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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078403
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】パルスバルブ及び塗布装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240603BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240603BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240603BHJP
   B05B 7/26 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
B05C5/00 101
B05C11/10
B05B7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170614
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022190254
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西村 秀明
(72)【発明者】
【氏名】篠原 悟史
【テーマコード(参考)】
3H062
4F033
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA12
3H062BB33
3H062CC05
3H062FF38
3H062FF41
3H062HH02
4F033QA01
4F033QB02X
4F033QB03X
4F033QB18
4F033QD02
4F033QD11
4F033QF02X
4F033QF03X
4F033QF08
4F033QG32
4F033QG38
4F033QK18X
4F033QK19X
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA10
4F041BA12
4F041BA17
4F041BA32
4F041BA36
4F041BA42
4F041BA46
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA19
4F042CA01
4F042CA06
4F042CB02
4F042CB26
4F042CB27
(57)【要約】
【課題】耐圧性の高いパルスバルブの提供を目的とする。
【解決手段】開示の一態様に係るパルスバルブは、圧縮流体を含む流体が流れる流路を有するハウジング部と、前記流路を流れる前記流体を吐出するノズル部と、を有し、前記ハウジング部は、前記流路に向けて窪んだ孔部を有し、前記ノズル部は、ノズル孔を有する一端側と、前記流路に連通する他端側とを有するノズル管部と、前記ノズル管部の外周部に設けられ、前記孔部に嵌め込まれた前記ノズル部を前記ハウジング部に固定する接続フェラルと、を有し、前記ノズル部は、前記孔部に嵌め込まれる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮流体を含む流体が流れる流路を有するハウジング部と、
前記流路を流れる前記流体を吐出するノズル部と、
を有し、
前記ハウジング部は、前記流路に向けて窪んだ孔部を有し、
前記ノズル部は、
ノズル孔を有する一端側と、前記流路に連通する他端側とを有するノズル管部と、
前記ノズル管部の外周部に設けられ、前記孔部に嵌め込まれた前記ノズル部を前記ハウジング部に固定する接続フェラルと、を有し、
前記ノズル部は、前記孔部に嵌め込まれる、パルスバルブ。
【請求項2】
前記ノズル管部は、
前記流路に連通する第1管部と、
前記第1管部の外側に設けられ、前記ノズル孔を有する第2管部と、
を有する二重管構造を備える、請求項1に記載のパルスバルブ。
【請求項3】
前記ノズル孔の直径は、5μm以上500μm以下である、請求項1又は請求項2に記載のパルスバルブ。
【請求項4】
前記ハウジング部に挿入され、前記流路を開閉するニードルと、
前記ニードルを進退移動させる駆動機構と、
を有し、
前記駆動機構は、
前記ニードルと接続するエクステンションバーと、
前記エクステンションバーを進退移動させるアクチュエータと、
を有し、
前記エクステンションバーは、インバー材から構成される、請求項1又は請求項2に記載のパルスバルブ。
【請求項5】
前記アクチュエータは、圧電アクチュエータである、請求項4に記載のパルスバルブ。
【請求項6】
前記圧電アクチュエータは、リングアクチュエータである、請求項5に記載のパルスバルブ。
【請求項7】
前記ハウジング部と前記駆動機構との間に配置される断熱フランジを有する、請求項4に記載のパルスバルブ。
【請求項8】
前記流路は、前記ニードルの外周壁の周方向に沿って配置される複数の分割経路を有し、
前記複数の分割経路のうち、隣り合う前記分割経路の境界壁が、前記ニードルの前記外周壁に接触することで、前記ニードルの位置をガイドする、請求項4に記載のパルスバルブ。
【請求項9】
前記ノズル管部の内面、及び前記ノズル部における前記ノズル孔の周辺に、ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜が形成されている、請求項1又は請求項2に記載のパルスバルブ。
【請求項10】
前記流路と前記ノズル管部との間に設けられ、前記ノズル管部に連通する孔を有するオリフィスを有し、
前記オリフィスは、ビッカーズ硬さ700Hv以上、耐熱衝撃温度差100℃以上、及び平均線膨張係数11×10-6/K以下のセラミックスである、請求項1又は請求項2に記載のパルスバルブ。
【請求項11】
前記エクステンションバーに連結される付勢手段と、
前記エクステンションバーを移動させて、前記付勢手段の伸縮量を調整する調整手段と、
前記付勢手段の伸縮量に応じた反力、及び前記反力を受けて変形する部材の変形量の少なくとも1つを計測する計測部と、
前記計測部による計測結果を出力する出力部と、
をさらに備える、請求項4に記載のパルスバルブ。
【請求項12】
圧縮流体と樹脂との混合物を生成する高圧容器と、
前記高圧容器から供給される前記混合物を吐出する請求項1又は請求項2に記載されるパルスバルブと、
を有する塗布装置。
【請求項13】
前記高圧容器は、
前記混合物を撹拌する撹拌機構と、
前記混合物を撹拌する際の撹拌機構のトルクを計測するトルクメータと、
