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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079940
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】小麦粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240606BHJP
   A23L 7/157 20160101ALN20240606BHJP
   A23L 5/10 20160101ALN20240606BHJP
   A23L 17/40 20160101ALN20240606BHJP
   A21D 2/36 20060101ALN20240606BHJP
   A21D 13/80 20170101ALN20240606BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L17/40 A
A21D2/36
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192648
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】青木 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】中本 悠貴
【テーマコード(参考)】
4B023
4B025
4B032
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B023LG06
4B023LP20
4B025LB05
4B025LG04
4B025LG18
4B025LP07
4B025LP10
4B025LP20
4B032DB06
4B032DG02
4B035LC03
4B035LE17
4B035LG35
4B035LP07
4B035LP27
4B042AC05
4B042AD18
4B042AG72
4B042AH01
4B042AK12
4B042AP05
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】小麦粉加工食品の食感を改良することができる小麦粉の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】工程1:小麦穀粒と55~100℃の熱水とを混合する工程であって、前記熱水の量が、前記小麦穀粒100質量部に対して2.5質量部以上である工程、を含む、小麦粉の製造方法により解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程1:小麦穀粒と55~100℃の熱水とを混合する工程であって、前記熱水の量が、前記小麦穀粒100質量部に対して2.5質量部以上である工程、
を含む、小麦粉の製造方法。
【請求項2】
工程2:工程1により得られる熱水と混合した小麦穀粒を環境温度下に曝し、小麦穀粒の品温が環境温度になるまで保持する工程、
を工程1に次いで行うことを含む、請求項1記載の小麦粉の製造方法。
【請求項3】
工程2の後に、小麦穀粒を調質する工程3を含む、請求項2記載の小麦粉の製造方法。
【請求項4】
工程2または工程3の後に、小麦穀粒から小麦粉を製粉する工程4を含む、請求項2または3記載の小麦粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小麦粉加工食品の食感を改良するための小麦粉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉を使用した食品について、食感や加工特性を改良する目的で、原料となる小麦穀粒又は小麦粉を熱処理することが知られている。
特許文献1では、加熱蒸気を用いた湿熱処理の方法が開示されているが、使用しているオートクレーブやスチームオーブンといった装置は圧力がかかるため安全性が低い点や、従来の製粉工程と比べると工程が増える点で問題があった。
特許文献2では、原料穀粉について弱い乾熱処理を施した後に湿熱処理をする方法が開示されているが、この方法による小麦粉の変性は操作が複雑で経済的でないという問題もあった。
また、特許文献3では、小麦穀粒に対して一定量の水分を加水後、加熱処理して製粉する方法が開示されているが、加水と加熱が別行程に分かれているため、手間やコストがかかり、経済的ではない。
