(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078940
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/54 20140101AFI20240604BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240604BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240604BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240604BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240604BHJP
【FI】
C09D11/54
B41M5/00 120
B41J2/01 501
B41J2/165 401
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191574
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】杉田 健人
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056JB04
2C056JB15
2H186BA11
2H186DA12
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB55
4J039AE07
4J039BC03
4J039BC57
4J039BE01
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4J039BE16
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4J039EA48
4J039FA01
4J039FA03
4J039FA04
4J039FA06
4J039GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水溶性高分子を含んだインクでも記録ヘッドのメンテナンス性が良好であり、画像濃度に優れる画像を形成可能なインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】数平均分子量Mnが560以上3,300以下である水溶性高分子を含むインクと、インクを吐出するノズルが設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、下式(1)で表される構造を有する化合物を含む洗浄液と、
ノズル面に対して前記洗浄液を噴射する噴射部材と、インクを加圧して前記ノズル面上に前記インクの液滴を形成する加圧部材と、ノズル面に接触して前記洗浄液が噴射されたノズル面を払拭するブレード部材を有し、水溶性高分子の含有量が、インクに対して11.0質量%以上30.0質量%以下であり、上式で表される構造を有する化合物の含有量が、洗浄液に対して0.2質量%以上1.5質量%以下であるインクジェット記録装置。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量Mnが560以上3,300以下である水溶性高分子を含むインクと、
前記インクを吐出するノズルが設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、
下記構造式(1)で表される構造を有する化合物を含む洗浄液と、
【化1】
前記ノズル面に対して前記洗浄液を噴射する噴射部材と、
前記インクを加圧して前記ノズル面上に前記インクの液滴を形成する加圧部材と、
前記ノズル面に接触して前記洗浄液が噴射された前記ノズル面を払拭するブレード部材と、を有し、
前記水溶性高分子の含有量が、前記インクに対して11.0質量%以上30.0質量%以下であり、
前記構造式(1)で表される構造を有する化合物の含有量が、前記洗浄液に対して0.2質量%以上1.5質量%以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記洗浄液が、下記構造式(2)で表される構造及びSiを有さず、かつ炭素数8以上の化合物を含有し、
前記化合物の含有量が、前記洗浄液に対して1.0質量%以上10.0質量%以下である、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【化2】
【請求項3】
前記洗浄液が、下記構造式(2)で表される構造を有し、かつSiを有さない化合物を含有し、
前記構造式(2)で表される構造を有し、かつSiを有さない化合物の含有量が、前記洗浄液に対して1.0質量%6.0質量%以下である、請求項1から2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【化3】
【請求項4】
前記構造式(1)で表される構造を有する化合物の含有量が、前記洗浄液に対して0.8質量%以上1.2質量%以下である、請求項1から2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記水溶性高分子の数平均分子量Mnが、900以上2,200以下である、請求項1から2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記水溶性高分子の含有量が、前記インクに対して15.0質量%以上20.0質量%以下である請求項1から2のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
