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特開2024-7896ガス分析装置、分析方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007896
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ガス分析装置、分析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/76 20060101AFI20240112BHJP
   G01N 21/77 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01N21/76
G01N21/77 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109287
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男
(74)【代理人】
【識別番号】100221372
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 信治
(72)【発明者】
【氏名】水本 一徳
(72)【発明者】
【氏名】長澤 賢弥
【テーマコード(参考)】
2G054
【Fターム(参考)】
2G054AA01
2G054EA01
2G054FA44
2G054FB03
(57)【要約】
【課題】スパイクノイズと反応光を検出することによる検出信号の変動とを適切に区別する。
【解決手段】ガス分析装置100は、反応部1と、光検出部3と、スパイク検出部53と、分析部57と、を備える。反応部1は、試料ガスと発光誘発ガスとを導入する。光検出部3は、反応部1において検出された光に関する光検出信号を出力する。スパイク検出部53は、光検出部3から出力される光検出信号にスパイク信号が含まれる場合に、スパイク検出信号を出力する。分析部57は、スパイク検出部53からスパイク検出信号が連続して出力された場合、光検出信号を分析対象ガスの分析に使用し、スパイク検出信号が不連続に出力された場合、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスに含まれる分析対象ガスを化学発光法で分析するガス分析装置であって、
前記試料ガスと発光誘発ガスとを導入する反応部と、
前記反応部において検出された光に関する光検出信号を出力する光検出部と、
前記光検出部から出力される光検出信号にスパイク信号が含まれる場合にスパイク検出信号を出力するスパイク検出部と、
前記スパイク検出部から前記スパイク検出信号が連続して出力された場合、前記光検出信号を前記分析対象ガスの分析に使用し、前記スパイク検出信号が不連続に出力された場合、前記光検出信号に基づいた前記分析対象ガスの分析をホールドする分析部と、
を備える、ガス分析装置。
【請求項2】
前記光検出信号に基づいた前記分析対象ガスの分析をホールドするためのホールド信号を出力するホールド信号出力部をさらに備える、請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記スパイク検出部は、前記光検出信号に含まれる前記スパイク信号を通過させるバンドパスフィルタを有し、
前記バンドパスフィルタは、100Hz~数kHzの信号を通過させる、請求項1又は2に記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記バンドパスフィルタは、デジタルフィルタにより構成される、請求項3に記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記反応部に、前記試料ガスと前記発光誘発ガスとの混合ガスとバックグラウンドガスとを所定の周期で交互に切り替えて導入するガス切替部をさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載のガス分析装置。
【請求項6】
前記光検出部はフォトダイオードである、請求項1~5のいずれかに記載のガス分析装置。
【請求項7】
分析対象ガスを含む試料ガスと発光誘発ガスとを導入する反応部を備え、試料ガスに含まれる分析対象ガスを化学発光法で分析するガス分析装置における前記分析対象ガスの分析方法であって、
前記反応部において検出された光に関する光検出信号を出力するステップと、
前記光検出信号にスパイク信号が含まれる場合にスパイク検出信号を出力するステップと、
前記スパイク検出信号が連続して出力された場合、前記光検出信号を前記分析対象ガスの分析に使用し、前記スパイク検出信号が不連続に出力された場合、前記光検出信号に基づいた前記分析対象ガスの分析をホールドするステップと、
を備える、分析方法。
【請求項8】
分析対象ガスを含む試料ガスと発光誘発ガスとを導入する反応部を備え、試料ガスに含まれる分析対象ガスを化学発光法で分析するガス分析装置における前記分析対象ガスの分析方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記分析方法は、
前記反応部において検出された光に関する光検出信号を出力するステップと、
