(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078385
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】導電性高分子溶液、及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 65/00 20060101AFI20240603BHJP
C08L 79/02 20060101ALI20240603BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20240603BHJP
C08F 226/02 20060101ALI20240603BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240603BHJP
C09J 181/00 20060101ALI20240603BHJP
C09J 179/02 20060101ALI20240603BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
C08L65/00
C08L79/02
C08G61/12
C08F226/02
C09J133/00
C09J181/00
C09J179/02
C09J9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113190
(22)【出願日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2022190506
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】平山 太一
(72)【発明者】
【氏名】松本 康敬
(72)【発明者】
【氏名】箭野 裕一
【テーマコード(参考)】
4J002
4J032
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG003
4J002CE00W
4J002CK023
4J002CM01X
4J002CP033
4J002FD343
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4J002GQ02
4J002HA08
4J032BA05
4J032BB04
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4J040DF001
4J040EH011
4J040EJ001
4J040JA02
4J040JB02
4J040JB10
4J040KA23
4J100AN03R
4J100AN04P
4J100AN04Q
4J100BA03Q
4J100BA09P
4J100BA14P
4J100BA14Q
4J100BA16Q
4J100BA21Q
4J100CA05
4J100JA05
4J100JA45
(57)【要約】 (修正有)
【課題】粘着剤に対して導電性高分子の分散性が高く、導電性高分子の凝集等が生じにくい導電性高分子溶液を提供する。
【解決手段】下記一般式(7)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と、特定構造の3種の繰り返し単位によって構成される変性ポリアミン化合物(B)と、有機溶媒(C)と、を含むことを特徴とする、導電性高分子溶液を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(7)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と、下記一般式(3-1)で表される繰り返し単位、及び/又は下記一般式(3-2)で表される繰り返し単位、並びに下記一般式(3-3)で表される繰り返し単位によって構成される変性ポリアミン化合物(B)と、有機溶媒(C)と、を含むことを特徴とする、導電性高分子溶液。
【化1】
[一般式(7)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。]
【化2】
[一般式(3-1)において、R
2は、炭素数1~22の脂肪族炭化水素基を表す。Xは、k個のプロピレンオキシ基(-CH
2-CH(CH
3)-O-)と、j個のエチレンオキシ基(-CH
2-CH
2-O-)とのランダム重合又はランダムな順序におけるブロック重合により形成された2価の重合体基を表し、kは0~50の整数を表し、jは10~100の整数を表し、但し、k+j=10~150である。pは、1又は2を表す。一般式(3-2)において、R
3は、分岐していてもよい炭素数8~22の2価脂肪族炭化水素基を表す。mは、2~11の整数を表し、nは、0~1000の整数を表す。]
【請求項2】
前記有機溶媒(C)が、エステル系溶媒及び芳香族系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項3】
前記有機溶媒(C)が、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ノルマルプロピルエステル、酢酸ブチルエステル、酢酸イソブチルエステル、酢酸メトキシブチルエステル、ベンゼン、トルエン、及びキシレンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項4】
前記ポリチオフェン(A)の含有量が、前記有機溶媒(C)100重量部に対して、0.01~10重量部である、請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項5】
前記変性ポリアミン化合物(B)の含有量が、前記有機溶媒(C)100重量部に対して、0.01~10重量部である、請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項6】
前記のポリチオフェン(A)が、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上含む、請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【化3】
[一般式(1)において、M
+は、プロトン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。一般式(1)及び(2)において、R
1は、独立して水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
【請求項7】
前記M+が、プロトン若しくは総炭素数が15~24のアミン化合物の共役酸である、請求項6に記載の導電性高分子溶液。
【請求項8】
前記M+が、ジオクチルアンモニウムイオン、トリデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、オレイルアンモニウムイオン、ジ-n-オクチルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチルステアリルアンモニウムイオン、トリヘキシルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、及びテトラヘキシルアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項6に記載の導電性高分子溶液。
【請求項9】
請求項1に記載の導電性高分子溶液と、粘着剤(D)を含むことを特徴とする、粘着剤組成物。
【請求項10】
前記粘着剤(D)が、アクリル系粘着剤である、請求項9に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
下記一般式(7)構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と、下記一般式(3-1)で表される繰り返し単位、及び/又は下記一般式(3-2)で表される繰り返し単位、並びに下記一般式(3-3)で表される繰り返し単位によって構成される変性ポリアミン化合物(B)と、粘着剤(D)とを含むことを特徴とする、導電性粘着膜。
【化4】
[一般式(7)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。]
【化5】
[一般式(3-1)において、R
2は、炭素数1~22の脂肪族炭化水素基を表す。Xは、k個のプロピレンオキシ基(-CH
2-CH(CH
3)-O-)と、j個のエチレンオキシ基(-CH
2-CH
2-O-)とのランダム重合又はランダムな順序におけるブロック重合により形成された2価の重合体基を表し、kは0~50の整数を表し、jは10~100の整数を表し、但し、k+j=10~150である。pは、1又は2を表す。一般式(3-2)において、R
3は、分岐していてもよい炭素数8~22の2価脂肪族炭化水素基を表す。mは、2~11の整数を表し、nは、0~1000の整数を表す。]
【請求項12】
前記のポリチオフェン(A)が、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上含む、請求項11に記載の導電性粘着膜。
【化6】
[一般式(1)において、M
+は、プロトン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。一般式(1)及び(2)において、R
1は、独立して水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
【請求項13】
前記粘着剤(D)が、アクリル系粘着剤である、請求項11に記載の導電性粘着膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子溶液、及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、静電気とは、物体に電荷が蓄えられ、帯電する現象、又は、帯電した電荷そのもののこと指す。静電気は、2種類の誘電体の摩擦によって発生する電荷の蓄積のほか、帯電した物体との接触などによっても生じ、物体の表面に蓄えられる。
【0003】
上記静電気は、塵埃等の異物吸入、ディバイスの静電破壊、測定機器の誤作動、又は火災等を引き起こし得る。また、現代の電磁装置は静電気の放出により一時的又は永久損傷を受ける傾向も非常に高い。このことから、静電気は電子産業においては特に問題である。絶縁物体上への静電気の蓄積は、湿度が低い場合、又は液体若しくは固体が互いに接触しながら移動する場合(摩擦帯電)には極めて起こりやすく、大きな問題である。
【0004】
例えば、液晶パネルにおいては、偏光板又は位相差板を液晶セルのガラス基材等に接着するために、粘着剤組成物から形成された粘着剤層が使用されることが多い。この偏光板及び位相差板等の光学部材は、通常プラスチック材料より構成されているため、電気絶縁性が高く、粘着剤層を剥離する時等に静電気が発生し易い。そのため、このように発生した静電気が残存した状態で、偏光板又は位相差板を液晶セルに貼合すると、埃の引き付け又は液晶分子の配向乱れが発生し、性能低下が起こる可能性がある。
