IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノントッキ株式会社の特許一覧

特開2024-80105蒸発源ユニット、成膜装置及び成膜方法
<>
  • 特開-蒸発源ユニット、成膜装置及び成膜方法 図1
  • 特開-蒸発源ユニット、成膜装置及び成膜方法 図2
  • 特開-蒸発源ユニット、成膜装置及び成膜方法 図3
  • 特開-蒸発源ユニット、成膜装置及び成膜方法 図4
  • 特開-蒸発源ユニット、成膜装置及び成膜方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080105
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】蒸発源ユニット、成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20240606BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240606BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20240606BHJP
   H01L 21/363 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C23C14/24 C
H10K50/10
H10K71/16
H01L21/363
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193009
(22)【出願日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 美悠
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5F103
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG28
3K107GG32
3K107GG33
3K107GG34
3K107GG43
3K107GG56
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA04
4K029BA21
4K029BB03
4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029DA03
4K029DA12
4K029DB03
4K029DB14
4K029DB18
4K029EA02
4K029HA01
4K029JA01
4K029JA06
4K029KA01
4K029KA09
5F103AA01
5F103BB12
5F103BB36
5F103BB53
5F103DD30
5F103GG03
5F103LL01
5F103RR10
(57)【要約】
【課題】基板に形成される膜の膜厚の均一化に有利な技術を提供する。
【解決手段】移動方向に相対的に移動する基板に対して成膜を行う蒸発源ユニットであって、前記移動方向に交差する交差方向に沿って並んで配置され、前記基板に付着させる第1蒸着物質をそれぞれが放出する複数の第1蒸発源を含む第1蒸発源群と、前記交差方向に沿って並んで配置され、前記基板に付着させる第2蒸着物質をそれぞれが放出する複数の第2蒸発源を含み、前記移動方向において前記第1蒸発源群よりも外側に配置された第2蒸発源群と、前記第1蒸発源から放出される前記第1蒸着物質の状態を監視する第1水晶モニタと、前記第2蒸発源から放出される前記第2蒸着物質の状態を監視する第2水晶モニタと、を有し、前記第2蒸発源から放出されて前記第2水晶モニタに付着する前記第2蒸着物質の付着量は、前記第1蒸発源から放出されて前記第1水晶モニタに付着する前記第1蒸着物質の付着量よりも小さい、ことを特徴とする蒸発源ユニットを提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動方向に相対的に移動する基板に対して成膜を行う蒸発源ユニットであって、
前記移動方向に交差する交差方向に沿って並んで配置され、前記基板に付着させる第1蒸着物質をそれぞれが放出する複数の第1蒸発源を含む第1蒸発源群と、
前記交差方向に沿って並んで配置され、前記基板に付着させる第2蒸着物質をそれぞれが放出する複数の第2蒸発源を含み、前記移動方向において前記第1蒸発源群よりも外側に配置された第2蒸発源群と、
前記第1蒸発源から放出される前記第1蒸着物質の状態を監視する第1水晶モニタと、
前記第2蒸発源から放出される前記第2蒸着物質の状態を監視する第2水晶モニタと、
を有し、
前記第2蒸発源から放出されて前記第2水晶モニタに付着する前記第2蒸着物質の付着量は、前記第1蒸発源から放出されて前記第1水晶モニタに付着する前記第1蒸着物質の付着量よりも小さい、ことを特徴とする蒸発源ユニット。
【請求項2】
前記第2蒸発源の成膜レートは、前記第1蒸発源の成膜レートよりも低い、ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発源ユニット。
【請求項3】
前記第2蒸発源から放出されて前記第2水晶モニタに付着する前記第2蒸着物質の膜密度は、前記第1蒸発源から放出されて前記第1水晶モニタに付着する前記第1蒸着物質の膜密度よりも低い、ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発源ユニット。
【請求項4】
前記付着量は、成膜レート[Å/s]と膜密度[g/cm]との積で定義される、ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発源ユニット。
【請求項5】