前記光検出信号にスパイク信号が含まれる場合にスパイク検出信号を出力するステップと、
前記スパイク検出信号が連続して出力された場合、前記光検出信号を前記分析対象ガスの分析に使用し、前記スパイク検出信号が不連続に出力された場合、前記光検出信号に基づいた前記分析対象ガスの分析をホールドするステップと、
を備える、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学発光法を用いたガス分析装置、化学発光法を用いたガスの分析方法、この分析方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学発光法(CLA、Chemical Luminescence Analysis method)を用いて、試料ガスに含まれる分析対象ガスの分析(例えば、当該ガスの濃度測定)を行うガス分析装置が知られている。この装置では、反応部に試料ガスとオゾンなどの発光誘発ガスとを導入したときに、分析対象ガスと発光誘発ガスとの相互作用により発生する反応光を検出することで、分析対象ガスの分析を行う。
【0003】
また、反応光を光検出器で検出する場合に、光検出器から出力される信号に「スパイクノイズ」と呼ばれるノイズが含まれることがある。スパイクノイズは、電磁波やα波等の外乱の影響により発生する。このため、化学発光法によるガス分析装置では、光検出器から出力される検出信号にスパイクノイズが含まれるか否かを検知し、スパイクノイズが含まれている場合には、スパイクノイズが含まれた検出信号の部分をガス分析に用いないようにしている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-44646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス分析装置では、反応光を検出することによる検出信号が、スパイクノイズほど急峻に変動しないとの特性に基づいて、スパイクノイズを検知している。すなわち、反応光を検出することによる検出信号が有する周波数が、スパイクノイズが有する周波数よりも小さいとの特性に基づいて、スパイクノイズを検知している。
【0006】
試料ガスに含まれる分析対象ガスの濃度が大きくなると、検出信号の変動が急峻になり、反応光を検出することによる検出信号の周波数が、スパイクノイズの周波数に近づくことがある。なぜなら、分析対象ガスの濃度が大きくなると、反応部に試料ガスが含まれない状態から含まれる状態に変化したときの反応光の強度の変動が急峻になることがあるからである。この結果、試料ガスに含まれる分析対象ガスの濃度が大きくなると、検出信号自体をスパイクノイズであると判断して、検出信号を用いた正確な分析対象ガスの分析が困難になる場合がある。
【0007】
本発明の目的は、化学発光法を用いたガス分析装置において、スパイクノイズと、反応光を検出することによる検出信号の変動とを適切に区別することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係るガス分析装置は、試料ガスに含まれる分析対象ガスを化学発光法で分析するガス分析装置である。ガス分析装置は、反応部と、光検出部と、スパイク検出部と、分析部と、を備える。
反応部は、試料ガスと発光誘発ガスとを導入する。
光検出部は、反応部において検出された光に関する光検出信号を出力する。
スパイク検出部は、光検出部から出力される光検出信号にスパイク信号が含まれる場合に、スパイク検出信号を出力する。
分析部は、スパイク検出部からスパイク検出信号が連続して出力された場合、光検出信号を分析対象ガスの分析に使用する。一方、スパイク検出信号が不連続に出力された場合、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドする。
【0009】
上記のガス分析装置では、スパイクノイズが連続して発生する可能性は低いとの特性に基づいて、光検出信号に連続してスパイク信号が含まれる場合、すなわち、スパイク検出信号が連続的に出力される場合には、このスパイク検出信号が、光検出信号が急峻に変動していることにより生じていると判断し、光検出信号を分析対象ガスの分析に使用している。その一方、スパイク検出信号が不連続に出力された場合には、このスパイク検出信号がスパイクノイズに起因して発生していると判断し、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドする。このように、上記のガス分析装置は、スパイク検出信号が連続的に出力されているか否かにより、光検出信号にスパイクノイズが含まれているか、又は、光検出信号が急峻に変動しているか、を適切に区別することができる。この結果、光検出信号が分析に適するものであるか否かを適切に決定できる。
【0010】
上記のガス分析装置は、ホールド信号出力部をさらに備えてもよい。ホールド信号出力部は、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドするためのホールド信号を出力する。これにより、光検出信号にスパイクノイズが含まれている場合に、当該光検出信号を用いた分析対象ガスの分析をホールドできる。
【0011】
