(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078407
(43)【公開日】2024-06-10
(54)【発明の名称】可動装置、光走査システム、ヘッドアップディスプレイ、レーザヘッドランプ、ヘッドマウントディスプレイ、物体認識装置、移動体、及び瞳孔又は角膜の位置検知装置。
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240603BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240603BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240603BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240603BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20240603BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240603BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
G02B27/02 Z
G02B27/01
G01S7/481 A
B81B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181397
(22)【出願日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2022189818
(32)【優先日】2022-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】新川 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 大生
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
2H199
3C081
5J084
【Fターム(参考)】
2H045AB02
2H045AB38
2H045AB73
2H045AB81
2H045BA12
2H045BA13
2H045BA14
2H045CA63
2H045CB02
2H141MA12
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2H141MB24
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2H141MZ26
2H199CA04
2H199CA06
2H199CA29
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2H199CA67
2H199CA69
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA26
2H199DA28
3C081AA01
3C081BA22
3C081BA28
3C081BA32
3C081BA33
3C081BA44
3C081BA47
3C081BA55
3C081CA13
3C081CA32
3C081DA03
3C081DA04
3C081DA07
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3C081EA01
3C081EA08
3C081EA11
5J084BA04
5J084BA50
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB24
5J084BB26
5J084BB28
(57)【要約】
【課題】
強固な連結部を有した可動装置を提供すること。
【解決手段】
本発明は、可動部と、前記可動部と接続され前記可動部を駆動させる駆動部材と、光を反射する反射部と、前記可動部および前記反射部を前記反射部の反射面と交差する方向に連結する連結部と、備え、前記反射部から前記可動部側に延伸、又は前記可動部から前記反射部側に延伸する補強部を有することを特徴とする可動装置である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部と、
前記可動部と接続され前記可動部を駆動させる駆動部材と
光を反射する反射部と、
前記可動部および前記反射部を前記反射部の反射面と交差する方向に連結する連結部と、備え、
前記反射部から前記可動部側に延伸
又は前記可動部から前記反射部側に延伸する補強部
を有することを特徴とする可動装置。
【請求項2】
前記補強部は、
前記可動部もしくは前記反射部と前記連結部とを接合する接合面に対し、
略垂直方向に延伸する面を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項3】
前記補強部と前記連結部は、
一方が他方を囲うように配置する
ことを特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項4】
前記補強部は、柱状の補強部と、
前記柱状の補強部を囲うように配置された筒状の補強部と、を含み、
前記連結部は、前記柱状の補強部を囲み、かつ前記筒状の補強部に囲まれるように配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の可動装置。
【請求項5】
前記可動部と前記連結部又は前記反射部と前記連結部を接着する接着剤を有し、
前記補強部は、前記可動部又は前記反射部のうち、前記接着剤を有する側から延伸することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の可動装置。
【請求項6】
前記接着剤は、前記連結部と前記補強部との間に
挟まれている
ことを特徴とする請求項5に記載の可動装置。
【請求項7】
前記接着剤は、
前記連結部の接合面と前記可動部または前記反射部の接合面との間に挟まれ、
前記連結部と前記補強部とが非接触であることを特徴とする請求項6に記載の可動装置。
【請求項8】
前記連結部が複数から構成される
請求項1乃至4の何れか1項に記載の可動装置。
【請求項9】
前記駆動部材がミアンダ構造である
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の可動装置。
【請求項10】
前記駆動部材は、前記可動部を第1軸周りに回動させる第1の駆動部材と、
前記第1軸と交差する第2軸周りに回動させる第2の駆動部材と、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の可動装置。
【請求項11】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の可動装置を有する光走査システム。
【請求項12】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の可動装置を備えるヘッドマウントディスプレイ。
【請求項13】
請求項1に記載の可動装置を備えるヘッドアップディスプレイ。
【請求項14】
請求項1に記載の可動装置を備えるレーザヘッドランプ。
【請求項15】
請求項1に記載の可動装置を備える物体認識装置。
【請求項16】
請求項13に記載のヘッドアップディスプレイ、請求項14に記載のレーザヘッドランプ、及び請求項15に記載の物体認識装置の少なくとも1つを有する移動体。
【請求項17】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の可動装置を備える瞳孔又は角膜の位置検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動装置、光走査システム、ヘッドアップディスプレイ、レーザヘッドランプ、ヘッドマウントディスプレイ、物体認識装置、移動体、及び瞳孔又は角膜の位置検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、二軸光偏向器において、ミラー駆動部は、第1のウエハを加工して形成され、ミラー部は第2のウエハを加工して形成され、ミラー部に設けられた支柱部と、ミラー駆動部の裏面のミラー支持台とが接合されていることを特徴とする二軸光偏向器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では連結部を強固にする構成がなく、強固な連結部を有した可動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、可動部と、前記可動部と接続され前記可動部を駆動させる駆動部と、光を反射する反射部と、前記可動部および前記反射部を前記反射部の反射面と交差する方向に連結する連結部と、備え、前記反射部から前記可動部側に延伸、又は前記可動部から前記反射部側に延伸する補強部を有することを特徴とする可動装置である。
【発明の効果】
【0006】
強固な連結部を有した可動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の前提となる可動装置の構成の一例を示す平面図である。
【
図9】本実施例の接合部分を説明する断面図である。
【
図11】第1の変形例の接合部分を説明する断面図である。
【
図13】第2の変形例の接合部分を説明する断面図である。
【
図16】(a)第4の変形例の断面図を示す図、(b)B-B'の断面図の例である。
【
図17】(a)本実施形態、(b)第5の変形例、(c)第6の変形例を示す断面図である。
【
図18】(a)第7の変形例、(b)第8の変形例を示す断面図である。
【
図19】(a)第7の変形例のC-C'断面図(複数支持層)、(b)第7の変形例のC-C'断面図(同心円)である。
【
図23】光走査システムの一例のハードウェア構成図である。
【
図25】光走査システムにかかる処理の一例のフローチャートである。
【
図26】ヘッドアップディスプレイ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
【
図27】ヘッドアップディスプレイ装置の一例の概略図である。
【
図28】光書込装置を搭載した画像形成装置の一例の概略図である。
【
図30】ライダ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
【
図32】レーザヘッドランプの構成の一例を説明する概略図である。
【
図33】ヘッドマウントディスプレイの構成の一例を示す概略斜視図である。
【
図34】ヘッドマウントディスプレイの構成の一部の一例を示す図である。
【
図35】画像表示機能を備えた瞳孔又は角膜の位置検知装置を示す概略図である。
【
図36】
図35の瞳孔又は角膜の位置検知装置をヘッドマウントディスプレイに搭載したときの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<可動装置の構成>
図1は本発明の前提となる可動装置の構成の一例を示す平面図である。
図1に示すように、可動装置13は、入射した光を反射するミラー部101と、ミラー部101に接続され、ミラー部101をY軸に平行な第1軸周りに駆動する第1駆動部110a、第2駆動部110bと、ミラー部101及び第1駆動部110aを支持する第1支持部120と、第1支持部120に接続され、ミラー部101及び第1支持部120をX軸に平行な第2軸周りに駆動する第3駆動部130aと、第4駆動部130bと、第3駆動部130a及び第4駆動部130bを支持する第2支持部140と、第1駆動部~第4駆動部及び制御装置に電気的に接続される電極接続部150と、を有する。
