IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-検体収納ラック 図1
  • 特開-検体収納ラック 図2
  • 特開-検体収納ラック 図3
  • 特開-検体収納ラック 図4
  • 特開-検体収納ラック 図5
  • 特開-検体収納ラック 図6
  • 特開-検体収納ラック 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078762
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】検体収納ラック
(51)【国際特許分類】
   B01L 9/06 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
B01L9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191291
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】森 大志郎
(72)【発明者】
【氏名】羽角 広信
(72)【発明者】
【氏名】三谷 康人
【テーマコード(参考)】
4G057
【Fターム(参考)】
4G057AE08
4G057AE12
4G057AE22
(57)【要約】
【課題】 例えば径の太い検体用スピッツを径の細い検体用スピッツに入れ替える際にも、即座に検体用スピッツを保持することが可能な検体用ラックを提供する。
【解決手段】検体収納ラック1は、複数の検体用スピッツを収納可能であり、同一のポリオレフィン樹脂発泡体からなる。検体収納ラック1は、主に、挿入部材3a、保持部材5a、挿入部材3b、規制部材7、保持部材5b、挿入部材3c、底部材7からなり、それぞれの部材が積層されて構成される。保持部材5a、5bには、検体用スピッツの挿入部となる複数の孔13が形成されるとともに、孔13の内面に、検体用スピッツの側面を保持可能な複数の舌片15が形成される。
少なくとも、規制部材7よりも上方に保持部材5aが配置されるとともに、規制部材7よりも下方に、保持部材5bが配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検体用スピッツを収納可能な樹脂発泡体からなる検体収納ラックであって、
検体用スピッツを挿入可能な複数の孔を有する挿入部材と、
検体用スピッツの複数の挿入部の内面に、検体用スピッツの側面を保持可能な複数の舌片を有する保持部材と、
前記孔よりも内径が小さく、所定のサイズ以下の検体用スピッツが挿入可能な複数の規制孔を有する規制部材と、
検体用スピッツの下端を支持する底部材と、
を具備し、
それぞれの部材が積層されて構成され、
少なくとも、前記規制部材よりも上方に前記保持部材が配置されるとともに、前記規制部材よりも下方にも、前記保持部材が配置されることを特徴とする検体収納ラック。
【請求項2】
前記樹脂発泡体は、抗ウィルス性ポリオレフィン発泡体であることを特徴とする請求項1記載の検体収納ラック。
【請求項3】
上方から順に、
前記挿入部材、前記保持部材、前記挿入部材、前記規制部材、前記保持部材、前記挿入部材及び前記底部材が順に積層されることを特徴とする請求項1記載の検体収納ラック。
【請求項4】
それぞれの部材は、互いの積層面の少なくとも一方に配置された粘着剤によって接合されており、
前記粘着剤は、前記保持部材以外の部材の上面又は下面に配置されることを特徴とする請求項1記載の検体収納ラック。
【請求項5】
前記底部材には、検体用スピッツに対応する部位に小孔が形成されることを特徴とする請求項1記載の検体収納ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血等において使用される検体スピッツを収納可能な検体収納ラックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、検体用のスピッツ(検体を保管する容器)は、検体収納ラックに整列して取り扱われる。このような検体収納ラックとしては、一般的には樹脂発泡体で構成され、多数のスピッツ挿入用の孔が形成される(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-202940号公報
