(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007880
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】吸収性物品用の不織布及び不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/559 20120101AFI20240112BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240112BHJP
D04H 1/485 20120101ALI20240112BHJP
D04H 1/498 20120101ALI20240112BHJP
【FI】
D04H1/559
A61F13/511 100
A61F13/511 400
D04H1/485
D04H1/498
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109255
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(72)【発明者】
【氏名】出谷 耕
(72)【発明者】
【氏名】木村 明寛
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】小森 菜緒子
(72)【発明者】
【氏名】奥田 風花
【テーマコード(参考)】
3B200
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BA03
3B200BB03
3B200DA13
3B200DC01
3B200DC02
3B200DC04
3B200DC07
3B200EA07
3B200EA24
4L047AA12
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA27
4L047BA01
4L047BA09
4L047BB09
4L047CA02
4L047CA05
4L047CB02
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
【課題】層間剥離を抑制できると共に、液透過性及び液捌け性 に優れる吸収性物品用の不織布を提供する。
【解決手段】第1繊維層26及び第2繊維層28を、厚み方向Tに順に備える吸収性物品用の不織布16であって、第1繊維層26は、第1面22を有し、熱融着性繊維からなり、第2繊維層28は、吸水性繊維と熱融着性繊維とを含み、第1繊維層26の熱融着性繊維の一部は、第2繊維層28に入り込み、第2繊維層28の熱融着性繊維の一部と融着しており、第2繊維層28の吸水性繊維は、第1面22に露出していない。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1繊維層及び第2繊維層を、厚み方向に順に備える吸収性物品用の不織布であって、
前記第1繊維層は、第1面を有し、熱融着性繊維からなり、
前記第2繊維層は、吸水性繊維と熱融着性繊維とを含み、
前記第1繊維層の前記熱融着性繊維の一部は、前記第2繊維層に入り込み、前記第2繊維層の前記熱融着性繊維の一部と融着しており、
前記第2繊維層の前記吸水性繊維は、前記第1面に露出していない、不織布。
【請求項2】
前記第1繊維層は、前記第1面に、厚み方向に窪んだ凹部が形成されていない、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記第2繊維層の前記第1繊維層と反対側に熱融着性繊維からなる第3繊維層を備える、請求項1に記載の不織布。
【請求項4】
前記第2繊維層に入り込んだ前記第1繊維層の一部の前記熱融着性繊維のさらに一部は、前記第2繊維層を貫通し、前記第3繊維層に入り込み、前記第3繊維層の前記熱融着性繊維の一部と融着している、請求項3に記載の不織布。
【請求項5】
前記第2繊維層の前記熱融着性繊維の一部は、前記第3繊維層に入り込み、前記第1繊維層の融着性繊維のさらに一部、及び前記第3繊維層の前記熱融着性繊維の一部と融着している、請求項4に記載の不織布。
【請求項6】
前記第1繊維層の前記第1面が肌対向面である、請求項1に記載の不織布。
【請求項7】
前記第2繊維層の坪量が面方向で均一である、請求項6に記載の不織布。
【請求項8】
前記第2繊維層は、前記吸水性繊維を40質量%以上70質量%以下含む、請求項6に記載の不織布。
【請求項9】
厚み方向に順に重ねられた、熱融着性繊維からなる第1繊維ウエブと、吸水性繊維と熱融着性繊維とを含む第2繊維ウエブに対し、前記第1繊維ウエブ側から気体を噴射する第1工程と、
前記第1繊維ウエブの前記熱融着性繊維及び前記第2繊維ウエブの前記熱融着性繊維の表面を溶融し、前記熱融着性繊維同士を融着する第2工程と、を備え、
前記第1工程は、前記第1繊維ウエブの前記熱融着性繊維の、機械方向に直交する幅方向の移動量よりも、厚み方向の移動量が大きくなる条件で前記気体を噴射する、吸収性物品用の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品用の不織布及び不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品用の不織布として、例えば、特許文献1に、木綿ウエブと熱接着性短繊維を含む合成短繊維ウエブとが積層されてなり、木綿ウエブの構成繊維同士および木綿と合成短繊維ウエブとの構成繊維同士および合成短繊維ウエブの構成繊維同士が三次元的に交絡し一体化した複合不織布であり、熱接着性成分の融着によって繊維同士の交点が熱接着していることを特徴とする複合不織布が開示されている。
【0003】
また、特許文献2に、第1繊維層と、第1繊維層の一方の主表面に位置する第2繊維層を含み、第1繊維層が、第1芯鞘型複合繊維を含み、第2繊維層が、第2芯鞘型複合繊維とセルロース系繊維を含み、第1芯鞘型複合繊維の繊度が第2芯鞘型複合繊維の繊度よりも小さく、第1芯鞘型複合繊維の繊度が1.0~2.8dtexであり、第2芯鞘型複合繊維の繊度が1.7~5.6dtexであり、セルロース系繊維の繊度が1.2~6.0dtexであり、第2繊維層が、第2繊維層の総質量を基準として、セルロース系繊維を5質量%~40質量%の割合で含む吸収性物品用の不織布が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-229256号公報
