(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079093
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】濃硫酸の漏洩検知方法および濃硫酸漏洩検知装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/02 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
G01M3/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191815
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 瞭
(72)【発明者】
【氏名】佐々井 茂
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA02
2G067BB22
2G067CC01
2G067DD08
2G067EE04
(57)【要約】
【課題】濃硫酸の製造プラントや貯蔵プラントにおいて、濃硫酸の漏洩の発生を速やかに検知する。
【解決手段】温度計12により測定された集液ピット3内の液体の温度に基づいて、濃硫酸の漏洩の有無を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集液ピット内の液体の温度に基づいて、濃硫酸の漏洩の有無を判定する、濃硫酸の漏洩検知方法。
【請求項2】
前記集液ピット内の前記液体の温度が、所定温度以上になった場合に、濃硫酸の漏洩があると判定する、請求項1に記載の濃硫酸の漏洩検知方法。
【請求項3】
前記集液ピット内の前記液体の温度が、所定時間内に所定温度以上上昇した場合に、濃硫酸の漏洩があると判定する、請求項1に記載の濃硫酸の漏洩検知方法。
【請求項4】
地面または床面に備えられた集液ピット内の液体の温度を測定する温度計と、
前記温度計により測定される前記集液ピット内の前記液体の温度に基づいて、濃硫酸の漏洩の有無を判定する判定部と、
を備える、濃硫酸漏洩検知装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記温度計により測定される前記集液ピット内の前記液体の温度が、所定温度以上になった場合に、濃硫酸の漏洩があると判定する、請求項4に記載の濃硫酸漏洩検知装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記温度計により測定される前記集液ピット内の前記液体の温度が所定時間内に所定温度以上上昇した場合に、濃硫酸の漏洩があると判定する、請求項4に記載の濃硫酸漏洩検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃硫酸の製造プラントや貯蔵プラントにおける濃硫酸の漏洩の有無を検知する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
濃硫酸は、金属精錬や化学合成など、さまざまな用途で使用されている。濃硫酸は、たとえば、原料ガスである二酸化硫黄(SO2)ガスを、五酸化バナジウム(V2O5)を含む触媒層を通過させることで三酸化硫黄(SO3)ガスに転化し、該三酸化硫黄ガスを気液接触により循環硫酸に吸収させる、接触法により製造することができる。製造された濃硫酸は、貯蔵タンクに溜められて適宜払い出される。すなわち、貯蔵タンクと、タンクローリーとを移送用配管を介して接続して、貯蔵タンク内の濃硫酸を、移送用配管を通じてタンクローリーに供給する。
【0003】
