(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079221
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192036
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】松田 諒平
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉永 洋
(72)【発明者】
【氏名】杉山 龍平
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA31
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB38
2H033BC03
2H033BE00
2H033BE03
2H033CA07
2H033CA28
2H033CA30
2H033CA44
(57)【要約】
【課題】連続印刷時の定着部材の温度低下を抑制しつつ、ウォームアップ時の定着部材の昇温スピードの低下を抑制することができる定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置は、定着ニップ部材たる均熱部材を補助するニップ補助部材たる樹脂パッドを有している。また、反射部材たるリフレクタは、均熱部材の加圧部材たる加圧ローラの加圧力を受ける部分(ニップ部に対応する部分)に接触している。そして、熱源43の発熱領域の定着部材たる定着ベルトの幅方向の長さが、リフレクタの熱源43の熱を反射する反射部48aの幅方向の長さよりもd2mm短くなっている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する定着部材と、
前記定着部材の外周面に当接して形成されたニップ部を通過する記録材を加圧する加圧部材と、
前記加圧部材の加圧力を、前記定着部材を介して受ける定着ニップ部材と、
前記定着部材の内側に配置された熱源と、
前記熱源から放射される輻射熱を前記定着部材の内周面に向かって反射する反射部材とを備えた定着装置において、
前記定着ニップ部材を補助するニップ補助部材を有し、
前記反射部材は、前記定着ニップ部材の前記加圧部材の加圧力を受ける部分に接触しており、
前記熱源の発熱領域の前記記録材の幅方向長さを、前記反射部材の前記熱源の熱を反射する反射部の前記幅方向の長さよりも短くしたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
前記ニップ補助部材は、前記定着ニップ部材より断熱性が高い断熱部材であることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1に記載の定着装置において、
前記ニップ補助部材は、前記加圧部材の加圧力を、前記定着ニップ部材を介して受けることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1に記載の定着装置において、
前記反射部材の前記定着ニップ部材の前記加圧部材の加圧力を受ける部分に接触する接触部は、前記記録材の移動方向で、前記定着ニップ部材の前記加圧部材の加圧力を受ける部分の半分以上と接触していることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1に記載の定着装置において、
前記発熱領域の前記幅方向の端部は、前記反射部の前記幅方向の端部よりも内側に位置することを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1に記載の定着装置において、
通紙可能な記録材の最大規格サイズが、SRA3縦サイズであり、
前記反射部の前記幅方向の長さに対する前記発熱領域の前記幅方向の端部から前記反射部の前記幅方向の端部までの距離の割合が、0.86%以上、4.03%以下であることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項6に記載の定着装置において、
前記反射部材の前記定着ニップ部材の前記加圧部材の加圧力を受ける部分に接触する接触部の前記幅方向の長さが、前記反射部の前記幅方向の長さと同一のとき、
前記反射部の前記幅方向の長さに対する前記発熱領域の前記幅方向の端部から前記反射部の前記幅方向の端部までの距離の割合が、0.89%以上となっていることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項6に記載の定着装置において、
前記反射部材の前記定着ニップ部材の前記加圧部材の加圧力を受ける部分に接触する接触部の前記幅方向の長さが、前記反射部の前記幅方向の長さよりも短いときは、
前記反射部の前記幅方向の長さに対する前記発熱領域の前記幅方向の端部から前記反射部の前記幅方向の端部までの距離の割合が、3.91%未満となっていることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項1に記載の定着装置において、
通紙可能な記録材の最大規格サイズが、A4縦サイズであり、
前記反射部の前記幅方向の長さに対する前記発熱領域の前記幅方向の端部から前記反射部の前記幅方向の端部までの距離の割合が、2.61%以下であることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項9に記載の定着装置において、
前記反射部材の前記定着ニップ部材の前記加圧部材の加圧力を受ける部分に接触する接触部の前記幅方向の長さが、前記反射部の前記幅方向の長さと同一のとき、
前記反射部の前記幅方向の長さに対する前記発熱領域の前記幅方向の端部から前記反射部の前記幅方向の端部までの距離の割合が、0.11%以上であることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項9に記載の定着装置において、
前記反射部材の前記定着ニップ部材の前記加圧部材の加圧力を受ける部分に接触する接触部の前記幅方向の長さが、前記反射部の前記幅方向の長さよりも短いとき、
