IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.の特許一覧

特開2024-79710マルチビームSEMツール用の自己参照型健全度監視システム
<>
  • 特開-マルチビームSEMツール用の自己参照型健全度監視システム 図1
  • 特開-マルチビームSEMツール用の自己参照型健全度監視システム 図2
  • 特開-マルチビームSEMツール用の自己参照型健全度監視システム 図3
  • 特開-マルチビームSEMツール用の自己参照型健全度監視システム 図4
  • 特開-マルチビームSEMツール用の自己参照型健全度監視システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079710
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】マルチビームSEMツール用の自己参照型健全度監視システム
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20240604BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20240604BHJP
   H01J 37/24 20060101ALI20240604BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/09 A
H01J37/24
H01J37/28 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024038352
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2022508482の分割
【原出願日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】62/893,139
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】プ,リンリン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】画像改善のためのシステム及び方法が開示される。
【解決手段】画像を改善するための方法には、撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録(502)、(506)を受け取ることを含むことができ、記録のそれぞれは、あるビームに関連付けられている。この方法はまた、ビームの異常が発生しているかどうかを、記録の一部分(502)を使用して決定されるベースライン値(504)に基づいて決定することも含むことができる。この方法は更に、異常が発生しているという決定に応答して、異常の指摘を提供することを含むことができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビームシステムの性能を監視するための方法であって、
撮像プロセス中に動作する前記マルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることであって、各記録はあるビームに関連付けられていることと、
ビームの異常が発生しているかどうかを、前記記録の一部分を使用して決定されるベースライン値に基づいて決定することと、
前記異常が発生しているという前記決定に応答して、異常の指摘を提供することと、を含む、方法。
【請求項2】
マルチビームシステムの性能を監視するためのシステムであって、
コントローラであって、一組の命令を実行して、前記システムに
撮像プロセスにおいて前記マルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取らせ、各記録はあるビームに関連付けられており、
ビームの異常が発生しているかどうかを、前記記録の一部分を使用して決定されるベースライン値に基づいて決定させ、
前記異常が発生しているという前記決定に応答して、異常の指摘を提供させる
ための回路を有する、コントローラを含む、システム。
【請求項3】
前記ビームの前記異常が発生しているかどうかを前記システムに決定させるための前記一組の命令は、更に、前記システムに、
前記撮像プロセスの複数の時点で受け取られた前記ビームの記録の少なくとも1つの値を使用して、前記ビームのテスト値を決定させ、
前記ビームの前記テスト値と前記ベースライン値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定させ、
前記差が前記所定の範囲内にはないとの前記決定に基づいて、前記異常が発生していると決定させる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ベースライン値又は前記記録のうちの少なくとも1つを格納するように構成されたデータベースを更に含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記一組の命令は更に、前記システムに、
前記差が前記所定の範囲内にあるかどうかを決定する前に、前記データベースから前記記録又は前記ベースライン値のうちの少なくとも1つを読み出させる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記一組の命令は更に、前記システムに、
所定のイベントの後で前記ベースライン値を決定させる、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記所定のイベントの後で前記システムに前記ベースライン値を決定させるための前記一組の命令は、更に、前記システムに、
前記所定のイベントの後で受け取られた前記性能測定基準の初期記録に基づいて、前記ベースライン値を決定させる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記所定のイベントは、前記マルチビームシステムの維持保守又は前記マルチビームシステムの較正のうちの1つの完了を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記所定のイベントは、前記記録の各値がシフト値だけ変化することを含み、前記シフト値は所定の範囲を超えて前記記録の前記値の平均値から外れることはない、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記一組の命令は更に、前記システムに、
前記記録の前記一部分の値の統計値として、前記ベースライン値を決定させる、請求項2に記載のシステム。
【請求項11】
前記ビームの前記テスト値は、前記ビームの前記記録の前記少なくとも1つの値の統計値を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項12】
前記統計値は、平均値、中央値、分散値、標準偏差値、又は二乗平均平方根値のうちの1つを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記ビームの前記テスト値は、前記複数の時点のうちの1つで受け取られた前記ビームの前記記録の値を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項14】
前記ビームの前記異常が発生しているかどうかを前記システムに決定させるための前記一組の命令は、更に、前記システムに、
複数の時点で受け取られた前記記録の値に対して実施される回帰から、第1の回帰パラメータを決定させ、及び前記複数の時点で受け取られた前記記録の前記一部分のそれぞれの値に対して実施される回帰から、第2の回帰パラメータを決定させ、前記第2の回帰パラメータのそれぞれは、前記記録の前記一部分の1つに対応し、
前記第2の回帰パラメータを使用して前記ベースライン値を決定させ、
前記第1の回帰パラメータと前記ベースライン値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定させ、
前記差が前記所定の範囲内にはないとの決定に基づいて、前記異常が発生していると決定させる、
請求項2に記載のシステム。
【請求項15】
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、マルチビームシステムの性能を監視するための方法を装置に実施させるように前記装置の少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な、一組の命令を記憶し、前記方法は、
撮像プロセスにおいて前記マルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることであって、各記録はあるビームに関連付けられていることと、
ビームの異常が発生しているかどうかを、前記記録の一部分を使用して決定されるベースライン値に基づいて決定することと、
前記異常が発生しているという前記決定に応答して、異常の指摘を提供することと、
を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2019年8月28日に出願された米国特許出願第62/893,139号の優先権を主張するものであり、該出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本明細書の記載は、荷電粒子ビームシステムの分野に関し、より具体的には、マルチビーム走査型電子顕微鏡(SEM)システムのための健全度監視に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 集積回路(IC)の製造プロセスでは、未完成の又は完成した回路部品を検査して、それらが設計通りに製造され、欠陥がないことを保証する。走査型電子顕微鏡(SEM)などの荷電粒子(例えば、電子)ビーム顕微鏡又は光学顕微鏡を利用した検査システムが用いられることがある。SEMは、低エネルギー電子(例えば、1keV未満)を表面に送達し、検出器を使用して、表面を離れる二次電子又は後方散乱電子を記録する。表面上の異なる励起位置についてそのような電子を記録することにより、ナノメートル程度の空間分解能で画像を生成することができる。
【0004】
[0004] SEMは、シングルビームシステム又はマルチビームシステムであり得る。シングルビームSEMは単一の電子ビームを使用して表面を走査し、一方、マルチビームSEMは複数の電子ビームを使用して表面を同時に走査する。マルチビームシステムは、シングルビームシステムと比較すると、より高い撮像スループットを達成することができる。しかしながら、マルチビームシステムは構造がより複雑であり、そのため、シングルビームシステムと比較すると幾分か構造的柔軟性に欠ける。また、より複雑であることに起因して、マルチビームSEMは、シングルビームSEMと比較すると、動作エラー及び障害が起きやすい。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 本開示の実施形態は、画像改善のためのシステム及び方法を提供する。実施形態によっては、マルチビームシステムの性能を監視するための方法は、撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることを含むことができ、記録のそれぞれは、あるビームに関連付けられている。この方法はまた、ビームの異常が発生しているかどうかを、記録の一部分を使用して決定されるベースライン値に基づいて決定することを含むことができる。この方法は更に、異常が発生しているという決定に応答して、異常の指摘を提供することを含むことができる。
【0006】
[0006] 実施形態によっては、マルチビームシステムの性能を監視するためのシステムが開示される。このシステムは、一組の命令を実行するための回路を有するコントローラを含むことができる。コントローラは、一組の命令を実行して、撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録をシステムに受け取らせることができ、それらの記録のそれぞれは、あるビームに関連付けられている。コントローラはまた、一組の命令を実行して、ビームの異常が発生しているかどうかを、記録の一部分を使用して決定されるベースライン値に基づいて、システムに決定させることができる。コントローラはまた、異常が発生しているという決定に応答して、一組の命令を実行して、システムに異常の指摘を提供させることができる。