【特許文献2】特開2014-21027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の検体用ラックでは、検体用スピッツを保持するために、検体用スピッツが挿入される部分では発泡樹脂が用いられる。発泡樹脂は柔軟であるため、例えば検体用スピッツのサイズが多少異なっても同様に取り扱うことができる。また、発泡樹脂の圧縮変形によって検体用スピッツが押さえつけられるため、移動時における脱落等を抑制することができる。
【0005】
一方、従来の検体用ラックは安価なポリエチレンフォームを主体とした積層体であり、複数の孔が開いた構造としている。しかし、ポリエチレンフォームは圧縮ひずみが残留しやすいため、太さの異なる検体用スピッツを入れ替えた際、十分に保持できるように復元するまで数分要する場合がある。すなわち、一度圧縮変形して、穴が拡径されてしまうと、元の径に戻るまで時間を要するため、太い径の検体用スピッツを挿入した後に、細い径の検体用スピッツに入れ替えようとしても、挿入用の孔の径が大きいままとなり、検体用スピッツを保持することができない場合がある。
【0006】
これに対し、検体用スピッツの保持を目的として、ポリエチレン発泡樹脂に、圧縮復元性の良いウレタンフォームを中間層に挟んだ構造のものが提案されている。
【0007】
しかし、2種類の材料を使用するとコスト増の要因となる。このため、単一の材料を用いても、上述したような径の異なる検体用スピッツの入れ替え時に、即座に確実に検体用スピッツを保持することが可能な検体用ラックが求められる。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、例えば径の太い検体用スピッツを径の細い検体用スピッツに入れ替える際にも、即座に検体用スピッツを保持することが可能な検体用ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために本発明は、複数の検体用スピッツを収納可能な樹脂発泡体からなる検体収納ラックであって、検体用スピッツを挿入可能な複数の孔を有する挿入部材と、検体用スピッツの複数の挿入部の内面に、検体用スピッツの側面を保持可能な複数の舌片を有する保持部材と、前記孔よりも内径が小さく、所定のサイズ以下の検体用スピッツが挿入可能な複数の規制孔を有する規制部材と、検体用スピッツの下端を支持する底部材と、を具備し、それぞれの部材が積層されて構成され、少なくとも、前記規制部材よりも上方に前記保持部材が配置されるとともに、前記規制部材よりも下方にも、前記保持部材が配置されることを特徴とする検体収納ラックである。
【0010】
前記樹脂発泡体は、抗ウィルス性ポリオレフィン発泡体であることが望ましい。
【0011】
上方から順に、前記挿入部材、前記保持部材、前記挿入部材、前記規制部材、前記保持部材、前記挿入部材及び前記底部材が順に積層されることが望ましい。
【0012】
それぞれの部材は、互いの積層面の少なくとも一方に配置された粘着剤によって接合されており、前記粘着剤は、前記保持部材以外の部材の上面又は下面に配置されることが望ましい。
【0013】
前記底部材には、検体用スピッツに対応する部位に小孔が形成されてもよい。
【0014】
本発明によれば、太い径の検体用スピッツは、規制部材によって挿入代が規制されるため、奥まで挿入されずに保持される。一方、細い径の検体用スピッツは、規制部よりも奥まで挿入することができるため、太い径の検体用スピッツを抜いた直後でも、規制部よりも奥の保持部材によって確実に保持することができる。
【0015】
また、樹脂発泡体が、抗ウィルス性ポリオレフィン発泡体であれば、検体用ラックに抗ウィルス性の機能を付すことができる。例えば、検体用ラックは孔の内部など形状が複雑であるため、アルコールでふき取るなどの作業が容易ではない。また、発泡樹脂製であるため、オートクレーブなどを用いた殺菌やウィルス除去を行うこともできない。
【0016】
しかし、抗ウィルス性ポリエチレン発泡体を用いることで容易に抗ウィルス性の機能を持たせることができる。また、前述したように、通常のポリオレフィン発泡体は圧縮変形後の復元に時間を要するが、本発明では、復元を待たずに細い検体用スピッツも保持することが可能であるため、全体を抗ウィルス性ポリオレフィン発泡体で構成することができる。