前記反射部の前記幅方向の長さに対する前記発熱領域の前記幅方向の端部から前記反射部の前記幅方向の端部までの距離の割合が、2.50%未満であることを特徴とする定着装置。
【請求項12】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
前記記録材に形成された画像を前記記録材に定着させる定着装置とを備えた画像形成装置において、
前記定着装置として、請求項1に記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転する定着部材と、定着部材の外周面に当接して形成されたニップ部を通過する記録材を加圧する加圧部材と、加圧部材の加圧力を、定着部材を介して受ける定着ニップ部材と、定着部材の内側に配置された熱源と、熱源から放射される輻射熱を定着部材の内周面に向かって反射する反射部材とを備えた定着装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記定着装置として、板状の定着ニップ部材たるニップ形成部材の記録材の搬送方向の両側に、ニップ形成部材を支持する一対のステーが設けられており、反射部材の一端をニップ形成部材とステーとで挟んで、反射部材を支持するものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、連続印刷時の定着部材の温度低下を抑制しつつ、ウォームアップ時の定着部材の昇温スピードの低下を抑制することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、回転する定着部材と、前記定着部材の外周面に当接して形成されたニップ部を通過する記録材を加圧する加圧部材と、前記加圧部材の加圧力を、前記定着部材を介して受ける定着ニップ部材と、前記定着部材の内側に配置された熱源と、前記熱源から放射される輻射熱を前記定着部材の内周面に向かって反射する反射部材とを備えた定着装置において、前記定着ニップ部材を補助するニップ補助部材を有し、前記反射部材は、定着ニップ部材の前記加圧部材の加圧力を受ける部分に接触しており、前記熱源の発熱領域の前記定着部材の幅方向長さを、前記反射部材の前記熱源の熱を反射する反射部の前記幅方向長さよりも短くしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、連続印刷時の定着部材の温度低下を抑制しつつ、ウォームアップ時の定着部材の昇温スピードの低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】リフレクタとニップ形成部材と定着ステーとを示す斜視図。
【
図7】ウォームアップ時の定着ベルトの温度変化を示したグラフ。
【
図8】本実施形態のリフレクタと熱源の発熱領域との関係を示す図。
【
図9】熱源の発熱領域をリフレクタの反射部の幅方向長さよりも短くした本実施形態のウォームアップ時の定着ベルトの温度変化を示したグラフ。
【
図10】熱源の発熱領域をリフレクタの反射部の幅方向長さよりも短くした場合のウォームアップ動作終了時の定着ベルトの温度分布。
【
図11】リフレクタの長さに対する発熱領域の端部からリフレクタの端部までの距離の割合と、ウォームアップ終了時の定着ベルトの温度分布との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、電子写真式の画像形成装置であるレーザープリンタ(以下、「プリンタ」という。)に適用した実施形態について説明する。
図1は本実施形態の画像形成装置1の概略構成図である。この画像形成装置1は、記録材である用紙P上に画像を形成する画像形成部100を備えている。画像形成部100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の色ごとの作像部10Y,10M,10C,10Kが中間転写体としての中間転写ベルト20の回転方向に沿って配列されたタンデム型の画像形成装置である。各作像部10Y,10M,10C,10Kは、それぞれ、潜像担持体としての感光体11Y,11M,11C,11Kを備えている。
【0009】
また、各作像部10Y,10M,10C,10Kは、感光体11Y,11M,11C,11Kの周囲に、帯電手段としての帯電装置と、静電潜像形成手段としての光書込装置9と、現像手段としての現像装置とを備えている。さらに、感光体11Y,11M,11C,11Kの周囲には、一次転写手段としての一次転写装置と、クリーニング手段としてのクリーニング装置も備えている。帯電装置は、感光体表面を一様に所定電位に帯電するものであり、光書込装置9は、帯電装置によって一様に帯電された感光体表面上に画像情報に応じて露光して静電潜像を書き込むものである。現像装置は、感光体上の静電潜像にそれぞれの色(Y、M、C、K)のトナーを付着させる現像処理によりトナー像を作成するものである。一次転写装置は、感光体上のトナー像を中間転写ベルト20上に転写するものであり、クリーニング装置は、感光体上の転写残トナーを除去してクリーニングするものである。
【0010】
各感光体11Y,11M,11C,11K上に形成された各色トナー像は、一次転写装置によって、中間転写ベルト20上に互いに重なり合うように一次転写され、中間転写ベルト20上にカラートナー像が形成される。中間転写ベルト20上のカラートナー像は、中間転写ベルト20の回転に伴って二次転写装置30との対向領域(二次転写領域)へと搬送される。
【0011】
一方、画像形成部100の下部には、保持する用紙Pを給送する給送部としての給紙カセット60が配置されている。給紙カセット60からピックアップローラ61により用紙Pが1枚ずつ給紙される。そして、搬送経路に沿って、レジストローラ対62により二次転写領域へと用紙Pが搬送される。
【0012】
中間転写ベルト20上のカラートナー像は、二次転写領域において、所定のタイミングでレジストローラ対62により搬送されてくる用紙P上に、二次転写装置30により二次転写される。カラートナー像が形成された用紙Pは、その後、定着手段としての定着装置40へと搬送され、熱と圧力の作用により、カラートナー像が用紙P上に定着される。定着後の用紙Pは、搬送経路に沿って搬送され、排紙ローラ63により排紙トレイ50へと排出される。
【0013】