数平均分子量Mnが560以上3,300以下である水溶性高分子を含むインクを液体吐出ヘッドのノズル面から吐出するインク吐出工程と、
前記ノズル面に対して下記構造式(1)の構造を有する化合物を含む洗浄液を噴射する噴射工程と、
前記インクを加圧して前記ノズル面上に前記インクの液滴を形成する加圧工程と、
前記ノズル面に接触して前記洗浄液が噴射された前記ノズル面を、ブレード部材によって払拭する払拭工程と、を有し、
前記水溶性高分子の含有量が、前記インクに対して11.0質量%以上30.0質量%以下であり、
前記構造式(1)の構造を有する化合物の含有量が、前記洗浄液に対して0.2質量%以上1.5質量%以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有し、デジタル信号の出力機器として広く普及している。インクジェットプリンタに用いる被印刷物として、普通紙等の吸収性記録媒体、コート紙等の低吸収性記録媒体、プラスチックフィルム等の非吸収性記録媒体などが使用されている。
前記低吸収性記録媒体に印字した場合、インク(以下、「インクジェット組成物」と称することがある)が十分に広がることができず画像品質の低下が発生するという問題がある。
前記インクジェット組成物が水溶性高分子を含むことでインクジェット組成物の広がりが改善し画像品質が向上することが知られている。
【0003】
インクジェット組成物としては、例えば、耐擦性及び柔軟性に優れた画像を記録することを目的として、数平均分子量が1,000~100,000である、ポリエチレングリコール、及び、エチレングリコールとプロピレングリコールとのブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の水溶性高分子と、多官能(メタ)アクリルアミド型重合性化合物と、着色剤と、水と、を含有するインクジェットインク組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記インクジェット組成物を用いたインクジェット記録装置としては、例えば、吐出口からインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドにおける吐出口の形成面に対してインクを塗布する塗布手段と、前記記録ヘッドの吐出口をキャッピングするキャッピングユニットと、前記キャッピングユニットにキャッピングされた前記記録ヘッドに対して吸引のための圧力を作用させて吸引を行う吸引手段と、前記吸引手段による吸引を行うとき、吸引動作の前に前記塗布手段によって前記吐出口の形成面にインクを塗布するよう制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水溶性高分子を含んだインクでも記録ヘッドのメンテナンス性が良好であり、かつ画像濃度に優れる画像を形成することができるインクジェット記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明のインクジェット記録装置は、数平均分子量Mnが560以上3,300以下である水溶性高分子を含むインクと、
前記インクを吐出するノズルが設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、
下記構造式(1)で表される構造を有する化合物を含む洗浄液と、
【化1】
前記ノズル面に対して前記洗浄液を噴射する噴射部材と、
前記インクを加圧して前記ノズル面上に前記インクの液滴を形成する加圧部材と、
前記ノズル面に接触して前記洗浄液が噴射された前記ノズル面を払拭するブレード部材と、を有し、
前記水溶性高分子の含有量が、前記インクに対して11.0質量%以上30.0質量%以下であり、
前記構造式(1)の構造を有する化合物の含有量が、前記洗浄液に対して0.2質量%以上1.5質量%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水溶性高分子を含んだインクでも記録ヘッドのメンテナンス性が良好であり、かつ画像濃度に優れる画像を形成することができるインクジェット記録装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明におけるインクジェット記録装置の一例とそのメンテナンス動作を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明におけるインクジェット記録装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、比較例14において用いたインクジェット記録装置の一例とそのメンテナンス動作を示す概略図である。
【
図4】
図4は、比較例15において用いたインクジェット記録装置の一例とそのメンテナンス動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録装置は、インクと、液体吐出ヘッドと、洗浄液と、噴射部材と、加圧部材と、ブレード部材と、を有し、必要に応じてその他の部材を有することができる。
本発明のインクジェット記録方法は、インク吐出工程と、噴射工程と、加圧工程と、払拭工程と、を有し、必要に応じてその他の工程を有することができる。
なお、本発明の記録装置は、画像形成装置、インクジェット記録装置、インクジェットプリンタ、造形装置などと称することがある。
【0010】
特許文献1に記載のインクジェットインク組成物は、水溶性高分子を含まないインクは上質紙に印字した際の画像品質が低下し、濃度ムラやスジが発生することが報告されている。
