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特開2024-79159スイング評価装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079159
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】スイング評価装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/36 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A63B69/36 541P
A63B69/36 541W
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191926
(22)【出願日】2022-11-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物名 シンポジウム:スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス2022 講演論文集、Vol.31、No.22(2022)号、B-7-4 発行者名 日本機械学会 発行日 令和4年10月28日 学会名 シンポジウム:スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス2022 開催日 令和4年11月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 弘祐
(72)【発明者】
【氏名】植田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 賢太
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏
(57)【要約】
【課題】 対象ゴルファのスイングに近いゴルフスイングを特定することが可能な装置を提供する。
【解決手段】 ゴルフスイングを評価するためのスイング評価装置である。第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する取得部と、第1動作値を特異値分解することにより、第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する抽出部と、第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データを記憶する協調動作データ入力部と、第1協調動作データと、複数の第2協調動作データのそれぞれとを比較した比較結果を取得する比較部と、比較結果に基づいて、複数の第2スイングから、第1スイングに近いゴルフスイング33を判定する判定部と、判定されたゴルフスイング34を表示装置12に出力する出力部とを含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフスイングを評価するためのスイング評価装置であって、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する取得部と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する抽出部と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データを記憶する協調動作データ入力部と、
前記第1協調動作データと、前記複数の第2協調動作データのそれぞれとを比較した比較結果を取得する比較部と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングから、前記第1スイングに近いゴルフスイングを判定する判定部と、
前記判定されたゴルフスイングを表示装置に出力する出力部とを含む、
スイング評価装置。
【請求項2】
前記複数の第2スイングは、模範となるゴルフスイングのグループである、請求項1に記載のスイング評価装置。
【請求項3】
前記第1動作値は、前記第1プレーヤの身体各部位の位置データを含む、請求項1又は2に記載のスイング評価装置。
【請求項4】
前記第1協調動作データは、前記第1動作値を特異値分解することで得られる空間基底を含み、
前記複数の第2協調動作データは、前記複数の第2スイングをそれぞれ計測した第2動作値を、特異値分解することで得られる空間基底を含む、請求項1又は2に記載のスイング評価装置。
【請求項5】
前記比較部は、前記比較結果として、前記第1協調動作データの空間基底と、前記複数の第2協調動作データの空間基底のそれぞれとの類似度を取得する、請求項4に記載のスイング評価装置。
【請求項6】
前記類似度は、相関係数又はコサイン類似度を含む、請求項5に記載のスイング評価装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記複数の第2協調動作データのうち、前記類似度が最も大きい第2協調動作データを、前記第1スイングに近いゴルフスイングとして判定する、請求項5に記載のスイング評価装置。
【請求項8】
前記類似度は、前記第1協調動作データ及び前記複数の第2協調動作データに含まれる複数のモード毎に取得され、
前記比較部は、前記複数のモード毎に、前記第1協調動作データの前記空間基底が、前記類似度に寄与する度合いを示す寄与率を取得する寄与率取得部と、
前記複数のモード毎に、前記類似度を前記寄与率で重み付けた加重類似度を計算して、全てのモードの加重類似度を足し合わせた合計加重類似度を取得する加重類似度取得部とを含み、
前記判定部は、前記複数の第2協調動作データのうち、前記合計加重類似度が最も大きい第2協調動作データを、前記第1スイングに近いゴルフスイングとして判定する、請求項5に記載のスイング評価装置。
【請求項9】
ゴルフスイングを評価するためのスイング評価装置であって、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する取得部と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する抽出部と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データを記憶する協調動作データ入力部と、
前記第1協調動作データと、前記複数の第2協調動作データのそれぞれとを比較した比較結果を取得する比較部と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングの中の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部と、前記複数の第2スイングの中の他の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部とを含む新たなゴルフスイングを算出する算出部と、
前記新たなゴルフスイングを表示装置に出力する出力部とを含む、
スイング評価装置。
【請求項10】
前記複数の第2スイングは、模範となるゴルフスイングのグループである、請求項9に記載のスイング評価装置。
【請求項11】
前記第1動作値は、前記第1プレーヤの身体各部位の位置データを含む、請求項9又は10に記載のスイング評価装置。
【請求項12】
前記第1協調動作データは、前記第1動作値を特異値分解することで得られる空間基底を含み、
前記複数の第2協調動作データは、前記複数の第2スイングをそれぞれ計測した第2動作値を、特異値分解することで得られる空間基底を含む、請求項9又は10に記載のスイング評価装置。
【請求項13】
前記比較部は、前記比較結果として、前記第1協調動作データの空間基底と、前記複数の第2協調動作データの空間基底のそれぞれとの類似度を取得する、請求項12に記載のスイング評価装置。
【請求項14】
前記類似度は、相関係数又はコサイン類似度を含む、請求項13に記載のスイング評価装置。
【請求項15】
前記類似度は、前記第1協調動作データ及び前記複数の第2協調動作データに含まれる複数のモード毎に取得され、
前記比較部は、前記複数のモード毎に、前記複数の第2協調動作データのうち、前記類似度が最も大きい第2協調動作データをそれぞれ特定し、
前記算出部は、前記複数のモード毎に、前記特定された第2協調動作データの空間基底を組み合わせて、前記新たな協調動作データを取得する、請求項13に記載のスイング評価装置。
【請求項16】
ゴルフスイングを評価するための方法であって、
コンピュータが、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する工程と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する工程と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データと、前記第1協調動作データとを比較した比較結果を取得する工程と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングから、前記第1プレーヤに近いゴルフスイングを判定する工程と、
前記判定されたゴルフスイングを表示装置に出力する工程とを含む、
スイング評価方法。
【請求項17】