【特許文献2】特開2020-171688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の不織布は、積層したウエブに高圧流体処理を施すことによって、木綿ウエブの構成繊維同士および木綿と合成短繊維ウエブとの構成繊維同士および合成短繊維ウエブの構成繊維同士を三次元的に交絡し一体化している。当該不織布は、ウエブが高圧流体によって厚み方向に大きな力を受けるので嵩が低くなる。不織布は、吸収性物品の表面シートに使用された場合、嵩が低いため液体が厚み方向へ透過し難く、液透過性に劣る。
【0006】
特許文献2には、第1繊維層と第2繊維層をエアスルー法(熱風貫通式熱処理法)で接合するのが風合いの良好な不織布を得やすい点で好ましい、と記載されているが、第1繊維層と第2繊維層の繊維同士の接点が少ないため融着する箇所が少なく、第1繊維層と第2繊維層の間で剥離しやすい、という問題があった。第2繊維層に含まれるセルロース系繊維が多いほど、第1繊維層と第2繊維層における融着する箇所が減るため、第1繊維層と第2繊維層の間で剥離しやすくなる。
【0007】
本発明は、層間剥離を抑制できると共に、液透過性に優れる吸収性物品用の不織布及び吸収性物品用の不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1繊維層及び第2繊維層を、厚み方向に順に備える吸収性物品用の不織布であって、前記第1繊維層は、第1面を有し、熱融着性繊維からなり、前記第2繊維層は、吸水性繊維と熱融着性繊維とを含み、前記第1繊維層の前記熱融着性繊維の一部は、前記第2繊維層に入り込み、前記第2繊維層の前記熱融着性繊維の一部と融着しており、前記第2繊維層の前記吸水性繊維は、前記第1面に露出していない、不織布である。
【0009】
本発明は、厚み方向に順に重ねられた、熱融着性繊維からなる第1繊維ウエブと、吸水性繊維と熱融着性繊維とを含む第2繊維ウエブに対し、前記第1繊維ウエブ側から気体を噴射する第1工程と、前記第1繊維ウエブの前記熱融着性繊維及び前記第2繊維の前記熱融着性繊維の表面を溶融し、前記熱融着性繊維同士を融着する第2工程と、を備え、前記第1工程は、前記第1繊維ウエブの前記熱融着性繊維の、機械方向に直交する幅方向の移動量よりも、厚み方向の移動量が大きくなる条件で前記気体を噴射する、吸収性物品用の不織布の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による吸収性物品用の不織布は、層間剥離を抑制できると共に、液透過性に優れる。本発明による吸収性物品用の不織布の製造方法は、層間剥離を抑制できると共に、液透過性に優れる不織布を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る吸収性物品を模式的に示す図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿った断面を模式的に示す端面図である。
【
図4】本実施形態に係る不織布の製造工程を示す模式図である。
【
図5】変形例に係る不織布を模式的に示す部分拡大断面図である。
【
図6】実施例1に係る不織布の断面を撮影した顕微鏡写真である。
【
図7】比較例1に係る不織布の断面を撮影した顕微鏡写真である。
【
図8】比較例2に係る不織布の断面を撮影した顕微鏡写真である。
【
図9】参考例1に係る不織布の断面を撮影した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施態様は、以下の態様に関する。
【0013】
[態様1]
第1繊維層及び第2繊維層を、厚み方向に順に備える吸収性物品用の不織布であって、
前記第1繊維層は、第1面を有し、熱融着性繊維からなり、
前記第2繊維層は、吸水性繊維と熱融着性繊維とを含み、
前記第1繊維層の前記熱融着性繊維の一部は、前記第2繊維層に入り込み、前記第2繊維層の前記熱融着性繊維の一部と融着しており、前記第2繊維層の前記吸水性繊維は、前記第1面に露出していない、不織布。
不織布は、第1繊維層の熱融着性繊維の一部と第2繊維層の熱融着性繊維の一部同士が融着している。すなわち、第1繊維層の熱融着性繊維の一部は、第2繊維層に入り込み、第2繊維層に含まれる熱融着性繊維の一部と接し、融着している。したがって不織布は、第1繊維層と第2繊維層とが強固に接合されているので、第1繊維層と第2繊維層の間の層間剥離を抑制できる。
第2繊維層の吸水性繊維は、互いに融着した第1繊維層の熱融着性繊維の一部と第2繊維層の熱融着性繊維の一部同士によって、第2繊維層内に保持される。第2繊維層の吸水性繊維は、第1面に露出していないので第1面から脱落し難い。したがって、不織布は、第2繊維層の繊維の抜けが抑制される。
【0014】
当該不織布が吸収性物品の表面シートに使用され、第1面を肌対向面とした場合、肌対向面に供給された体液は、肌対向面から第1繊維層の内部へ移行する。また、第2面を肌対向面とした場合、肌対向面に供給された体液は、肌対向面から第2繊維層の内部へ移行する。不織布は、熱融着性繊維からなる第1繊維層と吸水性繊維と熱融着性繊維とを含む第2繊維層とを備えるので嵩が高く液透過性に優れる。
結果として、不織布は、第1繊維層と第2繊維層の間の層間剥離を抑制できると共に、液透過性に優れる。
【0015】
[態様2]
前記第1繊維層は、前記第1面に、厚み方向に窪んだ凹部が形成されていない、態様1に記載の不織布。
仮に、第1面に、厚み方向に窪んだ凹部が形成されていた場合、当該部分の嵩が低いため、液透過性が低下してしまう。
これに対し本発明の不織布は、第1面に厚み方向に窪んだ凹部が形成されていないので、特定の箇所に体液が溜まることが抑制される。したがって不織布は、液透過性に優れる。
【0016】
[態様3]
前記第2繊維層の前記第1繊維層と反対側に熱融着性繊維からなる第3繊維層を備える、態様1又は2に記載の不織布。
不織布は、第2繊維層の第1繊維層と反対側に配置された第3繊維層の第2繊維層と反対側の表面が、第2面となる。第2繊維層は、第3繊維層によって覆われ、吸水性繊維が第2面から露出することが抑制される。したがって不織布は、吸水性繊維の抜けが抑制される。
【0017】
[態様4]
前記第2繊維層に入り込んだ前記第1繊維層の一部の前記熱融着性繊維のさらに一部は、前記第2繊維層を貫通し、前記第3繊維層に入り込み、前記第3繊維層の前記熱融着性繊維の一部と融着している、態様3に記載の不織布。
