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特開2024-79274インクセット、立体造形物の製造方法、立体造形物の製造装置、及び対象物の着色方法
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  • 特開-インクセット、立体造形物の製造方法、立体造形物の製造装置、及び対象物の着色方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079274
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】インクセット、立体造形物の製造方法、立体造形物の製造装置、及び対象物の着色方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/40 20140101AFI20240604BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240604BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61C 13/08 20060101ALI20240604BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240604BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20240604BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240604BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240604BHJP
【FI】
C09D11/40
B41J2/01 501
B41J2/01 129
B41M5/00 120
B41M5/00 100
A61C13/08 A
B29C64/112
B29C64/264
B33Y10/00
B33Y70/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192123
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 典晃
(72)【発明者】
【氏名】内藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】畑中 伸一
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4F213
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FC02
2C056FD20
2C056HA44
2H186AB08
2H186AB11
2H186AB23
2H186FA08
2H186FB04
2H186FB21
2H186FB29
2H186FB34
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB54
2H186FB56
4F213AA43
4F213AB04
4F213AB12
4F213AH63
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL76
4J039AD21
4J039BA21
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE27
4J039CA07
4J039EA04
4J039EA46
4J039FA07
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】高い階調性が要求される対象物の色品質を実現することができるインクセットの提供。
【解決手段】少なくとも1種の中間色インクを有し、前記中間色インクが複数種の顔料の混合物を含有し、かつ対象物の色域に近い色彩を有するインクセットである。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の中間色インクを有し、
前記中間色インクが複数種の顔料の混合物を含有し、かつ対象物の色域に近い色彩を有することを特徴とするインクセット。
【請求項2】
前記対象物が人工歯である、請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
前記中間色インクが3種類以上の中間色インクを含み、
JIS Z8729に規定するL表色系におけるaを横軸とし、bを縦軸とした色度図において、3種類以上の前記中間色インクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた多角形が前記対象物の色域と少なくとも一部重複し、前記多角形における1辺の最大長さが、イエローインクとシアンインクとマゼンタインクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた三角形における1辺の最小長さより短い、請求項1から2のいずれかに記載のインクセット。
【請求項4】
複数種の前記顔料の混合物の含有量が0.01質量%以上1質量%以下である、請求項1に記載のインクセット。
【請求項5】
複数種の前記顔料が、イエロー顔料、マゼンタ顔料、及びシアン顔料から選択される少なくとも2種である、請求項1に記載のインクセット。
【請求項6】
前記中間色インクが重合性化合物を含有する、請求項1に記載のインクセット。
【請求項7】
立体造形用である、請求項6に記載のインクセット。
【請求項8】
クリアインク、白色インク、及びサポートインクから選択される少なくともいずれかを有する、請求項6に記載のインクセット。
【請求項9】
以下の中間色インクA、中間色インクB、及び中間色インクCを含む、請求項8に記載のインクセット。
前記中間色インクAが、イエロー顔料及びマゼンタ顔料を含有し、前記中間色インクAの硬化物のL表色系におけるb*が40以上70以下、aがbよりも小さく、前記イエロー顔料及び前記マゼンタ顔料の総含有量が0.01質量%以上1質量%以下である。
前記中間色インクBが、イエロー顔料及びマゼンタ顔料を含有し、前記中間色インクBの硬化物のL表色系におけるaが40以上70以下、bがaよりも小さく、前記イエロー顔料及び前記マゼンタ顔料の総含有量が0.1質量%以上0.4質量%以下である。
前記中間色インクCが、イエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料を含有し、前記中間色インクCの硬化物のL表色系におけるaが-10以上5以下、bが-5以上10以下、前記イエロー顔料、前記マゼンタ顔料及び前記シアン顔料の総含有量が0.1質量%以上0.4質量%以下である。
【請求項10】
前記クリアインクが体積平均粒子径50nm以上1,000nm以下の硬質固体粒子を含有する、請求項8に記載のインクセット。
【請求項11】
前記白色インクが体積平均粒子径50nm以上1,000nm以下の硬質固体粒子を含有する、請求項8に記載のインクセット。
【請求項12】
前記インクセットに含まれるすべてのインクが、70℃での粘度が50mPa・s以下である、請求項9に記載のインクセット。
【請求項13】
前記中間色インクにおける複数の前記顔料の体積平均粒子径が50nm以上1,000nm以下である、請求項9に記載のインクセット。
【請求項14】
請求項6から13のいずれかに記載のインクセットおける各インクをインクジェット方式で吐出する吐出工程と、
各前記インクに活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化工程と、を含み、
前記吐出工程及び前記硬化工程を順次繰り返すことを含むことを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項15】
請求項6から13のいずれかに記載のインクセットにおける各インクをインクジェット方式で吐出する吐出手段と、
各前記インクに活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化手段と、を有することを特徴とする立体造形物の製造装置。
【請求項16】
複数種の顔料の混合物を含有し、かつ対象物の色域に近い色彩を有する中間色インクをインクジェット方式で吐出させて前記対象物を着色することを特徴とする対象物の着色方法。
【請求項17】
前記対象物が人工歯である、請求項16に記載の対象物の着色方法。
【請求項18】
前記中間色インクが3種類以上の中間色インクを含み、
JIS Z8729に規定するL表色系におけるaを横軸とし、bを縦軸とした色度図において、3種類以上の前記中間色インクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた多角形が前記対象物の色域と少なくとも一部重複し、前記多角形における1辺の最大長さが、イエローインクとシアンインクとマゼンタインクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた三角形における1辺の最小長さより短い、請求項16から17のいずれかに記載の対象物の着色方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット、立体造形物の製造方法、立体造形物の製造装置、及び対象物の着色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元立体物を造形する技術として、付加製造(AM:Additive Manufacturing)と呼ばれる技術が知られている。この技術は、積層方向に薄く切った断面形状を計算し、その形状に従って各層を形成して積層することにより立体物を造形する技術である。近年、付加製造技術の中でも、インクジェットヘッドを用いて硬化型組成物を必要箇所に配置し、配置された硬化型組成物を光照射装置等による活性エネルギー線等で硬化させることにより三次元の立体物を造形するマテリアルジェッティング方式(Mj方式)が注目されている。
【0003】
Mj方式は主に試作目的で利用されており、硬化物には、強度、硬度、弾性率、延伸性、耐衝撃性、耐熱性等の各種特性が要求される。また、Mj方式の特徴として、色材を含有するカラーインクを用いることによりカラー化が可能であることが挙げられる。
しかし、一般的に使用されているカラーインクでは、階調性が不十分であるため、人工歯のような高い階調性が要求される製品の色品質を満たすことができないという問題がある。
【0004】
これまでに、例えば、色彩値が(a,b)=(0,0)に近いライトブラックインクを提供する目的で、カーボン顔料に加えてマゼンタ顔料とシアン顔料を含むインクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高い階調性が要求される対象物の色品質を実現することができるインクセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明のインクセットは、少なくとも1種の中間色インクを有し、前記中間色インクが複数種の顔料の混合物を含有し、かつ対象物の色域に近い色彩を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、高い階調性が要求される対象物の色品質を実現することができるインクセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、L表色系におけるaを横軸とし、bを縦軸とした色度図において、対象物の色域と、3種類の中間色インクの色域と、イエローインクとシアンインクとマゼンタインクの色域との関係の一例を示す図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る立体造形物の製造装置を示す概略断面図である。
【0009】
(インクセット)
本発明のインクセットは、少なくとも1種の中間色インクを有し、クリアインク、白色インク、及びサポートインクから選択される少なくともいずれかを有することが好ましく、更に必要に応じてその他の構成を有する。
【0010】
一般的に、インクジェットヘッドから吐出するインク滴を小さくすることにより階調性を上げられることが知られているが、この方法では印刷速度の低下が問題となる。また、顔料濃度の低いカラーインクと顔料濃度の高いカラーインクを併用することによっても階調性を上げられることが知られているが、この方法では必要なインクジェットヘッドの数が多くなるため、印刷装置及び印刷プロセスの複雑化が問題となる。