特許文献2に記載のインクジェット記録装置は、ノズル面に付着した樹脂はインクの塗布だけでは十分に除去することができない。
【0011】
そこで、本発明者らが鋭意検討を行った結果、数平均分子量Mnが560以上3,300以下である水溶性高分子を含むインクと、前記インクを吐出するノズルが設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、下記構造式(1)で表される構造を有する化合物を含む洗浄液と、前記ノズル面に対して前記洗浄液を噴射する噴射部材と、前記インクを加圧して前記ノズル面上に前記インクの液滴を形成する加圧部材と、前記ノズル面に接触して前記洗浄液が噴射された前記ノズル面を払拭するブレード部材と、を有し、前記水溶性高分子の含有量が、前記インクに対して11.0質量%以上30.0質量%以下であり、前記構造式(1)の構造を有する化合物の含有量が、前記洗浄液に対して0.2質量%以上1.5質量%以下であることによって、水溶性高分子を含んだインクでも記録ヘッドのメンテナンス性が良好であり、かつ画像濃度に優れる画像を形成することができることを知見した。
【0012】
以下、本発明に係る記録装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
図1は、インクジェット記録装置の一実施形態とそのメンテナンス動作の一例を示す概略図である。本実施形態としては、例えば、液体吐出ヘッド1、ブレード部材2、噴射部材3を有している。
【0014】
前記噴射工程としては、
図1に示すように、液体吐出ヘッド1のノズル面に対して、洗浄液を噴射する。前記噴射工程を、前記加圧工程の前に行うことで、ノズル面近傍のインクの汚れを浮かすことができる。前記噴射工程としては、噴射部材3によって行うことができる。
【0015】
前記加圧工程としては、
図1に示すように、インクを加圧して液体吐出ヘッド1の前記ノズル面上に前記インクの液滴を形成する。前記加圧工程を行うことで、ノズル面のインクを排出し汚れを取り除くことができる。前記加圧工程としては、加圧部材によって行うことができる。
【0016】
前記払拭工程としては、
図1に示すように、ブレード部材を液体吐出ヘッド1の前記ノズル面に接触させて、前記洗浄液が噴射された前記ノズル面を払拭する。前記払拭工程を行うことで、ブレード部材によって前記ノズル面上のインクの汚れを前記洗浄液ごと除去し、ノズルを吐出可能な状態とすることができる。前記払拭工程としては、ブレード部材2によって行うことができる。
【0017】
図2は、記録装置を示す概念図であり、搬送手段は給紙装置12、巻取り装置13、ローラー18を有している。記録媒体(連帳紙P)は、給紙装置12と巻取り装置13の間で搬送され、搬送部材であるローラー18と接触し、矢印の方向に搬送される。なお、ローラー7については、1つのみ符号を付し、その他のものについては符号の表示を省略している。また、ローラー18の構成は図示されるものに限られず、適宜変更でき、例えば数や配置等を適宜変更できる。
【0018】
前記液体吐出ヘッドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェットヘッドなどが挙げられる。
図2において、インクジェットヘッド14を用いて記録媒体にインクを吐出する。
【0019】
IRヒーター15は、加熱手段の一例であり、インクが吐出された記録媒体に光を照射する。光を照射して加熱することにより、水性インクを良好に乾燥させることができる。光としては、水が吸収する波長領域であるIR光であることが好ましく、この場合、素早く乾燥させることができる。
【0020】
排気手段は、筐体内の空気を排気する。本実施形態における排気手段は、例えば、排気ダクト17、ファンなどを有する。排気ダクト17は、筐体内の空気を吸引する吸引口、空気を排出する排出口等を有する。
【0021】
温風装置5は、インクが吐出された記録媒体に温風を送風する。記録媒体の搬送方向において、上流側から吐出手段、排気手段、加熱手段、温風送風手段の順に配置されている。このような配置にすることで、特に加熱手段よりも下流側に温風送風手段を配置することで、加熱手段により加熱されて生じた蒸気が加熱される前の記録媒体に接触するような気流に対して、温風が阻害することを抑制できる。
【0022】
IRヒーター15や排気ダクト17の配置は、適宜変更することができる。IRヒーター15と排気ダクト17の吸引口の間に、IRヒーター15に到達する前の記録媒体が搬送される経路が存在することが好ましい。この場合、IRヒーター15で加熱された蒸気に記録媒体をより確実に通過させることができ、記録媒体に対して吸湿させやすくなる。
なお、IRヒーター15と排気ダクト17の吸引口の間とあるのは、IRヒーター15と排気ダクト17を結んだ直線上などとも称することができ、このような直線上に記録媒体の搬送経路が存在するかどうかを考慮する。
【0023】
<インク>
以下、インクに用いる有機溶媒、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
本発明に用いられるインクは、数平均分子量Mnが560以上3,300以下である水溶性高分子を含み、色材、有機溶媒及び水を含むことが好ましく、必要に応じてその他の成分を含む。
【0024】
-水溶性高分子-
前記水溶性高分子とは、数平均分子量Mnが560以上の分子である。
前記水溶性高分子の数平均分子量Mnとしては、画像濃度とメンテナンス性の観点から560以上3,300以下が好ましく、画像濃度の観点から900以上3,300以下がより好ましく、メンテナンス性の観点から900以上2,200以下が特に好ましい。