【0018】
不織布は、第1繊維層の熱融着性繊維の一部のさらに一部が第3繊維層の熱融着性繊維の一部と融着している。すなわち、第1繊維層の熱融着性繊維の一部は、第2繊維層へ入り込んでおり、さらにその一部は第2繊維層を貫通し、第3繊維層に入り込んで、第3繊維層の熱融着性繊維の一部と融着している。したがって不織布は、第1繊維層と第2繊維層の間に加え、第2繊維層と第3繊維層の間が強固に接合されているので、層間剥離を抑制できる。
第2繊維層の吸水性繊維は、互いに融着した第1繊維層の熱融着性繊維の一部と第2繊維層の熱融着性繊維の一部同士、及び第2繊維層を貫通した第1繊維層の熱融着性繊維のさらに一部と第3繊維層の熱融着性繊維の一部同士によって、第2繊維層内に保持される。したがって、不織布は、第2繊維層の繊維の抜けがさらに抑制される。
【0019】
[態様5]
前記第2繊維層の前記熱融着性繊維の一部は、前記第3繊維層に入り込み、前記第1繊維層の融着性繊維のさらに一部、及び前記第3繊維層の前記熱融着性繊維の一部と融着している、態様4に記載の不織布。
【0020】
第2繊維層の熱融着性繊維の一部は、第3繊維層へ入り込んでおり、第3繊維層において、第3繊維層の熱融着性繊維の一部と融着しており、さらに、第2繊維層を貫通し第3繊維層に入り込んだ第1繊維層の熱融着性繊維のさらに一部と、融着している。したがって不織布は、第2繊維層と第3繊維層の間がより強固に接合されているので、層間剥離をより抑制できる。
第2繊維層の吸水性繊維は、互いに融着した、第2繊維層の熱融着性繊維の一部と第3繊維層の熱融着性繊維の一部同士、及び第2繊維層を貫通した第1繊維層の熱融着性繊維のさらに一部と第2繊維層の熱融着性繊維の一部同士によって、第2繊維層内に保持される。したがって、不織布は、第2繊維層の繊維の抜けがさらに抑制される。
【0021】
[態様6]
前記第1繊維層の前記第1面が肌対向面である、態様1~5のいずれか1つに記載の不織布。
不織布が吸収性物品の表面シートに使用され、第1面を肌対向面とした場合、肌対向面に供給された体液は、肌対向面から第1繊維層の内部へ移行する。吸水性繊維は、肌対向面に露出していないので、体液が肌対向面に残りにくい。第1繊維層の内部へ移行した体液は、さらに厚み方向に移行し、第1繊維層と第2繊維層の間の界面に到達する。当該体液は、第1繊維層の熱融着性繊維の一部が第2繊維層へ入り込んでいることによって、スムーズに第2繊維層へ移行する。第2繊維層に移行した体液は、第2繊維層に含まれる吸水性繊維に吸収される。当該不織布が吸収性物品の表面シートに使用された場合、吸水性繊維に吸収された体液は、非肌側に配置された吸収体に吸収される。このようにして、不織布は、肌対向面に供給された体液を、第1繊維層から第2繊維層へスムーズに移行し、第2繊維層の吸水性繊維で吸収するので、液捌け性に優れる。
【0022】
[態様7]
前記第2繊維層の坪量が面方向で均一である、態様6に記載の不織布。
第2繊維層の坪量が面方向で均一であるので、肌対向面に供給され厚み方向に移行してきた体液を面方向の位置に関わらずに均一に吸収する。したがって不織布は、面方向の位置に関わらず、優れた液捌け性が得られる。
【0023】
[態様8]
前記第2繊維層は、前記吸水性繊維を40質量%以上70質量%以下含む、態様6又は7に記載の不織布。
不織布は、第2繊維層において、吸水性繊維を40質量%以上70質量%以下含むので、着用者から排出される体液を吸水性繊維によってより確実に吸収する。したがって、不織布は、繰り返し体液が供給された場合の液捌け性に優れる。
【0024】
[態様9]
厚み方向に順に重ねられた、熱融着性繊維からなる第1繊維ウエブと、吸水性繊維と熱融着性繊維とを含む第2繊維ウエブに対し、前記第1繊維ウエブ側から気体を噴射する第1工程と、
前記第1繊維ウエブの前記熱融着性繊維及び前記第2繊維の前記熱融着性繊維の表面を溶融し、前記熱融着性繊維同士を融着する第2工程と、を備え、
前記第1工程は、前記第1繊維ウエブの前記熱融着性繊維の、機械方向に直交する幅方向の移動量よりも、厚み方向の移動量が大きくなる条件で前記気体を噴射する、吸収性物品用の不織布の製造方法。
【0025】
厚み方向に重ねられた、熱融着性繊維からなる第1繊維ウエブと、吸水性繊維と熱融着性繊維とを含む第2繊維ウエブに対し、第1繊維ウエブ側から気体を噴射する第1工程は、第1繊維ウエブの熱融着性繊維の、機械方向に直交する幅方向の移動量よりも、厚み方向の移動量が大きくなる条件で気体を噴射するので、態様1に係る不織布を形成することができる。すなわち、本製造方法は、第1繊維層及び第2繊維層を、厚み方向に順に備える吸収性物品用の不織布であって、第1繊維層は、熱融着性繊維からなり、第1面を有し、第2繊維層は、吸水性繊維と熱融着性繊維とを含み、第1繊維層の熱融着性繊維の一部は、第2繊維層へ入り込み、第2繊維層の熱融着性繊維と融着しており、第2繊維層の吸水性繊維は、第1面に露出していない、不織布を形成することができる。
【0026】
以下、実施形態に係る吸収性物品用の不織布について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0027】
(吸収性物品の構成)
図1は実施形態に係る吸収性物品10を模式的に示す図、
図2は
図1のII-II線に沿った断面を模式的に示す端面図、
図3は表面シートの部分拡大断面図である。
【0028】
図1に示す吸収性物品10は、生理用ナプキンであり、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚み方向Tを有し、長手方向Lに延びる本体部12と、長手方向Lの略中央方に幅方向Wの両側に延びる一対のフラップ部14とを備える。吸収性物品10の長手方向L、幅方向W及び厚み方向Tと、後述される各資材の長手方向L、幅方向W及び厚み方向Tとは、一致するので、以下では、吸収性物品10及びその各資材に共通に長手方向L、幅方向W及び厚み方向Tを用いる。「肌対向面側」及び「非肌対向面側」とは、吸収性物品10の着用者による吸収性物品10の着用時、厚み方向Tにて相対的に着用者の肌面に近い側及び遠い側をそれぞれ意味し、吸収性物品10の各資材に共通に用いる。本明細書においては、吸収性物品10及び当該吸収性物品10を構成する各資材(例えば、表面シート、吸収体、裏面シート等)の「肌対向面側の表面」及び「非肌対向面側の表面」を、それぞれ単に「肌対向面」及び「非肌対向面」ということがある。
