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特開2024-78397ヘッドモジュール、画像形成装置及び液体吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078397
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】ヘッドモジュール、画像形成装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20240603BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240603BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/175 141
B41J2/175 121
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149252
(22)【出願日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2022190310
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 理美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇裕
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA07
2C056EA28
2C056HA15
2C056KB16
2C056KB37
2C056KC15
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドごとに供給される液体の温度のばらつきを抑制する。
【解決手段】液体を吐出する少なくとも2つの液体吐出ヘッド21A,21Bと、液体を貯留する貯留部24と、貯留部24内の液体を加熱する加熱部材26と、貯留部24へ液体を導入する入口部50と、貯留部24内の液体を1つの液体吐出ヘッド21Aへ送り出す第1の出口部51Aと、貯留部24内の液体を別の1つの液体吐出ヘッド21Bへ送り出す第2の出口部51Bとを備え、入口部50と第1の出口部51Aとの間の距離L1が、入口部50と第2の出口部51Bとの間の距離L2よりも短いヘッドモジュールであって、入口部50と第1の出口部51Aとの間に壁部材27が介在する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する少なくとも2つの液体吐出ヘッドと、
前記液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部内の前記液体を加熱する加熱部材と、
前記貯留部へ前記液体を導入する入口部と、
前記貯留部内の前記液体を1つの前記液体吐出ヘッドへ送り出す第1の出口部と、
前記貯留部内の前記液体を別の1つの前記液体吐出ヘッドへ送り出す第2の出口部とを備え、
前記入口部と前記第1の出口部との間の距離が、前記入口部と前記第2の出口部との間の距離よりも短いヘッドモジュールであって、
前記入口部と前記第1の出口部との間に壁部材が介在することを特徴とするヘッドモジュール。
【請求項2】
前記壁部材は、前記加熱部材よりも入口部側に配置される請求項1に記載のヘッドモジュール。
【請求項3】
前記壁部材は、前記加熱部材よりも第1の出口部側に配置される請求項1に記載のヘッドモジュール。
【請求項4】
前記壁部材は、前記入口部と前記第1の出口部との間に配置される第1の壁部材のほか、前記第1の壁部材に対して離れて配置される第2の壁部材を有し、
前記第1の壁部材と前記第2の壁部材は、液体導入方向から見て、前記貯留部の中央を挟んで両側に配置される請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドモジュール。
【請求項5】
前記貯留部は、液体導入方向から見て、前記貯留部の中央を挟んで前記壁部材とは反対側において前記液体導入方向へ凹む凹部を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドモジュール。
【請求項6】
前記加熱部材は、前記壁部材と前記第1の出口部との間の領域において前記液体を加熱する第1の加熱部材と、前記入口部と前記壁部材との間の領域において前記液体を加熱する第2の加熱部材とを有する請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドモジュール。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドから回収された前記液体を再び前記液体吐出ヘッドへ供給する循環式のヘッドモジュールである請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドモジュール。
【請求項8】
前記液体吐出ヘッドから前記液体を回収しない非循環式のヘッドモジュールである請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドモジュール。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドモジュールを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドモジュールを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドモジュール、画像形成装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出装置の一例として、紙などのシートに液体のインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の画像形成装置が知られている。
【0003】
このようなインクジェット式の画像形成装置においては、液体を貯留する貯留部から液体吐出ヘッドへ適切な温度で液体を供給するため、ヒータなどの加熱部材によって貯留部内の液体を加熱するように構成されているものがある(例えば、特許文献1:特開2020-179534号公報参照)。
【0004】