を有する、請求項12に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パルスバルブ及び塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料の乾燥過程においてVOC(Volatile Organic Compounds)を超臨界二酸化炭素等の超臨界流体に替える塗料の塗布技術が知られている。
【0003】
また、超臨界流体を気体状に吐出させるパルスバルブが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超臨界流体を吐出させるパルスバルブには、超臨界流体の高圧状態を維持するための耐圧性が求められる。
【0005】
開示の技術は、耐圧性の高いパルスバルブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一態様に係るパルスバルブは、圧縮流体を含む流体が流れる流路を有するハウジング部と、前記流路を流れる前記流体を吐出するノズル部と、を有し、前記ハウジング部は、前記流路に向けて窪んだ孔部を有し、前記ノズル部は、ノズル孔を有する一端側と、前記流路に連通する他端側とを有するノズル管部と、前記ノズル管部の外周部に設けられ、前記孔部に嵌め込まれた前記ノズル部を前記ハウジング部に固定する接続フェラルと、を有し、前記ノズル部は、前記孔部に嵌め込まれる。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、パルスバルブの耐圧性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る塗布装置の全体構成の一例を示す模式図である。
図2】第1実施形態のパルスバルブの構成例を示す模式的な断面図である。
図3】第1実施形態のパルスバルブの構成例を示す一部断面図である。
図4】第2実施形態のパルスバルブの構成例を示す模式的な断面図である。
図5】第2実施形態のパルスバルブのA-A断面図である。
図6】第3実施形態に係るパルスバルブの構成例を示す模式的な断面図である。
図7】第3実施形態の変形例1に係るパルスバルブの構成例を示す模式的な断面図である。
図8】第3実施形態の変形例2に係るパルスバルブの構成例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[第1実施形態]
図1を参照して、第1実施形態に係る塗布装置1を説明する。
【0011】
<塗布装置1の全体構成例>
図1は、第1実施形態に係る塗布装置1の全体構成の一例を示す模式図である。塗布装置1は、超臨界二酸化炭素を生成する生成部30と、生成部30で生成された超臨界二酸化炭素と樹脂とを混合し、双方の混合物を得るための高圧容器6と、高圧容器6から供給される混合物を基材12に吐出するパルスバルブ10と、高圧容器6とパルスバルブ10とを接続する配管41と、を有する。なお、超臨界二酸化炭素は、「圧縮流体」の一例である。「圧縮流体」は、超臨界流体と亜臨界流体を含む。以下、圧縮流体として、超臨界流体の超臨界二酸化炭素を例に説明するが、適用可能な圧縮流体は、これに限定されない。超臨界流体の他の例として、超臨界水、超臨界窒素等が挙げられる。これらの超臨界流体は、環境負荷が少なく、安価なため好ましい。また、超臨界二酸化炭素と樹脂との混合物を、単に「混合物」と言う場合がある。
【0012】
超臨界二酸化炭素と混合される樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂の例として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性フラン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂の例として、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル(PMMA)樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0013】
樹脂に染料、顔料を混合することにより有色の塗膜を形成してもよい。ただし、VOCの発生を避けるため、本実施形態における混合物は、有機溶媒を含まないことが好ましい。
【0014】
混合物が塗布される基材12の例として、樹脂材料、金属材料、並びに、炭素繊維、ガラス繊維、及びセルロース繊維等で形成された多孔質材料等が挙げられる。
【0015】
本実施形態の生成部30は、図1に示されるように、液体二酸化炭素を貯蔵するボンベ2と、高圧弁101を介してボンベ2から供給される液体二酸化炭素を飽和温度以下に冷却する冷却器3と、液体二酸化炭素を所定の圧力まで加圧する高圧ポンプ4と、高圧ポンプ4から供給される液体二酸化炭素を所定の温度に加熱するヒータ5と、高圧ポンプ4から供給される液体二酸化炭素のうち、余剰な液体二酸化炭素を高圧ポンプ4より下流側に戻す背圧弁102と、を有する。
【0016】
冷却器3の例として、冷却水を循環させて、被冷却物を冷却するチラー装置が挙げられる。また、高圧ポンプ4の例として、液体吐出量の制御や脈動を防止可能なダブルプランジャーポンプが挙げられる。ただし、冷却器3や高圧ポンプ4は、これらに限られない。
【0017】
高圧ポンプ4で加圧された液体二酸化炭素をヒータ5で加熱することで、超臨界二酸化炭素が生成される。
【0018】
高圧容器6は、高圧弁103を介して生成部30から供給される超臨界二酸化炭素と、超臨界二酸化炭素とは別経路を通って供給される樹脂とを高圧環境下で混合する。高圧容器6の例として、オートクレーブが挙げられる。ただし、これに限定されない。
【0019】
高圧容器6は、超臨界二酸化炭素と樹脂とを収める容器本体21と、容器本体21内に導入される超臨界二酸化炭素と樹脂とを撹拌する撹拌機構22と、撹拌機構22を駆動するモータ7と、撹拌機構22の回転力を計測するトルクメータ23と、を有する。
【0020】
撹拌機構22の例として、マグネット式のインペラ(モータからの駆動力によって回転する羽根車)、一軸のスクリュウ、互いに噛み合う二軸のスクリュウ、互いに噛み合う又は重なり合う多数の撹拌素子をもつ二軸の混合機、互いに噛み合うらせん形の撹拌素子を有するニーダー、スタティックミキサー等が挙げられる。また、高圧容器6は、容器加温用のヒータ8と、容器内を大気開放するための高圧弁104と、を更に有することが好ましい。
【0021】