【0029】
図2に示すように、吸収性物品10は、表面シート16と吸収体18と裏面シート20とを、肌対向面側から厚み方向Tに順に備える。表面シート16は着用者の肌対向面側に位置する液透過性シートである。吸収体18は、表面シート16及び裏面シート20の間に位置する液吸収性及び液保持性の資材である。吸収体18を構成する材料としては、パルプ繊維、合成繊維、吸収性ポリマーなどが挙げられる。裏面シート20は着用者の非肌対向面側に位置する液不透過性シートである。裏面シート20としては、例えば、液不透過性の不織布や合成樹脂フィルム、これらの複合シート、SMS不織布等、任意の液不透過性シートが挙げられる。裏面シート20の非肌対向面側には、裏面シート20を補強し、手触りを改善する外装シート(図示しない)が積層されてもよい。外装シートとしては、裏面シート20と同様の資材、撥水性の不織布や合成樹脂フィルム、これらの複合シート等、任意の撥水性シートが挙げられる。吸収体18、表面シート16及び裏面シート20は、それぞれ接着剤により接合される。表面シート16、吸収体18及び裏面シート20のそれぞれの間の接合用の接着剤は、吸収性物品10で一般的に使用される公知の材料、例えば熱可塑性接着剤を使用できる。
【0030】
(表面シート)
以下、表面シート16について
図3を参照して説明する。表面シート16は、本実施形態に係る不織布からなる。表面シート16は、長手方向L、幅方向W及び厚み方向Tを有し、一方の面に第1面22と、第1面22と反対側に第2面24とを有する。第1面22と第2面24とは、それぞれ厚み方向Tと交差する。本実施形態に係る第1面22と第2面24は、それぞれ略平坦である。厚み方向Tのうちの一方向を上向きとし、他方向を下向きとする。
【0031】
表面シート16は、第1繊維層26及び第2繊維層28を、厚み方向Tへ上記順番に備える。第1繊維層26は、熱融着性繊維からなり、表面シート16(液透過性シート)の肌対向面となる第1面22を有する。表面シート16の不織布の種類は、吸収性物品用として使用可能な不織布であれば特に制限されるものではないが、熱融着性繊維同士が融着したサーマルボンド不織布が好ましく、エアスルー不織布がより好ましい。表面シート16の厚みは、例えば、0.5~3.0mmが挙げられる。
【0032】
第1繊維層26の坪量は、面方向で概ね均一であり、例えば、6~200g/m2が挙げられる。第1繊維層26に含まれる熱融着性繊維は、熱可塑性樹脂からなる繊維、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂;6-ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の樹脂が挙げられ、これらの樹脂は単独で使用しても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。このような熱可塑性樹脂からなる繊維の構造は、特に制限されず、例えば、PET/PE等の芯鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y字形、C字形等の異形断面型繊維などが挙げられ、これらの構造を有する繊維は単独で使用しても、二種類以上の繊維を併用してもよい。熱融着性繊維の繊度としては、例えば1~20dtexが挙げられる。
【0033】
第2繊維層28は、吸水性繊維と熱融着性繊維とを含み、表面シート16の非肌対向面となる第2面24を有する。第2繊維層28は、吸水性繊維を40質量%~60質量%含むのが好ましい。吸水性繊維は、第1面22から露出していない。
【0034】
第2繊維層28の坪量は、面方向で概ね均一であり、例えば、6~200g/m2が挙げられる。第2繊維層28に含まれる吸水性繊維は、例えば、パルプ、コットン、麻等の天然セルロース系繊維;レーヨン、リヨセル、キュプラ等の再生セルロース系繊維などが挙げられ、これらのセルロース系繊維は、1種類の繊維を単独で用いても、2種類以上の繊維を併用してもよい。吸水性繊維の繊度としては、例えば0.5~5.0dtexが挙げられる。
【0035】
第2繊維層28に含まれる熱融着性繊維は、第1繊維層26で例示した熱融着性繊維の中から選択することができ、第1繊維層26の熱融着性繊維と同じでもよいし、異なってもよい。第2繊維層28に含まれる熱可塑性樹脂繊維の繊度としては、例えば、1~20dtexが挙げられる。第2繊維層28に含まれる熱融着性繊維の繊維径は、第1繊維層26に含まれる熱融着性繊維の繊維径と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
表面シート16は、第2面24側に熱融着性繊維からなる第3繊維層30をさらに備えていてもよい。すなわち、表面シート16は、第1繊維層26、第2繊維層28及び第3繊維層30を厚み方向Tに順に備えてもよい。第3繊維層30は、第1繊維層26と同じ材料を用いてもよい。第3繊維層30の坪量は、面方向で概ね均一であり、例えば、6~200g/m2が挙げられる。第3繊維層30は、第1繊維層26と同じ構成とすることができる。第3繊維層30は、肌対向面側の表面において第2繊維層28と接している。表面シート16は、第3繊維層30を備える場合、第3繊維層30の非肌対向面側の表面が表面シート16の非肌対向面である第2面24となる。
【0037】
第1繊維層26と第2繊維層28との境界、及び第2繊維層28と第3繊維層30との境界は、吸水性繊維の有無で規定することができる。すなわち、表面シート16の断面において、吸水性繊維が存在する厚み方向Tの上端を第1繊維層26と第2繊維層28との境界とし、吸水性繊維が存在する側を第2繊維層28、吸水性繊維が存在しない側を第1繊維層26としてもよい。同様に、表面シート16の断面において、吸水性繊維が存在する厚み方向Tの下端を第2繊維層28と第3繊維層30との境界とし、吸水性繊維が存在する側を第2繊維層28、吸水性繊維が存在しない側を第3繊維層30としてもよい。このように規定された第1繊維層26と第2繊維層28との境界、及び第2繊維層28と第3繊維層30との境界は、
図3において直線状であるが、本発明はこれに限らず、厚み方向Tにおいて、多少、起伏していてもよい。吸水性繊維は、後述する方法で染色することによって、視認することができる。
【0038】