図2は、本実施形態における定着装置40の概略構成図である。
定着装置40は、加圧部材たる加圧ローラ41と定着部材たる定着ベルト42と、熱源43(図の例ではハロゲンヒータ)とを備え、加熱加圧によって定着を行う。
定着ベルト42内には、ステー部材たる定着ステー44によって保持されたニップ形成部材45が配置されている。
【0014】
ニップ形成部材45は、ニップ面に配置される摺動部材であり熱移動部材である定着ニップ部材たる均熱部材45aと、これを支持する定着ニップ補助部材たる樹脂パッド45bとで構成されている。樹脂パッド45bの役割のひとつは、断熱であり、ニップ形成部材45を介した定着ステー44への定着ベルト42の熱吸収を抑制してウォームアップタイムやTEC(Typical Electricity Consumption(標準的な電力消費))値の増加を抑制する。また、樹脂パッド45bの別の役割としては、加圧ローラ41の加圧力を受けて、均熱部材45aの変形を抑制する。均熱部材45aは定着ベルト42の幅方向に延在する例えばパット形状である。この均熱部材45aは定着ベルトの軸方向の温度を平均化するために配置される。すなわち、定着ベルト42の温度が高い箇所から熱を奪い、奪った熱を定着ベルト42の温度の低い箇所へ移動させて定着ベルト42の軸方向の温度を均一化する。
【0015】
図2の構成ではニップ部Nの形状は平坦であるが、凹形状やその他の形状であってもよい。凹形状のニップを形成することで、用紙先端の排出方向がより加圧ローラ寄りになり、用紙の定着ベルト42に対する分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される。
【0016】
均熱部材45aは、熱伝導率が50[W/m・K]以上の熱伝導性の高いアルミや銅などの金属部材であり、均熱部材45aの表面に摺動性能に優れたコーティングが施されている。コーティングの材料としては、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、または飽和ポリエステル樹脂などの樹脂ベースのものが挙げられる。または、このような樹脂ベースのコーティング材に、ガラス繊維,カーボン,グラファイト,フッ化グラファイト,炭素繊維,二硫化モリブデン,フッ素樹脂など混合してもよい。
【0017】
また、コーティングの材料として、金属ベースのものも用いることができる。金属ベースのコーティング材としては、二硫化モリブデン,ニッケル,ニッケルとフッ素樹脂の複合めっきなどが挙げられる。また、金属ベースのコーティング材としては、アルマイトもしくはアルマイトに樹脂や金属を含浸したものも挙げられる。また、コーティング材としてセラミックを用いることもできる。コーティング材として用いるセラミックとしては、炭化ケイ素セラミック、室化ケイ素セラミック、アルミナセラミックおよびそれらと二硫化モリブデン、フッ素樹脂など混合したものを挙げることができる。
【0018】
また、アルミニウムもしくはアルミニウム合金にて形成された均熱部材45aの表層にアルマイト層を形成し、そのアルマイト層の微細孔に二次電解にて生成した二硫化モリブデンを微細孔の最深部から最表層に亘って充填したものなども有効である。
【0019】
本実施形態における高い熱伝導率を有する均熱部材45aは、アルミニウムの熱伝導率以上の熱伝導率を有する材料より作られ、上記のように処理される。こうして、高い熱伝導率を有する均熱部材45aが作られる。
【0020】
加圧ローラ41は金属ローラの外周にシリコーンゴム層が設けられており、離型性を得るためにシリコーンゴム層の表面に離型層(PFAまたはPTFE層)が設けてある。また、加圧ローラ41はスプリングなどにより定着ベルト側に押し付けられており、ゴム層が押しつぶされて変形することにより、所定のニップ幅を有している。
【0021】
加圧ローラ41は画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。定着ベルト42は、ニップ部で加圧ローラ41から駆動力が伝達されることにより連れ回り回転する。
【0022】
加圧ローラ41は中実のローラであってもよいが、中空のほうが熱容量は少ないため好ましい。また、加圧ローラ41にハロゲンヒータなどの加熱源を有していてもよい。シリコーンゴム層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルトの熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
【0023】
定着ベルト42は、ニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を基材とする無端ベルト(もしくはフィルム)である。定着ベルト42の表層はPFAまたはPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性をもたせている。
【0024】
定着ベルト42の基材と離型層の間にはシリコーンゴムの層などで形成する弾性層があってもよい。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押しつぶして定着するときにベルト表面の微妙な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の跡が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微妙な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0025】
定着ステー44は、中空のパイプ状金属体であり、アルミ、又は鉄、ステンレスなどの金属からなる。本実施形態では、定着ステー44は、角型であるが、その他の断面形状であってもよい。加圧ローラ41により圧力を受けるニップ形成部材45の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅が得られるようにしている。
【0026】
定着ベルト42を昇温させる熱源43は、定着ベルト42の内部に配置された2つのヒータで構成されている。本実施形態では熱源43の2つのヒータは、ハロゲンヒータであり、定着ベルト42は、内周側から熱源43の輻射熱で直接加熱される。ここで、熱源43は、定着ベルト42を加熱できればよく、IHコイルであっても良いし、抵抗発熱体、カーボンヒータ等であってもよい。