スパイク検出部は、バンドパスフィルタを有してもよい。バンドパスフィルタは、光検出信号に含まれるスパイク信号を通過させる。バンドパスフィルタは、100Hz~数kHzの信号を通過させてもよい。これにより、光検出信号のうち分析に用いる信号成分をスパイク信号と判断する可能性を低くできる。
【0012】
バンドパスフィルタは、デジタルフィルタにより構成されてもよい。これにより、スパイク信号のみを通過させる特性を有するバンドパスフィルタを実現できる。
【0013】
上記のガス分析装置は、ガス切替部をさらに備えてもよい。ガス切替部は、反応部に、試料ガスと発光誘発ガスとの混合ガスとバックグラウンドガスとを所定の周期で交互に切り替えて導入する。これにより、反応光を検出したときの光検出信号と、反応光を検出していないときの光検出信号とを交互に取得して、これらの光検出信号を分析対象ガスの分析に使用できる。
【0014】
光検出部はフォトダイオードであってもよい。フォトダイオードのようなスパイクノイズを発生しやすい光検出部であっても、スパイク検出信号が連続的に出力されているか否かにより、光検出信号にスパイクノイズが含まれているか、又は、分析対象ガスの濃度が大きく光検出信号が急峻に変動しているか、を適切に区別することができる。
【0015】
本発明の他の見地に係る分析方法は、分析対象ガスを含む試料ガスと発光誘発ガスとを導入する反応部を備え、試料ガスに含まれる分析対象ガスを化学発光法で分析するガス分析装置における分析対象ガスの分析方法である。分析方法は、以下のステップを備える。
◎反応部において検出された光に関する光検出信号を出力するステップ。
◎光検出信号にスパイク信号が含まれる場合にスパイク検出信号を出力するステップ。
◎スパイク検出信号が連続して出力された場合、光検出信号を分析対象ガスの分析に使用し、スパイク検出信号が不連続に出力された場合、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドするステップ。
【0016】
上記の分析方法では、スパイクノイズが連続して発生する可能性は低いとの特性に基づいて、光検出信号に連続してスパイク信号が含まれる場合、すなわち、スパイク検出信号が連続的に出力される場合には、このスパイク検出信号が、光検出信号が急峻に変動していることにより生じている判断し、光検出信号を分析対象ガスの分析に使用している。一方、スパイク検出信号が不連続に出力された場合には、このスパイク検出信号がスパイクノイズに起因して発生していると判断し、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドする。このように、上記の分析方法は、スパイク検出信号が連続的に出力されているか否かにより、光検出信号にスパイクノイズが含まれているか、又は、光検出信号が急峻に変動しているか、を適切に区別することができる。この結果、光検出信号が分析に適するものであるか否かを適切に決定できる。
【0017】
本発明のさらに他の見地に係るプログラムは、上記の分析方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
光検出信号がスパイクノイズを含んでいるか、又は、光検出信号が反応光の変動により急峻に変動したかを適切に区別できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ガス分析装置の構成を示す図。
図2】制御部の具体的構成を示す図。
図3】ガス分析装置の分析動作を示すフローチャート。
図4】分析実行中の各信号の出力状態の一例を示す図。
図5】スパイク検出信号が単発で出力されるときの各信号の出力状態の一例を示す図。
図6】スパイク検出信号が連続して出力されるときの各信号の出力状態の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.第1実施形態
(1)ガス分析装置の構成
図1を用いて、ガス分析装置100の構成を説明する。図1はガス分析装置の構成を示す図である。図1に示すガス分析装置100は、化学分析法(CLA)を用いて分析対象ガスの分析を行う装置である。分析対象ガスは、例えば、窒素化合物(窒素酸化物(NOx)など)のガスである。このような分析対象ガスは、例えば、大気中や煙道中を流れるガス、各種燃焼プロセスにおいて発生するガスに含まれる。分析対象ガスを含む上記のガスを、試料ガスと呼ぶ。ガス分析装置100は、例えば、試料ガスに含まれる分析対象ガスの濃度を測定するための装置である。ガス分析装置100は、反応部1と、光検出部3と、制御部5と、を備える。
【0021】
反応部1は、ガスを導入可能な内部空間を有する部材である。反応部1は小さく(例えば、1cm程度)、その内部空間は渦巻き形状となっている。渦巻き形状の内部空間の一端には第1ガスラインL1が接続され、渦巻き形状の内部空間の他端には第2ガスラインL2が接続される。
【0022】
なお、反応部1の大きさ、及び/又は、反応部1の内部空間の形状は上記に限られない。反応部1は、ガス分析装置100の用途等に応じて、任意の大きさ、及び、任意の形状を有していてもよい。反応部1の内部空間は、例えば、直方体形状、円柱形状、楕円柱形状とできる。
【0023】
第1ガスラインL1は、反応部1と排気部7とを接続する。排気部7は、第1ガスラインL1を介して、反応部1の内部空間を排気する。排気部7は、例えば、ポンプである。