【0005】
また、偏光板が高速で製造される場合、偏光板保護フィルム剥離時、既存の工程では発生しなかった静電気によるTFT、IC素子の破壊現象が起こり、液晶表示パネルの不具合を誘発する可能性がある。
【0006】
静電気発生を抑制するため、粘着剤層に帯電防止機能を付与することが求められている。その手段として、例えば、粘着剤層を形成する粘着剤組成物中に、イオン化合物、又はπ共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を配合することが提案されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-058679号公報
【特許文献2】特開2022-092880号公報
【特許文献3】特表2020-529511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~3等に開示された、導電性材料を含む粘着剤は、導電性材料の分散性が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記に示す発明が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
[1]
下記一般式(7)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と、下記一般式(3-1)で表される繰り返し単位、及び/又は下記一般式(3-2)で表される繰り返し単位、並びに下記一般式(3-3)で表される繰り返し単位によって構成される変性ポリアミン化合物(B)と、有機溶媒(C)と、を含むことを特徴とする、導電性高分子溶液。
【0011】
【0012】
[一般式(7)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。]
【0013】
【0014】
[一般式(3-1)において、R2は、炭素数1~22の脂肪族炭化水素基を表す。Xは、k個のプロピレンオキシ基(-CH2-CH(CH3)-O-)と、j個のエチレンオキシ基(-CH2-CH2-O-)とのランダム重合又はランダムな順序におけるブロック重合により形成された2価の重合体基を表し、kは0~50の整数を表し、jは10~100の整数を表し、但し、k+j=10~150である。pは、1又は2を表す。一般式(3-2)において、R3は、分岐していてもよい炭素数8~22の2価脂肪族炭化水素基を表す。mは、2~11の整数を表し、nは、0~1000の整数を表す。]
[2]
前記有機溶媒(C)が、エステル系溶媒及び芳香族系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]に記載の導電性高分子溶液。
【0015】
[3]
前記有機溶媒(C)が、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ノルマルプロピルエステル、酢酸ブチルエステル、酢酸イソブチルエステル、酢酸メトキシブチルエステル、ベンゼン、トルエン、及びキシレンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子溶液。
【0016】
[4]
前記ポリチオフェン(A)の含有量が、前記有機溶媒(C)100重量部に対して、0.01~10重量部である、[1]から[3]のいずれかに記載の導電性高分子溶液。
【0017】
[5]
前記変性ポリアミン化合物(B)の含有量が、前記有機溶媒(C)100重量部に対して、0.01~10重量部である、[1]から[4]のいずれかに記載の導電性高分子溶液。
【0018】
[6]
前記のポリチオフェン(A)が、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上含む、[1]から[5]のいずれかに記載の、導電性高分子溶液。
【0019】
【0020】
[一般式(1)において、M+は、プロトン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。一般式(1)及び(2)において、R1は、独立して水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
[7]
前記M+が、プロトン若しくは総炭素数が15~24のアミン化合物の共役酸である、[6]に記載の導電性高分子溶液。
【0021】
[8]
前記M+が、ジオクチルアンモニウムイオン、トリデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、オレイルアンモニウムイオン、ジ-n-オクチルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチルステアリルアンモニウムイオン、トリヘキシルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、及びテトラヘキシルアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つである、[6]又は[7]に記載の導電性高分子溶液。
【0022】
[9]
[1]から[8]のいずれかに記載の導電性高分子溶液と、粘着剤(D)とを含むことを特徴とする、粘着剤組成物。
【0023】
[10]
前記粘着剤(D)が、アクリル系粘着剤である、[9]に記載の粘着剤組成物。
【0024】
[11]
下記一般式(7)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と、下記一般式(3-1)で表される繰り返し単位、及び/又は下記一般式(3-2)で表される繰り返し単位、並びに下記一般式(3-3)で表される繰り返し単位によって構成される変性ポリアミン化合物(B)と、粘着剤(D)とを含むことを特徴とする、導電性粘着膜。
【0025】
【0026】
[一般式(7)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。]
【0027】
【0028】
[一般式(3-1)において、R2は、炭素数1~22の脂肪族炭化水素基を表す。Xは、k個のプロピレンオキシ基(-CH2-CH(CH3)-O-)と、j個のエチレンオキシ基(-CH2-CH2-O-)とのランダム重合又はランダムな順序におけるブロック重合により形成された2価の重合体基を表し、kは0~50の整数を表し、jは10~100の整数を表し、但し、k+j=10~150である。pは、1又は2を表す。一般式(3-2)において、R3は、分岐していてもよい炭素数8~22の2価脂肪族炭化水素基を表す。mは、2~11の整数を表し、nは、0~1000の整数を表す。]
[12]
前記のポリチオフェン(A)が、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上含む、[11]に記載の導電性粘着膜。
【0029】
【0030】
[一般式(1)において、M+は、プロトン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。一般式(1)及び(2)において、R1は、独立して水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
[13]
前記粘着剤(D)が、アクリル系粘着剤である、[11]または[12]に記載の導電性粘着膜。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様によれば、粘着剤に対して導電性高分子の分散性が高く、導電性高分子の凝集等が生じにくい導電性高分子溶液等を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0033】
現在、一般的に普及している粘着剤は、酢酸エステル系の溶媒を用いて製造されている。粘着剤に添加剤を加えて機能を付与する場合は、添加剤が粘着剤中に均一に混錬される必要がある為、当該添加剤については、酢酸エステル系溶媒との相溶性に優れることが要求される。後述する、一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を特徴とする従来公知の自己ドープ型導電性高分子、又はその組成物については、酢酸エステル系溶媒との相溶性に優れるものが見出されていなかった。一方で本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液については、酢酸エステル系溶媒との相溶性に優れることが見出され、市場普及品の粘着剤に対して帯電防止機能を付与することが可能になった。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、従来報告されていない導電性高分子溶液に基づく、帯電防止特性を有する新しい粘着剤組成物を提供することができる。また、本発明の一実施形態によれば、従来報告されているものと比較し、導電性材料の分散性が高く、導電性材料の凝集等に伴う品質低下を起こしにくい粘着剤組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0035】
また、上述のような構成によれば、例えば、液晶表示パネル等に本発明の一実施形態に係る導電性粘着膜を適用することで、静電気に起因する製品の不具合発生率を低減できる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」等の達成にも貢献するものである。
【0036】
〔1.導電性高分子溶液〕
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液は、下記一般式(7)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と、下記一般式(3-1)で表される繰り返し単位、及び/又は下記一般式(3-2)で表される繰り返し単位、並びに下記一般式(3-3)で表される繰り返し単位によって構成される変性ポリアミン化合物(B)と、有機溶媒(C)と、を含む。
【0037】
【0038】
[一般式(7)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。]
【0039】
【0040】
[一般式(3-1)において、R2は、炭素数1~22の脂肪族炭化水素基を表す。Xは、k個のプロピレンオキシ基(-CH2-CH(CH3)-O-)と、j個のエチレンオキシ基(-CH2-CH2-O-)とのランダム重合又はランダムな順序におけるブロック重合により形成された2価の重合体基を表し、kは0~50の整数を表し、jは10~100の整数を表し、但し、k+j=10~150である。pは、1又は2を表す。一般式(3-2)において、R3は、分岐していてもよい炭素数8~22の2価脂肪族炭化水素基を表す。mは、2~11の整数を表し、nは、0~1000の整数を表す。]