【0007】
[0007] 実施形態によっては、非一時的なコンピュータ可読媒体が開示される。非一時的なコンピュータ可読媒体は、マルチビームシステムの性能を監視するための方法を装置に実施させるように、装置の少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な、一組の命令を記憶し得る。この方法は、撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることを含むことができ、それらの記録のそれぞれは、あるビームに関連付けられている。この方法はまた、ビームの異常が発生しているかどうかを、記録の一部分を使用して決定されるベースライン値に基づいて決定することを含むことができる。この方法は更に、異常が発生しているという決定に応答して、異常の指摘を提供することを含むことができる。
【0008】
[0008] 実施形態によっては、マルチビームシステムの健全度を監視する方法は、撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることを含むことができる。この方法はまた、記録を比較して、複数のビームのうちのあるビームが異常を示しているかどうかを決定することを含むことができる。この方法は更に、ビームが異常を示す場合に通知をトリガーすることを含むことができる。
【0009】
[0009] 実施形態によっては、マルチビームシステムの健全度を監視するための装置が開示される。この装置は、一組の命令を実行するための回路を有するコントローラを含むことができる。コントローラは、一組の命令を実行して、撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録をシステムに受け取らせることができる。コントローラはまた、一組の命令を実行して、システムに記録を比較させて、複数のビームのうちのあるビームが異常を示しているかどうかを決定させることができる。コントローラは更に、一組の命令を実行して、ビームが異常を示している場合にシステムに通知をトリガーさせることができる。
【0010】
[0010] 実施形態によっては、非一時的なコンピュータ可読媒体が開示される。非一時的なコンピュータ可読媒体は、マルチビームシステムの健全度を監視する方法を装置に実施させるように、装置の少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な、一組の命令を記憶し得る。この方法は、撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることを含むことができる。この方法はまた、記録を比較して、複数のビームのうちのあるビームが異常を示しているかどうかを決定することを含むことができる。この方法は更に、ビームが異常を示す場合に通知をトリガーすることを含むことができる。
【0011】
[0011] 実施形態によっては、マルチビームシステムの健全度を監視する方法は、マルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることを含むことができ、複数のビームは、第1のビーム及び他のビームを含む。この方法はまた、記録から導出されたデータを比較して、第1のビームが他のビームと比較して異常な性能を示しているかどうかを決定することを含むことができる。この方法は更に、比較に基づいて、第1のビームが異常な性能を示していると決定された場合に、通知をトリガーすることを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】[0012]本開示の実施形態と一致した、例示的な電子ビーム検査(EBI)システムを示す概略図である。
図2】[0013]本開示の実施形態と一致した、図1の例示的な荷電粒子ビーム検査システムの一部分である例示的なマルチビームシステムを示す概略図である。
図3】[0014]本開示の実施形態と一致する、マルチビームシステムの性能を監視するための例示的な方法を示すフローチャートである。
図4】[0015]本開示の実施形態と一致する、マルチビームシステムの性能を監視するための別の例示的な方法を示すフローチャートである。
図5】[0016]本開示の実施形態と一致する、マルチビームシステムのビームの性能測定基準の時間依存値の解説図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0017] ここで、例示的な実施形態を詳細に参照する。これらの実施形態の例が、添付の図面に示されている。以下の説明は添付の図面を参照し、異なる図面中の同じ番号は、特に断りの無い限り、同じ又は同様の要素を表す。例示的な実施形態の以下の説明文中に記載される実施態様は、本開示と一致する全ての実施態様を表すものではない。その代わり、それらは、添付の特許請求の範囲に列挙される主題に関連する態様と一致する装置及び方法の単なる例にすぎない。例えば、幾つかの実施形態は、電子ビームを利用するという文脈で説明されているが、本開示はそのように限定はされない。他のタイプの荷電粒子ビームも、同様に適用することができる。更に、光学撮像、光検出、x線検出などの他の撮像システムが使用されることができる。
【0014】
[0018] 電子デバイスは、基板と呼ばれるシリコン片上に形成された回路から構成される。多数の回路が、同じシリコン片上に一緒に形成されることができ、集積回路又はICと呼ばれる。多数のより多くの回路を基板上に収めることができるように、これらの回路の寸法は劇的に低減された。例えば、スマートフォン内のICチップは、親指の爪ほど小さいことがあり得るが、20億個を超えるトランジスタを含むことができ、各トランジスタの寸法は、人間の髪の毛の寸法の1/1000よりも小さい。
【0015】
[0019] これらの極端に小さなICを製造することは、複雑で時間がかかり高価なプロセスであり、しばしば数百にのぼる個別ステップを含む。たった1つのステップでのエラーが、完成したICにおける欠陥をもたらし、そのICを使い物にならなくする可能性がある。従って、製造プロセスの目標の1つは、そのような欠陥を回避して、プロセスにおいて作製される機能的ICの数を最大化すること、即ち、プロセスの全体的歩留まりを向上させることである。
【0016】
[0020] 歩留まりを向上させる1つの構成要素は、チップ作製プロセスを監視して、十分な数の機能的集積回路が製造されていることを確認することである。プロセスを監視する1つの方法は、チップ回路構造物を形成する様々な段階において、チップ回路構造物を検査することである。検査は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して実行することができる。SEMを使用すると、これらの非常に小さな構造物を撮像する、要するに、ウェーハのこれらの構造物の「写真」を撮ることができる。この画像を使用して、構造物が適切に形成されたかどうか、及び構造物が適切な位置に形成されたかどうかを決定することができる。構造物に欠陥がある場合、欠陥が再発する可能性が低くなるようにプロセスを調節することができる。
【0017】
[0021] SEMの動作原理はカメラと似ている。カメラは、人又は物体から反射又は放射される光の明るさ及び色を受け取って記録することにより、写真を撮る。SEMは、構造物から反射又は放射される電子のエネルギー又は量を受け取って記録することにより、「写真」を撮る。そのような「写真」を撮る前に、電子ビームが構造物の上に提供されることがあり、その構造物から電子が反射又は放射される(出てゆく)ときに、SEMの検出器が、それらの電子のエネルギー又は量を受け取って記録し、画像を生成することができる。そのような「写真」を撮るために、一部のSEMは単一電子ビームを使用し(「シングルビームSEM」と呼ばれる)、一方、一部のSEMは、複数の電子ビームを使用して(「マルチビームSEM」と呼ばれる)、ウェーハの複数の「写真」を撮る。複数の電子ビームを使用することにより、SEMは、これらの複数の「写真」を取得するために、構造物上により多くの電子ビームを提供することができ、その結果、より多くの電子が構造物から出ることになる。したがって、検出器はより多くの出てゆく電子を同時に受け取り、より高い効率及びより速い速度で、ウェーハの構造物の画像を生成することができる。
【0018】
[0022] しかしながら、シングルビームSEMと比べると、マルチビームSEMはより多くの部品を含み、設計がより複雑であり、1つ又は複数の電子検出器上により不明瞭な信号をもたらす。マルチビームSEMの健全度を監視することは重要である、というのも、動作中、たった1本のビームが異常な振る舞いをした場合であっても、マルチビームSEMの全体的な性能に大きな影響が出ることができるからである。更に、性能上の問題が発生した場合、マルチビームSEMは、より複雑な設計のせいで、技術者が診断するのに、より多くの時間、費用、及び労力がかかる。やはり、それほど明瞭ではない信号に起因して、マルチビームSEMの健全度監視は、シングルビームSEMの健全度監視よりも困難である。
【0019】
[0023] 本開示は、とりわけ、マルチビームSEM健全度監視のための方法及びシステムについて記載する。実施形態によっては、健全度を監視するために、マルチビームSEMの性能データの判断基準として、「ベースライン」条件が使用されることができる。マルチビームSEMの動作パラメータ又は性能データの統計値を収集し、ベースライン条件と比較し得る。比較に基づいて、動作パラメータ又は統計の異常が見られる場合、マルチビームSEMの性能の異常が報告されることがあり、更なる処置が行われることができる。一例では、マルチビームSEMは、自己参照方式を使用してもよく、この方式は、マルチビームSEMの履歴性能データを利用して履歴ベースのベースライン条件を決定するか、又は、各ビームの個別の性能データを利用して、グループ性能ベースのベースライン条件を決定し得る。履歴ベースのベースライン条件又はグループ性能ベースのベースライン条件は、マルチビームSEMの健全度を監視するための参考として使用される。基本的に、履歴ベースのベースライン条件を使用することにより、マルチビームSEMのあるビームの現在の性能は、マルチビームシステムが動作中のより早い時間に測定された同じビームの以前の(「履歴」)性能と比較され、現在の性能が履歴性能を外れている場合には、異常が識別される。グループ性能ベースのベースラインを使用することにより、マルチビームSEMのあるビームの現在の性能は、マルチビームシステムの動作中に測定された他のビームの現在の性能と比較され、そのビームの現在の性能が他のビームの現在の性能を外れている場合には、異常が識別される。
【0020】
[0024] 自己参照方式を使用することにより、マルチビームSEMの健全度を、外部入力を参照することなく継続的に監視することができ、動作条件の変化に自己適応し、より高い精度で異常を自動的に識別することができる。見てわかるように、ベースライン条件の精度及び有効性は、マルチビームSEMの健全度監視において重要である。外部入力がそのようなベースライン条件を提供することに依存している場合、健全度監視は、マルチビームSEMの動作条件が変化する際に外部入力を更新する必要があってもよく、これにより、健全度の継続的な監視、動作条件の変化への自己適応、及び高い精度での異常の自動識別が困難になるであろう。
【0021】
[0025] 図面における構成要素の相対的な寸法は、理解しやすいように誇張されていることができる。以下の図面の説明では、同じ又は同様の参照番号は、同じ又は同様の構成要素又はエンティティを指しており、個々の実施形態に関して異なる点のみが説明されている。
【0022】
[0026] 本明細書で使用する場合、特段の断りが無い限り、「又は」という用語は、実行不可能である場合を除いて、全ての可能な組み合わせを包含する。例えば、構成要素がA又はBを含むことができると記載されている場合、特段の断りが無い限り又は実行不可能で無い限り、構成要素はA、又はB、又はA及びBを含むことができる。第2の例として、構成要素がA、B、又はCを含むことができると記載されている場合、特段の断りが無い限り又は実行不可能で無い限り、構成要素はA、又はB、又はC、又はA及びB、又はA及びC、又はB及びC、又はA及びB及びCを含むことができる。
【0023】