高圧容器6における超臨界二酸化炭素と樹脂との混合初期段階では、超臨界二酸化炭素と樹脂とが、十分に混合されていない。そのため、混合物の粘度が高く、撹拌機構22のトルクが高い。これに対して、超臨界二酸化炭素と樹脂との混合が進むにつれ、混合物の粘度が低下する。それに伴い、撹拌機構22のトルクも下がる。また、超臨界二酸化炭素と樹脂とが十分に混ざり合うことで、混合物の粘度が更に低下した後、粘度の低下が止まる。それに応じて、撹拌機構22のトルクも一定となる。すなわち、トルクメータ23が、撹拌機構22のトルクが一定になったことを検出することで、超臨界二酸化炭素と樹脂とが十分に混合したことを判定できる。
【0022】
高圧容器6において、例えば、50MPa~60MPa程度の高圧下で、超臨界二酸化炭素と樹脂とが混合されている。そのため、一般に、高圧容器6の蓋を開けるなどして、超臨界二酸化炭素と樹脂との混合の進行状況を目視することができない。これに対して、本実施形態のように、トルクメータ23を用いて撹拌機構22のトルクの推移を計測する構成によれば、高圧容器6内を目視しなくても、超臨界二酸化炭素と樹脂との均一混合を判定することができる。その結果、未混合の樹脂が、パルスバルブ10に供給されることを抑制し、パルスバルブ10の吐出不良を防止できる。
【0023】
トルクメータ23は、撹拌機構22のトルク計測信号を制御装置24に出力してもよい。また、制御装置24は、トルクメータ23のトルク計測信号によって、超臨界二酸化炭素と樹脂との均一混合を判定してもよい。また、制御装置24は、判定結果に基づき、高圧容器6の下流側に配設される高圧弁105の開閉を制御してもよい。
【0024】
高圧容器6の下流側に、高圧弁105が設けられる。高圧弁105が開くことで、高圧容器6内の混合物が、配管41を通り、パルスバルブ10に供給される。また、配管41の周囲に、加熱機構あるいは断熱部材を設けることが好ましい。これにより、配管41を所定の温度に保持することができる結果、配管41を流れる二酸化炭素の超臨界状態を維持し、流動性を高めることができる。
【0025】
パルスバルブ10は、配管41の先端と接続する。これにより、パルスバルブ10と配管41とが連通し、配管41を流れた混合物が、パルスバルブ10に導入される。また、パルスバルブ10は、導入された混合物を基材12に吐出する。
【0026】
パルスバルブ10には、例えば、200℃を超える温度(例えば、250℃の温度)を有し、50MPa~60MPa程度の圧力を有する混合物が導入される。パルスバルブ10は、混合物における導入時の温度や圧力を維持しながら、基材12に向けて混合物を吐出する。また、パルスバルブ10は、例えば、開時間が100μ秒以下となるよう高速の開閉動作を行う。これにより、パルスバルブ10は、所望量の混合物を安定的に吐出する。なお、パルスバルブ10の詳細は、後述の<パルスバルブの構成>の項で述べる。
【0027】
<塗布装置1の動作>
図1を参照して、塗布装置1における混合物の吐出動作を説明する。まず、ボンベ2に貯蔵される液体二酸化炭素が、高圧弁101を経由して冷却器3で飽和温度以下に冷却される。
【0028】
続いて、冷却器3を通過した超臨界二酸化炭素が、高圧ポンプ4のサクション部に導入される。サクション部から高圧ポンプ4に導入された液体二酸化炭素は、高圧ポンプ4内で所定の圧力(例えば、二酸化炭素の臨界圧力である7.3MPa)以上に加圧される。また、定圧運転時、高圧ポンプ4に導入された液体二酸化炭素が、背圧弁102により高圧ポンプ4のサクション部に戻される。
【0029】
続いて、加圧された液体二酸化炭素は、ヒータ5により所定の温度(例えば、二酸化炭素の臨界温度である31℃)以上に加熱される。これにより、液体二酸化炭素から超臨界二酸化炭素が生成される。
【0030】
続いて、生成された超臨界二酸化炭素は、高圧弁103を経由して、ヒータ8によって所定の温度に加熱された高圧容器6に投入される。また、超臨界二酸化炭素は、別経路で高圧容器6に投入された樹脂と、モータ7に接続された撹拌機構22によって溶融混合される。
【0031】
このとき、混合物は、ヒータ8によって、例えば250℃程度に加熱される。また、混合物は、所定の昇圧機構によって、例えば、50MPa~60MPa程度の圧力まで昇圧される。
【0032】
本実施形態において、超臨界二酸化炭素と樹脂との混合物は、これらの混合過程を経て得られる。均一な混合物が得られていることは、撹拌機構22のトルクを計測するトルクメータ23の計測値を介して判断する。
【0033】
続いて、高圧弁105が開放される。これにより、高圧容器6内の混合物は、配管41を通り、パルスバルブ10側に向けて流れる。また、パルスバルブ10は、導入された混合物の温度、圧力を維持しつつ、パルスバルブ10内に設けられる弁の開閉動作を繰り返して、所望量の混合物を基材12に吐出する。
【0034】
<パルスバルブの構成>
次に、図2及び図3を参照して、第1実施形態に係る塗布装置1のパルスバルブ10の構成を説明する。図2及び図3は、第1実施形態に係るパルスバルブ10の構成例を示す模式的な断面図である。
【0035】
図2に示されるように、本実施形態のパルスバルブ10は、内部に吐出対象物の流体の流路112を有するハウジング部110と、ハウジング部110の先端側に取り付けられ、吐出対象物を吐出するノズル部120と、ハウジング部110内に挿入され、ハウジング部110の流路112を開閉するニードル130と、ニードル130を進退移動させるための駆動機構140と、ハウジング部110と駆動機構140との間に設けられる断熱フランジ150と、を有する。本実施形態における吐出対象物の流体は、超臨界二酸化炭素と樹脂との混合物である。なお、混合物は、「超臨界流体を含む流体」の一例である。
【0036】
ここで、各図において、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸によって方向を示す場合がある。図示されるX方向は、パルスバルブ10の前後方向に対応する。X軸方向で矢印が向いている側をX方向+側、X方向+側の反対側をX方向-側と表記する。また、Y方向は、パルスバルブ10の幅方向に対応する。Y軸方向で矢印が向いている側をY方向+側、Y方向+側の反対側をY方向-側と表記する。また、Z方向は、パルスバルブ10の高さ方向に対応する。Z軸方向で矢印が向いている側をZ方向+側、Z方向+側の反対側をZ方向-側と表記する。
【0037】
<<ハウジング部>>
ハウジング部110は、パルスバルブ10の最前部に位置し、配管441から導入される混合物を収容する筐体である。ハウジング部110の先端面(X方向+側の最前位の面)は、基材12と対向する。