従来技術では、複数種類の顔料を混合し、顔料濃度を低く調整しているが、造形速度を下げたり造形装置を複雑化したりすることなく、人工歯のように高い階調性が要求される対象物の色品質を満たすことができないという課題がある。
【0011】
本発明のインクセットが備えている中間色インクは、硬化物の色彩が対象物の色域に近いため、インク滴を小さくすることなく階調を上げることが可能となる。その結果、造形速度を下げることなく狙いの色彩と差異の小さい造形物を造形できる。また、本発明のインクセットは、従来のインクセットと同程度のインク数であるため、インクジェットヘッドの数が多くないので、造形装置及び造形プロセスの複雑化が生じることなく、高い階調性を実現することができる
【0012】
本明細書において、「インクセット」とは、インクセットを構成する中間色インク、クリアインク、白色インク、及びサポートインクがそれぞれ独立した状態で存在していればよい。例えば、前記インクセットは前記中間色インクを収容している中間色インク収容手段、前記クリアインクを収容しているクリアインク収容手段、前記白色インクを収容している白色インク収容手段、及び前記サポートインクを収容しているサポートインク収容手段が一体化した状態で製造、販売等されている場合に限られない。例えば、前記インクセットは、前記中間色インク収容手段、前記クリアインク収容手段、前記白色インク収容手段、及び前記サポートインク収容手段が独立して製造、販売等されていたとしても、記中間色インク、前記クリアインク、前記白色インク、及び前記サポートインクが併用されることを前提としている場合、あるいは、前記中間色インク、前記クリアインク、前記白色インク、及び前記サポートインクが併用されることを実質的に誘導している場合などは、本発明のインクセットに含まれる。
前記インクセットは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、二次元の文字、図形、記号等の画像、幾何学模様等のパターン、各種基材への意匠塗膜を形成したり、三次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
【0013】
<中間色インク>
前記中間色インクが複数種の顔料の混合物を含有し、かつ対象物の色域に近い色彩を有する。このような中間色インクを用いることにより、従来のイエローインクとシアンインクとマゼンタインクに比べて、対象物の色域に近い色彩に対象物を着色することができる。
【0014】
-対象物-
前記対象物としては、その材質、形状、大きさ、構造、色などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記対象物の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂、紙、樹脂フィルム、布、金属、セラミックスなどが挙げられる。
前記対象物の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二次元の印刷物であってもよく、三次元の立体造形物であってもよい。
前記対象物の形状及び大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記対象物としては、高い階調性が要求される人工歯が好適に用いられる。人工歯とは、う蝕、外傷、歯周病などにより失った天然歯の代わりに、その機能を回復するために用いられる人工的に形成された歯や、審美性を高めるために天然歯の表面に張り付けるラミネートを意味する。
前記歯の一部としては、例えば、インレー、アンレー、クラウン、ブリッジなどが挙げられる。
前記歯の全部としては、例えば、インプラント、入れ歯等の義歯などが挙げられる。
【0015】
前記中間色インクが、「対象物の色域に近い色彩を有する」とは、以下のとおり定義される。
前記中間色インクが3種類以上の中間色インクを含み、
JIS Z8729に規定するL表色系におけるaを横軸とし、bを縦軸とした色度図において、3種類以上の前記中間色インクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた多角形が前記対象物の色域と少なくとも一部重複し、前記多角形における1辺の最大長さが、イエローインクとシアンインクとマゼンタインクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた三角形における1辺の最小長さより短い。このような対象物の色域に近い色彩を有する中間色インクを用いることにより、従来のイエローインクとシアンインクとマゼンタインクに比べて、高い階調性が要求される対象物の色品質を実現することができる。
前記L表色系では、明度をL、色相と彩度を示す色度をaで表わす。aは、色の方向を示しており、aは赤方向、-aは緑方向、bは黄方向、-bは青方向を示す。
【0016】
前記多角形としては、3種類の中間色インクを用いる場合には三角形となり、4種類の中間色インクを用いる場合には四角形となり、5種類の中間色インクを用いる場合には五角形となり、6種類の中間色インクを用いる場合には六角形となる。
前記多角形における1辺の最大長さは、従来のカラーインクであるイエローインクとシアンインクとマゼンタインクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた三角形における1辺の最小長さより短いことが好ましい。これにより、前記多角形は前記三角形よりも面積が小さくなる。
前記多角形における、1辺の長さをXとしたとき、他の辺の長さが0.9X~1.1Xであり、多角形を構成する各辺の長さがほぼ等しいことが好ましく、前記多角形としては、例えば、正三角形、正方形、正五角形、正六角形などであることがより好ましい。
前記多角形の色域が前記対象物の色域と少なくとも一部重複することが好ましい。これにより、高い階調性が要求される対象物の色品質を実現することができる。
前記多角形は、対象物の色域を囲み、前記多角形の内側に前記対象物の色域の中心が含まれることが好ましい。対象物の色域の中心とは、複数種の対象物の色度の平均値とすることができる。
【0017】
図1に示す色度図は、例えば、以下のようにして求めることができる。
対象物の色域は、複数種類の対象物について分光測色計で色度(a,b)を測定することにより求めることができる。
対象物が人工歯の場合には、ボディとしてソリデックスハーデュラ歯冠用コンポジットレジンA1B、A2B、A3B、A3.5B、A4B(株式会社松風製)などを用いることができる。サービカルとしてソリデックスハーデュラ歯冠用コンポジットレジンAC1、AC2(株式会社松風製)などを用いることができる。ソリデックスハーデュラ歯冠用コンポジットレジンの硬化物は、天然歯に近い色調再現性を備えている。
各ソリデックスハーデュラ歯冠用コンポジットレジン作製を用い、それぞれ直径約10mm、及び厚み1mmの試験片を作製し、硬化させることにより硬化物を作製する。硬化にはLC-3Dプリントボックス(3D systems社製)を用いる。
得られた各硬化物を分光測色計(eXact、X-Rite社製)で色度(a,b)を測定し、表Aに示す。各硬化物の各色度をプロットすることにより、図1に示す対象物の色域Aが求められる。
【0018】
【表A】
【0019】
従来のカラーインクであるイエローインクとシアンインクとマゼンタインクのそれぞれの硬化物の色度(a、b)を分光測色計で測定し、各色度を頂点とする三角形を描くことができる。
下記の表Aに示すイエローインク1、マゼンタインク1、及びシアンインク1を用い、それぞれ直径約10mm、及び厚み1mmの試験片を作製し、硬化させることにより硬化物を作製する。硬化にはLC-3Dプリントボックス(3D systems社製)を用いる。
得られた各硬化物を分光測色計(eXact、X-Rite社製)で色度(a,b)を測定し、各硬化物の各色度を頂点とする図1に示す三角形B(従来のカラーインクの色域)が求められる。
【0020】
【表B】
【0021】
複数種の顔料の混合物を含有し、かつ対象物の色域に近い色彩を有する中間色インクを3種類以上用い、3種類以上の中間色インクのそれぞれの硬化物の色度(a、b)を分光測色計で測定し、各色度を頂点とする多角形を描くことができる。
前記多角形が三角形の場合には、例えば、下記の表Cに示す中間色インク1~3を用い、それぞれ直径約10mm、及び厚み1mmの試験片を作製し、硬化させることにより硬化物を作製する。硬化にはLC-3Dプリントボックス(3D systems社製)を用いる。
得られた各硬化物を分光測色計(eXact、X-Rite社製)で色度(a,b)を測定し、各硬化物の各色度を頂点とする図1に示す三角形C(中間色インクの色域)が求められる。
【0022】
【表C】
【0023】
表B及び表C中の各成分の詳細については以下のとおりである。
*MMA:メチルメタクリレート、富士フイルム和光純薬株式会社製
*UDMA:ウレタンジメタクリレート、Sigma-Aldrich社製
*DEGDMA:ジエチレングリコールジメタクリレート、商品名:NKエステル 2G、新中村化学工業株式会社製
*TPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名:Omnirad TPO、BASF社製)
*MEHQ:p-メトキシフェノール、富士フイルム和光純薬株式会社製、和光一級
*イエロー顔料:NJ YELLOW 892、御国色素株式会社製、体積平均粒子径216nm
*マゼンタ顔料:NJ MAGENTA 910、御国色素株式会社製、体積平均粒子径155nm
*シアン顔料:NJ CYAN 912、御国色素株式会社製、体積平均粒子径192nm
【0024】
前記中間色インクとしては、以下の中間色インクA、中間色インクB、及び中間色インクCを含むことが、高い階調性が要求される対象物の色品質を実現する点から好ましい。
前記中間色インクAが、イエロー顔料及びマゼンタ顔料を含有し、前記中間色インクAの硬化物のL表色系におけるbが40以上70以下、aがbよりも小さく、前記イエロー顔料及び前記マゼンタ顔料の総含有量が0.01質量%以上1質量%以下である。
前記中間色インクBが、イエロー顔料及びマゼンタ顔料を含有し、前記中間色インクBの硬化物のL表色系におけるaが40以上70以下、bがaよりも小さく、前記イエロー顔料及び前記マゼンタ顔料の総含有量が0.1質量%以上0.4質量%以下である。
前記中間色インクCが、イエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料を含有し、前記中間色インクCの硬化物のL表色系におけるaが-10以上5以下、bが-5以上10以下、前記イエロー顔料、前記マゼンタ顔料及び前記シアン顔料の総含有量が0.1質量%以上0.4質量%以下である。
前記中間色インクA、中間色インクB、及び中間色インクCの硬化物のL表色系における色度(a、b)は、例えば、分光測色計(eXact、X-Rite社製)で測定することができる。
【0025】
前記中間色インクは、複数種の顔料の混合物を含有し、重合性化合物を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。前記中間色インクが複数種の顔料の混合物を含有するとは、複数種の顔料をインク中で予め混合した混合物の状態で含有することを意味する。
なお、本明細書において、重合性化合物を含有する中間色インクとは、活性エネルギー線の照射、加熱、化学反応などにより硬化して硬化物を形成するインクであり、例えば、活性エネルギー線硬化型インク、熱硬化型インク、混合硬化型インクなどが挙げられる。
【0026】
-顔料-
前記中間色インクにおける複数の前記顔料としては、特に制限はなく、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、顔料として、混晶を使用してもよい。
【0027】
前記無機顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化鉄、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラックなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記カーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0028】
前記有機顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などが挙げられる。
前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなどが挙げられる。
【0029】