ゴルフスイングを評価するための方法であって、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する工程と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する工程と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データと、前記第1協調動作データとを比較した比較結果を取得する工程と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングの中の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部と、前記複数の第2スイングの中の他の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部とを含む新たなゴルフスイングを算出する工程と、
前記新たなゴルフスイングを表示装置に出力する工程とを含む、
スイング評価方法。
【請求項18】
ゴルフスイングを評価するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する手段と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する手段と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データと、前記第1協調動作データとを比較した比較結果を取得する手段と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングから、前記第1プレーヤに近いゴルフスイングを判定する手段と、
前記判定されたゴルフスイングを表示装置に出力する手段として機能させる、
コンピュータプログラム。
【請求項19】
ゴルフスイングを評価するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する手段と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する手段と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データと、前記第1協調動作データとを比較した比較結果を取得する手段と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングの中の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部と、前記複数の第2スイングの中の他の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部とを含む新たなゴルフスイングを算出する手段と、
前記新たなゴルフスイングを表示装置に出力する手段として機能させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイング評価装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフスイングなどの動作の解析に用いられる動作解析装置が、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6554158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、初心者ゴルファは、ゴルフ技術の向上のために、上級者ゴルファやプロゴルファ等の模範となるゴルフスイングを手本にして練習することがある。しかしながら、目指すべきゴルフスイングは、プレーヤの個性等によって様々である。特に、自らのスイングと大きくかけ離れたゴルフスイングを手本にして練習しても、十分な技量向上効果が得られないことがある。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、対象ゴルファのスイングに近いゴルフスイングを特定することが可能な装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゴルフスイングを評価するためのスイング評価装置であって、第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する取得部と、前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する抽出部と、前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データを記憶する協調動作データ入力部と、前記第1協調動作データと、前記複数の第2協調動作データのそれぞれとを比較した比較結果を取得する比較部と、前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングから、前記第1スイングに近いゴルフスイングを判定する判定部と、前記判定されたゴルフスイングを表示装置に出力する出力部とを含む、スイング評価装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスイング評価装置は、上記の構成を採用したことにより、対象ゴルファのスイングに近いゴルフスイングを特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のスイング評価装置を含むスイング評価システムを概念的に示す構成図である。
図2】本実施形態のスイング評価装置のブロック図である。
図3】本実施形態のスイング評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
図4】第1プレーヤの身体各部位の位置データ、及び、ゴルフクラブのクラブ各部位の位置データを説明する図であり、(a)は、X軸方向(正面)からみた位置データであり、(b)は、Y軸方向(側面)からみた位置データである。
図5】第1プレーヤの第1協調動作データと、複数の第2プレーヤの第2協調動作データとの平均相関係数を、モード毎に示した図である。
図6】第1協調動作データの空間基底が、類似度に寄与する度合いを示す寄与率を示す図である。
図7】複数の第2プレーヤの合計加重類似度を示す図である。
図8】表示装置に表示された第1理想スイングの一例を示す図である。
図9】本発明の他の実施形態のスイング評価装置を示すブロック図である。
図10】本発明の他の実施形態のスイング評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
図11】第1プレーヤP1の第1協調動作データと、複数の第2プレーヤの第2協調動作データとの平均相関係数を、モード毎に示した図である。
図12】表示装置に表示された第2理想スイングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0010】
図1は、本実施形態のスイング評価装置2を含むスイング評価システム1を概念的に示す構成図である。本実施形態のスイング評価システム1(スイング評価装置2)では、ゴルフスイングが評価される。本実施形態において、ゴルフスイングが評価される対象ゴルファは、第1プレーヤP1である。
【0011】
第1プレーヤP1としては、初心者ゴルファや、中級者ゴルファである場合が例示されるが、特に限定されない。本実施形態では、第1プレーヤP1のスイングに近いゴルフスイング(以下、「第1理想スイング」ということがある。)が特定される。
【0012】
第1理想スイングの特定には、複数のゴルフスイングが用いられる。複数のゴルフスイングは、第1プレーヤP1とは異なる複数の第2プレーヤ(図示省略)それぞれのゴルフスイング(以下、「複数の第2スイング」ということがある。)である。第2プレーヤの合計人数は、特に限定されないが、例えば、2~10人に設定される。本実施形態では、3人の第2プレーヤ(本例では、第2プレーヤA~C)で構成される場合が例示される。
【0013】
本実施形態の複数の第2プレーヤは、第1プレーヤP1よりも技量が高いゴルファである。したがって、これらの第2プレーヤによる複数の第2スイングは、第1プレーヤP1にとって模範となるゴルフスイングのグループ(集まり)となる。複数の第2プレーヤとしては、上級者ゴルファやプロゴルファである場合が例示されるが、特に限定されない。
【0014】
ゴルフスイングに用いられるゴルフクラブ3には、市販されている様々なものが用いられる。本実施形態のゴルフクラブ3は、ウッド型である場合が例示されるが、特に限定されない。ゴルフクラブ3には、シャフト3aと、シャフト3aの一端(「先端」ということがある。)に固着されたクラブヘッド3b(この例では、ウッド型である)と、シャフト3aの他端に固着されたグリップ3cとが含まれる。
【0015】
ゴルフスイングに用いられるゴルフボール4には、市販されている様々なものが用いられる。本実施形態のゴルフボール4には、実際のゴルフボールよりも柔らかいゴルフボール(例えば、スポンジボールなど)が採用される。このようなゴルフボール4により、インパクト時のゴルフスイングへの影響が低減され、ゴルフスイングの安定した測定が可能となる。
【0016】
[スイング評価システム]
本実施形態のスイング評価システム1は、スイング評価装置2と、計測装置5とを含んで構成される。スイング評価システム1(スイング評価装置2)は、後述のスイング評価方法の実行に用いられる。
【0017】
[計測装置]
計測装置5は、第1プレーヤP1のゴルフスイングである第1スイングを計測するためのものである。本実施形態の計測装置5は、モーションキャプチャシステム5Aとして構成されている。本実施形態では、後述の第2プレーヤ(図示省略)による第2スイングの計測にも、計測装置5(モーションキャプチャシステム5A)が用いられる。なお、計測装置5は、第1スイング及び第2スイングを計測できれば、モーションキャプチャシステム5Aに限定されるわけではなく、種々の装置が採用されうる。
【0018】
本実施形態のモーションキャプチャシステム5Aには、複数のマーカー6と、複数台のカメラ7と、コンピュータ8とが含まれる。