タンクローリーへの濃硫酸の供給が完了すると、貯蔵タンクに接続された配管(チューブやホースを含む)とタンクローリーに接続された配管との接合を切断する。そして、それぞれの配管の端部に備えられたフランジに洗浄水を噴射して、該フランジに付着した濃硫酸を洗浄する。洗浄後の排液には、硫酸が含まれる。なお、硫酸を含む排液は、メンテナンス時、プラントを分解、洗浄することなどによっても生じる。硫酸は、劇物であり、プラント外に流出すると、周辺設備に損傷を与えたり、周辺の生活環境や生態系を破壊したりしてしまう可能性がある。このため、濃硫酸の製造プラントや貯蔵プラントでは、周囲を防液堤で囲み、該防液堤内の地面または床面の1乃至複数箇所に、集液ピットを設けている。集液ピット内に溜まった硫酸を含む排液は、ピットポンプにより汲み上げられ、排液用配管を通じて、中和処理を行う処理設備などに送られる。
【0004】
濃硫酸の製造プラントや貯蔵プラントにおいて、貯蔵タンクの底板や移送用配管の継ぎ目などから濃硫酸が漏洩すると、集液ピット内の排液の酸性度が高くなる(pHが小さくなる)。集液ピット内の排液の酸性度が高くなると、次のような問題を生じる可能性がある。
【0005】
通常、中和処理を行う処理設備では、定期的に(たとえば1日1回)中和剤が補給されるが、排液の酸性度が高くなると、排液の中和処理に必要な中和剤の量が増加し、処理設備で中和剤の補給が追いつかなくなって、処理設備が停止してしまう可能性がある。処理設備が停止し、排液を処理設備に送れなくなると、集液ピットから濃硫酸を含む排液があふれてしまう可能性がある。
【0006】
排液の酸性度が高い状態で、ピットポンプを稼働し続けると、該ピットポンプに接続された排液用配管に損傷が生じる可能性がある。すなわち、排液用配管が、金属製であれば腐食し、樹脂製であれば希釈熱により変形してしまう可能性がある。
【0007】
ピットポンプは、比較的高価なものが使用されるが、酸性度が高い排液を汲み上げ続けることで腐食が進み、故障しやすくなる可能性がある。
【0008】
上述のような問題が生じることを回避するためには、濃硫酸の漏洩を速やかに検知して、対策を講じることが望まれる。濃硫酸の漏洩の有無を検知する方法としては、排液のpHをpH計により測定する方法が考えられる。しかしながら、濃硫酸の製造プラントや貯蔵プラントでは、フランジや配管の洗浄などに伴って集液ピット内に溜まった排液は、pHが1以下となっている場合も多い。このため、pH計を用いた方法では、濃硫酸の漏洩を速やかに検知することが難しい場合がある。
【0009】
実開平1-89351号公報には、ポリエチレンなどの絶縁体により被覆された2本の電極線を設置して、漏液が発生すると、電極線間の抵抗値が低下することを利用して漏液を検知する方法が開示されている。しかしながら、上述したように、濃硫酸の製造プラントや貯蔵プラントでは、集液ピット内に溜まった排液が、pHが1以下となっている場合も多く、2本の電極線を用いる方法によっては、濃硫酸の漏洩を検知することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、濃硫酸の漏洩の発生を速やかに検知することができる方法および装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者らは、濃硫酸が希釈される際に熱(希釈熱)を発生することに着目し、濃硫酸の製造プラントや貯蔵プラントにおける濃硫酸の漏洩を検知する方法について、鋭意検討した結果、集液ピット内に溜まった排液の温度(液温)に基づいて、濃硫酸の漏洩を検知することができるとの知見を得た。本発明は、この知見に基づき完成されたものである。
【0013】
本発明の一態様の濃硫酸の漏洩検知方法では、濃硫酸の製造プラントや貯蔵プラントの集液ピット内の液体の温度に基づいて、濃硫酸の漏洩の有無を判定する。
【0014】
本発明の一態様の濃硫酸の漏洩検知方法では、前記集液ピット内の前記液体の温度が、所定温度以上になった場合に、濃硫酸の漏洩があると判定することができる。
【0015】
あるいは、前記集液ピット内の前記液体の温度が、所定時間内に所定温度以上上昇した場合に、濃硫酸の漏洩があると判定することができる。
【0016】
本発明の一態様の濃硫酸漏洩検知装置は、
地面または床面に備えられた集液ピット内の液体の温度を測定する温度計と、
前記温度計により測定される前記集液ピット内の前記液体の温度に基づいて、濃硫酸の漏洩の有無を判定する判定部と、
