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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079261
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20240604BHJP
   B64G 1/50 20060101ALI20240604BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20240604BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
F28D15/02 102H
F28D15/02 L
F28D15/02 D
B64G1/50 600
B64G1/50 300
H01L23/46 B
H05K7/20 R
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192102
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】野村 朋哉
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 弘行
(72)【発明者】
【氏名】賀屋 秀介
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322DB01
5E322DB08
5E322FA04
5F136BC07
5F136CC18
5F136CC26
5F136CC27
(57)【要約】
【課題】優れた冷却能力を有しながら、衛星搭載機器内において、レイアウトの自由度が高い構造体を提供する。
【解決手段】構造体は、筐体と、前記筐体内に設けられる発熱体および第1ヒートパイプと、を有し、前記発熱体からの熱を受熱する前記第1ヒートパイプの蒸発部は、前記筐体の第1面に設けられ、前記第1ヒートパイプの凝縮部は、前記筐体の前記第1面とは異なる第2面に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられる発熱体および第1ヒートパイプと、
を有し、
前記発熱体からの熱を受熱する前記第1ヒートパイプの蒸発部は、前記筐体の第1面に設けられ、
前記第1ヒートパイプの凝縮部は、前記筐体の前記第1面とは異なる第2面に設けられる、構造体。
【請求項2】
前記第1面は前記第2面に連結している、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記第1ヒートパイプは、前記蒸発部と前記凝縮部との間に角部を有し、前記第1ヒートパイプの前記角部の曲率半径は、前記筐体の前記第1面と前記第2面との間に配置される筐体角部の曲率半径よりも大きい、請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記発熱体は、基板の表面に設けられ、
前記基板の前記発熱体を具備する前記表面は、前記筐体の前記第1面と対向する、請求項1に記載の構造体。
【請求項5】
前記第1ヒートパイプの前記蒸発部と前記発熱体との間に設けられる放熱部材をさらに有する、請求項1に記載の構造体。
【請求項6】
前記第1ヒートパイプは、前記筐体に埋設される、請求項1に記載の構造体。
【請求項7】
前記筐体内に設けられる第2ヒートパイプをさらに有し、
前記第2ヒートパイプの蒸発部は、前記第2面に設けられ、
前記第2ヒートパイプの凝縮部は、前記第1面および前記第2面とは異なる前記筐体の第3面に設けられる、請求項1に記載の構造体。
【請求項8】
前記筐体の面を構成する複数の面のうち、前記第1面が最も広い、請求項1~7のいずれか1項に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化に伴い、電子機器内部には、電気・電子部品などの発熱体(以下、単に「発熱体」ともいう。)が高密度に搭載され、また、発熱体の発熱量が増大化する傾向にある。発熱体の温度が、所定の許容温度を超えて上昇すると、発熱体が誤作動などを起こす原因となることから、発熱体の温度は、常に許容温度以下に維持し続けることが求められている。例えば、発熱体は、ヒートパイプなどを備えた冷却装置によって冷却される。
【0003】