前記中間色インクにおける複数種の前記顔料としては、イエロー顔料、マゼンタ顔料、及びシアン顔料から選択される少なくとも2種を用いることが好ましい。複数種の前記顔料としては、例えば、イエロー顔料とマゼンタ顔料の組み合わせ、イエロー顔料とシアン顔料の組み合わせ、マゼンタ顔料と及びシアン顔料の組み合わせ、イエロー顔料とマゼンタ顔料とシアン顔料の組み合わせなどが挙げられる。
【0030】
前記イエロー顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記シアン顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記マゼンタ顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記中間色インクにおける複数種の前記顔料の混合物の含有量は0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。
前記中間色インクにおける複数種の前記顔料の混合物の含有量が0.01質量%以上1質量%以下であると、高弾性率、高強度、及び高硬度を兼ね備え、高い階調性が要求される対象物の色品質を実現することができる。
【0033】
前記中間色インクにおける複数の前記顔料の体積平均粒子径は50nm以上1,000nm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。
前記中間色インクにおける複数の前記顔料の体積平均粒子径は50nm以上1,000nm以下であると、高い階調性が要求される対象物の色品質を実現することができる。
前記体積平均粒子径は、例えば、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0034】
-重合性化合物-
前記重合性化合物は、活性エネルギー線の照射や加熱されることによって、重合反応することが可能な重合性基を有する化合物である。重合反応の速度や種々の3Dプリンタに用い得るという観点から、活性エネルギー線の照射により重合反応する重合性基を有する化合物(例えば光重合性化合物など)が好ましい。
前記重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合性化合物、カチオン重合化合物、アニオン重合性化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記重合性化合物は、ラジカル重合性化合物が好ましい。前記重合性化合物としてラジカル重合性化合物を用いた場合、カチオン重合性化合物又はアニオン重合性化合物を用いた場合と比べて、高粘度化が抑制され、重合速度を向上させることができるので、好適にインクジェット方式に用いることができる。
【0035】
前記ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合によりポリマーを形成可能な化合物を表し、典型的には1つ以上のラジカル重合性官能基を有するモノマー単位としての化合物である。
【0036】
前記ラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。
前記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、ラジカル重合性単官能モノマー、ラジカル重合性多官能モノマーなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記ラジカル重合性モノマー及び前記ラジカル重合性オリゴマーは、いずれもラジカル重合反応により得られる硬化物のモノマー単位である。即ち、本明細書において「ラジカル重合性モノマー」とは、1つ以上のラジカル重合性官能基を有するモノマー分子を表し、「ラジカル重合性オリゴマー」とは、1つ以上のラジカル重合性官能基を有するオリゴマー分子を表す。
【0038】
--ラジカル重合性モノマー--
前記ラジカル重合性化合物として前記ラジカル重合性モノマーを用いることで、前記硬化型組成物Aの高粘度化を更に抑制することができ、前記重合性単官能モノマーを用いることで、硬化型組成物の高粘度化を更に抑制することができる。
【0039】
前記ラジカル重合性単官能モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。
前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記ラジカル重合性多官能モノマーとしては、例えば、2官能モノマー、3官能以上のモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記2官能のラジカル重合性多官能モノマーとしては、例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化オペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
3官能以上のラジカル重合性多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、1,6-ビス(メタクリロイルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-2,4,4-トリメチルヘキサン(ウレタンジメタクリレート)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記ラジカル重合性モノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記中間色インクの全質量に対して、30.0質量%以上であることが好ましく、40.0質量%以上であることがより好ましい。また、また、前記ラジカル重合性モノマーの含有量の上限値としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記中間色インクの全質量に対して、99.0質量%以下であることが好ましく、95.0質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
--ラジカル重合性オリゴマー--
前記ラジカル重合性化合物として前記ラジカル重合性オリゴマーを用いることで、前記中間色インクが硬化された硬化物の硬化収縮を低減することができ、また、硬化物の延伸性及び靭性も向上させることができる。
【0045】
前記「オリゴマー」とは、少数のモノマーに由来する構造単位を有する分子を表す。
前記オリゴマーにおける前記構造単位の数としては、特に制限はなく、該モノマーの構造やオリゴマーの用途などにより異なり得るが、2以上20以下が好ましい。
【0046】
前記ラジカル重合性オリゴマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1官能以上6官能以下のオリゴマーであることが好ましく、2官能以上3官能以下のオリゴマーであることがより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
また、前記ラジカル重合性オリゴマーとしては、ウレタン基を有するラジカル重合性オリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。
前記ラジカル重合性オリゴマーとしてウレタン基を有するラジカル重合性オリゴマーを用いることで、ポリマー中における側鎖間で相互作用が生じ、前記中間色インクが硬化された硬化物の強靭性が向上する。
【0048】
前記ラジカル重合性オリゴマーとしては、市販品を用いることができ、例えば、UV-6630B(UV硬化型ウレタンアクリレートオリゴマー、分子量:3,000、重合性官能基数:2、三菱ケミカル株式会社製)、CN983NS(脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、重合性官能基数:2、サートマー社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記ラジカル重合性化合物としては、上記の通り、(メタ)アクリル系モノマー、カルボン酸ビニルエステル系モノマーなどが挙げられるが、(メタ)アクリル系モノマーを用いることが好ましく、アクリル系モノマーを用いることがより好ましい。前記アクリル系モノマーは、前記中間色インクの高粘度化を抑制させることができ、重合速度を向上させることができるので、好適にインクジェット方式に用いることができる。
【0050】
前記ラジカル重合性化合物として前記アクリル系モノマー以外のラジカル重合性単官能モノマーやエポキシ系モノマーを用いる場合は、前記アクリル系モノマーと併用することが好ましい。
【0051】
前記エポキシ系モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(3,4エポキシシクロヘキシル)、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。なお、エポキシ系モノマーをアクリル系モノマーと併用する場合、更にオキセタンモノマーも併用することが好ましい。
【0052】
前記ラジカル重合性オリゴマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記中間色インクの全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、前記ラジカル重合性オリゴマーの含有量の上限値としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記中間色インクの全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
前記中間色インクにおける前記重合性化合物の合計含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記中間色インクの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。また、前記中間色インクにおける前記重合性化合物の合計含有量の上限値としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記中間色インクの全質量に対して、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
なお、前記重合性化合物の合計含有量とは、前記ラジカル重合性化合物と、該ラジカル重合性化合物以外の重合性化合物(カチオン重合化合物、アニオン重合性化合物等)との合計含有量を意味する。
【0054】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重合開始剤、界面活性剤、重合禁止剤、分散剤、有機溶媒、水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
--重合開始剤--
前記重合開始剤としては、活性エネルギー線や熱エネルギーによって、ラジカル、カチオン、アニオン等の活性種を生成し、前記重合性化合物の重合を開始させることが可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
---光重合開始剤---
前記光重合開始剤としては、光などの活性エネルギー線の照射によりラジカル又はカチオンを生成するラジカル光重合開始剤、カチオン性光重合開始剤などを用いることができる。
【0057】
前記ラジカル光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2、2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-クロロベンゾフェノン、p,p-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記カチオン性光重合開始剤としては、例えば、市販品として、UVI-6950、UVI-6970、UVI-6974、UVI-6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP-150、SP-151、SP-170、SP-172(以上、ADEKA社製)、Irgacure 261(以上、BASF社製)、CI-2481、CI-2624、CI-2639、CI-2064(以上、日本曹達株式会社製)、CD-1010、CD-1011、CD-1012(以上、サートマー社製)、DTS-102、DTS-103、NAT-103、NDS-103、TPS-103、MDS-103、MPI-103、BBI-103(以上、みどり化学株式会社製)、PCI-061T、PCI-062T、PCI-020T、PCI-022T(以上、日本化薬株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