を備える。
【0017】
本発明の一態様の濃硫酸漏洩検知装置では、前記判定部は、前記温度計により測定される前記集液ピット内の前記液体の温度が、所定温度以上になった場合に、濃硫酸の漏洩があると判定することができる。
【0018】
あるいは、前記判定部は、前記温度計により測定される前記集液ピット内の前記液体の温度が所定時間内に所定温度以上上昇した場合に、濃硫酸の漏洩があると判定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様の濃硫酸の漏洩検知方法によれば、濃硫酸の製造プラントや貯蔵プラントにおいて、濃硫酸の漏洩の発生を速やかに検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、濃硫酸の貯蔵プラントの1例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、濃硫酸の製造プラントや貯蔵プラントにおいて、濃硫酸の貯蔵タンクの底板や移送用配管の継ぎ目などからの濃硫酸の漏洩の有無を検知する方法および装置に関する。
【0022】
図1に示すように、濃硫酸の製造プラントは、防液堤1により周囲を囲まれている。また、防液堤1により囲まれた製造プラント内の地面は、コンクリートを、エポキシ系樹脂やフッ素系樹脂などの耐酸性を有するコーティング剤により覆うことで構成されている。これにより、硫酸を含む排液のプラント外への漏洩が防止されている。
【0023】
濃硫酸の製造プラントは、1乃至複数個の貯蔵タンク2と、1乃至複数個の集液ピット3とを備える。
【0024】
貯蔵タンク2は、たとえば接触法などにより製造された、濃度が95%以上、好ましくは98%以上の濃硫酸を貯蔵する。貯蔵タンク2は、耐酸性を有するポリエチレンなどの樹脂材料、あるいは、ステンレス鋼などの金属材料により構成される。
【0025】
貯蔵タンク2内の濃硫酸は、定量ポンプなどの流量を制御可能なポンプである送液ポンプ4により吸引され、移送用配管5を通じて、タンクローリーや運搬船などの運送手段6に供給される。運送手段6に濃硫酸を所定量供給後、移送用配管5の送液弁7を閉じ、送液ポンプ4を停止する。なお、気温が低い冬季には、濃硫酸の液温低下による濃度の低下を防止するため、濃硫酸を加温してから、あるいは、加温しながら、移送用配管5を通じて、運送手段6に供給することもできる。
【0026】
濃硫酸の供給を停止した後、移送用配管5のうちで貯蔵タンク2に接続された配管と、運送手段6に接続された配管との接合を切断する。すなわち、それぞれの配管の端部に備えられたフランジ同士を締結するボルトを取り外し、該フランジ同士を離隔させる。フランジには、工業用水などの洗浄水を噴射して、該フランジに付着した濃硫酸を洗い流す。洗浄後の排液は、集液ピット3内に流れて回収される。
【0027】
それぞれの集液ピット3は、該集液ピット3の周辺の地面よりも凹んだ窪みであり、プラント内の地面の1乃至複数箇所に備えられている。集液ピット3には、フランジ取り外し後やメンテナンス時の洗浄に伴い生じる硫酸を含む排液、および、雨水などが流れ込む。
【0028】
集液ピット3の深さおよび開口面積は、プラントの規模や集液ピット3の個数などに応じて適宜決定される。集液ピット3の深さは、これに限定されるものではないが、300mm以上2000mm以下、好ましくは500mm以上1500mm以下とすることができる。また、集液ピット3の開口面積は、これに限定されるものではないが、0.1m2以上3m2以下、好ましくは0.25m2以上1.25m2以下とすることができる。
【0029】
集液ピット3の開口形状は、特に限定されるものではなく、円形や矩形などの任意の形状とすることができる。なお、集液ピット3の断面形状および断面積は、深さ方向にわたり一定であることが好ましく、集液ピット3の底面は、平坦面により構成されることが好ましい。
【0030】
なお、排液および雨水などが集液ピット3に流れ込みやすくするために、集液ピット3の周辺の地面を、集液ピット3に向かうほど低くなる方向に傾斜させてもよい。