【0024】
第2ガスラインL2は、発光誘発ガス発生部9と、ガス切替部11のガス口bと、に接続される。発光誘発ガス発生部9は、第3ガスラインL3を通じて導入した原料ガスを用いて、発光誘発ガスを生成する。発光誘発ガスは、試料ガスに含まれる分析対象ガスと相互作用して反応光を発生させるためのガスである。発光誘発ガス発生部9は、例えば、原料ガスを導入した箇所で放電を発生させることで、原料ガスに含まれる酸素(O)を、発光誘発ガスであるオゾン(O)に変換する。原料ガスは、例えば、空気である。
【0025】
なお、発光誘発ガス発生部9は、放電によりオゾン等の発光誘発ガスを発生させるものに限られない。発光誘発ガス発生部9は、例えば、水銀ランプ又はエキシマランプなどを原料ガスに照射することで発光誘発ガスを発生させるものであってもよい。
【0026】
後述するように、発光誘発ガスは、ガス分析装置100にて分析を実行中の所定のタイミングにおいて、反応部1に導入される。ガス分析装置100では、発光誘発ガスのみが反応部1に導入されたときに光検出部3から出力される信号を、分析対象ガスを分析する際のバックグラウンド信号とする。すなわち、発光誘発ガスは、バックグラウンドガスと呼ぶこともできる。
【0027】
ガス切替部11は、例えば、ガス口a、bを有する電磁弁である。ガス口aは、試料ガスが導入される第4ガスラインL4に接続される。ガス口bは、第2ガスラインL2に接続される。ガス切替部11は、制御部5からの信号に従って、ガス口aとガス口bとをガス流通可能とした状態とガス流通不可能とした状態と、を所定の周期で交互に切り替える。ガス切替部11のこの切り替えにより、第2ガスラインL2は、試料ガスと発光誘発ガスとの混合ガスと発光誘発ガスのみ(バックグラウンドガス)とを反応部1の内部空間に所定の周期で交互に導入する。
【0028】
ガス分析装置100では、排気部7により反応部1の内部空間を排気することで、試料ガス/発光誘発ガスが、第2ガスラインL2から反応部1の内部空間に導入される。第2ガスラインL2から導入された試料ガスと発光誘発ガスは、反応部1の内部空間の一端から他端へと進む間に相互作用して反応光を発生し、排気部7により第1ガスラインL1へと排気される。
【0029】
反応部1の内部空間を渦巻き形状とすることで、反応部1が小さくとも、試料ガス、基準ガス、発光誘発ガスを効率よく反応させることができる。その結果、試料ガスに含まれる分析対象ガスと発光誘発ガスを十分に相互作用させることができる。
【0030】
小さい反応部1を有するガス分析装置100において、分析対象ガスに対する感度をなるべく大きくするために、排気部7は、反応部1の内部空間をできうる限り低い圧力(例えば、数十kPa程度)となるまで排気する。
【0031】
光検出部3は、反応部1の近傍に設けられ、反応部1において発生する光を検出し、検出された光に関する光検出信号を出力する。光検出部3は、例えば、フォトダイオードである。
【0032】
反応部1が小さく、反応部1で発生する反応光が小さい場合、反応光を検知したときの光検出信号の強度は小さい。このように、光検出信号の強度が小さい場合に光検出信号にスパイクノイズが含まれていると、スパイクノイズによる分析結果への影響が無視できなくなる。従って、後述するように、ガス分析装置100では、光検出信号にスパイクノイズが含まれていると判断される場合には、光検出信号のスパイクノイズが含まれている部分を、分析対象ガスの分析に用いないようにしている。
【0033】
制御部5は、ガス分析装置100の各構成要素を制御するとともに、光検出部3から出力された光検出信号に基づいて、試料ガスに含まれる分析対象ガスの分析を行う。以下、図2を用いて、制御部5の具体的構成を説明する。図2は、制御部5の具体的構成を示す図である。制御部5は、信号増幅部51と、スパイク検出部53と、ホールド信号出力部55と、分析部57と、を有する。
【0034】
信号増幅部51は、光検出部3から出力される光検出信号を増幅する。信号増幅部51は、例えば、オペアンプなどにより構成される信号増幅回路である。スパイク検出部53は、信号増幅部51にて増幅された光検出信号にスパイク信号が含まれる場合に、スパイク検出信号を出力する。後述するように、スパイク信号は、光検出信号にスパイクノイズが含まれる場合、又は、光検出信号が急峻に変化する場合に発生する。スパイク検出部53は、バンドパスフィルタ53aと、信号出力部53bと、を有する。
【0035】
バンドパスフィルタ53aは、信号増幅部51にて増幅された光検出信号のうち、所定の周波数範囲の信号成分を通過させるフィルタである。バンドパスフィルタ53aが通過させる信号の周波数範囲は、例えば、信号増幅部51などの電気回路が有する時定数、分析に用いられる信号成分が有する周波数範囲、除去すべきスパイクノイズが有する周波数範囲などに基づいて決定できる。スパイクノイズは、例えば、1kHz以上の周波数範囲を有する。一方、分析に用いられる信号成分は、分析対象ガスの濃度が大きくない範囲では、0.1Hz~数十Hz程度の周波数範囲を有している。
【0036】
