(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079556
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】加熱装置、画像形成装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240604BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240604BHJP
F26B 13/18 20060101ALI20240604BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 401
G03G15/20 510
F26B13/18 A
B41J29/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127208
(22)【出願日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2022191818
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】木戸 拓人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏哉
(72)【発明者】
【氏名】谷奥 雄一
(72)【発明者】
【氏名】司馬 哲裕
(72)【発明者】
【氏名】石川 禎一郎
(72)【発明者】
【氏名】森川 裕介
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
2H033
3L113
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EA24
2C056EB13
2C056EB49
2C056EC14
2C056EC29
2C056HA40
2C056HA46
2C061AQ05
2C061AS06
2C061BB28
2C061BB35
2C061CK10
2H033BA27
2H033BA29
2H033BA31
2H033BB01
2H033BB12
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033CA07
2H033CA17
2H033CA44
2H033CA53
3L113AA08
3L113AB05
3L113AC08
3L113AC32
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC67
3L113BA30
3L113BA32
3L113CB05
3L113DA14
(57)【要約】
【課題】熱源の設置数を抑えつつ、耐熱温度を超えない範囲内で熱の供給量を効果的に増やす。
【解決手段】内側に熱源25を有しシートを加熱する加熱ローラ21を備える加熱装置であって、熱源25は、同じ発熱強度分布を有する3つ以上の第1熱源25aと、第1熱源25aとは異なる発熱強度分布を有する1つの第2熱源25bを有し、第2熱源25bは、加熱ローラ21の長手方向一端側から見て、第1熱源25aを頂点とする多角形の内側に配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に熱源を有しシートを加熱する加熱ローラを備える加熱装置であって、
前記熱源は、同じ発熱強度分布を有する3つ以上の第1熱源と、前記第1熱源とは異なる発熱強度分布を有する1つの第2熱源を有し、
前記第2熱源は、前記加熱ローラの長手方向一端側から見て、前記第1熱源を頂点とする多角形の内側に配置されることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記第2熱源は、前記加熱ローラの長手方向一端側から見て、前記第1熱源を頂点とする多角形の重心に配置される請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第1熱源を頂点とする多角形が正多角形となるように、前記第1熱源が配置される請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
内側に熱源を有しシートを加熱する加熱ローラを備える加熱装置であって、
前記熱源は、同じ発熱強度分布を有する2つの第1熱源と、前記第1熱源とは異なる発熱強度分布を有する1つの第2熱源を有し、
前記第2熱源は、前記加熱ローラの長手方向一端側から見て、前記第2熱源の間に配置されることを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
前記加熱ローラは、搬送される前記シートに接触しながら回転する、又は回転せずに摺接する請求項1又は4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記第1熱源と前記第2熱源の1つあたりの最大出力が同じ値に設定される請求項1又は4に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記加熱ローラの長手方向における前記第2熱源の発熱領域の長さは、前記第1熱源の発熱領域の長さよりも短い請求項1又は4に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記第1熱源の発熱領域と前記第2熱源の発熱領域は、前記加熱ローラの長手方向において互いにずれて重ならないように配置される請求項1又は4に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記第1熱源は、前記加熱ローラの長手方向一端側寄りに発熱領域を有し、
前記第2熱源は、前記加熱ローラの長手方向他端側寄りに発熱領域を有し、
前記加熱ローラの長手方向両端の温度を測定する温度測定部を備え、
前記第1熱源及び前記第2熱源は、前記温度測定部によって検知される温度に基づいて制御される請求項1又は4に記載の加熱装置。
【請求項10】
シートに画像を形成する画像形成部と、前記シートを加熱する請求項1又は4に記載の加熱装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
シートに液体を吐出する液体吐出部と、前記シートを加熱する請求項1又は4に記載の加熱装置を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、画像形成装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置などに搭載される加熱装置の一例として、インクなどの液体が付与されたシートを加熱して乾燥させる乾燥装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2017-7254号公報)においては、内部に熱源を有する加熱ローラを用いてシートを乾燥させる乾燥装置が提案されている。
【0004】
ここで、加熱ローラからシートへ供給される熱量を多くする手段としては、加熱ローラ内に配置される熱源の数を増やす、あるいは、熱源1つあたりの出力(発熱量)を上げる方法がある。