ここで、1つの貯留部から複数の液体吐出ヘッドへ液体を分配して供給する場合、貯留部内へ液体を導入する入口部から貯留部内の液体を各液体吐出ヘッドへ送り出す出口部までの距離(液体流路の長さ)が異なると、液体吐出ヘッドごとに供給される液体の温度にばらつきが生じる。すなわち、入口部から出口部までの距離が長い箇所においては、貯留部内で液体が加熱される時間が長くなるため、液体吐出ヘッドへ供給される液体の温度が高くなる傾向にある。反対に、入口部から出口部までの距離が短い箇所においては、貯留部内で液体が加熱される時間が短くなるため、液体吐出ヘッドへ供給される液体の温度が低くなる傾向にある。このように、各液体吐出ヘッドに供給される液体温度にばらつきがあると、各液体吐出ヘッドから吐出される液体の粘度などにもばらつきが生じるため、液体の濃度ムラ、液体着弾位置のずれなどが生じる虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明においては、液体吐出ヘッドごとに供給される液体の温度のばらつきを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、液体を吐出する少なくとも2つの液体吐出ヘッドと、前記液体を貯留する貯留部と、前記貯留部内の前記液体を加熱する加熱部材と、前記貯留部へ前記液体を導入する入口部と、前記貯留部内の前記液体を1つの前記液体吐出ヘッドへ送り出す第1の出口部と、前記貯留部内の前記液体を別の1つの前記液体吐出ヘッドへ送り出す第2の出口部とを備え、前記入口部と前記第1の出口部との間の距離が、前記入口部と前記第2の出口部との間の距離よりも短いヘッドモジュールであって、前記入口部と前記第1の出口部との間に壁部材が介在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体吐出ヘッドごとに供給される液体の温度のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図である。
図2】本実施形態に係るインクジェット画像形成装置の制御システムを示す図である。
図3】本実施形態に係るヘッドユニットの概略構成図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るヘッドモジュールの構成を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るヘッドモジュールの構成を示す図である。
図6】本発明の第3実施形態に係るヘッドモジュールの構成を示す図である。
図7】本発明の第4実施形態に係るヘッドモジュールの構成を示す図である。
図8】本発明の第5実施形態に係るヘッドモジュールの構成を示す図である。
図9】本発明の第6実施形態に係るヘッドモジュールの構成を示す図である。
図10】本発明の第7実施形態に係るヘッドモジュールの構成を示す図である。
図11】本発明を非循環式のヘッドモジュールに適用した一例を示す図である。
図12】本発明を非循環式のヘッドモジュールに適用した他の例を示す図である。
図13】比較例に係るヘッドモジュールの構成を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係る電極の製造装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
まず、図1及び図2に基づき、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態であるインクジェット式画像形成装置の構成について説明する。図1は、インクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図、図2は、インクジェット画像形成装置の制御システムを示す図である。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100は、画像形成用のシートSを供給するシート供給部1と、シートSに画像を形成する画像形成部2と、画像形成部2にシートSを搬送する搬送部3と、シートSを乾燥させる乾燥部4と、画像が形成されたシートSを回収するシート回収部5を備えている。また、本実施形態に係る画像形成装置100は、シート供給部1、画像形成部2、搬送部3、乾燥部4、シート回収部5を制御するための制御部6(図2参照)を備えている。
【0012】
シート供給部1は、長尺のシートSがロール状に巻回された供給ローラ11と、シートSに付与される張力を調整する張力調整機構12を有している。供給ローラ11は、図1に示される矢印方向に回転可能に構成されており、供給ローラ11が回転することにより、シートSが繰り出される。張力調整機構12は、シートSを掛け渡して張力を付与する複数のローラを有している。これらのローラのうちの一部のローラが移動することにより、シートSの張力が調整され、シートSが供給ローラ11から一定の張力で繰り出される。
【0013】
画像形成部2は、シートSに対して液体のインクを吐出する液体吐出ユニットであるヘッドユニット13と、搬送されるシートSを支持するシート支持部材としてのプラテン14を有している。ヘッドユニット13は、複数の液体吐出ヘッドを有している。制御部6によって生成された画像データに基づいて各液体吐出ヘッドからシートSにインクが吐出されることにより、シートS上に画像が形成される。ここで、インクは、色材と溶剤、溶剤に分散された結晶性樹脂粒子を含む液体であり、結晶性樹脂は、所定の融点以上に熱せられると相変化を起こし結晶状態から液体に融解する樹脂である。プラテン14は、ヘッドユニット13と対向するように配置されており、シート供給部1から供給されたシートSの下面を支持する。また、プラテン14は、ヘッドユニット13とシートSとの距離を一定に保てるように、ヘッドユニット13に対して接近離間可能に構成されている。
【0014】
搬送部3は、複数の搬送ローラ15を有している。各搬送ローラ15の間にシートSが掛け渡された状態で、各搬送ローラ15が回転することにより、シートSが画像形成部2へ搬送される。なお、搬送部3は、搬送ベルトなどの他の搬送手段を有するものであってもよい。
【0015】
乾燥部4は、シートS上のインクの乾燥を促進させるためにシートSを加熱する加熱ドラム16を有している。加熱ドラム16は、外周面にシートSが巻きつけられながら回転する円筒状の部材であり、内部にハロゲンヒータなどの加熱源が配置されている。また、シートSを加熱する加熱手段として、加熱ドラム16などの接触式の加熱手段以外に、シートSに温風を吹き付ける温風発生装置などの非接触式の加熱手段を用いることもできる。
【0016】
シート回収部5は、シートSを巻き取って回収する回収ローラ17と、シートSに付与される張力を調整する張力調整機構18を有している。回収ローラ17は、図1に示される矢印方向に回転可能に構成されており、回収ローラ17が回転することにより、シートSがロール状に巻き取られて回収される。張力調整機構18は、シート供給部1の張力調整機構12と同じように、複数のローラを有している。これらのローラのうちの一部のローラが移動することにより、シートSの張力が調整され、回収ローラ17によってシートSが一定の張力で巻き取られる。