また、特許文献4では、原料小麦粉を一定の温度、湿度で湿熱処理し、一定の品温、含有水分に到達させて熱変性小麦粉を作製する方法が開示されているが、こちらは小麦穀粒を小麦粉に粉砕してから、湿熱処理を行うため、手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-93160
【特許文献2】特開2018-11555
【特許文献3】特開昭53-101548
【特許文献4】特開平11-75749
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の方法と比較して、手間やコストがかからない、小麦粉加工食品の食感を改良することができる小麦粉の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、小麦粉を水分と接触する状態で用いることを用途として含む小麦加工食品の製造方法において、グルテン形成能の喪失に起因した食感の改良を提供する簡便かつ安価な小麦粉の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
加熱蒸気を用いる湿熱処理ではなく、小麦穀粒の状態で所定の条件により熱水処理を行ない、その後小麦粉を製造することにより、上記課題を解決しうる。
本発明の好ましい実施態様は以下のとおりである。
〔1〕 工程1:小麦穀粒と55~100℃の熱水とを混合する工程であって、前記熱水の量が、前記小麦穀粒100質量部に対して2.5質量部以上である工程、
を含む、小麦粉の製造方法。
〔2〕 工程2:工程1により得られる熱水と混合した小麦穀粒を環境温度下に曝し、小麦穀粒の品温が環境温度になるまで保持する工程、
を工程1に次いで行うことを含む、〔1〕記載の小麦粉の製造方法。
〔3〕 工程2の後に、小麦穀粒を調質する工程3を含む、〔2〕記載の小麦粉の製造方法。
〔4〕 工程2または工程3の後に、小麦穀粒から小麦粉を製粉する工程4を含む、〔2〕または〔3〕記載の小麦粉の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、手間やコストをかけることなく、小麦粉加工食品の食感を改良することができる小麦粉を製造することができる。また本発明によれば、小麦粉を水分と接触する状態で用いることを用途として含む小麦加工食品の製造方法において、グルテン形成能の喪失に起因した食感の改良を提供する小麦粉を簡便かつ安価に製造することができる。
より具体的には、本発明によれば、揚げ物の衣材として用いることにより口溶けが良くサクサク感のある衣の食感を有する揚げ物を得ることができ、また、ケーキ類の生地に用いることによりソフトで口溶けが良く木目の細かいケーキ類を得ることができるなど、小麦粉加工食品の食感を改良することができる小麦粉を得ることができる。本発明の製造方法により改良された小麦粉が水と接触する状態で用いられた際、グルテン形成能が喪失され、かかる食感を与えることができたものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
工程1:小麦穀粒と55~100℃の熱水とを混合する工程であって、前記熱水の量が、前記小麦穀粒100質量部に対して2.5質量部以上である工程
本発明の第一の態様は、工程1を含む小麦粉の製造方法である。
工程1は、小麦穀粒と55~100℃の熱水とを混合する工程を含む。小麦穀粒に熱水を作用させることにより、小麦穀粒に含まれるタンパク質の一部が変性を受け、タンパク質の一部の機能が喪失される。例えば、水分と接触することによりグルテン形成するグリアジンとグルテニンとが変性を受けてグルテン形成能が喪失されるので、例えば、揚げ物の衣であればサクサク感のある食感になると共に口溶けも良好になり、ケーキであれば柔らかくソフトな食感となると共に口溶けも良好になり、ケーキの内層のキメも良好になる。
【0008】
本発明において、前記熱水は液体状であり、液体状(蒸気あるいは気体状ではない)の熱水を小麦穀粒に作用させることにより、効率的に小麦穀粒を熱処理することができる。従来、小麦穀粒を湿熱処理する際には湿り蒸気を用いることが一般的であったが、これは小麦穀粒間の隙間にまで湿り蒸気を行き渡らせて満遍なく小麦粉穀粒を熱処理できるためである。しかしながら、湿り蒸気の温度は冷めやすく、例えば、湿り蒸気の噴射口付近の測定点よりも噴射口から離れた位置の測定点の温度が低くなる。これは、空気などの媒体により熱が奪われるからである。従って、湿り蒸気を用いる場合には、熱が媒体に奪われることを極力避けるために缶体などの閉鎖空間を有する設備を設置するか、媒体に熱を奪われることを前提に過剰量あるいはより高温の湿り蒸気を供給するなど、熱処理効率を高める工夫が必要となり、高額の費用を要するという課題がある。