【0010】
可動装置13は、例えば、1枚のSOI(Silicon On Insulator)基板をエッチング処理等により成形し、成形した基板上に反射面14や第1駆動部112a及び第2駆動部112b、第3駆動部131a~131f、第4駆動部132a~132f、電極接続部150等を形成することで、各構成部が一体的に形成されている。なお、上記の各構成部の形成は、SOI基板の成形後に行ってもよいし、SOI基板の成形中に行ってもよい。
【0011】
図2は
図1に示した可動装置の断面図である。SOI基板は、単結晶シリコン(Si)からなる第1のシリコン層161の上に酸化シリコン層162が設けられ、その酸化シリコン層の上にさらに単結晶シリコンからなる第2のシリコン層が設けられている基板である。以降、第1のシリコン層をシリコン支持層161、第2のシリコン層をシリコン活性層163とする。
【0012】
シリコン活性層163は、X軸方向又はY軸方向に対してZ軸方向への厚みが小さいため、シリコン活性層163のみで構成された駆動部は、弾性を有する弾性部としての機能を備える。
【0013】
なお、SOI基板は、必ず平面状である必要はなく、曲率等を有していてもよい。また、エッチング処理等により一体的に成形でき、部分的に弾性を持たせることができる基板であれば可動装置13の形成に用いられる駆動部はSOI基板に限られない。
【0014】
ミラー部101は、例えば、円形状のミラー部基体102と、ミラー部基体の+Z側の面上に形成された反射面14とから構成される。ミラー部基体102は、例えば、シリコン活性層163から構成される。反射面14は、例えば、アルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜で構成される。また、ミラー部101は、ミラー部基体102の-Z側の面にミラー部補強用のリブが形成されていてもよい。リブは、例えば、シリコン支持層161及び酸化シリコン層162から構成され、可動によって生じる反射面14の歪みを抑制することができる。
【0015】
第1駆動部110a、第2駆動部110bは、ミラー部基体102に一端が接続し、他端は第1支持部120に接続されている。第1駆動部110aは、第1接続部111aと第1駆動部112aと第1駆動部の支持体から構成される。ミラー部101を可動可能に支持する2つのトーションバー111a、111bが、第1軸方向にそれぞれ延びており、第1駆動部112aの支持体及び第2駆動部112bの支持体に接続しており、駆動部の支持体は第1支持部120に接続している。
【0016】
図2に示されるように、トーションバー111a、111bはシリコン活性層163から構成される。また、第1駆動部112a、第2駆動部112bは、弾性部であるシリコン活性層163の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203の順に形成されて構成される。上部電極203及び下部電極201は、例えば金(Au)又は白金(Pt)等から構成される。圧電部202は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料である。
【0017】
図1に戻り、第1支持部120は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163から構成され、ミラー部101を囲うように形成された矩形形状の支持体である。
【0018】
第3駆動部130a、及び第4駆動部130bのそれぞれは、折り返すように連結された第3駆動部131a~131f、又は第4駆動部132a~132fから構成され、ミアンダ構造を形成している。第3駆動部130a、及び第4駆動部130bの一端は、第1支持部120の外周部に接続され、他端は第2支持部140の内周部に接続されている。このとき、第3駆動部130aの支持体と第1支持部120の接続箇所及び第4駆動部130bの支持体と第1支持部120の接続箇所は、反射面14の中心に対して点対称となっている。同様に、第3駆動部130aの支持体と第2支持部140の接続箇所及び第4駆動部130bの支持体と第2支持部140の接続箇所も、反射面14の中心に対して点対称となっている。
【0019】
第3駆動部131a~131f、及び第4駆動部132a~132fの各々の+Z側の面の上には、駆動部ごとに、交互に圧電駆動部郡A113aと圧電駆動部郡B113bが設けられている。圧電駆動部郡A113aのみを駆動、又は圧電駆動部郡B113bのみを駆動とすることで、負電圧を使わずともミラーの振れ角を+側、あるいは-側と制御することが可能である。また、圧電駆動部郡A113aと圧電駆動部郡B113bに逆位相の電圧を与え、印加する信号の電圧や時間領域での切り替えを行う際、圧電駆動部郡A113aと圧電駆動部郡B113bとで信号の切り替えに時間差を与え、発生する機械的な振動が圧電駆動部郡A113aと圧電駆動部郡B113bとで逆相するようにして打ち消すことも可能である。これにより、高速な描画や複雑な駆動波形への応答が可能になる。
【0020】
図2に示されるように、第3駆動部130a、第4駆動部130bは、弾性部であるシリコン活性層163の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203の順に形成されて構成される。上部電極203及び下部電極201は、例えば金(Au)又は白金(Pt)等から構成される。圧電部202は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料である。
【0021】
図1に戻り、第2支持部140は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163から構成され、ミラー部101、第1駆動部110a、第2駆動部110b、第1支持部120及び第3駆動部130a、第4駆動部130bを囲うように形成された矩形の支持体である。
【0022】
電極接続部150は、例えば、第2支持部140の+Z側の面上に形成され、第1駆動部112a、第2駆動部112b、第3駆動部131a~131fの各上部電極203及び各下部電極201,及び制御装置11にアルミニウム(Al)等の電極配線を介して電気的に接続されている。なお、上部電極203又は下部電極201は、それぞれが電極接続部と直接接続されていてもよいし、電極同士を接続する等により間接的に接続されていてもよい。
【0023】
なお、本実施形態では、圧電部202が弾性部であるシリコン活性層163の一面(+Z側の面)のみに形成された場合を一例として説明したが、弾性部の他の面(例えば-Z側の面)に設けても良いし、弾性部の一面及び他面の双方に設けても良い。
【0024】
また、ミラー部を第1軸周り又は第2軸周りに駆動可能であれば、各構成部の形状は実施形態の形状に限定されない。例えば、トーションバー111a、111bや第1駆動部112a、第2駆動部112bが曲率を有した形状を有していてもよい。また、例えば、トーションバー111a、111bがそれぞれ複数で構成されていても良い。
【0025】
さらに、第1駆動部110a、第2駆動部110bの上部電極203の+Z側の面上、第1支持部の+Z側の面上、第3駆動部130a、第4駆動部130bの上部電極203の+Z側の面上、第2支持部の+Z側の面上の少なくともいずれかに酸化シリコン膜を含む絶縁層が形成されていてもよい。このとき、絶縁層の上に電極配線を設け、また、上部電極203又は下部電極201と電極配線とが接続される接続スポットのみ、開口部として部分的に絶縁層を除去又は絶縁層を形成しないことにより、第1駆動部110a、第2駆動部110b、第3駆動部130a、第4駆動部130b及び電極配線の設計自由度を上げ、さらに電極同士の接触による短絡を抑制することができる。また、酸化シリコン膜は、反射防止材としての機能も備える。
【0026】
[制御装置の制御の詳細]
次に、可動装置の第1~4駆動部を駆動させる制御装置の制御の詳細について説明する。
【0027】
第1駆動部110a、第2駆動部110b、第3駆動部130a、第4駆動部130bが備える圧電部202は、分極方向に正又は負の電圧が印加されると印加電圧の電位に比例した変形(例えば、伸縮)が生じ、いわゆる逆圧電効果を発揮する。第1駆動部110a,第2駆動部110b、第3駆動部130a、第4駆動部130bは、上記の逆圧電効果を利用してミラー部101を可動させる。
【0028】
このとき、ミラー部101の反射面14がXY平面に対して+Z方向又は-Z方向へ傾いた時のXY平面と反射面14により成す角度を、振れ角とよぶ。この時、+Z方向を正の振れ角、-Z方向を負の振れ角とする。
【0029】
まず、第1駆動部を駆動させる制御装置の制御について説明する。第1駆動部110a、第2駆動部110bでは、第1駆動部112a、第2駆動部112bが有する圧電部202に、上部電極203及び下部電極201を介して駆動電圧が並列に印加されると、それぞれの圧電部202が変形する。この圧電部202の変形による作用により、第1駆動部112a、第2駆動部112bが屈曲変形する。その結果、2つのトーションバー(接続部)111a、111bのねじれを介してミラー部101に第1軸周りの駆動力が作用し、ミラー部101が第1軸周りに可動する。第1駆動部110a、第2駆動部110bに印加される駆動電圧は、制御装置11によって制御される。
【0030】
そこで、制御装置11によって、第1駆動部110a、第2駆動部110bが有する第1駆動部112a、第2駆動部112bに所定の正弦波形の駆動電圧を並行して印加することで、ミラー部101を、第1軸周りに所定の正弦波形の駆動電圧の周期で可動させることができる。
【0031】
特に、例えば、正弦波形電圧の周波数がトーションバー111a、111bの共振周波数と同程度である約20kHzに設定された場合、トーションバー111a、111bのねじれによる機械的共振が生じるのを利用して、ミラー部101を約20kHzで共振振動させることができる。
【0032】
図3は第1の比較例を示す平面図である。ミラー部101に対して第1~第4の駆動部の位置が異なる。駆動部材(110a~110d)には、駆動部(112a~112d)、トーションバー(111a~111d)および第1支持部120に接続する支持体などを含む。
【0033】
図4は第1の比較例の直線A-A'の断面図である。反射面14はミラー部基体102の表面に形成され、駆動部112d、112bの駆動によって回動する。ミラー部101は、リブ141によって機械的な強度を上げている。リブ141は、シリコン支持層161によって形成されている。
【0034】
図3のように、ミラー部101の4か所を支持し、支持したか所のそれぞれを駆動する構成とすることで、2次元に光偏向可能な可動装置となる。
図1はラスタ走査に適した可動装置であるのに対し、
図3はベクター走査やリサージュ走査に適している。ラスタ走査の場合は、
図5に示すように、画面に画像などを一様に表現する場合に適している。
図6のようなベクター走査では効率的に短時間の走査で図形などを示すことに適している。特に、
図6に示す始点終点4から一筆書きで図形などを表示する場合は、非常に効率がよい。
【0035】
また、材質や製造工程や電気的な接続や制御方法は
図1と同様の構成で実施可能であるが、上述の接続、及び制御方法に限定されない。駆動部の駆動方式は圧電駆動に限定されない。静電駆動、電磁駆動、熱電駆動であってもよい。各構成部の形状は実施形態の形状に限定されない。
【0036】
図7は本実施形態の可動装置を示す図である。