【0038】
ハウジング部110は、基部111を有する。また、基部111の内部に、吐出対象物である混合物の流路112が形成される。本実施形態の流路112は、X方向に沿って形成される。また、基部111の上面(Z方向+側の最上位の面)に、流路112に向けて窪む第1孔部113が凹設される。第1孔部113に、配管41の先端に取り付けられた1/8インチ配管441が挿入される。第1孔部113に挿入された1/8インチ配管441は、流路112に連通する。なお、配管41と1/8インチ配管441とを含めて、「配管41」という場合がある。これにより、配管41を流れた混合物が、流路112に導入される。ただし、流路112に連通する配管は、1/8インチ配管以外のサイズや形状の配管であってもよい。
【0039】
第1孔部113は、流路112側であるZ方向-側に進むにしたがい、径が細くなるテーパー部位113Tを有する。また、1/8インチ配管441は、第1孔部113のテーパー部位113Tと接触した際に圧力変形する接続フェラルを介して、第1孔部113に嵌め込まれることが好ましい。1/8インチ配管441には、高温・高圧の混合物が流れる。そのため、1/8インチ配管441が、接続フェラルを介して、第1孔部113に嵌まり込むことで、高温、高圧の混合物が流れても、1/8インチ配管441が第1孔部113から脱離しない。
【0040】
基部111の第1孔部113が設けられる領域が、加熱機構(例えば、ヒーティングブロック)によって加熱されていてもよい。加熱機構を設けることで、1/8インチ配管441を流れる混合物の温度低下を防ぐことができる。
【0041】
ハウジング部110は、基部111より先端側(X方向+側)にブロック114を有する。ブロック114は、ネジ115a,115bを介して基部111に取り付けられる。
【0042】
ブロック114の先端面(すなわち、ハウジング部110の先端面)に、流路112側であるX方向-側に向かって窪む第2孔部116が凹設される。本実施形態の第2孔部116は、X方向に沿って形成される。第2孔部116に、ノズル部120が挿入される。なお、第2孔部116は、「孔部」の一例である。
【0043】
ハウジング部110に収容される混合物の圧力は、60MPa以下であることが好ましい。また、ハウジング部110に収容される混合物の温度は、250℃以下であることが好ましい。ただし、これに限定されない。
【0044】
<<ノズル部>>
ノズル部120は、第2孔部116に挿入された状態において、X方向に沿って延在するノズル基部121を有する。また、ノズル基部121の外周部に、押圧型の接続ネジが形成される。ノズル基部121における接続ネジのネジ溝と、第2孔部116に形成されるネジ溝とが係合することで、ノズル部120は、押圧状態で第2孔部116に嵌め込まれる。
【0045】
ノズル基部121の内部に、X方向に沿うチューブ状のノズル管部122が形成される。図3に示されるように、ノズル管部122は、流路112の先端に連通する第1管部122aと、第1管部122aと同心であって、第1管部122aの外側に設けられる第2管部122bと、を有する。第2管部122bの先端は、基材12に混合物を吐出するノズル孔123に対応する。
【0046】
ノズル管部122は、第1管部122aと第2管部122bとで構成される二重管構造を有する。このような二重管構造とすることで、ノズル管部122の強度を高めることができる。また、流路112から供給される混合物の吐出安定性を高めることができる。
【0047】
ノズル孔123の直径は、5μm以上500μm以下であることが好ましい。また、ノズル孔123の直径は、100μm以上300μm以下であることがより好ましく、150μm以上250μm以下であることが更に好ましい。
【0048】
ノズル孔123の直径が、5μmを下回る場合、直径が細すぎて混合物の安定吐出が阻害されるおそれがある等の点で好ましくない。また、ノズル孔123の直径が、500μmを上回る場合、ノズル部120におけるノズル孔123を除く領域の厚みが薄くなり、混合物を吐出する際の圧力に耐えられない可能性がある等の点で好ましくない。
【0049】
また、ノズル部120は、ノズル管部122の外周部に設けられる接続フェラル124を有する。接続フェラル124は、図2及び図3に示されるように、X方向-側に進むにしたがい径が狭まる略円錐台状の、例えば、ステンレス製部材である。
【0050】
ノズル部120が、押圧状態で第2孔部116に嵌め込まれると、接続フェラル124は、第2孔部116のテーパー部位116Tと衝突する。接続フェラル124は、テーパー部位116Tとの衝突後、更に第2孔部116の奥側に移動し、テーパー部位116Tの内側に差し込まれる。その結果、接続フェラル124は、第2孔部116のテーパー部位116Tに押し潰されるよう圧力変形する。これにより、接続フェラル124の更なる移動が規制される。その結果、ノズル部120が、第2孔部116に嵌め込まれ、ブロック114に強固に固定される。
【0051】
ノズル部120が、接続フェラル124を介してハウジング部110のブロック114に固定されることで、耐圧性、耐久性を高めることができる。特に、ノズル部120には、高圧の混合物が流れるため、接続フェラル124を介したノズル部120とハウジング部110との接合が好適である。接続フェラル124は、オリフィス131を挟んで、ニードル130及びエクステンションバー141の移動方向に沿うように、固定圧着されている。そのため、高圧、高温の環境下においても、接続フェラル124を含むノズル部120の脱離を防止することができる。
【0052】
混合物と接触するノズル管部122の内面に、ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜が形成されていることが好ましい。ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜の例として、チタンカーバイド(SiC)皮膜、窒化チタン(TiN)皮膜、窒化チタンカーバイド(TiCN)皮膜、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)皮膜等のセラミックス皮膜、SiC、TiN、TiCN、若しくはTiAlNを含むサーメット皮膜、又は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の非晶質炭素を含む皮膜が挙げられる。ノズル管部122の内面において、ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜は、第1管部122aの内面と第2管部122bの内面に亘って形成されることが好ましい。