また、電子機器内部における発熱体を含む構成部品の高密度化に伴い、部品レイアウトの自由度が少なくなる傾向にある。特に、衛星搭載機器では、放熱面が限られることから、できるだけ面積の広い面を放熱面に接するように配置する必要があるため、衛星搭載機器内の部品レイアウトについても、また衛星内部の衛星搭載機器レイアウトについても自由度が非常に少なく、高集積化の障害となっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、搭載装置である人工衛星に搭載された発熱機器を冷却するための冷却装置が記載されている。この冷却装置は、液体の冷媒を循環させるポンプ、冷媒により発熱機器を冷却する冷却器、および冷媒を冷却する熱交換器を順次接続して環状に構成された冷媒流路と、搭載装置に対する外部からの熱侵入と発熱機器の発熱との少なくともいずれかの熱により発生させた蒸気を、冷却器に流入する冷媒に混入させる蒸気混入部とを備える。蒸気混入部は、冷却器に流入する冷媒を加熱するための前熱交換器と、発熱機器の発熱による熱を前熱交換器に輸送するヒートパイプとを備える。
【0005】
しかしながら、上記の技術でも、レイアウトの自由度については、不十分であり、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2021/117105号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、優れた冷却能力を有しながら、衛星搭載機器内において、レイアウトの自由度が高い構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 筐体と、前記筐体内に設けられる発熱体および第1ヒートパイプと、を有し、前記発熱体からの熱を受熱する前記第1ヒートパイプの蒸発部は、前記筐体の第1面に設けられ、前記第1ヒートパイプの凝縮部は、前記筐体の前記第1面とは異なる第2面に設けられる、構造体。
[2] 前記第1面は前記第2面に連結している、上記[1]に記載の構造体。
[3] 前記第1ヒートパイプは、前記蒸発部と前記凝縮部との間に角部を有し、前記第1ヒートパイプの前記角部の曲率半径は、前記筐体の前記第1面と前記第2面との間に配置される筐体角部の曲率半径よりも大きい、上記[2]に記載の構造体。
[4] 前記発熱体は、基板の表面に設けられ、前記基板の前記発熱体を具備する前記表面は、前記筐体の前記第1面と対向する、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の構造体。
[5] 前記第1ヒートパイプの前記蒸発部と前記発熱体との間に設けられる放熱部材をさらに有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の構造体。
[6] 前記第1ヒートパイプは、前記筐体に埋設される、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の構造体。
[7] 前記筐体内に設けられる第2ヒートパイプをさらに有し、前記第2ヒートパイプの蒸発部は、前記第2面に設けられ、前記第2ヒートパイプの凝縮部は、前記第1面および前記第2面とは異なる前記筐体の第3面に設けられる、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の構造体。
[8] 前記筐体の面を構成する複数の面のうち、前記第1面が最も広い、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の構造体。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、優れた冷却能力を有しながら、衛星搭載機器内において、レイアウトの自由度が高い構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態の構造体の一例を示す概略図である。
図2図2は、実施形態の構造体と機器との配置関係の他例を示す概略図である。
図3図3は、実施形態の構造体を構成する第1ヒートパイプの他例を示す拡大概略図である。
図4図4は、実施形態の構造体を構成する第1ヒートパイプの他例を示す断面図である。
図5図5は、実施形態の構造体の他例を示す概略図である。
図6図6は、実施形態の構造体を人工衛星搭載用構造体として搭載する人工衛星の一例を示す概略図である。