図7に示されている矢印は、X方向、Y方向、及びZ方向を示しており、後述するA-A'断面図(
図8等)で説明する方向は、本図面で示す方向に対応する。本実施形態に示す可動装置は、可動部3と、駆動部材110a~110dと、第1支持部120と、電極接続部150と、を備える。また、駆動部材110a~110dのそれぞれは、駆動部112a~112dと、トーションバー111a~111dと、を含む。可動部3は、駆動部材110a~110dの略中央に配置されトーションバー111a~110dによって4か所で支持されている。可動部それぞれの駆動部112a~112dは可動部3を2次元の+の振れ角、-の振れ角に回動させる。可動部3の駆動部材110a~110dと接続していない側の端部は、ミラー部101と接続しており、可動部3を介してミラー部101(反射部の一例)を2次元に回動させることができる。
【0037】
図8は、
図7に示す可動装置の直線A-A'における断面図である。
図8に示すように、可動部3とミラー部101は、支持層124を介して接続されている。また、ミラー部101には、ピラー122と、リブ141と、が設けられている。
【0038】
可動部3は、シリコン活性層128と酸化シリコン層126の2層から構成されている。これらの層は、第1のSOI基板から、例えばシリコン活性層163、及び酸化シリコン層162と共に形成される。
【0039】
支持層124は、第1接合部123、及び酸化シリコン層126(第2接合部と称することもある)によって可動部3と接続している。言い換えると、本実施形態における支持層124は、可動部3とミラー部101を、ミラー部101の反射面と交差する方向に連結する連結部888としての機能を有する。支持層124は、選択性のドライエッチングによって任意形状に一体的に形成され、平面状の可動部3から下方(-Z方向)に突き出している。支持層124は、第1のSOI基板から、例えばシリコン支持層161と共に形成される。
【0040】
第1接合部103は、例えば、接着性樹脂などの接着剤である。第1接合部123の直径は、支持層124の直径に対し大きくなるように構成している。これにより、支持層124の接合面の全域が確実に第1接合部103と接触できるため、ミラー部101との連結をより強固にすることができる。
【0041】
ミラー部101は、ミラー部基体102の下面に反射面106が形成されている。ミラー部基体102は、例えば、シリコン活性層303、酸化シリコン層302、及びシリコン支持層301で構成される第2のSOI基板から、シリコン活性層303によって構成される。
【0042】
ピラー122(凸部と称することもある)は、例えば、第2のSOI基板のシリコン支持層301から形成される。ピラー122は、支持層124の近傍において支持層124を囲うよう、筒状に形成されている。ピラー122を設けることにより、第1接合部123として機能する接着剤の濡れ広がりを抑制することができる。また、第1接合部123とピラー122の内壁の少なくとも一部が接触することで、第2のSOI基板によって形成された部材と接着剤との接触面をより大きくすることができる。これにより、支持層124とミラー部101との連結をより強固にすることができる。このように、本実施形態におけるピラー122は、支持層124とミラー部101との連結を補強する補強部999としての機能を有する。
【0043】
リブ141は、例えば、第2のSOI基板のシリコン支持層301から形成される。リブ141は、支持層124を囲うよう、ミラー部101の縁部に筒状に形成されている。
【0044】
ピラー122およびリブ141は、SOI基板の同一のシリコン支持層によって形成される。厚さが数十ミクロンの薄いシリコン活性層のミラー部基体102に対し、シリコン支持層301は厚さ数100ミクロンあり、ミラー部基体102の骨格となっている。リブ141とピラー122が一体となってミラー部基体102の構造を強化することが可能となる。特に、ミラー部101の応力が集中する第1接合部123の近傍に、リブ141を配置し、ピラー122と強固に接合することで、効率的に強度を高めている。シリコン支持層301は数100ミクロンの厚さがあり、ピラー122の内壁の高さを確保することも可能となる。
【0045】
第2のSOI基板でリブ141を形成することで、ミラー部101の強度を向上することができる。そのため、シリコン活性層303の薄い層で、ミラーの大部分を占めるミラー部基体102を構成することができ、軽量化が図れている。リブ機能による機械強度の維持により、ミラー部101を軽量化でき、慣性モーメントを低減できる。これにより、ミラー部101をより高速に揺動できる他、同じ駆動力に対するミラー部101の最大振れ角を増大させることができる。
【0046】
ピラー122は、ミラー部基体102に備わっている第2のSOI基板によって形成されている。
【0047】
円筒状のピラー122の直径213は、可動部3の直径212よりも小さく構成される。ピラー122の内部に配置させる支持層124も可動部よりも小さい。これにより、可動部3は大きな直径を有していることにより可動部のトルクを確保することができる。また可動部3の直径212に合わせてトーションバー111b、及び111dの幅を調節可能であるため、機械強度の向上と、同じ駆動力に対するミラー部101の最大振れ角の増大を両立できる。同時にピラー122が細いことで慣性モーメント低減の低減を実現できている。これにより振り幅が大きい可動装置を実現できる。
【0048】
ピラー122と支持層124の高さの大小関係について、以下に述べる。基準位置はミラー部基体102の上面であり、第2のSOI基板である酸化シリコン層302の上面とする。ピラー122の高さは基準位置222からピラー122の上面221までの距離となる。また、支持層124の高さは、基準位置222から酸化シリコン層126との接合面220までの距離である。酸化シリコン層126との接合面220は、第1のSOI基板の酸化シリコン層の下面に当たる。支持層124の高さには、第1接合部123の厚さを含まない。このように比較したピラー122の高さと支持層124の高さは、支持層124の方が高いことが望ましい。この状態であれば、ミラー部基体102の強度を維持するピラーが強固な構造体となると同時に、支持層124の回動の障害になることを防止できる。これにより、慣性モーメントが小さく、かつミラー部101の振れ幅を大きくとることが可能となる。
【0049】
ピラー122と同様の目的で、リブ141をミラー部基体102の周辺に形成している。リブ141は第2のSOI基板のシリコン支持層301によって構成されている。このリブ141の高さも、先のピラー122の高さと同様に基準位置222とピラー122の上面221によって決まる。リブ141の高さも、支持層124の高さよりも低く設計する。これにより、ミラー部101が回動する際、リブ141とトーションバー111b又は111d等との接触による破損を抑制できる。リブ141によりミラー部基体102は軽量であるが強固な反射面106を形成することが可能となる。軽量であるため慣性モーメントを小さくできる。
【0050】
図9は、第1接合部123(接着性樹脂)の周辺を拡大した断面図である。第1接合部123には接着性樹脂が備わっており、第1接合部123を接着性樹脂と呼ぶことがある。本実施形態ではピラー122は円筒状であり、支持層124に対し、数十ミクロン程度、内径が大きく形成される。つまり、支持層124およびピラー122の間には、数十ミクロンの隙間を設けている。この隙間を介して、支持層124の側壁とピラー122の内壁が対向している。支持層124は弾性体である第1接合部123によって、ミラー部基体102に固定され、ピラー122はミラー部基体102とは強固な共有結合である酸化シリコン層302を介して固定されている。
【0051】
支持層124とピラー122とに働く異なる方向の力によって、相対的に移動する可能性がある。相対的な移動を抑制することで、接合部の長期的な安定性が高まる。支持層124の側壁とピラー122の内壁が適切に対向することで、支持層124が移動しても、ピラー122が対抗することで、支持層がそれ以上は移動することがない。この対向状態を最適に形成することで、機械強度の強い接合を得ることができる。これにより駆動部材110a~110dに接続されている支持層124とミラー部基体102とが強固に固定される。
【0052】
支持層124とピラー122の隙間が適切に設計されることで、ミラー部101を実装する際のクリアランスを取ることが可能となる。この隙間は、ミラー部101を実装するダイボンダーの性能上、少なくとも1ミクロン以上あることが望ましい。これはダイボンダーに備わっている焦点深度の深い実体顕微鏡の回折限界に依存している。
【0053】
支持層124の先端(下面)によって、第1接合部123の上部から押圧することで、第1接合部123を変形させ、熱などによって硬化させる。支持層124とミラー部基体102との間に挟まれる第1接合部123の厚さは、10ナノメートル以上が望ましい。接着性樹脂は弾性体であり、外部からの衝撃を吸収し、界面の剥離などを起こさないが、10ナノメートル以下では、この衝撃を吸収するだけの弾性変形を起こすことができなくなる。
【0054】
支持層124の下面は第1接合部123によってミラー部基体102と接合されている。第1接合部123は、熱硬化性の樹脂が望ましく、エポキシやシリコン樹脂などの一般的な接着剤でよい。第1接合部123の引張弾性率は、20N/mm^2以下とすることが望ましい。これにより外部からの振動などの衝撃を吸収し、界面での剥離を抑制し、接合部の長期的な安定性を図れる。
【0055】
支持層124の先端(下面)によって、第1接合部123の上部から押圧することで、第1接合部123を変形させ、その変形した状態を維持しながら熱によって硬化する。支持層124は濡れ性が高いため、変形した第1接合部123は支持層124の側面にも這い上がる。支持層124の側面およびピラー122の内壁にも第1接合部123が接触した状態で硬化する。これにより支持層124はピラー122の内壁からも固定されることになる。支持層124の側面は、Z方向に延伸しており、接合面に垂直に延伸する面の一例である。
【0056】
第1接合部123はピラー122内壁と支持層124の外壁(側面)の間にも挟まれている。挟まれることで、ピラーに122に対し相対的な支持層124の移動を抑制する。つまりは、支持層124の移動を誘発する外部からの衝撃を吸収し、移動を抑制する。
【0057】
第1接合部123の引張弾性率は、0.001N/mm^2以上とすることで、支持層124とピラー122に挟まれた第1接合部123が外部抗力に耐えうることができ、相対的な移動を抑制でき、支持層124とピラー122の距離を一定に保つことができる。
【0058】
上記に記した支持層124の外壁(側面)とピラー122の内壁との固定は、支持層124が底面だけで固定されている場合に比べはるかに機械強度を増す。特に、ミラー部基体102の水平方向にかかるXY平面上の衝撃的な振動には、それに対抗するZ方向に延伸する側面での固定が大きな役割を果たす。底辺だけの固定では、XY平面に平行な方向のせん断応力であるのに対し、Z方向に延伸する側面での固定では、第1接合部123のヤング率によって変化する量で対抗する力になる。
【0059】
支持層124とピラー122との隙間が大きいと、支持層124がピラーの内壁から距離が大きくなりすぎる。第1接合部123の這い上がりを考慮すると、隙間は100ミクロン以下であることが望まれる。ただし、本実施形態で用いる接着性樹脂の粘性などによって影響するため、この限りではない。なお、