前記第1蒸着物質と前記第2蒸着物質とを同時に前記基板に付着させて前記第1蒸着物質と前記第2蒸着物質との混合膜を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発源ユニット。
【請求項6】
前記第1水晶モニタと前記第2水晶モニタとは、前記移動方向に交差する交差方向に沿って並んで配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発源ユニット。
【請求項7】
前記第1水晶モニタと前記第2水晶モニタとは、前記移動方向において前記第2蒸発源群よりも外側に配置されている、ことを特徴とする請求項6に記載の蒸発源ユニット。
【請求項8】
前記第1水晶モニタは、当該第1水晶モニタと、前記第1蒸発源とを結ぶ線が前記移動方向に交差するように配置され、
前記第2水晶モニタは、当該第2水晶モニタと、前記第2蒸発源とを結ぶ線が前記移動方向に平行になるように配置されている、ことを特徴とする請求項7に記載の蒸発源ユニット。
【請求項9】
前記移動方向に交差する交差方向に沿って並んで配置され、前記基板に付着させる第3蒸着物質をそれぞれが放出する複数の第3蒸発源を含み、前記移動方向において、前記第1蒸発源群よりも外側、且つ、前記第2蒸発源群とは反対側に配置された第3蒸発源群を更に有し、
前記第3蒸着物質を、前記第1蒸着物質及び前記第2蒸着物質から独立して前記基板に付着させて前記第3蒸着物質の膜を形成する、ことを特徴とする請求項6に記載の蒸発源ユニット。
【請求項10】
前記第3蒸発源から放出される前記第3蒸着物質の状態を監視する第3水晶モニタを更に有し、
前記第3水晶モニタは、前記移動方向において前記第3蒸発源群よりも外側に配置されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の蒸発源ユニット。
【請求項11】
前記第3水晶モニタは、当該第3水晶モニタと、前記第3蒸発源とを結ぶ線が前記移動方向に平行になるように配置されている、ことを特徴とする請求項10に記載の蒸発源ユニット。
【請求項12】
前記複数の第1蒸発源及び前記複数の第2蒸発源のそれぞれにおいて、前記交差方向に隣接する2つの蒸発源の間の距離は互いに異なる、ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発源ユニット。
【請求項13】
移動方向に相対的に移動する基板に対して成膜を行う蒸発源ユニットであって、
前記移動方向に交差する交差方向に沿って並んで配置され、前記基板に付着させる第1蒸着物質をそれぞれが放出する複数の第1蒸発源を含む第1蒸発源群と、
前記交差方向に沿って並んで配置され、前記基板に付着させる第2蒸着物質をそれぞれが放出する複数の第2蒸発源を含む第2蒸発源群と、
前記第1蒸発源から放出される前記第1蒸着物質の状態を監視する第1水晶モニタと、前記第2蒸発源から放出される前記第2蒸着物質の状態を監視する第2水晶モニタと、を含む監視手段と、
を有し、
前記第2蒸発源から放出されて前記第2水晶モニタに付着する前記第2蒸着物質の付着量が、前記第1蒸発源から放出されて前記第1水晶モニタに付着する前記第1蒸着物質の付着量よりも小さくなるように、前記第2蒸発源群は、前記第1蒸発源群よりも前記監視手段の近くに配置されている、ことを特徴とする蒸発源ユニット。
【請求項14】
前記第1水晶モニタと前記第2水晶モニタとは、前記移動方向に交差する交差方向に沿って並んで配置されている、ことを特徴とする請求項13に記載の蒸発源ユニット。
【請求項15】
前記第2蒸発源群は、前記移動方向において前記第1蒸発源群よりも外側に配置されている、ことを特徴とする請求項13に記載の蒸発源ユニット。
【請求項16】
前記監視手段は、前記移動方向において前記第2蒸発源群よりも外側に配置されている、ことを特徴とする請求項15に記載の蒸発源ユニット。
【請求項17】
請求項1乃至16のうちいずれか1項に記載の蒸発源ユニットを有する成膜装置。
【請求項18】
請求項17に記載の成膜装置を用いて基板に成膜する、
ことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発源ユニット、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイなどの製造においては、蒸発源から放出された蒸着物質が基板に付着することで基板に膜(薄膜)が形成される。特許文献1には、複数の蒸着源を用いて成膜を行う際に、蒸発源から蒸発される蒸着材料の状態、例えば、蒸発レートや成膜レートをモニタ(監視)するセンサ(成膜レートモニタ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-218623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の蒸発源を用いて成膜を行う場合、基本的には、各蒸発源に対して成膜レートモニタなどを含む監視装置がそれぞれ設けられるが、監視装置と監視対象の蒸発源との位置関係によって、監視装置の監視精度が低下する可能性がある。