〔1-1.ポリチオフェン(A)〕
上記の一般式(7)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する総炭素数が1~10の有機基を表す。少なくとも一つの置換基を有していない状態における、総炭素数が1~10の有機基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロプル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、tert-ブトキシメチル基、ヘキシルオキシメチル基、イソヘキシルオキシメチル基、ヘプチルオキシメチル基、又はオクチルオキシメチル基等が挙げられる。
【0041】
上記の一般式(7)において、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する総炭素数が1~10の有機基としては、特に限定するものではないが、例えば、スルホン酸メチル基、ホスホン酸メチル基、2-スルホン酸エチル基、2-ホスホン酸エチル基、3-スルホン酸プロプル基、3-ホスホン酸プロプル基、2-スルホン酸プロプル基、2-ホスホン酸プロプル基、4-スルホン酸ブチル基、4-ホスホン酸ブチル基、3-スルホン酸ブチル基、3-ホスホン酸ブチル基、6-スルホン酸ヘキシル基、6-ホスホン酸ヘキシル基、5-スルホン酸ヘキシル基、5-ホスホン酸ヘキシル基、スルホン酸メトキシメチル基、ホスホン酸メトキシメチル基、2-スルホン酸エトキシメチル基、2-ホスホン酸エトキシメチル基、3-スルホン酸プロポキシメチル基、3-ホスホン酸プロポキシメチル基、2-スルホン酸プロポキシメチル基、2-ホスホン酸プロポキシメチル基、4-スルホン酸ブトキシメチル基、4-ホスホン酸ブトキシメチル基、3-スルホン酸ブトキシメチル基、3-ホスホン酸ブトキシメチル基、6-スルホン酸ヘキシルオキシメチル基、6-ホスホン酸ヘキシルオキシメチル基、5-スルホン酸ヘキシルオキシメチル基、又は5-ホスホン酸ヘキシルオキシメチル基等が挙げられる。
【0042】
上記のポリチオフェン(A)については、成膜性の点で、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)であることが好ましい。
【0043】
【0044】
[一般式(1)において、M+は、プロトン又はアミン化合物の共役酸を表す。一般式(1)及び(2)において、R1は、独立して水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
一般式(1)において、M+は、プロトン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。一般式(1)及び(2)において、R1は、独立して水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。
【0045】
上記一般式(2)で表される構造単位は、上記一般式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表し、そのドーピング状態は、上記一般式(1)で表される構造単位中のスルホ基又はスルホナート基がp型ドーパントとして作用することにより発現する。
【0046】
上記一般式(1)及び(2)中のR1で示される炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0047】
R1については、成膜性に優れる点で、水素原子、メチル基、エチル基、又はフッ素原子であることが好ましく、水素原子、メチル基、又はフッ素原子であることがより好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0048】
上記一般式(1)中、M+は、プロトン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。
【0049】
上記アミン化合物の共役酸は、アミン化合物にプロトンが付加したカチオン化合物を表す。当該アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、一般式NH2(R4)、NH(R5)(R6)、及びN(R4)(R5)(R6)で表されるアミン化合物、ピリジン化合物、又はイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0050】
上記R4~R6は、各々独立して、置換基を有していてもよい総炭素数1~40のアルキル基(このうち、炭素数3~40のアルキル基については、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい)を表す。このうち、R4~R6は、各々独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい総炭素数1~20のアルキル基(このうち、炭素数3~20のアルキル基については、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい)であることがより好ましく、各々独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい総炭素数1~6のアルキル基(このうち、炭素数3~6のアルキル基については、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい)であることがさらに好ましい。
【0051】
また、R4~R6が置換基を有するアルキル基である場合の当該置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~20のアリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、チオール基、アルキルスルフィド基、又はカルボキシル基等を挙げることができ、より好ましくは、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、又は2,3-ジヒドロキシプロピル基等のヒドロキシ基を有するアルキル基が挙げられる。
【0052】
ここで、置換基を有していてもよい総炭素数1~40のアルキル基、又は置換基を有していてもよい総炭素数1~20のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエトキシエチル基、ベンジル基、フェネチル基、又はアミノエチル基等が挙げられる。
【0053】
上記の置換基を有していてもよい総炭素数1~6のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、又はヒドロキシエトキシエトキシエチル基等が挙げられる。
【0054】
このうち、R4~R6としては、より好ましくは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシエチル基が挙げられる。
【0055】
前記ピリジン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、ピコリン、又はルチジン等が挙げられる。これらのうち、ピリジン、ピコリン、又はルチジン等が好ましい。
【0056】
前記イミダゾール化合物としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、又は1,2-ジメチルイミダゾール等が挙げられる。これらのうち、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、又は1,2-ジメチルイミダゾール等が好ましい。
【0057】
上記アミン化合物の共役酸の総炭素数としては、特に限定されないが、例えば、総炭素数が1~30であってもよく、溶解性の観点から総炭素数が5~30であることが好ましく、総炭素数が8~30であることがより好ましく、総炭素数が15~24であることがより好ましい。
【0058】
アミン化合物の共役酸としては、より具体的には、例えば、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ノルマルプロピルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、ノルマルブチルアンモニウムイオン、ペンチルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、ジメチルイソプロピルアンモニウムイオン、ジエチルメチルアンモニウムイオン、ヘプチルアンモニウムイオン、ジイソプロピルメチルアンモニウムイオン、2-ヒドロキシエチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、N-メチル-N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、N,N,N-トリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、2,3-ジヒドロキシプロピルアンモニウムイオン、N-メチル-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アンモニウムイオン、N,N-ジメチル-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アンモニウムイオン、1,4-ブタンジアンモニウムイオン、トリイソブチルアンモニウムイオン、トリイソペンチルアンモニウムイオン、トリイソオクチルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、ジオクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオン、ジイソプロピルエチルアンモニウムイオン、デシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、トリデシルアンモニウムイオン、ペンタデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、オレイルアンモニウムイオン、ジ-n-オクチルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチルオクチルアンモニウムイオン、ジメチルデシルアンモニウムイオン、ジメチルドデシルアンモニウムイオン、ジメチルステアリルアンモニウムイオン、トリヘキシルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、又はフェニルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらのうち、ペンチルアンモニウムイオン、ジメチルイソプロピルアンモニウムイオン、ジエチルメチルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ヘプチルアンモニウムイオン、ジイソプロピルメチルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、ジオクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオン、ジイソプロピルエチルアンモニウムイオン、デシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、トリデシルアンモニウムイオン、ペンタデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、オレイルアンモニウムイオン、ジ-n-オクチルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチルオクチルアンモニウムイオン、ジメチルデシルアンモニウムイオン、ジメチルドデシルアンモニウムイオン、ジメチルステアリルアンモニウムイオン、トリヘキシルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、及びフェニルアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0059】
