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特開2024-79607アシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物、プリプレグ、樹脂シート、及び積層板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079607
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】アシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物、プリプレグ、樹脂シート、及び積層板
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/14 20060101AFI20240604BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240604BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20240604BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C08G59/14
C08J5/24 CFC
B32B5/28
B32B27/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193531
(22)【出願日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2022191270
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】宗 正浩
(72)【発明者】
【氏名】石原 一男
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 広樹
(72)【発明者】
【氏名】江越 友哉
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 圭太
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD35
4F072AE01
4F072AF30
4F072AG03
4F072AG19
4F072AH02
4F072AH24
4F072AJ22
4F072AL13
4F100AB17
4F100AB17B
4F100AB33
4F100AB33B
4F100AK53
4F100AK53A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DH01
4F100DH01A
4F100EH46
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100GB43
4F100JA05
4F100JG05
4F100JK06
4J036AA01
4J036AF06
4J036AH18
4J036CC02
4J036DA04
4J036DC31
4J036DC38
4J036DC41
4J036DD07
4J036HA12
4J036JA05
4J036JA11
4J036KA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低誘電正接に優れた性能を有し、積層、成型、注型、接着等の用途に有用な低誘電エポキシ樹脂、その樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される芳香族エステル化合物と2.1官能以上のエポキシ樹脂とを反応してなるアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂。

式(1)において、Aはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、ビスフェニル環のいずれかを含む芳香族環であり、これらの芳香族環は置換基を有してもよく、酸素原子、リン原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を有してもよい。X及びXはアシルオキシ基又は水酸基であり、少なくとも一つはアシルオキシ基である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される芳香族エステル化合物と2.1官能以上のエポキシ樹脂とを反応してなるアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂。
【化1】
式(1)において、Aはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、ビスフェニル環のいずれかを含む芳香族環であり、これらの芳香族環は置換基を有してもよく、酸素原子、リン原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を有してもよい。X及びXは下記式(2)で表されるアシルオキシ基又は水酸基であり、少なくとも一つはアシルオキシ基である。
【化2】
式(2)において、Rはメチル基又はフェニル基である。
【請求項2】
前記芳香族エステル化合物が下記一般式(3)及び/又は一般式(4)で表されるリン化合物である請求項1に記載のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂。
【化3】
式(3)及び式(4)において、Bはベンゼン環又はナフタレン環であり、それらは炭素数1~12の炭化水素基を置換基として有してもよく、該置換基にヘテロ元素を有してもよい。R及びRはヘテロ元素を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基であり、リン原子と共にR、Rが結合して環状構造を形成してもよい。nは0又は1である。X及びXは一般式(1)と同義である。
【請求項3】
2.1官能以上のエポキシ樹脂がポリグリシジルアミン化合物である請求項1に記載のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂と硬化剤を配合してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項6】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物又はその半硬化物と繊維質基材とからなるプリプレグ。
【請求項7】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物又はその半硬化物と支持フィルムとからなる樹脂シート。
【請求項8】
請求項6に記載のプリプレグ及び/又は請求項7に記載の樹脂シートを積層して成形した積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電正接が低いアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂に関する。また、そのエポキシ樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂と硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物及び、その硬化物等に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、その硬化物において優れた耐熱性と絶縁性を発現することから、半導体や多層プリント基板などの電子部品用途において広く用いられている。
この電子部品用途のなかでも多層プリント基板絶縁材料の技術分野では、近年、各種電子機器における信号の高速化、高周波数化が進んでいる。しかしながら、信号の高速化、高周波数化に伴って、十分に低い誘電率を維持しつつ低い誘電正接を得ることが困難となりつつある。
【0003】
そこで、高速化、高周波数化された信号に対しても、十分に低い誘電率を維持しつつ十分に低い誘電正接を発現する硬化物を得ることが可能な熱硬化性樹脂組成物の提供が望まれている。
【0004】
エポキシ樹脂の低誘電率化について、特許文献1では、エポキシ化合物自体をより低誘電性のものとすることが開示されている。すなわち、エポキシ化合物の骨格構造に炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~12のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基などを導入することで、低誘電率化する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2は、ノボラック型エポキシ樹脂とイソシアネート化合物を用いて得られるオキサゾリドン環含有ノボラック型エポキシ樹脂を開示し、オキサゾリドン環により高分子化したエポキシ樹脂は低誘電率、低誘電正接であり、ガラス転移温度も高くなることを開示する。しかし、いずれの文献に開示されたエポキシ樹脂も、近年の高機能化に基づく低誘電性の要求に対しては更なる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-293929号公報