【0053】
ノズル部120におけるノズル孔123の周辺にも、ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜が形成されていることが好ましい。図示されるノズル孔123は、ノズル基部121の先端壁121F(図3参照)の表面に露出している。そのため、ノズル部120におけるノズル孔123の周辺の例として、ノズル基部121の先端壁121Fの表面における、ノズル孔123の周辺が挙げられる。
【0054】
ノズル孔123の周辺に形成される皮膜も同様に、SiC皮膜、TiN皮膜、TiCN皮膜、TiAlN等のセラミックス皮膜、SiC、TiN、TiCN若しくはTiAlNを含むサーメット皮膜、又は、DLC等の非晶質炭素を含む皮膜であってよい。また、これら以外の皮膜であってもよい。
【0055】
ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜が、ノズル管部122の内面やノズル孔123の周辺に形成されることで、ノズル管部122の内面やノズル孔123の周辺に、混合物の残留物が付着することを防ぐことができる。これにより、ノズル管部122及びノズル孔123を通過する混合物の流れが阻害される事態を防止でき、ノズル孔123から所望量の混合物を安定して吐出することができる。
【0056】
ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜の膜厚は、例えば、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上5.0μm以下であることがより好ましい。ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜の膜厚を上記範囲とすることで、ノズル管部122の内面等の微小面の表面形状をほとんど変化させることなく、皮膜を形成することができる。これにより、ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜の形成による、吐出安定性への影響を低減することができる。
【0057】
ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜の形成方法は、特に限定されないが、一例として、真空蒸着法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法が挙げられる。PVD法を用いることで、ノズル管部122の内面等の微小面に対しても、膜厚が均一な薄膜を形成することができる。これにより、混合物の一部が、ノズル管部122の内面及びノズル孔123の周辺に残留することを、より効果的に防ぐことができる。
【0058】
ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜を形成する前に、ノズル管部122の内面やノズル孔123の周辺を、ブラスト処理や研磨処理等の表面改質処理を行ってもよい。これにより、ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜の密着性を向上させることができる。
【0059】
<<ニードル>>
ニードル130は、ハウジング部110内に挿入され、ハウジング部110の流路112を開閉する弁として機能する。
【0060】
具体的には、ニードル130が前進することで、ニードル130の先端が、流路112と、ノズル部120のノズル管部122の後端との間に設けられるオリフィス131の極小孔132等の孔を塞ぐ。これにより、流路112が閉じる。続いて、ニードル130が後退することで、ニードル130の先端が、オリフィス131から離れる。これにより、オリフィス131の極小孔132が開口し、流路112が開く。
【0061】
ニードル130における流路112の開閉動作によって、流路112に達した混合物のうちの所望量の混合物をノズル部120側に供給することができる。ニードル130の応答速度(弁の開時間)は、100μ秒以下が好ましい。
【0062】
ニードル130は、耐久性、耐圧性等の観点から、ジルコニア等の高強度のセラミックスであることが好ましい。また、ニードル130の先端が衝突するオリフィス131も、高強度のセラミックスから構成されることが好ましい。オリフィス131を構成するセラミックスとして、ビッカーズ硬さ700Hv以上、耐熱衝撃温度差100℃以上、及び平均線膨張係数11×10-6/K以下のセラミックスであることが好ましい。一例として、ジルコニア、アルミナ、ムライト、コージライトが挙げられる。なお、耐熱衝撃温度差は、例えば、JIS R 1648:2002に規定されている相対法による熱衝撃試験方法に準じて測定される。
【0063】
オリフィス131が、これらの特性を有するセラミックスから構成されることで、オリフィス131の耐久性、耐熱衝撃性、耐熱変形性等の機械的、熱的特性を向上させることができる。これにより、吐出動作の際にニードル130と衝突するオリフィス131が変形や破損し、オリフィス131から混合物が漏れ出る等の不具合を防止することができる。
【0064】
オリフィス131を構成するセラミックスのビッカーズ硬さの上限値の一例として、2200Hv以下が挙げられる。オリフィス131を構成するセラミックスの耐熱衝撃温度差の上限値の一例として、450℃以下が挙げられる。オリフィス131を構成するセラミックスの平均線膨張係数の下限値の一例として、4.0×10-6/K以上が挙げられる。
【0065】
<<駆動機構>>
駆動機構140は、ニードル130と接続し、ニードル130を進退移動させるための機構部である。具体的には、駆動機構140は、図2に示されるように、ニードル130の後端と接続する長尺筒状のエクステンションバー141と、エクステンションバー141を所定の速さで進退移動させる圧電アクチュエータ142と、を有する。
【0066】
エクステンションバー141は、混合物と接触するニードルからの伝熱による熱膨張を避けるため、熱膨張率の低い材料から構成されることが好ましい。熱膨張率の低い材料の例として、鉄とニッケルとの合金であるインバー材や、鉄、ニッケル、コバルトの合金であるスーパーインバー材等が挙げられる。この中で、熱膨張率が極めて低いスーパーインバー材が好適である。
【0067】