[0027] 図1は、本開示の実施形態と一致した、例示的な電子ビーム検査(EBI)システム100を示す。EBIシステム100は、撮像のために使用されることができる。図1に示すように、EBIシステム100は、メインチャンバ101、装填/ロックチャンバ102、電子ビームツール104、及び機器フロントエンドモジュール(EFEM)106を含む。電子ビームツール104は、メインチャンバ101内部に配置されている。EFEM106は、第1の装填ポート106a及び第2の装填ポート106bを含む。EFEM106は、追加の装填ポートを含むことができる。第1の装填ポート106a及び第2の装填ポート106bは、検査対象のウェーハ(例えば、半導体ウェーハ、又は他の材料で作られたウェーハ)又はサンプル(ウェーハ及びサンプルは、互換的に使用されることができる)を収容するウェーハFOUP(front opening unified pod)を受け取る。「ロット」とは、バッチとして処理するために装填されることができる複数のウェーハである。
【0024】
[0028] EFEM106内の1つ又は複数のロボットアーム(図示せず)が、ウェーハを装填/ロックチャンバ102に運ぶことができる。装填/ロックチャンバ102は、装填/ロック真空ポンプシステム(図示せず)に接続され、このポンプシステムは、大気圧よりも低い第1の圧力に達するように、装填/ロックチャンバ102内のガス分子を除去する。第1の圧力に達した後、1つ又は複数のロボットアーム(図示せず)がウェーハを装填/ロックチャンバ102からメインチャンバ101に運ぶことができる。メインチャンバ101は、メインチャンバ真空ポンプシステム(図示せず)に接続され、このポンプシステムは、第1の圧力よりも低い第2の圧力に達するように、メインチャンバ101内のガス分子を除去する。第2の圧力に達した後、ウェーハは電子ビームツール104による検査にかけられる。電子ビームツール104は、シングルビームシステム又はマルチビームシステムであり得る。
【0025】
[0029] コントローラ109は、電子ビームツール104に電子的に接続されている。コントローラ109は、EBIシステム100の様々な制御を行うように構成されたコンピュータであり得る。図1では、コントローラ109は、メインチャンバ101、装填/ロックチャンバ102、及びEFEM106を含む構造の外部にあるものとして示されているが、コントローラ109はこの構造の一部とすることもできることが理解されよう。
【0026】
[0030] 実施形態によっては、コントローラ109は1つ又は複数のプロセッサ(図示せず)を含むことができる。プロセッサは、情報を操作又は処理することができる汎用的な又は特定の電子デバイスであり得る。例えば、プロセッサは、任意の数の、中央処理装置(即ち「CPU」)、グラフィックス処理装置(即ち「GPU」)、光プロセッサ、プログラマブル論理制御装置、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、デジタル・シグナル・プロセッサ、IP(intellectual property)コア、プログラマブル・ロジック・アレイ(PLA)、プログラマブル・アレイ・ロジック(PAL)、汎用アレイロジック(GAL)、コンプレックス・プログラマブル・ロジック・デバイス(CPLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、システム・オン・チップ(SoC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びデータ処理可能な任意の種類の回路、の任意の組み合わせを含むことができる。プロセッサはまた、ネットワークを介して結合された複数の機械又はデバイスにまたがって分散した1つ又は複数のプロセッサを含む、仮想プロセッサであり得る。
【0027】
[0031] 実施形態によっては、コントローラ109は更に、1つ又は複数のメモリ(図示せず)を含むことができる。メモリは、(例えば、バスを介して)プロセッサがアクセス可能なコード及びデータを記憶することができる、汎用の又は特定の電子デバイスであり得る。例えば、メモリは、任意の数のランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、光ディスク、磁気ディスク、ハードドライブ、ソリッド・ステート・ドライブ、フラッシュドライブ、セキュリティ・デジタル(SD)カード、メモリスティック、コンパクト・フラッシュ(CF)カード、又は任意の種類の記憶デバイス、の任意の組み合わせを含むことができる。コードには、オペレーティングシステム(OS)、及び特定のタスク用の1つ又は複数のアプリケーション・プログラム(即ち「apps」)が含まれることができる。メモリはまた、ネットワークを介して結合された複数の機械又はデバイスにまたがって分散した1つ又は複数のメモリを含む、仮想メモリであり得る。
【0028】
[0032] ここで図2を参照すると、図2は、本開示の実施形態と一致した、図1のEBIシステム100の一部であるマルチビーム検査ツールを含む例示的な電子ビームツール104を示す概略図である。マルチビーム電子ビームツール104(本明細書では装置104とも呼ばれる)は、電子源201、ガンアパーチャプレート271、集光レンズ210、放射源変換ユニット220、一次投影系230、電動ステージ209、及び検査対象のサンプル208(例えば、ウェーハ又はフォトマスク)を保持するために電動ステージ209によって支持されるサンプルホルダー207を含む。マルチビーム電子ビームツール104は更に、二次投影系250及び電子検出デバイス240を含むことができる。一次投影系230は、対物レンズ231を含むことができる。電子検出デバイス240は、複数の検出素子241、242、及び243を含むことができる。ビームセパレータ233及び偏向走査ユニット232が、一次投影系230の内部に配置されることができる。
【0029】
[0033] 電子源201、ガンアパーチャプレート271、集光レンズ210、放射源変換ユニット220、ビームセパレータ233、偏向走査ユニット232、及び一次投影系230は、装置104の一次光軸204と位置合わせされていることができる。二次投影系250及び電子検出デバイス240は、装置104の二次光軸251と位置合わせされていることができる。
【0030】
[0034] 電子源201は、カソード(図示せず)及び抽出器又はアノード(図示せず)を含んでいてよく、動作中、電子源201は、カソードから一次電子を放出するように構成され、この一次電子は抽出器及び/又はアノードによって抽出されるか又は加速されて、一次電子ビーム202を形成し、これは、(仮想の又は現実の)一次ビームクロスオーバー203を形成する。一次電子ビーム202は、一次ビームクロスオーバー203から放出されるものとして視覚化されることができる。
【0031】
[0035] 放射源変換ユニット220は、画像形成素子アレイ(図示せず)、収差補償器アレイ(図示せず)、ビーム制限アパーチャアレイ(図示せず)、及び予備曲げマイクロ偏向器アレイ(図示せず)を含むことができる。実施形態によっては、予備曲げマイクロ偏向器アレイは、一次電子ビーム202の複数の一次ビームレット211、212、213を、ビーム制限アパーチャアレイ、画像形成素子アレイ、及び収差補償器アレイに垂直に入射するように偏向させる。実施形態によっては、集光レンズ210は、一次電子ビーム202を集束させて、平行ビームにし、放射源変換ユニット220に垂直に入射させるように、設計される。画像形成素子アレイは、複数のマイクロ偏向器又はマイクロレンズを含んで、一次電子ビーム202の複数の一次ビームレット211、212、213に影響を与え、且つ、一次ビームレット211、212、及び213の夫々に対して1つずつ、一次ビームクロスオーバー203の複数の(仮想の又は現実の)平行画像を形成し得る。実施形態によっては、収差補償器アレイは、フィールド湾曲補償器アレイ(図示せず)及び非点収差補償器アレイ(図示せず)を含むことができる。フィールド湾曲補償器アレイは、複数のマイクロレンズを含んで、一次ビームレット211、212、及び213のフィールド湾曲収差を補償し得る。非点収差補償器アレイは、複数のマイクロ非点収差補正器を含んで、一次ビームレット211、212、及び213の非点収差を補償し得る。ビーム制限アパーチャアレイは、個々の一次ビームレット211、212、及び213の直径を制限するように構成されることができる。図2は、例として3つの一次ビームレット211、212、及び213を示しており、放射源変換ユニット220は、任意の数の一次ビームレットを形成するように構成されてもよいことが理解されよう。コントローラ109は、放射源変換ユニット220、電子検出デバイス240、一次投影系230、又は電動ステージ209などの、図1のEBIシステム100の様々な部分に接続されることができる。実施形態によっては、以下で更に詳細に説明するように、コントローラ109は、様々な画像及び信号の処理機能を実行し得る。コントローラ109は、様々な制御信号を生成して、荷電粒子ビーム検査システムの動作を制御することもある。
【0032】
[0036] 集光レンズ210は、一次電子ビーム202を集束させるように構成される。集光レンズ210は更に、集光レンズ210の集束力を変化させることにより、放射源変換ユニット220の下流の一次ビームレット211、212、及び213の電流を調節するように構成されることができる。或いは、個々の一次ビームレットに対応するビーム制限アパーチャアレイ内部のビーム制限アパーチャの半径のサイズを変えることによって、電流を変化させることができる。電流は、ビーム制限アパーチャの半径のサイズと集光レンズ210の集束力の両方を変えることによって、変化させることができる。集光レンズ210は、第1の原理平面の位置が移動可能であるように構成され得る可動集光レンズであり得る。可動集光レンズは磁気性であるように構成されていてもよく、その結果、オフアクシスのビームレット212及び213が回転角度を有して放射源変換ユニット220を照射することになり得る。回転角度は、集束力、又は可動集光レンズの第1の主平面の位置と共に変化する。集光レンズ210は、集光レンズ210の集束力が変化している間に回転角度を不変に保つように構成されることができる、回転防止集光レンズであり得る。実施形態によっては、集光レンズ210は可動の回転防止集光レンズであり得、このレンズでは、集束力及び第1の主平面の位置が変化した場合に回転角度が変化しない。
【0033】
[0037] 対物レンズ231は、検査のために、ビームレット211、212、及び213をサンプル208上に集束させるように構成されていてもよく、また、現在の実施形態では、サンプル208の表面上に3つのプローブスポット221、222、及び223を形成し得る。ガンアパーチャプレート271は、動作時に、一次電子ビーム202の周辺電子を遮断して、クーロン効果を低減するように構成される。クーロン効果は、一次ビームレット211、212、213のプローブスポット221、222、及び223の各々のサイズを拡大し、従って検査解像度を低下させることができる。
【0034】
[0038] ビームセパレータ233は、例えば、静電双極子場及び磁気双極子場(図2には図示せず)を生成する静電偏向器を含むウィーンフィルタであり得る。動作時には、ビームセパレータ233は、一次ビームレット211、212、及び213の個々の電子に静電双極子場によって静電気力を及ぼすように構成されることができる。静電気力は、個々の電子にビームセパレータ233の磁気双極子場によって及ぼされる磁気力と、大きさは等しいが方向が反対である。従って、一次ビームレット211、212、及び213は、少なくとも実質的にゼロの偏向角で、ビームセパレータ233を少なくとも実質的に真っ直ぐに通過することができる。
【0035】
[0039] 動作時には、偏向走査ユニット232は、一次ビームレット211、212、及び213を偏向させて、サンプル208の表面のセクション内の個々のスキャンエリア全体に渡ってプローブスポット221、222、及び223をスキャンさせるように構成される。サンプル208上での一次ビームレット211、212、及び213、又はプローブスポット221、222、及び223の入射に応答して、サンプル208から電子が出現し、3つの二次電子ビーム261、262、及び263が生成される。二次電子ビーム261、262、及び263の各々は、通常、二次電子(50eV以下の電子エネルギーを有する)及び後方散乱電子(50eVと一次ビームレット211、212、及び213のランディングエネルギーとの間の電子エネルギーを有する)を含む。ビームセパレータ233は、二次電子ビーム261、262、及び263を二次投影系250に向けて偏向させるように構成される。続いて、二次投影系250は、二次電子ビーム261、262、及び263を、電子検出デバイス240の検出素子241、242、及び243に集束させる。検出素子241、242、及び243は、対応する二次電子ビーム261、262、及び263を検出し、例えば、サンプル208の対応するスキャンエリアの画像を構築するために、コントローラ109又は信号処理システム(図示せず)に送信される対応する信号を生成するように構成される。
