(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079555
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】骨材の品質予測方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
C04B 20/00 20060101AFI20240604BHJP
B28C 7/04 20060101ALI20240604BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240604BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20240604BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240604BHJP
【FI】
C04B20/00 B
B28C7/04
C04B28/02
G01N33/38
G06T7/00 610Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126373
(22)【出願日】2023-08-02
(62)【分割の表示】P 2022192219の分割
【原出願日】2022-11-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】板橋 庸行
(72)【発明者】
【氏名】玉滝 浩司
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
5L096
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CB00
4G112PA02
4G112PE00
5L096BA03
5L096CA02
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】生コンクリートの品質の安定化を図る。
【解決手段】骨材の品質予測方法は、骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値を出力する予測モデルを構築する準備工程と、評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、前記入力情報に対応する評価情報を取得する取得工程と、前記評価情報を前記予測モデルに入力して、骨材の粗粒率に関して前記予測モデルから出力される第1予測値を取得する予測工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値を出力する予測モデルを構築する準備工程と、
評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、前記入力情報に対応する評価情報を取得する取得工程と、
前記評価情報を前記予測モデルに入力して、骨材の粗粒率に関して前記予測モデルから出力される第1予測値を取得する予測工程と、を含む、骨材の品質予測方法。
【請求項2】
前記準備工程では、前記予測モデルが、前記入力情報に応じて骨材の粗粒率を示す値のみを出力するように構築される、請求項1に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項3】
前記準備工程は、前記入力情報に対応付けられた、骨材の複数の粒度区分それぞれの質量比率の正解値に更に基づく機械学習により、前記予測モデルを構築することを含み、
前記準備工程では、前記予測モデルが、前記入力情報に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとの質量比率を示す値を更に出力するように構築され、
前記予測工程は、
前記評価情報を前記予測モデルに入力して、前記区分ごとの質量比率に関して前記予測モデルから出力される第2予測値を更に取得することと、
前記第2予測値を骨材の粗粒率に換算することと、を含む、請求項1に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項4】
前記準備工程は、骨材の粗粒率に関する第1誤差と、前記区分ごとの質量比率に関する第2誤差とに基づいて、前記予測モデルを構築する過程で生成される中間モデルを更新することを含み、
前記準備工程では、前記第1誤差と前記第2誤差との差が縮小するように補正された誤差を用いて、前記中間モデルが更新される、請求項3に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項5】
前記準備工程は、畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習により前記予測モデルを構築することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項6】
前記取得工程は、前記評価対象の骨材が積み重なった状態で、前記評価対象の骨材とは離れた位置から前記評価対象の骨材を含む範囲を撮像して、前記評価情報を取得することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項7】
前記準備工程は、2以上の粒度区分の粒が含まれるように学習用の骨材を準備することを含み、
前記入力情報は、前記学習用の骨材を撮像して得られる画像データを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項8】
骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造工程と、
前記製造工程に用いられる骨材の少なくとも一部の粗粒率を予測する品質予測工程と、
を含み、
前記品質予測工程は、
骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値を出力する予測モデルを構築する準備工程と、
評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、前記入力情報に対応する評価情報を取得する取得工程と、
前記評価情報を前記予測モデルに入力して、骨材の粗粒率に関して前記予測モデルから出力される第1予測値を取得する予測工程と、を含む、生コンクリートの製造方法。
【請求項9】
骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置と、
前記製造装置が用いる骨材の少なくとも一部の粗粒率を予測する品質予測装置と、を備え、
前記品質予測装置は、
骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値を出力する予測モデルを構築する準備工程と、
評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、前記入力情報に対応する評価情報を取得する取得工程と、
前記評価情報を前記予測モデルに入力して、骨材の粗粒率に関して前記予測モデルから出力される第1予測値を取得する予測工程と、を実行するように構成されている、生コンクリートの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、骨材の品質予測方法、生コンクリートの製造方法、及び、生コンクリートの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、土の粒度分布の推定方法が開示されている。特許文献2には、骨材の品質推定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-117625号公報
【特許文献2】特開2021-135199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、生コンクリートの品質の安定化に有用な骨材の品質予測方法、生コンクリートの製造方法、及び、生コンクリートの製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値を出力する予測モデルを構築する準備工程と、評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、前記入力情報に対応する評価情報を取得する取得工程と、前記評価情報を前記予測モデルに入力して、骨材の粗粒率に関して前記予測モデルから出力される第1予測値を取得する予測工程と、を含む、骨材の品質予測方法。
[2]前記準備工程では、前記予測モデルが、前記入力情報に応じて骨材の粗粒率を示す値のみを出力するように構築される、上記[1]に記載の骨材の品質予測方法。
[3]前記準備工程は、前記入力情報に対応付けられた、骨材の複数の粒度区分それぞれの質量比率の正解値に更に基づく機械学習により、前記予測モデルを構築することを含み、前記準備工程では、前記予測モデルが、前記入力情報に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとの質量比率を示す値を更に出力するように構築され、前記予測工程は、前記評価情報を前記予測モデルに入力して、前記区分ごとの質量比率に関して前記予測モデルから出力される第2予測値を更に取得することと、前記第2予測値を骨材の粗粒率に換算することと、を含む、上記[1]に記載の骨材の品質予測方法。
[4]前記準備工程は、骨材の粗粒率に関する第1誤差と、前記区分ごとの質量比率に関する第2誤差とに基づいて、前記予測モデルを構築する過程で生成される中間モデルを更新することを含み、前記準備工程では、前記第1誤差と前記第2誤差との差が縮小するように補正された誤差を用いて、前記中間モデルが更新される、上記[3]に記載の骨材の品質予測方法。