流路112には、例えば、250℃程度の温度を有する混合物が流れる。また、ニードル130の先端領域は、流路112に挿入されており、混合物と接触する。これに対して、エクステンションバー141は、ニードル130に連設される。したがって、エクステンションバー141に、ニードル130を介して混合物からの熱が伝熱される。このとき、仮に、エクステンションバー141が大きく熱膨張すると、エクステンションバー141の進退範囲が変化するに伴い、ニードル130の進退範囲も変化する。その結果、流路112に収容される混合物のうち、所望量の混合物をノズル部120側に正確に供給することができなくなる場合がある。これに対して、エクステンションバー141が、例えば、スーパーインバー材のように、熱膨張率の低い材料からなることで、ニードル130から混合物の熱が伝わっても、熱膨張を抑えることができる。その結果、所望量の混合物をノズル部120側に正確に供給することができる。
【0068】
また、エクステンションバー141が、例えば、スーパーインバー材のように、熱膨張を抑制できる材料からなることで、圧電アクチュエータ142の動作安定性を担保できる。
【0069】
圧電アクチュエータ142は、例えば、パルス状の電圧信号の印加に応じて、伸縮変形する圧電素子を含む。本実施形態における圧電アクチュエータ142は、X方向に伸縮変形する。また、圧電アクチュエータ142は、エクステンションバー141の外周に周設されるリングアクチュエータであることが好ましい。圧電アクチュエータ142をリングアクチュエータとすることで、鋭角コーナー部を有さず、動作の際の負荷が表面全体に均一に分散するため、耐久性を高めることができる。また、圧電アクチュエータ142を薄い圧電素子層で構成できるため、低電圧で大きな変位量を得ることができる。
【0070】
本実施形態では、駆動機構140のアクチュエータを圧電アクチュエータ142としたが、他の方式のアクチュエータであってもよい。ただし、約100μ秒を下回る弁の開閉動作を実現するための高速応答の観点から、圧電アクチュエータ142を用いることが好ましい。
【0071】
<<断熱フランジ>>
断熱フランジ150は、ハウジング部110から圧電アクチュエータ142側への伝熱を防ぐ。断熱フランジ150の材料は、特に限定されないが、高断熱性を有するセラミックス製であることが好ましい。ハウジング部110と圧電アクチュエータ142との間に断熱フランジ150を設けることで、熱に弱い圧電アクチュエータ142に混合物からの熱が伝わることを抑制できる。その結果、圧電アクチュエータ142の動作安定性を担保することができる。
【0072】
[第2実施形態]
次に、図4及び図5を参照して、第2実施形態に係るパルスバルブ10aを説明する。図4は、第2実施形態に係るパルスバルブ10aの構成例を示す模式的な断面図である。また、図5は、図4に示されるA-A線に沿って切断されたパルスバルブ10aの断面図である。
【0073】
図5に示されるように、流路112は、それぞれX方向に沿う複数の分割経路112a~112dを含む。分割経路112a~112dの位置は、特に限定されないが、流路112におけるオリフィス131近傍の先端領域であることが好ましい。
【0074】
分割経路112a~112dは、ニードル130の周方向に沿って配置されると共に、ニードル130の外周壁135から径方向外側に延びる間隙で構成される。また、例えば、分割経路112aと分割経路112bとの境界壁112W1、分割経路112bと分割経路112cとの境界壁112W2、分割経路112cと分割経路112dとの境界壁112W3、分割経路112dと分割経路112aとの境界壁112W4のように、隣り合う分割経路の境界壁112W1~112W4は、ニードル130の外周壁135と接触する。これにより、進退移動を経ても、ニードル130が流路112の中央に位置するようガイドすることができる。その結果、所望量の混合物をノズル部120側に正確に供給することができる。
【0075】
[第3実施形態]
<パルスバルブの構成>
次に、図6を参照して、第3実施形態に係るパルスバルブ10bを説明する。図6は、第3実施形態に係るパルスバルブ10bの構成例を示す模式的な断面図である。第1実施形態及び第2実施形態と同一の構成部に関して、同一の符号を付し、詳細な説明を適宜省略する。
【0076】
図6に示すように、第3実施形態に係るパルスバルブ10bは、流路112を有するハウジング部110と、ノズル部120と、ニードル130と、駆動機構140と、バネ(付勢手段)210と、ネジ(調整手段)220と、第1計測部230と、出力部231と、を有する。また、パルスバルブ10bは、バネハウジング250と、スペーサ260と、を更に有していてもよい。
【0077】
<<バネハウジング>>
バネハウジング250は、バネ210、第1計測部230及びスペーサ260等の部材を収容する。また、バネハウジング250は、駆動機構140と断熱フランジ150との間に配置される。駆動機構140と断熱フランジ150とは、バネハウジング250を介して、連結される。
【0078】
バネハウジング250は、先端側(X方向+側)が開口し、X方向-側に窪む凹所を有する筒状の基体251と、基体251の開口を覆う蓋体252と、を有する。蓋体252が、基体251の開口を覆うことで、バネ210、第1計測部230、及びスペーサ260等の部材を収容する空間250Sが形成される。
【0079】
空間250Sにおいて、バネ210、スペーサ260、及び第1計測部230は、蓋体252側から基体251側に向かうにしたがい、この順に配置される。バネ210は、スペーサ260と接触する。また、スペーサ260は、第1計測部230に接触する。バネ210の伸縮によって生じるバネ反力は、スペーサ260及び第1計測部230のそれぞれに加わる。ただし、バネ210、スペーサ260、及び第1計測部230のそれぞれの配置は、これに限定されない。なお、バネ反力は、「反力」の一例である。
【0080】
<<エクステンションバー>>
駆動機構140のエクステンションバー141bは、後端側(X方向-側)に配置され、圧電アクチュエータ142の内部に挿通される本体部1411と、先端側(X方向+側)に配置され、ニードル130を支持するニードル受部1412と、本体部1411とニードル受部1412とをつなぐ中間部1413と、を有する。
【0081】
本体部1411は、圧電アクチュエータ142の後端面(X方向-側の面)に接触するネジ220に連結される。ニードル受部1412は、バネハウジング250の空間250Sに収容されるとともに、蓋体252に設けられた貫通孔2524に挿通されるニードル130に連結される。中間部1413は、基体251に設けられた貫通孔2514に挿通されるとともに、第1計測部230及びスペーサ260の内部を通過する。