【0005】
しかしながら、熱源の数を増やすと、装置の大型化及び高コスト化につながるため、特に装置サイズ又はコストに制約がある場合は、熱源の増設が困難である。一方、熱源の出力を上げる方法は、熱源を増設せずに熱の供給量を増やすことができるが、熱源の出力を、熱源又は加熱ローラなどの温度がこれらの耐熱温度を超えない程度に抑えなくてはならないといった制約がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明においては、熱源の設置数を抑えつつ、耐熱温度を超えない範囲内で熱の供給量を効果的に増やすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、内側に熱源を有しシートを加熱する加熱ローラを備える加熱装置であって、前記熱源は、同じ発熱強度分布を有する3つ以上の第1熱源と、前記第1熱源とは異なる発熱強度分布を有する1つの第2熱源を有し、前記第2熱源は、前記加熱ローラの長手方向一端側から見て、前記第1熱源を頂点とする多角形の内側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱源の設置数を抑えつつ、耐熱温度を超えない範囲内で熱の供給量を効果的に増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態であるインクジェット式画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置の制御ブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る乾燥装置の概略構成図である。
【
図4】加熱ローラを、その長手方向の一端側から見た図である。
【
図5】加熱ローラ内の4つのヒータランプをシートの搬送方向へ並べた模式図である。
【
図6】外側ヒータランプと内側ヒータランプの発熱強度分布を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る加熱ローラの斜視図である。
【
図8】外側ヒータランプ及び内側ヒータランプの制御方法を示すフローチャートである。
【
図9】小サイズシートが加熱ローラによって加熱される場合の態様を示す図である。
【
図10】大サイズシートが加熱ローラによって加熱される場合の態様を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る画像形成装置のより具体的な制御構造を示すブロック図である。
【
図12】第1比較例に係る加熱ローラを、その長手方向の一端側から見た図である。
【
図13】第1比較例に係る各ヒータランプの発熱強度分布を示す図である。
【
図14】第2比較例に係る加熱ローラを、その長手方向の一端側から見た図である。
【
図15】本発明に係るヒータランプの他の配置例を示す図である。
【
図16】本発明に係るヒータランプの別の配置例を示す図である。
【
図17】本発明に係るヒータランプのさらに別の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、インクジェット式の画像形成装置に搭載される乾燥装置に本発明を適用した場合を例に説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
まず、
図1に基づき、本実施形態に係るインクジェット式画像形成装置の全体構成について説明する。
【0012】
図1に示されるインクジェット式画像形成装置100は、シート供給部1と、前処理部2と、第1画像形成部3と、第1乾燥部4と、第1冷却部5と、表裏反転部6と、第2画像形成部7と、第2乾燥部8と、第2冷却部9と、シート回収部10とを備えている。
【0013】
シート供給部1は、長尺のシートSがロール状に巻回された供給ローラ11を有している。供給ローラ11が
図1に示される矢印方向に回転することにより、シートSが繰り出される。繰り出されたシートSは、前処理部2へ供給される。
【0014】
前処理部2は、シート供給部1から供給されたシートSの片面又は両面に処理液を塗布する処理液塗布装置などを有している。処理液は、例えば、インクを凝集させる機能を有する液などであり、インクのにじみ防止や浸透補助などの画質向上を目的として画像形成前のシートSに処理液が塗布される。処理液が塗布されたシートSは、第1画像形成部3へ供給される。
【0015】
第1画像形成部3は、液体のインクを吐出する液体吐出部としての複数の液体吐出ヘッド13a,13b,13c,13dを有している。
図1に示される例においては、シートSの搬送方向の上流側から、ブラックインク用の液体吐出ヘッド13a、シアンインク用の液体吐出ヘッド13b、マゼンタインク用の液体吐出ヘッド13c、イエローインク用の液体吐出ヘッド13dの順に配置されている。なお、各液体吐出ヘッド13a,13b,13c,13dの配置は、
図1に示される順に限定されるものではなく、任意の順番でよい。インクは、色材と溶剤、溶剤に分散された結晶性樹脂粒子を含む液体であり、結晶性樹脂は、所定の融点以上に熱せられると相変化を起こし結晶状態から液体に融解する樹脂である。シートSが第1画像形成部3へ供給されると、各液体吐出ヘッド13a,13b,13c,13dからシートSの表側の面(第1面)へインクが吐出され、シートSの表側の面に画像が形成される。
【0016】
第1乾燥部4は、シートSを加熱してシートS上のインクを乾燥させる乾燥装置20を有している。シートSが第1画像形成部3から第1乾燥部4へ供給されると、乾燥装置20によってシートSが加熱され、シートS上のインクが乾燥される。
【0017】
第1冷却部5は、複数の冷却ローラ14を有している。シートSが第1乾燥部4から第1冷却部5へ供給されると、シートSが冷却ローラ14に接触することにより、シートSが冷却される。
【0018】
表裏反転部6は、シートSの表側と裏側の位置を反転させる公知の装置により構成される。第1冷却部5から供給されたシートSが、表裏反転部6を通過すると、シートSの表裏が反転されて第2画像形成部7へ送られる。例えば、シートSの表側の面が上向きの状態で表裏反転部6へ供給されると、表側の面が下向き(裏側の面が上向き)となるように反転されて第2画像形成部7へ供給される。
【0019】
第2画像形成部7は、上記第1画像形成部3と同じように、複数の液体吐出ヘッド13a,13b,13c,13dを有している。ただし、第2画像形成部7においては、第1画像形成部3とは異なり、シートSの表側の面ではなく裏側の面(第2面)に対して画像が形成される。すなわち、シートSは、表裏反転部6によって表裏反転された状態で第2画像形成部7へ供給されるので、シートSが第2画像形成部7へ供給されると、各液体吐出ヘッド13a,13b,13c,13dからシートSの裏側の面へインクが吐出され、シートSの裏側の面に画像が形成される。
【0020】
第2乾燥部8及び第2冷却部9は、上記第1乾燥部4及び上記第1冷却部5と同じように構成されている。従って、上記第2画像形成部7においてシートSの裏側の面に画像が形成された後、シートSが第2乾燥部8へ供給されると、第2乾燥部8の乾燥装置30によってシートSが加熱されてシートS上のインクが乾燥され、続いて、第2冷却部9の冷却ローラ15によってシートSが冷却される。