【0017】
制御部6は、PC(Personal Computer)などの情報処理装置によって構成される。制御部6は、シートSに形成される画像データを生成するほか、シート供給部1、画像形成部2、搬送部3、乾燥部4、シート回収部5の各種動作を制御する。例えば、制御部6は、供給ローラ11、回収ローラ17及び各搬送ローラ15の回転速度のほか、加熱ドラム16を加熱する加熱源の温度などを制御する。
【0018】
図3は、本実施形態に係るヘッドユニット13の概略構成図である。
【0019】
図3に示されるように、ヘッドユニット13は、液体を吐出する機能を有するヘッドモジュール20と、ヘッドモジュール20に対する液体の循環を行う液体循環装置30を備えている。
【0020】
ヘッドモジュール20は、2つの液体吐出ヘッド21A,21Bを有するサブモジュール22と、各液体吐出ヘッド21A,21Bへ液体を分配供給するマニホールド23とを備えている。なお、サブモジュール22が有する液体吐出ヘッド21の数は、3つ以上であってもよい。
【0021】
各液体吐出ヘッド21A,21Bは、液体を吐出する複数のノズルを有している。複数のノズルは、シート搬送方向とは直交する方向に配列されてノズル列を構成し、このノズル列が、例えばシート搬送方向に2列配置されている。
【0022】
マニホールド23は、液体を貯留する貯留部としての2つのタンク24,25を有している。2つのタンク24,25のうち、一方のタンク24は、各液体吐出ヘッド21A,21Bへ供給される液体を貯留する供給タンクであり、他方のタンク25は、各液体吐出ヘッド21A,21Bから回収された液体を貯留する回収タンクである。
【0023】
供給タンク24には、液体循環装置30から供給される液体を供給タンク24内へ導入するための1つの共通供給路40と、供給タンク24から各液体吐出ヘッド21A,21Bへ液体を供給するための2つの個別供給路41A,41Bとが設けられている。一方、回収タンク25には、各液体吐出ヘッド21A,21Bから回収タンク25へ液体を回収するための2つの個別回収路42A,42Bと、回収タンク25から液体循環装置30へ液体を送るための共通回収路43とが設けられている。
【0024】
また、供給タンク24と回収タンク25には、各タンク24,25内の液体を加熱する加熱部材としてのヒータ26が設けられている。各ヒータ26は、供給タンク24及び回収タンク25の外面に接触するように設けられ、各タンク24,25を介して内部の液体を加熱する。
【0025】
液体循環装置30は、例えば、正圧生成手段としてのコンプレッサと、負圧生成手段としての真空ポンプを有している。各液体吐出ヘッド21A,21Bに対して液体を循環させるときは、コンプレッサによって供給タンク24側を加圧し、真空ポンプによって回収タンク25側を減圧して、各タンク24,25間において内圧差を生じさせる。これにより、液体循環装置30から供給タンク24を介して各液体吐出ヘッド21A,21Bへ液体が供給され、各液体吐出ヘッド21A,21Bから回収タンク25を介して液体循環装置30へ液体が回収されて、液体が循環する。
【0026】
ここで、図13を参照しつつ、本発明とは異なる比較例の構成について説明する。
【0027】
図13に示される比較例においては、上記本発明の実施形態と同じように、ヘッドモジュール200が、2つの液体吐出ヘッド210A,210Bと、各液体吐出ヘッド210A,210Bへ供給される液体を貯留する供給タンク240と、各液体吐出ヘッド210A,210Bから回収された液体を貯留する回収タンク250と、各タンク240,250内の液体を加熱するヒータ260とを備えている。また、供給タンク240には、液体循環装置に対して接続される1つの共通供給路400と、各液体吐出ヘッド210A,210Bに対して接続される2つの個別供給路410A,410Bが設けられている。一方、回収タンク250には、各液体吐出ヘッド210A,210Bに対して接続される2つの個別回収路420A,420Bと、液体循環装置に対して接続される1つの共通回収路430とが設けられている。
【0028】
比較例に係るヘッドモジュール200において、供給タンク240内に導入された液体は、ヒータ260によって加熱され、各個別供給路410A,410Bを介して各液体吐出ヘッド210A,210Bへ供給される。このとき、各液体吐出ヘッド210A,210Bへ供給される液体の温度は、液体が供給タンク240内に供給されてから供給タンク240から排出されるまでの時間に依存する。すなわち、液体が供給タンク240内に導入されてから排出されるまでの時間が長いと、液体がヒータ260によって加熱される時間が長くなるため、液体の温度が高くなる。
【0029】
斯かる点に関し、比較例においては、共通供給路400との接続箇所である供給タンク240の入口部500から各個別供給路410A,410Bとの接続箇所である供給タンク240の各出口部510A,510Bまでの距離L1,L2が異なっているため、一方の個別供給路410Aを介して供給される液体と、他方の個別供給路410Bを介して供給される液体とでは、加熱時間が異なり、温度のばらつきが発生する。図13に示される例においては、右側の出口部510Aが入口部500の直下又はその近傍に配置されるのに対し、左側の出口部510Bが入口部500の直下から離れた位置に配置されているため、左側の出口部510Bと入口部500との間の距離L2が、右側の出口部510Aと入口部500との間の距離L1よりも長くなっている。このため、左側の出口部510Bを介して供給される液体の温度は、右側の出口部510Aを介して供給される液体の温度に比べて高くなる傾向にある。
【0030】
このように、比較例においては、入口部500から各出口部510A,510Bまでの液体の経路長が異なっているため、各液体吐出ヘッド210A,210Bへ供給される液体の温度にばらつきが生じる問題がある。また、各液体吐出ヘッド210A,210Bへ供給される液体の温度にばらつきが生じると、吐出される液体の粘度などにもばらつきが生じ、液体の濃度ムラのほか、液体着弾位置のずれなどの不具合が生じる虞がある。
【0031】
上記のような問題に対し、例えば、図13において、共通供給路400を供給タンク240の上部中央に接続すれば、入口部500から各出口部510A,510Bまでの距離が均等になるので、各液体吐出ヘッド210A,210Bへの供給液体の温度のばらつきを抑制できる。しかしながら、共通供給路400を供給タンク240の上部中央に接続すると、コネクタ600(図13参照)などの部品を供給タンク240の上部に配置できなくなるため、部品レイアウトを変更しなければならなくなる。
【0032】