従って、バンドパスフィルタ53aは、例えば、100Hz~数kHz(例えば、2~3kHz程度)の周波数範囲の信号成分を通過させる。これにより、バンドパスフィルタ53aは、光検出信号に含まれる急峻なスパイク信号のみを通過させる一方で、分析に用いる信号をほとんど通過させない。その結果、分析対象ガスの濃度が大きくない範囲においては、分析に用いる信号成分をスパイク信号と判断する可能性が低くなる。
【0037】
バンドパスフィルタ53aは、例えば、デジタルフィルタにより構成できる。デジタルフィルタは、アナログフィルタ(キャパシタ、インダクタ、抵抗などで構成されるフィルタ)と比較して、良好な周波数特性を有するフィルタを実現できる。よって、バンドパスフィルタ53aをデジタルフィルタにより構成することで、実質的にスパイク信号のみを通過させる周波数特性を有するバンドパスフィルタ53aを実現できる。
【0038】
信号出力部53bは、バンドパスフィルタ53aを通過した信号成分(スパイク信号)を検知したときに、この信号成分が有する振幅に応じたスパイク検出信号を出力する回路である。
【0039】
ホールド信号出力部55は、スパイク検出部53からスパイク検出信号が出力された場合に、ホールド信号を出力する。ホールド信号は、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析を停止(ホールド)させるための信号である。具体的には、ホールド信号出力部55は、所定の閾値を超えた値を有するスパイク検出信号が出力された場合、すなわち、ある閾値以上の強度を有するスパイク信号が検出された場合に、予め決められたパルス幅を有するパルス信号を、ホールド信号として出力する。ホールド信号出力部55は、例えば、予め決められたパルス幅を有するパルス信号を出力する回路により構成される。ホールド信号が有するパルス幅は、例えば、1秒~10秒の範囲の固定値とできる。
【0040】
分析部57は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、HDD、SSDなど)、各種インターフェース、ディスプレイを備えたコンピュータシステムである。分析部57は、演算部571と、表示部573と、を有する。
【0041】
演算部571は、分析部57のCPU、記憶装置、インターフェースにより構成され、ガス分析装置100の制御機能に関する処理、分析対象ガスの分析機能に関する処理を実行する。具体的には、演算部571は、光検出部3から出力され、信号増幅部51により増幅された光検出信号に基づいて、試料ガスに含まれる分析対象ガスの分析を行う。分析部57は、例えば、試料ガスに含まれる分析対象ガスの濃度を算出する。
【0042】
また、演算部571は、排気部7の制御に関する情報処理を実行する。演算部571は、発光誘発ガス発生部9の制御に関する情報処理を実行する。演算部571は、ガス切替部11のガス口aとガス口bとを流通不可能とする(発光誘発ガスのみを第2ガスラインL2に導入する)状態と、ガス口aとガス口bとを流通可能とする(試料ガスと発光誘発ガスの混合ガスを第2ガスラインL2に導入する)状態と、を所定の周期で切り替えるための情報処理を実行する。
【0043】
演算部571は、上記の分析や制御に関する情報処理の一部又は全部を、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで実現してもよい。また、演算部571は、上記の制御等に関する情報処理の一部又は全部を、ハードウェア的に実現してもよい。
【0044】
表示部573は、分析部57のディスプレイであり、ガス分析装置100の制御に関する表示、分析対象ガスの分析に関する表示、分析対象ガスの分析結果などを表示する。表示部573は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのディスプレイである。
【0045】
(2)ガス分析装置の分析動作
図3を用いて、ガス分析装置100における分析対象ガスの分析動作を説明する。図3は、ガス分析装置の分析動作を示すフローチャートである。分析を開始するために、ガス分析装置100を起動する。具体的には、ステップS1において、排気部7が起動される。また、ステップS2において、演算部571が、発光誘発ガス発生部9を制御して発光誘発ガスを生成させる。さらに、ステップS3において、演算部571が、ガス切替部11を動作させて、ガス口aとガス口bとをガス流通不可能とした状態と、ガス口aとガス口bとをガス流通可能とした状態と、を所定の周期で切り替える。
【0046】
上記の排気部7の吸引とガス切替部11の切り替え動作により、試料ガスと発光誘発ガスとの混合ガスが反応部1の内部空間に導入された状態と、発光誘発ガス(バックグラウンドガス)のみが反応部1の内部空間に導入された状態と、が所定の周期で切り替わる。
【0047】
上記2つの状態が切り替わりつつ反応部1の圧力が所定の圧力となった後、分析対象ガスの分析が開始される。上記のように、反応部1の内部空間では、試料ガスと発光誘発ガスとが導入された状態と、発光誘発ガスのみが導入された状態とが所定の周期で切り替わる。このため、光検出部3からは、図4に示すような光検出信号が出力される。具体的には、上記2つの状態が切り替わるのとほぼ同期して、光検出信号の強度が、強度Iと強度Iとの間で変化する。強度Iは、発光誘発ガスのみが導入されたとき、すなわち、反応光が発生していないときの強度である。強度Iは、試料ガスと発光誘発ガスとが導入されたとき、すなわち、反応光が発生しているときの強度である。図4は、分析実行中の各信号の出力状態の一例を示す図である。