図9では、第1接合部123によって支持層124とミラー部基体102が隔離している様子を示しているが、隔離していなくても良い。例えば、支持層124とミラー部基体102の一部又は全部が接触し、支持層124とピラー122との間を第1接合部123で接着する構成としても良い。
【0060】
第1接合部123は接合方法の一例である。接合方法は、例えば、Ti/Ni/Auなどの積層構造を用いて、AuとAuの金属接合を利用することで、さらなる強固な接合方法を採用してもよい。また、ウエハ接合の場合、金属拡散接合、共晶接合、接着剤接合、陽極酸化接合、ガラスフリット接合によるいずれかが望ましい。またSiとSiなどの接合などもでもよい。
【0061】
駆動部112a~112dの形状は、アクチュエータにより反射面を回動させる構成であれば、これに限られない。第1支持部120には駆動部112a~112d以外にも、例えば変位の検出部や、ヒーター、電気配線等を有していてもよい。
【0062】
印可電圧の信号波形は実施形態例に限られず、Sin波や矩形波、鋸波のような周期的な波形であってもよいし、より複雑な周期波形であってもよい。DC駆動であってもよい。また、構造固有の共振周波数に駆動波形の周波数を近づけ、リサージュ走査してもよい。
【0063】
駆動部112a~112dの駆動方法は、圧電駆動、静電駆動、電磁駆動、熱電駆動などがあるが、低電圧化・集積化の観点で相性のよい圧電駆動が望ましい。
【0064】
図10は、
図7のA-A'断面と対応する方向から見た、第1の変形例の断面図である。
図7で示した実施形態に対し、ピラー122と支持層124の位置が異なり、支持層124が円筒状となり、ピラー122を囲う形態である。本変形例における支持層124は、可動部3とミラー部101を、ミラー部101の反射面と交差する方向に連結する連結部888としての機能を有する。また本変形例におけるピラー122は、支持層124とミラー部101との連結、すなわち可動部3とミラー部101との連結を補強する補強部999としての機能を有する。
【0065】
可動部3はトーションバー111b、111dと接続しており、駆動部112a~112dからの動力によって回動する。可動部3は、第1のSOI基板のシリコン活性層128と酸化シリコン層126により形成される。可動部3の酸化シリコン層126から、下方に支持層124が円筒状に突出している。支持層124は、第1のSOI基板から形成され、シリコンの共有結合により可動部3と強固に一体化している。支持層124は、第1接合部123によって、第2のSOI基板から形成されるミラー部基体102と接合している。
【0066】
第2のSOI基板は、ミラー部基体102とミラーの端部に形成されたリブ141およびピラー122を備えている。ピラー122は円筒状の支持層124の内側に挿入されている。
【0067】
ピラー122がミラー部101の中央に位置していることで、円筒状の支持層124を実装するときに、ガイドとして利用することができ、実装工程が容易となる。ピラー122に比べ支持層124の方を高く設計することで、ピラー122が可動部3に干渉することがない。
【0068】
図11は、第1接合部123の周辺を拡大した断面図である。第1の変形例では支持層124は円筒状であり、ピラー122を囲う形態となっている。ビア144はピラー122に対し、数十ミクロン程度大きい内径で形成される。つまり、ピラー122外壁の側面と支持層124の内壁の間には、数十ミクロンの隙間を設けている。この隙間をおいて、支持層124の内壁とピラー122の側面が対向している。この対向状態を最適に形成することで、機械強度の強い接合を得ることができる。これにより駆動部材110a~110dに接続されている支持層124とミラー部基体102が強固に固定される。
【0069】
支持層124は第1接合部123を介して、ミラー部基体102に接続されている。ミラー部101の中心および可動部3の中心にピラー122を形成する。ピラー122を中心に支持層124が囲むように配置されている。第1接合部123は、支持層124の内壁および、ピラー122の側面に這い上がるように配置されている。製造工程において、弾性のあるペースト状の第1接合部123が支持層124に押圧されることで、適切に変形し、その後の硬化工程で硬化されている。第1接合部123は、支持層124とピラー122との間にも挟まれている。これにより、第1接合部123の接着領域を増やすことや支持層124の相対的な移動を抑制することが可能となる。接合部の接合強度を強化することができる理由は、本実施形態と同様である。本変形例では、円柱状のピラー122の同心円上に、支持層124を円筒状に配置し、第1接合部123の変形する際には点対称に変形するようにした。これにより接着性樹脂の重心の点対称性が向上し、回動の安定化が図れる。回動の安定性は、高速化および、耐振動の向上性が期待できる。
【0070】
図12は、
図7のA-A'断面と対応する方向から見た、第2の変形例の断面図である。
図7で説明した実施形態に対し、ピラー122と支持層124の位置が異なる。可動部3の酸化シリコン層126と接続した支持層124が円筒状に突出した形態で一体的に成形されている。支持層124の内壁に挿入するように、第2のSOI基板によって形成されている円柱状のピラー122が配置されている。ピラー122は支持層124によって囲われている。ピラー122は接着性材料125を介して、可動部3の酸化シリコン層126に接合されている。支持層124は補強部の一例である。ピラー122は連結部の一例である。本変形例におけるピラー122は、可動部3とミラー部101を、ミラー部101の反射面と交差する方向に連結する連結部888としての機能を有する。また本変形例における支持層124は、支持層124とミラー部101との連結、すなわち可動部3とミラー部101との連結を補強する補強部999としての機能を有する。
【0071】
図13は、第1接合部123の周辺を拡大した断面図である。第2の変形例では支持層124は円筒状であり、ピラー122に対し、数十ミクロン程度大きい内径が形成されている。つまり、支持層124およびピラー122の間には、数十ミクロンの隙間を設けている。この隙間をおいて、支持層124の側壁とピラー122の内壁が対向している。この対向状態を最適に形成することで、機械強度の強い接合を得ることができる。
【0072】
ピラー122は接着性材料125(例えば接着性樹脂)によって、可動部3の酸化シリコン層126に固定されている。また、接着性材料125はピラー122の側面および支持層124の内壁にまで這い上がるように配置されている。円柱上のピラー122を中心に円筒状の支持層124が囲むように配置されている。また、その内部では、接着性材料125がピラー122と支持層124の間を埋めるように配置されている。接着性材料125はピラー122の側面および支持層124の内壁によって挟まれている。これにより、接着性材料125の接着領域を増やし、かつ、相対的な移動を抑制している。これにより、ミラー部基体102に接続されているピラー122と可動部3の酸化シリコン層126とが強固に固定される。
【0073】
図14は第3の変形例である。中央部にミラー部101があり、トーションバー111aによって支持されている。トーションバー111aと駆動部112aを含む駆動部材110aは第1支持部120に固定されている。ミラー部101は駆動部材(110a~110d)によって、4か所から支持されている。それぞれの4つの駆動部材(110a~110d)は平面視においてミラー部101を中心にした点対称に配置されている。それぞれの駆動部材(110a~110d)は、ミラー部101を2次元の+の振れ角、-の振れ角に回動する。なお、上述した平面視とは、
図14において+Z方向からXY平面を見ることを言う。換言すると、回動していないときのミラー部101の法線方向から見ることを言う。
【0074】
図15は、
図7のA-A'断面と対応する方向から見た、第3の変形例の断面図である。第1のSOI基板から形成されたミラー部101が、ピラー122によって可動部3に接続している。ミラー部101は、シリコン活性層163と、酸化シリコン層162と、反射面14で構成されている。ピラー122は、同じ第1のSOI基板のシリコン支持層161から、半導体プロセスによって一体的に成形されている。ピラー122とミラーの酸化シリコン層162との界面は、非常に強硬な結合をしている。
【0075】
可動部3には、支持層124および可動部3のビア144が形成されている。ビア144は、第2のSOI基板のシリコン活性層303において、シリコン活性層303を選択性のドライエッチングによって、窪み146と共に形成される。窪み146、は底面を第2のSOI基板の酸化シリコン層で構成され、その周辺を可動部のビア144によって囲むように形成される。窪み146の内壁であるビア144の側面とピラー122の外壁は対向している。ピラー122は連結部の一例であり、ビア144は補強部の一例である。本変形例におけるピラー122は、本実施形態における支持層124は、可動部3とミラー部101を、ミラー部101の反射面と交差する方向に連結する連結部888としての機能を有する。また本変形例におけるビア144は、支持層124とミラー部101との連結、すなわち可動部3とミラー部101との連結を補強する補強部999としての機能を有する。
【0076】
-Z方向を法線としたピラー122の下面と可動部3は、接着性材料125を介して接合している。これによりミラー部101と可動部3とが接合している。窪み146の底面は酸化シリコン層302に限定されず、第2のSOI基板のシリコン支持層301によって形成された支持層124が担っても構わない。接着性材料125は、ピラー122側面および、ビア144の内壁にも接触している。ビア144の側面とピラー122の側面の間に接着性材料125が挟まれている。これにより、ピラー122を側面方向からも固定している。これにより、水平方向の衝撃に対し、機械強度を増している。
【0077】
支持層124は第2のSOI基板のシリコン支持層301によって構成されている。支持層124はビア144の内径よりも小さく設計している。適切な大きさに設計することで、可動部3の強度やトルクの大きさ、軽量化などを適切に配分することが可能となる。本変形例では、支持層124の直径よりも、ピラー122の直径を小さくしている。これによって、ミラー部101および可動部3およびピラー122を含めて可動する要素の重量を低減して、慣性モーメントを低減することが可能である。
【0078】
接着性材料125は塗布段階では粘性を設計しコントロールした液体を、設計された滴下量をディスペンサーによって、設計された位置に塗布される。塗布した後に、ミラーを実装し、ピラー122の先端で接着性材料125を押圧し変形させる。接着性材料125を塗布する工程もしくは押圧変形させる工程において、塗布した接着剤が可動部3やトーションバー11b、111dにはみ出す可能性がある。
【0079】
本変形例では、シリコン活性層303に窪み146を設けている。この窪み146によって、液性の接着性材料125がはみ出してしまうことを抑制することが可能となる。はみ出した先がトーションバー111b、111dとなった場合、硬化した接着性材料125は、トーションバーのばね定数を悪化させるため、安定した可動ができなくなる。窪み146によって可動部内に接着性材料125を適切な位置に配置することが可能となり、可動部の支持層の揺動が安定し、ミラー部101を高速に回動することが可能になる。
【0080】