【0027】
また、定着ベルト42内には、熱源43からの輻射熱のロスをできるかぎり低減するために、定着ベルト側へ熱を反射させる反射部材としてのリフレクタ48が配置されている。リフレクタ48には金属部材としての高純度のアルミ材をベースとして高反射率、たとえば反射率95%以上を得られるようにした表層に複数の増反射膜や保護膜を形成した高輝度アルミなどが用いられる。また構成によってはアルミ板の上に銀を蒸着させて、さらに反射率を向上させたものなどを用いてもよい。
【0028】
本実施形態のリフレクタ48は、輻射熱を定着ベルト側へ熱を反射させる反射部48aと、均熱部材45aの加圧ローラ41の加圧力を受ける部分である加圧ローラ41の加圧方向に直交する面部に接触する接触部としての加圧受け部48bとを有している。反射部48aは、熱源43と定着ステー44との間に配置されている。加圧受け部48bは、摺動部材たる均熱部材45aと樹脂パッド45bとに挟まれる形で配設されている。加圧受け部48bは、ニップ部Nの一端から他端まで延びている。
【0029】
図3は、リフレクタ48とニップ形成部材45と、定着ステー44とを示す斜視図である。
図3に示すように、リフレクタ48は、加圧受け部48bが均熱部材45aと樹脂パッド45bとに挟まれることで保持され、この加圧受け部48b以外は、他の部材と非接触となっている。
【0030】
図4は、従来の定着装置の概略構成図である。
図4に示すように、従来においては、リフレクタ148は、加圧受け部48bを有していない構成であった。
リフレクタ148の反射率は、約95~98%であり、熱源143の輻射熱を100%反射できるわけでなく、リフレクタ自身もわずかに輻射熱を吸収するため、次第に温度上昇していく。特に、大量の連続通紙を行った場合などは、
図4に示す従来の定着装置においては、300℃~400℃程度までリフレクタ148が温度上昇していた。リフレクタ148にある一定以上の熱負荷が加えられるとリフレクタ148のアルミや銀層が変色を起こしてしまう。そうなると反射率が低下して本来の性能を出せないだけでなく、最悪の場合は安全性問題に発展する。よって従来はその温度域まで到達しないような生産性までしか出すことはできず、マシンの生産性向上に対してはボトルネックとなっていた。
【0031】
これに対し、本実施形態では、
図2、
図3を用いて説明したように、リフレクタ48は、均熱部材45aと樹脂パッド45bとの間で、加圧ローラ41からの加圧力を受ける領域に延在された加圧受け部48bを有している。リフレクタ48は、上述したように熱伝導性の良い金属部材としてのアルミで構成されているため、反射部48aで吸収された熱は、すばやく部品全体に伝導する。そして、均熱部材45aと接触している加圧受け部48bから、均熱部材45aへリフレクタ48の熱が移動し、リフレクタ48の温度上昇を抑制することができる。また、この均熱部材45aへ移動したリフレクタ48の熱は、均熱部材45aを通して定着ベルト42に伝わり、トナー溶融に利用される。これにより、リフレクタ48の熱を定着ステー44などの他の部材へ排熱する場合に比べて、リフレクタ48の熱を有効利用でき、熱源43の点灯時間の短縮化を図ることができ、消費電力の低減を図ることができる。
【0032】
また、加圧受け部48bは、均熱部材45aの加圧ローラ41の加圧力を受ける部分に当接している。これにより、均熱部材45aと加圧受け部48bとの密着性が上がり、熱の伝達性を向上させることができ、リフレクタ48の排熱効率を高めることができる。さらに、均熱部材45aおよびリフレクタ48は、熱伝導性が良好な金属部材であるため、リフレクタ48の熱を効率よく、定着ベルト42に排熱することができる。
【0033】
また、加圧受け部48bは、ニップ部の用紙搬送方向一端から他端まで延びており、用紙搬送方向において、均熱部材45aの加圧ローラ41の加圧力受ける部分(ニップ部に対応する領域)と半分以上、当接している。これにより、加圧受け部48bの均熱部材45aに密着する密着面積を十分に確保することができ、リフレクタ48の排熱効率をより一層高めることができる。
【0034】
また、
図2、
図3に示すように、リフレクタ48は、均熱部材45aの曲げ部分、および、定着ステー44とは、クリアランスを設けて、非接触となっている。これによって、熱の有効利用の観点では不要となる、リフレクタ48から均熱部材45aの曲げ部分や定着ステーへの熱伝達を防止することができる。
【0035】
以上の構成により、リフレクタ48の温度上昇を防止し、かつ、リフレクタ48の熱を有効利用でき、電力消費も抑えることができる定着装置を得ることができる。
【0036】
また、均熱部材45aは、上述したように摺動性能に優れたコーティングを施しており、加圧受け部48b表面の定着ベルト42の内周面に対する摩擦係数より、定着ベルト42の内周面に対する摩擦係数が低くなるようにしている。これにより、リフレクタ48の加圧受け部48bを定着ベルト42の内周面に接触させてリフレクタ48の熱を、均熱部材45aを介さずに定着ベルト42に排熱する場合に比べて、定着ベルトの摺動抵抗を低減できる。これにより、定着ベルト42を回転させるためのトルクの上昇を抑制することができ、かつ、定着ベルト42の内周面の摩耗も抑制できる。
【0037】
なお、リフレクタ48の加圧受け部48bに摺動性能に優れたコーティングを施して、加圧受け部48bを定着ベルト42の内周面に接触させるようにした場合は、以下の不具合が予測される。すなわち、上記摺動性能に優れたコーティング材が、リフレクタ48の反射部48aに付着すると、反射率が低下するおそれがある。そのため、例えば、反射部48aにマスキング等を施すなどして、反射部48aに摺動性能に優れたコーティング材が付着しないようにする必要がある。反射部48aにマスキングを施す場合は、マスキングを施す工程、マスキングを剥がす工程、反射部48aに付着したマスキングの粘着剤を除去する工程等が必要となる。また、これらの工程を機械等で行うには、難易度が高く、できたとしても高コストになるという不具合が予想される。
【0038】