【0025】
前記数平均分子量Mnの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、GPC法(Gel Permeation Chromatography)などで測定することができる。具体的な測定条件としては以下である。
[測定条件]
・装置 :GPC-8020(東ソー株式会社製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度 :40℃
・溶媒 :THF(テトラヒドロフラン)
・流速 :1.0mL/分間
【0026】
前記水溶性高分子の含有量としては、前記インクに対して、11.0質量%以上30.0質量%以下であり、画像濃度とメンテナンス性の観点から、15.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。前記含有量が11.0質量%以上であると、画像濃度に優れる。前記含有量が30.0質量%以下であると、メンテナンス性に優れる。
【0027】
前記水溶性高分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0028】
-有機溶媒-
本発明に使用する有機溶媒としては特に制限されず、水溶性有機溶媒を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0029】
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶媒を用いることが好ましい。
【0030】
-水-
水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上80質量%以下がより好ましい。
【0031】
-色材-
色材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顔料、染料などが挙げられる。
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機顔料、有機顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0032】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0034】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0035】
顔料を分散してインクを得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させた顔料(以下、「樹脂被覆顔料」と称することがある)と言い換えることができる。顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
【0036】
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
-樹脂-
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶媒などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
【0039】
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、インク中の固形分の粒径の最大頻度が最大個数換算で20nm以上1,000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0041】
-添加剤-
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0042】
--界面活性剤--
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0043】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
【0044】
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0045】
【0046】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0047】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0048】
【0049】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0050】
CnF2n+1-CH2CH(OH)CH2-O-(CH2CH2O)a-Y・・・一般式(F-2)
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCH2CH(OH)CH2-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
【0051】
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0052】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0053】
--消泡剤--
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0054】
--防腐防黴剤--
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0055】