【0021】
シート回収部10は、シートSを巻き取って回収する回収ローラ16を有している。回収ローラ16が
図1に示される矢印方向に回転すると、シートSがロール状に巻き取られて回収される。
【0022】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の制御ブロック図である。
【0023】
図2に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100は、画像情報入力部61と、インク付着量算出部62と、速度入力部63と、シート情報入力部64と、ヒータ温度入力部65と、主制御部60と、シート搬送制御部66と、液体吐出ヘッド制御部67と、ヒータ電力制御部68とを備えている。
【0024】
画像情報入力部61は、シートに印刷される印刷画像情報とシートに付着する最大インク付着量とが入力される部分である。画像情報入力部61に入力される最大インク付着量は、オペレータによって入力されるインク付着量のほか、インク付着量算出部62が画像情報入力部61に入力された印刷画像情報に基づいて算出する最大インク付着量であってもよい。
【0025】
速度入力部63は、シート搬送速度が入力される部分である。速度入力部63に入力されるシート搬送速度は、オペレータによって入力される速度のほか、画像形成装置に設けられた速度センサによって検知されるシート搬送速度であってもよい。
【0026】
シート情報入力部64は、印刷に用いられるシートの情報が入力される部分である。シート情報入力部64に入力されるシートの情報としては、例えば、シートの坪量(単位面積当たりの重量)と幅がある。また、入力されるシートの情報は、オペレータによって入力される情報のほか、画像形成装置に設けられたシートセンサによって検知されるシートの情報であってもよい。
【0027】
ヒータ温度入力部65は、上記乾燥装置20,30が備えるヒータランプの温度情報が入力される部分である。ヒータ温度入力部65に入力されるヒータランプの温度情報は、オペレータによって入力される温度情報のほか、画像形成装置に設けられた温度センサによって検知されるヒータランプの温度情報であってもよい。
【0028】
主制御部60は、画像情報入力部61、速度入力部63、シート情報入力部64、及びヒータ温度入力部65に入力された各種情報に基づいて、シート搬送制御部66、液体吐出ヘッド制御部67、及びヒータ電力制御部68を制御する部分である。
【0029】
シート搬送制御部66は、入力されたシート搬送速度の情報に基づいて、シートの搬送速度が所望の搬送速度となるように制御する。例えば、シート搬送制御部66は、
図1に示される供給ローラ11、回収ローラ16、その他の搬送ローラなどの回転速度を制御する。
【0030】
液体吐出ヘッド制御部67は、入力された印刷画像の情報と最大インク付着量の情報とに基づいて
図1に示される各液体吐出ヘッド13a,13b,13c,13dを制御する。液体吐出ヘッド制御部67によって各液体吐出ヘッド13a,13b,13c,13dのインク吐出動作が制御されることにより、シート上に所望の画像が形成される。
【0031】
ヒータ電力制御部68は、入力されたヒータランプの温度情報に基づいて乾燥装置20,30が備えるヒータランプへの供給電力を制御する。ヒータ電力制御部68によってヒータランプへの供給電力が制御されることにより、ヒータランプの出力(発熱量)が制御される。
【0032】
続いて、
図3に基づき、上記第1乾燥部4及び上記第2乾燥部8が有する各乾燥装置20,30の基本構成について説明する。なお、第1乾燥装置20及び第2乾燥装置30の構成は同じであるので、第1乾燥装置20の構成のみについて説明し、第2乾燥装置30の構成については説明を省略する。
【0033】
図3に示されるように、第1乾燥装置20は、複数の加熱ローラ21と、1つの加熱ドラム22と、複数の案内ローラ23と、複数のエア吹き出しユニット24を備えている。
【0034】
加熱ドラム22は、内部に熱源である複数のヒータランプ26を有する大径のローラ(円筒状部材)である。一方、加熱ローラ21は、加熱ドラム22よりも小径のローラ(円筒状部材)であり、加熱ドラム22と同じように内部に熱源としての複数のヒータランプ25が配置されている。案内ローラ23は、加熱ドラム22及び加熱ローラ21とは異なり、内部にヒータランプなどの熱源は有しておらず、シートSを案内する案内手段として機能するローラである。
【0035】
加熱ドラム22の周囲には、複数の加熱ローラ21と複数の案内ローラ23が渦巻き状に配置されている。シートSは、各案内ローラ23のほか、各加熱ローラ21及び加熱ドラム22に掛け渡される。これにより、シートSを案内する案内経路が構成される。
【0036】
シートSが第1乾燥装置20内に搬入されると、まず、シートSは加熱ローラ21の外側に掛け渡される。なお、ここでいう「加熱ローラ21の外側」とは、加熱ドラム22の中心側を内側とした場合に、その中心側とは反対側を意味する。シートSが加熱ローラ21の外側に掛け渡されると、シートSの画像形成面(インク付着面)とは反対側の非画像形成面が加熱ローラ21に接触する。このため、シートSは、その非画像形成面側から加熱される。そして、シートSは、複数の加熱ローラ21に接触しながら搬送され、続いて、加熱ドラム22に巻き付けられる。さらに、シートSは、加熱ドラム22から案内ローラ23へ掛け渡され、シートSの非画像形成面が複数の加熱ローラ21の内側に接触しながら搬送される。このように、シートSは、加熱ローラ21の外側に接触しながら搬送された後、加熱ドラム22に巻き付けられ、さらに、加熱ローラ21の内側に接触しながら搬送されることにより、シートSが効率良く加熱され、シートS上のインクの乾燥が促進される。
【0037】
また、加熱ローラ21と案内ローラ23によってシートSが張架される箇所、及び、加熱ドラム22に対向する位置においては、これらのエア吹き出しユニット24からシートSに対してエアが吹き付けられる。これにより、インクの乾燥がより一層促進される。その後、シートSは、第1乾燥装置20外へ搬出される。
【0038】
ところで、本実施形態のような乾燥装置を備えるインクジェット式の画像形成装置において、厚みのあるシートを搬送する場合、あるいは、生産性を高めるためにシートの搬送速度を速くする場合は、加熱ローラからシートへ供給される熱量を多くする必要がある。また、シートへ供給される熱量を多くする方法としては、加熱ローラ内のヒータランプの数を多くしたり、ヒータランプの出力を大きくしたりする方法がある。しかしながら、ヒータランプの数を増やすと、装置の大型化及び高コスト化につながり、ヒータランプの出力を上げると、ヒータランプ又は加熱ローラなどの温度が耐熱温度を超える虞がある。すなわち、熱源の数を多くする方法には、装置サイズ又はコストに関する制約があり、熱源の出力を上げる方法には、部品の耐熱性に関する制約がある。従って、単純に熱源の数を増やしたり出力を上げたりするようなこれまでの対策では、部品の耐熱温度を超えない範囲内で熱の供給量を効果的に多くするには限界がある。