上記ピリジン化合物の共役酸の総炭素数としては、総炭素数3~20であることが好ましい。ピリジン化合物の共役酸としては、特に限定されないが、例えば、ピリジニウムイオン、2-メチルピリジニウムイオン、3-メチルピリジニウムイオン、4-メチルピリジニウムイオン、ピコリニウムイオン、又はルチジニウムイオン等が挙げられる。これらのうち、ピリジニウムイオン、ピコリニウムイオン、又はルチジニウムイオン等が好ましい。
【0060】
上記イミダゾール化合物の共役酸の総炭素数としては、総炭素数3~20であることが好ましい。イミダゾール化合物の共役酸としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾリウムイオン、2-メチルイミダゾリウムイオン、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムイオン、2-フェニルイミダゾリウムイオン、2-フェニル-4-メチルイミダゾリウムイオン、1-メチルイミダゾリウムイオン、又は1,2-ジメチルイミダゾリウムイオン等が挙げられる。これらのうち、イミダゾリウムイオン、1-メチルイミダゾリウムイオン、又は1,2-ジメチルイミダゾリウムイオン等が好ましい。
【0061】
上記第4級アンモニウムイオンの総炭素数としては、特に限定されないが、例えば、総炭素数が4~30であってもよく、総炭素数が5~30であることがより好ましく、総炭素数が8~30であることがより好ましく、総炭素数が15~24であることがより好ましい。
【0062】
上記第4級アンモニウムイオンとしては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラノルマルプロピルアンモニウムイオン、テトラノルマルブチルアンモニウムイオン、テトラノルマルヘキシルアンモニウムイオン、デシルトリメチルアンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、又はテトラヘキシルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらのうち、デシルトリメチルアンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、及びテトラヘキシルアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0063】
M+が第4級アンモニウムイオンであるポリチオフェン(A)は、第4級アンモニウム塩を、M+がプロトンであるポリチオフェン(A)と混合することにより調製することができる。上記の第4級アンモニウム塩としては、特に限定されないが、例えば、塩化物、臭化物、水酸化物、又は硫酸水素塩等が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラノルマルプロピルアンモニウムクロリド、テトラノルマルブチルアンモニウムクロリド、テトラノルマルヘキシルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウム硫酸水素塩、又はテトラヘキシルアンモニウムブロミドが挙げられる。これらのうち、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウム硫酸水素塩、及びテトラヘキシルアンモニウムブロミドからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0064】
上記M+は、プロトン若しくは総炭素数が15~24のアミン化合物の共役酸であることが好ましい。また、上記M+は、塗膜塗工性に優れる点で、ジオクチルアンモニウムイオン、トリデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、オレイルアンモニウムイオン、ジ-n-オクチルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチルステアリルアンモニウムイオン、トリヘキシルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、及びテトラヘキシルアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0065】
上記一般式(1)及び(2)中、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。上記一般式(1)及び(2)中のmについては、導電性高分子溶液の溶解性及び塗布性の観点から、2~6の整数であることが好ましく、2、3、4、又は5であることがより好ましく、2、又は3であることがより好ましい。また、上記一般式(1)及び(2)中のnについては、導電性高分子溶液の溶解性及び塗布性の観点から、1であることが好ましい。
【0066】
導電性高分子溶液の塗布性が良好であれば、後述する粘着剤組成物の塗布性についても良好となる。
【0067】
上記の一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェンについては、高い導電率が得られる点で、ゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるポリスチレンスルホン酸換算数平均分子量が、3,500以上であることが好ましく、4,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることが更に好ましい。なお、上記導電性高分子溶液の操作性の点で、上記ポリチオフェン(A)のゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるポリスチレンスルホン酸換算数平均分子量は、30,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましく、15,000以下であることがより好ましい。そのため、上記ポリチオフェン(A)のポリスチレンスルホン酸換算数平均分子量は、3,500~30,000であることが好ましく、4,000~20,000であることがより好ましく、5,000~15,000であることが更に好ましい。
【0068】
上記のポリチオフェン(A)のゲル浸透クロマトグラフィー法による分子量測定の方法及び条件については、ISO 16014-3:2012(JIS K 7252-3:2016)に従う。
【0069】
〔1-1-1.ポリチオフェン(A)の製造方法〕
上記の一般式(7)で表される構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェンについては、下記一般式(8)で表されるチオフェンモノマーを、水又はアルコール溶媒中、鉄塩及び/又は過硫酸等の酸化剤の存在下に重合させることによって製造することができる。なお、必要に応じて、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、又はイオン交換樹脂処理等の操作を組み合わせることもできる。
【0070】
【0071】
[一般式(8)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する総炭素数が1~10の有機基を表す。なお、上記のスルホン酸基、及び/又はホスホン酸基については、アルカリ金属塩であってもよい。]
一般式(8)中、Rは、上記一般式(7)のRと同じ定義である。
【0072】
一般式(8)中のアルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、又はセシウム塩が挙げられる。
【0073】
また、上記の一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェンについては、下記一般式(4)で表されるチオフェンモノマーを、水又はアルコール溶媒中、鉄塩及び/又は過硫酸等の酸化剤の存在下に重合させることによって製造することができる。なお、必要に応じて、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、又はイオン交換樹脂処理等の操作を組み合わせることもできる。
【0074】
【0075】
上記一般式(4)中、R1、m、nは、上記一般式(1)及び(2)のR1、m、nと同じ定義である。上記一般式(4)中、M+は、プロトン又はアルカリ金属イオンを表す。
【0076】
上記一般式(4)で表されるチオフェンモノマーとしては、特に限定されないが、具体的には、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ヘキシル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソプロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸アンモニウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸ナトリウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸リチウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸カリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸ナトリウム、及び8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸カリウム等が例示される。
【0077】
上記のM+で表されるアルカリ金属イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はセシウムイオンを挙げることができる。