図7図7は、実施形態の構造体を人工衛星搭載用構造体として搭載する人工衛星の他例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、筐体内に設けられるヒートパイプの蒸発部を設置する面と凝縮部を設置する面とを所定の関係にすることで、優れた冷却能力を有しながら、衛星搭載機器内において、レイアウトの自由度を高めることを見出し、かかる知見に基づき本開示を完成させるに至った。
【0013】
実施形態の構造体は、筐体と、筐体内に設けられる発熱体および第1ヒートパイプと、を有し、発熱体からの熱を受熱する第1ヒートパイプの蒸発部は、筐体の第1面に設けられ、第1ヒートパイプの凝縮部は、筐体の第1面とは異なる第2面に設けられる。
【0014】
図1は、実施形態の構造体の一例を示す概略図である。図1に示すように、実施形態の構造体1は、筐体10、発熱体20および第1ヒートパイプ30を有する。なお、ここでは、特に言及しない限り、筐体10の第1面が筐体10の上面11、および筐体10の第2面が筐体10の第1側面12である例について説明する。また、筐体10は、例えば、直方体で構成される。図1は、筐体10の一部の断面を模式的に示している。
【0015】
構造体1を構成する筐体10は、多面体であり、発熱体20および第1ヒートパイプ30を内部に収納する。筐体10は、金属またはセラミックスなどの良熱伝材料から構成される。
【0016】
また、筐体10は、例えば図1に示すように、直方体である。筐体10が直方体である場合、筐体10の内部を構成する面は、上面11と、上面11にそれぞれ連結している第1側面12、第2側面13(手前側の面)、第3側面14、第4側面15(奥側の面)と、上面11と対向し、第1側面12、第2側面13、第3側面14、第4側面15に連結している下面16とを備える。
【0017】
筐体10の内部に設けられる発熱体20は、例えば図1に示すように、基板40に支持されている。また、基板40はスペーサ80で支えられている。つまり、基板40と筐体10との間には空隙がある。空隙が基板40と筐体10との間にあるため、基板40に実装されている発熱体20が振動により筐体10にぶつかることを抑制している。
【0018】
発熱体20は、駆動時に発熱する部品であり、DC/DCコンバータを構成するトランス、ダイオード、1次側FET、トランスコア、コイル、平滑コンデンサ、入力コンデンサなどである。そのなかでも、DC/DCコンバータを構成するトランスの発熱が大きい。発熱体20は、例えば110℃程度まで発熱する。
【0019】
筐体10の内部に設けられる第1ヒートパイプ30は、熱勾配制御機構であり、内部に作動流体を備える。第1ヒートパイプ30は、発熱体20で発生した熱を筐体10の所定の部分に効率的に伝える。
【0020】
第1ヒートパイプ30の蒸発部31は、発熱体20からの熱を受熱する部分であり、筐体10の第1面である筐体10の上面11に設けられる。また、第1ヒートパイプ30の凝縮部32は、発熱体20からの熱を放出する部分であり、筐体10の第2面である筐体10の第1側面12に設けられる。このように、第1ヒートパイプ30の蒸発部31と凝縮部32とは、筐体10の内部を構成する複数の面のうち、異なる面にそれぞれ設けられる。すなわち、第1ヒートパイプ30の蒸発部31と第1ヒートパイプ30の凝縮部32とは、筐体10の内部を構成する複数の面のうち、同じ面にそれぞれ設けられておらず、第1ヒートパイプ30の蒸発部31が筐体10の上面11に設けられる場合には、第1ヒートパイプ30の凝縮部32は上面11に設けられない。
【0021】
発熱体20で生じた熱は、第1ヒートパイプ30の蒸発部31から凝縮部32に伝わり、第1ヒートパイプ30の凝縮部32から放出された熱は、筐体10の第1側面12を備える側部に伝わる。その後、筐体10の第1側面12を備える側部の外面12aから外部へ熱が放出される。また、図1に示すように、筐体10における第1側面12の裏面である外面12aに対して、構造体1を搭載する機器70(例えば、後述の人工衛星)の一部が接触していると、筐体10の第1側面12を備える側部に伝わった熱は、機器70に伝わり、その後、機器70の外面70aから外部に放出される。また、発熱体20で生じた熱は、第1ヒートパイプ30の凝縮部32に伝わる以外に、筐体10の上面11を備える上部にも伝わる。筐体10の上面11を備える上部に伝わった熱は、上部の外面11aから外部に放出される。
【0022】
具体的には、図1に示すように、機器70と第1側面12とが接触している場合には、熱は、第1側面12から機器70に伝導される。つまり、放熱面は、第1側面12になる。また、図2に示すように、機器70と上面11とが接触している場合には、熱は、上面11から機器70に伝導される。つまり、放熱面は、上面11になる。このようにして、放熱面を上面11または第1側面12にすることができ、機器70内での構造体1のレイアウトの自由度を上げることができる。