一方で、液体状の熱水であっても媒体により熱を奪われるが、湿り蒸気中の水滴の比表面積よりも液体の熱水の比表面積が小さいため、奪われる熱量が少なくすむ。従って、小麦穀粒に対して効率的に熱を作用させることができ、また、湯を沸かすエネルギーと保温設備を導入するのみで済み、安価なコストで小麦穀粒の熱処理を実施することができる。
他方、液体状の水分を小麦穀粒に作用させる場合、熱処理にムラが生じることになるが、本発明においてはそのようなムラが生じないようにするために、小麦穀粒に熱水を適用する際に混合する(小麦穀粒を撹拌しながら熱水を作用させる)。そのための混合手段は特に制限はなく、ミキサーであってもよくスクリューコンベアであってもよい。例えば、スクリューコンベアで小麦穀粒を搬送する場合であれば、スクリューコンベア上で撹拌されながら搬送されている上方からシャワーリングで熱水を作用させることができ、搬送と同時に小麦穀粒の熱処理が可能になり、産業効率が更に良好になる。なお、ミキサーを用いる場合であれば、撹拌子やドラム等の回転速度を25~50rpmにすればよい。
【0009】
一般的に小麦穀粒等の穀粒を粉砕する場合、外皮をはぎ取る工程が必要となり、その前処理として穀粒を調質する工程が必要となる。この調質は、外皮をふやかしてはぎ取りやすくするだけでなく、胚乳を柔らかくして粉砕しやすくするために広く行われる工程である。本発明においては、液体状の熱水を小麦穀粒に作用させるので、小麦穀粒の熱変性と調質(あるいは予備調質)とを同時に行えるという利点がある。
【0010】
前記熱水の温度は55~100℃であり、下限値は好ましくは57℃以上であり、より好ましくは60℃以上である。上限値は特にないが液体状の熱水を小麦穀粒に作用させることができる条件であれば特に問題はない。例えば、高圧下で100℃以上の水温の液体状の熱水を小麦穀粒に作用させることができる。安全かつ経済的な理由から、熱水の温度の上限は100℃以下であり、好ましくは98℃以下であり、より好ましくは95℃以下である。このような範囲であれば、サクサク感があり口溶けが良好な揚げ物(天ぷら)を得ることができ、また、ソフトさがあり口溶けが良好で、内層のキメが細かいケーキを得ることができる小麦粉を製造することができる。
【0011】
前記熱水の量は、小麦穀粒100質量部に対して2.5質量部以上であり、好ましくは3.0質量部以上であり、より好ましくは3.5質量部以上である。上限は特にないが、多すぎると粉砕に適した小麦穀粒の水分含量になるまで乾燥させる手間が生じてしまうため、好ましくは小麦穀粒100質量部に対して8.0質量部以下であり、より好ましくは7.5質量部以下であり、更に好ましくは7.0質量部以下である。このような範囲であれば、サクサク感があり口溶けが良好な揚げ物(天ぷら)を得ることができ、また、ソフトさがあり口溶けが良好で、内層のキメが細かいケーキを得ることができる小麦粉を製造することができる。
【0012】
工程2:工程1により得られる熱水と混合した小麦穀粒を環境温度下に曝し、小麦穀粒の品温が環境温度になるまで保持する工程
本発明の更なる態様は、工程1に加えてさらに工程2を含む小麦粉の製造方法である。
工程1において小麦穀粒と所定量の熱水とを混合した後、熱水と混合した小麦穀粒を環境温度下に曝し、小麦穀粒の品温が環境温度になるまで保持する。環境温度とは、一般に室温などとよばれる周囲の雰囲気温度のことである。品温が環境温度以上の段階で保持をやめると熱処理が十分に行われない場合がある。小麦穀粒の品温は従来公知のどのような方法で測定してもよいが、本明細書では、混合中の小麦穀粒の一部をシャーレに採取して均し、直ちにサーモグラフを用いて小麦穀粒の上面視表面温度の平均温度を測定することにより確認を行っている。
【0013】