--防錆剤--
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0056】
--pH調整剤--
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0057】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
【0058】
<インクの物性>
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、3mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0059】
<洗浄液>
前記洗浄液としては、下記構造式(1)で表される構造を有する化合物を含み、水、有機溶媒等を含むことが好ましい。
【化5】
前記構造式(1)で表される化合物としては、ノズル面近傍の汚れ(水溶性高分子)を浮かせる役割を果たし、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、信越シリコーン株式会社製の市販品を用いることができる。
【0060】
前記構造式(1)で表される化合物の含有量としては、前記洗浄液に対して、0.2質量%以上1.5質量%以下であり、メンテナンス性の観点から0.8質量%以上1.2質量%以下が好ましい。前記含有量が0.2質量%以上であると、ノズル面に固着した水溶性高分子を十分に払拭することができる。前記含有量が1.5質量%以下であると、ノズル面のインクと混ざり合うことがなく、吐出不良を防ぐことができる。
【0061】
前記洗浄液としては、下記構造式(2)で表される構造及びSiを有さず、かつ炭素数8以上の化合物を含んでもよい。これにより、ノズル面近傍の汚れ(水溶性高分子)を浮かせる効果が高くなる。
【化6】
前記化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メンテナンス性の観点から1.0質量%以上10.0質量%以下が好ましい。
前記化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0062】
前記洗浄液としては、下記構造式(2)で表される構造を有し、かつSiを有さない化合物を含んでもよい。これにより、ノズル面近傍の汚れ(水溶性高分子)を浮かせる効果が高くなる。
【化7】
前記化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メンテナンス性の観点からメンテナンス性の観点から1.0質量%以上6.0質量%以下が好ましい。
前記化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、2-フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0063】
<洗浄液及びインク成分の定性方法、定量方法>
本発明の洗浄液及びインク中に含有されている有機溶媒、樹脂、顔料、その他成分等の定性方法、定量方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などが挙げられる。例えば、前記ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による測定装置としては、例えば、GCMS-QP2020NX(株式会社島津製作所製)などが挙げられる。インクに含まれる水分量は、一般的な方法として、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)による揮発成分の定量や、熱重量・示差熱同時測定法(TG-DTA)による質量変動等により測定することができる。
【0064】
なお、本発明のインクジェット記録装置としては、立体造形装置として用いられてもよい。本発明における立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知の構成を採用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0065】
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布など、吸湿性があるものを用いることができる。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
また、連帳紙だけでなくカット紙も自由に選択可能である。
【0066】
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0067】
<インクの使用方法>
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
【0068】
本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例0069】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた各種材料の含有量の単位は「質量%」である。また、顔料分散体、及び樹脂の含有量を示す数値は、いずれも固形分量を表す。
【0070】
<インクの調製例1~24>
下記表1及び2に示すインクの組成に基づいて、各材料を調合した後に混合撹拌し、平均孔径5μmのフィルター(ザルトリウス社製、ミニザルト)を用いて濾過した後に、平均孔径0.5μmポリプロピレンフィルターを用いて濾過することで、インク1~24を調製した。
【0071】
【0072】