【0039】
そこで、本発明においては、熱源の設置数を抑えつつ、耐熱温度を超えない範囲内で、加熱ローラの熱の供給量を効果的に増やすため、熱源の配置を次のように工夫している。以下、
図4~
図7に基づき、上記第1乾燥装置20及び上記第2乾燥装置30が備える各加熱ローラ21内のヒータランプ25の構成について、1つの加熱ローラ21内に配置されるヒータランプ25を例に説明する。
【0040】
図4は、本実施形態に係る加熱ローラ21を、その長手方向(回転軸方向)の一端側から見た図である。
【0041】
図4に示されるように、本実施形態においては、加熱ローラ21内に、4つのヒータランプ25が配置されている。4つのヒータランプ25のうち、3つのヒータランプ25aは、正三角形を成す各頂点の位置に配置され、残りの1つのヒータランプ25bは、3つのヒータランプ25aを頂点とする正三角形の内側に配置されている。特に、本実施形態においては、正三角形の内側に配置される1つのヒータランプ25bが、その正三角形の重心Gの位置であって、加熱ローラ21の回転中心Oの位置に配置されている。なお、本実施形態においては、加熱ローラ21がシートの搬送に伴って従動回転するように構成されているが、各ヒータランプ25a,25bは加熱ローラ21が回転しても回転しないように固定されている。このため、各ヒータランプ25a,25bの配置は保持される。
【0042】
図5は、加熱ローラ21内の4つのヒータランプ25a,25bをシートの搬送方向Aへ並べた模式図である。
【0043】
図5において、上から3つのヒータランプ25aは、上記三角形の頂点の位置に配置されるヒータランプであり、一番下のヒータランプ25bは、上記三角形の重心Gの位置に配置されるヒータランプである。また、
図5において、矢印Bにて示される方向は、加熱ローラの長手方向(軸方向)を示し、各ヒータランプ25a,25bは、加熱ローラの長手方向Bに平行に配置されている。
【0044】
本実施形態においては、ヒータランプとして、赤外線を放出し、その赤外線の輻射熱により加熱対象物を加熱する輻射熱式のハロゲンランプを用いている。
図5に示されるように、ハロゲンランプ(各ヒータランプ25a,25b)は、発熱体としてのフィラメント33と、フィラメント33が収容される円筒状の発光管31などを有する。フィラメント33は、タングステンなどの金属線をコイル状に巻回して形成されている。発光管31は、石英ガラスなどの赤外線を透過する材料により形成されている。発光管31の内部には、フィラメント33が収容されるほか、ハロゲン物質及び不活性ガスが封入されている。そのため、発光管31の両端部側には、内部のガスが漏れ出ないように封止部31aが形成されている。また、フィラメント33の両端部は、給電線などを介して電源部に接続されている。電源部からフィラメント33に給電されると、フィラメント33が発光し、赤外線が放出される。そして、放出された赤外線が加熱ローラ21の内周面に照射されることにより、加熱ローラ21が加熱される。
【0045】
また、フィラメント33は、金属線が密に巻回される密巻部と、金属線が巻回されていない直線部とを有している。フィラメント33の密巻部は、通電により発熱(発光)する発熱領域(発光領域)H1となる。一方、フィラメント33の直線部は、ほとんど発熱(発光)しない非発熱領域(非発光領域)H2である。
【0046】
ここで、正三角形の頂点の位置に配置される3つのヒータランプ25aを「外側ヒータランプ」と称し、正三角形の内側(重心Gの位置)に配置される1つのヒータランプ25bを「内側ヒータランプ」と称すると、外側ヒータランプ25aの発熱領域H1と、内側ヒータランプ25bの発熱領域H1は、加熱ローラの長手方向Bにおいて互いにずれて重ならないように配置されている。
【0047】
また、
図5に示されるように、加熱ローラの長手方向Bにおける内側ヒータランプ25bの発熱領域H1の長さは、外側ヒータランプ25aの発熱領域H1の長さよりも短く設定されている。具体的に、本実施形態においては、外側ヒータランプ25aの発熱領域H1の長さと、内側ヒータランプ25bの発熱領域H1の長さの比が、3:1となるように設定されている。なお、発熱領域H1の長さの比は、この例に限定されるものではなく、任意に設定可能である。このように、本実施形態においては、外側ヒータランプ25aと内側ヒータランプ25bのそれぞれの発熱領域H1の長さ及び配置が異なっているため、それぞれの発熱強度分布(発光強度分布)が異なっている。すなわち、正三角形の各頂点の位置に配置される3つの外側ヒータランプ25aは、同じ発熱強度分布を有する第1熱源により構成され、正三角形の内側(重心Gの位置)に配置される内側ヒータランプ25bは、第1熱源とは異なる発熱強度分布を有する第2熱源により構成されている。
【0048】
図6に、外側ヒータランプ25aと内側ヒータランプ25bの発熱強度分布(発光強度分布)を示す。
図6において、(a)が外側ヒータランプ25aの発熱強度分布を示す図であり、(b)が内側ヒータランプ25bの発熱強度分布を示す図である。また、
図6の(a)(b)において、縦軸は発熱強度(発光強度)を示し、横軸はヒータランプの図の左端からの長手方向距離を示す。
【0049】
図6に示されるように、外側ヒータランプ25aと内側ヒータランプ25bにおいては、発熱領域H1の長さ及び位置が互いに異なっているため、それぞれの長手方向における発熱強度分布も互いに異なっている。この場合、外側ヒータランプ25aにおいては、グラフの左端寄りに発熱強度が高い領域が存在し、内側ヒータランプ25bにおいては、グラフの右端寄りに発熱強度が高い領域が存在する。
【0050】
また、
図7に示されるように、本実施形態においては、加熱ローラ21の長手方向両端に、加熱ローラ21の端部温度及びその近傍の温度を測定する温度測定部35a,35bが設けられている。加熱ローラ21の一端側に設けられる温度測定部35aは、その一端側寄りに発熱領域H1を有する3つの外側ヒータランプ25aの制御用に用いられる。一方、加熱ローラ21の他端側に設けられる温度測定部35bは、その他端側寄りに発熱領域H1を有する1つの内側ヒータランプ25bの制御用に用いられる。すなわち、これらの温度測定部35a,35bによって測定された温度情報と、上記ヒータ温度入力部65に入力された温度情報とに基づき、主制御部60がヒータ電力制御部68を制御することにより、各ヒータランプ25a,25bの発熱(発光)動作が制御される。
【0051】
続いて、
図8のフローチャートを参照しつつ、外側ヒータランプ25a及び内側ヒータランプ25bの制御方法について説明する。
【0052】
本実施形態においては、各ヒータランプ25a,25bの制御方法として、PID(Proportional Integral Differential)制御を用いている。PID制御は、目標値と制御量との偏差に応じて、比例動作と、積分動作と、微分動作と、を組み合わせて行う一般的に知られた制御方法である。なお、各ヒータランプ25a,25bの制御方法は、PID制御に限定されるものではない。
【0053】