一方、本実施形態のように、リフレクタ48の熱を、均熱部材45aを介して、定着ベルト42に伝達することで、リフレクタ48に定着ベルト42の内周面に対する良好な摺動性を有する機能を備える必要が無くなる。これにより、加圧受け部48bに摺動性能に優れたコーティングを施す必要がなり、製作難度およびコストの増加を抑制できる。
【0039】
図5(a)は、樹脂パッド45bを示す概略斜視図であり、
図5(b)は、ニップ形成部材45の概略図である。
樹脂パッド45bの均熱部材45aに対向する部分には、矩形状の凹部145が形成されている。これにより、
図5(b)に示すように、均熱部材45aと樹脂パッド45bとの間に断熱の大きい空気層Kが形成され、ニップ形成部材45を介した定着ステー44への定着ベルト42の熱吸収を良好に抑制することができる。これにより、ウォームアップタイムやTEC値の増加を良好に抑制することができる。なお、樹脂パッド45bは、
図5に示す構成に限らず、例えば、
図6に示すように、用紙搬送方向の中央に用紙幅方向(樹脂パッドの長手方向)に延びる区画壁を設けて、複数の凹部145を有するような構成でもよい。
図6に示す構成とすることで、
図5に示す構成に比べて、加圧ローラ41の加圧力に対する耐圧性を高めることができる。また、
図6に示す構成に対して、さらに用紙搬送方向(樹脂パッドの短手方向)に延びる区画壁を設けて、凹部145の数をさらに増やした構成でもよい。
【0040】
図7は、ウォームアップ時の定着ベルト42の温度変化を示したグラフである。
破線が、
図4に示したリフレクタ48に加圧受け部48bを有していない従来例の定着ベルト42の温度変化を示しており、実線がリフレクタ48に加圧受け部48bを設けた定着ベルト42の温度変化を示している。
【0041】
図7からわかるように、リフレクタ48に加圧受け部48bを有する構成では、加圧受け部48bを有していない構成に比べて、ウォームアップ時の定着ベルト42の昇温スピードが遅いことがわかる。これは、画像形成装置が電源OFFからONにして装置を立ち上げるときに行われるウォームアップ動作時は、リフレクタ48の温度が低い状態である。そのため、リフレクタ48に加圧受け部48bを有する構成においては、定着ベルト42および均熱部材45aの熱がリフレクタ48に奪われてしまう。その結果、リフレクタ48に加圧受け部48bを設けていない構成に比べて、ウォームアップ時の定着ベルト42の昇温スピードが低下したと考えられる。
【0042】
このような昇温スピードの低下の課題を解決するために出力高い熱源43(定格電力の高いヒータ)を用い、熱源43に印加する電力を上げることが考えられる。しかしながら、画像形成装置全体で使用可能電力が決まっており、熱源43の出力上げには制限がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、
図8に示すように、熱源43の発熱領域をリフレクタ48の反射部48aの幅方向長さよりも短くした。本実施形態では、熱源43の発熱領域の幅方向最端部を反射部48aの幅方向最端部位置に対して幅方向でd(mm)中央側に位置させ、反射部48aの幅方向長さに対して、2d(mm)短くした。
【0044】
かかる構成とすることで、熱源43のワット密度を高めることができる。ワット密度を高めることで、熱源43に印加する電力の上昇を抑えて、単位面積当たりの発熱量を増やすことができる。なお、熱源43の発熱領域は、熱源43を構成する2つのヒータを合わせた発熱領域である。
【0045】
図9は、熱源43の発熱領域をリフレクタ48の反射部48aの幅方向長さよりも短くした本実施形態のウォームアップ時の定着ベルト42の温度変化を示したグラフである。
本実施形態では、熱源43の発熱領域をリフレクタ48の反射部48aの幅方向長さよりも短くし、熱源43の単位面積当たりの発熱量を増やしている。また、熱源43の発熱領域をリフレクタ48の反射部48aの幅方向長さよりも短くすることで、定着ベルト以外の部材に熱源43の輻射熱や、反射部48aを反射した輻射熱が照射されるのを抑制することができ、熱源43の熱エネルギーの無駄な消費が低減される。これにより、効率的に定着ベルト42を加熱することができ、
図9に示すように、ウォームアップ時の定着ベルト42の昇温スピードをリフレクタ48に加圧受け部48bを設けていない
図4に示す従来構成とほぼ同一にすることができた。
【0046】
図10は、熱源43の発熱領域をリフレクタ48の反射部48aの幅方向長さよりも短くし場合のウォームアップ動作終了時の定着ベルトの温度分布である。
図10の破線は、
図4に示したリフレクタ48に加圧受け部48bを有していない従来例の定着ベルト42の温度分布であり、実線が、本実施形態の定着ベルト42の温度分布である。
【0047】
図中Aは、本装置が通紙可能な最大サイズ幅(SRA3縦サイズ(320mm))の紙端部位置である。また、図中Bは、定着ベルト42の端部位置であり、定着ベルト42の幅方向長さは、350mmである。リフレクタ48の反射部48aの幅方向長さは、定着ベルト42の幅方向長さと同一の350mmである。熱源43の発熱領域の幅方向長さは、333mmである。
【0048】
熱源43の発熱領域をリフレクタ48の反射部48aの幅方向長さよりも短くすることで、定着ベルト42の端部に直接、または、反射部48aの反射により付与される熱源43の熱量が低下する。よって、熱源43の発熱領域をリフレクタ48の反射部48aの幅方向長さよりも短くし、熱源43の熱エネルギーの無駄な消費を抑制して熱源43の定着ベルト42に対する加熱効率を高めた構成とした場合に、加圧受け部48bを有さない従来構成においては、
図10の破線に示すように、端部温度ダレが発生する。これは、熱源43の発熱領域を短くすることで、熱源43から定着ベルトの端部に直接照射される輻射熱や、リフレクタ48から定着ベルト42の端部に照射される輻射熱が減る。その結果、ウォームアップ終了時点で、定着ベルト42の端部温度が中央よりも低い端部温度ダレが発生する。
【0049】