[5]前記準備工程は、畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習により前記予測モデルを構築することを含む、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の骨材の品質予測方法。
[6]前記取得工程は、前記評価対象の骨材が積み重なった状態で、前記評価対象の骨材とは離れた位置から前記評価対象の骨材を含む範囲を撮像して、前記評価情報を取得することを含む、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の骨材の品質予測方法。
[7]前記準備工程は、2以上の粒度区分の粒が含まれるように学習用の骨材を準備することを含み、前記入力情報は、前記学習用の骨材を撮像して得られる画像データを含む、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の骨材の品質予測方法。
[8]骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造工程と、前記製造工程に用いられる骨材の少なくとも一部の粗粒率を予測する品質予測工程と、を含み、前記品質予測工程は、骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値を出力する予測モデルを構築する準備工程と、評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、前記入力情報に対応する評価情報を取得する取得工程と、前記評価情報を前記予測モデルに入力して、骨材の粗粒率に関して前記予測モデルから出力される第1予測値を取得する予測工程と、を含む、生コンクリートの製造方法。
[9]骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置と、前記製造装置が用いる骨材の少なくとも一部の粗粒率を予測する品質予測装置と、を備え、前記品質予測装置は、骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値を出力する予測モデルを構築する準備工程と、評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、前記入力情報に対応する評価情報を取得する取得工程と、前記評価情報を前記予測モデルに入力して、骨材の粗粒率に関して前記予測モデルから出力される第1予測値を取得する予測工程と、を実行するように構成されている、生コンクリートの製造システム。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、生コンクリートの品質の安定化に有用な骨材の品質予測方法、生コンクリートの製造方法、及び、生コンクリートの製造システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、生コンクリートの製造システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3(a)は、学習フェーズで実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図3(b)は、評価フェーズで実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4(a)は、予測モデルを用いた予測演算の一例を模式的に示す図である。
図4(b)は、学習用の画像データを取得する様子の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、学習用の画像データの一例を示す図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10(a)及び
図10(b)は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
【
図11】
図11(a)及び
図11(b)は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
【
図12】
図12は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
【
図13】
図13は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
【
図14】
図14は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
図1には、一実施形態に係る生コンクリートの製造システムが模式的に示されている。
図1に示される製造システム1は、生コンクリートを製造するシステムである。製造システム1は、コンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造(生成)する。製造システム1は、生コンクリートを製造する機能に加えて、コンクリート材料の品質を予測する機能を有する。
【0010】
製造システム1によって用いられるコンクリート材料は、セメント、混和材、粗骨材、細骨材、水、及び混和剤等を含む。粗骨材には、例えば、山砂利、陸砂利、川砂利、海砂利などの砂利;砕石;高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材、石炭ガス化スラグ骨材などのスラグ粗骨材;天然軽量骨材、副産軽量骨材、人工軽量骨材などの軽量粗骨材;再生粗骨材;回収骨材又はこれらを混合した粗骨材が挙げられる。粗骨材は、例えば、砕岩砕石、又は石灰砕石を含んでよい。細骨材には、例えば、山砂、陸砂、川砂、海砂などの砂;砕砂;高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材、石炭ガス化スラグ骨材などのスラグ細骨材;天然軽量骨材、副産軽量骨材、人工軽量骨材などの軽量細骨材;再生細骨材;回収骨材又はこれらを混合した細骨材が挙げられる。また、砕石、砕砂の岩種には、花崗岩、閃緑岩、斑れい岩、ひん岩、輝緑岩、流紋岩、安山岩、玄武岩、蛇紋岩などの火成岩類;礫岩、砂岩、頁岩、粘板岩、凝灰岩などの堆積岩類;片麻岩、結晶片岩などの変成岩類;その他、珪石、石灰岩、ドマロイト、かんらん岩などがある。本開示では、粗骨材及び細骨材を総称して、「骨材」と称する場合がある。この場合、「骨材」は、粗骨材、細骨材、又は、粗骨材及び細骨材の両方を意味する。
【0011】
製造システム1は、製造した生コンクリートを運搬車Cに積み込む。運搬車Cは、生コンクリートが積み込まれた後に、生コンクリートが使用される現場(例えば、工事現場)まで生コンクリートを運搬する。運搬車Cとしては、例えば、アジテータ車(ミキサ車)、及び、ダンプトラックが挙げられる。製造システム1は、現場ごとに設定された目標品質(要求品質)を満たすように、コンクリート材料から生コンクリートを製造してもよい。一例では、生コンクリートの目標品質は、スランプ、又はスランプフローの目標値を含む。製造システム1は、例えば、材料置場2と、運搬装置8と、製造装置10と、撮像装置50と、制御装置60とを備える。
【0012】
材料置場2は、コンクリート材料を貯蔵する場所である。材料置場2は、複数のサイロ4を含む。複数のサイロ4は、コンクリート材料の少なくとも一部を、材料の種類ごとに貯蔵する容器である。複数のサイロ4は、粗骨材を貯蔵するサイロ4と、細骨材を貯蔵するサイロ4と、セメントを含むサイロ4とを含む。
【0013】
運搬装置8は、複数のサイロ4に貯蔵されたコンクリート材料を、製造装置10まで運搬する装置である。運搬装置8は、例えば、コンクリート材料を搬送するベルトコンベアを含む。ベルトコンベアの横幅は、30cm~160cm程度であってもよい。運搬装置8は、互いに異なるタイミングで、材料の種類ごとにコンクリート材料を運搬してもよい。一例では、制御装置60による動作指示に基づいて、各種コンクリート材料のうちの特定の材料が運搬装置8に移され、製造装置10まで搬送される。
【0014】
製造装置10は、骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する装置である。製造装置10は、制御装置60からの動作指示に基づいて動作する。製造装置10は、例えば、貯蔵瓶12と、計量瓶14と、集合ホッパ16と、ミキサ20と、積込ホッパ30とを備える。
【0015】
貯蔵瓶12は、各種のコンクリート材料を一時的に貯蔵する。貯蔵瓶12には、材料置場2から、運搬装置8によって各種のコンクリート材料が運搬(搬送)される。貯蔵瓶12は、各種のコンクリート材料を個別に貯蔵するように構成されている。以下、「コンクリート材料」を単に「材料」と表記する場合がある。貯蔵瓶12に貯蔵されている各種材料は、必要に応じて計量瓶14に供給される。
【0016】
計量瓶14は、貯蔵瓶12の下方に配置されている。計量瓶14は、制御装置60からの動作指示に基づいて動作し、各種材料を個別に計量する。計量瓶14は、制御装置60から指示された目標量の材料を検知すると、その材料を集合ホッパ16に供給する。水が計量瓶14に供給される際に、その水に混和剤が混合されてもよい。集合ホッパ16は、計量瓶14の下方に配置されている。集合ホッパ16は、計量瓶14から排出される各種材料を集約し、集約した各種材料をミキサ20に供給する。集合ホッパ16が備えられない場合、計量瓶14から各種材料がミキサ20に供給される。