【0031】
集液ピット3内の液体(排液)の液位は、レベル計8により測定される。本例では、集液ピット3周辺の地面と液面との高低差が所定値以下になると、ピットポンプ9を稼働して、集液ピット3内の排液を汲み上げる。汲み上げられた排液は、排液用配管10を通じて、排液処理設備に送られ、消石灰などの中和剤を添加する中和処理などの廃棄処理を施したうえで廃棄される。
【0032】
レベル計8としては、集液ピット3内の排液の液面の高さを計測することができる限り、特に限定されるものではないが、酸性度の高い排液の影響を抑える面からは、超音波式など、非接触式のレベル計を使用するのが好ましい。ただし、耐酸性を十分に確保することができれば、フロート式や電極式など、接触式のレベル計を使用することもできる。
【0033】
ピットポンプ9としては、ダイヤフラムポンプ若しくはプランジャーポンプなどの定量ポンプを使用することができる。
【0034】
なお、雨量が多いなどの原因により、集液ピット3内の液体の増加速度が、ピットポンプ9の処理性能(汲み上げ速度)を上回る場合には、ピットポンプ9に加えて、集液ピット3内の液体を汲み上げるポンプを一時的に増設することもできる。
【0035】
濃硫酸の製造プラントは、貯蔵タンク2の底板や移送用配管5の継ぎ目などからの濃硫酸の漏洩を検知するための濃硫酸漏洩検知装置11をさらに備える。本例の濃硫酸漏洩検知装置11は、濃硫酸が希釈される際に熱(希釈熱)を発生する現象を利用して、濃硫酸の漏洩を検知する。
【0036】
濃硫酸漏洩検知装置11は、温度計12と、判定部13とを備える。
【0037】
温度計12は、集液ピット3内の液体の温度(液温)を測定する。
【0038】
温度計12は、集液ピット3内の液体の温度を測定することができ、かつ、耐酸性を有する限り、特に限定されるものではなく、測温抵抗体若しくは熱電対などの接触式温度計、または、赤外線放射温度計などの非接触式温度計のいずれも使用することができる。
【0039】
ただし、濃硫酸漏洩の発生に伴う集液ピット3内の液体の温度変化を速やかに検知する面からは、温度計12として、測温抵抗体若しくは熱電対などの接触式温度計を使用することが好ましい。
【0040】
温度計12として接触式温度計を使用する場合には、集液ピット3内の液体の液面の高さにかかわらず、測定子の先端部を、液面から下方に30mm~1000mmの範囲に位置させることが好ましい。すなわち、貯蔵タンク2の底板や移送用配管5の継ぎ目などで濃硫酸の漏洩が発生すると、プラント内の地面に滴り落ちた濃硫酸は、集液ピット3の上方の開口部から該集液ピット3内へと流れ込む。集液ピット3内に流れ込んだ濃硫酸が、該集液ピット3内に存在する液体の液面に触れると、希釈されて熱を発生し、液面付近の液温が上昇する。したがって、温度計12の測定子の先端部を上記範囲に位置させることで、濃硫酸漏洩の発生に伴う集液ピット3内の液体の温度変化を速やかに検知することができる。なお、温度計12の測定子の先端部の高さ方向の位置は、集液ピット3内の液体の液面の高さにかかわらず一定とすることもできるし、該液面の高さに応じて調整することもできる。
【0041】
温度計12は、それぞれの集液ピット3ごとに1個ずつ備えることもできるし、複数個ずつ備えることもできる。温度計12を集液ピット3ごとに複数個ずつ備える場合、たとえば、温度計12を集液ピット3の側面に沿って配置することができる。
【0042】
判定部13は、温度計12により測定される集液ピット3内の温度に基づいて、濃硫酸の漏洩の有無を判定する。すなわち、判定部13は、温度計12により測定される集液ピット3内の温度が所定の条件を満たした場合に、濃硫酸の漏洩があると判定する。
【0043】
具体的には、たとえば、判定部13は、温度計12により測定される集液ピット3内の温度が、所定温度T以上になった場合に、濃硫酸の漏洩があると判定する。前記所定温度Tは、年間を通じて一定の温度(たとえば45℃など)とすることもできるし、外気温などに応じて適宜調整することもできる。