【0082】
<<バネ>>
バネ210は、エクステンションバー141bに連結される。図示されるバネ210は、エクステンションバー141bのニードル受部1412に連結される。バネ210の種類は、限定されない。バネ210の一例として、螺旋バネが挙げられる。バネ210は、バネハウジング250の空間250Sにおいて、X方向に沿って伸縮するよう配置される。
【0083】
<<ネジ>>
ネジ220は、エクステンションバー141bを移動させて、バネ210の伸縮量Δxを調整する。ネジ220の内側面に形成されるネジ溝は、エクステンションバー141bの本体部1411の表面に形成されるネジ溝と噛み合う。例えば、ネジ220を所定の方向に回転させると、本体部1411が後退移動する。反対に、ネジ220を所定の方向とは逆方向に回転させると、本体部1411が前進移動する。すなわち、ネジ220の回転に応じて、本体部1411、中間部1413、ニードル受部1412が、それぞれ移動する。また、ニードル受部1412の移動に伴い、バネ210が伸縮する。同時に、ニードル130が移動する。その結果、ニードル130が、オリフィス131から離れ、混合物が、ニードル130とオリフィス131との間の空間に流れ込む。ニードル130とオリフィス131との間の空間に流れ込んだ混合物の量は、移動後のニードル130の先端の位置によって変化する。最終的に、ニードル130とオリフィス131との間の空間に流れ込んだ混合物は、ノズル部120を通過し、ノズル孔123から外部に吐出される。すなわち、混合物の吐出量は、ニードル130の先端の位置によって変化する。ニードル130の先端の位置は、バネ210の伸縮量Δxに応じて決まる。換言すれば、ネジ220の回転量に応じて、バネ210の伸縮量Δx及びニードル130の先端の位置を調整することができる。
【0084】
<<第1計測部>>
第1計測部230は、バネ210の伸縮量Δxに応じたバネ反力を計測する。第1計測部230の一例として、バネ210から受けるバネ反力を計測するロードセルが挙げられる。ただし、第1計測部230は、ロードセルに限定されない。なお、第1計測部230は、「計測部」の一例である。
【0085】
第1計測部230は、バネ反力を受けて歪む起歪体と、起歪体の表面に取り付けられ、起歪体の歪みを測定する歪ゲージと、歪ゲージの測定結果に基づき、バネ210から受けるバネ反力を算出する算出処理部と、を備える。バネ210のバネ定数は、使用されるバネ210によって既知であることから、算出処理部は、バネ反力と、バネ210のバネ定数に基づき、バネ210の伸縮量Δxを算出してもよい。
【0086】
<<出力部>>
出力部231は、第1計測部230による計測結果を出力する。出力部231の例として、第1計測部230による計測結果であるバネ反力、バネ210の伸縮量Δx、バネ210の伸縮量Δxに対応するネジ220の回転量を表示するモニターが挙げられる。ただし、出力部231は、モニターに限定されない。また、出力部231は、第1計測部230と一体化されていてもよい。
【0087】
<<効果及びその他の事項>>
ネジ220を回転させて、伸縮量Δxだけバネ210を伸縮させた場合に、パルスバルブ10bから混合物を吐出させ、そのときの混合物の吐出量を別途計量する。これにより、バネ210の伸縮量Δxと、混合物の吐出量との対応関係を定量的に把握することができる。すなわち、ネジ220の回転量と混合物の吐出量とを、定量的に対応づけることができる。その結果、ネジ220の回転量に応じた混合物の吐出量が把握され、ネジ220の回転による混合物の吐出量の調整精度を高めることができる。
【0088】
ネジ220の回転は、人手により行われてもよいし、モータ等の駆動部により行われてもよい。駆動部によりネジ220を回転させる場合、第1計測部230は、駆動部の動作を制御する情報処理装置に、バネ反力等の計測結果を伝送してもよい。情報処理装置は、第1計測部230から伝送された計測結果に基づき、パルスバルブ10bから吐出される混合物の吐出量を制御するためのネジ220の回転量を算出する。また、情報処理装置は、算出したネジ220の回転量を含む制御信号を、駆動部に伝送する。これにより、駆動部は、情報処理装置から出力された制御信号に基づくネジ220の回転量分、ネジ220を回転させる。
【0089】
[第3実施形態の変形例]
次に、図7及び図8を参照して、第3実施形態の変形例1に係るパルスバルブ10c、及び第3実施形態の変形例2に係るパルスバルブ10dを説明する。図7は、第3実施形態の変形例1に係るパルスバルブ10cの構成例を示す模式的な断面図である。図8は、第3実施形態の変形例2に係るパルスバルブ10dの構成例を示す模式的な断面図である。
【0090】
図7に示すように、第3実施形態の変形例1に係るパルスバルブ10cは、バネ210の伸縮量Δxに応じたバネ反力によるスペーサ260の変形量を計測する第2計測部410と、第2計測部410による計測結果を出力する出力部411と、を備える。第2計測部410の一例として、スペーサ260の表面に配置され、スペーサ260の変形量を計測する歪ゲージが挙げられる。ただし、第2計測部410は、歪ゲージに限定されない。なお、第2計測部410は、「計測部」の一例である。スペーサ260は、「反力を受けて変形する部材」の一例である。出力部411の一例として、第2計測部410と別体又は一体のモニターが挙げられる。
【0091】
第3実施形態の変形例1に関しても、パルスバルブ10cから吐出される混合物の吐出量を別途計量する。これにより、第2計測部410によって計測されたスペーサ260の変形量と、混合物の吐出量との対応関係を定量的に把握することができる。すなわち、ネジ220の回転量と混合物の吐出量とを、定量的に対応づけることができる。その結果、ネジ220の回転量に応じた混合物の吐出量が把握され、混合物の吐出量の調整精度を高めることができる。
【0092】
図8に示すように、第3実施形態の変形例2に係るパルスバルブ10dは、バネ210の伸縮量Δxに応じたバネ反力によるエクステンションバー141bの変形量を計測する第3計測部510と、第3計測部510による計測結果を出力する出力部511と、を備える。第3計測部510の一例として、エクステンションバー141bの表面に配置され、エクステンションバー141bの変形量を計測する歪ゲージが挙げられる。ただし、第3計測部510は、歪ゲージに限定されない。なお、第3計測部は、「計測部」の一例である。エクステンションバー141bは、「反力を受けて変形する部材」の一例である。出力部511の一例として、第3計測部510と別体又は一体のモニターが挙げられる。