【0036】
[0040] 実施形態によっては、検出素子241、242、及び243は、対応する二次電子ビーム261、262、及び263をそれぞれ検出し、画像処理システム(例えば、コントローラ109)に向けて対応する強度信号出力(図示せず)を生成する。実施形態によっては、各検出素子241、242、及び243は、1つ又は複数のピクセルを含むことができる。検出素子の強度信号出力は、検出素子内の全てのピクセルによって生成される信号の合計であり得る。
【0037】
[0041] 実施形態によっては、コントローラ109は、画像取得器(図示せず)、ストレージ(図示せず)を含む画像処理システムを含むことができる。画像取得器は、1つ又は複数のプロセッサを含むことができる。例えば、画像取得器は、コンピュータ、サーバ、メインフレームホスト、端末、個人用コンピュータ、任意の種類の携帯コンピュータ装置など、又はそれらの組み合わせを含むことができる。画像取得器は、媒体、中でもとりわけ導電体、光ファイバーケーブル、携帯型記憶媒体、IR、ブルートゥース、インターネット、無線ネットワーク、無線通信、又はそれらの組み合わせなどを介して、装置104の電子検出デバイス240に通信可能に結合されることができる。実施形態によっては、画像取得器は、電子検出デバイス240から信号を受け取ることができ、画像を構築し得る。画像取得器は、このようにサンプル208の画像を取得することができる。画像取得器は、輪郭線を生成すること、インジケータを取得画像に重ね合わせることなど、様々な後処理機能も実施し得る。画像取得器は、取得画像の明るさ及びコントラスト等の調節を実施するように構成されることができる。実施形態によっては、ストレージは、ハードディスク、フラッシュドライブ、クラウドストレージ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、他の種類のコンピュータ可読メモリなどの記憶媒体であり得る。ストレージは、画像取得器に結合されることがあり、スキャンされた生の画像データを元画像として保存し、及び処理後の画像を保存するために使用されることができる。
【0038】
[0042] 実施形態によっては、画像取得器は、電子検出デバイス240から受け取った撮像信号に基づいて、サンプルの1つ又は複数の画像を取得し得る。撮像信号は、荷電粒子撮像を実施するためのスキャン動作に対応していることができる。取得画像は、複数の撮像エリアを含む単一の画像であり得る。この単一の画像は、ストレージ内に記憶されることができる。この単一の画像は、複数の領域に分割されることができる元画像であり得る。これらの領域の各々は、サンプル208のフィーチャを包含する1つの撮像エリアを含むことができる。取得画像は、時系列に複数回サンプリングされた、サンプル208の単一の撮像エリアの複数の画像を含むことができる。この複数の画像は、ストレージ内に記憶されることができる。実施形態によっては、コントローラ109は、サンプル208の同じ場所の複数の画像を用いて画像処理ステップを実行するように構成されることができる。
【0039】
[0043] 実施形態によっては、コントローラ109は、測定回路(例えば、アナログ/デジタル変換器)を含んで、検出された二次電子の分布を取得し得る。検出時間ウィンドウ中に収集された電子の分布データを、ウェーハ表面に入射する一次ビームレット211、212、及び213の各々の対応するスキャンパスデータと組み合わせて使用して、検査中のウェーハ構造の画像を再構築することができる。再構築された画像を使用して、サンプル208の内部構造又は外部構造の様々な特徴を明らかにすることができ、それによって、再構築された画像を使用して、ウェーハ内に存在する可能性がある欠陥を明らかにすることができる。
【0040】
[0044] 実施形態によっては、コントローラ109は、サンプル208の検査中にサンプル208を移動させるように、電動ステージ209を制御し得る。実施形態によっては、コントローラ109は、電動ステージ209がある方向に連続的に一定の速度でサンプル208を移動できるようにし得る。他の実施形態では、コントローラ109は、電動ステージ209が、スキャンプロセスのステップに応じて、時間外にサンプル208の移動速度を変えられるようにし得る。
【0041】
[0045] 図2は装置104が3つの一次電子ビームを使用することを示しているが、装置104は、2つ以上の一次電子ビームを使用してもよいことが、理解されよう。本開示は、装置104で使用される一次電子ビームの数を制限するものではない。
【0042】
[0046] 単一の電子ビームを使用するSEM検査ツール(「シングルビームシステム」と呼ばれる)と比較すると、マルチビームSEM検査ツール(「マルチビームシステム」)は、複数の電子ビームを使用して、サンプル(例えば、図2のサンプル208)を同時に画像化することができる。マルチビーム検査ツールのスループットは、シングルビームシステムよりも高いことができる。しかしながら、複雑さが大きいので、マルチビームシステムは、シングルビームシステムによる構造上の柔軟性を欠くことができる。更に、マルチビームシステムの信号の信号対雑音比(SNR)は、シングルビームシステムの信号よりも低くなることがあり、これにより、健全度の監視が困難になることができる。例えば、マルチビームシステムによって生成されたSEM画像の明るさは、ドリフト(ずれ)の累積を有し得る。そのようなドリフトが識別されない場合、画像解析にまで伝搬し、エラーを引き起こすことができる。従って、マルチビームシステムの健全度を監視し、正確でタイムリーな診断を提供することが重要であり、これにより、維持保守の労力及び費用、並びにサイクルタイムが低減される可能性がある。
【0043】
[0047] 本開示の実施形態によっては、自己参照方式を使用して、マルチビームシステムの健全度を監視し得る。自己参照方式は、ベースライン条件又はグループ性能測定基準を参照として利用して、ビームの性能測定基準を監視し得る。性能測定基準は、ビームの視野(FOV)からの撮像プロセスにおいて生成された画像の画質又は幾何学的歪みのうちの少なくとも1つを示すことができる。性能測定基準は、ビームの結像の性能を示すことができる。ベースライン条件は、固定のベンチマーク、挙動、又は性能測定基準の仕様であり得る。ベースライン条件は、ビームのランディングエネルギー、ビームの電流、サンプルのピクセルサイズ、又はサンプルの仕様などの様々な条件に依存し得る。
【0044】
[0048] 実施形態によっては、マルチビームシステムは、マルチビームシステムの複数のビームの1つ又は複数の性能測定基準を選択して記録し得る。マルチビームシステムは、複数のビームの性能測定基準を記録し、そこからベースライン条件を決定し得る。そのようなベースライン条件は、シングルビームシステムでは利用できないことができる。実施形態によっては、マルチビームシステムは、所定の時点で値の記録を開始し得る。
【0045】
[0049] 実施形態によっては、マルチビームシステムは、ビームの性能測定基準とベースライン条件との比較に基づいて、ビームに異常が起きているかどうかを決定し得る。実施形態によっては、マルチビームシステムは、ビームの性能測定基準と複数のビームのグループ性能測定基準との比較に基づいて、ビームに異常が起きているかどうかを決定し得る。自己参照方式での様々な性能測定基準を使用することにより、根本原因の追及分析に向けて異常を迅速に診断することができ、従って、トラブル解決作業の効率が高まることができる。
【0046】
[0050] 実施形態によっては、マルチビームシステムは、自動化された態様で、前述のプロセスを実施し得る。そうすることにより、マルチビームシステムは、マルチビームシステムの健全度を継続的に監視し、異常を検出し、検出された異常に基づいて問題の原因となる1つ又は複数のモジュール(例えば、ハードウェアモジュール又はソフトウェアモジュール)を診断することができる。
【0047】
[0051] 図3図4は、本開示の実施形態と一致する、方法300~400を示す例示的なフローチャートを示す。方法300~400は、荷電粒子ビーム装置(例えば、EBIシステム100)に結合されることができる監視モジュールによって実施されることができる。例えば、コントローラ(例えば、図1図2のコントローラ109)は、監視モジュールを含んでいてよく、方法300~400を実施するようにプログラムされていることができる。
【0048】
[0052] 図3は、本開示の実施形態と一致する、マルチビームシステムの性能を監視するための例示的な方法を示すフローチャートである。
【0049】
[0053] ステップ302では、コントローラ(例えば、図1図2のコントローラ109)は、撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取る。実施形態によっては、コントローラは、荷電粒子ビーム装置(例えば、EBIシステム100)に結合されたデータベースから記録を受け取ることができる。例えば、データベースは、マルチビームシステムの動作データを受け取り、それを前処理して複数のビームの性能測定基準の記録とし得る。実施形態によっては、各記録は、あるビームに関連付けられていることができる。撮像プロセスとは、サンプル(例えば、図2のサンプル208)の表面全体に渡って複数のビームをスキャンすることにより、SEM画像を生成するプロセスであり得る。実施形態によっては、コントローラは、複数の性能測定基準の記録を受け取ることができる。実施形態によっては、コントローラは、性能測定基準の記録を、データベース、例えばコントローラによってアクセス可能なメモリ内のデータベースに格納し得る。
【0050】
[0054] 実施形態によっては、性能測定基準は、複数のビームのうちのあるビームの視野(FOV)から撮像プロセスにおいて生成された画像の画質又は幾何学的歪みのうちの少なくとも1つを示す、任意の変数又はパラメータを含むことができる。例えば、ビーム毎に、コントローラはそのビームのFOVのSEM画像を(例えば、図2の電子検出デバイス240を使用することにより)生成するように制御し得る。実施形態によっては、画像の幾何学的な歪みを示す性能測定基準は、収差、構造上の歪み、又は幾何学的形状の変化を示すか又は特徴付ける変数又はパラメータを含むことができる。実施形態によっては、画質を示す性能測定基準は、画像のノイズレベル、画像の明るさ、画像のコントラスト、画像の鮮明度、又は画像の分解能を示すか、特徴づけるか、又は表す、変数又はパラメータを含むことができる。
【0051】
[0055] 例えば、性能測定基準が、画像のノイズレベルを示すか、特徴づけるか、又は表す変数又はパラメータを含む場合、設計された回路のパターンがない領域(「背景領域」)から電子検出デバイス240によって受信された1つ又は複数の信号(「背景信号」)から、画像のノイズレベルを示すか又は特徴づけるデータ(「ノイズレベルデータ」)が生成されるか又は導出されることができる。実施形態によっては、コントローラは、FOVの背景領域に相当する画像の部分を使用して、画像のノイズレベルデータを決定し得る。例えば、FOVは、意図された回路のパターンがある領域及び背景領域をカバーし得る。このとき、コントローラは、背景領域に対応する、電子検出デバイス240によって検出される信号レベルを決定し得る。実施形態によっては、コントローラは、FOVの領域のレイアウトデータ又は画像の画像データのうちの少なくとも1つに基づいて、この領域を決定し得る。例えば、設計データは、GDS(Graphic Database System)フォーマット、GDS II(Graphic Database System II)フォーマット、OASIS(Open Artwork System Interchange Standard)フォーマット、CIF(Caltech Intermediate Format)フォーマットなどのファイルを含むことがあり、これらのファイルは、意図された回路のパターンの分布を示す。設計データは、ある領域にパターンがあるかどうかを示す情報を含むことができる。別の例の場合、背景領域は、画像に対して特徴抽出を行うなど、FOVの画像を解析することにより、決定されることができる。例えば、特徴抽出の後で抽出された特徴がない領域は、背景領域として決定されることができる。