【0017】
ミキサ20は、集合ホッパ16の下方に配置されている。ミキサ20は、コンクリート材料を練り混ぜる装置である。ミキサ20は、骨材、セメント、水、及び混和剤等を練り混ぜる(混練する)ことで、生コンクリートを製造する。ミキサ20の底部から、生コンクリートが積込ホッパ30に排出される。積込ホッパ30は、ミキサ20の下方に配置されており、生コンクリートを一時的に収容する。積込ホッパ30は、一時的に収容した生コンクリートを運搬車Cに供給する。
【0018】
以上に説明した製造装置10は、生コンクリートの製造装置の一例であり、生コンクリートの製造装置は、コンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造可能であれば、どのように構成されていてもよい。例えば、製造装置10は、集合ホッパ16を備えていなくてもよく、計量瓶14で計量された各種材料が、計量瓶14からミキサ20に供給されてもよい。
【0019】
撮像装置50は、コンクリート材料の1つである骨材を撮像することが可能な装置(カメラ)である。撮像装置50は、骨材を撮像することで画像データを生成する。撮像装置50は、例えば、可視光に基づき撮像範囲を撮像するデジタルカメラ又はビデオカメラである。撮像装置50によって生成された画像データは、骨材の品質を予測する際に用いられる。骨材の品質の予測については、後述する。なお、撮像装置50が撮像対象の動画を生成し、その動画に含まれる静止画が画像データとして取得されてもよい。
【0020】
撮像装置50は、撮像対象の骨材と離れた位置から、撮像対象の骨材を含む範囲を撮像するように配置されている。撮像装置50は、撮像対象の骨材を含む範囲を上方から撮像してもよい。撮像装置50は、積み重なった状態の骨材を含む範囲を撮像してもよい。積み重なった状態の骨材とは、鉛直上方から見て、骨材に含まれる一部の粒が、他の粒に重なっている状態の骨材をいう。撮像装置50は、運搬装置8によって運搬されている骨材を撮像可能となるように配置されていてもよい。撮像装置50は、運搬装置8に含まれるベルトコンベアが停止している状態、又は動いている状態で、運搬中の骨材を撮像してもよい。なお、撮像装置50は、骨材の受け入れ時において、輸送トラック又は輸送船に積載された状態の骨材を撮像してもよい。撮像装置50は、床又はゴムシートが準備された撮像室内に配置され、床等に載せられた骨材を撮像してもよい。
【0021】
制御装置60は、製造装置10を制御する装置である。制御装置60は、1つ又は複数のコンピュータによって構成される。制御装置60が複数のコンピュータで構成される場合、これらのコンピュータは、互いに通信可能に接続される。制御装置60は、設定された動作条件に従って製造装置10を制御する。動作条件の少なくとも一部は、作業員等のオペレータからの指示によって定められてもよい。
【0022】
制御装置60には、入出力デバイス62が接続されてもよい(
図2参照)。入出力デバイス62は、作業員等からの指示を示す情報を制御装置60に入力すると共に、制御装置60からの情報を作業員等に出力するためのデバイスである。入出力デバイス62は、入力デバイスとして、キーボード、操作パネル、又はマウスを含んでいてもよく、出力デバイスとして、モニタ(例えば、液晶ディスプレイ)を含んでいてもよい。入出力デバイス62は、入力デバイス及び出力デバイスが一体化されたタッチパネルであってもよい。制御装置60及び入出力デバイス62が一体化されていてもよい。
【0023】
製造装置10によって製造される生コンクリートの品質は、コンクリート材料の品質に影響を受けることが知られている。具体的には、生コンクリートの製造に用いられる骨材の粒度が、生コンクリートの流動性(例えば、スランプ、及びスランプフロー)に影響を及ぼす。例えば、同一の単位水量であれば、骨材の粒度が大きいほど、骨材の表面積が減少することで保水量が小さくなり、生コンクリートの流動性が大きくなり得る。反対に、骨材の粒度が小さいほど、骨材の表面積が増加することで保水量が大きくなり、生コンクリートの流動性が小さくなり得る。このように、生コンクリートの流動性を含む品質を安定化させるためには、骨材の粒度を管理する必要がある。骨材の粒度は、粗粒率で表すことができ、生コンクリートの品質の安定化を図るために、例えば、骨材の粗粒率が所望の範囲であるか否かを管理する必要がある。
【0024】
制御装置60は、製造装置10に対する制御に加えて、製造装置10による生コンクリートの製造に用いられる骨材の品質を予測するように構成されていてもよい。この場合、制御装置60が、骨材の品質を予測する品質予測装置を構成する。品質予測装置として機能する制御装置60は、製造装置10が用いる骨材の少なくとも一部の粗粒率を予測する。
【0025】
制御装置60は、少なくとも、骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値を出力する予測モデルを構築する準備工程を実行するように構成されている。また、制御装置60は、評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、上記入力情報に対応する評価情報を取得する取得工程と、評価情報を予測モデルに入力して、骨材の粗粒率に関して予測モデルから出力される値を取得する予測工程と、を実行するように構成されている。
【0026】
制御装置60は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、例えば、動作制御部68と、モデル構築部72と、モデル保持部74と、品質予測部76と、出力部78とを有する。これらの機能モジュールが実行する処理は、制御装置60が実行する処理に相当する。動作制御部68は、上記動作条件に従って、生コンクリートを製造するように製造装置10を制御する機能モジュールである。作業員等は、生コンクリートの目標品質に応じて、動作条件を調整(変更)してもよい。
【0027】
モデル構築部72は、骨材の粗粒率を予測するためのモデル(以下、「予測モデルM」という。)を構築する機能モジュールである。予測モデルMは、骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報に応じて、少なくとも骨材の粗粒率を示す値を出力するモデルである。モデル構築部72は、上記入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、予測モデルMを構築する。
【0028】
機械学習とは、機械(コンピュータ)が与えられた情報に基づいて反復的に学習することで、法則又はルールを自律的に見つけ出す手法をいう。予測モデルMは、アルゴリズム及びデータ構造を用いて構築することができる。予測モデルMは、例えば、人間の脳神経の仕組みを模した情報処理のモデルであるニューラルネットワークを用いて実現される。予測モデルMを構築する際に行われる機械学習の具体的なアルゴリズムは特に限定されない。ニューラルネットワークは、入力層と、1層又は複数層の中間層と、出力層とを有する。1以上の中間層を含むことでより複雑な予測モデルMを構築でき、予測精度を向上できる。
【0029】
モデル構築部72は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)を用いた機械学習により予測モデルMを構築してもよい。モデル構築部72は、骨材の粗粒率の正解値と、骨材の複数の粒度区分それぞれの質量比率の正解値とに基づく機械学習により、予測モデルMを構築してもよい。モデル構築部72によって構築される予測モデルMは、上記入力情報に応じて、骨材の粗粒率を示す値と、複数の粒度区分に含まれる区分ごとの質量比率を示す値とを出力してもよい。すなわち、予測モデルMは、骨材の粗粒率を示す1つの値と、複数の粒度区分について、それぞれが質量比率を示す複数の値とを出力してもよい。
【0030】
モデル構築部72は、例えば、機械学習の入力として与えられるデータと、機械学習の出力の正解データ(粗粒率等の正解値)とを用いて機械学習を行うことで、粗粒率を予測するための予測モデルMを自律的に構築してもよい。機械学習の入力は、骨材の画像を含む入力情報の種々のデータセットである。入力情報の種々のデータセットでは、入力情報に含まれる少なくとも画像データが互いに異なっている。機械学習の出力は、骨材の粗粒率及び粒度区分ごとの質量比率を示すデータ(数値)である。モデル構築部72は、入力情報のデータセット及び粗粒率等の正解値の複数の組合せを用いて、骨材の粗粒率と粒度区分ごとの質量比率との予測値を出力するモデルを反復的に学習する。
【0031】
予測モデルMを自律的に構築する段階は、学習フェーズに相当する。上記学習フェーズが、生コンクリートの製造を行う生産フェーズの前に行われてもよく、又は、生産フェーズの初期段階で行われてもよい。学習済みのモデルである予測モデルMは、コンピュータ間で移植可能であってもよい。従って、制御装置60において構築された予測モデルMが、製造システム1とは異なる他の製造システムで用いられてもよい。
【0032】
モデル保持部74は、予測モデルMを保持(記憶)する機能モジュールである。品質予測部76は、骨材の粗粒率を予測する機能モジュールである。以下、粗粒率の予測が行われる対象の骨材を「評価対象の骨材」と称する。品質予測部76は、評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、上記入力情報に対応する情報(以下、「評価情報」という。)を取得する。上記入力情報が粗粒率の正解値に対応付けられていたのに対して、評価情報は、骨材の粗粒率が未知な情報である。品質予測部76が、予測モデルMを用いて骨材の粗粒率を予測する段階は、評価フェーズに相当する。