第1繊維層26の厚み、すなわち第1繊維層26と第2繊維層28の境界から第1面22までの高さは、例えば、0.3~2.0mmが挙げられる。第1繊維層26の肌対向面(不織布の第1面22)は、厚み方向Tに窪んだ凹部が形成されていない。本明細書における凹部は、ギア加工やエアジェットを噴射するなどして、繊維を曲げたり移動したりして意図して形成されたものをいい、単に積層されたに過ぎない繊維の配置によって自然に形成された起伏を含まない。第1繊維層26と第2繊維層28との境界から第1面22までの高さにおいて、最小高さは、最大高さの50%以上が好ましく、70%~95以下であるのがより好ましい。第2繊維層28の厚み、すなわち第1繊維層26と第2繊維層28との境界から、第2繊維層28と第3繊維層30との境界までの高さは、例えば、0.2~1.0mmが挙げられる。第3繊維層30の厚み、すなわち第2繊維層28と第3繊維層30との境界から第2面24までの高さは、例えば、0.2~0.5mmが挙げられる。
【0039】
第1繊維層26の熱融着性繊維の一部は、第2繊維層28内において第2繊維層28の熱融着性繊維の一部と融着している。すなわち、第1繊維層26の熱融着性繊維の一部は、厚み方向Tの第2繊維層28側へ曲がり、第2繊維層28に入り込み、第2繊維層28に含まれる熱融着性繊維の一部と接し、融着している。
【0040】
第2繊維層28に入り込んだ第1繊維層26の熱融着性繊維の一部のさらに一部は、第3繊維層30内において、第3繊維層30の熱融着性繊維の一部と融着している。すなわち、第1繊維層26の熱融着性繊維の一部は、厚み方向Tの第2繊維層28側へ曲がり、第2繊維層28へ入り込んでおり、さらにその一部は第2繊維層28を貫通し、第3繊維層30に入り込んで、第3繊維層30の熱融着性繊維の一部と接し、融着している。
【0041】
第2繊維層28の熱融着性繊維の一部は、第3繊維層30内において第3繊維層30の熱融着性繊維の一部と融着している。すなわち、第2繊維層28の熱融着性繊維の一部は、厚み方向Tの第3繊維層30側へ曲がり、第3繊維層30に入り込み、第3繊維層30に含まれる熱融着性繊維の一部と接し、融着している。
【0042】
(製造方法)
以下、表面シート16の製造方法について
図4を参照して説明する。
図4は、第1繊維層26と第2繊維層28とを備える表面シート16の製造工程を示す模式図である。表面シート16は、第1工程、第2工程、第3工程、及び第4工程を経ることによって、作製される。
図4中、MDは機械方向(搬送方向)を指す。
【0043】
第1工程は、熱融着性繊維と吸水性繊維とを第1カード機32に供給し、第2繊維ウエブ34を形成する。第2工程は、熱融着性繊維を第2カード機36に供給し、第1繊維ウエブ38を形成する。第2繊維ウエブ34上に第1繊維ウエブ38を重ねて積層ウエブ40を得る。積層ウエブ40は、第3工程へ搬送される。
【0044】
第3工程は、まず、積層ウエブ40をサクションドラム42の周面に載せる。サクションドラム42は、固定された状態の内筒44と、内筒44と同心であって機械方向MDへ回転する通気性を有する外筒46とを有する。サクションドラム内の圧力を圧力計で測定したサクションドラム圧は、各繊維ウエブの坪量や後述する第1エア及び第2エアの流量により適宜選択されるが、例えば、5~9kPaであるのが好ましく、5~8kPaであるのがより好ましい。積層ウエブ40は、外筒46の周面に載せられて外筒46と共に所定の速度、例えば、100m/minの速度で機械方向MDへ搬送される。内筒44は、サクション領域48を有する。サクション領域48の上方に、機械方向MDに直交する交差方向CDに並ぶ複数のノズルを有する第1マニホールド50と、第1マニホールド50と平行に配置され交差方向CDに並ぶ複数のノズルを有する第2マニホールド52とが設けられている。ノズルは所定の開口径、例えば、直径1mmを有する。第1マニホールド50は、例えば200℃の加熱気体からなる第1エアを積層ウエブ40に向かって噴射する。第1マニホールド50から噴射される第1エアの流量は、例えば、3~5m3/minである。続いて、第2マニホールド52は、例えば200℃の加熱気体からなる第2エアを積層ウエブ40に向かって噴射する。第2マニホールド52から噴射される第2エアの流量は、例えば、3~5m3/minである。
【0045】
積層ウエブ40は、第1エアと第2エアとが順次噴射されることによって、第1マニホールド50と第2マニホールド52の直下に位置する第1繊維ウエブ38の熱融着性繊維が移動する。第1エアと第2エアの流量が3~5m3/minであることによって、第1繊維ウエブ38の熱融着性繊維は、幅方向W(交差方向CD)の移動量よりも、厚み方向Tの移動量が大きくなる。言い換えると、第1エアと第2エアは、機械方向MDに直交する交差方向CD(幅方向W)の移動量よりも、厚み方向Tの移動量が大きくなる条件で噴射される。これにより、第1繊維ウエブ38の熱融着性繊維は、幅方向Wへほとんど移動せず、その一部は厚み方向Tの第2繊維ウエブ34側へ曲がり、第2繊維ウエブ34に入り込む。
【0046】
第1繊維ウエブ38の表面は、上記所定の条件の第1エア及び第2エアが噴射されることによって、幅方向Wへの移動が少なく、厚み方向Tへ押し付けられるように移動するので、全体として凹凸が少ない、より滑らかな表面構造となり得る。したがって第1繊維ウエブに基づく第1繊維層26を肌側に配置して表面シート16を形成することができる。
【0047】
第4工程は、積層ウエブ40がドライヤー54を通過する。ドライヤー54は、熱融着性繊維の表面を溶融させることのできる温度、例えば120℃~150℃の加熱空気を積層ウエブ40に吹き付ける。積層ウエブ40は、熱融着性繊維同士が融着する。上述の通り、第1繊維ウエブ38の熱融着性繊維の一部は、第2繊維ウエブ34に入り込んでいるので、第2繊維ウエブ34内において、第2繊維ウエブ34に含まれる熱融着性繊維の一部と溶着する。
【0048】
ドライヤー54から搬送された積層ウエブ40を、室温まで冷却することによって、吸収性物品用として使用することができる表面シート16が得られる。上記のようにして得られた表面シート(不織布)16は、エアスルー不織布であるので、嵩高性に優れる。
【0049】
第3繊維層30を備える表面シート16は、第1工程に先立って熱融着性繊維をカード機(図示しない)に供給し、第3繊維ウエブを形成し、第3繊維ウエブ上に第1工程で形成された第2繊維ウエブ34を重ね、さらに第2工程で形成された第1繊維ウエブ38を重ねて積層ウエブを形成する。当該積層ウエブに対し、第3工程及び第4工程を経ることによって、第1繊維層26、第2繊維層28及び第3繊維層30を備える表面シート16が得られる。