【0052】
[0056] 別の例の場合、性能測定基準が、画像の明るさ又はコントラストを示すか、特徴づけるか、又は表す変数又はパラメータを含む場合、コントローラは、画像のグレーレベルに基づいて、明るさ又はコントラストのうちの少なくとも1つを決定し得る。例えば、FOVの画像は、グレースケールのSEM画像であり得る。画像のピクセルのグレースケール値を解析することにより、コントローラは、明るさ、コントラスト、又はその両方を決定し得る。
【0053】
[0057] 別の例の場合、性能測定基準が、分解能又は鮮明度を示すか、特徴づけるか、又は表す変数又はパラメータを含む場合、分解能又は鮮明度は、ビームの焦点がはずれているかどうかを決定するために使用されることができる。実施形態によっては、コントローラは、ステッププロファイルから鮮明度又は分解能のうちの少なくとも1つを決定し得る。そうする前に、コントローラは、画像のパターンエッジからステッププロファイルを抽出し得る。パターンエッジとは、画像中のパターンのエッジであり得る。例えば、コントローラは、FOVのグレースケール画像に対して前述の特徴抽出を行って、パターンを抽出し得る。コントローラは、パターンからエッジを決定することができる。エッジは、溝(ditch)、溝(groove)、穴、線、又はステップなどの、壁構造を有する回路のフィーチャに対応し得る。理想的には、エッジは、異なる高さの2つの面の間に90°の壁を有していてよく、画像中のエッジに対応するグレースケール値は、不連続のジャンプを有し得る。しかしながら、製造時の実際のリソグラフィ及びエッチングプロセス、並びにSEM撮像における不確実性のせいで、エッジは90°の壁を持たないことがあり、これに対応するグレースケール値は、「ステッププロファイル」と呼ばれる連続的な変化を有し得る。実施形態によっては、コントローラは、ステッププロファイルのグレースケール値の変化率を決定することができ、変化率が大きいほど、鮮明度又は分解能が高くなることができる。
【0054】
[0058] 戻って図3を参照すると、ステップ304では、コントローラは、記録の一部分を使用して決定されたパラメータ値に基づいて、ビームの異常が発生しているかどうかを決定する。パラメータ値は、履歴ベースのベースライン値、又はグループ性能ベースのベースライン値であり得る。パラメータ値が履歴ベースのベースライン値である、マルチビームSEMの現在の動作期間中は、コントローラは、マルチビームSEMが維持保守又は較正の直後に動作する「初期期間」又は「テストラン」期間などの、マルチビームSEMの以前の動作期間の性能データを使用して、パラメータ値を決定し得る。パラメータ値がグループ性能ベースのベースライン値である、マルチビームSEMの現在の動作期間中は、コントローラは、マルチビームSEMの現在の動作期間の性能データを使用して、パラメータ値を決定し得る。
【0055】
[0059] 実施形態によっては、ビームの異常が発生しているかどうかを決定するために、コントローラは、記録の履歴値に基づいて、複数のビームの性能測定基準の履歴ベースのベースライン値としてパラメータ値を決定し得る。実施形態によっては、コントローラは、所定のイベントの後でベースライン値を決定し得る。例えば、コントローラは、所定のイベントの後で受け取られた性能測定基準の初期記録に基づいて、ベースライン値を決定し得る。実施形態によっては、所定のイベントには、マルチビームシステムの維持保守又はマルチビームシステムの較正のうちの1つの完了が含まれることができる。例えば、維持保守又は較正の完了後、マルチビームシステムは再度稼働され、複数のビームの各ビームの性能測定基準の値を記録し得る。そのような値は、性能測定基準の参考として使用されることがあり、「初期記録」と呼ばれることができる。実施形態によっては、所定のイベントには、記録の各値がシフト値だけ変化し、シフト値は所定の範囲を超えて記録の値の平均値から外れることはない、ということが含まれることができる。例えば、維持保守又は較正の後、ビーム毎に、コントローラは、そのビームに対応する記録の値を記憶することがあり、その値は所定の許容範囲内に含まれることができる。許容範囲は、例えば、マルチビームシステムのユーザによって設定されることができる。実施形態によっては、コントローラは、撮像プロセスの複数の時点で受け取られたビームの記録の少なくとも1つの値を使用して、ビームのテスト値を決定することもある。
【0056】
[0060] 実施形態によっては、ビームの異常が発生しているかどうかを決定するために、コントローラは、記録の一部分の値の統計値などの、グループ性能ベースのベースライン値としてパラメータ値を決定し得る。例えば、コントローラは、複数のビームの記録から導出されたデータを比較して、第1のビームが他のビームと比較して異常な性能を示しているかどうかを決定し得る。コントローラは、他のビームの性能測定基準の統計値を求めることがあり、第1のビームの性能測定基準とその統計値との差が所定の閾値以上であると決定し得る。統計値には、例えば、記録の平均値、記録の中央値、記録の分散値、記録の標準偏差値、又は記録の二乗平均平方根値が含まれることができる。実施形態によっては、記録の一部分とは、記録の全てであることができる。実施形態によっては、記録の一部分とは、記録の部分集合であることができる。例えば、マルチビームシステムが25個のビームレットを有する場合、コントローラは、25個のビームレットに対応する記録の値を受け取ることができる。コントローラは更に、幾つかの(例えば、5、10、18、25個などの)記録を使用して、記録の統計値を決定し得る。次いで、コントローラは、グループ性能ベースのベースライン値として統計値を決定し得る。
【0057】
[0061] 実施形態によっては、パラメータ値(例えば、履歴ベースのベースライン値又はグループ性能ベースのベースライン値)を決定した後で、コントローラは更に、記録のテスト値とベースライン値との差が所定の範囲内であるかどうかを決定し得る。次いで、コントローラは、差が所定の範囲内にはないとの決定に基づいて、異常が発生していると決定し得る。実施形態によっては、コントローラは、パラメータ値又は記録のうちの少なくとも1つをデータベースに記憶し得る。実施形態によっては、コントローラは、差が所定の範囲内にあるかどうかを決定する前に、データベースから記録又はパラメータ値のうちの少なくとも1つを読み出すことができる。
【0058】
[0062] 例示的なベースライン値が、図5に示されていることができる。図5は、本開示の実施形態と一致する、マルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の時間依存値の解説図である。図5では、横軸は(左から右にかけて)タイムラインを表しており、縦軸は性能測定基準の値を表している。タイムラインは、時点T0~T5を含む、幾つかの時点を含む。マルチビームシステムは複数のビームを含むので、図5は複数の曲線502を示している。曲線502の各曲線は記録の時間依存値を表すことがあり、各記録はマルチビームシステムの1本のビームに対応する。曲線502は、現在の曲線506を含む。図5はまた、時間依存値を表していないベースライン504も示している。コントローラは、(現在の曲線506を含めて)曲線502のそれぞれをベースライン504と比較し、曲線とベースライン504との差が所定の条件を満たす場合に、その曲線に対して異常が発生していると決定し得る。実施形態によっては、所定の条件とは、差が所定の範囲内にはないということであり得る。例えば、図5では、所定の範囲は、ベースライン504を含む範囲508として示されている。実施形態によっては、所定の範囲はベースライン値に対して対称であり得る。実施形態によっては、所定の範囲はベースライン値に対して対称であり得る。実施形態によっては、所定の範囲はベースライン値に対して非対称であり得る。範囲508はベースライン504に対して対称であるものとして示されているが、非対称であってもよい。
【0059】
[0063] 実施形態によっては、コントローラは、履歴ベースのベースラインとしてベースライン504を決定し得る。例えば、コントローラは、時点T0の前に受け取られた初期記録を使用して、ベースライン504を決定し得る。時点T0で開始して、ベースライン504の値は一定であることがあり、コントローラは、曲線502の各曲線(例えば、現在の曲線506)をベースライン504と比較し得る。ベースライン504と曲線との差が範囲508の外側である場合、コントローラは、異常が発生していると決定し得る。例えば、図5では、ベースライン504は履歴ベースのベースラインであり、時間的に値が一定であることができる。時点T1とT2との間のある時点で、現在の曲線506とベースライン504との差は範囲508を超え、コントローラは、現在の曲線506に対応するビームに異常が発生していると決定し得る。
【0060】
[0064] 実施形態によっては、コントローラは、グループ性能ベースのベースラインとしてベースライン504を決定し得る。例えば、コントローラは、曲線502の一部分の統計値として、ベースライン504を決定し得る。「統計値」は、データのサンプルから計算されデータのサンプルを特徴づける数値であり得る。例えば、統計値は平均値、中央値、標準偏差、標準誤差、又はベースライン504として使用するのに適した任意の他の数値であり得る。例えば、曲線502の一部分とは、曲線502の全体(例えば、現在の曲線506を含めて)であり得る。別の例の場合、曲線502の一部分とは、現在の曲線506を除く曲線502の全体であり得る。曲線502の任意の部分集合は、統計値を決定するために使用される曲線502の一部分であり得ることに、留意されたい。実施形態によっては、コントローラは、ある時点で統計値を決定し得る。コントローラがある時点で統計値を決定する場合、図5におけるベースライン曲線504及び範囲508の値は、時間の経過とともに上下に移動し得る。不明確にすることなく説明を簡単にするために、ベースライン504が、図5においてグループ性能ベースのベースラインを表す場合、ベースライン504は、特定の時点で決定されたグループ性能ベースのベースラインを表す。
【0061】
[0065] 実施形態によっては、コントローラは、以前の又は現在の時点における曲線502の一部分の統計値としてベースライン504を決定し得る。例えば、時点T3において、コントローラは、時点T3、T2、T1、T0で、又は時点T3の前の任意の時点で若しくは時点T3と同時の時点で受け取られた曲線502の一部分のリアルタイム値を使用して、統計値を決定し得る。実施形態によっては、コントローラはある時間範囲に渡る曲線502の一部分の統計値としてベースライン504を決定し得る。例えば、時点T3において、コントローラは、時点T0とT1との間、T1とT2との間、T2とT3との間、T0とT2との間、T1とT3との間の時間範囲、又は時点T3の前若しくは時点T3までを含む任意の時間範囲内で受け取られた曲線5の一部分の全ての値を使用して、統計値を決定し得る。
【0062】
[0066] 実施形態によっては、コントローラは、曲線502の一部分の統計値としてベースライン504を動的に(例えば、定期的に又はリアルタイムで)更新し得る。コントローラは、上述のように、以前の若しくは現在の時点での又はある時間範囲に渡る曲線502の一部分の値を使用してベースライン504を更新し得る。実施形態によっては、コントローラは、定期的に又は不定期に、異なる時点での曲線502の一部分の統計値としてベースライン504を更新し得る。例えば、図5では、時間の経過とともに、コントローラは、任意の時点T0、T1、T2、T3、T4、及びT5で、ベースライン504を更新し得る。実施形態によっては、コントローラは、あるスライディング時間ウィンドウに渡る曲線502の一部分の統計値としてベースライン504を更新し得る。例えば、時点T3において、コントローラは、時点T1とT2との間、T2とT3との間、T0とT1との間、T0とT2との間、T1とT3との間の時間ウィンドウ、又は時点T3の前若しくは時点T3までを含む任意の時間範囲に渡る曲線502の一部分の値を使用して、曲線502の一部分の統計値としてベースライン504を決定し得る。時点T4において、コントローラは、時点T2とT3との間、T3とT4との間、T1とT2との間、T1とT3との間、T2とT4との間の時間ウィンドウ、又は(T4-T3)の時間差だけシフトされた、時点T3で使用された時間ウィンドウと同じ長さの、時点T4の前の若しくは時点T4までを含む任意の時間範囲に渡って、曲線502の一部分の値を使用して曲線502の一部分の統計値としてベースライン504を決定し得る。ベースライン504を決定し更新するための他の方法を使用することもでき、他の方法は、前述の例に限定はされない。