【0033】
品質予測部76は、評価情報を予測モデルMに入力して、骨材の粗粒率に関して予測モデルMから出力される予測値(第1予測値)を取得する。また、品質予測部76は、上記評価情報を予測モデルMに入力して、粒度区分ごとの質量比率に関して予測モデルMから出力される予測値(第2予測値)を更に取得する。すなわち、品質予測部76は、複数の粒度区分について、それぞれが質量比率の値を示す複数の予測値(複数の第2予測値)を予測モデルMから取得する。品質予測部76は、粒度区分ごとの質量比率に関する予測値(複数の予測値)を、粗粒率に換算してもよい。異なる2つの方法で、予測モデルMを用いた粗粒率の予測が行われることで、粗粒率の予測値の信頼性を評価することができる。
【0034】
出力部78は、少なくとも、予測モデルMから出力される骨材の粗粒率に関する予測値を、粗粒率の予測結果として出力する機能モジュールである。出力部78は、予測モデルMから出力される、粒度区分ごとの質量比率に関する予測値を粗粒率に換算して得られる値を、粗粒率の予測結果として更に出力してもよい。出力部78は、粗粒率の予測結果を入出力デバイス62の出力デバイス(例えば、モニタ)に出力することで、予測結果を作業員等に報知してもよい。
【0035】
図2に示されるように、制御装置60は、回路91を有する。回路91は、1以上のプロセッサ92と、メモリ93と、ストレージ94と、入出力ポート95と、タイマ96とを含む。ストレージ94は、例えば不揮発性の半導体メモリ等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ94は、予め設定された制御手順で製造装置10を制御することを制御装置60に実行させるためのプログラム、及び、予め設定された予測手順で骨材の粗粒率を予測することを制御装置60に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ94は、上述した各機能モジュールを構成するためのプログラムを記憶している。
【0036】
メモリ93は、ストレージ94の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ92による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ92は、メモリ93と協働して上記プログラムを実行することで、制御装置60の各機能モジュールを構成する。入出力ポート95は、プロセッサ92からの指令に従って、製造装置10、撮像装置50、及び入出力デバイス62等との間で電気信号の入出力を行う。タイマ96は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。なお、回路91は、必ずしもプログラムにより各機能を構成するものに限られない。例えば回路91は、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により少なくとも一部の機能を構成してもよい。
【0037】
[生コンクリートの製造方法]
続いて、製造システム1において実行される生コンクリートの製造方法の一例について説明する。生コンクリートの製造方法は、生コンクリートを製造する工程と、骨材の品質を予測する工程とを含む。生コンクリートを製造する工程が実行されている期間の少なくとも一部と重複する期間において、骨材の品質を予測する工程が実行されてもよい。
【0038】
生コンクリートを製造する工程(以下、「製造工程」という。)は、例えば、搬送工程と、計量工程と、投入工程と、練混ぜ工程と、排出工程と、積込工程とを含む。搬送工程では、運搬装置8によって、各種のコンクリート材料が貯蔵瓶12まで搬送されて、貯蔵瓶12に各種材料が個別に供給される。計量工程では、貯蔵瓶12から計量瓶14に各種材料が個別に供給され、計量瓶14において各種材料が計量される。計量工程では、材料ごとに、計測量が所定の設定量に達した場合に、その材料が集合ホッパ16に排出される。
【0039】
投入工程では、集合ホッパ16に全ての種類の材料が集約された後に、集合ホッパ16内の材料がミキサ20に投入(供給)される。練混ぜ工程では、ミキサ20において複数種のコンクリート材料が練り混ぜられる。排出工程では、ミキサ20においてコンクリート材料の練混ぜが終了した後に、ミキサ20から積込ホッパ30に生コンクリートが排出される。積込工程では、積込ホッパ30内に排出された生コンクリートが、運搬車Cに積み込まれる。
【0040】
骨材の品質を予測する工程(以下、「品質予測工程」という。)は、学習フェーズでのモデル構築工程と、評価フェーズでの品質評価工程とを含む。品質予測工程(品質予測方法)において、モデル構築工程は、品質評価工程の前に実行される。以下、モデル構築工程の一例と、品質評価工程の一例とについて説明する。なお、骨材の品質として、粗骨材の粗粒率が予測され、上記入力情報には、骨材の画像データのみが含まれる場合を例に説明する。また、予測モデルMが、粗粒率の予測値と、粒度区分ごとの質量比率の予測値と、を出力する場合の具体例を用いて説明を行う。
【0041】
(モデル構築工程)
図3(a)は、モデル構築工程において実行される一連の処理の一例を示すフローチャートである。このモデル構築工程は、製造装置10での上記製造工程が実行される前、又は、上記製造工程が開始された初期段階において実行されてもよい。このモデル構築工程では、製造装置10において生コンクリートの製造に用いられる粗骨材の一部が抽出されて、その粗骨材の一部が「学習用の粗骨材」として用いられてもよい。
【0042】
モデル構築工程では、最初にステップS11が実行される。ステップS11では、例えば、作業員等によって、機械学習を行うための学習用のデータが準備される。学習用のデータは、学習用の粗骨材を撮像して得られる各種の画像データ(入力情報)と、各種の画像データそれぞれに対応付けられた正解データとを含む。
図4(a)には、入力情報である画像Imから、予測モデルMを用いて粗粒率を予測する演算方法が模式的に示されている。
【0043】
本開示では、
図4(a)に示されるように、予測モデルMが、粒度区分ごとの質量比率、及び粗粒率の2種類の情報を出力することを、「マルチタスク」と称する。また、粒度区分ごとの質量比率、及び粗粒率のいずれか一方の情報を予測モデルMが出力することを、「シングルタスク」と称する。
図4(a)では、マルチタスクを実行する予測モデルMを用いて、2種類の方法で粗粒率が予測される演算方法が例示されている。
【0044】
学習用の画像の準備では、例えば、複数の粒度区分ごとの質量比率、及び粗粒率が既知である各種粗骨材が、作業員等によって準備される。各種粗骨材とは、粗骨材(例えば、砕石)の品種が異なることではなく、粒度が互いに異なる粗骨材であることを意味する。そして、
図4(b)に示されるように、例えば、計測用のシート8a上に積み重ねられた状態で、学習用の各種粗骨材がカメラ52によって個別に撮像される。これにより、各種の粗骨材それぞれについて、学習用の画像データが得られる。カメラ52は、デジタルカメラであってもよく、計測用のシート8a上の粗骨材から離れた所定位置(例えば、上方の所定位置)から、粗骨材を含む範囲を撮像するように設けられる。
【0045】
シート8aは、運搬装置8のベルトコンベアを模して形成されたシートであってもよく、例えば、ゴムシートである。シート8aの横幅は、運搬装置8のベルトコンベアの横幅の半分程度であってもよい。シート8aに載せられる骨材の量は、特に限定されないが、1kg~10kg程度であってもよい。
図4(b)では、シート8a上で骨材が堆積した様子が模式的に例示されており、骨材の量が2kg、5kg、及び8kgである場合の堆積状態がそれぞれ示されている。
【0046】
一例では、下記の表1に示される条件で各種粗骨材が準備され、粗骨材を撮像して得られる画像が取得される。表1に示される条件で準備された各種粗骨材における粒度区分ごとの質量比率、及び粗粒率は既知であり、その既知の値が機械学習における正解データである。
【0047】
【0048】
粗粒率(F.M.)は、例えば、コンクリート標準仕方書で規定される下記の式(1)によって求められる。なお、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事」に規定される計測では、式(1)における80mmを除いた9個のふるいが用いられる。本開示で予測される粗粒率は、いずれの方式によって規定されるものであってもよい。
【数1】
【0049】
表1においては、10水準の粒度(粗粒率)の粗骨材が準備されることを意味する。区分Iは、2.5mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分Iには、2.5mmのふるいを通過する粒が分けられる。区分IIは、2.5mm以上、且つ5mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分IIには、2.5mmのふるいにとどまるが、5mmのふるいを通過する粒が分けられる。区分IIIは、5mm以上、且つ10mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分IIIには、5mmのふるいにはとどまるが、10mmのふるいを通過する粒が分けられる。区分IVは、10mm以上、且つ20mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分IVには、10mmのふるいにはとどまるが、20mmのふるいを通過する粒が分けられる。