【0078】
上記一般式(8)又は(4)で表されるチオフェンモノマーの重合反応に用いる溶媒は、水、アルコール、又はアルコール水溶液であることが好ましい。水としては、例えば、純水が挙げられ、蒸留水、又はイオン交換水でもよい。アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等のアルコール類が挙げられる。これらのアルコール溶媒は、単独で使用しても、水と併用してもよい。これらの溶媒のうち、好ましくは水又はメタノールであり、より好ましくは水である。また、溶媒を脱気してもよく、窒素等の不活性ガスで置換していてもよい。
【0079】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる溶媒量は、例えば、チオフェンモノマーが溶解する量であり、特に限定されないが、上記のチオフェンモノマーの仕込量に対して0.1~100重量倍の範囲が好ましく、1~20重量倍の範囲がより好ましい。
【0080】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤は、酸化的脱水素化反応による酸化重合を進行させる。当該酸化剤は、特に限定されないが、例えば、過硫酸類、鉄塩(II又はIII)、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、硫酸セリウム(IV)、又は酸素等が挙げられ、これらを単独で又は二種以上を混合して使用してもよい。
【0081】
ここで、過硫酸類としては、具体的には、過硫酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、又は過硫酸カリウム等が例示される。
【0082】
鉄塩としては、具体的には、FeCl3、FeBr3、Fe2(SO4)3、Fe(NO3)3・9H2O、過塩素酸鉄、パラ-トルエンスルホン酸鉄(III)等の3価の鉄塩、FeCl2、FeBr2、FeSO4・7H2O、酢酸鉄(II)等の2価の鉄塩が挙げられる。これらは無水物を使用しても、水和物を使用してもよい。
【0083】
また、過マンガン酸塩としては、具体的には、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、又は過マンガン酸マグネシウム等が例示される。
【0084】
また、重クロム酸塩としては、具体的には、重クロム酸アンモニウム、又は重クロム酸カリウム等が例示される。
【0085】
これらの酸化剤のうち、FeCl3、Fe2(SO4)3、Fe2(SO4)3、又は過硫酸塩と鉄塩(II又はIII)との併用系が特に好ましい。
【0086】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤の量としては、特に限定されないが、チオフェンモノマーの仕込モル数に対して0.5~50倍モルが好ましい。より好ましくは、1~20倍モルである。更に好ましくは、1~10倍モルである。
【0087】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤が、例えば、鉄塩(III)単独系の場合、原料として用いられるチオフェンモノマーの仕込モル数に対して、鉄塩(III)が等倍モル以上であり、且つ溶媒に対する鉄濃度が10重量%以上になるように用いて重合させることが好ましい。より良好な導電性を発現させるためには、溶媒に対する鉄濃度が20重量%以上であることが更に好ましい。尚、ここでいう鉄濃度とは、鉄塩/(鉄塩+水)×100(重量%)で表される値であり、鉄塩は無水物として計算する。
【0088】
又、上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤が、過硫酸塩と鉄塩(II又はIII)との併用系である場合には、チオフェンモノマーの仕込モル数に対して、過硫酸塩が0.5~20倍モルの範囲であり、且つ鉄塩(II又はIII)が0.01~10倍モルの範囲であることが好ましく、過硫酸塩が1.5~10倍モルの範囲であり、且つ、鉄塩(II又はIII)が0.05~5倍モルの範囲であることがより好ましい。
【0089】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の圧力は、常圧、減圧、又は加圧のいずれであってもよい。
【0090】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の反応雰囲気は、大気中であっても、窒素又はアルゴン等の不活性ガス中であってもよい。より好ましくは不活性ガス中である。
【0091】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の反応温度は、特に限定されないが、-10~100℃の範囲が好ましく、0~50℃の範囲が更に好ましい。
【0092】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の反応時間は、酸化重合が十分進行する時間であればよく、特に限定されないが、0.5~200時間の範囲が好ましく、0.5~80時間の範囲が更に好ましい。
【0093】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の反応方法は、特に限定されないが、例えば、上記一般式(8)又は(4)で表されるチオフェンモノマーをあらかじめ水に溶解させ、これに酸化剤を一度に又はゆっくりと滴下してもよく、逆に酸化剤の固体又は水溶液に上記一般式(8)又は(4)で表されるチオフェンモノマーの水溶液を一度に又はゆっくりと滴下してもよい。また、2種以上の酸化剤を用いる場合には、各酸化剤を順次添加してもよく、予め混合した状態で添加してもよい。
【0094】
尚、上記のチオフェンモノマーの重合反応は、酸化剤の添加に伴い液粘度が上昇する傾向があるため、液全体を均一に撹拌する必要がある。撹拌翼については、プロペラ翼、パドル翼、マックスブレンド(登録商標)翼(住友重機械プロセス機器社製)、フルゾーン(登録商標)翼(神鋼環境ソリューション社製)、又はディスクタービンが使用でき、反応容器内をより均一に混合するためにはマックスブレンド翼又はフルゾーン翼などの大型翼が好ましい。その他として、乳化又は分散に使用されるホモミキサー、又はホモジナイザー等も組み合わせて使用してもよい。一般的な撹拌翼を使用する撹拌法を用いる場合は、反応液に反応容器の気相部のガスが多量に取り込まれて撹拌効率が低下することがない範囲で撹拌翼の回転速度をできるだけ速くすることが好ましい。
【0095】
上記のポリチオフェン(A)の典型的な単離精製方法は、例えば、以下のとおりである。
【0096】
まず、上記のチオフェンモノマーの重合反応後の溶液を、そのまま限外ろ過し、透析等の膜分離法を用いて脱塩精製し、その後、陽イオン及び陰イオン交換樹脂に通液することによりM+がプロトンである酸型のポリチオフェン(A)の溶液を得ることができる。
【0097】
更に、必要に応じて、得られた溶液を粗濃縮し、アセトン等の貧溶媒に添加して沈殿させることにより粉末としてポリチオフェン(A)を得ることもできる。
【0098】
また、塩型ポリチオフェン(A)を形成させる場合には、例えば、上記酸型のポリチオフェン(A)の溶液に、各種アミン化合物、その水溶液、又はそれらをその他適当な溶媒で希釈した液を加える。特に限定されないが、例えば、酸型のポリチオフェン(A)の溶液にアンモニアを添加することによって、M+がNH4
+であるアンモニウム塩型ポリチオフェン(A)の溶液を形成させることができる。必要に応じて、得られた上記溶液をアセトン等の貧溶媒に添加して粉末状の各種アンモニウム塩型ポリチオフェン(A)を得ることもできる。
【0099】
〔1-2.変性ポリアミン化合物(B)〕
本願明細書において、変性ポリアミン化合物(B)とは、下記一般式(3-1)で表される繰り返し単位、及び/又は下記一般式(3-2)で表される繰り返し単位、並びに下記一般式(3-3)で表される繰り返し単位によって構成される重合物である。
【0100】
【0101】
[一般式(3-1)において、R2は、炭素数1~22の脂肪族炭化水素基を表す。Xは、k個のプロピレンオキシ基(-CH2-CH(CH3)-O-)と、j個のエチレンオキシ基(-CH2-CH2-O-)とのランダム重合又はランダムな順序におけるブロック重合により形成された2価の重合体基を表し、kは0~50の整数を表し、jは10~100の整数を表し、但し、k+j=10~150である。pは、1又は2を表す。一般式(3-2)において、R3は、分岐していてもよい炭素数8~22の2価脂肪族炭化水素基を表す。mは、2~11の整数を表し、nは、0~1000の整数を表す。]
R2における炭素数1~22の脂肪族炭化水素基は、脂肪族飽和炭化水素基であってもよく、脂肪族不飽和炭化水素基であってもよい。R2における炭素数1~22の脂肪族炭化水素基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ラウリル基、ヘキサデシル基、パルミチル基、オクタデシル基、ステアリル基、オレイル基、エイコサペンタジエニル基、又はドコサヘキサエニル基等を挙げることができる。
【0102】
R3における分岐していてもよい炭素数8~22の2価脂肪族炭化水素基は、分岐していてもよい炭素数8~22の2価脂肪族飽和炭化水素基であってもよく、分岐していてもよい炭素数8~22の2価脂肪族不飽和炭化水素基であってもよい。
【0103】
R3における分岐していてもよい炭素数8~22の2価脂肪族炭化水素基としては、特に限定するものではないが、例えば、オクタンジイル基、イソオクタンジイル基、2-エチルヘキサンジイル基、デカンジイル基、ドデカンジイル基、テトラデカンジイル基、ペンタデカンジイル基、ヘキサデカンジイル基、ヘプタデカンジイル基、オクタデカンジイル基、シス-9-オクタデカンジイル基、エイコサペンタジエンジイル基、又はドコサヘキサエンジイル基等を挙げることができる。
【0104】
R3については、ヘプタデカンジイル基であることが好ましく、ヘプタデカン-1,11-ジイル基であることが好ましい。
【0105】
前記の変性ポリアミン化合物(B)については、一般式(3-1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(3-3)で表される繰り返し単位によって構成される重合物、又は一般式(3-2)で表される繰り返し単位及び下記一般式(3-3)で表される繰り返し単位によって構成される重合物であることが好ましい。また、前記の変性ポリアミン化合物(B)は、一般式(3-1)で表される繰り返し単位、一般式(3-2)で表される繰り返し単位、及び一般式(3-3)で表される繰り返し単位によって構成される重合物であってもよい。
【0106】
〔1-3.有機溶媒(C)〕
本発明の一実施形態において、有機溶媒(C)としては、エステル系溶媒及び芳香族系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
