IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社の特許一覧

特開2024-78489デバイスパターンの除去方法、及びこの方法を用いたシリコンウェーハの結晶欠陥評価方法
<>
  • 特開-デバイスパターンの除去方法、及びこの方法を用いたシリコンウェーハの結晶欠陥評価方法 図1
  • 特開-デバイスパターンの除去方法、及びこの方法を用いたシリコンウェーハの結晶欠陥評価方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078489
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】デバイスパターンの除去方法、及びこの方法を用いたシリコンウェーハの結晶欠陥評価方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240604BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01L21/66 N
H01L21/306 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190897
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 広幸
【テーマコード(参考)】
4M106
5F043
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106CB19
4M106CB20
5F043AA02
5F043BB01
(57)【要約】
【課題】シリコンウェーハのデバイスパターン(デバイス構造膜)を、シリコンウェーハの表面を傷つけることなく、短時間に、剥離(除去)すること。
【解決手段】半導体デバイスプロセスを経て、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハから前記デバイスパターンを除去する、デバイスパターンの除去方法において、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、0.05%重量濃度以上、0.1%以下の重量濃度のフッ酸と、69%以上71%以下重量濃度の硝酸との溶液を用いたフッ硝酸溶液に、5秒以上1分以下浸漬することにより、前記デバイスパターンを除去することを特徴としている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスプロセスを経て、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハから前記デバイスパターンを除去する、デバイスパターンの除去方法において、
デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、
0.05%重量濃度以上、0.1%以下の重量濃度のフッ酸と、69%以上71%以下重量濃度の硝酸との溶液を用いたフッ硝酸溶液に、
5秒以上1分以下浸漬することにより、
前記デバイスパターンを除去することを特徴とする、デバイスパターンの除去方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載されたデバイスパターンの除去方法を用いて、
デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハから前記デバイスパターンを除去した後、
選択エッチング液によって、シリコンウェーハの結晶欠陥を顕在化させて、結晶欠陥の観察、評価を行うことを特徴とするシリコンウェーハの結晶欠陥評価方法。
【請求項3】
前記選択エッチング液が、少なくともフッ酸および硝酸を含み、更に、酢酸を含むものであることを特徴とする請求項2に記載のシリコンウェーハの結晶欠陥評価方法。
【請求項4】
前記評価が行われる結晶欠陥は、シリコンウェーハ表面に存在するOSFまたは転位ピットであることを特徴とする請求項2に記載のシリコンウェーハの結晶欠陥評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスパターン(デバイス構造膜)が形成されたシリコンウェーハからデバイスパターンを除去する方法、及びこの方法を用いたシリコンウェーハの結晶欠陥評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハ(以下、半導体基板ともいう)は、一般的に、チョクラルスキー(Czochralski,CZ)法やフローティングゾーン(Floating Zone,FZ)法により円柱状の単結晶インゴットを作製し、単結晶インゴットを薄板状に切断(スライシング)してウェーハを作製した後、得られたウェーハに、研削、エッチング、研磨を行うことにより製造される。
このように製造されたシリコンウェーハが半導体デバイスプロセスを経て、シリコンウェーハにデバイスパターン(デバイス構造膜)が形成されることにより、メモリーやLSI等が製造される。