また、別の方法として、供給タンク240の出口部を1つに集約し、1つの出口部から各液体吐出ヘッド210A,210Bへ供給路を分岐させる方法もある。しかしながら、この場合は、一方の液体吐出ヘッド210Aにおいて液体が吐出された際の液圧の変動が、分岐する供給路を介して他方の液体吐出ヘッド210B内の液体に伝播しやすくなるため、他方の液体吐出ヘッド210Bにおける液体吐出動作に悪影響を及ぼす虞がある。
【0033】
そこで、本発明においては、上記事情に鑑み、コネクタなどの部品配置の変更、及び液体吐出ヘッド間における液圧変動の伝播を回避しつつ、液体吐出ヘッドごとに供給される液体の温度のばらつきを抑制できるように、次のような構成を採用している。以下、本発明に係るヘッドモジュールの構成について説明する。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態に係るヘッドモジュールの構成を示す図である。
【0035】
図4に示されるように、本実施形態に係るヘッドモジュール20においては、供給タンク24内に、液体の流れの向きを変更する壁部材27が設けられている。壁部材27は、液体が透過しない板状の部材により構成されており、液体が共通供給路40から供給タンク24内へ導入されると、壁部材27によって液体の移動が制限され、液体の流れの向きが変更される。具体的に、本実施形態においては、導入された液体の移動が、壁部材27によって制限され、液体が、共通供給路40の直下(液体導入方向)ではなく、直下方向(液体導入方向)とは交差する方向(図中の矢印F1方向)へ移動する。
【0036】
ここで、本実施形態においては、上記比較例と同じように、共通供給路40との接続箇所である供給タンク24の入口部50から各個別供給路41A,41Bとの接続箇所である供給タンク24の各出口部51A,51Bまでの距離L1,L2が異なっている。なお、ここでいう距離L1,L2は、壁部材27が無い状態における入口部50から各出口部51A,51Bまでの距離を意味する。具体的に、本実施形態に係るヘッドモジュール20においては、上記比較例と同じように、図の右側に配置される第1の出口部51Aが入口部50の直下又はその近傍に配置されるのに対し、図の左側に配置される第2の出口部51Bが入口部50の直下から離れた位置に配置されているため、第2の出口部51Bと入口部50との間の距離L2が、第1の出口部51Aと入口部50との間の距離L1よりも長くなっている。
【0037】
このように、本実施形態においては、入口部50から各出口部51A,51Bまでの距離が異なるが、入口部50までの距離が短い方の第1の出口部51Aと入口部50との間には、液体の流れの向きを変更する上記壁部材27が介在している。このため、液体は、入口部50から第1の出口部51Aへ向かって直線的に移動せず、図中の矢印F1にて示されるように、壁部材27を迂回して移動することになる。すなわち、壁部材27があることにより、入口部50から第1の出口部51Aまでの液体の移動距離が長くなるため、入口部50から各出口部51A,51Bまでの液体の経路長(F1及びF2を通る経路長とF1及びF3を通る経路長)の差を小さくすることができる。
【0038】
これにより、第1の出口部51Aから一方の液体吐出ヘッド21Aへ送り出される液体と、第2の出口部51Bから他方の液体吐出ヘッド21Bへ送り出される液体との間に温度差が生じにくくなるので、各液体吐出ヘッド21A,21Bから吐出される液体の濃度ムラ及び液体着弾位置のずれなどの不具合を防止できるようになる。なお、図中の矢印F1,F2,F3によって示される液体の経路は、主に液体が通る経路の一例を示すものであり、必ずしも全ての液体がこの経路を通って移動するわけではない。このことは、図4以外の図面においても同じである。
【0039】
また、本発明の実施形態によれば、供給タンク24内に壁部材27を配置するだけで液体温度のばらつきを抑制できるので、コネクタなどの部品配置の変更を強いられることもない。すなわち、本発明の実施形態によれば、共通供給路40(入口部50)を供給タンク24の上部中央に配置しなくてもよいので、図4に示されるように、共通供給路40(入口部50)を供給タンク24の上部中央から離れた角部に配置でき、液体吐出ヘッドに電気信号を送るためのコネクタ60を供給タンク24の上部中央に配置できる。なお、上記「供給タンク24の中央」とは、供給タンク24を液体導入方向(図4における上方)から見た場合の供給タンク24の中央を意味する。また、以下の説明における「供給タンク24の中央」も同じ意味である。
【0040】
壁部材27は、入口部50と第1の出口部51Aとの間に存在するが、壁部材27は、入口部50から見て、供給タンク24の中央を超えない領域に設けられることが好ましい。壁部材27が、入口部50から見て、供給タンク24の中央を超えない領域に設けられることにより、入口部50から各出口部51A,51Bまでの液体の経路長の差をより確実に小さくすることができる。
【0041】
また、本発明の実施形態によれば、供給タンク24の出口部を1つに集約し、1つの出口部から供給路を分岐させなくてもよいので、液体吐出ヘッド21A,21B間における液圧変動の伝播を抑制できる。すなわち、本発明の実施形態によれば、図4に示されるように、供給タンク24に2つの出口部51A,51Bを設け、各出口部51A,51Bから個別供給路41A,41Bを介して各液体吐出ヘッド21A,21Bへ液体を供給することができる。このため、一方の液体吐出ヘッド21Aから液体を吐出した際に液圧の変動が生じたとしても、その変動が供給タンク24内の液体により吸収され、液圧の変動が他方の液体吐出ヘッド21B内の液体に伝播するのが抑制される。これにより、安定した液体吐出動作の維持が可能となる。
【0042】
また、図4に示される実施形態においては、壁部材27がヒータ26よりも上方(入口部50側)に配置されているので、液体がヒータ26による加熱領域に至る前に、壁部材27によって液体の流れの向きを変えて液体を加熱領域に案内することができる。特に、本実施形態においては、液体が壁部材27によって供給タンク24の中央まで案内されてから、液体が加熱領域に至るので、供給タンク24の下部両端側にある各出口部51A,51Bまでの液体の加熱時間を同等にすることができる。このため、各液体吐出ヘッド21A,21Bへ供給される液体の温度のばらつきをより効果的に抑制できる。
【0043】
続いて、上記実施形態(第1実施形態)とは異なる他の実施形態について説明する。以下、主に上記実施形態とは異なる部分について説明し、同じ部分については適宜説明を省略する。
【0044】
図5は、本発明の第2実施形態に係るヘッドモジュール20の構成を示す図である。
【0045】