一方、本実施形態では、リフレクタ48に加圧受け部48bを有しており、均熱部材45aを介してリフレクタ48の熱を定着ベルト42の端部付近に付与できる。ウォームアップ初期時は、リフレクタ48の温度が定着ベルト42の温度よりも低いため、均熱部材45aを介してリフレクタ48が定着ベルト42の熱を奪うが、ウォームアップ動作が進むと、リフレクタ48の温度が、定着ベルト42の端部温度を上回る。リフレクタ48の温度が、定着ベルト42の端部温度を上回ると、リフレクタ48の熱が均熱部材45aを介して定着ベルト42の端部に付与される。これにより、熱源43の発熱領域をリフレクタ48の反射部48aの幅方向長さよりも短くして定着ベルト42の端部に直接、または、反射部48aの反射により付与される熱源43の熱量が低下しても、
図10の実線に示すように、ウォームアップ終了時点での端部温度ダレを良好に抑制できる。このように、本実施形態では、熱源43の発熱領域をリフレクタ48よりも短くし、熱源43の熱エネルギーの無駄な消費を抑え、加熱効率を高めても端部温度ダレを抑制できる。これにより、ウォームアップ時の昇温スピードの低下を抑制し、かつ、ウォームアップ終了時点での端部温度ダレを良好に抑制できる。
【0050】
次に、発明者らが行った検証試験について、説明する。
本発明者らは、上記距離dを互いに異ならせて、ウォームアップ動作を行い、ウォームアップ動作終了時の定着ベルト42の幅方向の温度分布を測定し、最適な上記距離dを調べた。具体的には、発熱領域が互いに異なる複数の熱源43を用意し、定着ベルト42、リフレクタ48の反射部48aの幅方向長さが350mm、加圧受け部48bの幅方向長さが340mmの定着装置40に熱源43をセットする。そして、常温常湿(23°、50%)の環境下で、熱源43に印加する電力を規定電力とし、ウォームアップ動作を行った。そして、ウォームアップ動作終了後の定着ベルト42の幅方向の温度分布を調べた。ウォームアップ動作は、
図11に示すように、定着ベルト42の幅方向中央に対向配置した温度センサ121と、この温度センサ121から幅方向に120mm離れた温度センサ122とで定着ベルト42の温度を計測する。そして、これら温度センサが規定温度に達したら、ウォームアップ動作終了とした。
【0051】
図11は、調べた結果を示すグラフである。なお、
図11に示すファーストプリントに影響しない端部温度ダレ温度とは、ウォームアップ直後に通紙可能な最大サイズ幅でプリントが行われた場合でも、用紙の幅方向端部の画像にコールドオフセットが生じず、良好にプリントが行われる温度のことである(以下、通紙初期の端部目標温度という)。
【0052】
図11の線分Aに示すように、反射部48aの幅方向長さに対する上記距離dの割合が0.86%未満のものは、通紙可能な最大サイズ幅(SRA3縦サイズ)の紙端部位置の定着ベルト42の温度が、上記通紙初期の端部目標温度を下回った。これは、定着ベルト以外の部材に熱源43の熱が照射され、熱源43の熱エネルギーの無駄な消費があり、加熱効率が不十分である。その結果、リフレクタ48の温度が定着ベルト42の端部より高くなった後に、リフレクタ48から定着ベルト42の端部へ移動する熱量が不十分であり、ウォームアップ終了時の紙端部位置の定着ベルト42の温度が、上記通紙初期の端部目標温度を下回ったと考えらえる。
【0053】
また、線分Cに示すように、リフレクタ48の反射部48aの幅方向長さに対する上記距離dの割合が、4.03%を越えたものも、ウォームアップ終了時の紙端部位置の定着ベルト42の温度が、上記通紙初期の端部目標温度を下回った。これは、発熱領域が短く、加熱効率は高いが、熱源43の輻射熱およびリフレクタ48に反射した熱源43の輻射熱が、定着ベルト42の端部に十分に届かなかったと考えられる。その結果、ウォームアップ終了時の紙端部位置の定着ベルト42の温度が、上記通紙初期の端部目標温度を下回ったと考えらえる。
【0054】
一方、リフレクタ48の反射部48aの幅方向長さに対する上記距離dの割合が、0.86%~4.03%のものは、ウォームアップ終了時の紙端部位置の定着ベルト42の温度を、上記通紙初期の端部目標温度以上にできた。よって、ウォームアップ直後に通紙可能な最大サイズ幅でプリントが行われた場合でも、用紙の幅方向端部の画像にコールドオフセットが生じず、良好にプリントが行うことができる。
【0055】
また、通紙可能な最大サイズ幅がA4縦サイズ(210mm)の所謂A4機についても、同様な実験を行い、リフレクタ48の反射部48aの幅方向長さに対する上記距離dの割合を調べた。下記表1は、A3機と、A4機のリフレクタ48の反射部48aの幅方向長さに対する上記距離dの割合の最適値をまとめたものである。
【0056】
【0057】
表1に示すように、A4機においては、リフレクタ48の反射部48aの幅方向長さに対する上記距離dの割合を、0%~2.61%に設定することで、ウォームアップ終了時の通紙可能な最大サイズ幅の紙端部位置の定着ベルト42の温度を、上記通紙初期の端部目標温度以上にできた。これにより、ウォームアップ直後に通紙可能な最大サイズ幅でプリントが行われた場合でも、用紙の幅方向端部の画像にコールドオフセットが生じず、良好にプリントが行うことができる。
【0058】
次に、リフレクタ48の加圧受け部48bの幅方向長さd2と、上記距離dとの関係を調べた検証試験について説明する。
加圧受け部48bの長さd2が、330mm,340mm,350mmとした3つのリフレクタ48それぞれについて、ウォームアップ動作終了時の定着ベルト42の幅方向の温度分布に基づいて、最適な上記距離dを調べた。その結果を、表2、表3に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
上記表2に示すように、A3機においては、加圧受け部48bの幅方向長さd2を反射部48aの幅方向長さと同一の350mmとしたものは、リフレクタ48の反射部48aの幅方向長さに対する上記距離dの割合を、0.89%以上にしないと、ウォームアップ動作終了時の定着ベルト42の最大サイズ幅の紙端部位置の温度が上記通紙初期の端部目標温度を下回ってしまう。これは、加圧受け部48bの幅方向長さd2が長いほど、リフレクタ48の温度上昇に必要な熱量が、d2が短い場合に比べて増えてしまう。その結果、d2が350mmの場合は、上記距離dの割合を、0.89%以上にして加熱効率を330mm、340mmよりも高めないと、リフレクタ48の温度が定着ベルト42の端部の温度を上回るまで時間がかかる。その結果、ウォームアップ動作中において、定着ベルト42の端部温度上昇に利用されるリフレクタ48の熱が不十分となり、ウォームアップ動作終了時の定着ベルトの最大サイズ幅の紙端部位置の温度が、上記通紙初期の端部目標温度を下回ったと考えられる。