【0003】
ところで、近年、NAND型フラッシュメモリ等の半導体回路は、その集積度が著しく向上してデバイスパターン(素子)が微細化している。
そのため、性能・信頼性・歩留まりの高い回路を得るため、ウェーハ表面および表層部は、高純度かつ転位等が少ない低欠陥であり、またウェーハ内部には高密度のBMD(bulk micro defect)のゲッタリング層が形成された、高品質の半導体基板であることが求められている。
【0004】
半導体基板が高品質である否かの一つの評価は、結晶欠陥を評価することにより行われるが、デバイスパターン(デバイス構造膜)が形成されたシリコンウェーハの結晶欠陥を評価するには、まず、シリコンウェーハの表面に形成されている、デバイスパターン(デバイス構造膜)を除去する必要がある。
このデバイス構造膜はシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、ポリシリコン膜、金属膜などであり、従来から、エッチング、研削によりデバイスパターン(デバイス構造膜)の除去が行われている。
【0005】
そして、デバイスパターン(デバイス構造膜)を除去した後、選択エッチング液によって、シリコンウェーハを選択エッチングした後、ウェーハ表面及び断面のピットを観察することにより、OSF(oxidation-induced stacking fault)や転位等の結晶欠陥の評価が行われる。
尚、この選択エッチング用のエッチング液としては、JIS規格のJISH0609としてクロムを使用しない溶液が標準化されている。
【0006】
更に、このシリコンウェーハに形成されたデバイスパターン(デバイス構造膜)、あるいは薄膜を除去(剥離)する方法について、特許文献1~5を例にとって説明する。
特許文献1には、シリコンウェーハに形成された薄膜を除去(剥離)する方法として、温めた水酸化カリウムによってポリシリコン膜をエッチングし、またフッ酸・塩酸混合液を用いて、二酸化シリコン膜をエッチングすることが提案されている。
【0007】
また、特許文献1と同様なウェットエッチングによる、デバイスパターン(デバイス構造膜)の除去(剥離)方法として、特許文献2には、NHFもしくは33%~49%のHFに15分から30分浸漬した後に、希HFに30分浸漬することで、デバイスパターンを剥離し、選択エッチングで表面の欠陥を観察可能とする技術が提案されている。
【0008】
また、特許文献3には、エッチングと機械洗浄を組み合わせた方法として、デバイス膜が形成されたシリコン基板を20%以上50%以下の重量濃度のフッ酸に浸漬した後、該シリコン基板の表面を、吸水性を有する樹脂製のブラシ等に純水を吸収させた状態で機械的に洗浄することにより、前記デバイス膜を除去して、シリコン基板表面を露出させ、その後、選択エッチングによる欠陥観察を行う方法が提案されている。
【0009】
更に、上記したようなウェットエッチングによる剥離方法の他、特許文献4、5に示されているように、研削やサンドブラストによる方法がシリコンウェーハのデバイスパターン(デバイス構造膜))の除去(剥離)の方法として提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平07-122532号公報
【特許文献2】特開2004-179638号公報
【特許文献3】特開2003-318242号公報
【特許文献4】特開2011-211012号公報
【特許文献5】特開2020-061515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、半導体デバイスプロセスを経たシリコンウェーハ(半導体基板)表面の欠陥を観察する際、デバイスパターン(デバイス構造膜)の除去(剥離)方法として、特許文献1に記載された方法を用いた場合、アルカリ溶液に浸した後にフッ酸塩酸溶液を使った除去(剥離)作業が行われる。
そのため、アルカリと酸の二つのエッチング溶液槽が必要となり、また夫々のエッチング溶液を洗浄する洗浄装置が必要となり、装置が大型化するという課題があった。
【0012】
また、特許文献2に記載された方法についても同様であり、デバイスパターン(デバイス構造膜)を除去(剥離)するために、二つのエッチング溶液槽が必要なうえ、処理時間が1時間以上も必要となり、作業効率が悪いという課題があった。
【0013】
また、特許文献3に記載された方法を用いた場合には、フッ酸溶液に浸したのち、純水を浸したブラシで、デバイスパターンを剥離することになるため、シリコンウェーハ(半導体基板)表面に傷がつき、微細な結晶欠陥と区別がつきにくく、結晶欠陥の観察ができない虞があった。
【0014】
また、特許文献4,5に記載されたサンドブラストまたは平面研削により、膜を除去する方法もあるが、やはりシリコンウェーハ(半導体基板)表面に傷がつき、微細な結晶欠陥と区別がつきにくく、結晶欠陥の観察ができない虞があった。
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために、シリコンウェーハに形成されたデバイスパターン(デバイス構造膜)の除去(剥離)方法について誠意研究した。