【0017】
また、上方から順に、挿入部材、保持部材、挿入部材、規制部材、保持部材、挿入部材、底部材を順に積層することで、太い径の検体用スピッツは、挿入部材、保持部材、及び挿入部材で保持し、細い径の検体用スピッツはさらに、保持部材、挿入部材、及び底部材で保持することができる。
【0018】
また、保持部材以外の部材の上面又は下面に粘着剤を配置し、それぞれの部材を、互いの積層面の少なくとも一方に配置された粘着剤によって接合するようにすることで、保持部材の舌片の先端部に粘着剤が付着することがない。このため、粘着剤によって圧縮変形した舌片の復元が阻害されることを抑制することができる。
【0019】
また、底部材の検体用スピッツに対応する部位に小孔を形成することで、水分等が底部材にたまることがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば径の太い検体用スピッツを径の細い検体用スピッツに入れ替える際にも、即座に検体用スピッツを保持することが可能な検体用ラックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】検体収納ラック1の分解斜視図。
図2】検体収納ラック1の組立斜視図。
図3】検体収納ラック1の分解断面図。
図4】検体収納ラック1の組立断面図。
図5】(a)~(d)は、各孔の形状とサイズを示す図。
図6】(a)は検体用スピッツ23aを検体収納ラック1に挿入する状態を示す図、(b)は検体用スピッツ23aを検体収納ラック1に挿入した状態を示す図。
図7】(a)は検体用スピッツ23bを検体収納ラック1に挿入する状態を示す図、(b)は検体用スピッツ23bを検体収納ラック1に挿入した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、検体収納ラック1の分解斜視図、図2は、検体収納ラック1の組立斜視図、図3は、検体収納ラック1の分解断面図、図4は、検体収納ラック1の組立断面図である。なお、図示した例では、検体用スピッツの挿入穴が4×10列である例を示すが、これには限定されない。
【0023】
検体収納ラック1は、複数の検体用スピッツを収納可能であり、同一のポリオレフィン樹脂発泡体からなる。検体収納ラック1は、主に、挿入部材3a、保持部材5a、挿入部材3b、規制部材7、保持部材5b、挿入部材3c、底部材9からなり、それぞれの部材が積層されて構成される。なお、この構成にさらに他の層を追加してもよく、本発明の効果を損なわない限り、一部の部材を省略してもよい。
【0024】
挿入部材3a、3b、3cは、後述する粘着剤の配置以外はすべて略同様の形態であり、同一の部材を適用可能である。挿入部材3a、3b、3cには、複数の太孔11が形成される。太孔11は、略円形の孔であり、後述する検体用スピッツを挿入可能である。
【0025】
なお、挿入部材3a、3b、3cは、検体用スピッツを収納した際に、収納空間を形成するための部材である。このため、挿入部材3a、3b、3cはは、他の部材よりも厚みが厚く、検体用スピッツの所定の部位が収納される。
【0026】
図5(a)は、太孔11を示す図である。太孔11の内径は、収納対象となる各種の検体用スピッツの全てが挿入可能な程度に設定される。すなわち、最も太い検体用スピッツの外径よりもわずかに大きく設定される。
【0027】
保持部材5a、5bは、略同様の形態であり、同一の部材を適用可能である。保持部材5a、5bには、検体用スピッツの挿入部となる複数の孔13が形成されるとともに、孔13の内面に、検体用スピッツの側面を保持可能な複数の舌片15が形成される。
【0028】
図5(b)は、孔13および舌片15を示す図である。舌片15は、孔13の周方向に例えば四か所形成される。図示した例では、舌片15は中央に向かって細くなるような略三角形に形成される。このため、舌片15を除く孔13は略十字形となる。なお、舌片15の個数や形状は図示した例には限られない。
【0029】