【0050】
水準1に関して、粒度区分ごとの質量比率(区分I~IVそれぞれの質量比率)から、粗粒率が以下のように求められる。水準1の粗骨材では、80mm、40mm、及び20mmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が、それぞれ0であり、10mmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が85であり、5mmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が100(=15+85)である。また、5mmのふるいに全ての粒がとどまるので、2.5mm、1.2mm、600μm、300μm、及び150μmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が、それぞれ100である。そのため、粗粒率は、下記の式(2)のように演算される。
【数2】
【0051】
水準2~10に関しても、水準1での上記演算と同様にして粗粒率が求められる。なお、表1に示される学習用の骨材の条件は、あくまで一例であり、水準の個数、各水準での粗粒率及び粒度区分ごとの質量比率、及び粒度区分の設定方法は、作業員等によって、任意に決定されてもよい。表1に示される複数の粒度区分のように、最小の区分(<150μm)を含む複数の区分での粒度が、1つの粒度区分にまとめられてもよい。ある区分(例えば、20~40mm)以上での粒度が、複数の粒度区分に含まれていなくてもよい。また、表1の設定方法と異なるが、ある区分(例えば、1.2~2.5μm)以下での粒度が、複数の粒度区分に含まれていなくてもよい。
【0052】
図5には、表1における水準1~10それぞれの条件に従って準備された学習用の骨材を撮像して得られる画像T1~T10が示されている。水準n(nは、1~10の整数)が、画像Tnに対応する。例えば、水準1に従って準備された学習用の骨材を撮像して画像T1が得られている。各水準nに従った学習用の骨材では、複数の粒度区分の粒が含まれている。このように、ステップS11では、2以上の粒度区分の粒が含まれるように学習用の骨材が準備され、当該学習用の骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報が準備されてもよい。
【0053】
各水準nに関して、学習用の骨材の状態(より詳細には、堆積状態)が互いに異なる複数の画像Tnが準備されてもよい。一例では、計測用のシート8a上に学習用の骨材が載せられた状態で、1回目の撮像が行われることで、1つの画像Tnが取得される。そして、学習用の骨材がシート8aの上から一時的に取り除かれて、多数の粒同士の堆積状態が1回目の撮像時と異なるように、シート8a上に再度、同じ学習用の骨材が載せられる。そして、2回目の撮像が行われる。作業員等によって、上記のような撮像が繰り返されることで、各水準nに関して複数の画像Tnが準備されてもよい。
【0054】
作業員等は、準備した画像データ及び正解データを、入出力デバイス62を介して制御装置60に入力してもよい。1つの画像Tnと、その画像Tnに対応付けられた水準nでの質量比率及び粗粒率の正解データとによって、1つのデータセットが構成される。作業員等は、複数のデータセットを学習用のデータとして準備する。
【0055】
図3(a)に戻り、ステップS11の実行後に、ステップS12が実行される。ステップS12では、例えば、制御装置60のモデル構築部72が、ステップS11で準備された画像データ、及び当該画像データに紐付けられた正解データを用いた機械学習を行うことで、予測モデルMを構築する。予測モデルMは、4つの粒度区分に関する4つの質量比率の値と、粗粒率に関する1つの値とを出力するように構築されてもよい(
図4(a)も参照)。予測モデルMから出力される4つの質量比率の値を、上記の式(2)のように換算することで、粗粒率の予測値が得られる。
【0056】
このように、予測モデルMは、マルチタスクを行うモデルであってもよい。予測モデルMがマルチタスクを行うモデルである場合、異なる手法によって、2つの粗粒率の予測値が得られる。この場合、例えば、粗粒率の予測値の信頼性を評価することができる。一例では、粗粒率に関する2つの予測値同士の差が小さい場合に、予測結果の信頼性が高いと評価することができる。
【0057】
以下、予測モデルMの一例について、理解を容易にするために簡素化された数式を用いて説明する。モデル構築部72によって構築される予測モデルMは、例えば、次の式(3)及び式(4)のように簡易的に表すことができる。
【数3】
【数4】
【0058】
式(4)において、Yは、y1~y5のいずれか1つを表し、予測モデルMではy1~y5のそれぞれについて式(4)が演算される。y1~y5は、粒度区分ごとの質量比率、及び粗粒率を表す出力データである。y1、y2、y3、及びy4が、4つの粒度区分それぞれの質量比率の出力値である場合、y5は、粗粒率の出力値である。Nは、2以上の整数であり、入力データの個数を表す。入力データには、少なくとも、骨材の画像における各画素の値が含まれる。wiは、重み(係数)であり、bは、バイアス項(係数)である。f(U)は、活性化関数を表す。活性化関数は、線形関数(恒等関数)、又は多項式、絶対値、step関数、sigmoid関数、hardsigmoid関数、logsigmoid関数、softmax関数、logsoftmax関数、softmin関数、softplus関数、softsign関数、tanh関数、tanhShrink関数、hardtanh関数、tanhexp関数、ReLU関数、ReLU6関数、Leaky-ReLU関数、PReLU関数、ELU関数、SELU関数、CELU関数、Swith関数、Mish関数、ACON関数、などの非線形関数である。
【0059】
モデル構築部72は、学習用のデータを用いて、y1~y5それぞれについて式(4)における重みwiとバイアス項bとを定めることで、y1~y5の値を出力する予測モデルMを構築する。モデル構築部72は、次の式(5)及び式(6)で示される演算を繰り返すことで、y1~y5それぞれについて重みwiを決定する。
【数5】
【数6】
【0060】
式(5)において、yj(jは、1~5のいずれかの整数)は、更新中の重みwiで規定されるモデルの出力であり、tjは、質量比率又は粗粒率の正解値である。E及びEjは、出力yjと正解値tjとの差を表す誤差である。式(6)において、w’は、更新後の重みwを表す。式(5)及び式(6)の演算を繰り返すことは、重みwにある値が入力されているときの出力yjの値と正解値tjとの二乗誤差の総和を算出し、勾配法により、誤差が最小となるように重みwの値を更新することを意味する。重みwの更新を繰り返す回数は、作業員等によって定められてもよい。勾配法としては、例えば、最急降下法、確率的勾配降下法(SGD)、ミニバッチ勾配降下法、Adam、ネステロフの加速法(NAG)、AdaGrad、RMSprop、Adadelta、Adam、Adamax、AMSGRAD、Momentumを用いることができる。
【0061】
式(3)~式(6)を用いた予測モデルMの説明は、ディープニューラルネットワークに係る一般的な説明である。ディープニューラルネットワークとしては、例えば、畳み込みニューラルネットワーク、回帰型ニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワークが挙げられる。本実施形態に係る骨材の品質予測方法では、例えば、畳み込みニューラルネットワークを用いることが好ましい。これは、画像データを含む入力情報を用いる場合、重みの更新に際して、畳み込みニューラルネットワークは、通常のディープニューラルネットワークに対して有利なためである。通常のディープニューラルネットワークであれば、画像データのように大量の情報を含む場合、重みを計算する箇所が非常に多くなってしまう。一方、畳み込みニューラルネットワークであれば、フィルタを用いて重みを共有できるため、重みの更新が簡素化される。このように、畳み込みニューラルネットワークを用いると、より好適に画像の特徴を捉えることが可能となる点で好ましい。
【0062】
ステップS12の実行後に、ステップS13が実行される。ステップS13では、例えば、モデル保持部74が、ステップS12で構築された予測モデルMを記憶する。以上により、モデル構築工程が終了する。
【0063】
(品質評価工程)
図3(b)は、品質評価工程において実行される一連の処理の一例を示すフローチャートである。この品質評価工程は、例えば、製造装置10での上記製造工程が実行されている期間に行われる。
【0064】
この品質評価工程では、最初に、制御装置60がステップS21を実行する。ステップS21では、例えば、品質予測部76が、計測タイミングとなるまで待機する。計測タイミングは、1日のうちのある時刻に予め定められてもよく、作業員等のオペレータからの指示を受けたタイミングであってもよい。計測タイミングとなった場合に、材料置場2から粗骨材が運搬装置8に載せられるように、制御装置60が制御を実行してもよい。なお、粗骨材が運搬装置8に運搬されているタイミングに合わせて、計測タイミングが設定されもよい。
【0065】
次に、制御装置60は、ステップS22を実行する。ステップS22では、例えば、品質予測部76が、撮像装置50に評価対象の骨材の撮像を実行させ、撮像装置50から画像データを取得する。これにより、品質予測部76は、評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含む評価情報を取得する。一例では、評価情報は、評価対象の骨材を撮像して得られる画像データのみを含む。ステップS22では、例えば、評価対象の骨材が運搬装置8のベルトコンベア上において積み重なった状態で、撮像装置50が、評価対象の骨材とは離れた上方の位置から評価対象の骨材を含む範囲を撮像する。