【特許文献2】特開2017-39842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、低誘電正接に優れた性能を有し、積層、成型、注型、接着等の用途に有用な低誘電エポキシ樹脂、その樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者は低誘電率、低誘電正接材料について、鋭意検討した結果、エポキシ樹脂の中でも2.1官能以上のエポキシ樹脂と芳香族エステル化合物とを用いて得られるアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂が、従来に無い低誘電率、低誘電正接を達成できる手段であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される芳香族エステル化合物と2.1官能以上のエポキシ樹脂とを反応してなるアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂である。
【化1】
式(1)において、Aはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、ビスフェニル環のいずれかを含む芳香族環であり、これらの芳香族環は置換基を有してもよく、酸素原子、リン原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を有してもよい。X及びXは下記式(2)で表されるアシルオキシ基又は水酸基であり、少なくとも一つはアシルオキシ基である。
【化2】
式(2)において、Rはメチル基又はフェニル基である。
【0010】
上記芳香族エステル化合物は、下記一般式(3)及び/又は一般式(4)で表されるリン化合物であることが好ましい。
【化3】
式(3)及び式(4)において、Bはベンゼン環又はナフタレン環であり、それらは炭素数1~12の炭化水素基を置換基として有してもよく、該置換基にヘテロ元素を有してもよい。R及びRはヘテロ元素を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基であり、リン原子と共にR、Rが結合して環状構造を形成してよい。nは0又は1である。X及びXは一般式(1)と同義である。
【0011】
上記2.1官能以上のエポキシ樹脂はポリグリシジルアミン化合物であってもよい。
【0012】
また本発明は、上記アシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂と硬化剤を配合してなるエポキシ樹脂組成物である。
【0013】
また本発明は、上記エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
【0014】
また本発明は、上記エポキシ樹脂組成物又はその半硬化物と繊維質基材とからなるプリプレグである。
更に本発明は、上記エポキシ樹脂組成物又はその半硬化物と支持フィルムとからなる樹脂シートである。
【0015】
また本発明は、上記プリプレグ及び/又は上記樹脂シートを積層して成形した積層板である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂は、誘電特性に優れており、低誘電率、低誘電正接が求められる積層板及び電子回路基板において優れた特性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂のGPCチャートである。
図2】実施例1のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂のIRチャートである。
図3】実施例6のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂のGPCチャートである。
図4】合成例1の芳香族エステル化合物のGPCチャートである。
図5】合成例1の芳香族エステル化合物のIRチャートである。
図6】エポキシ基とアシルオキシ基との反応の概略を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0019】
本発明のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂は、一般式(1)で表される芳香族エステル化合物と2.1官能以上のエポキシ樹脂との反応から得られる。ここで「2.1官能」とは平均官能基数のことであり、平均で2.1官能基数以上になれば、2官能エポキシ樹脂や単官能エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
ここで、一般式(1)で表される芳香族エステル化合物は、X及びXの両者がアシルオキシ基であるジエステル化合物、一方がアシルオキシ基で他方が水酸基であるモノエステル化合物から選ばれ、ジエステル化合物もしくはモノエステル化合物であるか、又はジエステル化合物及び/又はモノエステル化合物を含む混合物であってもよい。混合物にはX及びXの両方が水酸基であるジフェノール化合物が含まれてもよいが、50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下がより好ましい。つまり、ジエステル化合物及び/又はモノエステル化合物は混合物中に、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましい。ジエステル化合物を主成分とするジエステル系化合物であることが好ましく、該ジエステル系化合物としては、X及びXの両者がアシルオキシ基であるジエステル化合物からなるか、又は主成分(50モル%以上)がジエステル化合物(混合物)であることがよい。モノエステル化合物やジフェノール化合物が多くなるとアシル化率が低くなる。
【化4】
【0020】
式(1)において、Aはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、ビスフェニル環のいずれかを含む芳香族環であり、これらの芳香族環は置換基を有してもよく、酸素原子、リン原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を有してもよい。
【0021】
Aは、例えば、下記式(a-1)~(a-20)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの芳香族環に置換基として炭素数1~12の炭化水素基が置換していてもよく、酸素原子、リン原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を有してもよい。特に、リン原子を含有する置換基としては、後述のリン含有基が挙げられる。
【化5】
【0022】
Aに置換される炭素数1~12の炭化水素基(酸素原子を有してもよい)としては、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキル基又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n-オクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、n-デシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシル基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基、2-フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0024】
炭素数1~12のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、t-ペントキシ基、シクロペントキシ基、n-ヘキシロキシ基、イソヘキシロキシ基、シクロヘキシロキシ基、n-ヘプトキシ基、シクロヘプトキシ基、メチルシクロヘキシロキシ基、n-オクチロキシ基、シクロオクチロキシ基、n-ノニロキシ基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシロキシ基、n-デシロキシ基、シクロデシロキシ基、n-ウンデシロキシ基、n-ドデシロキシ基、シクロドデシロキシ基、ベンジロキシ基、メチルベンジロキシ基、ジメチルベンジロキシ基、トリメチルベンジロキシ基、ナフチルメトキシ基、フェネチロキシ基、2-フェニルイソプロポキシ基等が挙げられる。
【0025】
炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、エチルフェニル基、スチリル基、キシリル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、エチニルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等が挙げられる。
【0026】
炭素数7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、フェネチル基、2-フェニルイソプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0027】