保持部材5a、5bは、検体用スピッツを収納した際に、検体用スピッツを外周部から押さえて保持するための部材である。前述したように、保持部材5a、5bは発泡樹脂で構成されるため、検体用スピッツを挿入すると圧縮弾性変形して、検体用スピッツの外周面に対して復元力による押圧力(及びこれによる摩擦力)を付与することができる。このため、検体用スピッツが孔13から抜け落ちることを抑制することができる。
【0030】
なお、対向する舌片15同士の最小間隔(図中C)が大きすぎると、細い検体用スピッツを挿入した際に舌片と接触せず、保持力が発揮されなくなる。このため、舌片15の最小間隔Cは、最も細い検体用スピッツの外径よりも小さく設定される。
【0031】
一方、孔13の最大径(舌片15以外の部における最大内径)が小さくなると、前述したように、太い検体用スピッツを挿入することが困難となる。これは、外径がC~Bの範囲の検体用スピッツであれば、挿入時に舌片15のつぶれ代を確保できるとともに、舌片がつぶれた際に、舌片15同士隙間や舌片15の折れ曲がりによって検体用スピッツの挿入の妨げとなることはない。
【0032】
しかし、検体用スピッツの15の外径がBを超えると、舌片15による変形ではなく、孔13の外周面全体の圧縮変形となり、孔13の内縁が周方向に拘束されているため、十分に圧縮変形等を行うことが困難となり、挿入抵抗が著しく増加する。このため、孔13の最大径Bは、太孔11の内径Aとほぼ同等に設定される。
【0033】
規制部材7は、検体用スピッツの径によってそれ以上の挿入を規制するための部材である。規制部材7には、複数の細孔17が形成される。
【0034】
図5(c)は、細孔17を示す図である。規制部材7の細孔17の内径Dは、挿入部材3a等の太孔11の内径Aよりも小さい。また、細孔17は、舌片等を有しないため、内径Dよりも大きな径の検体用スピッツを挿入することは困難である。このため、所定のサイズ以下の検体用スピッツのみが細孔17へ挿入可能である。すなわち、細孔17は、検体用スピッツの挿入を規制する規制孔として機能する。
【0035】
なお、前述したように、細孔17へは所定の外径以下の検体用スピッツのみが通過可能である。このため、細孔17の内径Dは、対象となる検体用スピッツの最小径よりも大きい。例えば、前述した保持部材5a等の舌片15間の最小間隔Cよりも大きく設定される。
【0036】
底部材9は、検体収納ラック1の最下段に配置される。底部材9は、検体用スピッツの下端を下方で支持するための部材である。このため、底部材9には孔は不要であるが、図示したように、底部材9に、検体用スピッツに対応する部位に小孔19を形成してもよい。このようにすることで、洗浄後など液体等が底部材9に溜まることがなく、小孔19から流出させることができる。
【0037】
図3に示すように、検体収納ラック1は、上方から順に挿入部材3a、保持部材5a、挿入部材3b、規制部材7、保持部材5b、挿入部材3c及び底部材9が順に積層される。ここで、それぞれの部材は、粘着剤21によって接合される。
【0038】
接合前においては、粘着剤21は、挿入部材3aの下面、挿入部材3bの上下面、規制部材7の下面、挿入部材3cの上下面にそれぞれ形成される。粘着剤21は、それぞれの部材の孔以外の部位に配置されるため積層される部材同士は、粘着剤21の配置された領域のみで互いに接着される。
【0039】
このように、それぞれの部材は、互いの積層面の少なくとも一方に配置された粘着剤21によって接合されるが、粘着剤21は、保持部材5a、5bには形成されない。すなわち、粘着剤21は、保持部材5a、5b以外の部材の上面又は下面に配置される。このようにすることで、舌片15の上下面に粘着剤21が配置されることを抑制することができる。
【0040】
例えば、舌片15の下面に粘着剤21が配置されていると、検体用スピッツを挿入して舌片15を圧縮弾性変形させた際に、舌片15自体が粘着剤21によってくっつき、舌片15が変形した状態で維持されてしまう。これに対し、粘着剤21を舌片15の少なくとも先端側の変形の大きな部位には配置されないようすることで、舌片15の圧縮後の復元の妨げとなることを抑制することができる。
【0041】
なお、前述したように、検体収納ラック1の積層構造は、図3には限られないが、少なくとも、規制部材7よりも上方に保持部材5aが配置されるとともに、規制部材7よりも下方に、保持部材5bが配置される。すなわち、規制部材7の上方において検体用スピッツを保持することができるとともに、規制部材7よりも下方でも、検体用スピッツを保持することができる。