【0019】
複数のマーカー6は、例えば、光反射性の球体に形成されている。これらのマーカーは、第1プレーヤP1(第2プレーヤ)の身体各部位に取り付けられる。身体各部位としては、特に限定されないが、例えば、上記特許文献1と同様に、例えば、頭、手首、手の指先、肘、肩、腰、膝、踝、及び、脚の指先等が挙げられる。本実施形態では、53個のマーカー6が取り付けられているが、このような態様に限定されるわけではなく、一部のマーカー6が省略されてもよいし、他のマーカー(図示省略)が追加されてもよい。各マーカー6には、予め定められた識別番号(例えば、第1番~第53番)が設定されている。
【0020】
本実施形態では、ゴルフクラブ3の所定の部位(以下、「クラブ各部位」ということがある。)に、複数のマーカー6が取り付けられる。クラブ各部位としては、特に限定されないが、例えば、シャフト3a及びクラブヘッド3bが挙げられる。本実施形態では、ゴルフクラブ3に、4個のマーカー6が取り付けられている。これらのマーカー6は、シャフト3aのクラブヘッド3b側の一端と、シャフト3aのグリップ3c側の他端と、クラブヘッド3bのフェース側の一端と、クラブヘッド3bのフェースの反対側の他端とに取り付けられている。各マーカー6には、予め定められた識別番号(例えば、第54番~第57番)が設定されている。
【0021】
複数台のカメラ7は、第1プレーヤP1による第1スイングを様々な方向から撮影することができる位置に配置されている。これらのカメラ7により、複数のマーカー6が取り付けられた第1プレーヤP1による第1スイング(第2プレーヤによる第2スイング)の動画データが撮像されうる。
【0022】
コンピュータ8では、複数のカメラ7で撮像された動画データが、三角測量の原理で解析されて、各マーカー6の三次元座標(位置データ)が計算される。これにより、第1スイング(第2スイング)の三次元計測が可能となる。モーションキャプチャシステム5Aには、例えば、VICON社製の三次元動作分析システムが好適に採用されうる。
【0023】
計測装置5は、有線又は無線の通信線(図示省略)を介して、スイング評価装置2と通信可能に接続されている。これにより、計測装置5で計測された計測値が、スイング評価装置2に送信されうる。なお、計測値の送信は、このような通信線に限定されるわけではなく、例えば、通信ネットワークを介して送信されてもよい。通信ネットワークには、例えば、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)等が含まれる。また、計測装置5がスイング評価装置2に接続されない場合には、例えば、フラッシュメモリ等の記憶メディア(図示省略)等を介して、位置データがスイング評価装置2に入力されてもよい。
【0024】
[スイング評価装置(第1実施形態)]
スイング評価装置2は、例えば、コンピュータ10によって構成される。コンピュータ10の一例には、デスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、及び、クラウドサーバ等が挙げられる。本実施形態のコンピュータ10には、デスクトップ型コンピュータが採用される。図2は、本実施形態のスイング評価装置2のブロック図である。
【0025】
本実施形態のスイング評価装置2は、例えば、入力装置11と、表示装置12と、通信装置13と、演算処理装置14とを含んで構成されている。
【0026】
[入力装置・表示装置]
入力装置11には、例えば、図1に示したキーボード11aやマウス11b等が用いられる。表示装置12には、例えば、図1に示したディスプレイ12a等が用いられる。
【0027】
[通信装置]
図2に示されるように、本実施形態の通信装置13は、通信線20を介して、計測装置5(モーションキャプチャシステム5A)と通信可能に接続されている。これにより、通信装置13(スイング評価装置2)は、計測装置5の計測値を、通信線20を介して取得(受信)することが可能となる。また、本実施形態の通信装置13(スイング評価装置2)は、例えば、計測装置5を制御するための信号を、通信線を介して計測装置5に送信しうる。
【0028】
[演算処理装置]
本実施形態の演算処理装置14は、例えば、各種の演算を行う演算部(CPU)15、データやプログラム等が記憶される記憶部16、及び、作業用メモリ17を含んで構成されている。
【0029】
[記憶部]
記憶部16は、例えば、磁気ディスク、光ディスク又はSSD等からなる不揮発性の情報記憶装置である。本実施形態の記憶部16には、データ部18及びプログラム部19が含まれる。
【0030】
[データ部]
データ部18は、図1に示した第1プレーヤP1による第1スイングの評価や、第1理想スイングの特定に必要なデータ(情報)や、評価結果や第1理想スイング等を記憶するためのものである。本実施形態のデータ部18には、第1動作値入力部18a、第2動作値記憶部18b、協調動作データ入力部18c、比較結果入力部18d、及び、理想スイング入力部18eが含まれる。なお、データ部18は、このような態様に限定されるわけではなく、これらの一部が省略されてもよいし、その他のデータが記憶されるデータ部が含まれてもよい。これらのデータ部18に入力されるデータの詳細は、後述される。
【0031】
[プログラム部]
プログラム部19は、図1に示した第1プレーヤP1による第1スイングの評価に必要なプログラム(コンピュータプログラム)である。プログラム部(プログラム)19は、演算部15によって実行されることにより、コンピュータ10を、特定の手段として機能させることができる。
【0032】
本実施形態のプログラム部19には、取得部19a、抽出部19b、比較部19c、判定部19d及び出力部19eが含まれる。本実施形態の比較部19cには、類似度取得部21、寄与率取得部22及び加重類似度取得部23が含まれる。なお、プログラム部19は、このような態様に限定されるわけではなく、その他の機能を有するプログラム部がさらに含まれてもよい。これらのプログラム部19の機能の詳細は、後述される。
【0033】
[スイング評価方法(第1実施形態)]
次に、本実施形態のスイング評価方法が説明される。本実施形態のスイング評価方法では、第1プレーヤP1による第1スイングが評価される。そして、第1プレーヤP1が目指すべきゴルフスイング(すなわち、第1理想スイング)が特定される。
【0034】
ところで、第1プレーヤP1の第1理想スイングは、第1プレーヤP1の個性等によって様々である。とりわけ、第1プレーヤP1のゴルフスイング(以下、「第1スイング」ということがある。)と大きくかけ離れたゴルフスイングを手本にして練習した場合、十分な技量向上効果が得られないことがある。
【0035】
本実施形態では、複数の第2スイングから、第1スイングに近いゴルフスイング(第2スイング)が、第1プレーヤP1の第1理想スイングとして特定される。このような第1理想スイングを手本として、第1プレーヤP1が練習することで、第1プレーヤP1の技量向上効果が得られる。第1理想スイングを特定する手順は、後述される。
【0036】
図3は、本実施形態のスイング評価方法の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態では、スイング評価方法の各工程が、図1及び図2に示したスイング評価装置2(コンピュータ10)によって実行される。
【0037】
[第1プレーヤの第1動作値を取得]
本実施形態のスイング評価方法では、先ず、第1プレーヤP1の第1スイングを計測した第1動作値が取得される(工程S1)。第1動作値は、第1動作を定量的に表すことができれば、適宜取得されうる。第1動作値には、第1プレーヤP1の身体各部位の位置データが含まれる。さらに、本実施形態では、第1動作値に、ゴルフクラブ3のクラブ各部位の位置データが含まれる。
【0038】
本実施形態の工程S1では、先ず、図2に示したプログラム部19に含まれる取得部19aが、作業用メモリ17に読み込まれる。取得部19aは、第1動作値を取得するためのプログラムである。この取得部19aが、演算部15によって実行されることで、コンピュータ10を、第1動作値を取得するための手段として機能させることができる。
【0039】
本実施形態の工程S1では、先ず、図1に示した第1プレーヤP1による第1スイングが計測される。本実施形態の第1スイングの計測には、計測装置5(モーションキャプチャシステム5A)が用いられる。計測装置5による計測の開始及び終了などの制御は、スイング評価装置2(コンピュータ10)が行ってもよいし、オペレータ等が行ってもよい。
【0040】
本実施形態では、第1スイングの計測に先立ち、図1に示した第1プレーヤP1の身体各部位や、ゴルフクラブ3のクラブ各部位に、複数のマーカー6が取り付けられる。
【0041】
次に、図1に示した第1プレーヤP1による第1スイングが開始されてから終了する(例えば、アドレスからフィニッシュ)までの間、第1スイングが、複数台のカメラ7で連続撮影される。これにより、第1スイングが時系列(複数の時刻)で連続的に撮影された複数の画像を含む画像群(動画データ)が取得される。第1スイングは、予め定められたサンプリング周波数に対応する時間間隔で撮影される。サンプリング周波数は、適宜設定することができ、例えば、500Hzに設定される。
【0042】
画像群(動画データ)に含まれる各画像は、例えば、計測装置5(モーションキャプチャシステム5A)のコンピュータ8に含まれる画像処理ソフトウェア等で画像処理される。これにより、第1スイングの時系列の第1動作値が取得される。
【0043】
本実施形態では、第1動作値として、複数のマーカー6の位置データがそれぞれ取得される。これらの位置データにより、複数のマーカー6が取り付けられた第1プレーヤP1の身体各部位の位置(身体各部位の位置データ)や、ゴルフクラブ3のクラブ各部位(シャフト3a及びクラブヘッド3bの位置)がそれぞれ特定される。