【0063】
[0067] 現在の曲線506とベースライン504とを比較する場合、コントローラは、現在の曲線506のリアルタイム値若しくは瞬時値、又は現在の曲線506の統計値のいずれかを使用し得ることに、留意されたい。実施形態によっては、コントローラは、比較が行われる時点で受け取られるリアルタイム値など、比較のために現在の曲線506のリアルタイム値を使用し得る。例えば、時点T3において、現在の曲線506のリアルタイム値が、時点T3で受け取られることができる。コントローラが比較のために現在の曲線506のリアルタイム値を使用する場合、コントローラは、現在の曲線506のリアルタイム値とベースライン504との差が所定の条件を満たす場合に、異常が発生していると決定し得る。例えば、図5では、時点T1とT2との間のある時点において、現在の曲線506は範囲508の上限を超えるタイムラインの第1のスパイクとして示されるリアルタイム値を有する。その時点で、コントローラは、現在の曲線506に対応するビームに異常が起きていると決定し得る。
【0064】
[0068] 実施形態によっては、コントローラは、比較のために現在の曲線506の現在の統計値(例えば、平均値、中央値、等)を使用し得る。現在の曲線506の現在の統計値は、ある期間に渡って、その期間内に受け取られた現在の曲線506の全ての値を使用して、決定されることができる。現在の曲線506の現在の統計値は、曲線502の統計値と同様の方法で決定されることができる。例えば、時点T4において、現在の曲線506の現在の統計値は、時点T3とT4との間の期間内に受け取られた現在の曲線506の全ての値の平均であり得る。別の例の場合、時点T5において、現在の曲線506の現在の統計値は、時点T2とT5との間の期間内に受け取られた現在の曲線506の全ての値の中央値であり得る。コントローラが比較のために現在の曲線506の現在の統計値を使用する場合、コントローラは、現在の曲線506の現在の統計値とベースライン504との差が所定の条件を満たす場合に、異常が発生していると決定し得る。例えば、図5では、時点T2において、現在の統計値は、時点T1とT2との間の期間内に受け取られた現在の曲線506の全ての値の平均であり得る。時点T1とT2との間のある時点において、現在の曲線506は範囲508の上限を超えるタイムラインの第1のスパイクとして示されるリアルタイム値を有する。しかしながら、時点T1とT2との間の現在の統計値は、範囲508内に含まれることがあり、コントローラは、時点T2では異常が発生していると決定しないことができる。それにもかかわらず、時点T3では、現在の統計値は、時点T2とT3との間の期間内に受け取られた現在の曲線506の全ての値の平均であることがあり、時点T2とT3との間の現在の統計値は、範囲508を超えることができる。従って、コントローラは、時点T3において現在の曲線506に対応するビームに異常が起きていると決定し得る。
【0065】
[0069] 実施形態によっては、ビームに異常が起きているかどうかを決定するために、アンサンブル性能法が使用されることができる。アンサンブル性能法では、コントローラは、複数の時点で受け取られた記録の値に対して実施される回帰から、第1の回帰パラメータを決定し、それらの複数の時点で受け取られた記録の一部分のそれぞれの値に対して実施される回帰から、第2の回帰パラメータを決定し得る。第2の回帰パラメータのそれぞれは、記録の1つの部分に対応し得る。
【0066】
[0070] 例えば、図5は、曲線502と、異常が存在するかどうかを決定されることになる現在の曲線506とを示している。現在の曲線506は、コントローラが異常が発生しているかどうかを検出中のビームの、記録に対応する。例えば、時点T0から、コントローラは、マルチビームシステムの複数のビームに対応する性能測定基準の値の記録及び記憶を制御することがあり、そのそれぞれは、複数の曲線502のある曲線に対応する。値は、連続的に又は断続的に記録されることができる。第1の回帰パラメータは、現在の曲線506に対して実施される回帰から決定されることができる。第2の回帰パラメータは、複数の曲線502の部分集合に対して実施される回帰から決定されることができる。実施形態によっては、この部分集合は現在の曲線506を含むことができる。実施形態によっては、この部分集合は現在の曲線506を含まないことができる。例えば、部分集合は、現在の曲線506を除く全ての曲線502を含むことができる。別の例の場合、部分集合は、現在の曲線506を除く複数の曲線502の幾つかを含むことができる。第2の回帰パラメータのそれぞれは、曲線502の部分集合のうちの1つに対応し得る。実施形態によっては、回帰には線形回帰が含まれることがあり、第1の回帰パラメータ及び第2の回帰パラメータは、傾き又は切片のうちの1つを含むことができる。例えば、現在の曲線506に対して線形回帰を実施することにより、コントローラは、現在の曲線506の第1の傾き又は第1の切片のうちの少なくとも1つを決定し得る。曲線502の部分集合のそれぞれに対して線形回帰を実施することにより、コントローラは、部分集合のそれぞれの第2の傾き又は第2の切片のうちの少なくとも1つを決定し得る。
【0067】
[0071] アンサンブル性能法では、実施形態によっては、コントローラは、第2の回帰パラメータを使用してパラメータ値を決定することもある。例えば、パラメータ値は、第2の回帰パラメータの平均値、中央値、分散値、標準偏差値、又は二乗平均平方根値として決定されることができる。例えば、第2の回帰パラメータが複数の曲線502の第2の複数の傾きを含む場合、パラメータ値は、第2の複数の傾きの統計値(例えば、平均値又は中央値)として決定されることができる。別の例の場合、第2の回帰パラメータが複数の曲線502の第2の複数の切片を含む場合、パラメータ値は、第2の複数の切片の統計値(例えば、平均値又は中央値)として決定されることができる。
【0068】
[0072] アンサンブル性能法では、コントローラは更に、第1の回帰パラメータとパラメータ値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定し得る。例えば、コントローラは、第1の傾き(又は第1の切片)と第2の傾き(又は第2の切片)の統計値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定し得る。実施形態によっては、所定の範囲はパラメータ値の統計値に対して対称であり得る。実施形態によっては、所定の範囲はパラメータ値の統計値に対して非対称であり得る。
【0069】
[0073] アンサンブル性能法では、次いで、コントローラは、差が所定の範囲内にはない場合、異常が発生していると決定し得る。例えば、図5では、現在の曲線506の第1の傾きと曲線502の第2の複数の傾きの平均値との差が所定の範囲内にはない場合、コントローラは、現在の曲線506において異常が発生していると決定し得る。
【0070】
[0074] 引き続き戻って図3を参照すると、ステップ306で、コントローラは、異常が発生しているという決定に応答して、異常の指摘を提供する。実施形態によっては、異常の指摘は、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)に表示される警告(例えば、ポップアップウィンドウ)などの、視覚的な表示を含むことができる。実施形態によっては、異常の指摘は、音などの音響表示を含むことができる。実施形態によっては、異常の指摘は、テキストメッセージなどの、マルチビームシステムのユーザに送信されるメッセージを含むことができる。他の形態の異常の指摘が使用されることもある。ユーザが異常の指摘を受け取った場合、ユーザは、マルチビームシステムのモジュール(例えば、ハードウェアモジュール又はソフトウェアモジュール)に何らかの問題が実際に発生しているかどうかのチェックを開始することができる。例えば、ユーザは、マルチビームシステムに関連づけられたログファイルのチェックを開始し得る。
【0071】
[0075] 実施形態によっては、ステップ306の後で、コントローラは、異常が発生しているという決定に応答して、異常の原因を決定し得る。例えば、コントローラは、診断ソフトウェアの実行をトリガーして、異常の原因を決定し、異常がマルチビームシステムの実際の問題を示しているかどうかを決定し得る。
【0072】
[0076] 図4は、本開示の実施形態と一致する、マルチビームシステムの性能を監視するための例示的な方法400を示すフローチャートである。
【0073】
[0077] ステップ402では、コントローラ(例えば、図1図2のコントローラ109)は、撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準のベースライン値を決定する。実施形態によっては、各記録は、複数のビームのうちの1つに関連付けられていることができる。例えば、コントローラは、所定のイベントの後で受け取られた性能測定基準の初期記録に基づいて、ベースライン値を決定し得る。別の例の場合、コントローラは、性能測定基準の記録の一部分の値の統計値として、ベースライン値を決定し得る。
【0074】
[0078] ステップ404では、コントローラは、ベースライン値又は記録のうちの少なくとも1つをデータベースに格納する。実施形態によっては、データベースは、コントローラがアクセス可能なメモリに含まれることができる。
【0075】
[0079] ステップ406では、コントローラは、撮像プロセスにおいて複数のビームの性能測定基準の記録を受け取る。実施形態によっては、コントローラは、ステップ302と同様の態様でステップ406を実施し得る。例えば、コントローラは、受け取った記録をデータベースに格納し得る。
【0076】
[0080] ステップ408では、コントローラは、記録又はベースライン値のうちの少なくとも1つをデータベースから読み出す。
【0077】
[0081] ステップ410では、コントローラは、記録の一部分に関連付けられたパラメータ値に基づいて、ビームの異常が発生しているかどうかを決定する。実施形態によっては、コントローラは、ステップ304と同様の態様でステップ410を実施し得る。
【0078】
[0082] ステップ412では、コントローラは、異常が発生しているという決定に応答して、異常の指摘を提供する。実施形態によっては、コントローラは、ステップ306と同様の態様でステップ412を実施し得る。
【0079】
[0083] 実施形態によっては、ステップ412の後で、コントローラは、異常が発生しているという決定に応答して、異常の原因を決定し得る。例えば、コントローラは、診断ソフトウェアの実行をトリガーして、異常の原因を決定し、異常がマルチビームシステムの実際の問題を示しているかどうかを決定し得る。
【0080】
[0084] 画像処理、データ処理、自己参照方式、データベース管理、グラフィカル表示、荷電粒子ビーム装置又は別の撮像デバイスの動作、などを実行するための、プロセッサ(例えば、図1のコントローラ109のプロセッサ)用の命令を記憶する、非一次的なコンピュータ可読媒体が提供されることができる。非一時的な媒体の一般的な形態としては、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッド・ステート・ドライブ、磁気テープ、又は他の任意の磁気データ記録媒体、CD-ROM、他の任意の光学データ記録媒体、穴のパターンを有する任意の物理的媒体、RAM、PROM、及びEPROM、FLASH-EPROM若しくは他の任意のフラッシュメモリ、NVRAM、キャッシュ、レジスタ、他の任意のメモリチップ若しくはカートリッジ、及び前述のもののネットワーク化されたもの、が挙げられる。
【0081】
[0085] 実施形態については、以下の請求項を使用して更に説明することができる。
1.マルチビームシステムの性能を監視するための方法であって、
撮像プロセス中に動作するマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることであって、各記録はあるビームに関連付けられていることと、
ビームの異常が発生しているかどうかを、記録の一部分を使用して決定されるベースライン値に基づいて決定することと、