炭素数7~12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、メチルベンジルオキシ基、ジメチルベンジルオキシ基、トリメチルベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、1-フェニルエチルオキシ基、2-フェニルイソプロピルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基等が挙げられる。
【0028】
好ましいAとしては、ベンゼン環、ベンゼン環のメチル基置換体、ベンゼン環の1-フェニルエチル基置換体、ナフタレン環、ナフタレン環のメチル基置換体、又はナフタレン環の1-フェニルエチル基置換体を含む構造である。より溶解性が必要な用途には、ベンゼン環、ベンゼン環のメチル基置換体、ベンゼン環の1-フェニルエチル基置換体を含むことが好ましく、より難燃性や耐熱性が必要な用途には、ナフタレン環、ナフタレン環のメチル基置換体、又はナフタレン環の1-フェニルエチル基置換体を含むことが好ましい。
【0029】
式(1)において、X及びXは下記式(2)で表されるアシルオキシ基又は水酸基であり、少なくとも一つはアシルオキシ基である。
【化6】
式(2)において、Rはメチル基又はフェニル基である。
【0030】
本発明のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂は、式(2)で表されるアシルオキシ基を有することにより、低極性となり低誘電性が良好になる。
【0031】
アシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂に難燃性を付与するためには、芳香族エステル化合物として、下記一般式(3)及び/又は一般式(4)で表されるリン化合物が好ましい。
【化7】
【0032】
式(3)及び式(4)において、Bはベンゼン環又はナフタレン環であり、それらは炭素数1~12の炭化水素基を置換基として有してもよく、置換基にヘテロ元素を有してもよい。R及びRはヘテロ元素を有してもよい炭素数1~12の炭化水素基であり、リン原子と共にR、Rが結合して環状構造を形成していてもよい。nは0又は1である。式中のX及びXは一般式(1)記載と同義同一である。
【0033】
(3)及び式(4)において、Bの構造に置換される炭素数1~12の炭化水素基としては、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基等が挙げられる。
【0034】
例えば、炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n-オクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、n-デシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシル基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基、2-フェニルイソプロピル基等が挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、キシリル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基等が挙げられる。炭素数7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、フェネチル基、2-フェニルイソプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0035】
リン含有基としては、下記式(b-1)又は(b-2)で表されるリン含有基が好ましい。
【化8】
【0036】
式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~11の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1~11の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、又はベンジル基である。特に好ましいR及びRとしては、水素原子、メチル基、フェニル基、又はベンジル基である。
【0037】
式(b-1)又は(b-2)で表されるリン含有基以外のリン含有基として、例えば、下記式(c-1)~(c-10)で表されるリン含有基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【化9】
【0038】
本発明のアシルオキシ基含有エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、180~2,000の範囲が好ましく、より好ましくは190~1,500の範囲、更に好ましくは200~1,000の範囲である。
【0039】
また、難燃性を付与したアシルオキシ基含有エポキシ樹脂のリン含有率は、1.0~6.0質量%が好ましい。リン含有率が1.0質量%未満では難燃性の向上が十分でない傾向がある。リン含有率が6.0質量%を超えると溶剤溶解性が低下する傾向がある。1.5~5.0質量%がより好ましい。
【0040】
一般式(1)で示される芳香族エステル化合物と2.1官能以上のエポキシ樹脂とを反応させる方法としては公知の方法で行うことが可能である。一般式(1)で示される芳香族エステル化合物の活性エステル又は活性水素と、前記エポキシ樹脂のエポキシ基が反応する。反応終点はエポキシ当量の追跡により理論エポキシ当量の99%以上の値になったことで確認する。いずれの方法をとってもよいが、前記エポキシ樹脂と一般式(1)で示される芳香族エステル化合物とを十分に反応させることが必要である。反応速度を考慮して必要に応じて触媒を使用する。
【0041】
一般式(1)で示される芳香族エステル化合物と2.1官能以上のエポキシ樹脂とを反応させることにより、該エポキシ樹脂のエポキシ基と、該芳香族エステル化合物のアシルオキシ基が反応(付加反応)する。該反応時に生成した新たな2級水酸基に対して、解離したアシル基が付加する形で新たなアシルオキシ基が生成することになる。そのため、一般式(1)で示される芳香族エステル化合物と2.1官能以上のエポキシ樹脂とを反応した最終的な反応生成物には、このようにアシルオキシ基が含有されることとなり、アシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂として得ることができる。これらの反応機構の概略を図6に示す。
【0042】
本発明に用いられる原料2.1官能以上のエポキシ樹脂は、平均で官能基(エポキシ基)が2.1個以上あるエポキシ樹脂であり、平均官能基数は2.5~5.0が好ましく、3.0~4.5がより好ましい。この原料2.1官能以上のエポキシ樹脂は、例えば、2.1官能以上の多官能フェノール化合物と、エピハロヒドリンとを、アルカリ金属化合物存在下で反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ基が2.1官能以上であるエポキシ樹脂を使用することにより、反応生成物には必然的に枝分かれ構造が形成されるため、本発明の前述の作用効果の発現に好適であると考えられる。すなわち、エポキシ基が2.1官能以上であることについては、エポキシ基が2.0官能以下ではなく、2.0官能よりも少しでも大きくなるようにすることで、前記した枝分かれ構造の形成と本発明の作用効果の発現とに寄与することを目的とするものである。なお、エポキシ基が2官能である場合には、エポキシ基の反応は直鎖状に行われて、反応生成物は直鎖状となる。
【0043】
エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロルヒドリンやエピブロモヒドリン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩や、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシドや、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩や、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等が挙げられる。その使用量は前記多官能フェノール化合物中の官能基(水酸基)に対して、0.80~1.20倍モル、好ましくは0.85~1.05倍モルが用いられる。これより少ないと残存する加水分解性塩素の量が多くなる場合がある。アルカリ金属化合物としては、水溶液、アルコール溶液又は固体の状態で使用される。
【0044】
エポキシ化反応は、通常、120℃以下の温度で行われる。反応の際、温度が高いと、いわゆる難加水分解性塩素量が多くなり高純度化が困難になる場合がある。好ましくは100℃以下であり、更に好ましくは85℃以下の温度である。
【0045】
原料2.1官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、スチレン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂や、脂肪族環状エポキシ樹脂等のポリグリシジルエーテル化合物や、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等のポリグリシジルアミン化合物や、ダイマー酸型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂等のポリグリシジルエステル化合物や、脂環式エポキシ化合物がある。その他に、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