【0062】
一方、加圧受け部48bの幅方向長さd2が330mmのときは、リフレクタ48の反射部48aの幅方向長さに対する上記距離dの割合が、0.83%以上で、ウォームアップ動作終了時の定着ベルトの最大サイズ幅の紙端部位置の温度を、上記通紙初期の端部目標温度以上にできた。これは、加圧受け部48bの幅方向長さd2が短いため、リフレクタ48の温度上昇に必要な熱量が減少し、リフレクタ48の反射部48aの幅方向長さに対する上記距離dが、0.83%でも、すばやく、リフレクタ48の温度を定着ベルト42の端部温度よりも高くできる。これにより、ウォームアップ動作中において、定着ベルト42の端部に、リフレクタ48の熱を十分に与えることができ、ウォームアップ動作終了時の定着ベルト42の最大サイズ幅の紙端部位置の温度を上記通紙初期の端部目標温度以上にできたと考えられる。
【0063】
A4機についても、加圧受け部48bの幅方向長さd2を反射部48aの幅方向長さと同一の240mmとしたものは、リフレクタ48の反射部48aの幅方向長さに対する上記距離dの割合を、0.11%以上にしないと、ウォームアップ動作終了時の定着ベルトの最大サイズ幅の紙端部位置の温度が上記通紙初期の端部目標温度を下回ってしまう。
【0064】
表3からわかるように、加圧受け部48bの長さd2が長い方が、上記距離dの割合の上限値を大きくできる。これは、ウォームアップ動作時に、リフレクタ48の温度が定着ベルト42の端部温度を超えたときに、リフレクタ48の熱を均熱部材45aを介して良好に、定着ベルト42の端部に付与することができる。これにより、上記距離dの割合が大きく、定着ベルト42の端部に直接照射される熱源43の輻射熱や、リフレクタ48から端部に照射される輻射熱が少なくても、定着ベルト42の端部の温度低下が抑制され、ウォームアップ動作終了時の定着ベルト42の最大サイズ幅の紙端部位置の温度を上記通紙初期の端部目標温度にできたと考えられる。
【0065】
A4機も同様に、加圧受け部48bの長さd2を、反射部48aの幅方向長さ(240mm)と同一にすることで、上記距離dの割合の上限値を大きくできた。
【0066】
以上、表2、表3から、加圧受け部48bの幅方向長さによって、ウォームアップ動作終了時の定着ベルトの最大サイズ幅の紙端部位置の温度を上記通紙初期の端部目標温度にできる最適なdの割合が異なることがわかった。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0068】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
回転する定着ベルト42などの定着部材と、定着部材の外周面に当接して形成されたニップ部を通過する記録材を加圧する加圧ローラ41などの加圧部材と、加圧部材の加圧力を、定着部材を介して受ける均熱部材45aたる定着ニップ部材と、定着部材の内側に配置された熱源43と、熱源43から放射される輻射熱を定着部材の内周面に向かって反射するリフレクタ48などの反射部材とを備えた定着装置40において、定着ニップ部材を補助する樹脂パッド45bなどのニップ補助部材を有し、反射部材は、定着ニップ部材の加圧部材の加圧力を受ける部分(ニップ部に対応する部分)に接触しており、熱源43の発熱領域の前記記録材の幅方向長さが、反射部材の熱源の熱を反射する反射部48aの幅方向長さ以下である。
特許文献1では、記録材の搬送方向両側しかステーで支持されていないため、加圧部材の加圧力で、ニップ形成部材の記録材の搬送方向の中央側が撓むおそれがあった。また、ニップ形成部材の熱や反射部材の熱がステーに移動してしまい、ウォームアップ時の定着部材の昇温スピードが遅くなってしまうおそれがある。
態様1では、ニップ補助部材を設けているので、定着ニップ部材にかかる加圧部材の加圧力をニップ補助部材で受けることができる。これにより、特許文献1に比べて、定着ニップ部材の変形を抑制することができる。さらに、ニップ補助部材を定着ニップ部材よりも断熱性の高い材料で構成すれば、定着ニップ部材からステーへの熱移動を抑制することができ、ウォームアップ時の定着部材の昇温スピードの低下を抑制することができる。
また、態様1では、反射部材を、定着ニップ部材の加圧部材の加圧力を受ける部分に接触させることで、加圧部材の加圧力により反射部材を定着ニップ部材に密着させることができる。これにより、反射部材が高温の場合に反射部材の熱を定着ニップ部材へ良好に移動させることができる。よって、連続印刷時に反射部材が高温となったときにその反射部材の熱を、定着ニップ部材を介して良好に定着ベルトに移動させることができる。これにより、連続印刷時の定着部材の温度低下を抑制することができ、定着部材の温度を規定温度に維持するための熱源の点灯時間の短縮化を図ることができ、省エネルギー化を図ることができる。
しかしながら、定着ニップ部材の加圧部材の加圧力を受ける部分に反射部材を接触させて、連続印刷時の定着部材の温度低下を抑制することで、以下の課題が発生した。すなわち、ウォームアップ動作時は、反射部材の温度が低く、定着部材および定着ニップ部材の熱が反射部材に移動し、反射部材が定着ニップ部材に接触していない構成に比べて、ウォームアップ動作時の定着部材の昇温速度が遅くなってしまうという課題である。
上記課題に対して、定格電力の高く、高出力の熱源を用いることが考えられるが、画像形成装置全体で使用可能電力が予め決まっており、熱源の出力アップには限度がある。
そこで、態様1では、熱源の発熱領域の定着部材の幅方向長さを、反射部材の前記熱源の熱を反射する反射部の幅方向長さよりも短くした。これにより、発熱領域が、反射部材の幅方向長さ以上にしたものに比べて、熱源の単位表面積あたりの電気容量であるワット密度を高めることができる。また、定着部材や反射部以外のステーなどの部材に照射され、定着部材の加熱に用いられない無駄なエネルギーを低減することができる。これにより、熱源の定着部材の加熱効率を高めることができ、ウォームアップ時の定着部材の昇温スピードの低下を抑制することができる。