【0023】
このように、構造体1は、発熱体20で生じた熱を複数の経路を通じて外部に放出できる。そのため、構造体1は優れた冷却能力を有し、かつ、機器70内での構造体1のレイアウトの自由度を上げることができる。
【0024】
また、第1ヒートパイプ30の凝縮部32は、筐体10の下面16に設けられてもよいが、第1ヒートパイプ30の凝縮部32は、第1側面12、第2側面13、第3側面14および第4側面15のいずれかの側面に設けられることが好ましい。この場合、第1ヒートパイプ30の蒸発部31が設けられる第1面は、第1ヒートパイプ30の凝縮部32が設けられる第2面に連結している。
【0025】
このように、第1ヒートパイプ30の蒸発部31が設けられる第1面(上面11)は、第1ヒートパイプ30の凝縮部32が設けられる第2面(第1側面12、第2側面13、第3側面14、第4側面15のいずれかの側面)に直接的に連結している。そのため、発熱体20で生じた熱を第1ヒートパイプ30の凝縮部32に短時間で効率よく伝えることができるので、冷却能力をさらに向上できる。また、第1ヒートパイプ30をコンパクト化できるので、機器70内での構造体1のレイアウトの自由度を上げることができる。
【0026】
また、筐体10の面を構成する複数の面のうち、第1ヒートパイプ30の蒸発部31が設けられる第1面は最も広いことが好ましい。図1に示すように、筐体10の面を構成する複数の面のうち、最も広い面が複数存在する場合、当該複数の面のうちの1つの面を第1面とする。
【0027】
このように、第1ヒートパイプ30の蒸発部31が設けられる第1面(上面11)は、最も広い。そのため、広い面積を有する上面11に対して、第1ヒートパイプ30の蒸発部31を効率よく設置できることから、発熱体20から第1ヒートパイプ30の蒸発部31に伝える熱の量を増加できる。また、上面11が広い面積を有することから、上面11の裏面である外面11aから放出される熱の量を増加できる。
【0028】
例えば、図2に示すように、最も広い第1面(上面11)の裏面である外面11aに対して、機器70の一部が接触していると、筐体10の外面11aから機器70に伝わり、機器70の外面70aから外部に放出される熱の量を増加できる。また、第1ヒートパイプ30の凝縮部32から放出された熱は、筐体10の第1側面12を備える側部および上面11を備える上部にそれぞれ伝わり、その後、筐体10の外面12aおよび外面11aから、熱が外部に放出される。このように、構造体1は、優れた冷却能力を有すると共に、機器70内での構造体1のレイアウトの自由度を上げることができる。
【0029】
また、図1に示すように、発熱体20は、基板40の表面41に設けられ、基板40の発熱体20を具備する表面41は、筐体10の第1面(上面11)と対向することが好ましい。このような構成にすると、基板40上の個々の発熱体20(部品)と筐体10または第1ヒートパイプ30とを短い経路で接続することができ、効率的に伝熱することができる。特に、基板40の中央付近は発熱体20に囲まれるため温度が上昇しやすいが、中央付近からも短い経路で筐体10または第1ヒートパイプ30と接続することができ、容易に放熱が可能になる。
【0030】
また、図1に示すように、構造体1は、第1ヒートパイプ30の蒸発部31と発熱体20との間に設けられる放熱部材50をさらに有することが好ましい。放熱部材50は、例えば、シート状や板状である。放熱部材50が第1ヒートパイプ30の蒸発部31と発熱体20との間に配置されると、発熱体20で生じた熱は、効率的に蒸発部31に伝えることができる。そのため、構造体1の冷却能力をさらに向上できる。
【0031】
図3は、実施形態の構造体を構成する第1ヒートパイプの他例を示す拡大概略図である。図3に示すように、第1ヒートパイプ30は、蒸発部31と凝縮部32との間に角部33を有してもよい。この場合、第1ヒートパイプ30の角部33の曲率半径は、筐体10の第1面(上面11)と第2面(第1側面12)との間に配置される筐体角部17の曲率半径よりも大きいことが好ましい。ここで、筐体角部17の曲率半径とは、筐体10の内面側の曲率半径である。また、角部33の曲率半径とは、筐体10の内面に対向する面33aの曲率半径である。
【0032】