【0066】
次に、制御装置60は、ステップS23を実行する。ステップS23では、例えば、品質予測部76が、ステップS22で取得した画像データ(評価情報)と、モデル保持部74が保持する予測モデルMとに基づいて、評価対象の粗骨材の粗粒率を予測する。一例では、品質予測部76は、ステップS22で取得した画像データを予測モデルMに入力して、予測モデルMから直接出力される粗粒率に関する出力値を取得する。また、品質予測部76は、上記画像データを予測モデルMに入力して、予測モデルMから直接出力される粒度区分ごとの質量比率に関する出力値を取得する。そして、品質予測部76は、粒度区分ごとの質量比率に関する出力値を粗粒率に換算することで、粗粒率の予測値を間接的に取得する。
【0067】
次に、制御装置60は、ステップS24を実行する。ステップS24では、例えば、出力部78が、ステップS23で取得された、粗粒率に関する2つの予測結果を出力する。一例では、出力部78は、粗粒率に関する2つの予測結果を入出力デバイス62のモニタ上に表示させる。これにより、作業員等が、粗粒率に関する予測結果を確認できる。粗粒率の予測結果を確認した作業員等は、粗粒率が所定範囲から外れている場合に、生コンクリートの品質を保つための処置(例えば、骨材の粒度の調整、配合の修正、製造の一時中断、原因の追究等)を行ってもよい。
【0068】
以上により、1回の粗粒率の予測を行う一連の処理が終了する。制御装置60は、ステップS24の実行後において、ステップS21~S24の一連の処理を繰り返してもよい。上述の例では、計測タイミングごとに粗粒率の予測が行われるが、運搬装置8により運搬中の骨材を連続的に撮像して、生コンクリートの製造に用いられる骨材に対して全数検査が行われてもよい。
【0069】
上述した品質予測方法は、生コンクリートの製造工程(製造ライン)において、生コンクリートの原料(材料)の全数検査を行って品質安定化を図ること以外に、抜き取りによる品質試験の代用としても利用可能である。抜き取りによる品質試験としては、例えば、原料受け入れ時の検査である受入検査、生コンクリートの各製造工程における検査である工程検査が挙げられる。抜き取りによる品質試験は、安定した品質の生コンクリートを供給するために、日常的に行われている。従来、抜き取りによる品質試験によって粗粒率を測定する場合、例えば、粗骨材をふるい分けし、その質量比率から粗粒率を算出する。日常的な品質試験に対して、本実施形態に係る骨材の品質予測方法を適用すれば、品質予測試験の時間を大幅に短縮でき、例えば、1日における品質予測試験の頻度を増加させることができる。これにより、より安定した品質の生コンクリートを供給することが可能になる。本実施形態に係る骨材の品質予測方法を用いて、抜き取りによる品質試験を行う場合、例えば、抜き取った骨材をゴムシートの上に堆積させ、その上から撮像装置50によって画像データを生成することができる。なお、本実施形態に係る骨材の品質予測方法を受入検査に用いる場合、例えば、輸送トラック、又は輸送船に撮像装置50を取り付け、輸送中に品質予測を行うことも可能である。
【0070】
[予測モデルを用いた予測方法の検証]
以下では、畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習による予測モデルMを用いた粗粒率の予測方法を検証するために、正解値が既知であるデータセットを用いて、予測モデルMによる予測結果と正解値との比較検証を行った。学習用の骨材は、上述の表1の条件に従って、粗粒率が互いに異なる10水準の骨材を準備した。1つの水準ごとに、計測用のシート8a上での骨材の状態が互いに異なる状態で、室内において10回の撮像を行って10個の画像を取得した。
【0071】
また、下記の表2に示す基準条件に従って、合計100枚の画像(10水準×10回の撮像)を準備した。これにより、学習用のデータとして、それぞれのデータセットにおいて画像と正解値とが対応付けられた100個のデータセットを準備した。
【0072】
【0073】
100個のデータセットのうちの80個のデータセットを用いて、上記予測モデルMを構築し、20個のデータセットを検証に用いた。具体的には、各水準において、8個のデータをモデル構築に使用し、2個のデータセットを検証に使用した。20個のデータセットを用いた検証では、データセットごとに、画像と予測モデルMとを用いて演算された2つの予測結果と、当該画像に対応付けられた粗粒率等の正解値とを比較した。予測モデルMは、畳み込み層とプーリング層とから構成される中間層を6層設けたのち、4層の全結合層を設けた畳み込みニューラルネットワークにより構成した。また、損失関数にはHuber関数を使用した。なお、それぞれのデータセットでは、ImageAugmentation層により画像の数を増加させた。
【0074】
図6(a)は、上記表1での区分III及び区分IVにおける質量比率(%)の予測値と、対応する質量比率(%)の正解値との関係を示すグラフである。
図6(a)に示されるグラフにおいて、横軸が質量比率の正解値であり、縦軸が、予測モデルMから出力される質量比率の予測値である。区分III(5mm~10mm)での予測結果が△印でプロットされており、区分IV(10mm~20mm)での予測結果が〇印でプロットされている。正解値と予測値とが一致する実線のラインが描かれており、プロットされた結果が、そのラインに近いほど、予測精度が高いことを意味する。
図6(a)に示される結果から、上記ラインの近傍に予測結果がプロットされており、予測モデルMにより、質量比率を精度良く予測できていることがわかる。
【0075】
図6(b)は、予測モデルMから出力される粗粒率の予測値と、粗粒率の正解値との関係を示すグラフである。
図6(b)に示されるグラフにおいて、横軸が粗粒率の正解値であり、縦軸が、予測モデルMから出力される粗粒率の予測値である。予測結果が□印でプロットされている。実線のラインは、正解値と予測値とが一致するラインであり、そのラインから+0.10だけ縦方向にずれた破線の上限ラインと、-0.10だけ縦方向にずれた下限ラインとが描かれている。上限ラインと下限ラインとの間の領域に含まれる予測結果が、許容範囲内と定義している。現行の生コンクリート工場において許容されている粗粒率の誤差を参考に、±0.10の範囲を許容範囲として設定した。予測モデルMを用いた予測結果の全てが、許容範囲に含まれており、予測モデルMにより、粗粒率を精度良く予測できていることがわかる。
【0076】
以下では、学習用データを準備する際の各種要因が、予測モデルMによる予測に与える影響を検証した。具体的には、照明の有無、画像サイズ、粗骨材の量、及び骨材表面の水分状態のうちの少なくとも1つの要因を、表2に示される基準条件から変更して、学習用データを準備した。そして、条件ごとに、対応する学習用データから予測モデルMを構築したうえで、対応する検証用データを用いて、予測モデルMによる予測精度を評価した。
【0077】
図7(a)及び
図7(b)に示されるグラフの間では、照明の有無が異なっている。室内灯のみで撮像した場合(照明なしの場合)の比較結果が、
図7(a)に示されており、室内灯に加えてLED照明を撮像対象に当てて撮像した場合(照明ありの場合)の比較結果が、
図7(b)に示されている。さらに、照明の有無がいずれの場合でも、粗骨材の量が、2kg、5kg、及び8kgである場合のそれぞれについて検証した。
【0078】
予測値が、正解値に対してどの程度外れているかを示す指標として、絶対差平均値を算出した。絶対差平均値は、20個の検証用データセットにおける正解値と予測値との差分の絶対値の算術平均である。
図7(a)及び
図7(b)に示されるグラフにおいて、「直接予測」は、予測モデルMから直接出力される粗粒率の出力値に関する検証結果を表す。「間接予測」は、予測モデルMから出力される粒度区分ごとの質量比率の出力値を換算して、間接的に得られる粗粒率の予測値に関する検証結果を表す。
【0079】
縦軸が、絶対差平均値を表し、「Tg」は目標値であることを表す。絶対差平均値が目標値Tg(0.10)以下である場合に、予測モデルMを用いた予測の精度が良いと評価できる。
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、粗骨材の量が、2kg、5kg、及び8kgのいずれであっても、また、直接予測及び間接予測のいずれであっても、照明の有無に関係なく、絶対差平均値は目標値Tg以下であった。そのため、照明の有無が、予測モデルMによる予測の精度に与える影響は小さいものと考えられる。
【0080】
図8(a)及び
図8(b)に示されるグラフの間では、予測方法が異なっている。予測モデルMによる予測のうちの直接予測を用いた場合の比較結果が、
図8(a)に示されており、予測モデルMによる予測のうち間接予測を用いた場合の比較結果が、
図8(b)に示されている。
図8(a)及び
図8(b)に示されるように、粗骨材の量が、2kg、5kg、及び8kgのいずれであっても、また、照明の有無のいずれであっても、直接予測及び間接予測のどちらの方法を用いたのかに関係なく、絶対差平均値は目標値Tg以下であった。そのため、直接予測及び間接予測の選択結果が、予測モデルMによる予測の精度に与える影響は小さいものと考えられる。
【0081】
図9(a)及び
図9(b)に示されるグラフそれぞれでは、粗骨材の量を変化させて検証が行われている。直接予測を利用し、粗骨材の量を変化させた場合の比較結果が、