前記アニオン性光重合開始剤としては、例えば、o-ニトロベンジルカルバメート誘導体、o-アシルオキシル誘導体、o-カルバモイルオキシムアミジン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
---熱重合開始剤---
前記熱重合開始剤としては、加熱によりラジカル、カチオン、又はアニオンを生成する任意の物質を用いることができ、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤、レドックス(酸化還元)開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記アゾ系開始剤としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、VA-044、VA-46B、V-50、VA-057、VA-061、VA-067、VA-086、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(VAZO 33)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(VAZO 50)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(VAZO 52)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO 64)、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(VAZO 67)、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(VAZO 88)(以上、DuPont Chemical社製、なお、「VAZO」は商標である)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレ-ト)(V-601)(以上、富士フイルム和光純薬工業株式会社製)などが挙げられる。
【0062】
前記過酸化物開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(Perkadox 16S)(Akzo Nobel社製、なお、「Perkadox」は商標である)、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート(Lupersol 11)(Elf Atochem社製、なお、「Lupersol」は商標である)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(Trigonox 21-C50)(Akzo Nobel社製、なお、「Trigonox」は商標である)、過酸化ジクミルなどが挙げられる。
【0063】
前記過硫酸塩開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
前記レドックス(酸化還元)開始剤としては、例えば、過硫酸塩開始剤と、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤との組み合わせ、有機過酸化物と第3級アミンに基づく系、例えば、過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンに基づく系、有機ヒドロパーオキシドと遷移金属に基づく系、クメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートに基づく系などが挙げられる。
【0064】
前記重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記中間色インクの全質量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
--界面活性剤--
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子量200以上5,000以下の化合物であることが好ましく、具体的には、ノニルフェノールのエチレンオキサイド(以下、「EO」と略記することがある)1モル~40モル付加物、ステアリン酸のEO1モル~40モル付加物等のポリエチレングリコール(PEG)型非イオン界面活性剤;ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等の多価アルコール型非イオン界面活性剤;パーフルオロアルキルのEO1モル~50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等のフッ素含有界面活性剤;ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
前記中間色インクにおける前記界面活性剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0067】
--重合禁止剤--
前記重合禁止剤としては、特に制限はなく、前記重合性化合物の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン等のフェノール化合物;ジラウリルチオジプロピオネート等の硫黄化合物、トリフェニルフォスファイト等のリン化合物、フェノチアジン等のアミン化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
前記中間色インクにおける前記重合禁止剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0069】
--有機溶媒--
前記中間色インクは、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。前記中間色インクが有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)インクであれば、前記中間色インクを扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。
なお、前記有機溶媒とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエン等の一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、前記重合性化合物とは区別されるものである。
【0070】
本明細書において、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まない(例えば、有機溶媒の特性等が前記中間色インクに影響する程度には含まない)ことを意味し、前記中間色インクの全質量に対して0.1質量%未満の含有量であることが好ましい。
【0071】
--水--
前記中間色インクは、水を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。
本明細書において、水を「含まない」とは、実質的に含まない(例えば、水の特性等が前記中間色インクに影響する程度には含まない)ことを意味し、前記中間色インクの全質量に対して1.0質量%未満の含有量であることが好ましい。水の含有量が一定量以下であることで、硬化速度の低下、硬化強度の低下、吸水性の増加、サポート部とモデル部との分離性低下などを抑制することができる。
【0072】
[中間色インクの物性]
インクジェット方式で吐出可能な前記中間色インクは、ノズルからの吐出性などに鑑みると、粘度が低いことが好ましい。
前記中間色インクの粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70℃の環境下において、50mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以下がより好ましく、20mPa・s以下が更に好ましい。前記中間色インクの粘度の下限値としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出性、造形精度の観点から、70℃環境下において、5mPa・s以上であることが好ましい。
【0073】
前記中間色インクの粘度は常法により測定することができ、例えば、JIS Z 8803に記載の方法などを用いることができる。また、その他に、例えば、コーンプレート型回転粘度計(例えば、VISCOMETER TVE-22L、東機産業株式会社製)により、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整には、循環恒温槽(例えば、VISCOMATE VM-150III、東機産業株式会社製)を用いることができる。
【0074】
前記中間色インクの表面張力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェット方式での吐出安定性及び造形精度の点から、25℃環境下において、20mN/m~40mN/mの範囲にあることが好ましい。
前記表面張力は常法により測定することができ、例えば、プレート法、リング法、ペンダントドロップ法などが挙げられる。
【0075】
前記中間色インクの安全性としては、発がん性などの安全性に関する項目について、前記中間色インク中の各成分(原料)の安全データシート(SDS)を確認することにより、確認することができる。
【0076】
<<クリアインク>>
クリアインクは、硬化されることで所望の立体造形物(モデル部)の形状を形成することができるインクである。前記クリアインクは、インクジェット用インクとして好適に使用され得る。
前記クリアインクは、ポリマーを形成可能なインクであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、重合性化合物を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0077】
前記クリアインクが、前記その他の成分として後述する硬質固体粒子を含有する場合であって、該硬質固体粒子が、所望の体積平均粒子径、屈折率、含有量の少なくともいずれかを満たすものである場合、該クリアインクを硬化させた硬化物を、透明性を有するものとすることができる。
これらの中でも、前記クリアインクは、前記硬質固体粒子を含有し、該クリアインクを硬化させた硬化物が透明性を有するものとなり得るものであることが、硬化後の強度の点から好ましい。
【0078】
なお、本明細書において、前記硬化物が「透明性を有する」とは、一方向から前記硬化物を見た場合に、該硬化物の反対側や内部にあるものが透けて見える性質を意味し、着色の有無は含まれない概念である。
また、「透けて見える」とは、一方向から前記硬化物を見た場合に、該硬化物が存在しないかのように反対側が見えることだけでなく、「半透明」の状態、即ち、該硬化物の反対側が曇ったり、歪んだりはしているが見えることも含まれる。
【0079】
以下に、前記クリアインクに含まれる各種成分について説明するが、前記クリアインクに含まれる硬質固体粒子以外の重合性化合物、その他の成分については、前記中間色インクと同様のものを使用することができるため、これらの説明を省略する。また、前記クリアインクの物性も前記中間色インクと同様であることが好ましいため、これらの説明も省略する。
【0080】
-硬質固体粒子-
前記硬質固体粒子は、前記クリアインクが硬化された硬化物の弾性率、強度、及び耐衝撃性等を向上させるために含有される。
【0081】
なお、本明細書において、前記硬質固体粒子は、色材とは機能的に区別されるものであり、例えば、固体成分の色材である顔料は前記硬質固体粒子には含まれないものとする。
【0082】
本明細書において、「硬質」とは、外部からの応力により、形状が変化し難い性質を表す。
硬質であるか否かは、当業者であれば当該技術分野において知られた判断基準に基づいて判断することができ、かかる判断基準としては、例えば、ビッカース硬度、弾性率などが挙げられる。
【0083】
前記硬質固体粒子の弾性率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4GPa以上が好ましく、5GPa以上がより好ましい。
前記弾性率は、例えば、JIS K 7161及びJIS K 7171、ISO 14577などに従って求めることができる。
【0084】