【0073】
<溶液の調製例1~38>
下記表3~6に示すインクの組成に基づいて、各材料を調合した後に混合撹拌して、洗浄液1~38を調製した。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
前記インク及び洗浄液の調製において使用した材料は、以下のものを用いた。
<顔料分散体>
・CAB-O-JET 400(キャボット社製)
【0079】
<水溶性高分子>
・ポリエチレングリコール600(富士フイルム和光純薬株式会社製、数平均分子量560~640)
・ポリエチレングリコール1000(富士フイルム和光純薬株式会社製、数平均分子量900~1,100)
・ポリエチレングリコール2000(富士フイルム和光純薬株式会社製、数平均分子量1800~2,200)
・ポリエチレングリコール4000(富士フイルム和光純薬株式会社製、数平均分子量2700~3,300)
【0080】
<有機溶媒>
・グリセリン(東京化成工業株式会社製、沸点290℃)
・N-ブチルジエタノールアミン(東京化成工業株式会社製、沸点275℃)
【0081】
<界面活性剤>
・オレフィンE1004(日信化学工業株式会社製)
【0082】
<構造式(1)の構造を有する化合物>
・KF353(信越シリコーン株式会社製)
・KF354L(信越シリコーン株式会社製)
・KF945(信越シリコーン株式会社製)
【0083】
<構造式(2)で表される構造及びSiを有さず、かつ炭素数8以上の化合物>
・2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製、炭素数8)
・ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社製、炭素数9)
<構造式(2)で表される構造を有し、かつSiを有さない化合物>
・ベンジルアルコール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・フェネチルアルコール(東京化成工業株式会社製)
・2-フェノキシエタノール(東京化成工業株式会社製)
【0084】
(実施例1~48及び比較例1~15)
インク1~24及び洗浄液1~38を、下記表7~15に示す組合せで、
図1に示すインクジェット記録装置に装填した。前記インクジェット記録装置は、液体吐出ヘッド1、ブレード部材2、噴射機構3を有している。
液体吐出ヘッドから、600dpi×600dpiの解像度でベタ画像をNPi Form NEXT-IJ<70>(日本製紙株式会社製、坪量81.4gsm)に印刷し、1.5時間全ノズルから吐出を行った。その後4時間放置した。その後、メンテナンス動作(噴射工程、加圧工程、及び払拭工程)を行った。
なお、比較例14では
図3に示すインクジェット記録装置を用いて、比較例15では
図4に示すインクジェット記録装置を用いた。
図3は、比較例14で用いたインクジェット記録装置とそのメンテナンス動作を示す概略図である。この記録装置は液体吐出ヘッド5、ブレード部材6、噴射機構7を有している。まず、加圧工程によってインクを加圧して液体吐出ヘッド5のノズル面上に前記インクの液滴を形成させた。その後、噴射工程によってノズル面に対して前記洗浄液を噴射した。その後、払拭工程によってノズル面に接触して前記洗浄液が噴射された前記ノズル面をブレード部材6で払拭した。
図4は、比較例15で用いたインクジェット記録装置とそのメンテナンス動作を示す概略図である。この記録装置は液体吐出ヘッド9、ブレード部材10を有している。まず、加圧工程によってインクを加圧して液体吐出ヘッド9のノズル面上に前記インクの液滴を形成させた。その後、払拭工程によってノズル面に接触して前記洗浄液が噴射された前記ノズル面をブレード部材10で払拭した。
【0085】
各実施例及び各比較例において、以下の方法に基づいて画像濃度及びメンテナンス性を評価した。評価結果を下記表7~15に示す。
【0086】
<画像濃度>
実施例1~48及び比較例1~15において、得られた画像のベタ部を、反射型カラー分光測色濃度計(X-Rite社製)を用いて測定し画像濃度を測定し、下記基準に基づき評価した。なお、「A」以上が実使用可能な範囲である。
[評価基準]
AA:画像濃度1.2以上
A :画像濃度1.1以上1.2未満
B :画像濃度1.0以上1.1未満
C :画像濃度1.0未満
【0087】
<メンテナンス性>
実施例1~48及び比較例1~15において、メンテナンス動作(噴射工程、加圧工程、及び払拭工程)を行い、全ノズルが吐出可能な状態になるのに要するメンテナンス動作の回数を求めた。前記メンテナンス動作の回数から、下記基準に基づきメンテナンス性を評価した。なお、「B」以上が実使用可能な範囲である。
[評価基準]
AA:1回のメンテナンス動作で全ノズルが吐出する
A :2回以上3回未満のメンテナンス動作で全ノズルが吐出する
B :3回以上5回未満のメンテナンス動作で全ノズルが吐出する
C :5回以上7回未満のメンテナンス動作で全ノズルが吐出する
D :7回以上のメンテナンス動作で全ノズルが吐出する
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
実施例1~48より、
図1の装置を用いて、数平均分子量Mnが560以上3,300以下の水溶性高分子の含有量が、インクに対して11.0質量%以上30.0質量%以下であり、構造式(1)で表される構造を有する化合物の含有量が、洗浄液に対して0.2質量%以上1.5質量%以下である場合に画像濃度とメンテナンス性が両立することが分かる。