各ヒータランプ25a,25bの制御が開始されると、PID制御により各ヒータランプ25a,25bが目標温度(例えば、120℃)となるように発熱制御される(
図8のStep1)。その後、各ヒータランプ25a,25bが目標温度に達すると、シートに対する画像形成が開始される(
図8のStep2)。そして、シートに画像が形成されると、シートが乾燥装置へ搬送され、乾燥装置においてシートの乾燥処理が開始される(
図8のStep3)。
【0054】
ここで、乾燥装置に搬送されるシートが、例えば、A3サイズ2枚分の幅に相当する小サイズシートである場合(
図8のStep4で「YES」の場合)は、
図9に示されるように、シートS1が加熱ローラ21の一端側(図の左端側)に片寄って搬送される。このとき、シートS1が通過する領域においては、加熱ローラ21の熱がシートS1によって奪われるため、加熱ローラ21の温度が低下する。その結果、加熱ローラ21の一端に設けられる温度測定部35aの検知温度が所定の温度以下になると、一端側に発熱領域H1を有する外側ヒータランプ25aが、PID制御によって目標温度(例えば、120℃)となるように発熱制御される。また、複数の外側ヒータランプ25aにおいても、同じように制御される。一方、シートS1が通過しない加熱ローラ21の他端側(図の右端側)の領域においては、シートS1の通過に伴う熱の消費がほとんどされない。このため、加熱ローラ21の他端側に発熱領域H1を有する内側ヒータランプ25bは、PID制御によりほとんど発熱しない(
図8のStep5)。
【0055】
次に、乾燥装置に搬送されるシートが、B3サイズ3枚分の幅に相当する大サイズシートである場合(
図8のStep4で「NO」の場合)は、
図10に示されるように、シートS2が加熱ローラ21の長手方向のほぼ全域を通過するように搬送される。この場合、シートS2の通過に伴って、加熱ローラ21の長手方向のほぼ全域の熱が消費されるので、加熱ローラ21の全域に渡って温度が低下する。従って、加熱ローラ21の両端の温度測定部35a,35bの検知温度が所定の温度以下になると、PID制御により、外側ヒータランプ25aと内側ヒータランプ25bの両方が目標温度(例えば、120℃)となるように発熱制御される(
図8のStep6)。
【0056】
このように、本実施形態においては、異なる幅サイズのシートが搬送される場合であっても、加熱ローラ21の両端に設けられる温度測定部35a,35bの検知温度に基づき、外側ヒータランプ25a及び内側ヒータランプ25bの発熱がPID制御されることにより、加熱ローラ21の温度を所定の温度に維持できるようにしている。
【0057】
図11は、本実施形態に係る画像形成装置のより具体的な制御構造を示すブロック図である。
【0058】
図11に示されるように、画像形成装置100は、CPU(Central Processing Unit)501と、ROM(Read Only Memory)502と、RAM(Random Access Memory)503と、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)504と、外部機器接続I/F505と、ネットワークI/F506と、バスライン507を備えている。また、画像形成装置100は、シート搬送部70と、副走査ドライバと508、主走査ドライバ509と、キャリッジ71と、操作パネル72を備えている。キャリッジ71は、複数の液体吐出ヘッド13a,13b,13c,13dと、液体吐出ドライバ510を備えている。
【0059】
CPU501、ROM502、RAM503及びNVRAM504は、
図2に示される主制御部60に含まれる。CPU501は、画像形成装置100全体の動作を制御する。ROM502は、IPLなどのCPU501の駆動に用いられるプログラムなどを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。NVRAM504は、プログラムなどの各種データを記憶し、画像形成装置100の電源が遮断されている間も各種データを保持する。
【0060】
外部機器接続I/F505は、USB(Universal Serial Bus)ケーブルなどにより、PC(Personal Computer)に接続され、PCとの間で制御信号及び印刷される画像のデータの通信を行う。ネットワークI/F506は、インターネットなどの通信ネットワークを利用してデータ通信するためのインターフェースである。バスライン507は、CPU501などの各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバス及びデータバスなどである。
【0061】
シート搬送部70は、例えば、ローラ及びローラを駆動するモータを含み、画像形成装置100内の搬送経路に沿って副走査方向(シート搬送方向)へシートを間欠的に搬送する。副走査ドライバ508は、
図2に示されるシート搬送制御部66として機能し、シート搬送部70による副走査方向へのシートの搬送を制御するドライバである。
【0062】
キャリッジ71は、複数の液体吐出ヘッド13a,13b,13c,13dを搭載し、シート搬送方向とは交差する主走査方向へ移動可能なヘッド保持体である。キャリッジ71が主走査方向へ移動しながら、副走査方向へ間欠的に搬送されるシートに対して各液体吐出ヘッド13a,13b,13c,13dからインクが吐出されることにより、シートの所定位置に画像が形成される。このとき、主走査ドライバ509が、キャリッジ71の主走査方向への移動を制御し、液体吐出ドライバ510が、各液体吐出ヘッド13a,13b,13c,13dの駆動を制御する。主走査ドライバ509及び液体吐出ドライバ510は、
図2に示される液体吐出ヘッド制御部67として機能する。
【0063】
なお、液体吐出ドライバ510は、キャリッジ71に搭載されず、キャリッジ71外で、バスライン507に接続されてもよい。また、主走査ドライバ509、副走査ドライバ508及び液体吐出ドライバ510は、それぞれプログラムに従ったCPU501の命令によって実現する機能であってもよい。
【0064】
操作パネル72は、現在の設定値及び選択画面などを表示し、オペレータからの入力を受け付けるタッチパネル及びアラームランプなどにより構成されている。操作パネル72は、
図2に示される画像情報入力部61、速度入力部63、シート情報入力部64及びヒータ温度入力部65などとして機能する。
【0065】
また、CPU501は、画像形成装置100に搭載される乾燥装置20,30の各種構成要素の動作も制御する。例えば、CPU501は、加熱ローラ21、加熱ドラム22及び案内ローラ23のそれぞれの回転動作、エア吹き出しユニット24の送風動作を制御する。また、CPU501は、温度測定部35a,35bによって検知される加熱ローラ21の温度に基づいて、加熱ローラ21内のヒータランプ25の発熱動作も制御する。
【0066】
ここで、本発明の実施形態とは異なる比較例について説明する。
【0067】
図12は、第1比較例に係る加熱ローラ41を、その長手方向(回転軸方向)の一端側から見た図である。
【0068】