図5に示される第2実施形態においては、上記第1実施形態(図4)と比べて、壁部材27の位置が異なっている。それ以外は基本的に同じ構成である。具体的に、第2実施形態においては、壁部材27が、ヒータ26よりも上方(入口部50側)ではなく、ヒータ26よりも下方(第1の出口部51A側)に配置されている。この場合、入口部50から第1の出口部51Aへ送られる液体は、例えば、図中の矢印F1及び矢印F2にて示される経路を通って移動する。一方、入口部50から第2の出口部51Bへ送られる液体は、例えば、図中の矢印F1及び矢印F3にて示される経路を通って移動する。
【0046】
本実施形態においても、入口部50と第1の出口部51Aとの間に壁部材27が配置されているため、入口部50から第1の出口部51Aまでの液体の直線的な移動が壁部材27によって制限され、液体が壁部材27を迂回して移動することになる。これにより、本実施形態においても、入口部50から第1の出口部51Aまでの液体の移動距離が長くなるため、入口部50から各出口部51A,51Bまでの液体の経路長(F1及びF2を通る経路長とF1及びF3を通る経路長)の差を小さくすることができる。従って、各液体吐出ヘッド21A,21Bへ供給される液体の温度のばらつきを抑制できるようになる。また、本実施形態においても、コネクタなどの部品配置の変更、及び液体吐出ヘッド間における液圧変動の伝播を回避することできるので、大幅な設計変更を伴うことなく液体吐出制度の良いヘッドモジュールを提供できる。
【0047】
上記のように、壁部材27の位置は、ヒータ26よりも上方である場合のほか、ヒータ26よりも下方であってもよい。また、壁部材27は、ヒータ26が配置される位置にあってもよい。なお、壁部材27は、入口部50からの液体の導入と、第1の出口部51Aへの液体の流入を妨げないように、入口部50と第1の出口部51Aに対して所定の間隔をあけて配置される必要がある。
【0048】
図6は、本発明の第3実施形態に係るヘッドモジュール20の構成を示す図である。
【0049】
図6に示される第3実施形態においては、供給タンク24内に2つの壁部材27A,27Bが設けられている。それ以外は、上記第1実施形態(図4)と同じ構成である。2つの壁部材27A,27Bのうち、一方の壁部材である第1の壁部材27Aは、上記第1実施形態における壁部材27と同じように、入口部50と第1の出口部51Aとの間に配置されている。これに対し、第1の壁部材27Aとは別の他方の壁部材である第2の壁部材27Bは、供給タンク24の中央を挟んで第1の壁部材27Aとは反対側に離れて配置されている。
【0050】
この場合、入口部50から導入された液体は、第1の壁部材27Aと第2の壁部材27Bとの間を通って、ヒータ26による加熱領域へ案内される。特に、本実施形態においては、第1の壁部材27Aと第2の壁部材27Bとが、ヒータ26よりも上方(入口部50側)の同一面上(同じ高さ)で、かつ、供給タンク24の中央を基準に対称に配置されているため、液体は図6中の矢印F1に示されるように各壁部材27A,27Bの間を通って加熱領域の中央位置に案内された後、矢印F2及び矢印F3に示される経路を通って各出口部51A,51Bへ分かれて移動する。これにより、入口部50から各出口部51A,51Bまでの液体の加熱時間をほぼ同等にすることができるため、各液体吐出ヘッド21A,21Bへ供給される液体の温度のばらつきをより確実に抑制できるようになる。なお、2つの壁部材27A,27Bの配置は、同一面上(同じ高さ)である場合に限らず、多少ずれて配置されてもよい。また、本実施形態においても、コネクタなどの部品配置の変更、及び液体吐出ヘッド間における液圧変動の伝播を回避することできるので、大幅な設計変更を伴うことなく液体吐出制度の良いヘッドモジュールを提供できる。
【0051】
図7は、本発明の第4実施形態に係るヘッドモジュール20の構成を示す図である。
【0052】
図7に示される第4実施形態においては、2つの壁部材27A,27Bが、ヒータ26よりも下方(第1の出口部51A側)に配置されている。また、2つの壁部材27A,27Bは、タンク24の中央を挟んで互いに反対側に配置されている。すなわち、本実施形態は、上記第3実施形態(図6)と比べて、2つの壁部材27A,27Bの配置がヒータ26よりも下方(第1の出口部51A側)に配置されている点において異なっている。それ以外は、第3実施形態と同じ構成である。
【0053】
この場合、入口部50から導入された液体は、図7中の矢印F1にて示されるようにヒータ26による加熱領域を通過したのち、2つの壁部材27A,27Bの間から矢印F2及び矢印F3に示される経路を通って各出口部51A,51Bへ移動する。また、 本実施形態においては、2つの壁部材27A,27Bが、ヒータ26よりも下方(第1の出口部51A側)の同一面上(同じ高さ)で、かつ、供給タンク24の中央を基準に対称に配置されているため、加熱された液体が供給タンク24の中央から各出口部51A,51Bへ供給される。これにより、同程度に加熱された液体が各液体吐出ヘッド21A,21Bへ供給されるため、各液体吐出ヘッド21A,21Bにおける液体の温度のばらつきをより確実に抑制できるようになる。なお、2つの壁部材27A,27Bの配置は、同一面上(同じ高さ)である場合に限らず、多少ずれて配置されてもよい。また、本実施形態においても、コネクタなどの部品配置の変更、及び液体吐出ヘッド間における液圧変動の伝播を回避することできるので、大幅な設計変更を伴うことなく液体吐出制度の良いヘッドモジュールを提供できる。
【0054】
図8は、本発明の第5実施形態に係るヘッドモジュール20の構成を示す図である。
【0055】
図8に示される第5実施形態においては、供給タンク24の上面の一部が下方へ凹むように形成されている。詳しくは、供給タンク24の上面のうち、供給タンク24の中央を挟んで壁部材27とは反対側の部分が下方(液体導入方向)へ凹んで凹部24aが形成されている。なお、本実施形態における壁部材27は、上記第1実施形態(図4)と同じように、入口部50と第1の出口部51Aとの間で、かつ、ヒータ26よりも上方の位置に設けられている。
【0056】
この場合、液体が入口部50から導入されると、液体は、壁部材27によって図8中の矢印F1方向へ案内され、壁部材27と凹部24aとの間を通って、ヒータ26による加熱領域へ案内される。そして、液体は、図8中の矢印F2及び矢印F3に示される経路を通って各出口部51A,51Bへ分かれて移動する。すなわち、凹部24aは、上記第3実施形態(図6)における第2の壁部材27Bと同じように、液体の流れを規制して、液体を供給タンク24の中央へ集める機能を果たす。これにより、本実施形態においても、入口部50から各出口部51A,51Bまでの液体の加熱時間をほぼ同等にすることができるため、各液体吐出ヘッド21A,21Bへ供給される液体の温度のばらつきを抑制できる。なお、凹部24aの底面(下面)は、上記第2の壁部材27Bと同じように、入口部50の直下に配置される壁部材27(第1の壁部材27A)と同一面上に配置されることが好ましいが、多少ずれて配置されてもよい。