【0044】
第1プレーヤP1の身体各部位の位置データ(本例では、53個)は、それらの身体各部位25の関節中心を平均化することで、一部の位置データ(本例では、22個)に集約されてもよい。これにより、位置データが少なくなり、後述の特異値分解によって得られる協調動作データのモードの個数の増大が抑制される。なお、このような集約を行わなくても、例えば、第1プレーヤP1の身体各部位の位置データ(本例では、53個)のうち、第1スイングの評価をする際に注目すべき身体各部位の位置データが限定されてもよい。
【0045】
図4は、第1プレーヤP1の身体各部位25の位置データ、及び、ゴルフクラブ3のクラブ各部位の位置データを説明する図である。図4において、(a)は、X軸方向(第1プレーヤP1の正面)からみた位置データであり、(b)は、Y軸方向(第1プレーヤP1の側面)からみた位置データである。
【0046】
第1プレーヤP1の身体各部位25の位置データ、及び、ゴルフクラブ3のクラブ各部位26位置データは、三次元(直交座標系)の座標値として取得される。三次元の座標値は、例えば、図4(a)に示した第1プレーヤP1の正面視において、奥行方向(X軸方向)、左右方向(Y軸方向)、及び、高さ方向(Z軸方向)に基づいて特定される。これらの位置データが時系列で特定されることで、第1動作値が取得される。
【0047】
身体各部位25及びクラブ各部位26の座標値は、例えば、複数の身体各部位25から選択された一つの身体各部位25の座標値が、予め定められた基準位置24に一致するように、座標変換(移動)されてもよい。これにより、基準位置24に基づいて、身体各部位25及びクラブ各部位26の座標値が揃えられた第1動作値が取得されうる。このような第1動作値により、例えば、体格が異なる他のプレーヤの動作値(本例では、第2プレーヤーの第2動作値)との比較や、動作が計測された位置が異なる他のプレーヤの動作値との比較が容易となる。
【0048】
基準位置24は、例えば、X軸、Y軸及びZ軸の原点に設定されているが、特に限定されるわけではなく、任意の位置に設定されうる。また、基準位置24に一致させる身体各部位25は、左足先20aに設定されているが、特に限定されるわけではなく、任意の身体各部位25が選択されうる。
【0049】
身体各部位25及びクラブ各部位26の座標値は、例えば、第1プレーヤP1の右足先20bの位置から左足先20aの位置に向かうベクトル(図示省略)が、Y軸方向(左右方向)と平行となるように、座標変換されてもよい。これにより、第1プレーヤP1の体の向きが揃えられた第1動作値が取得され、例えば、他のプレーヤの動作値(第2プレーヤーの第2動作値)との比較が容易となる。
【0050】
第1動作値は、例えば、以下の式(1)~(3)で定義される。先ず、式(1)では、第1時刻から第N時刻までの任意の時刻tにおいて、第i番のマーカー(身体各部位25及びクラブ各部位26)の位置データ(原点を基準とする位置ベクトル)が特定される。本実施形態において、第1時刻は、第1スイングが開始された時刻である。また、第N時刻は、第1スイングが終了した時刻である。
【0051】
【数1】
ここで、
i:マーカーの識別番号
t:時刻
【0052】
上記の式(1)のxi(t)、yi(t)及びzi(t)は、時刻tにおいて、第i番のマーカー6(身体各部位25及びクラブ各部位26)のX軸方向の座標、Y軸方向の座標、及び、Z軸方向の座標を示している。この位置データri(t)について、第1時刻から第N時刻まで作成し、これらを行ごとに並べた行列[ri]が、下記の式(2)で定義される。
【0053】
【数2】
【0054】
上記の式(2)の行列[ri]では、N行3列の行列であり、第1行から第N行に時系列に沿って順に、上記の式(1)で定義される三次元座標ri(1),ri(2),・・・,ri(N)が並べられている。そして、全てのマーカー(身体各部位25及びクラブ各部位26)に対する26個の行列[r1]、[r2]…[r26]を、この順に列方向(横方向)に並べた行列[R]が、下記の式(3)で定義される。行列[R]は、N行78(=3×26)列の行列である。
【0055】
【数3】
【0056】
上記の式(3)の行列[R]は、第1時刻から第N時刻までの26個のマーカー(身体各部位25及びクラブ各部位26)の位置を時系列に表す時系列の挙動データである。なお、行例[R]の第t行には、第t時刻での第1プレーヤP1の身体における22個のマーカー(身体各部位25)、及び、ゴルフクラブの4個のマーカー(クラブ各部位26)の三次元座標が含まれている。
【0057】
この行列[R]の第t行において、第t時刻の第1プレーヤP1の身体各部位25やゴルフクラブ3のクラブ各部位26の位置データ(第1プレーヤP1による第1スイング)が表される。このような行列[R]により、第1動作値が特定されうる。
【0058】
本実施形態の工程S1では、行列[R]で特定される複数の身体各部位25及びクラブ各部位26をジョイントとし、これらのジョイントを連結するボーン(骨)24を含む第1モデル(スティックピクチャー)M1が設定される。
【0059】
本実施形態の工程S1では、第1プレーヤP1によって、第1スイングが複数(S回分)行われる。そして、これらの第1スイングを計測した第1動作値が複数取得(S回分取得)される。第1スイングが行われる回数(S回)は、例えば、2~10に設定される。これらの第1動作値、及び、第1モデルM1は、第1動作値入力部18a(図2に示す)に記憶される。
【0060】
[第1動作値から第1協調動作データを抽出]
次に、本実施形態のスイング評価方法では、第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データが抽出される(工程S2)。本実施形態の工程S2では、第1動作値を特異値分解することで、第1協調動作データが抽出される。
【0061】
本実施形態の工程S2では、先ず、図2に示した第1動作値入力部18aに入力されている第1動作値が、作業用メモリ17に読み込まれる。さらに、プログラム部19に含まれる抽出部19bが、作業用メモリ17に読み込まれる。抽出部19bは、第1協調動作データを抽出するためのプログラムである。この抽出部19bが、演算部15によって実行されることで、コンピュータ10を、第1協調動作データを抽出する手段として機能させることができる。
【0062】
本実施形態の工程S2では、特異値分解に先立ち、上記の式(3)の行列が拡張される。この行列の拡張は、特異値分解の基準点を、第1スイングの初期姿勢に近づけるためのものである。
【0063】
行列の拡張は、先ず、第i番のマーカー(図4に示した身体各部位25及びクラブ各部位26)の初期姿勢の座標値(位置ベクトル)ri(1)が、上記の式(1)に基づいて求められる。次に、求められた座標値(位置ベクトル)ri(1)の行ごとに、第1時刻から第2N時刻まで並べた行列([ri(1)])が作成される。このとき、[ri(1)]の行ごとの要素は、全てri(1)となる。
【0064】
次に、上記の行列([ri(1)])が第1番~第26番のマーカー(身体各部位25及びクラブ各部位26)について作成され、それらを列ごとに並べた行列([R(1)])が、以下の式(4)で定義される。
【0065】
【数4】
【0066】
さらに、行列のデータ点数を増やして分解能を向上させるために、上記の式(3)の行列を時系列方向に反転した行列[Rt]が、以下の式(5)で定義される。そして、上記の式(3)の行列[R]に上記の式(4)の行列[R(1)]、及び、下記の式(5)の行列[Rt]を結合した行列である観測行列[Ra]が、以下の式(6)で定義される。
【0067】
【数5】
【数6】
【0068】
次に、本実施形態の工程S2では、26個のマーカー6(身体各部位25及びクラブ各部位26)の位置の時系列データを上記の式(6)の観測行列[Ra]とし、基準となる初期姿勢を示す行列[R0]として、下記の式(7)を用いて特異値分解が行われる。なお、行列[R0]は、観測行列[Ra]の時間方向(行方向)に平均をとり、その平均を行ごとに6N個並べた行列(6N行78(=3×26)列)として定義される。
【0069】
【数7】
【0070】
上記の式(7)に基づいて、観測行列[Ra]と初期姿勢の行列[R0]との差分である[Ra]-[R0]が特異値分解され、n=1,2,・・・,J(Jは、78以下の整数)に対し、U(n)、Γ(n)及びV(n)が得られる。
【0071】
Γ(n)は、第nモード(第n番目)の特異値であり、[Ra]に対する第nモード(第n番目)の寄与の割合を表している。U(n)は、観測行列[Ra]の左特異ベクトルであり、6N行78(=3×26)列となる。V(n)は、観測行列[Ra]の右特異ベクトルであり、78次元である。
【0072】
左特異ベクトルU(n)は、右特異ベクトルV(n)の時間情報を表す基底である時間基底である。一方、右特異ベクトルV(n)は、第1プレーヤP1及びゴルフクラブ3における各マーカー6(身体各部位25及びクラブ各部位26)の位置情報を表す基底である空間基底である。この空間基底は、基準となる初期姿勢の行列[R0]に対し,第nモード(第n番目)の動作の方向を示すベクトルである。このような空間基底の値により、第1スイングでの第1プレーヤP1の動き(身体各部位25及びクラブ各部位26の動き)が、モード毎に数値化されうる。
【0073】
本実施形態の工程S2では、第1動作値を特異値分解することで得られる空間基底(右特異ベクトルV(n))が、第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データとして抽出される。
【0074】