また、本明細書において「固体成分」とは、前記クリアインク中において固体状態を維持可能な成分を表す。前記固体成分は、常温常圧環境下の前記クリアインク中において粒子の形態であることが好ましく、前記クリアインク中において分散されている状態であることがより好ましい。
【0085】
前記硬質固体粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ウォラストナイト、酸化チタン、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、アラミド繊維、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー、各種樹脂などが挙げられる。これらの中でも、前記クリアインクが硬化された硬化物の強度の点から、シリカ、アルミナ、ジルコニアが好ましく、シリカがより好ましい。
【0086】
前記硬質固体粒子のうち、ガラス、シリカ、アルミナなどの表面に水酸基を有する硬質固体粒子は、シランカップリング剤を用いて表面改質されたものを使用することが好ましい。これらの中でも、前記硬質固体粒子は、シランカップリング剤で表面改質されたシリカが特に好ましい。
【0087】
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、スチリル p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記シランカップリング剤は、ビニルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランのように、不飽和二重結合を有するシランカップリング剤が特に好ましい。
【0088】
前記硬質固体粒子の形状としては、特に制限は無く、球状でも棒状でも不定形のものでもよく、中空粒子、多孔質粒子、コア-シェル構造型粒子などであってもよい。これらの中でも、前記硬質固体粒子の形状としては、分散性及びインクジェット吐出性の点で、球形粒子が好ましい。
前記「球状」とは、真球状に限らず、回転楕円体又は多面体などの形状を含み得る。これに限定するものではないが、例えば、粒子の中心点から粒子外延までの最も長い径(長径)が最も短い径(短径)と比較して2倍程度の長さとなる粒子であれば、本発明における「球状」に含まれる。短径と長径の比は、1:1~1:5が好ましく、1:1~1:2がより好ましい。
【0089】
前記クリアインク中の前記硬質固体粒子の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm以上1,000nm以下が好ましく、100nm以上1,000nm以下がより好ましく、100nm以上500nm以下が更に好ましく、180m以上300nm以下が特に好ましい。前記クリアインク中の前記硬質固体粒子の体積平均粒子径が50nm以上であると、該硬質固体粒子の表面積の増大による増粘を抑えることでインクジェット方式による吐出安定性を向上させることができる。また、前記クリアインク中の前記硬質固体粒子の体積平均粒子径が1,000nm以下であると、インクジェット方式による吐出安定性を向上させることができる。また、前記クリアインク中の前記硬質固体粒子の体積平均粒子径が100nm以上1,000nm以下であると、より安定したインクジェット吐出性、硬化物においてより優れた遮蔽性、及び硬度を得ることができる。更に、前記クリアインク中における前記硬質固体粒子の分散安定性を考慮すると、前記硬質固体粒子の体積平均粒子径は300nm以下が好ましい。
体積平均粒子径及び粒度分布は、例えば、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0090】
前記硬質固体粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記クリアインクの全体積に対して、3体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることがより好ましく、10体積%以上であることが更に好ましい。前記硬質固体粒子の含有量が、前記クリアインクの全体積に対して3体積%以上であることにより、十分な遮蔽性が得られ、硬化後に高い白色性と高い硬度を得ることができる。更に、前記硬質固体粒子の含有量が、前記クリアインクの全体積に対して5体積%以上であると、前記クリアインクが硬化された硬化物においてより優れた遮蔽性、白色性、及び硬度を得ることができ、
また、前記クリアインクにおける前記硬質固体粒子の含有量は、40体積%以下であることが好ましく、30体積%以下であることがより好ましく、30体積%以下であることが更に好ましい。前記硬質固体粒子の含有量が、前記クリアインクの全体積に対して40体積%以下であることにより、前記クリアインクの粘度が高くなり過ぎず、インクジェット方式での吐出に適したクリアインクを得ることができ、前記クリアインクが硬化された硬化物のマトリックス樹脂における結合力の低下を抑制することができ、結果として硬化物が脆くなることを抑制することができる。更に、前記硬質固体粒子の含有量が、前記クリアインクの全体積に対して30体積%以下であると、より安定したインクジェット吐出性、及び硬化物の硬度を得ることができる。
前記クリアインクにおける前記硬質固体粒子の含有量の下限値と上限値とは適宜組み合わせることができ、3体積%以上40体積%以下であることが好ましく、5体積%以上30体積%以下であることがより好ましく、10体積%以上30体積%以下であることが更に好ましい。
【0091】
ここで、前記硬質固体粒子の含有量を増やすほど前記クリアインクの粘度が上昇することが知られているが、インクジェット方式で吐出するために用いるインクは、一般に低粘度であることが好ましい。そのため、前記硬質固体粒子の含有量と、前記硬質固体粒子の体積平均粒子径とのバランスにより前記クリアインクの粘度をインクジェット方式に好適な範囲に調整することが好ましい。
また、本明細書において、「マトリックス樹脂」とは、前記クリアインクを硬化させた硬化物中における前記硬質固体粒子以外の周囲の硬化した樹脂を意味する。
【0092】
<<白色インク>>
白色インクは、白色顔料を含有し、重合性化合物及び硬質固体粒子を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。前記白色インクは、インクジェット用インクとして好適に使用され得る。
なお、本明細書において、「白色」とは、社会通念上、白及びホワイトなどと称される色であり、微量着色されているものも含む。
【0093】
前記白色顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択でき、例えば、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ、酸化鉄、酸化スズ、酸化ジルコニウム、鉄とチタンの複合酸化物であるチタン酸鉄などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記白色顔料の個数平均一次粒径は、分散安定性及び吐出安定性の観点から、100nm以上500nm以下が好ましく、200nm以上300nm以下がより好ましい。
前記白色顔料の含有量は、白色インクの全量に対して、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.3質量%以上3質量%以下がより好ましい。
前記白色顔料の含有量が0.1質量%以上5質量%以下であると、十分な白色隠蔽性を得られるという利点がある。
【0094】
前記白色顔料は、分散剤によって分散させて顔料分散体として用いられることが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限はなく、顔料の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
前記白色インク中の前記硬質固体粒子の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm以上1,000nm以下が好ましく、100nm以上1,000nm以下がより好ましく、100nm以上500nm以下が更に好ましく、180m以上300nm以下が特に好ましい。前記白色インク中の前記硬質固体粒子の体積平均粒子径が50nm以上であると、該硬質固体粒子の表面積の増大による増粘を抑えることでインクジェット方式による吐出安定性を向上させることができる。また、前記白色インク中の前記硬質固体粒子の体積平均粒子径が1,000nm以下であると、インクジェット方式による吐出安定性を向上させることができる。また、前記白色インク中の前記硬質固体粒子の体積平均粒子径が100nm以上1,000nm以下であると、より安定したインクジェット吐出性、硬化物においてより優れた遮蔽性、白色性、及び硬度を得ることができる。更に、前記白色インク中における前記硬質固体粒子の分散安定性を考慮すると、前記硬質固体粒子の体積平均粒子径は300nm以下が好ましい。
体積平均粒子径及び粒度分布は、例えば、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0096】
前記白色インクに含まれる前白色顔料以外の重合性化合物及び硬質固体粒子、その他の成分については、前記中間色インク及び前記クリアインクと同様のものを使用することができるため、これらの説明を省略する。また、前記白色インクの物性も前記中間色インクと同様であることが好ましいため、これらの説明も省略する。
【0097】
<<サポートインク>>
前記サポートインクは、該サポートインクが硬化されてなるサポート硬化物に対して水等のサポート部除去処理を施した場合に崩壊性を有し、造形後のモデル部からサポート部を容易に除去できる性質を有するインクである。前記サポートインクは、インクジェット用インクとして好適に使用され得る。
【0098】
前記サポートインクとしては、前記性質を有する限り、特に制限はなく、適宜公知のものを使用することができ、例えば、特開2018-70731号公報などに開示の立体造形用支持材(サポート材)などを用いることができる。
【0099】
前記サポート部は、後述するサポート部除去工程及びサポート部除去手段によって好適に除去することができる。
【0100】
<収容容器>
本発明で用いられる収容容器は、本発明のインクセットの各インクを収容している。即ち、前記収容容器は、インクセットの各インクが収容された状態の容器を意味する。
インクセットの各インクが収容された収容容器は、カートリッジ及びボトルとして使用することができ、これにより、搬送や交換等の作業において、インクセットの各インクに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。
また、インクセットの各インクへのごみ等の異物の混入を防止することができる。
また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、又は容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
【0101】
(立体造形物の製造方法及び立体造形物の製造装置)
本発明の立体造形物の製造方法は、本発明のインクセットおける各インクをインクジェット方式で吐出する吐出工程と、各前記インクに活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の立体造形物の製造方法では、前記吐出工程及び前記硬化工程を順次繰り返すことにより所望の形状の立体造形物を製造する。
【0102】
本発明の立体造形物の製造装置は、本発明のインクセットにおける各インクをインクジェット方式で吐出する吐出手段と、各前記インクに活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化手段と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0103】
本発明のインクセットにおける各インクとしては、例えば、中間色インク、クリアインク、白色インク、サポートインクなどが挙げられる。
【0104】
<吐出工程及び吐出手段>
前記吐出工程は、本発明のインクセットにおける各インクをインクジェット方式で吐出する工程であり、吐出手段により実施される。
前記吐出手段は、本発明のインクセットにおける各インクをインクジェット方式で吐出する手段である。吐出させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、連続噴射型、オンデマンド型などが挙げられる。オンデマンド型としては、例えば、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式などが挙げられる。