【0057】
また、本実施形態においては、上記第3実施形態(図6)にあるような第2の壁部材27Bではなく、供給タンク24の上面を凹ませた凹部24aが設けられていることにより、供給タンク24の上部における液体の滞留を回避できるようになる。すなわち、上記第3実施形態(図6)においては、第2の壁部材27Bと供給タンク24の上部内面との間に空間(隙間)が存在しているため、この空間に液体が滞留する可能性があるが、図8に示される本実施形態においては、凹部24aの上方に空間が無いので、液体の滞留を回避できる。このため、本実施形態においては、供給タンク24内の液体が滞留することによる液体の増粘及び固着を防止できるようになる。
【0058】
また、本実施形態においても、上記各実施形態と同じように、コネクタなどの部品配置の変更、及び液体吐出ヘッド間における液圧変動の伝播を回避することできるので、大幅な設計変更を伴うことなく液体吐出制度の良いヘッドモジュールを提供できる。
【0059】
図9は、本発明の第6実施形態に係るヘッドモジュール20の構成を示す図である。
【0060】
図9に示される第6実施形態は、上記第5実施形態(図8)の構成において、壁部材27の上方(入口部50側)に別のヒータ26Bを追加した構成である。すなわち、本実施形態においては、壁部材27よりも下方(壁部材27と第1の出口部51Aとの間の領域)において液体を加熱する第1の加熱部材としてのメインヒータ26Aと、壁部材27よりも上方(入口部50と壁部材27との間の領域)において液体を加熱する第2の加熱部材としてのサブヒータ26Bとが設けられている。
【0061】
このように、壁部材27の上方にサブヒータ26Bが設けられていることにより、壁部材27の上面に沿って案内される液体も加熱することができる。すなわち、本実施形態のように、壁部材27がメインヒータ26Aよりも上方に配置される構成においては、メインヒータ26Aによる加熱効果が壁部材27よりも上方に流れる液体には及びにくいが、壁部材27の上方にサブヒータ26Bを設けることにより、液体を効果的に加熱できるようになる。なお、メインヒータ26Aとサブヒータ26Bは、別体である場合に限らず、一体であってもよい。また、このようなサブヒータ26Bは、図9に示されるような凹部24aを有する供給タンク24のほか、凹部24aを有しない供給タンク24(例えば、図4又は図6に示される供給タンク24)に設けられてもよい。
【0062】
図10は、本発明の第7実施形態に係るヘッドモジュール20の構成を示す図である。
【0063】
図10に示される第7実施形態においては、供給タンク24に加え、回収タンク25内にも壁部材27が設けられている。それ以外は、上記第1実施形態(図4)と同じ構成である。回収タンク25内に設けられている壁部材27は、共通回収路43との接続箇所である回収タンク25の出口部71の直下近傍に配置されている。
【0064】
ここで、回収タンク25においては、共通回収路43との接続箇所である1つの出口部71のほか、各個別回収路42A,42Bとの接続箇所である2つの入口部70A,70Bが設けられている。回収タンク25の各入口部70A,70Bから出口部71までの距離L3,L4は異なっており、出口部71の直下から離れた位置にある第1の入口部70Aと出口部71との間の距離L3が、出口部71の直下にある第2入口部70Bと出口部71との間の距離L4がよりも長くなっている。なお、ここでいう距離L3,L4は、壁部材27が無い状態における各入口部70A,70Bから出口部71までの距離を意味する。そして、壁部材27は、出口部71までの距離が短い方の第2の入口部70Bと出口部71との間に介在するように配置されている。
【0065】
このため、本実施形態においては、第2の入口部70Bから回収タンク25内に液体が導入されると、液体が、第2の入口部70Bから出口部71へ向かって直線的に移動せず、図10中の矢印F5及び矢印F6にて示されるように、壁部材27を迂回して移動することになる。これにより、第2の入口部70Bから出口部71までの液体の経路長(F5及びF6を通る経路長)と、第1の入口部70Aから出口部71までの液体の経路長(F4及びF6を通る経路長)の差を小さくすることができる。
【0066】
このように、供給タンク24だけでなく、回収タンク25においても、距離が短い方の入口部と出口部との間に壁部材27を設けることにより、回収タンク25を供給タンクとして使用することができるようになる。例えば、図10に示される液体の循環方向とは反対に、共通回収路43側から回収タンク25内へ液体を導入したとしても、導入された液体が壁部材27を迂回して移動することにより、液体の加熱時間が長くなるため、各液体吐出ヘッド21A,21Bへ供給される液体の温度のばらつきを抑制することができる。
【0067】
このように、本実施形態の構成によれば、液体の循環方向を逆にしても同じような効果が得られるので、装置レイアウトあるいは設計などに応じて、ヘッドモジュール20内の液体の循環方向を変更することができ、汎用性が向上する。
【0068】
上記各実施形態においては、本発明を、液体吐出ヘッドから回収された液体を再び液体吐出ヘッドへ供給する循環式のヘッドモジュールに適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明は、循環式のヘッドモジュールに限らず、液体吐出ヘッドから液体を回収しない非循環式のヘッドモジュールにも適用可能である。
【0069】
例えば、本発明を、図11に示されるような2つの供給タンク24を備える非循環式のヘッドモジュール20に適用することも可能である。図11に示される例においては、各供給タンク24に対して、ヒータ26が設けられると共に、1つの共通供給路40及び2つの個別供給路41A,41Bが接続されており、各供給タンク24において、共通供給路40との接続箇所である入口部50の直下近傍に、液体の流れの向きを変更する壁部材27が配置されている。すなわち、この例においても、上記各実施形態と同じように、入口部50までの距離が短い方の第1の出口部51Aと入口部50との間に、壁部材27を介在させている。
【0070】
従って、各供給タンク24内に液体が導入されると、図11中の矢印F1及び矢印F2にて示されるように、液体が壁部材27を迂回して移動する。これにより、各供給タンク24内における入口部50から各出口部51A,51Bまでの液体の経路長(F1及びF2を通る経路長とF1及びF3を通る経路長)の差を小さくすることができる。
【0071】