図12に示されるように、第1比較例においては、本発明の実施形態とは異なり、加熱ローラ41内に2つのヒータランプ45a,45bが配置されている。すなわち、第1比較例においては、本発明の実施形態に比べて、ヒータランプの数が2つ少ない。ここでは、2つのヒータランプ45a,45bが、加熱ローラ41の回転中心Oを基準に点対称の位置、すなわち回転中心Oを通る同一直線上で回転中心Oから等距離の位置に配置されている。
【0069】
図13は、第1比較例に係る各ヒータランプ45a,45bの発熱強度分布(発光強度分布)を示す図である。
図13において、(a)が一方のヒータランプ45aの発熱強度分布を示し、(b)が他方のヒータランプ45bの発熱強度分布を示す。また、
図13の(a)(b)において、縦軸は発熱強度(発光強度)を示し、横軸はヒータランプの図の左端からの長手方向距離を示す。
【0070】
図13に示されるように、2つのヒータランプ45a,45bにおいては、それぞれの発熱領域H1の位置が加熱ローラの長手方向Bにおいて異なっている。このため、それぞれの発熱強度分布も互いに異なっている。なお、第1比較例に係る各ヒータランプ45a,45bは、発熱領域H1の長さ及び配値以外は、上記本発明の実施形態に係るヒータランプと同じ構成のハロゲンランプである。
【0071】
続いて、上記のような第1比較例に係る加熱ローラ41を用いて、各ヒータランプ45a,45bの出力(供給電力)を変更したときの各ヒータランプ45a,45bの発光管の温度上昇を調べた試験について説明する。具体的に、本試験においては、加熱ローラ41として、内径が50mm、長手方向(軸方向)の長さが520mmのローラを用いた。また、各ヒータランプ45a,45bの外径を10mmとし、各ヒータランプ45a,45b同士の中心間距離を30mm、各ヒータランプ45a,45bと加熱ローラ41の内周面との距離(最短距離)を5mmに設定した。各ヒータランプ45a,45bの発光管の耐熱温度は800℃である。このような条件で、各ヒータランプ45a,45bを発光させたところ、ヒータランプ1つあたりの出力(供給電力)とそのときの発光管の温度は、下記表1に示される関係となった。
【0072】
【0073】
上記表1の関係から、ヒータランプの出力が上がると、これに伴って発光管の温度も上昇していくことが見て取れる。そして、ヒータランプ1つあたりの出力が3000Wとなったときに、発光管の温度がその耐熱温度である800℃を超えて805℃となった。このことから、発光管の温度が耐熱温度を超えないようにするには、ヒータランプ1つあたりの出力が3000Wよりも小さい2900Wまでに制限する必要がある。従って、第1比較例においては、2つのヒータランプの合計出力の上限値が5800W(=2900W×2)となる。
【0074】
次に、
図14に示される第2比較例の構成について説明する。
【0075】
第2比較例に係る加熱ローラ51においては、ヒータランプの合計出力の上限値を上げるべく、上記第1比較例よりもヒータランプの数を増やし、
図14に示されるように、加熱ローラ51内に4つのヒータランプ55a,55bを配置している。ここでは、4つのヒータランプ55a,55bが、加熱ローラ51の回転中心Oを基準に点対称となる正方形の各頂点の位置に配置されている。
【0076】
4つのヒータランプ55a,55bのうち、正方形の同じ対角線上に配置される2つのヒータランプ55aは、別の対角線上に配置される2つのヒータランプ55bとは、発熱強度分布が異なる。具体的に、
図14において、右上と左下の2つのヒータランプ55aは、
図13の(a)に示される発熱強度分布の熱源であり、右下と左上の2つのヒータランプ55bは、
図13の(b)に示される発熱強度分布の熱源である。
【0077】
また、第2比較例においても、ヒータランプの出力(供給電力)と発光管の温度上昇との関係を調べる試験を行った。この場合、上下方向及び左右方向に隣り合うヒータランプ55a,55b同士の中心間距離を30mmに設定した。それ以外は上記第1比較例と同じ条件である。第2比較例におけるヒータランプ1つあたりの出力(供給電力)と発光管の温度との関係を、下記表2に示す。
【0078】
【0079】
上記表2に示されるように、第2比較例においては、ヒータランプ1つあたりの出力が2600Wとなったときに、発光管の温度が耐熱温度である800℃を超えて806℃となった。このことから、発光管の温度が耐熱温度を超えないようにするには、ヒータランプ1つあたりの出力が2600Wよりも小さい2500Wまでに制限する必要がある。従って、第2比較例においては、4つのヒータランプの合計出力の上限値が10000W(=2500W×4)となる。
【0080】
このように、第2比較例においては、第1比較例よりもヒータランプの数を2つ多くしたことにより、ヒータランプ1つあたりの最大出力は小さくなるが、ヒータランプの合計出力は第1比較例(合計出力の上限値:5800W)に比べて大きくなる。一方で、加熱ローラ内にヒータランプをこれ以上多く配置できない場合は、ヒータランプの合計出力がその上限値である10000Wに制限されることになる。
【0081】
これに対して、上記本発明の実施形態においては、ヒータランプの合計出力の上限値をさらに上げることが可能である。以下、本発明の実施形態におけるヒータランプの合計出力の上限値について、下記表3に示される試験結果を例に説明する。
【0082】
本発明の実施形態に係る試験においては、上記各比較例に係る試験と同じように、ヒータランプの出力(供給電力)と発光管の温度上昇との関係を調べた。具体的には、
図4に示されるように、各ヒータランプ25a,25bを正三角形の各頂点と重心Gの位置に配置し、各頂点に位置するヒータランプ25a同士の中心間距離を26mmに設定した。また、各頂点に位置するヒータランプ25aと重心Gに位置するヒータランプ25bとの中心間距離を15mmとし、それ以外は上記第1比較例の試験と同じ条件で、ヒータランプの出力(供給電力)ごとの発光管の温度を測定した。そのときのヒータランプ1つあたりの出力(供給電力)と発光管の温度との関係を、下記表3に示す。
【0083】
【0084】
上記表3に示されるように、本発明の実施形態においては、ヒータランプ1つあたりの出力が2800Wとなったときに、発光管の温度が耐熱温度である800℃を超えて803℃となった。このことから、ヒータランプ1つあたりの出力は、2800Wよりも小さい2700Wであれば許容される。従って、本発明の実施形態においては、4つのヒータランプの合計出力の上限値が10800W(=2700W×4)となる。
【0085】
ここで、上記各試験におけるヒータランプの合計出力の上限値をまとめると、下記表4のようになる。
【0086】
【0087】
まず、第1比較例と第2比較例との合計出力の上限値を比べると、第2比較例においては、許容されるヒータランプの合計出力の上限値が、第1比較例の5800Wから10000Wへ大幅(1.7倍)に上昇している。このことから、ヒータランプの数を2本から4本に増やすことは、加熱ローラの熱の供給量を増やす手段として有効な手段であるといえる。一方、第2比較例と本発明の実施形態とにおいては、これらのヒータランプの数が、いずれも4つであり、同じ数である。しかしながら、本発明の実施形態においては、第2比較例に比べて、ヒータランプ1つあたりの最大出力を2500Wから2700Wまで上げることができ、許容されるヒータランプの合計出力の上限値も10000Wから10800Wへ上げることができた。すなわち、本発明の実施形態においては、ヒータランプを正三角形の各頂点と重心の位置に配置することにより、ヒータランプの数が第2比較例と同じ4つであっても、ヒータランプの合計出力の上限値をさらに上げることができた。