また、本発明に用いられる原料芳香族エステル化合物は、例えば、2官能フェノール化合物を、有機酸の酸無水物、有機酸のハロゲン化物、又は有機酸との縮合反応でアシル化して得られる。ここで、2官能フェノール化合物は、上記式(1)におけるX及びXの両方が水酸基であるジフェノール化合物をいう。
【0047】
2.1官能以上のエポキシ樹脂と芳香族エステル化合物との使用量は、エポキシ基1当量に対し、エステル基及び/又は水酸基は0.1~0.5当量が好ましく、0.2~0.4がより好ましい。この当量比であると、分子末端にエポキシ基を有した状態での高分子量化を進行させやすくなる。また、芳香族エステル化合物の一部を、2官能フェノール化合物に置き換えることも可能である。これにより当該エポキシ樹脂のエポキシ基と水酸基との反応により、本発明のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂中に敢えて適量の二級水酸基を存在させることで溶剤溶解性、誘電特性や耐湿性、接着性等の微調整ができる。
【0048】
製造方法において、触媒を用いてもよく、その触媒としては、エポキシ基とエステル基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよい。例えば、第3級アミン、環状アミン類、イミダゾール系化合物、有機リン化合物、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。また、これらの触媒は単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
第3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
【0050】
環状アミン類としては、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5(DBN)、N-メチルモルホリン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)等が挙げられる。
【0051】
イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0052】
有機リン化合物としては、例えば、トリ-n-プロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(t-ブチル)ホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、パラメチルホスフィン、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のホスフィン類や、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨージド、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロリド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロミド、トリメチルベンジルホスホニウムクロリド、トリメチルベンジルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムヨージド、トリフェニルエチルホスホニウムクロリド、トリフェニルエチルホスホニウムブロミド、トリフェニルエチルホスホニウムヨージド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩類等が挙げられる。
【0053】
第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0054】
以上に挙げた触媒の中でも、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5、2-エチル-4-メチルイミダゾール、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(t-ブチル)ホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィンが好ましく、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5、2-エチル-4-メチルイミダゾールが特に好ましい。
【0055】
触媒の使用量は、反応固形分中、通常0.001~1質量%であるが、これらの化合物を触媒として使用した場合、得られるアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂中にこれらの触媒が残渣として残留し、プリント配線板の絶縁特性を悪化させたり、組成物のポットライフを短縮させたりする恐れがあるので、アシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂中における触媒由来の窒素の含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。また、アシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂中における触媒由来のリンの含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。
【0056】
本発明の製造方法において、反応用の溶媒を用いてもよく、その溶媒としては、アシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂を溶解するものであればどのようなものでもよい。例えば、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。また、これらの溶媒は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0058】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジオキサン、ジイソブチルケトン、イソホロン、メチルシクロへキサノン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0059】
アミド系溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0060】
グリコールエーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルエチレングリコールモノアルキルエーテル類や、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル類や、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類や、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類や、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類や、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類や、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類や、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類や、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類や、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類や、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等が挙げられる。
【0061】
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、バレロラクトン、ブチロラクトン等が挙げられる。
【0062】
また、その他の溶媒としては、例えば、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0063】
製造方法において、反応時の固形分濃度は35~100質量%が好ましい。また、反応途中で高粘性生成物が生じたときは溶媒を追加添加して反応を続けることもできる。反応終了後、溶媒は必要に応じて、除去することもできるし、更に追加することもできる。
【0064】