実施例1~16の比較により、水溶性高分子の数平均分子量Mnが900以上である場合に画像濃度がより良好となることが分かる。また、水溶性高分子の数平均分子量Mnが2,200以下の場合にメンテナンス性がより良好となることが分かる。
実施例6及び7と実施例5及び8との比較、並びに、実施例10及び11と実施例9及び12との比較により、水溶性高分子の含有量が15.0質量%以上20.0質量%以下である場合に画像濃度とメンテナンス性がより両立することが分かる。
実施例6及び17~23と実施例24~32及び42~44と実施例22~30及び40~44の比較により、構造式(2)で表される構造及びSiを有さず、かつ炭素数8以上の化合物の含有量が、洗浄液に対して1.0質量%以上10.0質量%以下である場合にメンテナンス性がより良好となることが分かる。
実施例6、17~23と実施例33~44との比較により、構造式(2)で表される構造を有し、かつSiを有さない化合物の含有量が、洗浄液に対して1.0質量%以上6.0質量%以下である場合にメンテナンス性がより良好となることが分かる。
実施例6、46及び47と実施例45及び48との比較により、構造式(1)で表される構造を有する化合物の含有量が、前記洗浄液に対して0.8質量%以上1.2質量%以下である場合にメンテナンス性がより良好となることが分かる。
実施例1~48と比較例1~8との比較により、水溶性高分子の含有量が11.0質量%未満である場合に画像濃度が許容範囲外となることが分かる。また、水溶性高分子の含有量が30.0質量%超である場合にメンテナンス性が許容範囲外となることが分かる。
実施例1~48と比較例9~13の比較により、構造式(1)で表される構造を有する化合物の含有量が、前記洗浄液に対して0.2質量%以上1.5質量%以下でない場合にメンテナンス性が許容範囲外となることが分かる。
実施例1~48と比較例14の比較により、インクを加圧して前記ノズル面上に前記インクの液滴を形成してから洗浄液を噴射する構成では、メンテナンス性が許容範囲外となることが分かる。
実施例1~48と比較例15の比較により、インクを加圧して前記ノズル面上に前記インクの液滴を形成してからブレード部材によって払拭する構成ではメンテナンス性が許容範囲外となることが分かる。
【0096】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 数平均分子量Mnが560以上3,300以下である水溶性高分子を含むインクと、
前記インクを吐出するノズルが設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、
下記構造式(1)で表される構造を有する化合物を含む洗浄液と、
【化1】
前記ノズル面に対して前記洗浄液を噴射する噴射部材と、
前記インクを加圧して前記ノズル面上に前記インクの液滴を形成する加圧部材と、
前記ノズル面に接触して前記洗浄液が噴射された前記ノズル面を払拭するブレード部材と、を有し、
前記水溶性高分子の含有量が、前記インクに対して11.0質量%以上30.0質量%以下であり、
前記構造式(1)で表される構造を有する化合物の含有量が、前記洗浄液に対して0.2質量%以上1.5質量%以下であることを特徴とするインクジェット記録装置である。
<2> 前記洗浄液が、下記構造式(2)で表される構造及びSiを有さず、かつ炭素数8以上の化合物を含有し、
前記化合物の含有量が、前記洗浄液に対して1.0質量%以上10.0質量%以下である、前記<1>に記載のインクジェット記録装置である。
【化2】
<3> 前記洗浄液が、下記構造式(2)で表される構造を有し、かつSiを有さない化合物を含有し、
前記構造式(2)で表される構造を有し、かつSiを有さない化合物の含有量が、前記洗浄液に対して1.0質量%6.0質量%以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
【化3】
<4> 前記構造式(1)で表される構造を有する化合物の含有量が、前記洗浄液に対して0.8質量%以上1.2質量%以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<5> 前記水溶性高分子の数平均分子量Mnが、900以上2,200以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<6> 前記水溶性高分子の含有量が、前記インクに対して15.0質量%以上20.0質量%以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の記録装置である。
<7> 数平均分子量Mnが560以上3,300以下である水溶性高分子を含むインクを液体吐出ヘッドのノズル面から吐出するインク吐出工程と、
前記ノズル面に対して下記構造式(1)の構造を有する化合物を含む洗浄液を噴射する噴射工程と、
前記インクを加圧して前記ノズル面上に前記インクの液滴を形成する加圧工程と、
前記ノズル面に接触して前記洗浄液が噴射された前記ノズル面を、ブレード部材によって払拭する払拭工程と、を有し、
前記水溶性高分子の含有量が、前記インクに対して11.0質量%以上30.0質量%以下であり、
前記構造式(1)の構造を有する化合物の含有量が、前記洗浄液に対して0.2質量%以上1.5質量%以下であることを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0097】
前記<1>から<6>のいずれかに記載のインクジェット記録装置、及び前記<7>に記載のインクジェット記録装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。