上述したように、本実施形態では、複数(S回分)の第1スイングをそれぞれ計測した第1動作値が複数取得(S回分取得)されている。これらの第1動作値が特異値分解されることで、複数の第1スイングのそれぞれについて、特徴的な挙動を示す第1協調動作データが複数抽出(S回分抽出)される。これらの第1協調動作データは、モードごと(本例では、第1モードから第78モードごと)に、図2に示した協調動作データ入力部18cに記憶される。
【0075】
[比較結果を取得]
次に、本実施形態のスイング評価方法では、第1協調動作データと、複数の第2協調動作データとを比較した比較結果が取得される(工程S3)。
【0076】
複数の第2協調動作データは、複数の第2プレーヤ(図示省略)について、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示すための指標である。この複数の第2協調動作データは、スイング評価方法の実施に先立って抽出されているのが好ましい。
【0077】
第2協調動作データは、第1強調動作データと同様の手順(工程S1及び工程S2)で抽出されうる。この第2協調動作データの抽出には、先ず、第2スイングを計測した第2動作値が取得される。この第2動作値には、第2プレーヤの身体各部位の位置データや、ゴルフクラブのクラブ各部位の位置データが含まれている。
【0078】
本実施形態では、複数の第2プレーヤ(本例では、第2プレーヤA~C)のそれぞれによって、第2スイングが複数(T回分)行われる。そして、これらの第2スイングのそれぞれを計測した第2動作値が、複数取得(T回分取得)される。すなわち、本実施形態では、複数の第2プレーヤごとに、第2動作値が複数取得(T回分取得)される。これらの第2動作値は、図2に示した第2動作値記憶部18bに予め記憶されている。
【0079】
次に、第2動作値が特異値分解されることで、第2スイングの特徴的な挙動を示す第2協調動作データが抽出されうる。この第2協調動作データには、空間基底(右特異ベクトルV(n))が含まれる。上述したように、本実施形態では、複数の第2プレーヤ(本例では、第2プレーヤA~C)ごとに、第2動作値が複数取得(T回分取得)されている。これらの第2動作値が特異値分解されることで、複数の第2プレーヤごとに、第2協調動作データが複数抽出(T回分抽出)される。これらの第2協調動作データは、モードごと(本例では、第1モードから第78モードごと)に、図2に示した協調動作データ入力部18cに予め記憶されている。
【0080】
本実施形態の工程S3では、先ず、図2に示した協調動作データ入力部18cに入力されている第1協調動作データ、及び、第2協調動作データが、作業用メモリ17に読み込まれる。さらに、プログラム部19に含まれる比較部19c(本例では、類似度取得部21、寄与率取得部22及び加重類似度取得部23を含む)が、作業用メモリ17に読み込まれる。比較部19cは、第1協調動作データと、第2協調動作データとを比較した比較結果を取得するためのプログラムである。この比較部19cが、演算部15によって実行されることで、コンピュータ10を、比較結果を取得する手段として機能させることができる。
【0081】
第1協調動作データと第2協調動作データとの比較は、適宜実施されうる。本実施形態では、これらの協調動作データに含まれる複数のモード(本例では、第1モード~第78モード)ごとに、第1協調動作データと第2協調動作データとが比較されるのが好ましい。
【0082】
本実施形態では、第1協調動作データの空間基底(右特異ベクトルV(n))と、複数の第2協調動作データの空間基底(右特異ベクトルV(n))とのそれぞれとの類似度が取得される。本実施形態の類似度は、複数のモード毎に取得される。このような類似度が、比較結果として取得されることで、複数の第2プレーヤの第2スイング(身体各部位及びクラブ各部位の動き)に対して、図4に示した第1プレーヤP1の第1スイング(身体各部位25及びクラブ各部位26の動き)がどの程度似ているかを定量的に評価することが可能となる。本実施形態において、類似度は、図2に示した比較部19cに含まれる類似度取得部21が演算部15によって実行されることで取得される。この類似度取得部21は、第1協調動作データの空間基底と、複数の第2協調動作データの空間基底のそれぞれとの類似度を取得するためのプログラムである。
【0083】
類似度は、第1協調動作データと複数の第2協調動作データとを比較することができれば、適宜取得される。本実施形態の類似度には、相関係数(平均相関係数)又はコサイン類似度(平均コサイン類似度)が含まれる。これらの類似度は、複数のモード(本例では、第1モード~第78モード)毎に取得される。
【0084】
本実施形態では、類似度として、相関係数(平均相関係数)が取得される。相関係数Cts(n)は、下記の式(8)で取得される。
【0085】
【数8】
ここで、
V’e_t(n):t回目の第2スイングの第2協調動作データのうち、
第nモードにおける各部位の空間基底
V’b_s(n):s回目の第1スイングの第1協調動作データのうち、
第nモードにおける各部位の空間基底
【0086】
上記の式(8)において、V’e_t(n)は、一人の第2プレーヤについて、全T回分のうちt回目の第2スイングの第2協調動作データの空間基底である。一方、V’b_s(n)は、第1プレーヤP1について、全S回分のうちs回目の第1スイングの第1協調動作データの空間基底である。
【0087】
上記の式(8)では、全S回分の中のs回目の第1スイングの第1協調動作データの空間基底と、全T回分の中のt回目の第2スイングの第2協調動作データの空間基底との相関係数Cts(n)が求められる。この相関係数Cts(n)では、第nモード(本例では、第1モード~第78モード)ごとに、第1協調動作データの各部位の空間基底と、第2協調動作データの各部位の空間基底との相関係数がそれぞれ示されている。このような相関係数Cts(n)が、下記の式(9)で平均処理されることで、第nモードの平均相関係数Cc(n)が求められる。
【0088】
【数9】
【0089】
上記の式(9)では、全S回分の第1スイングの第1協調動作データの空間基底と、全T回分の第2協調動作データの空間基底とを総当たり的に組み合わせて求められた相関係数Cts(n)の和が、組み合わせの合計数(S×T)で除算されている。これにより、本実施形態のように、複数の第1協調動作データ(S個分)、及び、複数の第2協調動作データ(T個分)が抽出された場合でも、それらを組み合わせて求められた複数の相関係数Cts(n)を平均した平均相関係数Cc(n)が、第nモード(本例では、第1モード~第78モード)ごとに求められる。このような平均相関係数Cc(n)は、複数の第2プレーヤ(本例では、第2プレーヤA~C)ごとに求められる。
【0090】
図5は、第1プレーヤP1の第1協調動作データと、複数の第2プレーヤの第2協調動作データとの平均相関係数Cc(n)を、モード毎に示した図である。図5では、全てのモード(第1モード~第78モード)のうち、第1モード~第5モードの平均相関係数Cc(n)が代表して示されている。このような平均相関係数Cc(n)が求められることにより、第1協調動作データと、複数の第2協調動作データ(複数の第2プレーヤの第2協調動作データ)とを、モード毎にそれぞれ比較することが可能となる。
【0091】
類似度として、コサイン類似度が取得される場合、下記の式(10)が用いられる。なお、下記の式(10)のV’e_t(n)及びV’b_s(n)は、上記の式(8)と同一の値を示している。
【0092】
【数10】
ここで、
V’e_t(n) :t回目の第2スイングの第2協調動作データのうち、
第nモードにおける各部位の空間基底
V’b_s(n) :s回目の第1スイングの第1協調動作データのうち、
第nモードにおける各部位の空間基底
|V’e_t(n)|:t回目の第2スイングの第2協調動作データのうち、
第nモードにおける空間基底ベクトルの大きさ
|V’b_s(n)|:s回目の第1スイングの第1協調動作データのうち、
第nモードにおける空間基底ベクトルの大きさ
【0093】
上記の式(10)において、|V’e_t(n)|は、第nモードについて、第2協調動作データの空間基底ベクトルの大きさ(全成分のノルム)である。一方、|V’b_s(n)|は、第nモードについて、第2協調動作データの空間基底ベクトルの大きさ(全成分のノルム)である。
【0094】
コサイン類似度では、第nモード(本例では、第1モード~第78モード)ごとに、第1協調動作データの各部位の空間基底(V’b_s(n))と、第2協調動作データの各部位の空間基底(V’e_t(n))との類似度が計算されうる。このようなコサイン類似度は、例えば、上記の式(9)のように平均処理されることで、第nモード(本例では、第1モード~第78モード)ごと、平均コサイン類似度が求められる。
【0095】
平均コサイン類似度は、複数の第2プレーヤ(本例では、第2プレーヤA~C)ごとに求められる。このような平均コサイン類似度が求められることにより、上述の平均相関係数Cc(n)と同様に、第1協調動作データと、複数の第2協調動作データ(複数の第2プレーヤの第2協調動作データ)とを、モード毎にそれぞれ比較することが可能となる。
【0096】
図5に示されるように、例えば、第3モードにおいて、平均相関係数Cc(n)が最も大きい第2プレーヤは、第2プレーヤAであり、第4モードにおいて、平均相関係数Cc(n)が最も大きい第2プレーヤは、第2プレーヤCである。このように、平均相関係数(類似度)Cc(n)が高い第2プレーヤ(第2スイング)が、モード毎に異なる場合がある。このため、複数の第2スイング(第2プレーヤA~Cによる第2スイング)から、第1プレーヤP1による第1スイングに近い第2スイングを一意に特定することは困難となる。
【0097】