反応温度は、使用する触媒が分解しない程度の温度範囲で行う。反応温度が高すぎると触媒が分解して反応が停止したり、生成するアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂が劣化したりする恐れがある。反応温度が低すぎると反応が十分に進まずに目的の分子量にならない恐れがある。そのため反応温度は、50~230℃が好ましく、70~210℃がより好ましく、90~200℃が更に好ましく、100℃~180℃が特に好ましい。また、反応時間は通常1~12時間、好ましくは3~10時間である。アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することができる。また、反応熱の除去が必要な場合は、通常、反応熱による使用溶媒の蒸発・凝縮・還流法、間接冷却法、又はこれらの併用により行われる。
【0065】
本発明のエポキシ樹脂組成物(単に「樹脂組成物」と記載することがある。)は、少なくとも本発明のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物である。また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、後述するエポキシ樹脂や、無機フィラー、カップリング剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種用途に要求される諸物性を十分に満たす硬化物を与えるものである。
【0066】
本発明において硬化剤とは、エポキシ樹脂と架橋反応に寄与する物質を示す。なお、本発明においては、通常「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ樹脂の架橋反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
【0067】
本発明の樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、2.1官能以上のエポキシ樹脂(後述する他のエポキシ樹脂が含まれる場合は、それらのエポキシ樹脂を含む全てのエポキシ樹脂)100質量部に対して、好ましくは硬化剤0.1~150質量部である。より好ましくは2~130質量部である。なお、樹脂組成物において、不揮発分(固形分)の量である。
【0068】
本発明の樹脂組成物において、後述する他のエポキシ樹脂が含まれる場合には、本発明のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂は、全エポキシ樹脂中、好ましくは1~99質量%であり、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。
本発明において、「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味し、固体のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂や後述する他のエポキシ樹脂のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。また、「樹脂成分」とは、本発明のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂と後述する他のエポキシ樹脂との合計を意味する。
【0069】
本発明の樹脂組成物に使用する硬化剤としては、特に制限はなく一般的にエポキシ樹脂硬化剤として知られているものはすべて使用できる。耐熱性を高める観点から好ましいものとして、フェノール樹脂、アミド系化合物、イミダゾール系化合物、及び活性エステル系硬化剤等が挙げられる。これらの硬化性剤は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0070】
フェノール樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o-クレゾールノボラック、m-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ-p-ヒドロキシスチレン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、フルオログリシノール、ピロガロール、t-ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4-ベンゼントリオール、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,4-ジヒドロキシナフタレン、2,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,8-ジヒドロキシナフタレン等や、上記ジヒドロキシナフタレンのアリル化物又はポリアリル化物、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック、アリル化ピロガロール等が挙げられる。
【0071】
アミド系化合物としては、例えば、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0072】
イミダゾール系化合物としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4(5)-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等や、エポキシ樹脂と上記イミダゾール系化合物との付加体等が挙げられる。なお、イミダゾール系化合物は触媒能を有するため、一般的には後述する硬化促進剤にも分類されうるが、本発明においては硬化剤として分類するものとする。
【0073】
活性エステル系硬化剤としては、例えば、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく、中でも、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたフェノールエステル類がより好ましい。上記カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。上記フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、例えば、カテコール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
【0074】
本発明の樹脂組成物に使用することのできるその他の硬化剤として、例えば、アクリル酸エステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、カチオン重合剤、アミン系化合物、酸無水物、第3級アミン、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。これらのその他の硬化剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、本発明のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂を含むことができる。他のエポキシ樹脂を使用することで、不足する物性を補ったり、種々の物性を向上させたりすることができる。エポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであることが好ましく、3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂がより好ましい。例えば、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルアミン化合物、ポリグリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物、その他変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよく、同一系のエポキシ樹脂を2種類以上併用してもよく、また、異なる系のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0076】
ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、スチレン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、β-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等の各種エポキシ樹脂を使用することができる。
【0077】
ポリグリシジルアミン化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0078】
ポリグリシジルエステル化合物としては、例えば、ダイマー酸型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、トリメリット酸型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0079】
脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021(ダイセル化学工業株式会社製)等の脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0080】