【0048】
分析の実行中、演算部571は、スパイク検出信号が出力されているか否かを判断する(ステップS4)。演算部571は、スパイク検出部53から出力される信号を直接監視してスパイク検出信号の有無を判断してもよいし、ホールド信号が出力されているか否か、すなわち、ホールド信号がLow(L)状態のままであるかHigh(H)状態に切り替わったかによりスパイク検出信号の有無を判断してもよい。
【0049】
図4に示すように、スパイク検出信号が出力されていない場合(ステップS4で「No」)、演算部571は、光検出信号を試料ガスに含まれる分析対象ガスの分析に使用すると決定し、光検出信号に基づいて分析対象ガスを分析する(ステップS5)。上記のとおり、光検出信号の強度Iは、発光誘発ガスのみが反応部1に導入されて反応光が発生していないときの強度である。一方、強度Iは、試料ガスと発光誘発ガスが反応部1に導入され、試料ガス中の分析対象ガスと発光誘発ガスとの相互作用により反応光が発生しているときの強度である。従って、演算部571は、強度Iをバックグラウンド強度として、強度Iと強度Iとの差分(I-I)、又は、強度Iと強度Iとの比(I/I)に基づいて、分析対象ガスを分析する。具体的には、分析部57は、例えば、試料ガスに含まれる分析対象ガスの濃度を算出する。
【0050】
この場合、演算部571は、ガス切替部11によるガスの導入状態の切替周期と同じ周期で、分析対象ガスの分析結果を算出できる。
【0051】
一方、スパイク検出信号が出力されている場合(ステップS4で「Yes」)、演算部571は、さらに、スパイク検出信号が連続して出力されているか否かを判断する(ステップS6)。演算部571は、スパイク検出部53から出力される信号を直接監視してスパイク検出信号が連続的に出力されているか否かを判断できる。その他、演算部571は、図5に示すように、ホールド信号が所定の時間長さ(T2-T1)だけ出力されているか、又は、図6に示すように、この時間長さよりも長い時間ホールド信号が出力されているか、によりスパイク検出信号が連続的に出力されているか否か判断することもできる。図5は、スパイク検出信号が単発で出力されるときの各信号の出力状態の一例を示す図である。図6は、スパイク検出信号が連続して出力されるときの各信号の出力状態の一例を示す図である。
【0052】
図5に示すように、スパイク検出信号が不連続に出力されている場合(ステップS6で「No」)、演算部571は、このスパイク検出信号がスパイクノイズに起因して発生している(すなわち、光検出信号にスパイクノイズが含まれている)と判断し、光検出信号に基づいた分析をホールドすると決定する(ステップS7)。具体的には、演算部571は、ホールド信号が出力される時間T1から時間T2までの間、光検出信号に基づいた分析結果を算出せず、ホールド信号が出力される前の分析結果を、ホールド信号が出力されている間の分析結果として保持する。
【0053】
一方、図6に示すように、スパイク検出信号が連続して出力されている場合(ステップS6で「Yes」)、演算部571は、光検出信号にスパイクノイズが含まれるのではなく、光検出信号が急峻に変動していることにより連続したスパイク検出信号が生じていると判断する。このように判断できる理由は、以下の通りである。
【0054】
第1に、スパイクノイズは、一般的には単発でランダムに発生するものであり、図6に示すように、所定の周期で連続して発生する可能性は極めて低いからである。第2に、例えば分析対象ガスの濃度が大きくなるなどの理由により、光検出信号の立ち上がり(強度Iから強度Iへの変化)と立ち下がり(強度Iから強度Iへの変化)が急峻になると、この立ち上がりと立ち下がりのタイミングで、光検出信号に高周波数の信号成分が含まれるようになるからである。この高周波数の信号成分が、バンドパスフィルタ53aを通過して信号出力部53bで検知される結果、光検出信号の立ち上がり及び立ち下がりと(若干の遅延を有した状態で)同期して、スパイク検出信号が連続して出力されるからである。
【0055】
スパイク検出信号が連続して出力されている、すなわち、光検出信号が急峻に変動していることにより連続したスパイク検出信号が生じていると判断した場合、演算部571は、ホールド信号の有無にかかわらず、光検出信号を分析対象ガスの分析に使用すると決定し、光検出信号に基づいた分析を実行する(ステップS5)。具体的には、演算部571は、光検出信号の強度Iと強度Iとの差分に基づいて、ガスの導入状態の切替周期と同じ周期で、分析対象ガスの分析結果を算出する。その後、演算部571は、分析対象ガスの分析結果を表示部573に表示させる。
【0056】
その他、スパイク検出信号が連続して出力されており、光検出信号が急峻に変動していることにより連続したスパイク検出信号が生じていると判断した場合、演算部571は、急峻に変動する光検出信号に基づいて、ガス分析装置100がオーバーレンジしている旨を通知してもよい。この場合、演算部571は、例えば、オーバーレンジしている旨を表示部573に表示させてもよい。
【0057】