その際、装置が大型化しないこと、処理時間が長時間化しないこと、機械的手段により表面に傷をつけないことを前提に研究を重ねた。
その結果、本発明者らは、シリコンウェーハのデバイスパターン(デバイス構造膜)の除去(剥離)の際、シリコンウェーハを、強力な酸化能力を持つ硝酸溶液と希フッ酸に浸すことで、デバイスパターン(デバイス構造膜)とシリコン基板の間に、酸化膜を形成し、このケミカル酸化膜を溶解することで、デバイスパターン(デバイス構造膜)を除去(剥離)することを見出し、本発明を想到するに至った。
【0016】
本発明は、上記状況にもとなされた発明であり、シリコンウェーハのデバイスパターン(デバイス構造膜)を、シリコンウェーハの表面を傷つけることなく、短時間に、剥離(除去)することができるデバイスパターンの除去方法、及びこの方法を用いたシリコンウェーハの結晶欠陥評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するためになされた、本発明のデバイスパターンの除去方法は、半導体デバイスプロセスを経て、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハから前記デバイスパターンを除去する、デバイスパターンの除去方法において、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、0.05%重量濃度以上、0.1%以下の重量濃度のフッ酸と、69%以上71%以下重量濃度の硝酸との溶液を用いたフッ硝酸溶液に、5秒以上1分以下浸漬することにより、前記デバイスパターンを除去することを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、デバイスパターン(デバイス構造膜)が形成されたシリコンウェーハを、所定濃度のフッ硝酸溶液に短時間(5秒~1分)浸すことで、デバイスパターン(デバイス構造膜)を除去(剥離)する。
即ち、シリコンウェーハのデバイスパターン(デバイス構造膜)の除去(剥離)の際、シリコンウェーハを、強力な酸化能力を持つ硝酸溶液と希フッ酸の混合液に浸す。このことで、デバイスパターン(デバイス構造膜)とシリコンウェーハの間に、ケミカル酸化膜が形成される。そして、このケミカル酸化膜を溶解することで、デバイスパターン(デバイス構造膜)を除去(剥離)する。
【0019】
ここで、前記フッ硝酸溶液は、0.05%重量濃度以上、0.1%以下の重量濃度のフッ酸と、69%以上71%以下重量濃度の硝酸の溶液が用いられる。
このように、フッ酸濃度が希薄な溶液で処理されるため、シリコンウェーハの表面(表層部)が、必要以上にエッチングされ難く、面荒れし難い。
【0020】
また、本発明にあっては、シリコンウェーハのデバイスパターン(デバイス構造膜)を、一つのエッチング溶液槽で行うことができため、装置を大型化させることない。
また、フッ硝酸溶液の浸漬時間が短時間であるため、シリコンウェーハの表面(表層部)がエッチングされて、面荒れすることもなく、短時間に、効率的に、デバイスパターン(デバイス構造膜)を除去することができる。
【0021】
上記の課題を解決するためになされた、本発明のシリコンウェーハの結晶欠陥評価方法は、上記デバイスパターンの除去方法を用いて、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハから前記デバイスパターンを除去した後、選択エッチング液によって、シリコンウェーハの結晶欠陥を顕在化させて、結晶欠陥の観察、評価を行うことを特徴とする。
【0022】
このように、フッ酸濃度が希薄な溶液で、デバイスパターンの除去が短時間でなされるため、シリコンウェーハはほとんどエッチングされず、面荒れが生じ難い。
そのため、デバイスパターンを除去した後に、選択エッチングすることにより、シリコンウェーハ表面の結晶欠陥の観察、評価を容易に行うことができる。
【0023】
ここで、前記選択エッチング液が、少なくともフッ酸および硝酸を含み、更に、酢酸を含むものであることが望ましい。
尚、この結晶欠陥の評価方法は、シリコンウェーハ表面に存在するOSFまたは転位ピットを観察、評価するのに、好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、シリコンウェーハのデバイスパターン(デバイス構造膜)を、シリコンウェーハの表面を傷つけることなく、短時間に、剥離(除去)することができるデバイスパターンの除去方法、及びこの方法を用いたシリコンウェーハの結晶欠陥評価方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1における、選択エッチング後のシリコンウェーハの表面状態を示す図である。
図2】比較例1における、選択エッチング後のシリコンウェーハの表面状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0027】
(デバイスパターンの除去方法)