その他変性エポキシ樹脂としては、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエンゴム誘導体、カルボキシル基末端ブタジエンニトリルゴム(CTBN)変性エポキシ樹脂、ポリビニルアレーンポリオキシド(例えば、ジビニルベンゼンジオキシド、トリビニルナフタレントリオキシド等)、フェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0081】
本発明の樹脂組成物には、塗膜形成時の取り扱い時に、樹脂組成物の粘度を適度に調整するために溶剤又は反応性希釈剤を配合してもよい。本発明の樹脂組成物において、溶剤又は反応性希釈剤は、樹脂組成物の成形における取り扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。なお、本発明においては「溶剤」という語と前述の「溶媒」という語をその使用形態により区別して使用するが、それぞれ独立して同種のものを用いても異なるものを用いてもよい。
【0082】
本発明の樹脂組成物が含み得る溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等が挙げられる。以上に挙げた溶剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0083】
反応性希釈剤としては、例えば、アリルグリシジルエーテル等の単官能グリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等の二官能グリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類が挙げられる。
【0084】
これらの溶剤又は反応性希釈剤は、不揮発分として90質量%以下、特に20~80質量%の範囲で使用することが好ましく、その適正な種類や使用量は用途によって適宜選択される。例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1-メトキシ-2-プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶媒であることが好ましく、その使用量は不揮発分で40~80質量%が好ましい。また、接着フィルム用途では、例えば、ケトン類、酢酸エステル類、カルビトール類、芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を使用することが好ましく、その使用量は不揮発分で30~60質量%が好ましい。
【0085】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤又は触媒を使用することができる。硬化促進剤又は触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、第3級アミン類、ホスフィン類等のリン化合物、金属化合物、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0086】
硬化促進剤又は触媒の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分(本発明のアシルオキシ含有多官能エポキシ樹脂を含む全てのエポキシ樹脂)100質量部に対して、0.01~15質量部が必要に応じて使用される。好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~8質量部、更に好ましいは0.1~5質量部、特に好ましくは0.1~1.0質量部である。硬化促進剤又は触媒を使用することにより、硬化温度を下げることや、硬化時間を短縮することができる。
【0087】
本発明の樹脂組成物には、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、信頼性を低下させない範囲で、公知の各種難燃剤を使用することができる。使用できる難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。環境に対する観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が好ましく、特にリン系難燃剤が好ましい。これらの難燃剤は単独で使用してもよく、同一系の難燃剤を2種類以上併用してもよく、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて使用してもよい。
【0088】
本発明の樹脂組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、上述した以外の成分を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、充填材、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、紫外線防止剤、酸化防止剤、カップリング剤、可塑剤、フラックス、揺変性付与剤、平滑剤、着色剤、顔料、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、離型剤、消泡剤、イオントラップ剤等が挙げられる。
【0089】
充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、硫酸バリウム、炭素等の無機充填剤や、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、セラミック繊維等の繊維状充填剤や、微粒子ゴム等が挙げられる。
【0090】
本発明の樹脂組成物には、熱可塑性樹脂を併用してもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、リン含有フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等が挙げられる。相溶性の面からはリン含有フェノキシ樹脂が好ましく、低誘電特性面からはポリフェニレンエーテル樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。
【0091】
その他の成分としては、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料や、酸化チタン、金属箔状顔料、防錆顔料等の無機顔料や、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤や、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、ハジキ防止剤、消泡剤等の添加剤等が挙げられる。これらのその他の成分の配合量は、樹脂組成物中の全固形分に対して、0.01~20質量%の範囲が好ましい。
【0092】
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。アシルオキシ含有多官能エポキシ樹脂、硬化剤、更に必要により各種成分の配合された樹脂組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。この硬化物は、低吸湿性、誘電特性、耐熱性、密着性等のバランスに優れ、良好な硬化物性を示すものである。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等により樹脂組成物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。進行の程度は完全硬化であっても、半硬化の状態であってもよく、特に制限されないが、エポキシ基と硬化剤の硬化反応の反応率として通常5~95%である。
【0093】
本発明の樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法で硬化することによって硬化物を得ることができる。硬化物を得るための方法としては、公知のエポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファ一成形、圧縮成形等や樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の形態とし積層して加熱加圧硬化することで積層板とする等の方法が好適に用いられる。その際の硬化温度は通常、80~300℃の範囲であり、硬化時間は通常、硬化時間は10~360分間程度である。この加熱は80~180℃で10~90分の一次加熱と、120~200℃で60~150分の二次加熱との二段処理で行うことが好ましく、また、ガラス転移温度(Tg)が二次加熱の温度を超える配合系においては、更に150~280℃で60~120分の三次加熱を行うことが好ましい。このような二次加熱、三次加熱を行うことで硬化不良を低減することができる。樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の樹脂半硬化物を作製する際には、通常、加熱等により形状が保てる程度に樹脂組成物の硬化反応を進行させる。樹脂組成物が溶媒を含んでいる場合には、通常、加熱、減圧、風乾等の手法で大部分の溶媒を除去するが、樹脂半硬化物中に5質量%以下の溶媒を残量させてもよい。
【0094】