第1ヒートパイプ30の角部33の曲率半径が筐体角部17の曲率半径よりも大きいと、第1ヒートパイプの内部に封入されている作動流体は、角部33を良好に流れることができる。そのため、構造体1の冷却能力をさらに向上できる。
【0033】
また、第1ヒートパイプ30の角部33と筐体角部17との間の隙間Sには、金属製の充填部材(不図示)が設けられてもよい。充填部材が隙間Sに充填されていると、筐体10および第1ヒートパイプ30の機械的強度を向上できる。また、第1ヒートパイプ30から筐体10への熱伝達や筐体10内の熱伝導を向上できる。
【0034】
図4は、実施形態の構造体を構成する第1ヒートパイプの他例を示す断面図である。なお、ここでは、筐体10と第1ヒートパイプ30との関係をわかりやすく説明するため、発熱体20などの構成部材を省略している。
【0035】
図4に示すように、第1ヒートパイプ30は、筐体10に埋設されてもよい。例えば図4に示すように、第1ヒートパイプ30は、カバー部材18によって覆われることで、筐体10に埋設される。ここで、第1ヒートパイプ30とカバー部材18について説明する。金属ブロックに第1ヒートパイプ30が入る穴を開けた後、金属ブロックを半分に割る。一方の金属ブロックの凹部に第1ヒートパイプ30を入れる。この状態で、他方の金属ブロックを被せることにより、金属ブロック内に第1ヒートパイプ30を閉じ込める。この金属ブロックがカバー部材18になる。なお、第1ヒートパイプ30と金属ブロック(カバー部材18)の接触面に熱伝導シートを入れて密着性を向上させてもよい。このような構成にすると、第1ヒートパイプ30は筐体10の内部空間で露出しないため、より効率的に伝熱できる。
【0036】
なお、図4では、第1ヒートパイプ30が筐体10に完全に埋設されている例を示しているが、第1ヒートパイプ30の一部が筐体10に埋設されてもよい。
【0037】
図5は、実施形態の構造体の他例を示す概略図である。なお、ここでは、特に言及しない限り、筐体10の第3面が筐体10の下面16である例について説明する。
【0038】
図5に示すように、構造体1は、筐体10内に設けられる第2ヒートパイプ60をさらに有してもよい。この場合、第2ヒートパイプ60の蒸発部61は、筐体10の第2面である筐体10の第1側面12に設けられる。また、第2ヒートパイプ60の凝縮部62は、筐体10の第1面および第2面とは異なり、筐体10の第3面である筐体10の下面16に設けられる。
【0039】
第1ヒートパイプ30と同様に、第2ヒートパイプ60は、熱勾配制御機構であり、内部に作動流体を備える。また、第2ヒートパイプ60は、蒸発部61から凝縮部62に熱を効率的に伝える。
【0040】
このように、筐体10の内部を構成する複数の面のうち、第2ヒートパイプ60の蒸発部61が設けられる面と、第1ヒートパイプ30の凝縮部32が設けられる面とは、同じである。また、第2ヒートパイプ60の凝縮部62が設けられる面は、第1ヒートパイプ30の蒸発部31が設けられる面と異なり、かつ、第1ヒートパイプ30の凝縮部32および第2ヒートパイプ60の蒸発部61が設けられる面とも異なる。
【0041】
第1ヒートパイプ30の凝縮部32から放出された熱は、筐体10の第1側面12を備える側部以外に、第2ヒートパイプ60の蒸発部61から凝縮部62に伝わる。第2ヒートパイプ60の凝縮部62から放出された熱は、筐体10の下面16を備える下部に伝わる。その後、筐体10の下部の外面16aから、熱が外部に放出される。機器70内での構造体1のレイアウトの自由度を上げられることから、このような構成を実現できる。このように、発熱体20で生じた熱を外部に放出する経路が増えるため、構造体1の冷却能力をさらに向上できる。
【0042】
また、第1ヒートパイプ30の角部33と同様に、第2ヒートパイプ60は、蒸発部61と凝縮部62との間に不図示の角部を有してもよい。この場合、第2ヒートパイプ60の角部の曲率半径は、筐体10の第2面(第1側面12)と第3面(下面16)との間に配置される筐体角部の曲率半径よりも大きいことが好ましい。
【0043】
このような構造体1は、優れた冷却能力を有しながら、機器70内でのレイアウトの自由度を上げられることから、人工衛星に搭載される構造体(以下、単に「人工衛星搭載用構造体」ともいう。)などに好適に用いられる。
【0044】
図6は、実施形態の構造体を人工衛星搭載用構造体として搭載する人工衛星の一例を示す概略図である。ここでは、上記の機器70が人工衛星であり、人工衛星に搭載される構造体(人工衛星搭載用構造体)が上記の構造体1である。図6では、構造体1が機器70である人工衛星の収容部71に搭載される様子を示している。図6に示す姿勢の構造体1が機器70である人工衛星の収容部71に収容されると、構造体1と人工衛星との配置関係は図1のようになる。