【0107】
エステル系溶媒としては、特に限定されないが、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ノルマルプロピルエステル、酢酸ブチルエステル、酢酸イソブチルエステル、及び酢酸メトキシブチルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0108】
芳香族系溶媒としては、特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、又はキシレン等が挙げられる。
【0109】
有機溶媒(C)としては、塗膜塗工性に優れる点で、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルエステル、又はトルエンが好ましい。
【0110】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液については、後述する粘着剤(D)と混合して粘着剤組成物を製造する観点から、有機溶媒(C)の含有量が、ポリチオフェン(A)と変性ポリアミン化合物(B)と有機溶媒(C)との合計を100重量%として、80~99.9重量%であることが好ましく、90~99.9重量%であることがより好ましい。
【0111】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液については、導電性向上の観点から、ポリチオフェン(A)の含有量が、上記有機溶媒(C)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、0.05~5重量部であることがより好ましく、0.1~3重量部であることがより好ましい。
【0112】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液については、粘着剤(D)と混合して粘着剤組成物を製造する観点から、変性ポリアミン化合物(B)の含有量が、上記有機溶媒(C)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、0.05~7.5重量部であることがより好ましく、0.1~5重量部であることがより好ましい。
【0113】
〔1-4.導電性高分子溶液の製造方法〕
本実施形態に係る導電性高分子溶液の製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本実施形態のポリチオフェン(A)の溶液又は固体と、変性ポリアミン化合物(B)と、有機溶媒(C)と、を混合し、撹拌等によって均一化する方法が挙げられる。
【0114】
混合する際の温度は、特に限定するものではないが、例えば、室温~加温下で行うことができる。好ましくは0℃以上100℃以下であってよい。混合する際の雰囲気は、特に限定するものではないが、大気中でも、不活性ガス中でもよい。なお、本明細書において、室温とは15~25℃を意図する。
【0115】
更に、本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液は、上記以外の成分を含んでいてもよい。上記以外の成分としては、特に限定されないが、例えば、バインダー、及び界面活性剤等を挙げることができる。
【0116】
上記のバインダーとしては、特に限定するものではないが、例えば、セルロース系樹脂、ビニルピロリドン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メチルメタクリレート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド、ニトロセルロース若しくはその他のセルロース樹脂、又はポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
【0117】
上記のバインダー樹脂については、成膜性に優れる点で、セルロース系樹脂、ビニルピロリドン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0118】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液が、上記のバインダーを含有する場合、バインダーの含有量は、ポリチオフェン(A)と、変性ポリアミン化合物(B)と、有機溶媒(C)との合計を100量部として、0.01~20量部であることが好ましく、0.1~10量部であることがより好ましい。
【0119】
上記の界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン界面活性剤(例えば、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、カチオン界面活性剤(例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド等)、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤等が使用できるが、より好ましくは非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0120】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液が、上記の界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、ポリチオフェン(A)と、変性ポリアミン化合物(B)と、有機溶媒(C)との合計を100量部として、0.1~60重量部であることが好ましく、1~40重量部であることがより好ましい。
【0121】
〔1-5.粘着剤組成物〕
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、上記の導電性高分子溶液と一般公知の粘着剤(D)とを含むことを特徴とする。
【0122】
上記粘着剤(D)としては、特に限定するものではないが、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン粘着剤、ウレタン粘着剤、又はゴム系粘着剤が挙げられる。
【0123】
アクリル系粘着剤は、アクリルポリマーを主成分とする粘着剤を示す。シリコーン粘着剤は、シロキサン結合を主骨格にもつポリマーを主成分とする粘着剤を示す。ウレタン粘着剤は、イソシアネート基とヒドロキシ基をもつ化合物同士を縮合し得られるポリウレタンを主成分とする粘着剤を示す。ゴム系粘着剤は、天然ゴム又は合成ゴムを主成分とする粘着剤を示す。
【0124】
これらの粘着剤(D)のうち、光学部材用の粘着特性に優れる点で、アクリル系粘着剤が好ましく、アロンタック粘着剤、又はサイビノール粘着剤であることがより好ましい。なお、アロンタック及びサイビノールは、登録商標である。
【0125】
具体的な商品名として、アロンタック粘着剤としては、アロンタックS-1601、アロンタックS-1605、アロンタックS-1511X、アロンタックS-1511改、アロンタックS-3403、又はアロンタックS-3452YKF等が挙げられる。サイビノール粘着剤としては、サイビノールAT-245、サイビノールAT-191、サイビノールATR-340、サイビノールAT-D37L、サイビノールAT-211、サイビノールAT-262、サイビノールAT-197、サイビノールAT-193、サイビノールATR-1、サイビノールATR-373、サイビノールATR-347、サイビノールATR-300、サイビノールAT-420NT、サイビノールAT-422NT、サイビノールAT-260NT、サイビノールAT-D54、サイビノールAT-D50、サイビノールAT-D40、サイビノールAT-D37、又はサイビノールAT-D45等が挙げられる。粘着剤(D)としては、これらの粘着剤を単独で使用してもよく、また、2種類以上を混合してもよい。
【0126】
また、上記粘着剤(D)は固化材、又は架橋剤を含んでいてもよい。上記架橋剤としては、特に限定するものではないが、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、又は金属キレート化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0127】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物については、導電性向上の観点から、ポリチオフェン(A)の含有量が、上記粘着剤(D)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、0.05~5重量部であることがより好ましく、0.1~3重量部であることがより好ましい。
【0128】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物については、変性ポリアミン化合物(B)が、有機溶媒(C)中におけるポリチオフェン(A)と粘着剤(D)との相溶性を向上させることから、変性ポリアミン化合物(B)の含有量が、上記粘着剤(D)100重量部に対して、0.01~15重量部であることが好ましく、0.05~8重量部であることがより好ましく、0.1~6重量部であることがより好ましい。
【0129】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物については、塗布性等の操作性の観点から、上記有機溶媒(C)の濃度が、上記粘着剤組成物全体を100重量%として、20~80重量%であることが好ましく、30~70重量%であることがより好ましく、40~60重量%であることがより好ましい。
【0130】
〔2.導電性粘着膜の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る導電性粘着膜は、特に限定されないが、例えば、本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物を、基材に塗布し、次いで乾燥することによって製造することができる。このように製造される導電性粘着膜は、上記のポリチオフェン(A)と、上記の変性ポリアミン化合物(B)と、上記の粘着剤(D)とを含むことを特徴とする。
【0131】
上記の基材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、プラスチック、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、又はレジスト基板等が挙げられる。塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スクリーン印刷法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、又はインクジェット印刷法等が挙げられる。
【0132】