本発明にかかるデバイスパターンの除去方法は、半導体デバイスプロセスを経て、デバイスパターン(デバイス構造膜)が形成されたシリコンウェーハから、デバイスパターン(デバイス構造膜)を除去する方法である。
このデバイスパターンの除去方法について一例を示すと、デバイスパターン(デバイス構造膜)が形成されたシリコンウェーハを、所定濃度のフッ硝酸溶液に5秒以上1分以下浸漬して、デバイスパターンを除去する方法がある。
【0028】
このデバイスパターンを除去方法は、上記したように、半導体デバイスプロセスを経て、デバイスパターン(デバイス構造膜)が形成されたシリコンウェーハに対して、実行される。
そして、シリコンウェーハからデバイスパターン(デバイス構造膜)を除去し、シリコンウェーハの表面を露出させる。更に、シリコンウェーハの表面を露出させた後、シリコンウェーハに選択エッチングが行われ、シリコンウェーハの表面欠陥の観察、評価が行われる。
即ち、デバイスパターン(デバイス構造膜)を除去し、シリコンウェーハの表面欠陥を観察、評価することにより、シリコンウェーハ上の欠陥が、結晶起因の欠陥か、あるいは半導体デバイスプロセス起因のストレスや汚染による欠陥なのかを明らかにすることができる。
【0029】
このデバイスパターン(デバイス構造膜)の除去(剥離)は、上記したように、シリコンウェーハを、強力な酸化能力を持つ硝酸溶液と希フッ酸の混合液に浸すことで行われる。
硝酸溶液と希フッ酸の混合液に浸漬することで、デバイスパターン(デバイス構造膜)とシリコンウェーハの間に、ケミカル酸化膜が形成される。
そして、その形成されたケミカル酸化膜を、フッ酸の作用により、溶解することで、デバイスパターン(デバイス構造膜)が除去されると考えられる。
【0030】
シリコンウェーハが浸漬されるフッ硝酸溶液の濃度は、処理時間(浸漬時間)に影響を与える。浸漬時間としては、デバイスパターン(デバイス構造膜)が除去の効率化からして、5秒以上1分以下が望ましい。
【0031】
浸漬時間として5秒以上1分以下で行うためには、例えば、フッ硝酸溶液としては、0.05%重量濃度以上、0.1%以下の重量濃度のフッ酸と、69%以上71%以下重量濃度の硝酸の混合溶液が用いられる。
このように、前記フッ硝酸溶液を用いることにより、短時間でデバイスパターン(デバイス構造膜)が除去できる。また、フッ酸濃度が希薄な溶液で処理されるため、シリコンウェーハの表面(表層部)が、エッチングされ難く、面荒れし難い。
その結果、デバイスパターンを除去した後に、選択エッチングすることにより、シリコンウェーハ表面の結晶欠陥の観察、評価を容易に行うことができる。
【0032】
具体的には、0.1%重量濃度を超えるフッ酸を含有する場合には、フッ酸硝酸混合液による反応が激しくなり面荒れの原因となるために、好ましくない。
一方、0.05%未満の重量濃度のフッ酸を含有する場合には、反応が散漫となり、処理時間が長くかかり、好ましくない。
また、69%重量濃度未満の硝酸を含有する場合には、反応が散漫となり、好ましくない。一方、71%を超える重量濃度の硝酸を含有する場合は電子工業用では使われない特殊仕様となるので、好ましくない。
【0033】
(シリコンウェーハの結晶欠陥評価方法)
デバイスパターンの除去方法を実施し、シリコンウェーハからデバイスパターンを除去した後、水による洗浄を行い、選択エッチング液にて選択エッチングを行い、その後、シリコンウェーハ表面を観察、評価する。
【0034】
この選択エッチングは、シリコンウェーハ表面に存在する結晶欠陥を顕在化させるためのものであり、選択エッチング液には、シリコンウェーハの結晶欠陥を選択的にエッチングして顕在化できるものであれば、特に制限なく用いることができる。
特に、前記選択エッチング液が、少なくともフッ酸および硝酸を含み、更に、酢酸を含むものであることが望ましい。
【0035】
具体的には、JIS規格のJIS H0609に記載された選択エッチング液が好ましく、シリコンウェーハの抵抗が0.05Ωcm以下(ただし、0.02Ω以上)の場合は、SatoB液やSatoG液を用いることができるが、特にシリコンウェーハの抵抗が0.02Ωcm以下の場合はSatoG液を用いるのが好ましい。
因みに、SatoB液は、容積比でHF:HNO:CHCOOH:HO=1:12.7:3:5.7で、SatoB液を用いた場合の処理時間は1.5~2.0分であり、SatoG液は、容積比でHF:HNO:HO=1:12.7:6.3で、SatoG液を用いた場合の処理時間は1~3分である。
【0036】
このような選択エッチング液を用いて、シリコンウェーハに選択エッチング処理を行うことで、結晶欠陥を顕在化して、結晶欠陥を観察、評価する。
これにより、シリコンウェーハ上の欠陥が、結晶起因の欠陥か、あるいは半導体デバイスプロセス起因のストレスや汚染による欠陥なのかを明らかにすることができる。
【0037】
上記処理を施したシリコンウェーハの結晶欠陥の評価は、一般的方法を用いることができ、例えば、OSFまたは転位ピットを光学顕微鏡で観察することにより行う。これにより、低コストで迅速かつ高精度にシリコン単結晶基板の品質を評価することができる。