一般に、水温が高いほど水分子の分子運動が活発になる(分子間力が作用し難くなる)。これは、温度の高い水の方が小麦穀粒内に浸透しやすいことを意味する。前記保持する工程を行うことにより、小麦穀粒に作用させた液体状の熱水の温度が徐々に低下するため、小麦穀粒内(特に皮部)に水が行き渡り易い条件がしばらく持続し、調質と同等の作用を効率的にもたらすことができる。一方で、液体状の熱水の温度が徐々に低下するので、小麦穀粒の熱処理作用もしばらく持続することとなる。また、前述したようにスクリューコンベアで小麦穀粒を搬送させながら液体状の熱水を作用させれば、その後の搬送中に調質をも行うことができることとなり、小麦粉の製造方法の更なる効率化を図ることができる。
【0014】
工程3:小麦穀粒を調質する工程
本発明の更なる態様は、工程1を行った後、あるいは、工程1及び工程2を行った後に、さらに工程3を含む小麦粉の製造方法である。
工程3において、小麦穀粒を調質する。「調質」とは一般に、精選した小麦をその含有水分を勘案して、所定の水分含量となるように加水することで、胚乳部を柔軟にし、胚乳部と皮部との分離を良好にし、挽砕条件に適するような性状に小麦穀粒を調整する工程である。
工程3は、任意に環境温度の水分を添加して混合し、小麦穀粒の水分含量が12~20質量%となるように調質する工程とすることが好ましい。小麦穀粒の水分含量が12~20質量%であると、小麦穀粒の胚乳が十分に柔らかくなり、また、柔らかくなりすぎることもないので、製粉に悪影響を及ぼすことがなく好ましい。
工程3は通常、環境温度下で、10~24時間程度行うことが好ましい。
【0015】
工程4:小麦穀粒から小麦粉を製粉する工程
本発明の更なる態様は、工程2または工程3の後に、小麦穀粒から小麦粉を製粉する工程4を含む方法である。
工程2において説明したとおり、熱水と混合した小麦穀粒を環境温度下で、小麦穀粒の品温が環境温度になるまで保持する工程2は、調質と同等の作用を効率的にもたらすことができるため、工程3の調質工程を行わずに、小麦穀粒から小麦粉に製粉する工程4を行ってもよい。
小麦穀粒から小麦粉に製粉する工程は従来公知の方法により行うことができる。
【0016】
本発明の製造方法により製造した小麦粉は、小麦粉加工食品の製造において用いると、従来とは異なる食感の食品を製造することができるという特徴を有する。特に小麦粉のグルテン形成能を喪失させて、グルテン形成が生じないかあるいは減少した食品とすることにより、例えば、小麦粉とスパイス及び水分とを組み合わせた、天ぷら、から揚げ、とんかつ等の揚げ物類のためのバッターとして用いると、得られた揚げ物類の衣にサクサクとした食感を与えるため好ましい。また、例えば、小麦粉、糖類、油脂類などを適宜組み合わせて製造するケーキ類やワッフル、ホットケーキ、パンケーキ等では、粘り気のないソフトな食感となるため好ましい。
【実施例0017】
<製造例1 小麦粉の製造>
(1) 100質量部の小麦穀粒を羽根つきポット型ミキサーに投入し、ポットの回転速度を30rpmにして混合した。
(2) 水温90℃の液体の水5質量部をミキサーに投入し、8分間混合した。
(3) 更に、小麦穀粒の品温が環境温度(室温:25℃)になるまで混合した。なお、小麦穀粒の品温が環境温度に到達したか否かは、混合中の小麦穀粒の一部を直径10cmのシャーレに採取して均し、直ちにサーモグラフを用いて小麦穀粒の上面視表面温度の平均温度を測定することにより確認した。得られた小麦穀粒の水分含量を後述する水分分析方法で測定したところ、15.0質量%であった。
(4) 得られた小麦穀粒をテストミルに供し、60%粉を採取することにより小麦粉Aを得た。
【0018】
<製造例2 小麦粉の製造>
(1) 100質量部の小麦穀粒を羽根つきポット型ミキサーに投入し、ポットの回転速度を30rpmにして撹拌した。
(2)水温80℃の液体の水3.4質量部をミキサーに投入し、8分間混合した。
(3) 更に、小麦穀粒の品温が環境温度(室温:25℃)になるまで混合した。なお、小麦穀粒の品温は、混合中の小麦穀粒の一部を直径10cmのシャーレに採取して均し、直ちにサーモグラフを用いて小麦穀粒の上面視表面温度の平均温度を測定することにより求めた。得られた小麦穀粒の水分含量を測定したところ、13.0質量%であった。
(4) 小麦穀粒の水分値を調整するため、環境温度(25℃)の液体の水2.5質量部をミキサーに投入し、8分間混合した。得られた小麦穀粒の水分含量を後述する水分分析方法で測定したところ、15.0質量%であった。
(5) 得られた小麦穀粒をテストミルに供し、60%粉を採取することにより小麦粉Bを得た。
【0019】
水分分析方法