【0042】
ここで、前述したように、本実施形態の検体収納ラック1は、全体をポリエチレンフォームなどのポリオレフィン発泡体で構成することができる。すなわち、これまでのように、ウレタンフォームを併用する必要がない。すなわち、全て同一の素材で構成することができる。
【0043】
また、本実施形態において、さらに好ましくは、各部材を全て抗ウィルス性ポリオレフィン発泡体(例えば抗ウィルス性ポリエチレン発泡体)で構成することが望ましい。
【0044】
抗ウィルス性ポリオレフィン発泡体としては、例えば、抗ウィルス剤として銀または銀化合物あるいは銀イオンを担持させたリン酸塩系の化合物を、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.8~5.0質量部の範囲で含む、発泡性に優れたポリオレフィン系押出樹脂発泡体を適用可能である(特開2022-119552)。
【0045】
又は、抗ウィルス剤を含むポリオレフィン系押出樹脂発泡体の少なくとも一方の表面が発泡層を構成する気泡壁が開口したスライス面(又は切断面)であり、スライス面(又は切断面)に抗ウィルス剤が表出しているポリオレフィン系押出樹脂発泡を適用可能である(特開2022-64037)。
【0046】
このように、全ての部材を抗ウィルス性のポリオレフィン発泡樹脂で構成し、かつ、表面の全体に抗ウィルス剤が表出していることで、使用後において、ウィルス除去作業を行う必要がない。
【0047】
次に、検体収納ラック1の使用方法について説明する。図6(a)、図6(b)は、相対的に太い検体用スピッツ23aを検体収納ラック1へ挿入する工程を示す図である。前述したように、各部材が積層され、上から順に、太孔11、孔13、太孔11、細孔17、孔13、太孔11及び小孔19が一列に配置される。
【0048】
検体用スピッツ23aを検体収納ラック1の上方から挿入する際、相対的に太い検体用スピッツ23aの外径が、太孔11よりも小さいため、検体用スピッツ23aを太孔11に容易に挿入することができる。
【0049】
一方、保持部材5aの孔13には舌片15が形成され舌片15同士の間隔は検体用スピッツ23aの外径よりも小さい。このため、検体用スピッツ23aは、舌片15と接触する。しかし、舌片15は、周方向に離間して(縁切りされて)配置されるため、検体用スピッツ23aを押し込むと容易に弾性変形する。このように、検体用スピッツ23aは、挿入部材3aの太孔11と保持部材5aの孔13と挿入部材3bの太孔11までは容易に挿入可能である。
【0050】
一方、図6(b)に示すように、検体用スピッツ23aが規制部材7まで達すると、規制部材7の細孔17の内径が、検体用スピッツ23aの外径よりも小さいため、検体用スピッツ23aの下端が規制部材7(細孔17の縁部)に接触する。この際、細孔17には舌片のような構造は有しないため、検体用スピッツ23aを押し込んだ際に非常に大きな抵抗となる。このため、それ以上の挿入が規制される。
【0051】
なお、この状態でも、検体用スピッツ23aは、保持部材5aによって保持される。このため、誤って検体収納ラック1から検体用スピッツ23aが抜け落ちることを抑制することができる。また、少なくとも、挿入部材3a、3b、及び保持部材5aの厚み分は検体用スピッツ23aを検体収納ラック1へ収納することができる。このため、検体用スピッツ23aを安定して保持することができる。
【0052】
次に、他の検体用スピッツを検体収納ラック1へ挿入する工程について説明する。図7(a)、図7(b)は、相対的に細い検体用スピッツ23bを検体収納ラック1へ挿入する工程を示す図である。
【0053】
検体用スピッツ23bを、検体収納ラック1の上方から挿入する際、相対的に細い検体用スピッツ23bの外径が太孔11よりも小さいため、検体用スピッツ23bを太孔11に容易に挿入することができる。
【0054】