図9(a)に示されており、間接予測を利用し、粗骨材の量を変化させた場合の比較結果が、
図9(b)に示されている。
図9(a)及び
図9(b)に示されるように、直接予測及び間接予測のいずれであっても、また、照明の有無のいずれであっても、粗骨材の量に関係なく、絶対差平均値は目標値Tg以下であった。そのため、粗骨材の量が、予測モデルMによる予測の精度に与える影響は小さいものと考えられる。
【0082】
図10(a)及び
図10(b)に示されるグラフそれぞれでは、画像サイズを変化させて検証が行われている。直接予測を利用し、画像サイズを変化させた場合の比較結果が、
図10(a)に示されており、間接予測を利用し、画像サイズを変化させた場合の比較結果が
図10(b)に示されている。各グラフにおいて、横軸は、画像サイズ比を表しており、表2における基準条件での画像サイズを1としている。画像サイズの下限は、画像から骨材を人が視認できる範囲で設定されている。
図10(a)及び
図10(b)に示されるように、直接予測及び間接予測のいずれであっても、また、骨材の量が2kg、5kg、及び8kgのいずれであっても、画像サイズ比に関係なく、絶対差平均値は目標値Tg以下であった。そのため、画像サイズ(ピクセル数、又は解像度)が、予測モデルMによる予測の精度に与える影響は小さいものと考えられる。
【0083】
図11(a)及び
図11(b)に示されるグラフそれぞれでは、骨材表面の水分状態を異ならせて行われた検証結果が示されている。この検証における「気乾状態」は、学習用の骨材を室内に所定時間だけ放置して乾燥(自然に乾燥)された状態である。また、「湿潤状態」は、学習用の骨材に、当該骨材の質量に対して所定比(例えば、質量比で1%~5%)の水を加えて、容器内に混ぜ合わせた状態である。
図11(a)及び
図11(b)に示される結果から、気乾状態であれば、絶対差平均値が目標値Tg以下であり、予測モデルMにより精度良く予測できることがわかる。なお、気乾状態で得られる骨材の画像では、照明なしの場合、気乾状態に比べて、全体的に色むらがあり、骨材の各粒子の縁がぼやけて見えていた。また、気乾状態で得られる骨材の画像では、照明ありの場合、気乾状態に比べて、表面水の反射により白く見える骨材の粒子が含まれていた。
【0084】
[変形例]
図11(a)に示されるように、直接予測が採用され、粗骨材の量が5kg及び8kgである場合に、絶対差平均値が目標値Tgを超えている。
図11(b)に示されるように、間接予測が採用され、粗骨材の量が8kgである場合に、絶対差平均値が目標値Tgを超えている。このように、湿潤状態では、粗骨材の量によって、予測精度が低下する可能性があることがわかる。湿潤状態での予測精度の低下を回避するために、上述の例とは異なるように予測モデルMが構築されてもよい。
【0085】
モデル構築部72によって構築される予測モデルMは、学習用の骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報に応じて、骨材の粗粒率を示す値のみを出力してもよい。すなわち、予測モデルMは、シングルタスクを行うモデルであってもよい。この場合、予測モデルMを構築するための学習用データでは、画像データを含む入力情報に対して、骨材の粗粒率の正解値のみが対応付けられている。
【0086】
モデル構築部72は、上記式(4)に代えて、次の式(7)に示される予測モデルMを構築してもよい。
【数7】
【0087】
モデル構築部72は、予測モデルMを生成するための重みwを更新する過程において、上記式(5)に代えて、次の式(8)で示される演算を繰り返してもよい。
【数8】
【0088】
図12には、予測モデルとして、式(7)に示される予測モデルMを利用したこと以外については、
図11(a)に示される検証結果と同様の条件で検証を行った結果が示されている。
図12に示されるように、気乾状態及び湿潤状態の双方において、絶対差平均値が目標値Tg以下である結果が得られている。すなわち、湿潤状態においても、シングルタスクを行う予測モデルMを利用することで、精度良く粗粒率を予測できることがわかる。
【0089】
予測モデルMがマルチタスクを行う場合において、重みwを更新する過程での演算方法が、上述した例と異なっていてもよい。湿潤状態での予測精度が低下する要因の一つとして、重みwを更新する過程において、質量比率に関する誤差のオーダーと、粗粒率に関する誤差のオーダーとの差が考えられる。例えば、上記式(5)における誤差の総和であるEのうち、質量比率(%)に関する誤差であるE1,E2,E3、及びE4のオーダーと、粗粒率に関する誤差であるE5のオーダーとには、10倍~100倍程度の差がある。一例では、質量比率に関する誤差のオーダーが1.0~10程度であり、粗粒率に関する誤差のオーダーが0.001~0.10程度である。
【0090】
上記式(5)及び式(6)の演算を繰り返して、重みwを更新することは、骨材の粗粒率に関する誤差(第1誤差)と、粒度区分ごとの質量比率に関する誤差(第2誤差)とに基づいて、予測モデルを構築する過程で生成される中間モデルを更新することに相当する。粗粒率に関する誤差のオーダーが、質量比率に関する誤差のオーダーに比べて小さいと、上記式(5)におけるE5の寄与分が小さくなり、中間モデルを更新する過程において、E5を小さくするように重みwを更新する演算が、ほとんど実行されない可能性がある。
【0091】
モデル構築部72は、骨材の粗粒率に関する誤差と、粒度区分ごとの質量比率に関する誤差との差が縮小するように補正された誤差を用いて、予測モデルMを構築する際の中間モデルを更新してもよい。例えば、モデル構築部72は、2種類の誤差それぞれに対して、誤差の差分が縮小するように係数を乗算する。一例では、モデル構築部72は、予測モデルMを生成するための重みwを更新する過程(中間モデルを更新する過程)において、上記式(5)に代えて、次の式(9)で示される演算を繰り返してもよい。
【数9】
【0092】
式(9)においてλ1及びλ2は、係数である。係数λ1及び係数λ2は、作業員等によって、粗粒率の誤差のオーダーと、質量比率の誤差のオーダーとに基づいて、定められてもよい。係数λ2は、係数λ1の5倍~200倍程度であってもよい。係数λ2は、係数λ1の10倍であってもよく、係数λ1の100倍であってもよい。なお、本開示では、式(9)の演算により重みwが更新されて構築された予測モデルMが行うマルチタスクのことを「係数調整マルチタスク」という。また、単に「マルチタスク」という場合には、重みwの更新過程において誤差の調整が行われていない場合のマルチタスクを意味する。
【0093】
図13には、マルチタスク、係数調整マルチタスク、及びシングルタスクそれぞれの場合について、湿潤状態での検証結果が示されている。なお、粗骨材の量は8kgであり、画像サイズ比は0.25である。マルチタスク及び係数調整マルチタスクでは、2種類の予測手法のうちの直接予測によって、粗粒率が予測されている。係数λ1は1.00に設定され、係数λ2は100に設定されている。
図13に示される結果から、湿潤状態では、マルチタスクでの予測精度に比べて、係数調整マルチタスク及びシングルタスクでの予測精度が高いことがわかる。
【0094】
図14には、
図13に示される検証結果と同じ条件で、係数λ1及び係数λ2の値を変更した場合での検証結果が示されている。具体的には、係数の組合せ(λ1,λ2)を、(1.0,10)、(0.1,1.0)、(1.0,100)、及び(0.01,1.0)のそれぞれに設定して評価を行った。
図14に示されるように、係数λ1に対する係数λ2の比が10及び100のいずれであっても、絶対差平均値は、目標値である0.1以下であった。
図14に示される結果から、係数λ1に対する係数λ2の比が10である場合に比べて、当該比が100である場合での絶対差平均値が小さい傾向があることがわかる。
【0095】
以上に説明した種々の予測モデルは一例であり、予測モデルは、骨材の画像データを含む情報から、少なくとも、粗骨材に関する予測値を出力可能であれば、どのようなモデルであってもよい。学習フェーズにおいて、運搬装置8上の骨材が撮像されて、学習用の画像(学習用データ)が準備されてもよい。予測モデルに入力される入力情報及び評価情報には、骨材の画像データに加えて、粗粒率に影響を及ぼし得る物理量を示す情報が含まれていてもよい。
【0096】
製造システム1は、製造装置10を制御するコンピュータと、骨材の粗粒率を予測するコンピュータ(品質予測装置)とを備えてもよい。骨材の粗粒率を予測するコンピュータは、モデル構築部72、モデル保持部74、品質予測部76、及び出力部78を有してもよい。以上に説明した種々の例のうちの1つの例において、他の例で説明した事項の少なくとも一部が適用されてもよい。
【0097】
[本開示のまとめ]
以上に説明した骨材の品質予測方法は、骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値を出力する予測モデルMを構築する準備工程と、評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、入力情報に対応する評価情報を取得する取得工程と、評価情報を予測モデルMに入力して、骨材の粗粒率に関して予測モデルMから出力される第1予測値を取得する予測工程と、を含む。
【0098】