本実施形態では、第1協調動作データの空間基底が、類似度に寄与する度合いを示す寄与率が取得されてもよい。そして、類似度を寄与率で重み付けた加重類似度が取得されてもよい。
【0098】
本実施形態において、寄与率は、図2に示した比較部19cに含まれる寄与率取得部22が演算部15によって実行されることで取得される。この寄与率取得部22は、複数のモード毎に、第1協調動作データの空間基底が、類似度に寄与する度合いを示す寄与率を取得するためのプログラムである。寄与率P(n)は、下記の式(11)で取得される。
【0099】
【数11】
【0100】
上述したように、特異値Γ(n)は、[Ra]に対する第nモード(第n番目)の寄与の割合(貢献度)を表している。このような第nモードの特異値Γ(n)を二乗した値が、全てのモードの二乗した値の合計値で除算されて、さらに100が乗じられることで、全てのモード(本例では、第1モード~第78モード)に対する各モードの寄与率(%)が取得される。図6は、第1協調動作データの空間基底が、類似度に寄与する度合いを示す寄与率を示す図である。図6は、全てのモード(第1モード~第78モード)のうち、第1モード~第5モードの寄与率P(n)が代表して示されている。
【0101】
本実施形態において、加重類似度は、図2に示した比較部19cに含まれる加重類似度取得部23が、演算部15によって実行されることで取得される。この加重類似度取得部23は、複数のモード毎に、類似度を寄与率で重み付けた加重類似度を計算して、全てのモードの加重類似度を足し合わせた合計加重類似度を取得するためのプログラムである。合計加重類似度SCOREは、下記の式(12)で取得される。
【0102】
【数12】
【0103】
上記の式(12)では、複数のモード毎に、図5に示した平均相関係数Cc(n)と、図6に示した寄与率P(n)とが乗じられる。これにより、複数のモード毎に、類似度(平均相関係数Cc(n))を、寄与率P(n)で重み付けた加重類似度Cc(n)・寄与率P(n)が計算される。そして、全てのモードの加重類似度Cc(n)・P(n)が足し合わせられることで、合計加重類似度SCOREが計算される。このような合計加重類似度SCOREは、複数の第2プレーヤ(本例では、第2プレーヤ2A~2C)ごとに、計算される。図7は、複数の第2プレーヤの合計加重類似度を示す図である。
【0104】
本実施形態では、合計加重類似度SCOREにより、図5に示した平均相関係数(類似度)Cc(n)が高い第2プレーヤ(第2スイング)が、モード毎に異なる場合でも、図6に示した各モードの寄与率P(n)を考慮して、複数の第2スイングから、第1スイングに近いゴルフスイング(第2スイング)の特定が可能となる。
【0105】
図6に示されるように、第1モード~第5モードにおいて、寄与率P(n)の合計(累積寄与率)は、99.70%である。したがって、これらの第1モード~第5モードの第1協調動作データの空間基底は、第2協調動作データの空間基底との類似度に対する寄与の大部分を占めている。このため、合計加重類似度SCOREは、例えば、第1モード~第5モードの加重類似度Cc(n)・P(n)が足し合わされて求められてもよい。複数のモードの類似度(本例では、図5に示した平均相関係数Cc(n))と、図7に示した合計加重類似度SCOREとは、第1協調動作データと複数の第2協調動作データのそれぞれとを比較した比較結果として、比較結果入力部18dに記憶される。
【0106】
[理想スイングを判定]
次に、本実施形態のスイング評価方法では、比較結果に基づいて、複数の第2スイングから、第1スイングに近いゴルフスイング(第1理想スイング)が判定される(工程S4)。
【0107】
本実施形態の工程S4では、先ず、図2に示した比較結果入力部18dに入力されている比較結果(本例では、図5に示した平均相関係数Cc(n)や、図7に示した合計加重類似度SCOREを含む)が、作業用メモリ17に読み込まれる。さらに、プログラム部19に含まれる判定部19dが、作業用メモリ17に読み込まれる。判定部19dは、比較結果に基づいて、複数の第2スイングから、第1スイングに近いゴルフスイング(第1理想スイング)を判定するためのプログラムである。この判定部19dが、演算部15によって実行されることで、コンピュータ10を、第1理想スイングを判定する手段として機能させることができる。
【0108】
本実施形態の工程S4では、複数の第2協調動作データ(各第2プレーヤA~Cの第2協調動作データ)のうち、類似度(本例では、図5に示す平均相関係数Cc(n))が最も大きい第2協調動作データが、第1理想スイングとして判定される。本実施形態のように、第nモード毎に類似度が求められている場合には、複数の第2協調動作データのうち、類似度が最も大きいモードの合計個数が相対的に多い第2協調動作データが、第1理想スイングとして判定されてもよい。
【0109】
図7に示されるように、本実施形態のように、合計加重類似度SCOREが計算されている場合には、複数の第2協調動作データのうち、合計加重類似度SCOREが最も大きい第2協調動作データ(本例では、第2プレーヤCの第2協調動作データ)が、第1理想スイングとして判定されるのが好ましい。このように、合計加重類似度SCOREが用いられることで、図5に示されるように平均相関係数(類似度)Cc(n)が高い第2プレーヤ(第2スイング)がモード毎に異なる場合でも、上述の寄与率P(n)を考慮して、複数の第2スイングから、第1理想スイングが判定されうる。第1理想スイングは、図2に示した理想スイング入力部18eに記憶される。
【0110】
[判定されたゴルフスイングを表示装置に出力]
次に、本実施形態のスイング評価方法では、第1スイングに近いと判定されたゴルフスイング(第1理想スイング)が表示装置12(図1に示す)に出力される(工程S5)。本実施形態の工程S5では、先ず、図2に示した理想スイング入力部18eに入力されている第1理想スイングが、作業用メモリ17に読み込まれる。さらに、プログラム部19に含まれる出力部19eが、作業用メモリ17に読み込まれる。出力部19eは、第1理想スイングを表示装置12に出力するためのプログラムである。この出力部19eが、演算部15によって実行されることで、コンピュータ10を、第1理想スイングを出力する手段として機能させることができる。
【0111】
図8は、表示装置12に表示された第1理想スイング31の一例を示す図である。本実施形では、第1スイングに近いと判定された第2スイング(第1理想スイング)について、第2プレーヤP2の身体各部位25やゴルフクラブ3のクラブ各部位26の位置データから設定される第2モデル(スティックピクチャー)M2が出力される。このような第2モデルM2により、第1理想スイング31が出力される。また、第2モデルM2に代えて、又は、第2モデルM2とともに、第1スイングに近いと判定された第2スイングの動画データ(図示省略)が、第1理想スイング31として出力されてもよい。
【0112】
このように、本実施形態のスイング評価方法では、複数の第2スイングから、第1プレーヤP1のスイングに近いゴルフスイング33(第1理想スイング31)が特定されうる。これにより、第1プレーヤP1は、模範となる複数の第2スイングのうち、自らのスイングに近い(第1プレーヤP1と個性等が近い第2プレーヤによる第2スイング)第1理想スイング31を手本にして練習することができるため、十分な技量向上効果が得られうる。
【0113】
表示装置12には、第1スイングの第1モデル(スティックピクチャー)M1がさらに表示されてもよい。これにより、第1スイングと、第2スイング(第1理想スイング31)とを視覚的に比較して、第1スイングの評価や、第1スイングの改善点の特定が容易となる。
【0114】
表示装置12には、アドバイスデータ(評価データ)30がさらに表示されてもよい。アドバイスデータ30の作成には、先ず、身体各部位及びクラブ各部位のうち、第1協調動作データの空間ベクトルノルムの大きさと、第2協調動作データの空間ベクトルノルムの大きさとが相対的に乖離している部位が特定される。そして、この特定された部位の動きを大きくする(又は小さくする)アドバイスデータ30や、スイングのテンポに関するアドバイスデータ30等が作成される。このようなアドバイスデータ30が表示されることにより、第1スイングの評価や、第1スイングの改善点がより具体的に把握されうる。なお、アドバイスデータ30の作成は、このような態様に限定されない。
【0115】
本実施形態では、図3に示したスイング評価方法の処理手順に基づいて、第1理想スイング31等を見て学習した第1プレーヤP1(図1に示す)の第1スイングの新たな第1協調動作データが取得されてもよい。この新たな第1協調動作データが、複数の第2協調動作データとを比較した比較結果が取得されることで、学習による第1プレーヤP1の技量向上効果の確認が容易となる。
【0116】
[スイング評価装置(第2実施形態)]
これまでのスイング評価装置2(スイング評価方法)では、比較部19cによる比較結果に基づいて、複数の第2スイングから、第1スイングに近いゴルフスイング(第1理想スイング)が判定されたが、このような態様に限定されない。例えば、複数の第2スイングの中の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部と、複数の第2スイングの中の他の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部とを含む新たなゴルフスイングが算出されてもよい。
【0117】
図9は、本発明の他の実施形態のスイング評価装置2を示すブロック図である。この実施形態のスイング評価装置2では、プログラム部19に、図2に示した判定部19dに代えて、算出部19fが含まれる。算出部19fの機能の詳細は、後述される。