分析の実行中に、例えば、ユーザによりガス分析装置100に対して所定の操作がされるなどして、ガス分析装置100よる分析動作の停止が指令されるまで(すなわち、図3のステップS8が「Yes」である限り)、上記のステップS3~S7が繰り返し実行される。一方、分析動作の停止が指令されると(ステップS8で「No」)、上記の分析動作は終了する。
【0058】
上記のように、ガス分析装置100では、スパイクノイズが連続して発生する可能性は低いとの特性に基づいて、光検出信号に連続してスパイク信号が含まれる場合、すなわち、スパイク検出信号が連続的に出力される場合には、このスパイク検出信号が、光検出信号が急峻に変動していることにより生じていると判断し、光検出信号を分析対象ガスの分析に使用している。その一方、スパイク検出信号が不連続に出力された場合には、このスパイク検出信号がスパイクノイズに起因して発生していると判断し、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドする。このように、スパイク検出信号が連続的に出力されているか否かにより、光検出信号にスパイクノイズが含まれているか、又は、光検出信号が急峻に変動しているか、を適切に区別することができる。この結果、光検出信号が分析に適するものであるか否かを適切に決定できる。
【0059】
2.実施形態の特徴
(1)ガス分析装置は、反応部と、光検出部と、スパイク検出部と、分析部と、を備える。反応部は、試料ガスと発光誘発ガスとを導入する。光検出部は、反応部において検出された光に関する光検出信号を出力する。スパイク検出部は、光検出部から出力される光検出信号にスパイクノイズが含まれる場合に、スパイク検出信号を出力する。分析部は、スパイク検出部からスパイク検出信号が連続して出力された場合、光検出信号を分析対象ガスの分析に使用する。一方、スパイク検出信号が不連続に出力された場合、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドする。
【0060】
上記のガス分析装置では、スパイクノイズが連続して発生する可能性は低いとの特性に基づいて、光検出信号に連続してスパイク信号が含まれる場合、すなわち、スパイク検出信号が連続的に出力される場合には、このスパイク検出信号が、光検出信号が急峻に変動していることにより生じていると判断し、光検出信号を分析対象ガスの分析に使用している。その一方、スパイク検出信号が不連続に出力された場合には、このスパイク検出信号がスパイクノイズに起因して発生していると判断し、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドする。このように、スパイク検出信号が連続的に出力されているか否かにより、光検出信号にスパイクノイズが含まれているか、又は、光検出信号が急峻に変動しているか、を適切に区別することができる。この結果、光検出信号が分析に適するものであるか否かを適切に決定できる。
【0061】
(2)上記(1)のガス分析装置は、ホールド信号出力部をさらに備えてもよい。ホールド信号出力部は、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドするためのホールド信号を出力する。これにより、光検出信号にスパイクノイズが含まれている場合に、当該光検出信号を用いた分析対象ガスの分析をホールドできる。
【0062】
(3)上記(1)又は(2)のガス分析装置において、スパイク検出部は、バンドパスフィルタを有してもよい。バンドパスフィルタは、光検出信号に含まれるスパイク信号を通過させる。バンドパスフィルタは、100Hz~数kHzの信号を通過させてもよい。これにより、光検出信号のうち分析に用いる信号成分をスパイク信号と判断する可能性を低くできる。
【0063】
(4)上記(3)のガス分析装置において、バンドパスフィルタは、デジタルフィルタにより構成されてもよい。これにより、スパイク信号のみを通過させる特性を有するバンドパスフィルタを実現できる。
【0064】
(5)上記(1)~(4)のいずれかのガス分析装置は、ガス切替部をさらに備えてもよい。ガス切替部は、反応部に、試料ガスと発光誘発ガスとの混合ガスとバックグラウンドガスとを所定の周期で交互に切り替えて導入する。これにより、反応光を検出したときの光検出信号と、反応光を検出していないときの光検出信号とを交互に取得して、これらの光検出信号を分析対象ガスの分析に使用できる。
【0065】
(6)上記(1)~(5)のいずれかのガス分析装置において、光検出部はフォトダイオードであってもよい。フォトダイオードのようなスパイクノイズを発生しやすい光検出部であっても、スパイク検出信号が連続的に出力されているか否かにより、光検出信号にスパイクノイズが含まれているか、又は、分析対象ガスの濃度が大きく光検出信号が急峻に変動しているか、を適切に区別することができる。
【0066】
(7)分析方法は、分析対象ガスを含む試料ガスと発光誘発ガスとを導入する反応部を備え、試料ガスに含まれる分析対象ガスを化学発光法で分析するガス分析装置における分析対象ガスの分析方法である。分析方法は、以下のステップを備える。
◎反応部において検出された光に関する光検出信号を出力するステップ。
◎光検出信号にスパイク信号が含まれる場合にスパイク検出信号を出力するステップ。
