動電源41の出力電流を減らすことができる。また、イネーブル信号SENを制御IC3のみではなく負荷10の起動制御信号としても印加し、負荷10の接続オンオフを制御することで、起動前やスタンバイ時に起動電源41からダイオードD3、分圧抵抗R1、R2、コイルL1を介して負荷10に流れる暗電流を減らすことができる。
【0039】
上述した第1実施形態によれば、イネーブルラッチ回路32は、イネーブル信号SENをレベルシフトしなくても読み取ることができるオフ期間においてイネーブル信号SENの状態に応じたラッチ信号を出力する。イネーブルラッチ回路32は、イネーブル信号SENをレベルシフトしなければ読み取ることができないオン期間においてはイネーブル信号SENを読み取らずオン期間直前のラッチ信号の状態を保持する。これにより、制御IC3は、レベルシフト回路を用意する必要がなく、ブートコンデンサCINの両端電圧(VS-VF3)または(VOUT-VF4+VF1)が耐えられる低耐圧部品から構成することができる。このため、高耐圧素子の使用数を減らして、小型、低コスト化を図ることができる。
【0040】
なお、上述した第1実施形態では、イネーブルラッチ回路32は、イネーブル信号SENの一度の取り込みにより、ラッチ信号のHレベル、Lレベルを切り替えていたが、これに限ったものではない。イネーブルラッチ回路32は、イネーブル信号SENを複数取り込んで、複数取り込んだイネーブル信号SENに基づいてラッチ信号のH、Lを切り替えてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、イネーブル端子TENをイネーブルラッチ回路32に直接接続していたが、これに限ったものではない。イネーブル端子TENとイネーブルラッチ回路32との間に抵抗、容量などによるローパスフィルタを設け、イネーブル信号SENを平滑化、ノイズ除去を行う構成としてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のDC/DCコンバータ1Bについて
図4を参照して説明する。なお、
図4において、
図1について上述した第1実施形態のDC/DCコンバータ1と同等の部分には同一符号を付してその詳細を説明する。
【0043】
第1実施形態のDC/DCコンバータ1と第2実施形態のDC/DCコンバータ1Bとで大きく異なる点は、ダイオードD2に代えて逆流防止素子としてのトランジスタQ3が設けられている点と、制御IC3Bにパルス出力端子TPを設けた点である。トランジスタQ3は、Pchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタQ3は、ソースがイネーブル端子TENに接続され、ドレインに外部からのイネーブル信号SENが入力される。制御IC3Bの起動時には、トランジスタQ3の寄生ダイオードを介してイネーブル信号SENがイネーブル端子TENへ伝達される。
【0044】
また、制御IC3Bには、PWM制御部313からドライバ314に出力するパルス信号を外部に出力するパルス出力端子TPが設けられている。このパルス出力端子TPにトランジスタQ3のゲートが接続されている。
【0045】
以上の構成によれば、パルス出力端子TPから出力されるパルス信号がHレベル、即ちトランジスタQ1がオンされているとき、トランジスタQ3がオフする。また、パルス出力端子TPから出力されるパルス信号がLレベル、即ちトランジスタQ1がオフされているとき、トランジスタQ3がオンする。
【0046】
第2実施形態のDC/DCコンバータ1Bによれば、イネーブル信号SENを取り込むトランジスタQ1がオフ期間において、イネーブル信号SENがトランジスタQ3の寄生ダイオードを介さずに制御IC3Bのイネーブル端子TENへ伝達されることとなり、イネーブル信号SENの電圧を精度よく制御IC3Bに伝えることができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のDC/DCコンバータ1Cについて
図5を参照して説明する。なお、
図5において、
図1について上述した第1実施形態のDC/DCコンバータ1と同等の部分には同一符号を付してその詳細を説明する。
【0048】
第1実施形態のDC/DCコンバータ1と第3実施形態のDC/DCコンバータ1Cとで大きく異なる点は、制御IC3Cの構成である。制御IC3Cは、制御部31と、イネーブルラッチ回路32と、プルダウン抵抗RPDとに加えて、第2スイッチ素子としてのトランジスタQ4と、インバータ33とを備えている。トランジスタQ4は、Pchの電界効果トランジスタから構成されている。
【0049】
また、制御IC3Cは、第1実施形態では1つの電源端子TVDDが設けられ、この電源端子TVDDにダイオードD3、D4双方のカソードが接続されていた。第3実施形態では、制御IC3Cは、2つの第1電源端子TVDD1及び第2電源端子TVDD2が設けられている。第1電源端子TVDD1はダイオードD3のカソードに接続され、第2電源端子TVDD2はダイオードD4のカソードに接続されている。
【0050】
第1電源端子TVDD1及び第2電源端子TVDD2は、トランジスタQ4を介して互いに接続されている。トランジスタQ4は、ソースが第1電源端子TVDD1に接続され、ドレインが第2電源端子TVDD2に接続されている。制御IC3Cは、トランジスタQ4のドレイン及び第2電源端子TVDD2の接続点と、グランド端子TGNDとの間の電源電圧により動作する。インバータ33は、イネーブルラッチ回路32から出力されるラッチ信号を反転してトランジスタQ4のゲートに供給する。
【0051】
以上の構成によれば、ラッチ信号がHレベルで制御IC3CがトランジスタQ1のオンオフ制御を実行している間、トランジスタQ4がオンされて、起動電源41が制御IC3に接続される。一方、ラッチ信号がLレベルで制御IC3CがトランジスタQ1のオンオフ制御を停止している間、トランジスタQ4がオフされ、起動電源41と制御IC3Cとの接続が遮断される。
【0052】
第3実施形態によれば、トランジスタQ1のオンオフ制御を停止しているときに起動電源41と制御IC3Cとの接続が遮断されるため、消費電力を低減することができる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0054】
上述した実施形態では、ノード固定素子としてプルダウン抵抗RPDを用いていたが、これに限ったものではない。ノード固定素子としては、トランジスタQ1がオフ期間であってイネーブル信号SENがLレベルの場合にイネーブル端子TENをグランド端子TGND(電源電圧の負電位)と同電位にできるものであればよく、接合型FETや定電流ダイオードから構成されていてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、制御信号としてイネーブル信号を一例に説明していたが、これに限ったものではない。制御信号としては、ラッチ回路等でその状態を保持できる信号であればよく、イネーブル信号に限定されるものではない。
【0056】
上述した実施形態では、トランジスタQ1にダイオードD1を接続されていたが、これに限ったものではない。ダイオードD1に代えてトランジスタQ1がオン期間にオフされ、オフ期間にオンされるトランジスタを用いてもよい。
【符号の説明】
【0057】
2 出力部
3 制御IC(スイッチング電源装置)
4 ブートストラップ部
31 制御部
32 イネーブルラッチ回路(ラッチ部)
41 起動電源
C1 出力コンデンサ
CIN ブートコンデンサ
D1 ダイオード
D2 ダイオード(逆流防止素子)
D3 ダイオード
D4 ダイオード
DZ ツェナーダイオード
L1 コイル
Q1 トランジスタ(第1スイッチ素子)
Q2 トランジスタ
Q3 トランジスタ(逆流防止素子)
Q4 トランジスタ(第2スイッチ素子)
RPD プルダウン抵抗(ノード固定素子、抵抗)
VH 高電圧(入力電圧)
VOUT 出力電圧