シリコン活性層303によってトーションバー111a~111dも形成されているため、トーションバー111a~111dと窪み146である補強部が共有結合の結晶構造でつながっている。トーションバー111a~111dは、駆動部112a~112dからの運動をそのばね機能によって増強し補強部999に直接伝達する。駆動部112a~112d、トーションバー111a~111d、補強部999のすべての動力伝達経路がすべて同一の共有結合の結晶構造であり、界面が存在しないため強固な構造体である。このため、剥離などの破断を防ぐことができる。
【0081】
本変形例では、反射面14と電極接続部150の面が同一面となる。これにより、裏面から電極を取るための3次元的な実装手法を採用する必要がなくなる。同一面であるために、一般的なワイヤーボンディング方法などによる電気的な実装が可能となる。低コストの実装が可能となる。
【0082】
図16は第4の変形例を示す。
図16はピラー122の形状について説明する図である。
図16(a)は第1のSOI基板で形成されたミラー部101と第2のSOI基板で形成された可動部3の周辺部分に着目した断面図である。可動部3に繋がるトーションバーや駆動部は図示していない。
図16(b)はピラー122の断面図(B-B')である。断面図には、理解しやすいように断面(B-B')よりも下部にある可動部3のシリコン活性層128の形状も同じ図面上に示している。
図16(b)では、ピラー122の断面が、円形であることが示されている。
【0083】
ピラー122の断面形状が円形であると点対称となる。第1接合部123の塗布工程および押圧変形する際に、第1接合部123が対称性よく変形する。第1接合部123を対称性良く配置することが可能となる。2次元に回動する際に、重量のバランスがよく、安定した回動が可能となる。
【0084】
図16(c)には他の例を記している。
図16(c)のようにピラー122の断面形状が矩形であると、第1接合部123のピラー122の側面での塗布面積を増やし、接着強度を強めることが可能となる。
【0085】
図16(d)に示すように、可動部3とピラー122の断面形状は相似ではなく、異なっていてもよい。
【0086】
図17は、第1支持部120の構成を変えた変形例を示す断面図である。
図17(a)は、
図8に示す変形態と同じであり、第2のSOI基板で形成される第1支持部120はシリコン支持層301によって形成されている。
図17(b)は第5の変形例である。第1支持部120にのみ、Si基板を接合し、シリコン支持層304を第1支持部120に加えている。
図17(c)は第6の変形例である。第1支持部120にのみ、アルミやセラミックなどの材料で加工された、支持部(セラミックまたはアルミなど)306を接着層305によって接合している。第1支持部120を硬度の高い材料で構成することで、可動装置全体の強度を向上することができる。
【0087】
図18(a)は、第7の変形例を示す断面図である。可動部3に、2つの支持層124a、124bが形成される形態である。この2つの支持層124a,124bがミラー部基体102の酸化シリコン層302と接合されている。
【0088】
図18(b)は第8の変形例を
図7のA-A'断面と対応する方向から見た、第8の変形例の断面図である。本変形例は、
図7で示した実施形態に対し、第1のSOI基板で形成されたミラー部基体102のシリコン支持層161がピラー122a、122bとなっている。ピラーは122aおよび122bと示すように2本のピラーで構成されている。ピラー122a、122bは、可動部3のシリコン活性層128に接着性材料125を介して接合している。可動部3のシリコン活性層および酸化シリコン層302は2か所の窪みを形成して、その窪みに合わせてピラー122aおよび122bが配置されている。
【0089】
第7の変形例および第8の変形例ともに、2つのピラーもしくは2つの支持部によって、ミラー部基体102と可動部3が接合されている。
【0090】
図19には、第7の変形例のC-C'断面の例を示す。
図19(a)は、支持層124aと支持層124bの2つの支持層が並列して配置している。その間に、ピラー122が3本並列している形態である。
【0091】
図19(b)には、同心円状に配置した2本のピラーを配置した例を示している。円柱状の第1のピラー122および支持層124a、その外側に第2のピラー122を示している。2本のピラーは、2本を並列にしてもよいし、円筒状の第2のピラー内部に、円柱状の第1のピラーを並べてもよい。その間には第1接合部123が存在し、それぞれを強固に固定している。
【0092】
このように複数の面で接合することで接合強度が増し、大きな画角を得ることが可能になる。本変形例では2つの支持層124a、124bまたは第1及び第2のピラー122での例を示したが、支持層・ピラーの数や形状は実施形態の形状に限定されない。複数本の支持層またはピラーで連結部を構成することで強度が向上する。
【0093】
図20は、第9の変形例を示す平面図である。
図20は支持部に複数の梁部が折り返すように接続されたミアンダ構造を有する可動装置である。
【0094】
第1支持部120や駆動部112a~112bの形状や詳細は実施形態例に限定されないが、駆動部112a~112bの支持体をミアンダ構造とすることで、第1のSOI基板である駆動部材110a~110d周辺の大きさや重さが増えることによる構造非線形性の増加を抑えることができ、大きな画角を得ることができる。また、各々の梁部の+Z側の面の上に、梁部ごとに、交互に圧電駆動部郡A113aと圧電駆動部郡B113bが設けられた場合、Aのみを駆動、またはBのみを駆動とすることで、負電圧を使わずともミラーの振れ角を+側、あるいは-側と制御することが可能である。さらに、前記圧電駆動体Aと前記圧電駆動体Bに逆位相の電圧を与え、印可する信号の電圧や時間領域での切り替えを行う際、前記圧電駆動体Aと前記圧電駆動体Bとで信号の切り替えに時間差を与え、発生する機械的な振動がAとBとで逆相するようにして振動のリンギングを打ち消すことも可能である。
【0095】
リンキングのような高周波の細動は、接合面などの悪影響を及ぼす可能性があり、このリンキングを抑制することで剥離を抑制できる。
【0096】
図21は、第10の変形例を示す平面図である。第1のSOI基板に、駆動部112a~112dとトーションバー111a~111dを有する駆動部材(110a~110d)を設けている。駆動部材110aには開口部777が形成されており、トーションバー111aは2本から構成されている。また、駆動部112aは開口部777が中央付近まで伸びている。このように駆動部材110aに開口部777を有することで、トーションバー111aの弾性が増し、可動部の振れ角を増大することが可能となる。また、同じ、第1のSOI基板に回折素子等の光学機能素子108が設けられている可動装置である。光学機能素子108は、本実施形態のミラー部に入れ替える形で、他の要素は本実施形態と同じであってよい。光学機能素子の詳細は本実施形態に限定されない。光学機能素子はミラーなどの反射機能だけに留まらず、波長分散を起こすような機能やレンズのような集光機能を有していてもよい。光学機能素子は反射部の一例である。
【0097】
以下、本発明の可動装置を応用した実施形態について詳細に説明する。
【0098】
[光走査システム]
まず、本実施形態の可動装置を適用した光走査システムについて、
図22~
図25に基づいて詳細に説明する。
【0099】
図22には、光走査システムの一例の概略図が示されている。
図22に示すように、光走査システム10は、制御装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を可動装置13の有する反射面14により偏向して被走査面15を光走査するシステムである。
【0100】
光走査システム10は、制御装置11、光源装置12、反射面14を有する可動装置13により構成される。
【0101】
制御装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。可動装置13は、例えば反射面14を有し、反射面14を可動可能なMEMS(Micro Electromechanical Systems)デバイスである。光源装置12は、例えばレーザを照射するレーザ装置である。なお、被走査面15は、例えばスクリーンである。
【0102】
制御装置11は、取得した光走査情報に基づいて光源装置12及び可動装置13の制御命令を生成し、制御命令に基づいて光源装置12及び可動装置13に駆動信号を出力する。
【0103】
光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光源の照射を行う。可動装置13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14を1軸方向又は2軸方向の少なくともいずれかに可動させる。
【0104】
これにより、例えば、光走査情報の一例である画像情報に基づいた制御装置11の制御によって、可動装置13の反射面14を所定の範囲で2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する光源装置12からの照射光をある1軸周りに偏向して光走査することにより、被走査面15に任意の画像を投影することができる。なお、
図22では、一例としてラスタ走査により画像を投影する際の概略図を示しているが、本実施形態の可動装置によれば、リサージュ走査、又はベクトル走査によって画像を投影することもできる。本実施形態の可動装置の詳細及び制御装置による制御の詳細については後述する。
【0105】
次に、光走査システム10一例のハードウェア構成について
図23を用いて説明する。
図23に示すように、光走査システム10は、制御装置11、光源装置12及び可動装置13を備え、それぞれが電気的に接続されている。このうち、制御装置11は、CPU20、RAM21(Random Access Memory)、ROM22(Read Only Memory)、FPGA23、外部I/F24、光源装置ドライバ25、可動装置ドライバ26を備えている。
【0106】
CPU20は、ROM22等の記憶装置からプログラムやデータをRAM21上に読み出し、処理を実行して、制御装置11の全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0107】
RAM21は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。
【0108】
ROM22は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU20が光走査システム10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
【0109】
FPGA23は、CPU20の処理に従って、光源装置ドライバ25及び可動装置ドライバ26に適した制御信号を出力する回路である。
【0110】
外部I/F24は、例えば外部装置やネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えば、PC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、SSD等の記憶装置が含まれる。また、ネットワークは、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット等である。外部I/F24は、外部装置との接続又は通信を可能にする構成であればよく、外部装置ごとに外部I/F24が用意されてもよい。
【0111】
光源装置トライバは、入力された制御信号に従って光源装置12に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0112】