【0044】
あるいは、判定部13は、温度計12により測定される集液ピット3内の液体の温度が、所定時間tの間に所定温度ΔT以上上昇した場合に、濃硫酸の漏洩があると判定する。前記所定時間tは、数秒から数分の範囲で設定することができる。また、前記所定温度ΔTは、年間を通じて一定の温度(たとえば2℃~3℃程度)とすることもできるし、外気温や、集液ピット3内の液体の液位、すなわち液量などに応じて適宜調整することもできる。
【0045】
本例の濃硫酸漏洩検知装置11を備える濃硫酸の製造プラントにおいて、貯蔵タンク2の底板や移送用配管5の継ぎ目などからの濃硫酸の漏洩が発生すると、プラント内の地面に滴り落ちた濃硫酸は、集液ピット3の上方の開口部から該集液ピット3内へと流れ込む。集液ピット3内に流れ込んだ濃硫酸が、該集液ピット3内に溜まった液体の液面に触れ、希釈されると、希釈熱が発生して液温が上昇する。そして、温度計12により測定される集液ピット3内の液体の温度が所定の条件を満たすと、判定部13が濃硫酸の漏洩があると判定する。
【0046】
判定部13により濃硫酸の漏洩があると判定された場合には、災害の発生や被害の拡大を防止するべく、適切な処置を行う。
【0047】
具体的には、貯蔵タンク2と送液ポンプ4との間に備えられた緊急遮断弁14、および、移送用配管5のうちで送液ポンプ4と運送手段6との間に備えられた送液弁7を閉じて、移送用配管5を通じた貯蔵タンク2から運送手段6への濃硫酸の供給を遮断する。濃硫酸の漏洩が、送液ポンプ4の故障や移送用配管5の破損など、濃硫酸の供給方向に関して緊急遮断弁14よりも下流側(運送手段6側)に起因する場合には、緊急遮断弁14を閉じることで、それ以上の濃硫酸の漏洩を防止することができる。
【0048】
および/または、ピットポンプ9を停止して、集液ピット3内の排液の汲み上げおよび排液処理設備への移送を停止する。これにより、排液用配管10に損傷が生じたり、比較的高価な定量ポンプであるピットポンプ9が傷んで故障しやすくなったりするのを防止することができる。
【0049】
集液ピット3内に溜まった濃硫酸を含む液体は、ピットポンプ9とは別に備えられた仮設の水中ポンプ15により汲み上げる。これにより、集液ピット3から濃硫酸を含む液体があふれることを防止する。汲み上げられた液体は、精製した後で貯蔵タンク2に戻したり、中和剤を添加するなどの適切な処理を施したうえで廃棄したりする。
【0050】
上述のような災害の発生や被害の拡大を防止するための処置は、判定部13による判定結果に基づく図示しない制御装置からの指示に従って、自動で行うのが好ましい。ただし、判定部13による判定結果に基づいて警告を発し、警告を受け取った作業者によって行うこともできる。
【0051】
本例の濃硫酸漏洩検知装置11を用いた濃硫酸の漏洩検知方法では、温度計12により測定される集液ピット3内の液体の温度に基づいて、濃硫酸の漏洩の有無を判定する。具体的には、漏洩した濃硫酸が集液ピット3内の液体によって希釈される際に生じる熱(希釈熱)による、該液体の温度上昇を温度計12により検知することにより、濃硫酸の有無を判定する。
【0052】
したがって、集液ピット3内に溜まった液体(排液)のpHにかかわらず、濃硫酸の漏洩を速やかに検知することができて、被害の拡大や災害の発生を防止するために必要な処置を迅速に行うことができる。このため、濃硫酸がプラント外に漏洩するといった災害の発生や、設備が故障するといった被害の拡大を防止することができる。
【0053】
本発明の一態様の濃硫酸漏洩検知装置は、製造プラントに限らず、別のプラントで製造され、輸送されてきた濃硫酸を保管しておく貯蔵プラントに適用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 防液堤
2 貯蔵タンク
3 集液ピット
4 送液ポンプ
5 移送用配管
6 運送手段
7 送液弁
8 レベル計
9 ピットポンプ
10 排液用配管
11 濃硫酸漏洩検知装置
12 温度計
13 判定部
14 緊急遮断弁
15 水中ポンプ