乾燥温度としては、均一な乾燥状態の導電性粘着膜が得られる温度及び基材の耐熱温度以下であれば特に限定されないが、室温(15~25℃)~300℃の範囲が好ましく、より好ましくは室温~250℃の範囲であり、さらに好ましくは90~250℃の範囲である。
【0133】
乾燥雰囲気は、大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。導電性粘着膜の劣化抑制の観点からは、窒素、又はアルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
【0134】
本発明の一実施形態に係る導電性粘着膜の膜厚としては、特に限定されないが、1×10-2~1×102μmの範囲が好ましい。
【0135】
以上のような製造方法によれば、良好な帯電防止能を有する導電性粘着膜が得られる。導電性粘着膜の帯電防止能は、例えば、表面抵抗率により評価してよい。すなわち、導電性粘着膜の表面抵抗率が低い程、帯電防止能が高いと言える。
【0136】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0137】
以下に本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液、粘着剤組成物、及び導電性粘着膜に関する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されない。後述する各実施例に係る導電性高分子溶液、及び各比較例に係る混合溶液を用いて、以下の方法に従って導電性高分子溶液を作製した。
【0138】
〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕
導電性高分子溶液の粒子径を、粒子径測定装置(日機装製UPA-UT151)を使用して測定した。
【0139】
〔導電性粘着膜の表面抵抗測定方法〕
導電性高分子溶液と粘着剤を含む粘着剤組成物を、Select-Roller/A-Bar(オーエスジーシステムプロダクツ製)を使用して、ポリフィルムに塗工し、80℃で乾燥させて、膜厚52μmの導電性粘着膜を作製した。この導電性粘着膜の表面抵抗を、高抵抗率計 Hiresta(登録商標)―UX(三菱化学アナリテック製)を使用して測定した。
【0140】
導電性粘着膜は、表面抵抗率が低い程、帯電防止能が高いと言える。具体的には、導電性粘着膜は、表面抵抗率が1013Ω/□未満であれば帯電防止能を有する導電性粘着膜と言え、1012Ω/□以下であることが好ましく、1011Ω/□以下であることがより好ましく、1010Ω/□以下であることが更に好ましい。
【0141】
合成例1 ポリチオフェン(PT)の合成
従来公知の製造方法に従って、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ポリマー(下記式(5)及び下記式(6)で表される繰り返し構造を含む重合体、数平均分子量約7000)を製造した。
【0142】
【0143】
上記の3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ポリマーを1重量%含む水溶液50.0gに、ジオクチルアミンを5重量%含むメタノール溶液7.4gを撹拌し、次いで得られた析出物を濾別し、乾燥させて、上記ポリマーのジオクチルアミン塩(これは、上記のポリアミン(A)に該当し、以下「PT」とも称する)の固体0.6gを得た。すなわち、当該PTは、一般式(1)においてM+としてジオクチルアミンの共役酸(すなわちジオクチルアンモニウムイオン)を含む。
【0144】
変性ポリアミン化合物(B)の製造例
特開2004-89787(川研ファインケミカル株式会社)に記載の方法に従って、エーテルカルボン酸(1)、(2)、(4)、及び(5)(以上、全て特開2004-89787に記載のものと同じもの)を合成した。さらに、上記特許文献に記載の方法に従って、当該エーテルカルボン酸とポリアリルアミンとを反応させ、変性ポリアミン化合物(1)、(3)、(7)、及び(9)(以上、全て特開2004-89787に記載のものと同じもので、これらは、上記の変性ポリアミン化合物(B)に該当する。)を合成した。
【0145】
以上の変性ポリアミン化合物(1)、(3)、(7)、及び(9)の製造例の要約について、表1に示す。
【0146】
【0147】
特開平11-197485(川研ファインケミカル株式会社)に記載の方法に従って、特開平11-197485に記載の中間生成物1である、ポリカルボニルアルキレンオキシ酸(PCAO酸)1を合成した。次いで、ポリアリルアミン(日東紡績(株)製、商標:PAA-01、質量平均分子量:約1000、純分:15.0%水溶液) 149.3gに、前記の中間生成物1 578.9gを添加し窒素雰囲気中、120℃で7時間攪拌した。室温でワックス状の変性ポリアミン化合物(1’)(これは、上記の変性ポリアミン化合物(B)に該当する。)が得られた。
【0148】
以上の変性ポリアミン化合物(1’)の製造例の要約について、表2に示す。
【0149】
【0150】
実施例1 (導電性高分子溶液の調製と評価)
有機溶媒(C)としての9.7gの酢酸エチルエステルに、上記PT 0.1gと、上記変性ポリアミン化合物(1) 0.2gを加え、撹拌を行って、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0151】
実施例2 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例1において、変性ポリアミン化合物(1) 0.2gの代わりに、上記変性ポリアミン化合物(3) 0.2gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0152】
実施例3 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例1において、変性ポリアミン化合物(1) 0.2gの代わりに、上記変性ポリアミン化合物(7) 0.2gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0153】
実施例4 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例1において、変性ポリアミン化合物(1) 0.2gの代わりに、上記変性ポリアミン化合物(9) 0.2gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0154】
実施例5~12 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例1~4において、有機溶媒(C)として、9.7gの酢酸エチルエステルを用いる代わりに、9.7gの酢酸ブチルエステル、又は9.7gのトルエンを用いた以外は、実施例1~4と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。それぞれの処方については、表3に示した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した。結果を表3に示した。
【0155】
実施例13 (導電性高分子溶液の調製と評価)
有機溶媒(C)としての9.7gの酢酸エチルエステルに、上記PT 0.1gと、上記変性ポリアミン化合物(1’) 0.2gとを加え、撹拌を行って、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。上記PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0156】
実施例14~15 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例13において、有機溶媒(C)として、9.7gの酢酸エチルエステルを用いる代わりに、9.7gの酢酸ブチルエステル、又は9.7gのトルエンを用いた以外は、実施例13と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。それぞれの処方については、表3に示した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した。結果を表3に示した。
【0157】
実施例46 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例1において、PTの量を0.05gに変更し、変性ポリアミン化合物(1)の量を0.1gに変更し、尚且つ酢酸エチルエステルの量を9.85gに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0158】
実施例47 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例1において、PTの量を0.2gに変更し、変性ポリアミン化合物(1)の量を0.4gに変更し、尚且つ酢酸エチルエステルの量を9.4gに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0159】
実施例48 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例46において、変性ポリアミン化合物(1) 0.1gの代わりに、上記変性ポリアミン化合物(3) 0.1gを用いた以外は、実施例46と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0160】
実施例49 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例47において、変性ポリアミン化合物(1) 0.4gの代わりに、上記変性ポリアミン化合物(3) 0.4gを用いた以外は、実施例47と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0161】
実施例50 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例46において、変性ポリアミン化合物(1) 0.1gの代わりに、上記変性ポリアミン化合物(7) 0.1gを用いた以外は、実施例46と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0162】
実施例51 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例47において、変性ポリアミン化合物(1) 0.4gの代わりに、上記変性ポリアミン化合物(7) 0.4gを用いた以外は、実施例47と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0163】
実施例52 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例46において、変性ポリアミン化合物(1) 0.1gの代わりに、上記変性ポリアミン化合物(9) 0.1gを用いた以外は、実施例46と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0164】