可動装置ドライバ26は、入力された制御信号に従って可動装置13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0113】
制御装置11において、CPU20は、外部I/F24を介して外部装置やネットワークから光走査情報を取得する。なお、CPU20が光走査情報を取得することができる構成であればよく、制御装置11内のROM22やFPGA23に光走査情報を格納する構成としてもよいし、制御装置11内に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
【0114】
ここで、光走査情報とは、被走査面15にどのように光走査させるかを示した情報であり、例えば、光走査により画像を表示する場合は、光走査情報は画像データである。また、例えば、光走査により光書込みを行う場合は、光走査情報は書込み順や書込み箇所を示した書込みデータである。他にも、例えば、光走査により物体認識を行う場合は、光走査情報は物体認識用の光を照射するタイミングと照射範囲を示す照射データである。
【0115】
制御装置11は、CPU20の命令及び
図23に示したハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
【0116】
次に、光走査システム10の制御装置11の機能構成について
図24を用いて説明する。
図24は、光走査システムの制御装置の一例の機能ブロック図である。
【0117】
図24に示すように、制御装置11は、機能として制御部30と駆動信号出力部31とを有する。
【0118】
制御部30は、例えばCPU20、FPGA23等により実現され、外部装置から光走査情報を取得し、光走査情報を制御信号に変換して駆動信号出力部31に出力する。例えば、制御部30は、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。駆動信号出力部31は、光源装置ドライバ25、可動装置ドライバ26等により実現され、入力された制御信号に基づいて光源装置12又は可動装置13に駆動信号を出力する。
【0119】
駆動信号は、光源装置12又は可動装置13の駆動を制御するための信号である。例えば、光源装置12においては、光源の照射タイミング及び照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば、可動装置13においては、可動装置13の有する反射面14を可動させるタイミング及び可動範囲を制御する駆動電圧である。
【0120】
次に、光走査システム10が被走査面15を光走査する処理について
図25を用いて説明する。
図25は、光走査システムにかかる処理の一例のフローチャートである。
【0121】
ステップS11において、制御部30は、外部装置等から光走査情報を取得する。
【0122】
ステップS12において、制御部30は、取得した光走査情報から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部31に出力する。
【0123】
ステップS13において、駆動信号出力部31は、入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12及び可動装置13に出力する。
【0124】
ステップS14において、光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光照射を行う。また、可動装置13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14の可動を行う。光源装置12及び可動装置13の駆動により、任意の方向に光が偏向され、光走査される。
【0125】
なお、上記光走査システム10では、1つの制御装置11が光源装置12及び可動装置13を制御する装置及び機能を有しているが、光源装置用の制御装置及び可動装置用の制御装置と、別体に設けてもよい。
【0126】
また、上記光走査システム10では、一つの制御装置11に光源装置12及び可動装置13の制御部30の機能及び駆動信号出力部31の機能を設けているが、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部30を有した制御装置11とは別に駆動信号出力部31を有した駆動信号出力装置を設ける構成としてもよい。なお、上記光走査システム10のうち、反射面14を有した可動装置13と制御装置11により、光偏向を行う光偏向システムを構成してもよい。
【0127】
[画像投影装置]
次に、本実施形態の可動装置を適用した画像投影装置について、
図26及び
図27を用
いて詳細に説明する。
【0128】
図26は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した自動車400の実施形態にかかる概略図である。また、
図27はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。
【0129】
画像投影装置は、光走査により画像を投影する装置であり、例えばヘッドアップディスプレイ装置である。
【0130】
図26に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、ユーザーである観察者(運転者402)に向かう。これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によってユーザーに虚像を視認させる構成にしてもよい。
【0131】
図27に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R、501G、501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメータレンズ502、503、504と、2つのダイクロイックミラー505、506と、光量調整部507と、から構成される入射光学系を経た後、反射面14を有する可動装置13にて偏向される。そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と、中間スクリーン510と、投射ミラー511とから構成される投射光学系を経て、スクリーンに投影される。なお、上記ヘッドアップディスプレイ装置500では、レーザ光源501R、501G、501B、コリメータレンズ502、503、504、ダイクロイックミラー505、506は、光源ユニット530として光学ハウジングによってユニット化されている。
【0132】
上記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン510に表示される中間像を自動車400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。
【0133】
レーザ光源501R、501G、501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメータレンズ502、503、504で略平行光とされ、2つのダイクロイックミラー505、506により合成される。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面14を有する可動装置13によって二次元走査される。可動装置13で二次元走査された投射光Lは、自由曲面ミラー509で反射されて歪みを補正された後、中間スクリーン510に集光され、中間像を表示する。中間スクリーン510は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン510に入射してくる投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
【0134】
可動装置13は、反射面14を2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する投射光Lを二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R、501G、501Bの発光タイミングに同期して行われる。
【0135】
以上、画像投影装置の一例としてのヘッドアップディスプレイ装置500の説明をしたが、画像投影装置は、反射面14を有した可動装置13により光走査を行うことで画像を投影する装置であればよい。例えば、机等に置かれ、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投影、又は眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
【0136】
また、画像投影装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載されてもよい。
【0137】
なお、ヘッドアップディスプレイ装置500は、特許請求の範囲に記載の「ヘッドアップディスプレイ」の一例である。また自動車400は、特許請求の範囲に記載の「車両」の一例である。
【0138】
[光書込装置]
次に、本実施形態の可動装置13を適用した光書込装置について
図28及び
図29を用いて詳細に説明する。
【0139】
図28は、光書込装置600を組み込んだ画像形成装置の一例である。また、
図29は、光書込装置の一例の概略図である。
【0140】
図28に示すように、上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有するレーザプリンタ650等に代表される画像形成装置の構成部材として使用される。画像形成装置において光書込装置600は、1本又は複数本のレーザビームで被走査面15である感光体ドラムを光走査することにより、感光体ドラムに光書込を行う。
【0141】
図29に示すように、光書込装置600において、レーザ素子などの光源装置12からのレーザ光は、コリメータレンズなどの結像光学系601を経た後、反射面14を有する可動装置13により1軸方向又は2軸方向に偏向される。そして、可動装置13で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ602aと第二レンズ602b、反射ミラー部(可動部)602cからなる走査光学系602を経て、被走査面15(例えば感光体ドラムや感光紙)に照射し、光書込みを行う。走査光学系602は、被走査面15にスポット状に光ビームを結像する。また、光源装置12及び反射面14を有する可動装置13は、制御装置11の制御に基づき駆動する。
【0142】
このように上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有する画像形成装置の構成部材として使用することができる。また、走査光学系を異ならせて1軸方向だけでなく2軸方向に光走査可能にすることで、レーザ光をサーマルメディアに偏向して光走査し、加熱することで印字するレーザラベル装置等の画像形成装置の構成部材として使用することができる。
【0143】
上記光書込装置に適用される反射面14を有した可動装置13は、ポリゴンミラー等を用いた回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、光書込装置の省電力化に有利である。また、可動装置13の振動時における風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、光書込装置の静粛性の改善に有利である。光書込装置は回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また可動装置13の発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、よって画像形成装置の小型化に有利である。