本発明の樹脂組成物を用いて得られるプリプレグについて説明する。本発明のプリプレグは、前記樹脂組成物又はその半硬化物と繊維質基材とからなる。繊維質基材としては、ガラス等の無機繊維や、ポリエステル等、ポリアミン、ポリアクリル、ポリイミド、ケブラー(登録商標)、セルロース等の有機質繊維の織布又は不織布を使用することができるが、これに限定されるものではない。本発明の樹脂組成物及び繊維質基材からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、上記の基材を、上記の樹脂組成物を溶剤で粘度調整した樹脂ワニスに浸漬して含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば、100~200℃で1~40分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30~80質量%とすることが好ましい。
【0095】
本発明の樹脂組成物を用いて得られる樹脂シートについて説明する。本発明の樹脂シートは、前記樹脂組成物又はその半硬化物と支持フィルムとからなる。支持フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔等を使用することができるが、これに限定されるものではない。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。本発明の樹脂組成物及び支持フィルムから樹脂シートを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、上記の支持フィルムに、上記の樹脂組成物を芳香族系、ケトン系等の溶剤で粘度調整した樹脂ワニスに塗布した後乾燥する方法等が挙げられる。加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば、100~200℃で1~40分間加熱乾燥することができる。ここで、樹脂シート中の樹脂量は、樹脂分30~80質量%とすることが好ましい。また、樹脂成分の厚みは特に限定されないが、3~200μm、より好ましくは5~105μmの範囲である。塗布は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0096】
本発明のプリプレグや樹脂シートを用いて積層板を製造する方法を説明する。プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、例えば、プリプレグを一枚又は複数枚積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を使用することができる。積層物を加熱加圧する条件としては、樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよい。加圧の圧量があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する恐れがある。そのため、成型性を満足する条件で加圧することが望ましい。例えば、温度を160~220℃、圧力を49~490N/cm(5~50kgf/cm)、加熱時間を10~240分間にそれぞれ設定することができる。プリプレグの代わりに樹脂シートを用いることもできる。
【0097】
更にこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作成することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の片面又は両側の回路形成面に、プリプレグや樹脂シートにて絶縁層を形成するとともに、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板を形成するものである。
【0098】
樹脂シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の回路形成面に樹脂シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に樹脂シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、樹脂シートの硬化物を絶縁層として形成するとともに、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔を樹脂シートの硬化物を絶縁層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを使用することができる。
また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。積層板に樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合は、内層材の最外層の回路形成面樹脂を上記の樹脂組成物を好ましくは5~100μmの厚みに塗布した後、100~200℃で1~90分加熱乾燥してシート状に形成する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5~80μmに形成することが望ましい。このようにして形成された多層積層板の表面に、更にアディティブ法やサブストラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を形成することができる。
また更にこのプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層の積層板を形成することができるものである。
【0099】
またプリプレグにて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚又は複数枚を積層したものを配置し、更にその外側に金属箔を配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成するとともに、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。
ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを使用することもできる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。このようにして成形された多層積層板の表面に、更にアディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を成型することができる。
また更にこのプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層の多層板を形成することができる。
【0100】
また、本発明の樹脂シートをボンディングシートとして使用する場合は、例えば、二つの基材を樹脂シートで接着できる。二つの基材の各々は、例えば、積層板又はプリント配線板である。具体的には、例えば、支持フィルム上にエポキシ樹脂組成物を塗布法等によりシート状に成形してから加熱することで、乾燥又は半硬化させることで樹脂シートを作製する。この樹脂シートを、基材(第一基材)に重ね、樹脂シートから支持フィルムを剥がし、別の基材(第二基材)を重ねる。即ち、第一基材、樹脂シート(エポキシ樹脂組成物)、及び第二基材の順に積層する。続いて、加熱し硬化させることにより、第一基材と第二基材とがエポキシ樹脂組成物の硬化物を介して接着される。
【0101】
本発明の樹脂組成物から得られる硬化物や電気・電子回路用積層板は、優れた低誘電性を有する。
【実施例0102】
以下、実施例及び比較例を挙げて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。また、分析方法、測定方法を以下に示す。また、各種当量の単位は全て「g/eq.」である。
【0103】
(1)エポキシ当量:
JIS K7236に準拠拠して測定を行った。具体的には、電位差滴定装置を用い、溶媒としてクロロホルムを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を用いた。
【0104】
(2)数平均分子量(Mn):
GPC測定により求めた。具体的には、本体HLC8320GPC(東ソー株式会社製)にカラム(TSKgel SuperH-H、SuperH2000、SuperHM-H、SuperHM-H、以上東ソー株式会社製)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用し、1.0mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料は固形分で0.1gを10mLのTHFに溶解し、0.45μmのマイクロフィルターでろ過したものを50μL使用した。検量線は、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PStQuick A、PStQuick B、PStQuick C)を使用し作成した。なお、データ処理は東ソー株式会社製GPC8020モデルIIバージョン6.00を使用した。平均官能基数は、数平均分子量(Mn)をエポキシ当量で割ることにより求めた。
【0105】
(3)IR(赤外吸光スペクトル):
フーリエ変換型赤外分光光度計(Perkin Elmer Precisely製、Spectrum One FT-IR Spectrometer 1760X)を用い、セルには塩化ナトリウムを使用し、クロロホルムに溶解させたサンプルをセル上に塗布、乾燥させた後、波数500~4000cm-1の透過率を測定した。