【0050】
(作用及び効果)
吸収性物品10は、表面シート16を着用者の肌対向面側に配置して着用される。着用者から排出された体液は、表面シート16に供給される。体液は、第1面22から第1繊維層26へ厚み方向Tに移行する。体液は、第1繊維層26から第2繊維層28の吸水性繊維によってより内部へ引き込まれ、一部が吸水性繊維に吸収される。吸水性繊維によって引き込まれ、吸収された体液は、表面シート16と非肌側面に配置された吸収体18によって吸収される。
【0051】
表面シート16は、第1繊維層26及び第2繊維層28を、厚み方向Tに順に備える吸収性物品用であって、第1繊維層26は、肌対向面を有し、熱融着性繊維からなり、第2繊維層28は、吸水性繊維と熱融着性繊維とを含み、第1繊維層26の熱融着性繊維の一部は、第2繊維層28に入り込み、第2繊維層28の熱融着性繊維の一部と融着しており、第2繊維層28の吸水性繊維は、肌対向面に露出していない。
【0052】
表面シート16は、第1繊維層26の熱融着性繊維の一部と第2繊維層28の熱融着性繊維の一部同士が融着している。すなわち、第1繊維層26の熱融着性繊維の一部は、厚み方向Tの第2繊維層28側へ曲がり、第2繊維層28に入り込み、第2繊維層28に含まれる熱融着性繊維の一部と接し、融着している。したがって表面シート16は、第1繊維層26と第2繊維層28とが強固に接合されているので、第1繊維層26と第2繊維層28の間の層間剥離を抑制できる。
【0053】
第2繊維層28の吸水性繊維は、互いに融着した第1繊維層26の熱融着性繊維の一部と第2繊維層28の熱融着性繊維の一部同士によって、第2繊維層28内に保持される。したがって、表面シート16は、第2繊維層28の繊維の抜けが抑制される。
【0054】
肌対向面に供給された体液は第1繊維層26の熱融着性繊維によって肌対向面から第1繊維層26の内部へ移行するので、体液は表面シート16の肌対向面に残りにくい。したがって表面シート16は、液透過性に優れる。表面シート16は、エアスルー不織布である。このため、表面シート16は嵩高性に優れるので、液透過性に優れる。
【0055】
第1繊維層26の内部へ移行した体液は、肌対向面に吸水性繊維が露出していないので、さらに厚み方向Tに移行し、第1繊維層26と第2繊維層28の間の界面に到達する。当該体液は、第1繊維層26の熱融着性繊維の一部が第2繊維層28へ入り込んでいることによって、スムーズに第2繊維層28へ移行する。第2繊維層28に移行した体液は、第2繊維層28に含まれる吸水性繊維に吸収される。吸水性繊維に吸収された体液は、非肌側に配置された吸収体18に吸収される。このようにして、表面シート16は、肌対向面に供給された体液を、第1繊維層26から第2繊維層28へスムーズに移行し、第2繊維層28の吸水性繊維で吸収するので、液捌け性に優れる。
【0056】
結果として、表面シート16は、第1繊維層26と第2繊維層28の間の層間剥離を抑制できると共に、液透過性及び液捌け性に優れる。
【0057】
本明細書において、液透過性は体液が肌対向面から表面シート16内に浸透し終わるのにかかる時間、液捌け性は体液が肌対向面から非肌対向面へ捌けて表面シート16内からなくなるのにかかる時間で、評価される。
【0058】
仮に、第1繊維層の第1面を肌対向面とし、肌対向面に、厚み方向に窪んだ凹部が形成されていた場合、当該凹部は肌対向面から第2繊維層に含まれる吸水性繊維までの距離が短い。すなわち、体液を吸収した吸水性繊維が肌対向面に近い位置に存在することになるので、肌対向面に供給された体液が厚み方向へ移行せず凹部に溜まることになるため、液透過性が低下してしまう。
【0059】
本実施形態の表面シート16は、肌対向面に、厚み方向Tに窪んだ凹部が形成されていないので、特定の箇所に体液が溜まることが抑制される。したがって表面シート16は、液透過性に優れる。
【0060】
表面シート16は、第2繊維層28の坪量が面方向で均一である。第2繊維層28の坪量が面方向で均一であるので、肌対向面に供給され厚み方向Tに移行してきた体液を面方向の位置に関わらずに均一に吸収する。したがって表面シート16は、面方向の位置に関わらず、優れた液捌け性が得られる。
【0061】
表面シート16は、第2繊維層28において、吸水性繊維を40質量%以上70質量%以下含むので、着用者から排出される体液を吸水性繊維によってより確実に吸収する。したがって、表面シート16は、繰り返し体液が供給された場合の液捌け性に優れる。
【0062】
第2繊維層28の非肌側に熱融着性繊維からなる第3繊維層30を備える場合、第2繊維層28は、第3繊維層30によって覆われ、吸水性繊維が非肌対向面から露出することが抑制される。したがって表面シート16は、吸水性繊維の抜けが抑制される。
【0063】
第2繊維層28に入り込んだ第1繊維層26の一部の熱融着性繊維のさらに一部は、第2繊維層28を貫通し、第3繊維層30に入り込み、第3繊維層30の熱融着性繊維の一部と融着していてもよい。すなわち、第1繊維層26の熱融着性繊維の一部は、厚み方向Tの第2繊維層28側へ曲がり、第2繊維層28へ入り込んでおり、さらにその一部は第2繊維層28を貫通し、第3繊維層30に入り込んで、第3繊維層30の熱融着性繊維の一部と融着している。したがって表面シート16は、第1繊維層26と第2繊維層28の間に加え、第2繊維層28と第3繊維層30の間が強固に接合されているので、層間剥離を抑制できる。
【0064】
第2繊維層28の吸水性繊維は、互いに融着した第1繊維層26の熱融着性繊維の一部と第2繊維層28の熱融着性繊維の一部同士、及び第2繊維層28を貫通した第1繊維層26の熱融着性繊維のさらに一部と第3繊維層30の熱融着性繊維の一部同士によって、第2繊維層28内に保持される。したがって、表面シート16は、第2繊維層28の繊維の抜けがさらに抑制される。
【0065】
第2繊維層28の熱融着性繊維の一部は、第3繊維層30に入り込み、第1繊維層26の融着性繊維のさらに一部、及び第3繊維層30の熱融着性繊維の一部と融着していてもよい。すなわち、第2繊維層28の熱融着性繊維の一部は、厚み方向Tの第3繊維層30側へ曲がり、第3繊維層30へ入り込んでおり、第3繊維層30において、第3繊維層30の熱融着性繊維の一部と融着しており、さらに、第2繊維層28を貫通し第3繊維層30に入り込んだ第1繊維層26の熱融着性繊維のさらに一部と、融着している。したがって表面シート16は、第2繊維層28と第3繊維層30の間がより強固に接合されているので、層間剥離をより抑制できる。