【0045】
図6に示すように、人工衛星に搭載されている太陽光パネル72は、太陽光を受光して発電する。太陽光パネル72で発電した電力は、人工衛星に搭載されている不図示の電線を介して、構造体1の内部に設けられている発熱体20に供給される。発熱体20は、人工衛星に搭載されている不図示のホールスラスタなどを駆動させる。発熱体20で発生した熱は、第1ヒートパイプ30を介して人工衛星の輻射放熱面である外面70aなどから外部である宇宙空間に放出される。構造体1では放熱面を上面11または第1側面12にすることができるので、機器70と上面11が接触するように配置されても、また、機器70と第1側面12とが接触するように配置されても、熱を外部に放出することができる。こうして、構造体1は発熱体20を許容温度以下に維持し続けることができる。
【0046】
また、図7は、実施形態の構造体を人工衛星搭載用構造体として搭載する人工衛星の他例を示す概略図である。図7に示す姿勢の構造体1が人工衛星の収容部71に収容されると、構造体1と人工衛星との配置関係は図2のようになる。図6に比べて、図7に示す外面70aは広い。
【0047】
図7に示す人工衛星においては、発熱体20で発生した熱は、そのまま上面11の外面11aに伝わり、人工衛星の外面70aなどから宇宙空間に放出される。よって、構造体1が人工衛星の収容部71に収容される状態によって、上面11または第1側面12から放熱が行われる。こうして、構造体1は発熱体20を許容温度以下に維持し続けることができる。
【0048】
このように、機器70内での構造体1のレイアウトの自由度を上げることができるため、人工衛星などの機器70の内部空間のレイアウトに応じて、機器70内の構造体1の配置姿勢や配置場所を適宜設定できる。
【0049】
以上説明した実施形態によれば、筐体の内部に設けられるヒートパイプの蒸発部を設置する面と凝縮部を設置する面とを所定の関係にすることで、優れた冷却能力を有しながら、衛星搭載機器内において、レイアウトの自由度を高めることができる。また、このような構造体を人工衛星に搭載した場合、構造体内の発熱体から人工衛星の輻射放熱面までの距離を長くすることができるため、人工衛星内のレイアウトの自由度を高めることができる。また、人工衛星のレイアウトの自由度向上は、人工衛星の強度設計の自由度向上と関係していることから、開発コストのコスト低減につながる。
【0050】
なお、上記では、筐体10が直方体である構造体1について説明したが、筐体10の形状は、第1面および第2面を有する限り、限定されるものではない。
【0051】
また、上記では、筐体10の第1面が筐体10の上面11および筐体10の第2面が筐体10の第1側面12である構造体1について説明したが、第1面と第2面は、それぞれ筐体10の異なる面である限り、限定されるものではない。例えば第1面が筐体10の上面11である場合、第2面は、第1側面12ではなく、第2側面13、第3側面14、第4側面15および下面16のいずれかの面でもよい。
【0052】
また、上記では、筐体10の第1面が筐体10の上面11、筐体10の第2面が筐体10の第1側面12、および筐体10の第3面が筐体10の下面16である構造体1について説明したが、第1面と第2面と第3面とは、それぞれ筐体10の異なる面である限り、限定されるものではない。例えば第1面が筐体10の上面11および第2面が筐体10の第1側面12である場合、第3面は、下面16ではなく、第2側面13、第3側面14および第4側面15のいずれかの面でもよい。
【0053】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 構造体
10 筐体
11 上面
11a 外面
12 第1側面
12a 外面
13 第2側面
14 第3側面
15 第4側面
16 下面
16a 外面
17 筐体角部
18 カバー部材
20 発熱体
30 第1ヒートパイプ
31 蒸発部
32 凝縮部
33 角部
33a 筐体の内面に対向する面
40 基板
41 表面
50 放熱部材
60 第2ヒートパイプ
61 蒸発部
62 凝縮部
70 機器(人工衛星)
70a 外面
71 収容部
72 太陽光パネル
80 スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7