【0106】
(4)リン含有率:
試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子をオルトリン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予めリン酸二水素カリウムを用いて作成した検量線により、求めたリン原子含有量を重量%で表した。積層板のリン含有率は、積層板の樹脂成分に対する含有量として表した。
【0107】
(5)ガラス転移温度(Tg):
JIS C6481規格に準拠して測定した。具体的には、粘弾性測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製 EXSTAR7000DMA/7100)により、5℃/分の昇温速度で測定を行った時の1Hzのtanδのピークトップ温度で表した。
【0108】
(6)銅箔剥離強さ及び層間接着力:
JIS C6481規格に準じて測定し、層間接着力は7層目と8層目の間で引き剥がし測定した。
【0109】
(7)比誘電率及び誘電正接:
IPC-TM-650 2.5.5.9に準拠して測定した。具体的には、マテリアルアナライザー(AGILENT Technologies社製)を用い、容量法により周波数1GHzにおける比誘電率及び誘電正接を求めた。
【0110】
実施例、比較例の使用する略号を以下の通りである。
【0111】
[エポキシ樹脂]
A1:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、製品名:YDPN-6300、エポキシ当量174、Mn531、平均官能基数3.0)
A2:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、製品名:YDCN-700-2、エポキシ当量200、Mn663、平均官能基数3.3)
A3:ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、製品名:YH-404、エポキシ当量112、Mn443、平均官能基数4.0)
A4:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、製品名:YDF-170、エポキシ当量168、Mn285、平均官能基数1.7)
【0112】
[フェノール化合物]
B1:10-(2,7-ジヒドロキシナフチル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(三光株式会社製、HCA=NQ、リン含有率8.2%、水酸基当量187)
【化10】
B2:10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(三光株式会社製、HCA-HQ、リン含有率9.5%、水酸基当量162)
【化11】
【0113】
[リン化合物]
C1:9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド (三光株式会社製、HCA、リン含有率14.2重量%)
【化12】
【0114】
[芳香族エステル化合物]
D1:10-(2,7-ジアセトキシナフチル)-9,10-ジヒドロ9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(合成例1で得られた化合物、リン含有率6.7%、活性当量229)ここで、活性当量とは、活性エステル基の当量をいう。
【化13】
D2:10-(2,5-ジアセトキシフェニル)-9,10-ジヒドロ9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(合成例2で得られた化合物、リン含有率7.5%、活性当量204)ここで、活性当量とは、活性エステル基の当量をいう。
【化14】
【0115】
[触媒]
E1:ピリジン(富士フィルム和光純薬株式会社製)
E2:4-ジメチルアミノピリジン(富士フィルム和光純薬株式会社製)
E3:トリフェニルホスフィン:(北興化学工業株式会社製、製品名;ホクコーTPP)
E4:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、製品名:キュアゾール2E4MZ)
【0116】
[硬化剤]
F1:ジシアンジアミド(日本カーバイド工業株式会社製、製品名:DIHARD、活性水素当量21)
[酸無水物]
G1:無水酢酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)
【0117】
合成例1
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、室温下で、フェノール化合物(B1)を100部、酸無水物(G1)を218部仕込み、窒素ガスを流し撹拌しながら70℃まで昇温し、触媒(E1)を0.85部添加した後、5時間反応を行った。その後、180℃、1.3kPa(10torr)の条件で3時間減圧乾燥を行い、芳香族エステル化合物(D1)を116部得た。図4にGPCチャートを示し、図5にIRチャートを示す。
【0118】
図4において、現われている1つのピークは芳香族エステル化合物(D1)に対応する成分である。
【0119】
合成例2
フェノール化合物(B2)を100部、酸無水物(G1)を252部、触媒(E1)を0.98部で配合し、合成例1と同様の操作を行い、芳香族エステル化合物(D2)を120部得た。
【0120】
実施例1
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、室温下で、エポキシ樹脂(A1)を100部、芳香族エステル化合物(D1)を36部仕込み、窒素ガスを流し撹拌しながら160℃まで昇温し、触媒(E2)を0.02部添加した後、5時間反応を行い、アシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂(R1)を124部得た。得られたアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂(R1)のエポキシ当量、リン含有率を測定した。その結果を表1に示す。また、図1にGPCチャートを示し、図2にIRチャートを示す。
【0121】
実施例2~7、比較例1~13
表1、表2に示す各原料の仕込み量(部)に従い、実施例1と同様操作を行い、実施例2~7に係るアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂(R2~R7)、比較例1~13に係る反応生成物(HR1~HR13)を得た。得られたアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂(R2~R7)及び反応生成物(HR1~HR13)のエポキシ当量、リン含有率を測定した。その結果を表1、表2に示す。また、図3に実施例6で得られたアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂(R6)のGPCチャートを示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
実施例8
実施例1で得られたエポキシ樹脂(R1)を100部、硬化剤(F1)を3.2部配合し、MEK、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドで調整した混合溶媒に溶解して樹脂組成物ワニスを得た。
【0125】
得られた樹脂組成物ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製、WEA 7628 XS13、0.18mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環オーブン中で5分間乾燥してプリプレグを得た。
【0126】
得られたプリプレグ8枚と、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC-III、厚み35μm)を重ね、130℃×15分+170℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、積層板を得た。積層板のガラス転移温度、銅箔剥離強さ、及び層間接着力を測定した結果を表3に示す。
【0127】
また、得られたプリプレグをほぐし、篩で100メッシュパスの粉状のプリプレグパウダーとした。得られたプリプレグパウダーをフッ素樹脂製の型に入れて、130℃×15分+170℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、試験片を得た。試験片の比誘電率と誘電正接の評価結果を表3に示す。
【0128】
実施例9~14、比較例14~26
表3、表4の配合量(部)で配合し、実施例8と同様の操作を行い、樹脂組成物ワニス、プリプレグ、積層板、試験片を得た。実施例8と同様の試験を行い、その結果を表3、表4に示す。
【0129】
【表3】
【0130】
【表4】
【0131】
表3及び表4からわかるように、本発明のアシルオキシ基含有多官能エポキシ樹脂からなる硬化物は耐熱性を維持しつつ、低比誘電率と低誘電正接に優れる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6