前記吐出工程は、本発明のインクセットにおける各インクを、昇降機能を有するステージ上にインクジェット方式で吐出することが好ましい。前記ステージ上に吐出された各インクは、液膜を形成する。
【0105】
<硬化工程及び硬化手段>
前記硬化工程は、前記各インクに活性エネルギー線を照射して硬化させる工程であり、硬化手段により実施される。
前記硬化工程において、ステージ上に形成された各インクからなる液膜は活性エネルギー線が照射されることにより硬化される。
【0106】
-活性エネルギー線-
各インクを硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、光が好ましく、特に波長220nm以上400nm以下の紫外線が好ましい。紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、各インク中の重合性化合物の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0107】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程としては、例えば、平滑化工程、乾燥工程、サポート部除去工程、制御工程などが挙げられる。
前記その他の手段としては、例えば、平滑化手段、乾燥手段、サポート部除去手段、制御手段などが挙げられる。
【0108】
<<平滑化工程及び平滑化手段>>
前記平滑化工程は、前記吐出工程により吐出された各インクからなる液膜の表面を平滑化する工程である。
前記平滑化工程は吐出された各インクのうち余剰な部分を掻き取ることで、各インクからなる液膜、又は層の有する凸凹を平滑化する。
前記平滑化工程は前記平滑化手段により好適に実施される。
前記平滑化手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ローラー、ブラシ、ブレードなどが挙げられる。
【0109】
<<乾燥工程及び乾燥手段>>
前記乾燥工程は、前記硬化工程で形成された層を乾燥する工程である。前記乾燥工程は、乾燥手段により好適に行われる。
前記乾燥手段としては、特に制限はなく、ヒーター等の公知の乾燥機などを用いることができる。
【0110】
<<サポート部除去工程及びサポート部除去手段>>
前記サポート部除去工程は、前記立体造形物の製造方法により得られた立体造形物からサポート部を除去する工程である。前記サポート部除去工程は、サポート部除去手段により好適に行われる。
【0111】
前記サポート部の除去方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、物理的除去、化学的除去などが挙げられる。
前記物理的除去は、機械的な力を加えて前記サポート部を除去する方法である。
前記化学的除去は、溶媒に浸漬し、前記サポート部を崩壊させて除去する方法である。
これらの中でも、前記サポート部の除去方法としては、物理的除去では造形物が破損する可能性があるため、化学的除去法がより好ましい。更に、コストを考慮すると、水に浸漬して除去する方法がより好ましい。水に浸漬して除去する方法が採用される場合、前記サポートインクの硬化物は、水崩壊性を有するものが選択される。
【0112】
前記サポート部除去手段としては、特に制限はなく、前記サポートインクの組成及び崩壊性などに応じて適宜選択することができ、例えば、機械的な力を加えることができるウォータージェット装置、溶媒を収容した容器などが挙げられる。
【0113】
<<制御工程及び制御手段>>
前記制御工程は、前記立体造形物の製造方法を実行するために、前記立体造形物の製造方法における各工程、具体的には、前記吐出工程、前記硬化工程、前記その他の工程などの動作を制御する工程である。
【0114】
以下、本発明のインクセットを用いた立体造形物の造形方法、及び立体造形物の製造装置について、図2を用いて詳細に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
図2は、本発明の立体造形物の製造装置の一実施形態に係る造形装置を示す概略図である。造形装置30は、吐出部としてのヘッドユニット31、32、硬化実行部としての紫外線照射機33、ローラー34、キャリッジ35、及びステージ37を有する。ヘッドユニット31は、中間色インク、クリアインク、及び白色インクをそれぞれ独立して吐出する(図3では、吐出された中間色インク、吐出されたクリアインク、又は吐出された白色インクの液滴を1と表示する)。ヘッドユニット32は、サポートインクの液滴2を吐出する。
ローラー34は、中間色インク、クリアインク、白色インク、及びサポートインクにより形成された着弾領域における液膜を平滑化する。
紫外線照射機33は、吐出された中間色インク、クリアインク、白色インク、及びサポートインクに紫外線を照射して硬化する。
キャリッジ35は、ヘッドユニット31、32等の各手段を、図2におけるX方向に往復移動させる。ステージ37は、基板36を、図2に示すZ方向、及び図2の奥行方向であるY方向に移動させる。
なお、Y方向への移動は、ステージ37ではなくキャリッジ35において行ってもよい。
【0115】
図2では、ヘッドユニット31は1つのみを図示しているが、中間色インクを収容するヘッドユニット、クリアインクを収容するヘッドユニット、及び白色インクを収容するヘッドユニットの少なくとも3つを有し、更に必要に応じて、中間色インクを複数使用する場合、ヘッドユニット31は、中間色インクの各色がそれぞれ独立して吐出可能な構成になっている。
ヘッドユニット31、32におけるノズルとしては、公知のインクジェットプリンターにおけるノズルを好適に使用することができる。
【0116】
ローラー34に使用できる金属としては、SUS300系、400系、600系、六価クロム、窒化珪素、タングステンカーバーイドなどが例示される。また、これらのいずれかをフッ素又はシリコーンなどで被膜コーティングした金属を、ローラー34に使用してもよい。これらの金属の中でも、強度、加工性の面からSUS600系が好ましい。
ローラー34を使用する場合、造形装置30は、ローラー34と造形物の面とのギャップを一定に保つため、積層回数に合わせて、ステージ37を下げながら積層する。ローラー34は紫外線照射機33に隣接している構成が好ましい。
【0117】
また、休止時のインクの乾燥を防ぐため、造形装置30には、ヘッドユニット31、32におけるノズルを塞ぐキャップなどの手段を設置してもよい。また、長時間連続使用時のノズルの詰まりを防ぐため、造形装置30には、ヘッドをメンテナンスするためのメンテナンス機構を設置してもよい。
【0118】
以下、本発明の立体造形物の製造装置で行われる、前記吐出工程及び前記硬化工程を順次繰り返す造形物(硬化物)の造形工程について説明する。
立体造形物の製造装置30のエンジンは、キャリッジ35、又はステージ37を移動させながら、入力された二次元データのうち最も底面側の断面を示す二次元データに基づいて、ヘッドユニット31から中間色インク、クリアインク、及び白色インクの液滴1を吐出させ、ヘッドユニット32からサポートインクの液滴2を吐出させる。これにより、最も底面側の断面を示す二次元データにおけるモデル部を示す画素に対応する位置に中間色インク、クリアインク、及び白色インクの液滴1が配され、サポート部を示す画素に対応する位置にサポートインクの液滴2が配され、隣り合う位置の液滴同士が接した液膜が形成される。なお、造形する造形物が1個の場合は、ステージ37の真中に断面形状の液膜が形成される。造形する造形物が複数個の場合、立体造形物の製造装置30は、ステージ37に複数個の断面形状の液膜を形成してもよいし、先に造形された造形物に液膜を積み重ねてもよい。
【0119】
ヘッドユニット31及び32にはヒータを設置することが好ましい。更に、ヘッドユニット31に中間色インク、クリアインク、及び白色インクを供給する経路及びヘッドユニット32にサポートインクを供給する経路にプレヒータを設置することが好ましい。
【0120】
平滑化工程において、ローラー34は、ステージ37上に吐出された中間色インク、クリアインク、及び白色インク、並びにサポートインクのうち余剰な部分を掻き取ることで、中間色インク、クリアインク、及び白色インク、並びにサポートインクからなる液膜、又は層の有する凸凹を平滑化する。平滑化工程はZ軸方向へ積層毎に1回行われてもよいし、2乃至50回の積層毎に1回行われてもよい。
平滑化工程において、ローラー34は停止していてもよいし、ステージ37の進行方向に対して正もしくは負の相対速度で回転していてもよい。またローラー34の回転速度は定速でも一定加速度、一定減速度でもよい。ローラー34の回転数は、ステージ37との相対速度の絶対値として、50mm/s以上400mm/s以下が好ましい。相対速度が小さすぎる場合、平滑化が不十分で平滑性が損なわれる。また相対速度が大きすぎる場合、装置が大型化を要し、振動などによって、吐出された液滴の位置ずれなどが発生しやすく、結果として平滑性が低下することがある。平滑化工程において、ローラー34の回転方向はヘッドユニット31,32の進行方向と逆向きであることが好ましい。
【0121】
硬化工程において、立体造形物の製造装置30のエンジンは、キャリッジ35により紫外線照射機33を移動させて、吐出工程で形成された液膜に、中間色インク、クリアインク、及び白色インク、並びにサポートインクに含まれる光重合開始剤の波長に応じた紫外線を照射する。これにより、立体造形物の製造装置30は、液膜を硬化して、層を形成する。
【0122】
最も底面側の層の形成後、立体造形物の製造装置30のエンジンは、ステージを一層分、下降させる。
立体造形物の製造装置30のエンジンは、キャリッジ35、又はステージ37を移動させながら、底面側から二つ目の断面を示す二次元画像データに基づいて、中間色インク、クリアインク、及び白色インクの液滴1を吐出させ、サポートインクの液滴2を吐出させる。吐出方法は、最も底面側の液膜を形成するときと同様である。これにより、最も底面側の層上に、底面側から二つ目の二次元データが示す断面形状の液膜が形成される。更に、立体造形物の製造装置30のエンジンは、キャリッジ35により紫外線照射機33を移動させて、液膜に紫外線を照射することにより、液膜を硬化して、最も底面側の層上に、底面側から二つ目の層を形成する。
立体造形物の製造装置30のエンジンは、入力された二次元データについて、底面側に近いものから順に利用して、上記と同様に、液膜の形成と、硬化と、を繰り返し、層を積層させる。繰り返しの回数は、入力された二次元画像データの数、あるいは三次元モデルの高さ、形状などに応じて異なる。すべての二次元画像データを用いた造形が完了すると、サポート部に支持された状態のモデル部の造形物が得られる。
【0123】
立体造形物の製造装置30により造形された造形物は、モデル部及びサポート部を有する。サポート部は、造形後に造形物から除去される。除去方法としては、物理的除去、及び化学的除去がある。物理的除去では、機械的な力を加えて除去する。一方、化学的除去では、溶媒に浸漬し、サポート部を崩壊させて除去する。サポート部の除去方法としては、特に制限はないが、物理的除去では造形物が破損する可能性があるため、化学的除去がより好ましい。更に、コストを考慮すると水に浸漬して除去する方法がより好ましい。水に浸漬して除去する方法が採用される場合、サポートインクの硬化物は、水崩壊性を有するものが選択される。
【0124】
本発明の立体造形物の製造方法及び本発明の立体造形物の製造装置により造形された立体造形物は、以下に示すように高弾性率、高強度、及び高硬度を兼ね備えているので、例えば、人工歯、眼鏡フレーム、靴のアウトソール、ミドルソール、ハンドル等のグリップ部、補聴器、イヤホン、義歯の床、義肢、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーター、操作部のパネルなどに好適に用いることができる。
【0125】
立体造形物のビッカース硬度は、23以上が好ましく、30以上がより好ましい。
ビッカース硬度は、例えば、JIS Z2244の手順に基づき測定することができる。
【0126】
立体造形物の曲げ強度は、100MPa以上が好ましく、130MPa以上がより好ましい。
曲げ強度の測定は、万能試験機(オートグラフ、型式AG-I、株式会社島津製作所製)を使用し、1kN用ロードセル、及び3点曲げ治具を用いた。また、支点間距離は24mmとし、荷重点を1mm/分間の速度で変位させた際の応力を歪量に対してプロットし、破断点の応力を最大応力とすることができる。
【0127】
(対象物の着色方法)