【0066】
第2繊維層28の吸水性繊維は、互いに融着した、第2繊維層28の熱融着性繊維の一部と第3繊維層30の熱融着性繊維の一部同士、及び第2繊維層28を貫通した第1繊維層26の熱融着性繊維のさらに一部と第2繊維層28の熱融着性繊維の一部同士によって、第2繊維層28内に保持される。したがって、表面シート16は、第2繊維層28の繊維の抜けがさらに抑制される。
【0067】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨の範囲内で適宜修正することができる。例えば、
図5に示す表面シート60は、凹凸を有してもよい。すなわち表面シート60は、第1面22に、第2面24から第1面22に向かう方向に突出し中実である複数の凸部62と、第1面22から第2面24に向かう方向に窪んだ複数の凹部64とを有する。本明細書において、「中実」とは、凸部62内での液体の移動を妨げるような、繊維密度が周囲と比較して著しく低い空間を有さないことをいう。第1面22の高さが最も高い最高部と第1面22の高さが最も低い最深部の高さの差をdとした場合、最深部からd/2の高さの位置よりも上方側へ突出する部分を凸部62、下方側へ窪む部分を凹部64ということができる。凹凸を有する表面シート60は、上記製造方法における第4工程の後に、さらにギア加工工程を経ることによって、形成してもよい。ギア加工工程は、第1繊維層26と、第2繊維層28と、第3繊維層が接合された不織布を、一対のギア加工ロールで挟み込み、局所的に押圧することにより、複数の凹部64を形成し表面シート60を得ることができる。
表面シート60は、図示しないが、圧搾部を備えていてもよい。圧搾部は、凹部64において長手方向Lに沿って間欠的に配置される。圧搾部は、凹部64において長手方向Lに等間隔に配置されてもよいし、非等間隔に配置されてもよい。幅方向Wに隣り合う凹部64において、長手方向Lに同じ位置でもよいし、異なる位置でもよい。圧搾部は、厚み方向Tにおいて第1繊維層26の上方と、第2繊維層28を挟んで配置された第3繊維層30の下方とから挟み込んで形成され、第1繊維層26と第2繊維層28と、第3繊維層30とを接合する。
【0068】
吸収性物品10の種類及び用途としては、特に限定されるものではなく、例えばパンティライナー、使い捨ておむつ(テープ型、パンツ型)、失禁パッド、汗取りシート等の衛生用品・生理用品が挙げられ、これらはヒトが対象であってもよいし、ペット等のヒト以外の動物が対象であってもよい。その吸収性物品10が吸収対象とする液体は特に限定されるものではなく、例えば着用者の液状排泄物、体液等が挙げられる。
【0069】
上記実施形態の場合、第1繊維層が肌側に配置される場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、不織布は、第1繊維層を非肌側に配置し、第2繊維層又は第3繊維層を肌側に配置して、表面シートに適用してもよい。すなわち、第2面が肌対向面である。この場合、不織布は、熱融着性繊維からなる第1繊維層と吸水性繊維と熱融着性繊維とを含む第2繊維層とを備えるので嵩が高く、液透過性に優れる。第2繊維層の吸水性繊維は、第1面に露出していないので第1面から脱落し難い。
【0070】
(測定方法)
<表面シートの坪量、厚み、繊維密度及び繊度>
上記実施形態における表面シートの坪量、厚み、繊維密度及び繊度は下記方法で測定する。
(1)表面シートの坪量:表面シートから適宜切り出せる寸法、例えば10cm×10cmの大きさに切り出して試料とし、温度20℃、湿度65%の雰囲気で24時間放置後に質量を測定する。測定した質量を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。10個の試料の坪量を平均した値を表面シートの坪量とする。
(2)表面シートの厚さ:15cm2の測定子を備えた厚さ計((株)大栄化学精器製作所製 型式FS-60DS)を用い、3gf/cm2(0.3kPa)の測定荷重の条件で表面シートの厚さを測定する。1つの試料で3か所の厚さを測定し、3か所の厚さの平均値を表面シートの厚さとする。
(3)表面シートの繊維密度:表面シートの繊維密度は、上記方法で求めた表面シートの秤量を、上記方法で求めた表面シートの厚みで割り算して算出する。
(4)繊維の繊度:繊維の繊度は、走査型電子顕微鏡を用いて、対象となる繊維の断面形状を拡大観察して繊維の断面積を測定し、その断面積と繊維の比重(すなわち、繊維の構成成分の比重)から算出する。
【0071】
<各部の厚み>
表面シートの第1繊維層、第2繊維層及び第3繊維層の各部の厚みは、下記方法で測定する。まず、親水性繊維を染色し、その後、各部の厚みを測定する。親水性繊維の染色は、以下の手順で行う。(1)厚みを測定する表面シートを準備する。(2)鍋に水1Lを入れ、60℃~70℃に加熱する。(3)試薬カヤステインQ(KayastainQ)(株式会社色染社)を(2)の鍋に入れ溶かす。(4)鍋を80℃まで加熱する。(5)表面シートを(4)の鍋に投入し30分放置する。(5)その後、表面シートを流水で水洗いする。(6)80℃のオーブンで1時間乾燥する。上記の手順の結果、吸水性繊維(レーヨン)は青色、熱溶着性繊維(PET)は黄色に染色される。
厚みの測定は以下の手順で行う。(1)染色した表面シートを機械方向(MD)長さ5mm、交差方向(CD)長さ20mmに切り出し試料とする。(2)試料を治具に両面テープで固定し、CD断面が観察できる状態にする。(3)株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-7000にて断面の拡大写真を撮影し、平面計測の2点間距離を選択し、表面シートの第1繊維層、第2繊維層及び第3繊維層の各部の厚みを測定する。
【0072】
<吸水性繊維の含有量>
第2繊維層における上記吸水性繊維の含有量は、以下のようにして得ることができる。(1)予め105℃で1時間乾燥した表面シートから対象となる領域のサンプルを切り出した後、該サンプルの初期質量(g)を測定する。(2)サンプルを70%の硫酸中に1時間浸漬して吸水性繊維を溶解させる。(3)硫酸浸漬後のサンプルをブフナー漏斗上で吸引しながら約6リットルの水で洗浄した後、さらに、約1リットルの純水で洗浄する。(4)洗浄後のサンプルを105℃で2時間乾燥した後、サンプルの処理後質量(g)を測定する。(5)上記サンプルの初期質量からサンプルの処理後質量を差し引くことにより、サンプル中の吸水性繊維含有質量(g)を算出し、さらに、得られた吸水性繊維含有質量を単位平面視面積当たりの質量に換算することによって、吸水性繊維の含有量を得ることができる。