【0118】
[スイング評価方法(第2実施形態)]
図10は、本発明の他の実施形態のスイング評価方法の処理手順を示すフローチャートである。この実施形態では、スイング評価方法の各工程が、図1及び図9に示したスイング評価装置2(コンピュータ10)によって実行される。
【0119】
[比較結果を取得]
この実施形態のスイング評価方法では、比較結果を取得する工程S3において、これまでの実施形態と同様に、複数のモード毎に、類似度が取得される。この実施形態の類似度には、これまでの実施形態と同様に、相関係数(平均相関係数)が取得されるが、コサイン類似度(平均コサイン類似度)されてもよい。
【0120】
この実施形態では、これまでの実施形態と同様に、上記の式(8)で取得される相関係数Cts(n)が、上記の式(9)で平均処理されることで、第nモードの平均相関係数Cc(n)が求められる。これらの平均相関係数Cc(n)は、複数の第2プレーヤ(本例では、第2プレーヤA~C)ごとに求められる。
【0121】
図11は、第1プレーヤP1の第1協調動作データと、複数の第2プレーヤの第2協調動作データとの平均相関係数Cc(n)を、モード毎に示した図である。図11では、全てのモード(第1モード~第78モード)のうち、第1モード~第5モードの平均相関係数Cc(n)が代表して示されている。このような平均相関係数Cc(n)が求められることで、第1協調動作データと、複数の第2協調動作データ(複数の第2プレーヤの第2協調動作データ)とを、モード毎にそれぞれ比較することが可能となる。
【0122】
この実施形態の工程S3では、複数のモード毎に、複数の第2協調動作データのうち、類似度(本例では、平均相関係数Cc(n))が最も大きい第2協調動作データがそれぞれ特定される。図11では、特定された第2協調動作データ(第2プレーヤ)が色付けして示されている。
【0123】
図11に示されるように、第1モードにおいて、平均相関係数Cc(n)が最も大きい第2プレーヤは、全ての第2プレーヤA~Cである。この場合、第2プレーヤA~Cから選択される一人の第2プレーヤ(例えば、第2プレーヤA)の第2協調動作データが、第1モードの類似度が最も大きい第2協調動作データとして特定される。
【0124】
第2モードにおいて、平均相関係数Cc(n)が最も大きい第2プレーヤは、第2プレーヤA、Cである。この場合、第2プレーヤA、Cから選択される一人の第2プレーヤ(例えば、第2プレーヤA)の第2協調動作データが、第2モードの類似度が最も大きい第2協調動作データとして特定される。
【0125】
第3モードにおいて、平均相関係数Cc(n)が最も大きい第2プレーヤは、第2プレーヤAである。この場合、第2プレーヤAの第2協調動作データが、第3モードの類似度が最も大きい第2協調動作データとして特定される。
【0126】
第4モードにおいて、平均相関係数Cc(n)が最も大きい第2プレーヤは、第2プレーヤCである。この場合、第2プレーヤCの第2協調動作データが、第4モードの類似度が最も大きい第2協調動作データとして特定される。
【0127】
第5モードにおいて、平均相関係数Cc(n)が最も大きい第2プレーヤは、第2プレーヤBである。この場合、第2プレーヤBの第2協調動作データが、第5モードの類似度が最も大きい第2協調動作データとして特定される。
【0128】
この実施形態では、同様の手順に基づいて、図示しない残りのモード(第6モード~第78モード)のそれぞれについて、複数の第2協調動作データのうち、第1協調動作データとの類似度が最も大きい第2協調動作データがそれぞれ特定される。複数のモード毎に特定された第2協調動作データは、比較結果入力部18d(図9に示す)に記憶される。
【0129】
[新たなゴルフスイングを算出]
次に、この実施形態のスイング評価方法では、比較結果に基づいて、新たなゴルフスイングが算出される(工程S6)。この実施形態では、複数の第2スイングの中の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部と、複数の第2スイングの中の他の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部とを含めることで、新たなゴルフスイング(以下、「第2理想スイング」ということがある。)が算出される。
【0130】
本実施形態の工程S6では、先ず、図9に示した比較結果入力部18dに入力されている比較結果(本例では、複数のモード毎に特定された第2協調動作データ)が、作業用メモリ17に読み込まれる。さらに、プログラム部19に含まれる算出部19fが、作業用メモリ17に読み込まれる。算出部19fは、比較結果に基づいて、新たなゴルフスイングを算出するためのプログラムである。この算出部19fが、演算部15によって実行されることで、コンピュータ10を、新たなゴルフスイングを算出するための手段として機能させることができる。
【0131】
本実施形態の工程S6では、複数のモード毎に、特定された第2協調動作データの空間基底が組み合わされる。空間基底の組み合わせには、例えば、下記の式(13)が用いられる。
【0132】
【数13】
【0133】
上記の式(13)の[R0]は、第1プレーヤP1の初期姿勢を示す行列である。上記の式(13)のU(n)及びΓ(n)は、上記の式(7)と同様に、第1プレーヤの第1協調動作データのうち、第nモードの左特異ベクトルU(n)及び特異値Γ(n)である。
【0134】
上記の式(13)のV2(n)には、上記の式(7)の第1プレーヤの第1協調動作データの右特異ベクトルV(n)に代えて、第nモードごとに特定された第2協調動作データの空間基底(右特異ベクトル)V2(n)がそれぞれ代入される。この実施形態では、第1~第3モードにおいて、類似度が最も大きい第2プレーヤAの第2協調動作データの空間基底がそれぞれ代入される。第4モードにおいて、類似度が最も大きい第2プレーヤCの第2協調動作データの空間基底が代入され、第5モードにおいて、類似度が最も大きい第2プレーヤBの第2協調動作データの空間基底が代入される。残りのモード(第6モード~第78モード)についても同様に、特定された第2協調動作データの空間基底が代入される。これにより、複数のモード毎に、特定された第2協調動作データの空間基底を組み合わせた新たな協調動作データが取得されうる。
【0135】
上記の式(13)では、特定された第2協調動作データの空間基底(右特異ベクトルV2(n))を除き、上記の式(7)の第1プレーヤP1の初期姿勢を示す行列[R0]、左特異ベクトルU(n)及び特異値Γ(n)を用いて、新たな協調動作データ(観測ベクトル[Ra]')が取得されている。このような観測ベクトル[Ra]'により、第1スイングに類似する第2スイングの動きに基づいて、第1スイングが修正された新たなゴルフスイングが算出されうる。この新たなゴルフスイングは、第1スイングに近い第2理想スイングとして、理想スイング入力部18e(図9に示す)に記憶される。
【0136】
[新たなゴルフスイングを表示装置に出力]
次に、この実施形態のスイング評価方法では、新たなゴルフスイング(第2理想スイング)が表示装置12(図1に示す)に出力される(工程S7)。本実施形態の工程S7では、先ず、図9に示した理想スイング入力部18eに入力されている第2理想スイングが、作業用メモリ17に読み込まれる。さらに、プログラム部19に含まれる出力部19eが、作業用メモリ17に読み込まれる。出力部19eは、第2理想スイングを表示装置12に出力するためのプログラムである。この出力部19eが、演算部15によって実行されることで、コンピュータ10を、第2理想スイングを出力する手段として機能させることができる。
【0137】
図12は、表示装置12に表示された第2理想スイング32の一例を示す図である。この実施形態では、第2協調動作データの空間基底を複数のモード毎に組み合わせた新たな協調動作データ(第2理想スイング)に基づいて、身体各部位25やゴルフクラブ3のクラブ各部位26の位置データから設定される第3モデル(スティックピクチャー)M3が出力される。このような第3モデルM3により、第2理想スイング32が出力される。また、第3モデルM3に代えて、又は、第3モデルM3とともに、第2理想スイング32をCG(コンピュータ・グラフィックス)で再現した動画データ(図示省略)が、第2理想スイング32として出力されてもよい。
【0138】
このように、この実施形態のスイング評価方法では、これまでの実施形態と同様に、第1スイングに近いゴルフスイング33(第2理想スイング32)を手本にして、第1プレーヤP1が練習することができる。したがって、第1プレーヤP1の技量向上効果が得られうる。
【0139】
この実施形態では、これまでの実施形態とは異なり、複数のモード毎に、複数の第2協調動作データから、類似度が最も大きい第2協調動作データがそれぞれ特定され、これらの2協調動作データの空間基底を組み合わされた新たなゴルフスイング(第2理想スイング32)が算出されている。これにより、この実施形態では、これまでの第1理想スイング31に比べて、第1プレーヤP1のスイングにより近い理想的なスイング(第2理想スイング32)が特定されうる。したがって、第1プレーヤP1の技量向上効果がより得られうる。
【0140】
表示装置12には、第1スイングの第1モデル(スティックピクチャー)M1がさらに表示されてもよい。これにより、第1スイングと、第2理想スイング32とを視覚的に比較して、第1スイングの評価や、第1スイングの改善点の特定が容易となる。
【0141】
表示装置12には、図示しないアドバイスデータ(評価データ)がさらに表示されてもよい。これにより、第1スイングの評価や、第1スイングの改善点がより具体的に把握されうる。