本発明の対象物の着色方法は、複数種の顔料の混合物を含有し、かつ対象物の色域に近い色彩を有する中間色インクをインクジェット方式で吐出させて前記対象物を着色する。
前記対象物の着色方法によると、従来のイエローインクとシアンインクとマゼンタインクに比べて、高い階調性が要求される対象物の色域に近い色彩に対象物を着色することができる。
【0128】
前記中間色インクをインクジェット方式で吐出させて対象物を着色する態様としては、特に制限はなく、中間色インクをインクジェット方式で吐出させて着色された立体造形物を造形する態様、対象物に中間色インクをインクジェット方式で吐出させて着色する態様などが挙げられる。
【0129】
<対象物>
前記対象物としては、その材質、形状、大きさ、構造、色などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記対象物の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂、紙、樹脂フィルム、布、金属、セラミックスなどが挙げられる。
前記対象物の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二次元の印刷物であってもよく、三次元の立体造形物であってもよい。
前記対象物の形状及び大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記対象物としては、高い階調性が要求される人工歯が好適に用いられる。人工歯とは、う蝕、外傷、歯周病などにより失った天然歯の代わりに、その機能を回復するために用いられる人工的に形成された歯や、審美性を高めるために天然歯の表面に張り付けるラミネートを意味する。
前記歯の一部としては、例えば、インレー、アンレー、クラウン、ブリッジなどが挙げられる。
前記歯の全部としては、例えば、インプラント、入れ歯等の義歯などが挙げられる。
【0130】
<中間色インク>
前記中間色インクは、複数種の顔料の混合物を含有し、かつ対象物の色域に近い色彩を有する。
前記中間色インクにおける、「対象物の色域に近い色彩を有する」とは、以下のとおり定義される。
前記中間色インクが3種類以上の中間色インクを含み、
JIS Z8729に規定するL表色系におけるaを横軸とし、bを縦軸とした色度図において、3種類以上の前記中間色インクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた多角形が前記対象物の色域と少なくとも一部重複し、前記多角形における1辺の最大長さが、イエローインクとシアンインクとマゼンタインクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた三角形における1辺の最小長さより短い。このような対象物の色域に近い色彩を有する中間色インクを用いることにより、従来のイエローインクとシアンインクとマゼンタインクに比べて、高い階調性が要求される対象物の色域に近い色彩に対象物を着色することができる。
【0131】
前記中間色インクとしては、本発明のインクセットにおける中間色インクが好適に用いられる。
【実施例0132】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0133】
(調製例1:モノマー配合液の調製)
メチルメタクリレート(MMA、富士フイルム和光純薬株式会社製)10質量部、ウレタンジメタクリレート(UDMA、Sigma-Aldrich株式会社製)60質量部、及びジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA、製品名:NKエステル 2G、新中村工業株式会社製)30質量部を均一に混合した。次に、光重合開始剤としてのジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名:Omnirad TPO、BASF社製)5質量部、及び重合禁止剤としてのp-メトキシフェノール(MEHQ、富士フイルム和光純薬株式会社製、和光一級)0.05質量部を加え、均一に混合してモノマー配合液を得た。
【0134】
(調製例2-1:クリアインク1の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液を、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「クリアインク1」を得た。
【0135】
(調製例2-2:クリアインク2の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液と、硬質固体粒子としてのシリカ粒子(アドマナノ Y100SM-C6、体積平均粒子径100nm、株式会社アドマテックス製、球状、シランカップリング剤によるメタクリレート処理)とを、質量比で、モノマー配合液:シリカ粒子が105.05:30となるようにして均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)を通過させて、「クリアインク2」を得た。
【0136】
(調製例3-1:白色インク1の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が5質量%となるように白色顔料としてのNC WHITE 986(御国色素株式会社製、体積平均粒子径182nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「白色インク1」を得た。
【0137】
(調製例3-1:白色インク2の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液と、硬質固体粒子としてのシリカ粒子(アドマナノ Y100SM-C6、体積平均粒子径100nm、株式会社アドマテックス製、球状、シランカップリング剤によるメタクリレート処理)とを、質量比で、モノマー配合液:シリカ粒子が105.05:30となるようにして均一に混合した。次に、混合物の全質量に対する含有量が5質量%となるように白色顔料としてのNC WHITE 986(御国色素株式会社製、体積平均粒子径182nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)を通過させて、「白色インク2」を得た。
【0138】
(調製例4-1:イエローインク1の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が7.2質量%となるようにイエロー顔料としてのNJ YELLOW 892(御国色素株式会社製、体積平均粒子径216nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「イエローインク1」を得た。
【0139】
(調製例4-2:イエローインク2の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が1.6質量%となるようにイエロー顔料としてのNJ YELLOW 892(御国色素株式会社製、体積平均粒子径216nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「イエローインク2」を得た。
【0140】
(調製例5-1:マゼンタインク1の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が9質量%となるようにマゼンタ顔料としてのNJ MAGENTA 910(御国株式会社製、体積平均粒子径155nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「マゼンタインク1」を得た。
【0141】
(調製例5-2:マゼンタインク2の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が2質量%となるようにマゼンタ顔料としてのNJ MAGENTA 910(御国色素株式会社製、体積平均粒子径155nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「マゼンタインク2」を得た。
【0142】
(調製例6-1:シアンインク1の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が7.2質量%となるようにシアン顔料としてのNJ CYAN 912(御国株式会社製、体積平均粒子径192nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「シアンインク1」を得た。
【0143】
(調製例6-2:シアンインク2の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が1.6質量%となるようにシアン顔料としてのNJ CYAN 912(御国株式会社製、体積平均粒子径192nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「シアンインク2」を得た。
【0144】
(調製例7-1:中間色インク1の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が1.800質量%となるようにイエロー顔料としてのNJ YELLOW 892(御国色素株式会社製、体積平均粒子径216nm)、及び含有量が0.180質量%となるようにマゼンタ顔料としてのNJ MAGENTA 910(御国株式会社製、体積平均粒子径155nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「中間色インク1」を得た。
【0145】
(調製例7-2:中間色インク2の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が1.000質量%となるようにイエロー顔料としてのNJ YELLOW 892(御国色素株式会社製、体積平均粒子径216nm)、及び含有量が0.480質量%となるようにマゼンタ顔料としてのNJ MAGENTA 910(御国色素株式会社製、体積平均粒子径155nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「中間色インク2」を得た。
【0146】
(調製例7-3:中間色インク3の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が1.500質量%となるようにイエロー顔料としてのNJ YELLOW 892(御国色素株式会社製、体積平均粒子径216nm)、含有量が0.850質量%となるようにマゼンタ顔料としてのNJ MAGENTA 910(御国色素株式会社製、体積平均粒子径155nm)、及び含有量が0.235質量%となるようにシアン顔料としてのNJ CYAN 912(御国色素株式会社製、体積平均粒子径192nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「中間色インク3」を得た。
【0147】
(調製例7-4:中間色インク4の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が1.440質量%となるようにイエロー顔料としてのNJ YELLOW 892(御国株式会社製、体積平均粒子径216nm)、及び含有量が0.144質量%となるようにマゼンタ顔料としてのNJ MAGENTA 910(御国色素株式会社製、体積平均粒子径155nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「中間色インク4」を得た。
【0148】
(調製例7-5:中間色インク5の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が0.800質量%となるようにイエロー顔料としてのNJ YELLOW 892(御国色素株式会社製、体積平均粒子径216nm)、及び含有量が0.384質量%となるようにマゼンタ顔料としてのNJ MAGENTA 910(御国色素株式会社製、体積平均粒子径155nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「中間色インク5」を得た。
【0149】
(調製例7-6:中間色インク6の調製)
調製例1で得られたモノマー配合液の全質量に対する含有量が1.200質量%となるようにイエロー顔料としてのNJ YELLOW 892(御国色素株式会社製、体積平均粒子径155nm)、含有量が0.680質量%となるようにマゼンタ顔料としてのNJ MAGENTA 910(御国色素株式会社製、体積平均粒子径155nm)、及び含有量が0.188質量%となるようにシアン顔料としてのNJ CYAN 912(御国色素株式会社製、体積平均粒子径192nm)を加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)に通過させて、「中間色インク6」を得た。