実施例53 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例47において、変性ポリアミン化合物(1) 0.4gの代わりに、上記変性ポリアミン化合物(9) 0.4gを用いた以外は、実施例47と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0165】
実施例54 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例46において、酢酸エチルエステル 9.85gの代わりに、酢酸ブチルエステル 9.85gを用いた以外は、実施例46と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.0nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0166】
実施例55 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例47において、酢酸エチルエステル 9.4gの代わりに、酢酸ブチルエステル 9.4gを用いた以外は、実施例47と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.0nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0167】
実施例56 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例46において、酢酸エチルエステル 9.85gの代わりに、トルエン 9.85gを用いた以外は、実施例46と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.0nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0168】
実施例57 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例47において、酢酸エチルエステル 9.4gの代わりに、トルエン 9.4gを用いた以外は、実施例47と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.0nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0169】
実施例58 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例46において、変性ポリアミン化合物(1) 0.1gの代わりに、上記変性ポリアミン化合物(1’) 0.1gを用いた以外は、実施例46と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0170】
実施例59 (導電性高分子溶液の調製と評価)
実施例47において、変性ポリアミン化合物(1) 0.4gの代わりに、上記変性ポリアミン化合物(1’) 0.4gを用いた以外は、実施例47と同様の操作を行い、導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液について、上記の〔導電性高分子溶液の粒子径測定〕に従って平均粒子径を測定した結果、2.1nmだった。PTが、導電性高分子溶液中に均一に溶解または分散していることがわかった。
【0171】
比較例1 (導電性高分子溶液の調製と評価)
9.9gの酢酸エチルエステルに、上記PT 0.1gを加え、撹拌を行って、混合溶液を調製した。しかし、PTは混合溶液中において溶解も分散もしなかった。
【0172】
比較例2 (導電性高分子溶液の調製と評価)
9.7gの酢酸ブチルエステルに、上記PT 0.1gと、ポリアリルアミンPAA―01(ニットーボーメディカル株式会社製)0.2gとを加え、撹拌を行って、混合溶液を調製した。しかし、PTは混合溶液中において溶解も分散もしなかった。
【0173】
比較例3 (導電性高分子溶液の調製と評価)
9.7gの酢酸エチルエステルに、PEDOT:PSSの固体(ヘレウス社のPEDOT:PSS分散液を乾燥させて製造した。) 0.1gと、上記変性ポリアミン化合物(1) 0.2gとを加え、撹拌を行って、混合溶液を調製した。しかし、PEDOT:PSSの固体は混合溶液中において溶解も分散もしなかった。
【0174】
各実施例、及び各比較例の要約について、平均粒子径の測定結果を表3に示す。なお、比較例2では、変性ポリアミン化合物(B)を添加していない。また、比較例3では、ポリチオフェン(A)を添加していない。そのため、比較例2及び3では、これらの代替として加えた化合物を括弧書きにて示している。
【0175】
【0176】
実施例及び比較例の結果から、上記一般式(3)で表される変性ポリアミン化合物(B)を加えることによって、有機溶媒に均一に溶解又は分散された導電性高分子溶液を製造できることが確認できた。
【0177】
実施例16 (粘着剤組成物の調製と評価)
上記実施例1の導電性高分子溶液2gと、粘着剤(D)としてのサイビノールAT-245(サイデン化学社製)2gとを混合し、撹拌を行って、粘着剤組成物を調製した。上記の〔導電性粘着膜の表面抵抗測定方法〕に従って導電性粘着膜を製造し、表面抵抗を測定した結果、1010Ω/□だった。
【0178】
実施例17~30 (粘着剤組成物の調製と評価)
実施例16において、上記実施例1の導電性高分子溶液2gの代わりに、上記実施例2~15の導電性高分子2gを用いて、それぞれ粘着剤組成物を調製した。上記の〔導電性粘着膜の表面抵抗測定方法〕に従って導電性粘着膜を製造し、表面抵抗を測定した。結果を表4に示した。
【0179】
実施例60~73 (粘着剤組成物の調製と評価)
実施例16において、上記実施例1の導電性高分子溶液2gの代わりに、上記実施例46~59の導電性高分子溶液2gを用いて、それぞれ粘着剤組成物を調製した。上記の〔導電性粘着膜の表面抵抗測定方法〕に従って導電性粘着膜を製造し、表面抵抗を測定した。結果を表4に示した。
【0180】
比較例4 (粘着剤を含む混合溶液の調製と評価)
1.98gの酢酸エチルに、PT 0.02g、及びサイビノールAT-245(サイデン化学社製)2gを加え、撹拌を行って、混合溶液を調製した。しかし、PTは混合溶液中において溶解しなかった。
【0181】
比較例5 (粘着剤を含む混合溶液の調製と評価)
1.98gの酢酸エチルに、PEDOT:PSSの固体(ヘレウス社のPEDOT:PSS分散液を乾燥させて製造した。) 0.02g、及びサイビノールAT-245(サイデン化学社製)2gを加え、撹拌を行って、混合溶液を調製した。しかし、PEDOT:PSSは混合溶液中において溶解しなかった。
【0182】
比較例6 (粘着剤を含む混合溶液の調製と評価)
酢酸エチルエステル 1.98g及びイオン化合物であるテトラブチルアンモニウムブロミド(TBABr) 0.02gを混合して得られた混合物 2gと、粘着剤(D)としてのサイビノールAT-245(サイデン化学社製)2gとを混合し、撹拌を行って、粘着剤組成物を調製した。上記の〔導電性粘着膜の表面抵抗測定方法〕に従って導電性粘着膜を製造し、表面抵抗を測定した結果、1010Ω/□だった。
【0183】
比較例7 (粘着剤を含む混合溶液の調製と評価)
酢酸エチルエステル 1.98g及びイオン化合物である1-エチル-3-イミダゾリウムテトラフルオロボラート(EMIMBF4) 0.02gを混合して得られた混合物 2gと、粘着剤(D)としてのサイビノールAT-245(サイデン化学社製)2gとを混合し、撹拌を行って、粘着剤組成物を調製した。上記の〔導電性粘着膜の表面抵抗測定方法〕に従って導電性粘着膜を製造し、表面抵抗を測定した結果、1010Ω/□だった。
【0184】
比較例8 (粘着剤を含む混合溶液の調製と評価)
酢酸エチルエステル 1.94g、イオン化合物であるテトラブチルアンモニウムブロミド(TBABr) 0.02g及び上記変性ポリアミン化合物(1) 0.04gを混合して得られた混合物 2gと、粘着剤(D)としてのサイビノールAT-245(サイデン化学社製)2gとを混合し、撹拌を行って、粘着剤組成物を調製した。上記の〔導電性粘着膜の表面抵抗測定方法〕に従って導電性粘着膜を製造し、表面抵抗を測定した結果、1010Ω/□だった。
【0185】
各実施例、及び各比較例の要約について、表面抵抗の測定結果を表4に示す。なお、比較例5~8では、ポリチオフェン(A)を添加していない。そのため、比較例5~8では、ポリチオフェン(A)の代替として加えた化合物を括弧書きにて示している。
【0186】
【0187】
実施例及び比較例の結果から、本発明の一実施形態に係る変性ポリアミン化合物(B)を加えることにより、表面抵抗が比較的小さく帯電防止能を示す導電性粘着膜、及びこのような導電性粘着膜を得るための粘着剤組成物が得られることが確認できた。
【0188】
実施例31 (耐湿性の比較)
実施例16において作成した導電性粘着膜について、それぞれ、温度85℃、湿度85%の環境下で150時間静置した後、外観を確認したところ、変化は見られなかった。結果を表5に示した。
【0189】
実施例32~45 (耐湿性の比較)
実施例17~30において作成した導電性粘着膜について、それぞれ、実施例31と同様の評価試験を行ったところ、いずれの場合も、外観に変化は見られなかった。結果を表5に示した。
【0190】
実施例74~87 (耐湿性の比較)
実施例60~73において作成した導電性粘着膜について、それぞれ、実施例31と同様の評価試験を行ったところ、いずれの場合も、外観に変化は見られなかった。結果を表5に示した。
【0191】
比較例9 (耐湿性の比較)
比較例6において作成した導電性粘着膜について、温度85℃、湿度85%の環境下で150時間静置した後、外観を確認したところ、粘着層の溶解がみられた。結果を表5に示した。
【0192】
比較例10 (耐湿性の比較)
比較例7において作成した導電性粘着膜について、比較例9と同様の評価試験を行ったところ、粘着層の溶解がみられた。結果を表5に示した。
【0193】
比較例11 (耐湿性の比較)
比較例8において作成した導電性粘着膜について、比較例9と同様の評価試験を行ったところ、粘着層の溶解がみられた。結果を表5に示した。
【0194】
各実施例、及び各比較例の要約について、外観評価の結果を表5に示す。なお、比較例9~11では、ポリチオフェン(A)を添加していない。そのため、比較例9~11では、ポリチオフェン(A)の代替として加えた化合物を括弧書きにて示している。
【0195】
【0196】
実施例及び比較例の結果から、本発明の一実施形態に係るポリチオフェン(A)と変性ポリアミン化合物(B)とを含む導電性粘着膜は、ポリチオフェン(A)ではなくイオン化合物を含む導電性粘着膜と比べ、耐湿性に優れることが確認できた。