また、保持部材5aの孔13には舌片15が形成され舌片15同士の間隔は検体用スピッツ23bの外径よりも小さいが、舌片15は、周方向に離間して(縁切りされて)配置されるため、検体用スピッツ23bを押し込むと容易に弾性変形する。この際、対向する舌片15間の距離が検体用スピッツ23bの外径よりも小さいため、確実に舌片15を検体用スピッツ23bへ押圧させることができる。
【0055】
さらに、規制部材7の細孔17の内径が、検体用スピッツ23bの外径よりも大きいため、検体用スピッツ23bは容易に細孔17へ挿入することができる。また、規制部材7の下方においても、孔13及び太孔11が配置されるが、前述したとおり、検体用スピッツ23bは孔13と太孔11へ容易に挿入可能である。このため、検体用スピッツ23bの下端が底部材9に接するまで、検体用スピッツ23bを検体収納ラック1へ押し込むことができる。
【0056】
なお、底部材9には小孔19が形成されるが、小孔19の内径は、検体用スピッツ23bの外径よりも十分に小さいため、検体用スピッツ23bの下端が底部材9(小孔19の縁部)に接触する。この際、小孔19には舌片のような構造は有しないため、検体用スピッツ23bを押し込んだ際に非常に大きな抵抗となる。このため、それ以上の挿入が規制される。
【0057】
なお、この場合には、検体用スピッツ23bは、保持部材5a、5bの両方によって保持される。このため、誤って検体収納ラック1から検体用スピッツ23aが抜け落ちることを抑制することができる。
【0058】
次、同一の部位に相対的に太い検体用スピッツ23aを挿入した後に、検体用スピッツ23aを抜き取り、再度同一の部位に検体用スピッツ23bを挿入した場合について説明する。図6(b)の状態では、前述したように、保持部材5aの舌片15は強く圧縮されて弾性変形した状態となる。また、保持部材5aは、例えばポリエチレン樹脂発泡体であるため、検体用スピッツ23aを抜き取った後も、直ちに圧縮変形が復元せずに、所定の時間を要する。
【0059】
例えば、条件にもよるが、ポリエチレン発泡樹脂製の検体用ラックに対して、太い検体用スピッツ23aを24時間挿入してから抜いた後に、舌片が完全に元の形態に戻るまでの時間を計測したところ、6分ほどの時間を要した。すなわち、復元する前の状態で、相対的に細い検体用スピッツ23bを保持部材5aに挿入しても、保持部材5a(舌片15)によって検体用スピッツ23bを保持することができない。このため、抜け落ちの恐れがある。
【0060】
一方、検体用スピッツ23aは規制部材7よりも奥には挿入されない。このため、検体用スピッツ23aを挿入した際にも、保持部材5bの舌片15は変形することがない。また、前述したように、検体用スピッツ23bは、規制部材7よりも奥まで挿入可能である。このため、検体用スピッツ23bを挿入する際において、保持部材5aによる保持が不十分であっても、保持部材5bによって保持することができる。このため、舌片15の復元を待たずに、作業を進めることができる。
【0061】
以上、本実施形態によれば、例えば単一のポリエチレン発泡樹脂で検体収納ラック1を構成しても、検体用スピッツの入れ替えの際に、圧縮した発泡樹脂の復元を待つことなく、使用することができる。また、細い検体用スピッツ23bであっても確実に保持部材5bによって保持されるため、運搬時等において検体用スピッツ23bが抜け落ちることを抑制することができる。
【0062】
また、単一のポリオレフィン発泡樹脂で構成することができるため、公知の抗ウィルス性のポリエチレン発泡樹脂等を適用することができる。このため、ウィルス除去等の作業が削減できる。
【0063】
また、保持部材5a、5bの上下面に粘着剤21を配置しないようにすることで、舌片15の変形後の復元の妨げとなることを抑制することができる。
【0064】
また、底部材9に小孔19を設けることで、例えば液体等が底部材9に溜まることを抑制することができる。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0066】
1………検体収納ラック
3a、3b、3c………挿入部材
5a、5b………保持部材
7………規制部材
9………底部材
11………太孔
13………孔
15………舌片
17………細孔
19………小孔
21………粘着剤
23a、23b………検体用スピッツ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7