【0150】
(調製例8:サポートインクの調製)
アクリロイルモルホリン(商品名:ACMO(登録商標)、KJケミカルズ株式会社製)30質量部、1,5-ペンタンジオール(東京化成工業株式会社製)20質量部、ポリプロピレングリコール2(商品名:アクトコール(登録商標)D-1000、三井化学ファイン株式会社製、数平均分子量:1,000)、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキシド(商品名:イルガキュア819、BASF社製)2質量部を添加し、撹拌混合して「サポートインク」を得た。
【0151】
次に、調製した中間色インク1~6、クリアインク1~2、白色インク1~2、イエローインク1~2、マゼンタインク1~2、及びシアンインク1~2の処方を表1~表3にまとめて示した。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
(実施例1~3及び比較例1~2)
<ソリデックスハーデュラ歯冠用コンポジットレジンA3B及びA3.5B(株式会社松風製)の色彩を再現するための造形条件の導出方法>
対象物の最も狙いの色に近い造形条件は、いわゆるICC/ICMプロファイルのようなカラーマッチングアルゴリズムの計算結果から導出することができる。
ICCプロファイル(ISO 15076-1:2005及びISO 15076-1:2005)の作成は、次の手順で行った。
・手順1:出力するテストチャートを決める。なお、テストチャートはISO 12642-2/ANSI IT8.7/4 Visualを使用した。
・手順2:テストチャートを厚さ1mmで造形した。
・手順3:造形したテストチャートを測色した。なお、測色器としては分光測色計(eXact、X-Rite社製)を用いた。
・手順4:色結果の数値からICCプロファイルを作成した。
【0156】
次に、作成したICCプロファイルを用いて、ソリデックスハーデュラ歯冠用コンポジットレジンA3B及びA3.5B(株式会社松風製)の色再現に適した造形条件をi1Profiler(X-Rite社製)により計算し、得られた造形条件に基づき、実施例1~3及び比較例1~2のインクセットを用いて立体造形物を作製した。
【0157】
図2に示す立体造形物の造形装置において、インクジェットヘッド(商品名:MH2820、リコーインダストリー株式会社製)に通じる6つのタンクに、得られたクリアインク、白色インク、3種類の中間色インク(あるいはイエローインク、マゼンタインク、又はシアンインク)、及びサポートインクを、表4に示す組み合わせにしたがってそれぞれ充填した。
次に、造形するモデル部の形状を、X方向の長さ30mm、Y方向の長さ30mm、及びZ方向の高さ1mmに設定し、更に、サポート部をモデル部の周囲に設定した。その後、インクジェットヘッドから所定の条件(1/4インターレース、走査スピード:150mm/s、吐出周波数:3,500kHz、600×600dpi)でクリアインク、白色インク、3種類の中間色インク(あるいはイエローインク、マゼンタインク、又はシアンインク)、及びサポートインクを吐出させ、更にローラーにより表面の平滑化処理を行った。
次に、紫外線照射機(装置名:SPOT CURE SP5-250DB、ウシオ電機株式会社製)で350mJ/cmの光量を照射してクリアインク、白色インク、3種類の中間色インク、及びサポートインクを硬化させた。その後、これら一連の工程を繰り返して複数の層を形成した。
次に、得られた造形物を40℃、1Lの水に入れ、超音波振動を1時間行うことでサポート部を除去し、モデル部を残した。その後、モデル部を水から取り出し、室温(25℃)で24時間乾燥させることにより、X方向の長さ30mm、Y方向の長さ30mm、及びZ方向の高さ1mmの立体造形物を得た。
【0158】
<ソリデックスA3B及びA3.5Bの硬化物の色彩(L,a,b)の測定方法>
ソリデックスハーデュラ歯冠用コンポジットレジンA3BとA3.5B(株式会社松風製)を用い、それぞれ直径約10mm、及び厚み1mmの試験片を作製し、硬化させることにより硬化物を作製した。硬化にはLC-3Dプリントボックス(3D systems社製)を用いた。
得られた硬化物を分光測色計eXact(X-Rite社製)で色彩(L,a,b)を3回測定し、平均値を求めた。
ソリデックスハーデュラ歯冠用コンポジットレジンA3B及びA3.5B(株式会社松風製)の硬化物は、天然歯に近い色調再現性を備えている。
【0159】
<色差(ΔE)の評価>
実施例1~3及び比較例1~2のインクセットを用い、ソリデックスハーデュラ歯冠用コンポジットレジンA3B及びA3.5B(株式会社松風製)の色の再現を狙った造形条件で造形した造形物の分光測色計(eXact、X-Rite社製)で測定した色彩(L,a,b)と、ソリデックスハーデュラ歯冠用コンポジットレジンA3B及びA3.5B(株式会社松風製)の硬化物の分光測色計(eXact、X-Rite社製)で測定した色彩(L,a,b)から、下記数式(1)により、色差(ΔE)を計算し、下記基準により評価した。結果を表4に示した。
ΔE=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2 ・・・数式(1)
ΔL:(造形物のL)-(A3B又はA3.5Bの硬化物のL
Δa:(造形物のa)-(A3B又はA3.5Bの硬化物のa
Δb:(造形物のb)-(A3B又はA3.5Bの硬化物のb
【0160】
[評価基準]
〇:色差(ΔE)が、A3B及びA3.5Bのいずれに対しても0.5未満
×:色差(ΔE)が、A3B及びA3.5Bのいずれか一方又は両方に対して0.5以上
【0161】
<曲げ強度>
得られた各立体造形物について、万能試験機(オートグラフ、型式AG-I、株式会社島津製作所製)を使用し、1kN用ロードセル、及び3点曲げ治具を用いた。また、支点間距離は24mmとし、荷重点を1mm/分間の速度で変位させた際の応力を歪量に対してプロットし、破断点の応力を最大応力(曲げ強度)とした。曲げ強度の値から、下記の基準に基づき評価した。結果を表4に示した。
[評価基準]
〇:曲げ強度が100MPa以上
×:曲げ強度が100MPa未満
【0162】
<ビッカース硬度>
得られた各立体造形物について、JIS Z2244の手順に基づき、ビッカース硬度を測定し、下記の基準で評価した。結果を表4に示した。
[評価基準]
〇:ビッカース硬度が23以上
×:ビッカース硬度が23未満
【0163】
【表4】
【0164】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 少なくとも1種の中間色インクを有し、
前記中間色インクが複数種の顔料の混合物を含有し、かつ対象物の色域に近い色彩を有することを特徴とするインクセットである。
<2> 前記対象物が人工歯である、前記<1>に記載のインクセットである。
<3> 前記中間色インクが3種類以上の中間色インクを含み、
JIS Z8729に規定するL表色系におけるaを横軸とし、bを縦軸とした色度図において、3種類以上の前記中間色インクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた多角形が前記対象物の色域と少なくとも一部重複し、前記多角形における1辺の最大長さが、イエローインクとシアンインクとマゼンタインクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた三角形における1辺の最小長さより短い、前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクセットである。
<4> 複数種の前記顔料の混合物の含有量が0.01質量%以上1質量%以下である、前記<1>に記載のインクセットである。
<5> 複数種の前記顔料が、イエロー顔料、マゼンタ顔料、及びシアン顔料から選択される少なくとも2種である、前記<1>に記載のインクセットである。
<6> 前記中間色インクが重合性化合物を含有する、前記<1>に記載のインクセットである。
<7> 立体造形用である、前記<6>に記載のインクセットである。
<8> クリアインク、白色インク、及びサポートインクから選択される少なくともいずれかを有する、前記<6>に記載のインクセットである。
<9> 以下の中間色インクA、中間色インクB、及び中間色インクCを含む、前記<8>に記載のインクセットである。
前記中間色インクAが、イエロー顔料及びマゼンタ顔料を含有し、前記中間色インクAの硬化物のL表色系におけるb*が40以上70以下、aがbよりも小さく、前記イエロー顔料及び前記マゼンタ顔料の総含有量が0.01質量%以上1質量%以下である。
前記中間色インクBが、イエロー顔料及びマゼンタ顔料を含有し、前記中間色インクBの硬化物のL表色系におけるaが40以上70以下、bがaよりも小さく、前記イエロー顔料及び前記マゼンタ顔料の総含有量が0.1質量%以上0.4質量%以下である。
前記中間色インクCが、イエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料を含有し、前記中間色インクCの硬化物のL表色系におけるaが-10以上5以下、bが-5以上10以下、前記イエロー顔料、前記マゼンタ顔料及び前記シアン顔料の総含有量が0.1質量%以上0.4質量%以下である。
<10> 前記クリアインクが体積平均粒子径50nm以上1,000nm以下の硬質固体粒子を含有する、前記<8>に記載のインクセットである。
<11> 前記白色インクが体積平均粒子径50nm以上1,000nm以下の硬質固体粒子を含有する、前記<8>に記載のインクセットである。
<12> 前記インクセットに含まれるすべてのインクが、70℃での粘度が50mPa・s以下である、前記<9>に記載のインクセットである。
<13> 前記中間色インクにおける複数の前記顔料の体積平均粒子径が50nm以上1,000nm以下である、前記<9>に記載のインクセットである。
<14> 前記<6>から<13>のいずれかに記載のインクセットおける各インクをインクジェット方式で吐出する吐出工程と、
各前記インクに活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化工程と、を含み、
前記吐出工程及び前記硬化工程を順次繰り返すことを含むことを特徴とする立体造形物の製造方法である。
<15> 前記<6>から<13>のいずれかに記載のインクセットにおける各インクをインクジェット方式で吐出する吐出手段と、
各前記インクに活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化手段と、を有することを特徴とする立体造形物の製造装置である。
<16> 複数種の顔料の混合物を含有し、かつ対象物の色域に近い色彩を有する中間色インクをインクジェット方式で吐出させて前記対象物を着色することを特徴とする対象物の着色方法である。
<17> 前記対象物が人工歯である、前記<16>に記載の対象物の着色方法である。
<18> 前記中間色インクが3種類以上の中間色インクを含み、
JIS Z8729に規定するL表色系におけるaを横軸とし、bを縦軸とした色度図において、3種類以上の前記中間色インクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた多角形が前記対象物の色域と少なくとも一部重複し、前記多角形における1辺の最大長さが、イエローインクとシアンインクとマゼンタインクのそれぞれの色度(a、b)を頂点として描いた三角形における1辺の最小長さより短い、前記<16>から<17>のいずれかに記載の対象物の着色方法である。
【0165】
前記<1>から<13>のいずれかに記載のインクセット、前記<14>に記載の立体造形物の製造方法、前記<15>に記載の立体造形物の製造装置、及び前記<16>から<18>のいずれかに記載の対象物の着色方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0166】
1 中間色インク、クリアインク、又は白色インクの液滴
2 サポートインクの液滴
10 モデル部
20 サポート部
30 造形装置
31、32 ヘッドユニット
33 紫外線照射機
34 ローラー
35 キャリッジ
36 基板
37 ステージ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0167】
【特許文献1】特許第4711161号公報
図1
図2