【0069】
(態様2)
態様1において、樹脂パッド45bなどのニップ補助部材は、均熱部材45aなどの定着ニップ部材より断熱性が高い断熱部材である。
これによれば、実施形態で説明したように、定着ステー44への定着ベルト42のなどの定着部材の熱吸収を抑制でき、ウォームアップタイムやTEC(Typical Electricity Consumption(標準的な電力消費))値の増加を抑制することができる。
【0070】
(態様3)
態様1または2において、樹脂パッド45bなどのニップ補助部材は、加圧ローラ41などの加圧部材の加圧力を、均熱部材45aなどの定着ニップ部材を介して受ける。
これによれば、実施形態で説明したように、均熱部材45aたる定着ニップ部材の変形を抑制することができる。
【0071】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、リフレクタ48などの反射部材の均熱部材45aなどの定着ニップ部材の加圧ローラ41などの加圧部材の加圧力を受ける部分(ニップ部に対応する部分)に接触する加圧受け部48bなどの接触部は、用紙などの記録材の移動方向で、定着ニップ部材の加圧部材の加圧力を受ける部分の半分以上と接触している。
これによれば、実施形態で説明したように、加圧受け部48bたる接触部の均熱部材45aたる定着ニップ部材との接触面積を十分に確保することができり、リフレクタ48など反射部材の排熱効率を高めることができる。
【0072】
(態様5)
態様1乃至4いずれかにおいて、発熱領域の幅方向の端部は、反射部48aの幅方向端部よりも内側に位置する。
これによれば、熱源43の発熱領域の幅方向を短くしつつ、定着ベルト42などの定着部材の端部を良好に加熱することが可能となる。これにより、ワット密度を高めてウォームアップ時の定着部材の昇温スピードを高め、かつ、ウォームアップ終了時の端部温度ダレを抑制することができる。
【0073】
(態様6)
態様1乃至5いずれかにおいて、通紙可能な記録材の最大規格サイズが、SRA3縦サイズであり、反射部48aの幅方向長さに対する発熱領域の幅方向端部から反射部48aの幅方向端部までの距離の割合が、0.86%以上、4.03%以下である。
これによれば、表1を用いて説明したように、ウォームアップ時の定着部材の昇温スピードを高め、かつ、ウォームアップ終了時の端部温度ダレを抑制することができる。
【0074】
(態様7)
態様6において、リフレクタ48などの反射部材の均熱部材45aなどの定着ニップ部材の加圧ローラ41などの加圧部材の加圧力を受ける部分に接触する加圧受け部48bなどの接触部の幅方向の長さd2が、反射部48aの幅方向の長さと同一のとき、反射部48aの幅方向長さに対する発熱領域の幅方向端部から反射部48aの幅方向端部までの距離dの割合が、0.89%以上となっている。
これによれば、表2を用いて説明したように、ウォームアップ終了時の端部温度ダレを抑制することができる。
【0075】
(態様8)
態様6または7において、リフレクタ48などの反射部材の均熱部材45aなどの定着ニップ部材の加圧ローラ41などの加圧部材の加圧力を受ける部分に接触する加圧受け部48bなどの接触部の幅方向の長さd2が、反射部48aの幅方向の長さよりも短いときは、反射部48aの幅方向の長さに対する発熱領域の幅方向の端部から反射部48aの幅方向端部までの距離の割合が、3.91%未満となっている。
これによれば、表3を用いて説明したように、ウォームアップ終了時の端部温度ダレを抑制することができる。
【0076】
(態様9)
態様1乃至8いずれかにおいて、通紙可能な記録材の最大規格サイズが、SRA4縦サイズであり、反射部48aの幅方向の長さに対する発熱領域の幅方向端部から反射部48aの幅方向端部までの距離dの割合が、2.61%以下である。
これによれば、表1を用いて説明したように、ウォームアップ時の定着部材の昇温スピードを高め、かつ、ウォームアップ終了時の端部温度ダレを抑制することができる。
【0077】
(態様10)
態様9において、リフレクタ48などの反射部材の均熱部材45aなどの定着ニップ部材の加圧ローラ41などの加圧部材の加圧力を受ける部分に接触する加圧受け部48bなどの接触部の幅方向の長さd2が、反射部48aの幅方向の長さと同一のとき、反射部48aの幅方向の長さに対する発熱領域の幅方向端部から反射部48aの幅方向端部までの距離dの割合が、0.11%以上である。
これによれば、表2で説明したように、ウォームアップ終了時の端部温度ダレを抑制することができる。
【0078】
(態様11)
態様9または10において、リフレクタ48などの反射部材の均熱部材45aなどの定着ニップ部材の加圧ローラ41などの加圧部材の加圧力を受ける部分に接触する加圧受け部48bなどの接触部の幅方向の長さd2が、反射部48aの幅方向の長さよりも短いとき、反射部48aの幅方向の長さに対する発熱領域の幅方向端部から反射部48aの幅方向端部までの距離dの割合が、2.50%未満である。
これによれば、表3を用いて説明したように、ウォームアップ終了時の端部温度ダレを抑制することができる。
【0079】
(態様12)
用紙などの記録材に画像を形成する画像形成部と、記録材に形成された画像を記録材に定着させる定着装置とを備えた画像形成装置において、定着装置として、態様1乃至11いずれかの定着装置を用いた。
これによれば、消費電力を増加を抑制しつつ、良好な画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0080】
40 :定着装置
41 :加圧ローラ
42 :定着ベルト
43 :熱源
44 :定着ステー
45 :ニップ形成部材
45a :均熱部材(定着ニップ部材)
45b :樹脂パッド(ニップ補助部材)
48 :リフレクタ(反射部材)
48a :反射部
48b :加圧受け部(接触部)
100 :画像形成部
K :空気層
N :ニップ部
P :用紙
d :発熱領域の幅方向端部から反射部の幅方向端部までの距離
d2 :加圧受け部の幅方向長さ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】