異常が発生しているという決定に応答して、異常の指摘を提供することと、を含む方法。
2.ビームの異常が発生しているかどうかを決定することは、
撮像プロセスの複数の時点で受け取られたビームの記録の少なくとも1つの値を使用して、ビームのテスト値を決定することと、
ビームのテスト値とベースライン値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定することと、
差が所定の範囲内にはないとの決定に基づいて、異常が発生していると決定することと、を含む、条項1に記載の方法。
3.ベースライン値又は記録のうちの少なくとも1つをデータベースに格納することを更に含む、条項1~2のいずれか一項に記載の方法。
4.差が所定の範囲内にあるかどうかを決定する前に、データベースから記録又はベースライン値のうちの少なくとも1つを読み出すこと、を更に含む、条項3に記載の方法。
5.所定のイベントの後でベースライン値を決定することを更に含む、条項1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.所定のイベントの後でベースライン値を決定することは、
所定のイベントの後で受け取られた性能測定基準の初期記録に基づいて、ベースライン値を決定することを含む、条項5に記載の方法。
7.所定のイベントは、マルチビームシステムの維持保守又はマルチビームシステムの較正のうちの1つの完了を含む、条項5~6のいずれか一項に記載の方法。
8.所定のイベントは、記録の各値がシフト値だけ変化することを含み、シフト値は所定の範囲を超えて記録の値の平均値から外れることはない、条項5~7のいずれか一項に記載の方法。
9.記録の一部分の値の統計値として、ベースライン値を決定することを更に含む、条項1~4のいずれか一項に記載の方法。
10.ビームのテスト値は、ビームの記録の少なくとも1つの値の統計値を含む、条項2~9のいずれか一項に記載の方法。
11.統計値は、平均値、中央値、分散値、標準偏差値、又は二乗平均平方根値のうちの1つを含む、条項9~10のいずれか一項に記載の方法。
12.ビームのテスト値は、複数の時点のうちの1つで受け取られたビームの記録の値を含む、条項2~9のいずれか一項に記載の方法。
13.ビームの異常が発生しているかどうかを決定することは、
複数の時点で受け取られた記録の値に対して実施される回帰から、第1の回帰パラメータを決定し、且つ、それらの複数の時点で受け取られた記録の一部分のそれぞれの値に対して実施される回帰から、第2の回帰パラメータを決定することであって、第2の回帰パラメータのそれぞれは、記録の一部分の1つに対応することと、
第2の回帰パラメータを使用してベースライン値を決定することと、
第1の回帰パラメータとベースライン値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定することと、
差が所定の範囲内にはないとの決定に基づいて、異常が発生していると決定することと、を含む、条項1~12のいずれか一項に記載の方法。
14.第1の回帰パラメータ及び第2の回帰パラメータのそれぞれは、傾き又は切片のうちの1つを含む、条項13に記載の方法。
15.記録の一部分は、上記記録を含まない、条項13~14のいずれか一項に記載の方法。
16.記録の一部分は、上記記録を除く記録の全てを含む、条項13~15のいずれか一項に記載の方法。
17.性能測定基準は、複数のビームのうちのあるビームの視野(FOV)から撮像プロセスにおいて生成された画像の画質又は幾何学的歪みのうちの少なくとも1つを示す、条項1~16のいずれか一項に記載の方法。
18.性能測定基準は、画像の幾何学的歪みを示し、収差、構造上の歪み、又は幾何学的形状の変化のうちの少なくとも1つを含む、条項17に記載の方法。
19.性能測定基準は画質を示し、且つ、画像のノイズレベル、画像の明るさ、画像のコントラスト、画像の鮮明度、又は画像の分解能のうちの少なくとも1つを表す変数を含む、条項17~18のいずれか一項に記載の方法。
20.FOVの領域に対応する画像の一部分を使用して、ノイズレベルを表すデータを決定することを更に含み、この領域はパターンを持たない、条項19に記載の方法。
21.FOVの領域のレイアウトデータ又は画像の画像データのうちの少なくとも1つに基づいて、領域を決定することを更に含む、条項20に記載の方法。
22.画像のグレーレベルに基づいて、明るさ又はコントラストのうちの少なくとも1つを決定することを更に含む、条項19~21のいずれか一項に記載の方法。
23.画像のパターンエッジからステッププロファイルを抽出することと、
ステッププロファイルから鮮明度又は分解能のうちの少なくとも1つを決定することと、を更に含む、条項19~22のいずれか一項に記載の方法。
24.異常が発生しているという決定に応答して、異常の原因を決定すること、を更に含む、条項1~23のいずれか一項に記載の方法。
25.マルチビームシステムの性能を監視するためのシステムであって、
コントローラであって、一組の命令を実行して、システムに
撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取らせ、なお各記録はあるビームに関連付けられており、
ビームの異常が発生しているかどうかを、記録の一部分を使用して決定されるベースライン値に基づいて決定させ、
異常が発生しているという決定に応答して、異常の指摘を提供させる、ための回路を有するコントローラ、を含むシステム。
26.ビームの異常が発生しているかどうかをシステムに決定させる一組の命令は、更に、システムに、
撮像プロセスの複数の時点で受け取られたビームの記録の少なくとも1つの値を使用して、ビームのテスト値を決定させ、
ビームのテスト値とベースライン値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定させ、
差が所定の範囲内にはないとの決定に基づいて、異常が発生していると決定させる、条項25に記載のシステム。
27.ベースライン値又は記録のうちの少なくとも1つを格納するように構成されたデータベースを更に含む、条項25~26のいずれか一項に記載のシステム。
28.一組の命令は更に、システムに、
差が所定の範囲内にあるかどうかを決定する前に、データベースから記録又はベースライン値のうちの少なくとも1つを読み出させる、条項27に記載のシステム。
29.一組の命令は更に、システムに、
所定のイベントの後でベースライン値を決定させる、条項25~28のいずれか一項に記載のシステム。
30.所定のイベントの後でシステムにベースライン値を決定させる一組の命令は、更に、システムに、
所定のイベントの後で受け取られた性能測定基準の初期記録に基づいて、ベースライン値を決定させる、条項29に記載のシステム。
31.所定のイベントは、マルチビームシステムの維持保守又はマルチビームシステムの較正のうちの1つの完了を含む、条項29~30のいずれか一項に記載のシステム。
32.所定のイベントは、記録の各値がシフト値だけ変化することを含み、シフト値は所定の範囲を超えて記録の値の平均値から外れることはない、条項29~31のいずれか一項に記載のシステム。
33.一組の命令は更に、システムに、
記録の一部分の値の統計値として、ベースライン値を決定させる、条項25~28のいずれか一項に記載のシステム。
34.ビームのテスト値は、ビームの記録の少なくとも1つの値の統計値を含む、条項26~33のいずれか一項に記載のシステム。
35.統計値は、平均値、中央値、分散値、標準偏差値、又は二乗平均平方根値のうちの1つを含む、条項33~34のいずれか一項に記載のシステム。
36.ビームのテスト値は、複数の時点のうちの1つで受け取られたビームの記録の値を含む、条項26~33のいずれか一項に記載のシステム。
37.ビームの異常が発生しているかどうかをシステムに決定させる一組の命令は、更に、システムに、
複数の時点で受け取られた記録の値に対して実施される回帰から、第1の回帰パラメータを決定させ、且つそれらの複数の時点で受け取られた記録の一部分のそれぞれの値に対して実施される回帰から、第2の回帰パラメータを決定させ、第2の回帰パラメータのそれぞれは、記録の一部分の1つに対応し、
第2の回帰パラメータを使用してベースライン値を決定させ、
第1の回帰パラメータとベースライン値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定させ、
差が所定の範囲内にはないとの決定に基づいて、異常が発生していると決定させる、条項25~36のいずれか一項に記載のシステム。
38.第1の回帰パラメータ及び第2の回帰パラメータのそれぞれは、傾き又は切片のうちの1つを含む、条項37に記載のシステム。
39.性能測定基準は、複数のビームのうちのあるビームの視野(FOV)から撮像プロセスにおいて生成された画像の画質又は幾何学的歪みのうちの少なくとも示す、条項25~38のいずれか一項に記載のシステム。
40.性能測定基準は、画像の幾何学的歪みを示し、収差、構造上の歪み、又は幾何学的形状の変化のうちの少なくとも1つを含む、条項39に記載のシステム。
41.性能測定基準は画質を示し、且つ、画像のノイズレベル、画像の明るさ、画像のコントラスト、画像の鮮明度、又は画像の分解能のうちの少なくとも1つを表す変数を含む、条項39~40のいずれか一項に記載のシステム。
42.一組の命令は更に、システムに、
FOVの領域に対応する画像の一部分を使用して、ノイズレベルを表すデータを決定させ、この領域はパターンを持たない、条項41に記載のシステム。
43.一組の命令は更に、システムに、
FOVの領域のレイアウトデータ又は画像の画像データのうちの少なくとも1つに基づいて、領域を決定させる、条項42に記載のシステム。
44.一組の命令は更に、システムに、
画像のグレーレベルに基づいて、明るさ又はコントラストのうちの少なくとも1つを決定させる、条項41~43のいずれか一項に記載のシステム。
45.一組の命令は更に、システムに、
画像のパターンエッジからステッププロファイルを抽出させ、
ステッププロファイルから鮮明度又は分解能のうちの少なくとも1つを決定させる、条項41~44のいずれか一項に記載のシステム。
46.一組の命令は更に、システムに、
異常が発生しているという決定に応答して、異常の原因を決定させる、条項25~45のいずれか一項に記載のシステム。
47.非一時的なコンピュータ可読媒体であって、マルチビームシステムの性能を監視するための方法を装置に実施させるように、装置の少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な、一組の命令を記憶し、この方法は、
撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることであって、各記録はあるビームに関連付けられていることと、
ビームの異常が発生しているかどうかを、記録の一部分を使用して決定されるベースライン値に基づいて決定することと、
異常が発生しているという決定に応答して、異常の指摘を提供することと、を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
48.マルチビーム装置の健全度を監視する方法であって、
撮像プロセスにおいてマルチビーム装置の複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることと、
記録を比較して、複数のビームのうちのあるビームが異常を示しているかどうかを決定することと、
そのビームが異常を示す場合に通知をトリガーすることと、を含む、方法。
49.前記複数のビームは、3本以上のビームを含む、条項48に記載の方法。
50.異常が発生しているという決定に応答して、異常の原因を決定すること、を更に含む、条項48~49のいずれか一項に記載の方法。
51.記録のそれぞれは、複数のビームのうちの1つに関連づけられ、記録のそれぞれは、撮像プロセスの複数の時点で受け取られた性能測定基準の複数の値を含む、条項48~50のいずれか一項に記載の方法。
52.記録を比較して複数のビームのうちのあるビームが異常を示すかどうかを決定することは、
ビームの性能測定基準のベースライン値を決定することと、
撮像プロセスの複数の時点で受け取られたビームの記録の少なくとも1つの値を使用して、そのビームのテスト値を決定することと、
ビームのテスト値とベースライン値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定することと、