【0088】
このように、本発明の実施形態においては、ヒータランプを正三角形の各頂点と重心の位置に配置することにより、ヒータランプの数を増加させることなく、発光管の耐熱温度を超えない範囲でヒータランプの合計出力の上限値を上げることができる。これにより、装置サイズ又はコスト上の制約がある場合でも、装置の大型化及び高コスト化を抑えつつ、加熱ローラの熱の供給量を効果的に増やすことができ、乾燥装置の乾燥機能の向上を図ることができる。従って、本発明の実施形態によれば、厚みのあるシートを搬送したり、生産性を高めるためにシートの搬送速度を速くしたりする場合などにも対応できるようになる。
【0089】
また、本発明の実施形態においては、長い発熱領域H1を有する外側ヒータランプ25aが、加熱ローラ21内に1つではなく複数(本実施形態においては3つ)配置されているため、外側ヒータランプ25aが1つのみ配置される構成に比べて、外側ヒータランプ25aの発熱密度(1つのヒータランプの単位長さあたりの出力)を下げることができる。すなわち、外側ヒータランプ25aが1つである場合は、加熱ローラ21を加熱する所定の出力(発熱量)を確保するために、外側ヒータランプ25aの発熱密度を大きくしなければならないが、本実施形態のように、外側ヒータランプ25aの数を複数にすることにより、外側ヒータランプ25aの発熱密度を下げることができる。また、ヒータランプの発光管の温度は、ヒータランプの発熱密度と発光長(発熱領域の長さ)に応じて上昇するので、発光管の温度が耐熱温度を超えないようにするには、ヒータランプの発熱密度が小さい方が好ましい。このため、本発明の実施形態のように、外側ヒータランプ25aを複数配置して、1つあたりの外側ヒータランプ25aの発熱密度を下げることにより、発光管の温度上昇を抑制できるようになる。
【0090】
一方、内側ヒータランプ25bは、外側ヒータランプ25aに比べて、発熱領域H1が短いため、反対に発熱密度が大きく設定されている。具体的に、本発明の実施形態においては、内側ヒータランプ25bの発光領域H1が外側ヒータランプ25aの発光領域H1の3分の1の長さであるため、内側ヒータランプ25bの発熱密度は外側ヒータランプ25aの発熱密度の3倍に設定されている。このように、本実施形態においては、内側ヒータランプ25bの発熱密度が大きく設定されているが、反対に発熱領域H1は短いので、内側ヒータランプ25bが発光しても、その発光管の温度が耐熱温度を超えることはない。さらに、本発明の実施形態においては、外側ヒータランプ25aと内側ヒータランプ25bの発熱領域H1同士が加熱ローラの長手方向Bに重なり合わないように配置されているため、これらが互いに重なり合って配置される場合に比べて、発光管の過剰な温度上昇を回避できる。このため、本発明の実施形態においては、加熱ローラ21を加熱する所定の出力(発熱量)を確保しつつ、発光管の温度をその耐熱温度の範囲内で維持することが可能である。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、3つの外側ヒータランプ25aが配置される位置は、正三角形の各頂点の位置に限らず、正三角形以外の三角形の各頂点の位置であってもよい。また、内側ヒータランプ25bが配置される位置は、正三角形又は三角形の重心の位置に限らず、重心以外の位置(正三角形又は三角形の内側の任意の位置)であってもよい。
【0092】
また、外側ヒータランプ25aは、三角形に限らず、その他の多角形の頂点の位置に配置されてもよい。
【0093】
例えば、
図15に示される例のように、同じ発熱強度分布を有する4つのヒータランプ25a(第1熱源)を四角形の各頂点の位置に配置し、4つのヒータランプ25aとは異なる発熱強度分布を有する1つのヒータランプ25b(第2熱源)を、四角形の内側又は重心の位置に配置してもよい。
【0094】
さらに、
図16に示される例のように、同じ発熱強度分布を有する5つのヒータランプ25a(第1熱源)を五角形の各頂点の位置に配置し、5つのヒータランプ25aとは異なる発熱強度分布を有する1つのヒータランプ25b(第2熱源)を、五角形の内側又は重心の位置に配置してもよい。
【0095】
また、ヒータランプの数をさらに増やす場合は、上記例と同じように、同じ発熱強度分布を有する複数のヒータランプを多角形の各頂点の位置に配置し、これらとは異なる発熱強度分布を有する1つのヒータランプを、その多角形の内側又は重心の位置に配置すればよい。
【0096】
また、加熱ローラ内に配置されるヒータランプの数は3つであってもよい。
【0097】
その場合、例えば、
図17に示されるように、同じ発熱強度分布を有する2つのヒータランプ25a(第1熱源)を互いに間隔をあけて配置し、これら2つのヒータランプ25aの間に、異なる発熱強度分布を有する1つのヒータランプ25b(第2熱源)を配置すればよい。なお、2つのヒータランプ25aの間に配置されるヒータランプ25bの位置は、2つのヒータランプ25aから等距離にある中間位置であるほか、その中間位置がずれた位置であってもよい。
【0098】
上記のような
図15、
図16、
図17の各図に示される例の場合も、ヒータランプの数を増やすことなく、ヒータランプ1つあたりの最大出力を上げることができるので、発光管の耐熱温度を超えない範囲内で熱の供給量を効果的に増やすことが可能である。また、
図15、
図16、
図17の各例においても、上記実施形態と同じように、複数のヒータランプ25a(第1熱源)の内側又は間に配置されるヒータランプ25b(第2熱源)の発熱領域H1を、周囲のヒータランプ25a(第1熱源)の発熱領域H1に比べて短くしたり、加熱ローラの長手方向において発熱領域H1が重ならないように配置したりして、発光管の温度上昇を抑制できるようにしてもよい。
【0099】
また、本発明に係る構成は、搬送されるシートに接触しながら従動回転する加熱ローラに限らず、搬送されるシートに接触しながらモータなどの駆動源によって能動的に回転する加熱ローラ、あるいは、搬送されるシートに対して回転せずに摺接する加熱ローラにも適用可能である。
【0100】
また、本発明に係る構成は、加熱ローラと一緒に回転せずに位置保持されるヒータランプの配置に限らず、加熱ローラと一緒に回転するヒータランプの配置にも適用可能である。
【0101】
また、本発明に係るヒータランプは、ハロゲンランプである場合に限らず、カーボンヒータなどの他の輻射熱式の加熱源であってもよい。
【0102】