【0073】
(実施例)
上記実施形態に対応した表面シートに相当する不織布を作製し、評価を行った。以下実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0074】
(A)試料
上述の製造方法に従い、熱融着性繊維としてPE/PETの芯鞘型繊維と、吸水性繊維としてレーヨンで形成した繊維を用いて、第1繊維層、第2繊維層及び第3繊維層を備える実施例1に係る不織布を作製した。第3工程における第1エア及び第2エアの流量は、5m3/min、サクションドラム圧は5.6kPaとした。第4工程における加熱空気の温度は、136℃とした。具体的な構成は、表1に示す通りである。
【0075】
比較例として、上記製造方法における第3工程及び第4工程を行わず水流交絡法を用いた以外は上記実施例と同様とした比較例2の不織布を作製した。
【0076】
また、参考例として、上記製造方法における第3工程を行わない以外は上記実施例と同様とした参考例1の不織布を作製した。また、PE/PETの芯鞘型繊維からなる第1繊維層、及び吸水性繊維としてのコットンとPE/PETの芯鞘型繊維の熱可塑性樹脂繊維とを含む第2繊維層を備え、上記製造方法における第3工程の第1エア及び第2エアの流量を、9m
3/minとしたエアジェットを噴射し、サクションドラム圧を8.6kPaとすることによって第1面に凹凸構造を有する参考例2の不織布を作製した。凹凸構造を形成した以外は上記実施例と同様の工程を経ることによって、参考例1の不織布を作製した。得られた不織布の断面を撮影した顕微鏡写真を
図6~
図9に示す。
【0077】
【0078】
(B)評価方法
以下の手順で、各種試験を行った。
【0079】
(液透過性及び液捌け性試験)
(1)200mm×100mmのサイズに切り出した試料と、試料と同サイズで中央に40mm×10mmの貫通穴を有するアクリル板とを準備した。
(2)試料の第1繊維層側の表面の中央にアクリル板を重ねた。
(3)マイクロピペットを用いて馬血2mlを滴下すると同時にストップウォッチをスタートした。
(4)試料上とアクリル板の穴の周りから馬血がなくなるまでの時間(透過時間)を測定した。
(5)継続して、アクリル板の中の馬血が捌けるまでの時間(液捌け時間)を測定した。
(6)測定開始から30秒後に、2回目の馬血2mlを滴下した(1回目の馬血が完全に捌けていない場合も2回目の測定を開始した)。
(7)上記(4)と(5)の測定を順に行った。
(8)測定開始から60秒後にアクリル板を外し、測定開始から90秒後に馬血を滴下した箇所に、予め重量を測定した濾紙(35mm×50mm)10枚と重り(35mm×50mm、525g)を載せた。
(9)60秒後に重りを外して濾紙の重量を測定した。
【0080】
(10)試料上に載置後の濾紙の質量から、載置前の濾紙の質量を減算して、リウェットを求め(g)、吸収させた馬血の量(2ml≒2g)に対する割合を求めた(%)。
【0081】
(繊維脱落試験)
(1)メンブレンフィルターを90℃のオーブンで1時間乾燥後、デシケータで30分放冷した。
(2)100mm×100mmのサイズに切り出した試料を5枚準備した。
(3)水道水300mlを入れた300mlビーカーを5個準備した。
(4)ビーカーに回転子を入れ、マグネティックスターラーで攪拌した。
(5)試料のより滑らかな表面を外側にして逆円錐型に折った。
(6)ビーカー水面中央に(5)の試料を静かに落とし試料が水面中央に接触した時点でストップウォッチをスタートした。
(7)10分間攪拌した後、試料を取り出した。
(4)~(7)の作業を試料毎に行った。
(8)(1)のメンブレンフィルターの重量を測定した。
(9)吸引瓶の上にメンブレンフィルターを置き、ロートを乗せホルダーで固定した。
(10)ロートからエタノールを入れ、メンブレンフィルターを湿らせ真空ポンプのスイッチをオンにし吸引した。
(11)ロートから攪拌したビーカーの水を入れ、吸引した。
(12)攪拌したビーカーの水を吸引できたら、吸引瓶につながっているホースを先に抜き真空ポンプのスイッチを切った。
(13)ロートを外し、繊維がたまったメンブレンフィルターをシャーレに取り出した。
(14)シャーレに空気が入るようにラップをかけ、当該ラップに時間を書いた。
(15)(14)のメンブレンフィルターを90℃のオーブンで1時間乾燥し、30分デシケータで放冷した後、重量を測定した。
(9)~(15)の作業を試料毎に行った。
(16)測定した重量の平均値(n=5)を繊維脱落量(mg/m2)とした。
【0082】
(C)評価結果
表1に示す通り、実施例1に係る不織布は、液透過性と液捌け性について1回目と2回目共に優れた結果が得られた。また、実施例1に係る不織布は、リウェット性に優れることが確認できた。
【0083】
比較例1に係る不織布は、水流交絡法で作製されているため、嵩が低いので液透過性が劣ると共に、吸水性繊維が表面に存在するので液捌け性が劣る結果になったと考えられる。
【0084】
参考例1は、実施例1に比べ、液捌け性とリウェット性が劣ると共に、繊維脱落量が多かった。参考例1に係る不織布は、上記実施形態の製造方法における第3工程を行っていないので、液が第1繊維層から第2繊維層へスムーズに移行できなかったと考えられる。また参考例1における不織布は、吸水性繊維が第2繊維層内に保持されにくいため、繊維脱落量が増加したものと考えられる。
【0085】
参考例2に係る不織布は、エアジェットを噴射して第1面に凹凸構造を形成したことにより、凹部において液が溜まりやすく、液透過性と液捌け性に劣る結果になったと考えられる。
【符号の説明】
【0086】
10 吸収性物品
12 本体部
14 フラップ部
16 表面シート(不織布)
18 吸収体
20 裏面シート
22 第1面(肌対向面)
24 第2面(非肌対向面)
40 積層ウエブ
42 サクションドラム
44 内筒
46 外筒
48 サクション領域
54 ドライヤー
60 表面シート
62 凸部
64 凹部
CD 交差方向
MD 機械方向
L 長手方向
T 厚み方向
W 幅方向