【0038】
〔実施例〕
(実施例1)
実施例1として、0.05%重量濃度のフッ酸と、70%重量濃度の硝酸の混合溶液に、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、5秒間浸漬した。その後、十分水洗を行った。
浸漬後のシリコンウェーハの表面状態は、デバイスパターンが除去され、きれいな光沢面であった。その後、選択エッチング液(SatoB液)にて、1.5分エッチング処理した。そして、微分干渉顕微鏡を用いて、シリコンウェーハの表面を観察した。その結果、選択エッチングによるピットが観察された(図1)。
【0039】
(比較例1)
比較例1として、実施例1と同一のデバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、濃度50%のフッ酸に48時間浸した後、実施例1と同一の選択エッチング液で、実施例1と同一条件でエッチング処理した。
その後、十分水洗を行った。浸漬後のシリコンウェーハの表面状態は、デバイスパターンが除去しきれず、多くが残留した状態であった。
その後、選択エッチング液(SatoB液)にて、1.5分エッチング処理した。そして、微分干渉顕微鏡を用いて、シリコンウェーハの表面を観察した。その結果、取り切れていない膜に邪魔されて欠陥が十分観察できなかった(図2)。
【0040】
(実施例2~5、比較例2~5)
更に、フッ酸の濃度を変えて、この浸漬後のシリコンウェーハの表面状態を検証した。
実施例2は、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、0.05%重量濃度のフッ酸と、70%重量濃度の硝酸の混合溶液に、5秒間浸漬した。その後、十分水洗を行った。この浸漬後のシリコンウェーハの表面状態を検証した。その結果を表1に示す。
【0041】
実施例3は、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、0.05%重量濃度のフッ酸と、70%重量濃度の硝酸の混合溶液に、60秒間浸漬した。その後、十分水洗を行った。この浸漬後のシリコンウェーハの表面状態を検証した。その結果を表1に示す。
【0042】
実施例4は、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、0.1%重量濃度のフッ酸と、70%重量濃度の硝酸の混合溶液に、5秒間浸漬した。その後、十分水洗を行った。この浸漬後のシリコンウェーハの表面状態を検証した。その結果を表1に示す。
【0043】
実施例5は、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、0.1%重量濃度のフッ酸と、70%重量濃度の硝酸の混合溶液に、60秒間浸漬した。その後、十分水洗を行った。この浸漬後のシリコンウェーハの表面状態を検証した。その結果を表1に示す。
【0044】
比較例2は、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、0.05%重量濃度のフッ酸と、70%重量濃度の硝酸の混合溶液に、3秒間浸漬した。その後、十分水洗を行った。この浸漬後のシリコンウェーハの表面状態を検証した。その結果を表1に示す。
【0045】
比較例3は、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、0.05%重量濃度のフッ酸と、70%重量濃度の硝酸の混合溶液に、90秒間浸漬した。その後、十分水洗を行った。この浸漬後のシリコンウェーハの表面状態を検証した。その結果を表1に示す。
【0046】
比較例4は、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、0.1%重量濃度のフッ酸と、70%重量濃度の硝酸の混合溶液に、3秒間浸漬した。その後、十分水洗を行った。この浸漬後のシリコンウェーハの表面状態を検証した。その結果を表1に示す。
【0047】
比較例5は、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、0.1%重量濃度のフッ酸と、70%重量濃度の硝酸の混合溶液に、90秒間浸漬した。その後、十分水洗を行った。この浸漬後のシリコンウェーハの表面状態を検証した。その結果を表1に示す。
【0048】
また、比較例6~9にあっては、デバイスパターンが形成されたシリコンウェーハを、表1に示す重量濃度のフッ酸及び硝酸の混合溶液に、30秒間浸漬した。その後、十分水洗を行った。この浸漬後のシリコンウェーハの表面状態を検証した。その結果を表1に示す。尚、71%を超える硝酸は、電子工業用途で使用されないため、検証を行わなかった。
【0049】
【表1】
【0050】
上記実施例、比較例から、0.05%重量濃度以上、0.1%以下の重量濃度のフッ酸と、69%以上71%以下重量濃度の硝酸との溶液を用いたフッ硝酸溶液に、5秒以上1分以下浸漬することにより、前記デバイスパターンを除去できることが確認された。
図1
図2