また、本発明が適用される乾燥装置は、シート搬送方向における加熱ローラの上流側又は下流側に別方式の乾燥装置を備え、複数の乾燥方式を用いてシートの乾燥を行うものであってもよい。別方式とは、例えば、非接触式の乾燥装置、光エネルギーを付与して液滴を乾燥させる加熱手段(赤外線照射装置又は紫外線照射装置)のほか、送風による乾燥手段(送風装置)などである。非接触式の乾燥手段は、液体の塗布面、又は塗布面の裏面を乾燥する。このような別方式の乾燥装置においても、本発明に係る構成を適用することにより、装置の大型化及び高コスト化を抑えつつ、乾燥装置の乾燥機能の向上を図れるようになる。
【0103】
上記実施形態においては、本発明に係る加熱装置の一例として、インクジェット式の画像形成装置に搭載される乾燥装置を例に説明したが、本発明は、このような乾燥装置に限らず、乾燥以外の目的でシートなどの加熱対象物を加熱する加熱装置にも適用可能である。例えば、本発明は、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置に搭載される加熱装置にも適用可能である。
【0104】
また、上記実施形態においては、本発明に係る加熱装置(乾燥装置)が、液体吐出装置の一例であるインクジェット式の画像形成装置に搭載されている場合を例に説明したが、本発明に係る加熱装置はその他の液体吐出装置にも適用可能である。
【0105】
上記「液体吐出装置」とは、液体吐出部を備え、液体吐出部を駆動させて、シートに液体を吐出する装置を意味する。
【0106】
また、上記「液体吐出装置」には、シートの給送、搬送、排出に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含まれる。
【0107】
また、上記「液体吐出装置」は、シートに対して液体吐出部が相対的に移動するものであってもよいし、液体吐出部が相対的に移動しないものであってもよい。具体例としては、液体吐出ヘッド(液体吐出部)を移動させるシリアル型の液体吐出装置、液体吐出ヘッド(液体吐出部)を移動させないライン型の液体吐出装置などがある。
【0108】
また、上記「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像を可視化するものに限らない。例えば、「液体吐出装置」には、それ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するもの、さらにはシートの表面を改質するなどの目的でシートの表面に処理液を吐出する処理液吐出装置なども含まれる。
【0109】
上記「シート」は、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどが含まれる。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板がある。
【0110】
また、上記「シート」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0111】
また、上記「液体吐出装置」によって吐出される「液体」は、液体吐出部から吐出可能な粘度又は表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒などの溶媒、染料、顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子、発光素子の構成要素、電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液などの用途で用いることができる。
【0112】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の構成を備える加熱装置、画像形成装置、液体吐出装置が含まれる。
【0113】
[第1の構成]
第1の構成は、内側に熱源を有しシートを加熱する加熱ローラを備える加熱装置であって、前記熱源は、同じ発熱強度分布を有する3つ以上の第1熱源と、前記第1熱源とは異なる発熱強度分布を有する1つの第2熱源を有し、前記第2熱源は、前記加熱ローラの長手方向一端側から見て、前記第1熱源を頂点とする多角形の内側に配置される加熱装置である。
【0114】
[第2の構成]
第2の構成は、前記第1の構成において、前記第2熱源は、前記加熱ローラの長手方向一端側から見て、前記第1熱源を頂点とする多角形の重心に配置される加熱装置である。
【0115】
[第3の構成]
第3の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記第1熱源を頂点とする多角形が正多角形となるように、前記第1熱源が配置される加熱装置である。
【0116】
[第4の構成]
第4の構成は、内側に熱源を有しシートを加熱する加熱ローラを備える加熱装置であって、前記熱源は、同じ発熱強度分布を有する2つの第1熱源と、前記第1熱源とは異なる発熱強度分布を有する1つの第2熱源を有し、前記第2熱源は、前記加熱ローラの長手方向一端側から見て、前記第2熱源の間に配置される加熱装置である。
【0117】
[第5の構成]
第5の構成は、前記第1から第4のいずれか1つの構成において、前記加熱ローラは、搬送される前記シートに接触しながら回転する、又は回転せずに摺接する加熱装置である。
【0118】
[第6の構成]
第6の構成は、前記第1から第5のいずれか1つの構成において、前記第1熱源と前記第2熱源の1つあたりの最大出力が同じ値に設定される加熱装置である。
【0119】
[第7の構成]
第7の構成は、前記第1から第6のいずれか1つの構成において、前記加熱ローラの長手方向における前記第2熱源の発熱領域の長さは、前記第1熱源の発熱領域の長さよりも短い加熱装置である。
【0120】
[第8の構成]
第8の構成は、前記第1から第7のいずれか1つの構成において、前記第1熱源の発熱領域と前記第2熱源の発熱領域は、前記加熱ローラの長手方向において互いにずれて重ならないように配置される加熱装置である。
【0121】
[第9の構成]
第9の構成は、前記第1から第8のいずれか1つの構成において、前記第1熱源は、前記加熱ローラの長手方向一端側寄りに発熱領域を有し、前記第2熱源は、前記加熱ローラの長手方向他端側寄りに発熱領域を有し、前記加熱ローラの長手方向両端の温度を測定する温度測定部を備え、前記第1熱源及び前記第2熱源は、前記温度測定部によって検知される温度に基づいて制御される加熱装置である。
【0122】
[第10の構成]
第10の構成は、シートに画像を形成する画像形成部と、前記シートを加熱する前記第1から第9のいずれか1つの構成の加熱装置を備える画像形成装置である。
【0123】
[第11の構成]
第11の構成は、シートに液体を吐出する液体吐出部と、前記シートを加熱する前記第1から第9のいずれか1つの構成の加熱装置を備える液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0124】
3 第1画像形成部
7 第2画像形成部
13 液体吐出ヘッド(液体吐出部)
20 乾燥装置(加熱装置)
21 加熱ローラ
25 ヒータランプ
25a 外側ヒータランプ(第1熱源)
25b 内側ヒータランプ(第2熱源)
100 画像形成装置(液体吐出装置)
H1 発熱領域
S シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0125】