骨材の粗粒率が、骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて製造される生コンクリートの品質に影響する。例えば、生コンクリートの業界では、品質管理業務の内、フレッシュ性状試験といった工程検査に労力を使用しているという事情がある。そのため、生コンクリート製造の高効率化を図るため、品質管理を省力化することが望まれている。上記品質予測方法では、機械学習により構築された予測モデルMを用いて骨材の粗粒率を予測するので、生コンクリートの製造に用いられる骨材の粗粒率を検査するための作業の簡素化を図ることができる。その結果、検査頻度を増やすことができるので、又は、粗粒率の管理とは異なる品質管理業務に労力を使えるので、生コンクリートの品質の安定化に有用である。
【0099】
以上に説明した品質予測方法において、準備工程では、予測モデルMが、入力情報に応じて骨材の粗粒率を示す値のみを出力するように構築されてもよい。予測モデルMが上記シングルタスクを行うことで、上述したように、骨材の表面状態が湿潤状態でも、予測モデルMを用いて精度良く粗粒率を予測することができる。生コンクリートを製造する工場では、骨材に多少なりとも水分が含まれる場合が多く、湿潤状態での予測精度を向上させることは、生コンクリートの品質を安定化させるために、より有益である。
【0100】
以上に説明した品質予測方法において、準備工程は、入力情報に対応付けられた、骨材の複数の粒度区分それぞれの質量比率の正解値に更に基づく機械学習により、予測モデルMを構築することを含んでもよい。準備工程では、予測モデルMが、入力情報に応じて、複数の粒度区分に含まれる区分ごとの質量比率を示す値を更に出力するように構築されてもよい。予測工程は、評価情報を予測モデルMに入力して、区分ごとの質量比率に関して予測モデルMから出力される第2予測値を更に取得することと、第2予測値を骨材の粗粒率に換算することと、を含んでもよい。この場合、2つの異なる方法で、1つの予測モデルMを用いて骨材の粗粒率を予測することができる。そのため、モデル構築のための作業の増加を避けつつ、粗粒率の予測結果の信頼性を評価することができる。
【0101】
以上に説明した品質予測方法において、準備工程は、骨材の粗粒率に関する第1誤差と、区分ごとの質量比率に関する第2誤差とに基づいて、予測モデルMを構築する過程で生成される中間モデルを更新することを含み、準備工程では、第1誤差と第2誤差との差が縮小するように補正された誤差を用いて、中間モデルが更新される。予測モデルMが上記係数調整マルチタスクを行うことで、上述したように、骨材の表面状態が湿潤状態でも、予測モデルMを用いて精度良く粗粒率を予測することができる。生コンクリートを製造する工場では、骨材に多少なりとも水分が含まれる場合が多く、湿潤状態での予測精度を向上させることは、生コンクリートの品質を安定化させるために、より有益である。
【0102】
以上に説明した品質予測方法において、準備工程は、畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習により予測モデルMを構築することを含んでもよい。この場合、畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習を行うことで、より複雑なモデルを構築できる。そのため、粗粒率の予測値を正解値に近づけることができる。
【0103】
以上に説明した品質予測方法において、取得工程は、評価対象の骨材が積み重なった状態で、評価対象の骨材とは離れた位置から評価対象の骨材を含む範囲を撮像して、評価情報を取得することを含んでもよい。生コンクリートを製造する工場では、骨材が積み重なっている場合が多い。例えば、受入れ時には、骨材は輸送トラック又は輸送船に積載された状態で運ばれる。また、製造時には、骨材は積み重なった状態で、ベルトコンベア等により運搬される。上記構成では、骨材が積み重なった状態で撮像が行われるので、評価情報を取得するための作業を簡素化することができる。なお、上述した運搬時のみならず、上記品質予測方法を、品質ふるい分け試験といった品質管理業務の代用とすることもできる。例えば、受入れ時又は製造時に、骨材の一部を採取して、床又はシートなどに敷き並べて撮像してもよい。
【0104】
以上に説明した品質予測方法において、準備工程は、2以上の粒度区分の粒が含まれるように学習用の骨材を準備することを含んでもよい。入力情報は、上記学習用の骨材を撮像して得られる画像データを含んでもよい。この場合、学習用の骨材が、生コンクリートを製造する工場で用いられる実際の骨材と近い状態となり、予測モデルMによる予測の精度を向上させることができる。
【0105】
以上に説明した生コンクリートの製造方法は、骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造工程と、製造工程に用いられる骨材の少なくとも一部の粗粒率を予測する品質予測工程と、を含む。品質予測工程は、骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値を出力する予測モデルMを構築する準備工程と、評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、入力情報に対応する評価情報を取得する取得工程と、評価情報を予測モデルMに入力して、骨材の粗粒率に関して予測モデルMから出力される第1予測値を取得する予測工程と、を含む。この製造方法は、上記品質予測方法と同様に、生コンクリートの品質の安定化に有用である。
【0106】
以上に説明した製造システム1は、骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置10と、製造装置10が用いる骨材の少なくとも一部の粗粒率を予測する制御装置60(品質予測装置)と、を備える。制御装置60は、骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値を出力する予測モデルMを構築する準備工程と、評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含み、入力情報に対応する評価情報を取得する取得工程と、評価情報を予測モデルMに入力して、骨材の粗粒率に関して予測モデルMから出力される第1予測値を取得する予測工程と、を実行するように構成されている。この製造システム1は、上記品質予測方法と同様に、生コンクリートの品質の安定化に有用である。
【符号の説明】
【0107】
1…製造システム、2…材料置場、4…サイロ、8…運搬装置、10…製造装置、50…撮像装置、60…制御装置、72…モデル構築部、74…モデル保持部、76…品質予測部、78…出力部、M…予測モデル。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含む評価情報を取得する取得工程と、
骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて骨材の粗粒率を示す値のみを出力するように構築された予測モデルに前記評価情報を入力して、骨材の粗粒率に関して前記予測モデルから出力される第1予測値を取得する予測工程と、を含み、
前記評価情報は、前記入力情報に対応する情報である、骨材の品質予測方法。
【請求項2】
評価対象の骨材を撮像して得られる画像データを含む評価情報を取得する取得工程と、
骨材を撮像して得られる画像データを含む入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の粗粒率の正解値と、前記入力情報に対応付けられた、骨材の複数の粒度区分それぞれの質量比率の正解値と、に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、骨材の粗粒率を示す値と、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとの質量比率を示す値とを出力するように構築された予測モデルを利用して、骨材の粗粒率を予測する予測工程と、を含み、
前記評価情報は、前記入力情報に対応する情報であり、
前記予測工程は、
前記予測モデルに前記評価情報を入力して、骨材の粗粒率に関して前記予測モデルから出力される第1予測値と、前記区分ごとの質量比率に関して前記予測モデルから出力される第2予測値とを取得することと、
前記第2予測値を骨材の粗粒率に換算することと、を含む、骨材の品質予測方法。
【請求項3】
前記第1予測値と、前記第2予測値を骨材の粗粒率に換算して得られる値とを出力する出力工程を更に含む、請求項2に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の骨材の品質予測方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0083
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0083】
図11(a)及び
図11(b)に示されるグラフそれぞれでは、骨材表面の水分状態を異ならせて行われた検証結果が示されている。この検証における「気乾状態」は、学習用の骨材を室内に所定時間だけ放置して乾燥(自然に乾燥)された状態である。また、「湿潤状態」は、学習用の骨材に、当該骨材の質量に対して所定比(例えば、質量比で1%~5%)の水を加えて、容器内に混ぜ合わせた状態である。
図11(a)及び
図11(b)に示される結果から、気乾状態であれば、絶対差平均値が目標値Tg以下であり、予測モデルMにより精度良く予測できることがわかる。なお、
湿潤状態で得られる骨材の画像では、照明なしの場合、気乾状態に比べて、全体的に色むらがあり、骨材の各粒子の縁がぼやけて見えていた。また、
湿潤状態で得られる骨材の画像では、照明ありの場合、気乾状態に比べて、表面水の反射により白く見える骨材の粒子が含まれていた。