各小麦試料中の水分量(g/100g)を以下のとおり分析した。
小麦粒約5gをハンドミルで粉砕し、秤量缶に投入して秤量した。135℃に設定した乾燥機で2時間乾燥した。環境温度下で風を当てながら6分間放冷した後、すぐに秤量した。乾燥前後の秤量値から小麦100gあたりの水分量を算出した。
【0020】
<評価例1 天ぷらの官能評価>
小麦粉100質量部と冷水150質量部を混合し、天ぷら用バッターを調製した。伸ばし海老にバッターを付け170℃の大豆菜種油中で2分間油ちょうして天ぷらを得た。天ぷらの衣の食感について、10名の熟練パネラーにより下記評価表に従って評価し平均点と標準偏差(SD)を求めた。
【0021】
評価基準表1
【0022】
<評価例2 スポンジの官能評価>
(1)全卵100質量部、上白糖100質量部をミキサー(品川工業所社製、商品名「5DM」)に投入して低速2分間、高速7分間ミキシングした後、水40質量部を加えて高速で比重0.20になるまでミキシングした。なお、比重は100ml当たりの重量を測定して求めた。
(2)ミキサーに小麦粉100質量部を加えて、低速20秒間ミキシングし、一度かきおとしをした後、さらに低速で15秒間ミキシングしてスポンジケーキ生地を得た。
(3)この生地をスポンジケース(直径180mm、高さ60mm)に、350g流し入れた。
(4)このケースに入れた生地を温度175℃に予熱したロータリーオーブン(三幸機械社製SR-1P)に投入し、175℃で32分焼成してスポンジケーキを得た。
(5)得られたスポンジの食感と内層の状態について、10名の熟練パネラーにより下記評価表に従って評価し平均点と標準偏差(SD)を求めた。
【0023】
評価基準表2
【0024】
<試験例1 水温の検討:天ぷら>
製造例1の工程(2)において、表1記載の水温の水を用いた以外は製造例1に従って小麦粉を製造し、評価例1に沿って天ぷらの評価をした。なお、試験番号6は、製造例1の工程(2)の後に一部を別のポットミキサーに移し、送風機で風冷しながら混合した小麦穀粒から得た小麦粉(60%粉)である。
その結果、水温60℃以上の水を用いた試験番号3~5場合には、天ぷらのサクサク感と口溶けが顕著に改善した。サクサク感は水温90℃で最も良好になり、次いで80℃、60℃となった。また、口どけは水温60℃、80℃の場合が最もよく、次いで90℃となった。試験番号6では、熱処理が短くなったために試験番号5よりも幾分サクサク感と口どけが劣ったが、試験番号1よりも良好であった。
【0025】
表1
【0026】
<試験例2 水温の検討:スポンジ>
製造例1の工程(2)において、表2記載の水温の水を用いた以外は製造例1に従って小麦粉を製造し、評価例2に沿ってスポンジの評価をした。なお、試験番号12は、製造例1の工程(2)の後に一部を別のポットミキサーに移し、送風機で風冷しながら混合した小麦穀粒から得た小麦粉(60%粉)である。
その結果、水温60℃以上の試験番号3~5において、食感と内層の状態が良好に改善した。ソフトさは80℃、90℃で顕著に良好になり、口どけは水温90℃、80℃で顕著に良好になり、80℃で改良効果は頭打ちとなった内層の状態は、水温80℃、90℃で顕著にキメがやや細かくなり、その改良効果は80℃で頭打ちとなった。試験番号12では、熱処理が短くなったために試験番号11よりも幾分ソフトさ、口どけ及び内層の状態が劣ったが、試験番号7よりも良好であった。
【0027】
表2
【0028】
<試験例3 加水量の検討:天ぷら>
製造例2の工程(2)において、表3記載の量の水(水温80℃)を用いた以外は製造例2に従って小麦粉を製造し、評価例1に沿って天ぷらの評価をした。なお、製造例2の工程(4)における加水量を調節して、何れも最終水分含量15質量%の小麦粉穀粒を得た。
その結果、加水量を6質量部とした場合がサクサク感、口どけともに最も良好であり、順に5質量部、4質量部、3質量部と改善効果は小さくなった。
【0029】
表3
【0030】
<試験例4 加水量の検討:スポンジ>
製造例2の工程(2)において、表4記載の量の水(水温80℃)を用いた以外は製造例2に従って小麦粉を製造し、評価例2に沿ってスポンジの評価をした。なお、製造例2の工程(4)における加水量を調節して、最終的に水分含量15質量%の小麦粉穀粒を得た。
その結果、加水量を6質量部とした場合がソフトさ、口どけ、内層の状態すべてで最も良好であり、順に5質量部、4質量部、3質量部と改善効果は小さくなった。
【0031】
表4