このように、非循環式のヘッドモジュール20においても、本発明を適用することにより、供給タンク24の入口部50から各出口部51A,51Bまでの液体の経路長差を小さくすることができるので、ヒータ26によって液体が加熱される時間のばらつきを低減でき、各液体吐出ヘッド21A,21Bへ供給される液体の温度のばらつきを抑制できるようになる。また、本発明を適用することにより、コネクタなどの部品配置の変更、及び液体吐出ヘッド間における液圧変動の伝播を回避することできるので、大幅な設計変更を伴うことなく液体吐出制度の良い非循環式のヘッドモジュールを提供できるようになる。
【0072】
また、図12に示されるような1つの供給タンク24を備える非循環式のヘッドモジュール20に対しても本発明を適用可能である。この場合も、上記と同じ機能を有する壁部材27が供給タンク24内に配置されていることにより、各液体吐出ヘッド21A,21Bへ供給される液体の温度のばらつきを抑制することができる。また、この場合も、コネクタなどの部品配置の変更、及び液体吐出ヘッド間における液圧変動の伝播を回避可能である。
【0073】
なお、上記図11図12に示される非循環式の例においては、供給タンク24、壁部材27及びヒータ26の構成として、上記第1実施形態(図4)の構成を適用しているが、図5図9に示されるその他の各実施形態の構成を適用してもよい。
【0074】
また、本発明は、液体吐出装置の一例であるインクジェット式の画像形成装置に搭載されるヘッドモジュールに限らず、その他の液体吐出装置に搭載されるヘッドモジュールにも適用可能である。
【0075】
本発明において、「液体吐出装置」とは、液体吐出部を備え、液体吐出部を駆動させて、シートなどの対象物に液体を吐出する装置を意味し、「液体吐出装置」には、対象物の給送、搬送、排出に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含まれる。
【0076】
また、本発明に係る「液体吐出装置」は、シートに対して液体吐出部が相対的に移動するものであってもよいし、液体吐出部が相対的に移動しないものであってもよい。具体例としては、「液体吐出装置」として、液体吐出ヘッド(液体吐出部)を移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッド(液体吐出部)を移動させないライン型装置などがある。
【0077】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像を可視化するものに限らない。例えば、「液体吐出装置」には、それ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するもの、さらにはシートの表面を改質するなどの目的でシートの表面に処理液を吐出する処理液吐出装置なども含まれる。
【0078】
上記「シート」は、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどが含まれる。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板がある。また、「シート」は、上記のような長尺の連続紙(ロール紙)に限らず、シート搬送方向に所定のサイズに裁断された用紙(カット紙)であってもよい。
【0079】
「シート」の材質としては、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0080】
また、本発明に係る「液体吐出装置」によって吐出される「液体」は、液体吐出部から吐出可能な粘度又は表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒などの溶媒、染料、顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子、発光素子の構成要素、電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液、食品用インクなどの用途で用いることができる。
【0081】
<電極の製造装置>
また、本発明に係る「液体吐出装置」には、電極及び電気化学素子の製造装置も含まれる。以下、電極の製造装置について説明する。
【0082】
図14は、本発明の実施形態に係る電極の製造装置の一例を示す模式図である。電極の製造装置は、液体吐出ヘッドを含むヘッドモジュールを用いて液体組成物を吐出することにより電極材料を有する層を含む電極を製造する装置である。
【0083】
<電極材料を含む層の形成手段、電極材料を含む層の形成工程>
図14に示される電極の製造装置が備える吐出手段は、上記本発明の実施形態に係るヘッドモジュールである。ヘッドモジュールが有する吐出ヘッドから液体組成物が吐出されることにより、対象物上に液体組成物が付与され、液体組成物層が形成される。対象物(以下、「吐出対象物」と称することがある。)としては、電極材料を含む層が形成される対象であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、対象物として、電極基体(集電体)、活物質層、固体電極材料を含む層などが挙げられる。また、対象物は、電極基体(集電体)上に活物質を含む電極合材層であってもよい。また、吐出手段及び吐出工程は、吐出対象物に対して電極材料を有する層を形成することが可能であれば、液体組成物を直接的に吐出することにより電極材料を有する層を形成する手段及び工程であってもよい。また、吐出手段及び吐出工程は、液体組成物を間接的に吐出することにより電極材料を有する層を形成する手段及び工程であってもよい。
【0084】
<その他の構成、その他の工程>
電極合材層の製造装置に含まれるその他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、電極合材層の製造方法に含まれるその他の工程も、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、電極合材層の製造装置及び製造方法に含まれる構成及び工程として、加熱手段及び加熱工程などが挙げられる。
【0085】
<加熱手段、加熱工程>
電極合材層の製造装置に含まれる加熱手段は、吐出手段により吐出された液体組成物を加熱する手段である。また、電極合材層の製造方法に含まれる加熱工程は、吐出工程において吐出された液体組成物を加熱する工程である。液体組成物を加熱することにより、液体組成物層を乾燥させることができる。
【0086】
<液体組成物の直接吐出によって電極材料を含む層を形成する構成>
ここで、電極の製造装置の一例として、電極基体(集電体)上に活物質を含む電極合材層を形成する電極の製造装置を説明する。図14に示されるように、電極の製造装置は、吐出対象物を有する印刷基材704上に液体組成物を付与して液体組成物層を形成する工程を含む吐出工程部110と、液体組成物層を加熱して電極合材層を得る加熱工程を含む加熱工程部130を備える。
【0087】