【0093】
第3実施形態の変形例2においても、パルスバルブ10dから吐出される混合物の吐出量を別途計量する。これにより、第3計測部510によって計測されたエクステンションバー141bの変形量と、混合物の吐出量との対応関係を定量的に把握することができる。すなわち、ネジ220の回転量と混合物の吐出量とを、定量的に対応づけることができる。その結果、ネジ220の回転量に応じた混合物の吐出量が把握され、混合物の吐出量の調整精度を高めることができる。
【0094】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0095】
まず、エチレングルコールとドデカン二酸を脱水縮合して調整した結晶性ポリエステルを、高圧容器6(オートクレーブ)に投入した。続いて、結晶性ポリエステルを250℃で溶融したのち、高圧容器6を含む系内を減圧して、空気を除去した。結晶性ポリエステルの溶融状態は、トルクメータ23の値が飽和したことで確認した。
【0096】
続いて、高圧容器6に超臨界二酸化炭素を投入し、高圧容器6を含む系内を50MPaに昇圧し、超臨界二酸化炭素と結晶性ポリエステルとを混合した。混合均一性は、トルクメータ23の値が飽和したことで確認した。
【0097】
混合物の均一混合後、パルスバルブ10に混合物を導入し、パルスバルブ10の流路112をニードル130で閉じた状態で、50MPaに安定させた。続いて、圧電アクチュエータ142を駆動させ、ニードル130を後退させて流路112を開いた。これにより、混合物が、ノズル部120側に供給され、ノズル孔123からジェット噴射された。
【0098】
圧電アクチュエータ142への電圧パルスの印加を止め、ジェット噴射が停止した際、ノズル部120からの混合物の漏れはなかった。更に、100μ秒の矩形パルス電圧を圧電アクチュエータ142に印加しても、安定的に動作し、混合物のジェット噴射が確認された。
【0099】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0100】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 圧縮流体を含む流体が流れる流路を有するハウジング部と、
前記流路を流れる前記流体を吐出するノズル部と、
を有し、
前記ハウジング部は、前記流路に向けて窪んだ孔部を有し、
前記ノズル部は、
ノズル孔を有する一端側と、前記流路に連通する他端側とを有するノズル管部と、
前記ノズル管部の外周部に設けられ、前記孔部に嵌め込まれた前記ノズル部を前記ハウジング部に固定する接続フェラルと、を有し、
前記ノズル部は、前記孔部に嵌め込まれる、パルスバルブ。
<2> 前記ノズル管部は、
前記流路に連通する第1管部と、
前記第1管部の外側に設けられ、前記ノズル孔を有する第2管部と、
を有する二重管構造を備える、前記<1>に記載のパルスバルブ。
<3> 前記ノズル孔の直径は、5μm以上500μm以下である、前記<1>又は前記<2>に記載のパルスバルブ。
<4> 前記ハウジング部に挿入され、前記流路を開閉するニードルと、
前記ニードルを進退移動させる駆動機構と、
を有し、
前記駆動機構は、
前記ニードルと接続するエクステンションバーと、
前記エクステンションバーを進退移動させるアクチュエータと、
を有し、
前記エクステンションバーは、インバー材から構成される、前記<1>から前記<3>のいずれか1つに記載のパルスバルブ。
<5> 前記アクチュエータは、圧電アクチュエータである、前記<4>に記載のパルスバルブ。
<6> 前記圧電アクチュエータは、リングアクチュエータである、前記<5>に記載のパルスバルブ。
<7> 前記ハウジング部と前記駆動機構との間に配置される断熱フランジを有する、前記<4>から前記<6>のいずれか1つに記載のパルスバルブ。
<8> 前記流路は、前記ニードルの外周壁の周方向に沿って配置される複数の分割経路を有し、
前記複数の分割経路のうち、隣り合う前記分割経路の境界壁が、前記ニードルの前記外周壁に接触することで、前記ニードルの位置をガイドする、前記<4>から前記<7>のいずれか1つに記載のパルスバルブ。
<9> 前記ノズル管部の内面、及び前記ノズル部における前記ノズル孔の周辺に、ビッカーズ硬さが2000Hv以上の皮膜が形成されている、前記<1>から前記<8>のいずれか1つに記載のパルスバルブ。
<10> 前記流路と前記ノズル管部との間に設けられ、前記ノズル管部に連通する孔を有するオリフィスを有し、
前記オリフィスは、ビッカーズ硬さ700Hv以上、耐熱衝撃温度差100℃以上、及び平均線膨張係数11×10-6/K以下のセラミックスである、前記<1>から前記<9>のいずれか1つに記載のパルスバルブ。
<11> 前記エクステンションバーに連結される付勢手段と、
前記エクステンションバーを移動させて、前記付勢手段の伸縮量を調整する調整手段と、
前記付勢手段の伸縮量に応じた反力、及び前記反力を受けて変形する部材の変形量の少なくとも1つを計測する計測部と、
前記計測部による計測結果を出力する出力部と、
をさらに備える、前記<4>から前記<8>のいずれか1つに記載のパルスバルブ。
<12> 圧縮流体と樹脂との混合物を生成する高圧容器と、
前記高圧容器から供給される前記混合物を吐出する前記<1>から前記<11>のいずれか1つに記載されるパルスバルブと、
を有する塗布装置。
<13> 前記高圧容器は、
前記混合物を撹拌する撹拌機構と、
前記混合物を撹拌する際の撹拌機構のトルクを計測するトルクメータと、
を有する、前記<12>に記載の塗布装置。
【符号の説明】
【0101】
1 塗布装置
6 高圧容器
10,10a,10b,10c,10d パルスバルブ
110 ハウジング部
111 基部
112 流路
112a~112d 分割経路
112W1~112W4 境界壁
113 第1孔部
116 第2孔部
120 ノズル部
121 ノズル基部
122 ノズル管部
123 ノズル孔
124 接続フェラル
130 ニードル
140 駆動機構
141,141b エクステンションバー
142 圧電アクチュエータ
150 断熱フランジ
210 バネ
220 ネジ
230 第1計測部
231,411,511 出力部
250 バネハウジング
260 スペーサ
410 第2計測部
510 第3計測部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】特開2009-30669号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8