【0144】
[物体認識装置]
次に、上記本実施形態の可動装置を適用した物体認識装置について、
図30及び
図31を用いて詳細に説明する。
【0145】
図30は、物体認識装置の一例であるライダ(LiDAR;Laser Imaging Detection and Ranging)装置を搭載した自動車の概略図である。ライダ装置を自動車の前照灯を搭載する灯部ユニットに搭載した自動車の概略図である。また、
図31はライダ装置の一例の概略図である。
【0146】
物体認識装置は、対象方向の物体を認識する装置であり、例えばライダ装置である。
【0147】
図30に示すように、ライダ装置700は、例えば自動車701に搭載され、対象方向を光走査して、対象方向に存在する被対象物702からの反射光を受光することで、被対象物702を認識する。
【0148】
図31に示すように、光源装置12から出射されたレーザ光は、発散光を略平行光とする光学系であるコリメートレンズ703と、平面ミラー704とから構成される入射光学系を経て、反射面14を有する可動装置13で1軸もしくは2軸方向に走査される。そして、投光光学系である投光レンズ705等を経て装置前方の被対象物702に照射される。光源装置12及び可動装置13は、制御装置11により駆動を制御される。被対象物702で反射された反射光は、光検出器709により光検出される。すなわち、反射光は入射光検出受光光学系である集光レンズ706等を経て撮像素子707により受光され、撮像素子707は検出信号を信号処理回路708に出力する。信号処理回路708は、入力された検出信号に2値化やノイズ処理等の所定の処理を行い、結果を測距回路710に出力する。
【0149】
測距回路710は、光源装置12がレーザ光を発光したタイミングと、光検出器709でレーザ光を受光したタイミングとの時間差、又は受光した撮像素子707の画素ごとの位相差によって、被対象物702の有無を認識し、さらに被対象物702との距離情報を算出する。
【0150】
反射面14を有する可動装置13は多面鏡に比べて破損しづらく、小型であるため、耐久性の高い小型のレーダ装置を提供することができる。このようなライダ装置は、例えば車両、航空機、船舶、ロボット等に取り付けられ、所定範囲を光走査して障害物の有無や障害物までの距離を認識することができる。
【0151】
上記物体認識装置では、一例としてのライダ装置700の説明をしたが、物体認識装置は、反射面14を有した可動装置13を制御装置11で制御することにより光走査を行い、光検出器により反射光を受光することで被対象物702を認識する装置であればよく、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0152】
例えば、手や顔を光走査して得た距離情報から形状等の物体情報を算出し、記録と参照することで対象物を認識する生体認証や、対象範囲への光走査により侵入物を認識するセキュリティセンサ、光走査により得た距離情報から形状等の物体情報を算出して認識し、3次元データとして出力する3次元スキャナの構成部材などにも同様に適用することができる。
【0153】
[レーザヘッドランプ]
次に、上記本実施形態の可動装置を自動車のヘッドライトに適用したレーザヘッドランプ50について、
図32を用いて説明する。
図32は、レーザヘッドランプ50の構成の一例を説明する概略図である。
【0154】
レーザヘッドランプ50は、制御装置11と、光源装置12bと、反射面14を有する可動装置13と、ミラー51と、透明板52とを有する。
【0155】
光源装置12bは、青色のレーザ光を発する光源である。光源装置12bから発せられた光は、可動装置13に入射し、反射面14にて反射される。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面をXY方向に可動し、光源装置12bからの青色のレーザ光をXY方向に二次元走査する。
【0156】
可動装置13による走査光は、ミラー51で反射され、透明板52に入射する。透明板52は、表面又は裏面を黄色の蛍光体により被覆されている。ミラー51からの青色のレーザ光は、透明板52における黄色の蛍光体の被覆を通過する際に、ヘッドライトの色として法定される範囲の白色に変化する。これにより自動車の前方は、透明板52からの白色光で照明される。
【0157】
可動装置13による走査光は、透明板52の蛍光体を通過する際に所定の散乱をする。これにより自動車前方の照明対象における眩しさは緩和される。
【0158】
可動装置13を自動車のヘッドライトに適用する場合、光源装置12b及び蛍光体の色は、それぞれ青及び黄色に限定されない。例えば、光源装置12bを近紫外線とし、透明板52を、光の三原色の青色、緑色及び赤色の各蛍光体を均一に混ぜたもので被覆してもよい。この場合でも、透明板52を通過する光を白色に変換でき、自動車の前方を白色光で照明することができる。
【0159】
[ヘッドマウントディスプレイ]
次に、上記本実施形態の可動装置を適用したヘッドマウントディスプレイ60について、
図33~34を用いて説明する。ここでヘッドマウントディスプレイ60は、人間の頭部に装着可能な頭部装着型ディスプレイで、例えば、眼鏡に類する形状とすることができる。ヘッドマウントディスプレイを、以降ではHMDと省略して示す。
【0160】
図33は、HMD60の外観を例示する斜視図である。
図33において、HMD60は、左右に1組ずつ略対称に設けられたフロント60a、及びテンプル60bにより構成されている。フロント60aは、例えば、導光板61により構成することができ、光学系や制御装置等は、テンプル60bに内蔵することができる。
【0161】
図34は、HMD60の構成を部分的に例示する図である。なお、
図34では、左眼用の構成を例示しているが、HMD60は右眼用としても同様の構成を有している。
【0162】
HMD60は、制御装置11と、光源ユニット530と、光量調整部507と、反射面14を有する可動装置13と、導光板61と、ハーフミラー62とを有している。
【0163】
光源ユニット530は、上述したように、レーザ光源501R、501G、及び501Bと、コリメータレンズ502、503、及び504と、ダイクロイックミラー505、及び506とを、光学ハウジングによってユニット化したものである。光源ユニット530において、レーザ光源501R、501G、及び501Bからの三色のレーザ光は、ダイクロイックミラー505及び506で合成される。光源ユニット530からは、合成された平行光が発せられる。
【0164】
光源ユニット530からの光は、光量調整部507により光量調整された後、可動装置13に入射する。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面14をXY方向に可動し、光源ユニット530からの光を二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R、501G、501Bの発光タイミングに同期して行われ、走査光によりカラー画像が形成される。
【0165】
可動装置13による走査光は、導光板61に入射する。導光板61は、走査光を内壁面で反射させながらハーフミラー62に導光する。導光板61は、走査光の波長に対して透過性を有する樹脂等により形成されている。
【0166】
ハーフミラー62は、導光板61からの光をHMD60の背面側に反射し、HMD60の装着者63の眼の方向に出射する。ハーフミラー62は、例えば、自由曲面形状を有している。走査光による画像は、ハーフミラー62での反射により、装着者63の網膜に結像する。あるいは、ハーフミラー62での反射と眼球における水晶体のレンズ効果とにより、装着者63の網膜に結像する。またハーフミラー62での反射により、画像は空間歪が補正される。装着者63は、XY方向に走査される光で形成される画像を、観察することができる。
【0167】
62はハーフミラーであるため、装着者63には、外界からの光による像と走査光による画像が重畳して観察される。ハーフミラー62に代えてミラーを設けることで、外界からの光をなくし、走査光による画像のみを観察できる構成としてもよい。
【0168】
[眼球の傾き位置検知装置(瞳孔又は角膜の位置検知装置)]
次に、上述した可動装置を、眼球の傾き位置検知装置として適用した場合について説明する。本実施形態における「眼球の傾き位置」は、眼球の瞳孔や角膜の位置等、又は使用者の視線方向である。以下では「眼球の傾き位置」を瞳孔又は角膜の位置とし、「眼球の傾き位置検知装置」を「瞳孔又は角膜位置検知装置」として説明する。また、以下で説明する瞳孔又は角膜位置検知装置は、連続的に、又は時間間隔を設けて使用者の視線方向を検知、又は追跡する、視線方向追跡装置(アイトラッキング装置)と同義である。
【0169】
図35は、画像表示機能を備えた瞳孔又は角膜の位置検知装置80を示す概略図である。図中に示されている矢印は、X方向、Y方向、及びZ方向を示しており、本図面は、要部を上方(+Y方向)から見た図である。
図35に示す瞳孔又は角膜の位置検知装置80は、光源82と、第1光偏向部83と、光走査部84と、第2光偏向部85と、受光部86と、を有する。
【0170】
光源82は、例えば、赤色、緑色、青色のレーザ光を射出するレーザ光源(82r、82g、82b)と、赤外線レーザ光を射出する赤外線レーザ光源82irと、を有する。レーザ光源82r、82g、82bは、何れか1つ又は2つの組み合わせであっても良く、可動装置13によって画像を描画するための光を射出する。
【0171】
赤外線レーザ光源82irは、瞳孔又は角膜位置を検出するための光を射出する。なお、瞳孔又は角膜位置を検出するための光は、赤外線に限定されず、可視光であっても良い。ただし、描画された画像の視認性向上の観点から、不可視光が好ましい。
【0172】
第1光偏向部83は、例えばダイクロイックミラーであり、光源82から射出された光を合成しながら、可動装置13の反射面14に向けて偏向する。第1光偏向部83は、光源82が備えるレーザ光源(82r、82g、82b)及び赤外線レーザ光源82irの数に応じて複数有していても良い。
図35に示す実施形態では、第1光偏向部83は、第1光偏向部83-1,83-2,83-3,83-4,83-5を用いてそれぞれの光を合成しながら偏向する。
【0173】
可動装置13は、第1又は第2の実施形態として説明した可動装置の何れかである。可動装置13は、反射面14を備え、第1光偏向部83で偏向された光を、第2光偏向部85に向けて2次元方向に走査する。このとき、可動装置13は、例えばラスタ走査によって第1光偏向部83で偏向された光を走査し、画像を形成する。なお、本図では可動装置13が1つである場合を示しているが、2以上の可動装置13を設けた構成であっても良い。
【0174】
第2光偏向部85は、例えばホログラフィック光学素子であり、可動装置13で走査された光L1を、使用者の眼球87に向けて偏向する。第2光偏向部85で偏向された光L2の少なくとも一部は、表示画像光として使用者の眼球87に入射する。また第2光偏向部85は、複数の光偏向部材を備えた構成としても良い。例えば、光源82から射出された光のうち特定の光を反射する光偏向部材を複数種類用いて、光源82から射出された光ごとに反射面が異なる構成としても良い。具体例としては、眼球87に近い順に、レーザ光源(82r、82g、82b)で射出された光を反射する光偏向部材、赤外線レーザ光源82irから射出された光を反射する光偏向部材を積層した構成とした構成が挙げられる。