◎スパイク検出信号が連続して出力された場合、光検出信号を分析対象ガスの分析に使用し、スパイク検出信号が不連続に出力された場合、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドするステップ。
【0067】
上記の分析方法では、スパイクノイズが連続して発生する可能性は低いとの特性に基づいて、光検出信号に連続してスパイク信号が含まれる場合、すなわち、スパイク検出信号が連続的に出力される場合には、このスパイク検出信号が、光検出信号が急峻に変動していることにより生じていると判断し、光検出信号を分析対象ガスの分析に使用している。一方、スパイク検出信号が不連続に出力された場合には、このスパイク検出信号がスパイクノイズに起因して発生していると判断し、光検出信号に基づいた分析対象ガスの分析をホールドする。このように、スパイク検出信号が連続的に出力されているか否かにより、光検出信号にスパイクノイズが含まれているか、又は、光検出信号が急峻に変動しているか、を適切に区別することができる。この結果、光検出信号が分析に適するものであるか否かを適切に決定できる。
【0068】
(8)本発明のさらに他の見地に係るプログラムは、上記(7)の分析方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0069】
3.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)図3のフローチャートを用いて説明した分析動作において、図3のフローチャートの各ステップの処理の順番、各ステップの処理内容は、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0070】
(B)発光誘発ガスとしてオゾン(O)を用いた場合には、窒素酸化物(NOx)のうち一酸化窒素(NO)と相互作用した場合に特に強く発光する。従って、ガス分析装置100において他の窒素酸化物(NOx)も検知可能とするために、窒素酸化物(NOx)を一酸化窒素(NO)に変換する部材を、ガス分析装置100の第4ガスラインL4に設けてもよい。
【0071】
(C)光検出部3は、フォトダイオードに限られず、光増倍管であってもよい。光増倍管を光検出部3として用いることで、感度よく反応光を検知できる。また、反応部1は、大きくてもよい。
【0072】
(D)光検出信号のバックグラウンドの強度Iは、発光誘発ガスを生成するための原料である原料ガスを反応部1の内部空間に導入して取得されてもよい。すなわち、原料ガスをバックグラウンドガスとしてもよい。
【0073】
(E)ガス分析装置100には、上記にて説明した部材以外にも、例えば、試料ガスからダスト等を除去するフィルタ、反応部1に導入するガスから水分を除去する部材(ミストトラップ等)などが設けられてもよい。
【0074】
(F)ガス切替部11は、ガス口a、bに加え、他のガス口を有する三方電磁弁であってもよい。三方電磁弁であるガス切替部11は、制御部5による制御に従って、ガス口aとガス口bとを流通可能とする状態と、ガス口aと上記他のガス口とを流通可能とする状態と、を切り換える。ガス切替部11がガス口aとガス口bとを流通可能とすると、試料ガスと発光誘発ガスが反応部1の内部空間に導入される。一方、ガス口aと上記他のガス口とを流通可能とすると、発光誘発ガスのみが反応部1の内部空間に導入される。この場合、上記の他のガス口は、所定の位置(例えば、膜式ドライヤー)に接続されてもよい。
【0075】
(G)反応部1の内部空間に試料ガスと発光誘発ガスとを導入したときに、分析対象ガスに対して十分な感度を有して発光が発生する場合には、分析対象ガスの分析時における反応部1の内部空間の圧力は、数十kPa程度と低くなくてもよい。反応部1の内部空間の圧力は、例えば、大気圧であってもよい。
【0076】
(H)ガス分析装置100におけるガスフローは、図1に示すようなフローに限られない。例えば、ガス切替部11を省略し、第2ガスラインL2に試料ガスが常時流れるようにしてもよい。
【0077】
(I)第2ガスラインL2に、第2ガスラインL2に流れる試料ガスを希釈する希釈ガス(例えば、空気)を導入するガスラインを設けてもよい。これにより、例えば、分析対象ガスと発光誘発ガスとの相互作用による発光を妨げるガス成分(例えば、二酸化炭素(CO))が試料ガスに含まれている場合に、試料ガスを希釈ガスと混合させてから反応部1の内部空間に導入できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、化学発光法を用いたガス分析装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0079】
100 :ガス分析装置
1 :反応部
3 :光検出部
5 :制御部
51 :信号増幅部
53 :スパイク検出部
53a :バンドパスフィルタ
53b :信号出力部
55 :ホールド信号出力部
57 :分析部
571 :演算部
573 :表示部
7 :排気部
9 :発光誘発ガス発生部
11 :ガス切替部
a、b :ガス口
L1 :第1ガスライン
L2 :第2ガスライン
L3 :第3ガスライン
L4 :第4ガスライン

図1
図2
図3
図4
図5
図6