【0142】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0143】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0144】
[本発明1]
ゴルフスイングを評価するためのスイング評価装置であって、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する取得部と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する抽出部と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データを記憶する協調動作データ入力部と、
前記第1協調動作データと、前記複数の第2協調動作データのそれぞれとを比較した比較結果を取得する比較部と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングから、前記第1スイングに近いゴルフスイングを判定する判定部と、
前記判定されたゴルフスイングを表示装置に出力する出力部とを含む、
スイング評価装置。
[本発明2]
前記複数の第2スイングは、模範となるゴルフスイングのグループである、本発明1に記載のスイング評価装置。
[本発明3]
前記第1動作値は、前記第1プレーヤの身体各部位の位置データを含む、本発明1又は2に記載のスイング評価装置。
[本発明4]
前記第1協調動作データは、前記第1動作値を特異値分解することで得られる空間基底を含み、
前記複数の第2協調動作データは、前記複数の第2スイングをそれぞれ計測した第2動作値を、特異値分解することで得られる空間基底を含む、本発明1ないし3のいずれかに記載のスイング評価装置。
[本発明5]
前記比較部は、前記比較結果として、前記第1協調動作データの空間基底と、前記複数の第2協調動作データの空間基底のそれぞれとの類似度を取得する、本発明4に記載のスイング評価装置。
[本発明6]
前記類似度は、相関係数又はコサイン類似度を含む、本発明5に記載のスイング評価装置。
[本発明7]
前記判定部は、前記複数の第2協調動作データのうち、前記類似度が最も大きい第2協調動作データを、前記第1スイングに近いゴルフスイングとして判定する、本発明5又は6に記載のスイング評価装置。
[本発明8]
前記類似度は、前記第1協調動作データ及び前記複数の第2協調動作データに含まれる複数のモード毎に取得され、
前記比較部は、前記複数のモード毎に、前記第1協調動作データの前記空間基底が、前記類似度に寄与する度合いを示す寄与率を取得する寄与率取得部と、
前記複数のモード毎に、前記類似度を前記寄与率で重み付けた加重類似度を計算して、全てのモードの加重類似度を足し合わせた合計加重類似度を取得する加重類似度取得部とを含み、
前記判定部は、前記複数の第2協調動作データのうち、前記合計加重類似度が最も大きい第2協調動作データを、前記第1スイングに近いゴルフスイングとして判定する、本発明5ないし7のいずれかに記載のスイング評価装置。
[本発明9]
ゴルフスイングを評価するためのスイング評価装置であって、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する取得部と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する抽出部と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データを記憶する協調動作データ入力部と、
前記第1協調動作データと、前記複数の第2協調動作データのそれぞれとを比較した比較結果を取得する比較部と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングの中の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部と、前記複数の第2スイングの中の他の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部とを含む新たなゴルフスイングを算出する算出部と、
前記新たなゴルフスイングを表示装置に出力する出力部とを含む、
スイング評価装置。
[本発明10]
前記複数の第2スイングは、模範となるゴルフスイングのグループである、本発明9に記載のスイング評価装置。
[本発明11]
前記第1動作値は、前記第1プレーヤの身体各部位の位置データを含む、本発明9又は10に記載のスイング評価装置。
[本発明12]
前記第1協調動作データは、前記第1動作値を特異値分解することで得られる空間基底を含み、
前記複数の第2協調動作データは、前記複数の第2スイングをそれぞれ計測した第2動作値を、特異値分解することで得られる空間基底を含む、本発明9ないし11のいずれかに記載のスイング評価装置。
[本発明13]
前記比較部は、前記比較結果として、前記第1協調動作データの空間基底と、前記複数の第2協調動作データの空間基底のそれぞれとの類似度を取得する、本発明12に記載のスイング評価装置。
[本発明14]
前記類似度は、相関係数又はコサイン類似度を含む、本発明13に記載のスイング評価装置。
[本発明15]
前記類似度は、前記第1協調動作データ及び前記複数の第2協調動作データに含まれる複数のモード毎に取得され、
前記比較部は、前記複数のモード毎に、前記複数の第2協調動作データのうち、前記類似度が最も大きい第2協調動作データをそれぞれ特定し、
前記算出部は、前記複数のモード毎に、前記特定された第2協調動作データの空間基底を組み合わせて、前記新たな協調動作データを取得する、本発明13又は14に記載のスイング評価装置。
[本発明16]
ゴルフスイングを評価するための方法であって、
コンピュータが、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する工程と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する工程と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データと、前記第1協調動作データとを比較した比較結果を取得する工程と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングから、前記第1プレーヤに近いゴルフスイングを判定する工程と、
前記判定されたゴルフスイングを表示装置に出力する工程とを含む、
スイング評価方法。
[本発明17]
ゴルフスイングを評価するための方法であって、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する工程と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する工程と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データと、前記第1協調動作データとを比較した比較結果を取得する工程と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングの中の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部と、前記複数の第2スイングの中の他の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部とを含む新たなゴルフスイングを算出する工程と、
前記新たなゴルフスイングを表示装置に出力する工程とを含む、
スイング評価方法。
[本発明18]
ゴルフスイングを評価するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する手段と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する手段と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データと、前記第1協調動作データとを比較した比較結果を取得する手段と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングから、前記第1プレーヤに近いゴルフスイングを判定する手段と、
前記判定されたゴルフスイングを表示装置に出力する手段として機能させる、
コンピュータプログラム。
[本発明19]
ゴルフスイングを評価するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータを、
第1プレーヤのゴルフスイングである第1スイングを計測した第1動作値を取得する手段と、
前記第1動作値を特異値分解することにより、前記第1スイングの特徴的な挙動を示す第1協調動作データを抽出する手段と、
前記第1プレーヤとは異なる複数の第2プレーヤについて、それぞれのゴルフスイングである複数の第2スイングの特徴的な挙動を示す複数の第2協調動作データと、前記第1協調動作データとを比較した比較結果を取得する手段と、
前記比較結果に基づいて、前記複数の第2スイングの中の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部と、前記複数の第2スイングの中の他の一つの第2スイングの第2協調動作データの一部とを含む新たなゴルフスイングを算出する手段と、
前記新たなゴルフスイングを表示装置に出力する手段として機能させる、
コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0145】
12 表示装置
33 第1スイングに近いゴルフスイング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12