電極の製造装置は、印刷基材704を搬送する搬送部705を備える。搬送部705は、吐出工程部110、加熱工程部130の順に印刷基材704をあらかじめ設定された速度で搬送する。活物質層などの吐出対象物を有する印刷基材704の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。吐出工程部110は、印刷基材704上に液体組成物を付与する付与工程を実現する液体吐出ヘッド281aと、液体組成物707を収容する収容容器281bと、収容容器281bに収容される液体組成物707を液体吐出ヘッド281aに供給する供給チューブ281cを備える。
【0088】
吐出工程部110においては、液体吐出ヘッド281aから液体組成物707が吐出され、印刷基材704上に液体組成物707が付与されて、液体組成物層が薄膜状に形成される。なお、収容容器281bは、電極合材層の製造装置と一体化した構成であってもよいし、電極合材層の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、収容容器281bは、電極合材層の製造装置と一体化した収容容器、又は、電極合材層の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0089】
収容容器281b及び供給チューブ281cは、液体組成物707を安定して収容及び供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0090】
加熱工程部130においては、液体組成物層に残存する溶媒を加熱して除去する溶媒除去工程が行われる。詳しくは、液体組成物層に残存する溶媒が、加熱工程部130の加熱装置703によって加熱されて乾燥することにより、液体組成物層から溶媒が除去される。これにより、電極合材層が形成される。また、加熱工程部130における溶媒除去工程は、減圧下で行われてもよい。
【0091】
加熱装置703としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、加熱装置703として、基板加熱、IRヒータ、温風ヒータなどが挙げられる。また、加熱装置703は、基板加熱、IRヒータ、温風ヒータの少なくとも2つを組み合わせたものであってもよい。また、加熱温度及び加熱時間に関しては、液体組成物707に含まれる溶媒の沸点又は形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0092】
本発明の実施形態に係る電極の製造装置を用いることにより、吐出対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。電極合材層は、例えば、電気化学素子の構成の一部として、好適に用いることができる。電気化学素子における電極合材層以外の構成としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができる。例えば、電極合材層以外の構成として、正極、負極、セパレータなどが挙げられる。
【0093】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の構成を備えるヘッドモジュール、画像形成装置、液体吐出装置が含まれる。
【0094】
[第1の構成]
第1の構成は、液体を吐出する少なくとも2つの液体吐出ヘッドと、前記液体を貯留する貯留部と、前記貯留部内の前記液体を加熱する加熱部材と、前記貯留部へ前記液体を導入する入口部と、前記貯留部内の前記液体を1つの前記液体吐出ヘッドへ送り出す第1の出口部と、前記貯留部内の前記液体を別の1つの前記液体吐出ヘッドへ送り出す第2の出口部とを備え、前記入口部と前記第1の出口部との間の距離が、前記入口部と前記第2の出口部との間の距離よりも短いヘッドモジュールであって、前記入口部と前記第1の出口部との間に壁部材が介在するヘッドモジュールである。
【0095】
[第2の構成]
第2の構成は、前記第1の構成において、前記壁部材は、前記加熱部材よりも入口部側に配置されるヘッドモジュールである。
【0096】
[第3の構成]
第3の構成は、前記第1の構成において、前記壁部材は、前記加熱部材よりも第1の出口部側に配置されるヘッドモジュールである。
【0097】
[第4の構成]
第4の構成は、前記第1から第3のいずれか1つの構成において、前記壁部材は、前記入口部と前記第1の出口部との間に配置される第1の壁部材のほか、前記第1の壁部材に対して離れて配置される第2の壁部材を有し、前記第1の壁部材と前記第2の壁部材は、液体導入方向から見て、前記貯留部の中央を挟んで両側に配置されるヘッドモジュールである。
【0098】
[第5の構成]
第5の構成は、前記第1から第3のいずれか1つの構成において、前記貯留部は、液体導入方向から見て、前記貯留部の中央を挟んで前記壁部材とは反対側において前記液体導入方向へ凹む凹部を有するヘッドモジュールである。
【0099】
[第6の構成]
第6の構成は、前記第1から第5のいずれか1つの構成において、前記加熱部材は、前記壁部材と前記第1の出口部との間の領域において前記液体を加熱する第1の加熱部材と、前記入口部と前記壁部材との間の領域において前記液体を加熱する第2の加熱部材とを有するヘッドモジュールである。
【0100】
[第7の構成]
第7の構成は、前記第1から第6のいずれか1つの構成において、前記液体吐出ヘッドから回収された前記液体を再び前記液体吐出ヘッドへ供給する循環式のヘッドモジュールである。
【0101】
[第8の構成]
第8の構成は、前記第1から第6のいずれか1つの構成において、前記液体吐出ヘッドから前記液体を回収しない非循環式のヘッドモジュールである。
【0102】
[第9の構成]
第9の構成は、前記第1から第8のいずれか1つの構成のヘッドモジュールを備える画像形成装置である。
【0103】
[第10の構成]
第10の構成は、前記第1から第8のいずれか1つの構成のヘッドモジュールを備える液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0104】
20 ヘッドモジュール
21A,21B 液体吐出ヘッド
24 供給タンク(貯留部)
24a 凹部
26 ヒータ(加熱部材)
26A メインヒータ(第1の加熱部材)
26B サブヒータ(第2の加熱部材)
27 壁部材
27A 第1の壁部材
27B 第2の壁部材
50 入口部
51A 第1の出口部
51B 第2の出口部
100 画像形成装置(液体吐出装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】特開2020-179534号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14