【0175】
受光部86は、第2光偏向部85で偏向された光L2のうち使用者の眼球87で反射した光L3を受光し、受光した光に応じた検出信号SDを出力する(
図36参照)。受光部86は、例えば赤外線を検出可能な撮像素子である。また、受光部86は、使用者の眼球87で反射した光L3を受光可能な位置に、複数個設けられていても良い。受光部86が受光する光は、眼球(瞳孔、角膜等)の位置変化、すなわち視線方向の変化に依存して光強度が変化する。そこで、本実施形態における瞳孔又は角膜の位置検知装置80は、受光部86が受光する光の強度に基づいて、瞳孔又は角膜位置を検知、又は推定する。また受光部86は、第2光偏向部85で偏向された光L2が照射された眼球87を撮像する構成としても良い。この場合、瞳孔又は角膜の位置検知装置80は、撮像した画像(検出信号SD)に含まれる瞳孔又は角膜の位置と、眼球87において第2光偏向部85で偏向された光L2が反射する位置と、に基づいて眼球の傾き位置を検知、又は推定する。
【0176】
上述した通り、本実施形態に係る瞳孔又は角膜の位置検知装置80は、可動装置13で画像を形成しつつ、瞳孔又は角膜の位置を検知することができる。また可動装置13は、より効率的に光を走査可能な構成であるため、より低電力で画像形成、及び瞳孔又は角膜の位置の検知を実現することができる。
【0177】
また、瞳孔又は角膜の位置検知装置80は、例えば、視線方向追跡(アイトラッキング)装置としてヘッドマウントディスプレイに搭載し、使用者の視線方向を検知、又は追跡することもできる。この場合、例えば、使用者の視線方向付近の領域に表示する画像に対し、その他の領域で表示する画像の解像度を下げること(中心窩レンダリング)により、全域に高解像度の画像を表示する場合に比べ画像処理を高速化することができる。
【0178】
図36は、
図35で説明した瞳孔又は角膜の位置検知装置を、ヘッドマウントディスプレイに搭載したときの構成を示す図である。
図36に示す瞳孔又は角膜の位置検知装置80は、光源82と、第1光偏向部83―1~4と、レンズ92と、レンズ93と、走査ミラー94と、偏向ミラー95と、第2光偏向部85と受光部86と、制御部96と、を備える。光源82、第1光偏向部83―1~4、第2光偏向部85、及び受光部86は、
図35で説明した構成と同様であるため、重複する特徴を省略することがある。レンズ92は、光源82により射出された光を略平行光に変換する光学系である。レンズ93は、レンズ92で略平行光に変換された光を、所望のレーザビーム状態へと成形する光学系である。本実施形態では、レンズ92と、レンズ93とを有する構成を示しているが、レンズ92及びレンズ93を必ずしも設けなくてもよい。
【0179】
レンズ92及びレンズ93で形成された光は、走査ミラー94(可動装置13)に入射する。走査ミラー94は、入射した光を走査し画像光を形成する。形成された画像光は、偏向ミラー95に入射し、第2光偏向部85に向かう方向に反射される。偏向ミラー95は、
図35で説明する第1光偏向部83-5に対応するが、可動装置13を備えた光を走査可能な構成であることが好ましい。偏向ミラー95を光走査可能な構成とすることによって、より広範囲に画像を投影することができる。
【0180】
なお
図36では、偏向ミラー95が走査ミラー94と第2光偏向部85との間に配置された構成を例示しているが、これに限定されるものではない。偏向ミラー95と第2光偏向部85の間に走査ミラー94を配置して、偏向ミラー95で反射された光を走査ミラー94で2軸方向に走査し、第2光偏向部85へと入射させても良い。
【0181】
制御部96は、受光部86が出力する検出信号SDに基づき使用者の瞳孔又は角膜の位置を検知し、視線方向を示す情報を取得する。また制御部96は、網膜32に投影する画像を形成するため、光源82に形成駆動信号SL1を与えて光源82の発光及び光強度を制御し、走査ミラー94に走査駆動信号SSを与えて走査ミラー94を駆動させる。また、偏向ミラー95が光走査可能な構成である場合、制御部96は、取得された視線情報に応じて画像の投影位置を制御するため、偏向ミラー95に偏向駆動信号STを与え偏向ミラー95を駆動させる。
【0182】
以上説明したように、本発明の態様の一例は以下の通りである。
<1>
本実施形態にかかる可動装置は、可動部と、前記可動部と接続され前記可動部を駆動させる駆動部と、光を反射する反射部と、前記可動部および前記反射部を前記反射部の反射面と交差する方向に連結する連結部と、備え、前記反射部から前記可動部側に延伸、又は前記可動部から前記反射部側に延伸する補強部を有することを特徴とする。
これにより、補強部が可動部もしくは反射部の変形を抑制することで、連結部と反射部もしくは可動部との接合面に起きる応力の集中を抑制し、強固な連結部を実現できる。これにより強固な接合面を有した安定した回動ができる可動装置を提供できる。
<2>
本実施形態にかかる可動装置は、前記補強部は、前記可動部もしくは前記反射部と前記連結部とを接合する接合面に対し、略垂直方向に延伸する面を備えることを特徴とする<1>に記載の可動装置である。
これにより、連結部の接合部が最も応力が集中し、接合面での滑り現象を生成させるせん断応力のベクトル方向に、最も効率的に対抗することができる垂直方向の面が抑制力として働き、強固な連結部、強固で安定した可動装置を得ることができる。
<3>
本実施形態にかかる可動装置は、前記補強部と前記連結部は、一方が他方を囲うように配置することを特徴とする<1>~<2>に記載の可動装置である。
これにより、最も応力が集中する接合面のせん断応力のベクトル方向のすべてである360度をもれなく抑制することができる。
<4>
本実施形態にかかる可動装置は、前記補強部は、柱状の補強部と、前記柱状の補強部を囲うように配置された筒状の補強部と、を含み、前記連結部は、前記柱状の補強部を囲み、かつ前記筒状の補強部に囲まれるように配置されることを特徴とする<1>~<3>の何れか1つに記載の可動装置である。
これにより、連結部は、内部側面および外部側面からも360度方向もれなく補強されることになり、さらなる強固な連結部を得られ、安定した可動が実現できる可動装置を提供できる。
<5>
本実施形態にかかる可動装置は、前記可動部と前記連結部又は前記反射部と前記連結部を接着する接着剤を有し、前記補強部は、前記可動部又は前記反射部のうち、前記接着剤を有する側から延伸することを特徴とする<1>~<4>の何れか1つに記載の可動装置である。
これにより、接合面を含んだ領域を補強部によって補強される。さらなる強固な連結部を得られ、安定した可動が実現できる可動装置を提供できる。
<6>
本実施形態にかかる可動装置は、前記連結部と前記補強部との間に接着剤が挟まれていることを特徴とする<1>~<5>の何れか1つに記載の可動装置である。
これにより、衝撃による慣性力を連結部の側面において、略平行にある補強部材の抗力で抑制することで、接合面にかかるせん断応力を効率的に低減できる。特に、連結部の側面において最も接合面に近い接合面の端部において抑制することが、せん断応力低減には効果的である。また、連結部と前記補強部との距離を一定に保つことが可能となり、効果的に接合面にかかるせん断応力を低減できる。また、反射部を回動する際に、連結部が補強部に衝突してお互いに傷つけることを抑制できる。
<7>
本実施形態にかかる可動装置は、前記接着性剤は、前記連結部の接合面と前記可動部または前記反射部の接合面との間に挟まれ、前記連結部と前記補強部とが非接触であることを特徴とする<6>に記載の可動装置である。
これにより、金属による接合のように硬い界面では、衝撃に対してクラックなどが発生する可能性があるが、弾性体である樹脂による接合によってその可能性を低減できる。連結部、可動部、反射部、補強部はシリコンや酸化シリコンで形成され、硬度が高い。外部衝撃によってお互いが衝突する可能性がある。それぞれを非接触にすることで衝撃を緩和できる。
<8>
本実施形態にかかる可動装置は、前記連結部が複数から構成される<1>~<7>の何れか1つに記載の可動装置である。これにより、連結部の強度を向上することができ、強固で安定した可動装置を提供できる。
<9>
本実施形態にかかる可動装置は、前記駆動部がミアンダ構造であることを特徴とした<1>~<8>の何れか1つに記載の可動装置である。これにより、ミアンダ構造によりリンキングを抑制でき、リンキングによる接合面への高周波刺激を緩和することで、長期的に安定した可動装置を提供できる。
【符号の説明】
【0183】
1 第1の回転軸
2 第2の回転軸
3 可動部
4 始点終点
10 光走査システム
11 制御装置
12 光源装置
13 可動装置
14 ミラー(反射面)
15 被走査面
20 CPU
22 ROM
21 RAM
23 FPGA
25 光源装置ドライバ
26 可動装置ドライバ
24 外部I/F
31 駆動信号出力部
30 制御部
50 レーザヘッドランプ
51 ミラー
52 透明板
60 HMD
60a フロント
60b テンプル
61 導光板
63 装着者
62 ハーフミラー
101 ミラー部
102 ミラー部基体
103 第1接合部
104 駆動部
105 支持部
106 反射面
108 光学機能素子
110a 第1駆動部(駆動部とトーションバー)
110b 第2駆動部(駆動部とトーションバー)
110c 第3駆動部(駆動部とトーションバー)
110d 第4駆動部(駆動部とトーションバー)
111a 第1接続部(トーションバー)
111b 第2接続部(トーションバー)
111c 第3接続部(トーションバー)
111d 第4接続部(トーションバー)
112a 第1駆動部
112b 第2駆動部
113a 圧電駆動部群A(駆動部の一例)
113b 圧電駆動部群B(駆動部の一例)
120 第1支持部
122 ピラー
123 第1接合部(支持層とミラーの間)
124 支持層
125 接着性材料(ピラーと支持層(酸化シリコン層))
126 酸化シリコン層(第2接合部)
128 可動部(シリコン活性層)
130a 第3駆動部
130b 第4駆動部
131a~131f 第3駆動部
132a~132f 第4駆動部
140 第2支持部
141 ミラー部基体のリブ
144 ビア
146 シリコン活性層の窪み
150 電極接続部
161 シリコン支持層
162 酸化シリコン層
163 シリコン活性層
201 下部電極
202 圧電部
203 上部電極
212 可動部の直径
213 ピラー(支持層)の直径
220 接合面(支持層の高さを示すライン)
221 上面(ピラーの高さを示すライン)
222 基準位置(基準を示すライン)
301 シリコン支持層(第2の基板)
302 酸化シリコン層(第2の基板)
303 シリコン活性層(第2の基板)
304 シリコン支持層(第3の基板)
305 接着層
306 セラミックまたはアルミ
400 自動車
402 運転者
401 フロントガラス
500 ヘッドアップディスプレイ装置
509 自由曲面ミラー
510 中間スクリーン
511 投射ミラー
501R、501G、501B レーザ光源
502、503、504 コリメータレンズ
505、506 ダイクロイックミラー
600 光書込装置
602 走査光学系
602a 第一レンズ
602b 第二レンズ
602c 反射ミラー部(可動部)
650 レーザプリンタ
700 ライダ装置
701 自動車
702 被対象物
703 コリメートレンズ
704 平面ミラー
705 投光レンズ
706 集光レンズ
707 撮像素子
708 信号処理回路
709 光検出器
710 測距回路
777 開口部
888 連結部
999 補強部