差が所定の範囲内にはないとの決定に基づいて、異常が発生していると決定することと、を含む、条項48~51のいずれか一項に記載の方法。
53.ベースライン値又は記録のうちの少なくとも1つをデータベースに格納することを更に含む、条項52に記載の方法。
54.差が所定の範囲内にあるかどうかを決定する前に、データベースから記録又はベースライン値のうちの少なくとも1つを読み出すこと、を更に含む、条項53に記載の方法。
55.記録の一部分の値の統計値として、ベースライン値を決定することを更に含む、条項52~54のいずれか一項に記載の方法。
56.ビームのテスト値は、そのビームの記録の少なくとも1つの値の統計値を含む、条項52~55のいずれか一項に記載の方法。
57.統計値は、平均値、中央値、分散値、標準偏差値、又は二乗平均平方根値のうちの1つを含む、条項55~56のいずれか一項に記載の方法。
58.ビームのテスト値は、複数の時点のうちの1つで受け取られたそのビームの記録の値を含む、条項42~56のいずれか一項に記載の方法。
59.記録を比較して複数のビームのうちのあるビームが異常を示すかどうかを決定することは、
複数の時点で受け取られた記録の値に対して実施される回帰から、第1の回帰パラメータを決定し、それらの複数の時点で受け取られた記録の一部分のそれぞれの値に対して実施される回帰から、第2の回帰パラメータを決定することであって、第2の回帰パラメータのそれぞれは、記録の一部分の1つに対応することと、
第2の回帰パラメータを使用してベースライン値を決定することと、
第1の回帰パラメータとベースライン値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定することと、
差が所定の範囲内にはないとの決定に基づいて、異常が発生していると決定することと、を含む、条項48~58のいずれか一項に記載の方法。
60.第1の回帰パラメータ及び第2の回帰パラメータのそれぞれは、傾き又は切片のうちの1つを含む、条項59に記載の方法。
61.記録の一部分は、上記記録を含まない、条項59~60のいずれか一項に記載の方法。
62.記録の一部分は、上記記録を除く記録の全てを含む、条項59~61のいずれか一項に記載の方法。
63.性能測定基準は、複数のビームのうちのあるビームの視野(FOV)から撮像プロセスにおいて生成された画像の画質又は幾何学的歪みのうちの少なくとも1つを示す、条項48~62のいずれか一項に記載の方法。
64.性能測定基準は、画像の幾何学的歪みを示し、収差、構造上の歪み、又は幾何学的形状の変化のうちの少なくとも1つを含む、条項63に記載の方法。
65.性能測定基準は画質を示し、且つ、画像のノイズレベル、画像の明るさ、画像のコントラスト、画像の鮮明度、又は画像の分解能のうちの少なくとも1つを表す変数を含む、条項63~64のいずれか一項に記載の方法。
66.FOVの領域に対応する画像の一部分を使用して、ノイズレベルを表すデータを決定することを更に含み、この領域はパターンを持たない、条項65に記載の方法。
67.FOVの領域のレイアウトデータ又は画像の画像データのうちの少なくとも1つに基づいて、領域を決定することを更に含む、条項66に記載の方法。
68.画像のグレーレベルに基づいて、明るさ又はコントラストのうちの少なくとも1つを決定することを更に含む、条項65~67のいずれか一項に記載の方法。
69.画像のパターンエッジからステッププロファイルを抽出することと、
ステッププロファイルから鮮明度又は分解能のうちの少なくとも1つを決定することと、を更に含む、条項65~68のいずれか一項に記載の方法。
70.マルチビームシステムの健全度を監視する装置であって、
コントローラであって、一組の命令を実行して、装置に
撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取らせ、
記録を比較して、複数のビームのうちのあるビームが異常を示しているかどうかを決定させ、
そのビームが異常を示す場合に通知をトリガーさせる、ための回路を有するコントローラ、を含む装置。
71.前記複数のビームは、3本以上のビームを含む、条項70に記載の装置。
72.一組の命令は更に、装置に、
異常が発生しているという決定に応答して、異常の原因を決定させる、条項70~71のいずれか一項に記載の装置。
73.記録のそれぞれは、複数のビームのうちの1つに関連づけられ、記録のそれぞれは、撮像プロセスの複数の時点で受け取られた性能測定基準の複数の値を含む、条項70~72のいずれか一項に記載の装置。
74.装置に記録を比較させて、複数のビームのうちのあるビームが異常を示しているかどうかを決定させるための一組の命令は、更に、システムに、
そのビームの性能測定基準のベースライン値を決定させ、
撮像プロセスの複数の時点で受け取られたそのビームの記録の少なくとも1つの値を使用して、そのビームのテスト値を決定させ、
ビームのテスト値とベースライン値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定させ、
差が所定の範囲内にはないとの決定に基づいて、異常が発生していると決定させる、条項70~73のいずれか一項に記載の装置。
75.一組の命令は更に、装置に、
ベースライン値又は記録のうちの少なくとも1つをデータベースに格納させる、条項74に記載の装置。
76.一組の命令は更に、装置に、
差が所定の範囲内にあるかどうかを決定する前に、データベースから記録又はベースライン値のうちの少なくとも1つを読み出させる、条項75に記載の装置。
77.一組の命令は更に、装置に、
記録の一部分の値の統計値として、ベースライン値を決定させる、条項74~76のいずれか一項に記載の装置。
78.ビームのテスト値は、そのビームの記録の少なくとも1つの値の統計値を含む、条項74~77のいずれか一項に記載の装置。
79.統計値は、平均値、中央値、分散値、標準偏差値、又は二乗平均平方根値のうちの1つを含む、条項77~78のいずれか一項に記載の装置。
80.ビームのテスト値は、複数の時点のうちの1つで受け取られたそのビームの記録の値を含む、条項74~78のいずれか一項に記載の装置。
81.装置に記録を比較させて、複数のビームのうちのあるビームが異常を示しているかどうかを決定させるための一組の命令は、更に、システムに、
複数の時点で受け取られた記録の値に対して実施される回帰から、第1の回帰パラメータを決定させ、且つそれらの複数の時点で受け取られた記録の一部分のそれぞれの値に対して実施される回帰から、第2の回帰パラメータを決定させ、第2の回帰パラメータのそれぞれは、記録の一部分の1つに対応し、
第2の回帰パラメータを使用してベースライン値を決定させ、
第1の回帰パラメータとベースライン値との差が所定の範囲内にあるかどうかを決定させ、
差が所定の範囲内にはないとの決定に基づいて、異常が発生していると決定させる、条項70~80のいずれか一項に記載の装置。
82.第1の回帰パラメータ及び第2の回帰パラメータのそれぞれは、傾き又は切片のうちの1つを含む、条項81に記載の装置。
83.記録の一部分は、上記記録を含まない、条項81~82のいずれか一項に記載の装置。
84.記録の一部分は、上記記録を除く記録の全てを含む、条項81~83のいずれか一項に記載の装置。
85.性能測定基準は、複数のビームのうちのあるビームの視野(FOV)から撮像プロセスにおいて生成された画像の画質又は幾何学的歪みのうちの少なくとも示す、条項70~84のいずれか一項に記載の装置。
86.性能測定基準は、画像の幾何学的歪みを示し、収差、構造上の歪み、又は幾何学的形状の変化のうちの少なくとも1つを含む、条項85に記載の装置。
87.性能測定基準は画質を示し、且つ、画像のノイズレベル、画像の明るさ、画像のコントラスト、画像の鮮明度、又は画像の分解能のうちの少なくとも1つを表す変数を含む、条項85~86のいずれか一項に記載の装置。
88.一組の命令は更に、装置に、
FOVの領域に対応する画像の一部分を使用して、ノイズレベルを表すデータを決定させ、この領域はパターンを持たない、条項87に記載の装置。
89.一組の命令は更に、装置に、
FOVの領域のレイアウトデータ又は画像の画像データのうちの少なくとも1つに基づいて、領域を決定させる、条項88に記載の装置。
90.一組の命令は更に、装置に、
画像のグレーレベルに基づいて、明るさ又はコントラストのうちの少なくとも1つを決定させる、条項87~89のいずれか一項に記載の装置。
91.一組の命令は更に、装置に、
画像のパターンエッジからステッププロファイルを抽出させ、
ステッププロファイルから鮮明度又は分解能のうちの少なくとも1つを決定させる、条項87~90のいずれか一項に記載の装置。
92.非一時的なコンピュータ可読媒体であって、マルチビームシステムの健全度を監視するための方法を装置に実施させるように、装置の少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な、一組の命令を記憶し、この方法は、
撮像プロセスにおいてマルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることと、
記録を比較して、複数のビームのうちのあるビームが異常を示しているかどうかを決定することと、
ビームが異常を示す場合に通知をトリガーすることと、を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
93.マルチビーム走査型電子顕微鏡(SEM)の健全度を監視する方法であって、
マルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることであって、複数のビームは、第1のビーム及び他のビームを含むことと、
記録から導出されたデータを比較して、第1のビームが他のビームと比較して異常な性能を示しているかどうかを決定することと、
比較に基づいて、第1のビームが異常な性能を示していると決定された場合に、通知をトリガーすることと、を含む方法。
94.データを比較することは更に、
他のビームの性能測定基準の統計値を決定することと、
第1のビームの性能測定基準と統計値との差が所定の閾値以上であることを決定することと、を含む、条項93に記載の方法。
95.統計値は、他のビームの性能測定基準の平均値、中央値、分散値、標準偏差値、又は二乗平均平方根値のうちの1つを含む、条項93に記載の方法。
【0082】
[0086] 図中のブロック図は、本開示の様々な例示的な実施形態によるシステム、方法、及びコンピュータハードウェア又はソフトウェア製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能、及び動作を示している。これに関して、フローチャート又はブロック図内の各ブロックは、指定された論理機能を実施するための1つ又は複数の実行可能命令を含む、モジュール、セグメント、又はコードの一部を表すことができる。幾つかの代替的な実施態様では、ブロック内に示された機能は、図に記された順序以外の順序で行われることができることを理解されたい。例えば、連続して示される2つのブロックは、実質的に同時に実行されるか若しくは実施されてもよく、又は、関係する機能に応じて、2つのブロックは、時には逆の順序で実行されることができる。一部のブロックは省略されることもある。ブロック図の各ブロック、及びブロックの組み合わせは、指定された機能若しくは動作を実施する特殊用途ハードウェアベースのシステムによって、又は特殊用途ハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせによって、実装されることができることを理解されたい。
【0083】
[0087] 本開示の実施形態は、上記で説明し、添付の図面に図示した通りの構成に限定されるものではなく、また、本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更を加えることができることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビームシステムの性能を監視するための方法であって、
撮像プロセス中に動作する前記マルチビームシステムの複数のビームの性能測定基準の記録を受け取ることであって、各記録はあるビームに関連付けられていることと、
ビームの異常が発生しているかどうかを、前記記録の一部分を使用して決定されるベースライン値に基づいて決定することと、
前記異常が発生しているという前記決定に応答して、異常の指摘を提供することと、を含む、方法。
【外国語明細書】