このような場合、成膜レートの制御が困難となり、基板に形成される膜の膜厚の均一性を低下させる虞がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、基板に形成される膜の膜厚の均一化に有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての蒸発源ユニットは、移動方向に相対的に移動する基板に対して成膜を行う蒸発源ユニットであって、前記移動方向に交差する交差方向に沿って並んで配置され、前記基板に付着させる第1蒸着物質をそれぞれが放出する複数の第1蒸発源を含む第1蒸発源群と、前記交差方向に沿って並んで配置され、前記基板に付着させる第2蒸着物質をそれぞれが放出する複数の第2蒸発源を含み、前記移動方向において前記第1蒸発源群よりも外側に配置された第2蒸発源群と、前記第1蒸発源から放出される前記第1蒸着物質の状態を監視する第1水晶モニタと、前記第2蒸発源から放出される前記第2蒸着物質の状態を監視する第2水晶モニタと、を有し、前記第2蒸発源から放出されて前記第2水晶モニタに付着する前記第2蒸着物質の付着量は、前記第1蒸発源から放出されて前記第1水晶モニタに付着する前記第1蒸着物質の付着量よりも小さい、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、基板に形成される膜の膜厚の均一化に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一側面としての成膜装置を有する成膜システムの構成を模式的に示す平面図である。
図2】本発明の一側面としての成膜装置の構成を模式的に示す正面図である。
図3】蒸発源ユニットの構成を説明するための図である。
図4】蒸発源ユニットの構成を説明するための図である。
図5】蒸発源の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一側面としての成膜装置1を有する成膜システムSYの構成を模式的に示す平面図である。成膜システムSYは、搬入される基板に対して成膜処理を行い、成膜処理が行われた基板を搬出するシステムである。例えば、複数の成膜システムSYを並べて設置することで、電子デバイスの製造ラインが構成される。電子デバイスとしては、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルが挙げられる。
【0012】
成膜システムSYは、図1に示すように、成膜装置1と、搬入室60と、基板搬送室62と、搬出室64と、マスクストック室66と、を有する。なお、成膜装置1の構成については、後で詳細に説明する。
【0013】
搬入室60には、成膜装置1において成膜処理が行われる基板100が成膜装置1の外部から搬入される。基板搬送室62には、基板100を搬送する搬送ロボット620が設けられる。搬送ロボット620は、搬入室60に搬入された基板100を成膜装置1に搬送する。また、搬送ロボット620は、成膜装置1において成膜処理が行われた基板100を搬出室64に搬送する。搬送ロボット620によって搬出室64に搬送された基板100は、搬出室64から成膜システムSYの外部に搬出される。なお、複数の成膜システムSYが並べて設置されている場合には、上流側の成膜システムSYの搬出室64が下流側の成膜システムSYの基板搬送室62を兼ねていてもよい。マスクストック室66には、成膜装置1における成膜処理に用いられるマスク101がストックされる。マスクストック室66にストックされているマスク101は、搬送ロボット620によって成膜装置1に搬送される。
【0014】
成膜システムSYを構成する成膜装置1及び各室の内部は、真空ポンプなどの排気機構によって真空状態に維持される。なお、本実施形態において、「真空状態」とは、大気圧よりも低い圧力の気体で満たされた状態、即ち、減圧状態を意味する。
【0015】
図2は、本発明の一側面としての成膜装置1の構成を模式的に示す正面図である。なお、以下の図において、矢印X及びYは、互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは、垂直方向(鉛直方向)を示す。
【0016】
成膜装置1は、基板に対して蒸発源を移動させながら、基板に蒸発源から放出された蒸着物質を付着(蒸着)させることで、基板に膜(薄膜)を形成する成膜処理を行う装置である。成膜装置1は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造装置として用いられ、上述したように、複数台を並べて設置することで、その製造ラインを構成する。成膜装置1で成膜処理が行われる基板の材質としては、ガラス、樹脂、金属などを適宜選択可能であり、特に、ガラス上にポリイミドなどの樹脂層が形成されたものが好適である。蒸着物質としては、有機材料や無機材料(例えば、金属、金属酸化物)などが用いられる。なお、成膜装置1は、有機EL表示装置の表示パネルの製造に限定されず、表示装置(フラットパネルディスプレイ)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)などの電子デバイス、光学部材などの製造装置としても適用可能である。また、本実施形態において、成膜装置1は、G8Hサイズのガラス基板(1100mm×2500mm、1250mm×2200mm)に対して成膜処理を行うが、成膜装置1が成膜処理を行う基板のサイズは適宜設定可能である。
【0017】
成膜装置1は、図2に示すように、蒸発源ユニット10と、複数の成膜ステージ30A及び30Bと、を有する。蒸発源ユニット10及び成膜ステージ30A及び30Bは、成膜処理時(使用時)に真空状態に維持されるチャンバ45の内部に配置される。本実施形態では、複数の成膜ステージ30A及び30Bは、チャンバ45の内部の上部においてX方向に離間して設けられ、その下方には、蒸発源ユニット10が設けられている。また、チャンバ45には、基板100を搬入及び搬出するための複数の搬入出口(不図示)が設けられている。
【0018】
成膜装置1は、蒸発源ユニット10に電力を供給する電源41と、蒸発源ユニット10及び電源41を電気的に接続する電気接続部42と、を更に有する。電気接続部42は、水平方向に移動可能なアームに内蔵された電気配線を含み、X方向に移動可能な蒸発源ユニット10に対して電源41からの電力を供給することができるように構成されている。
【0019】
成膜装置1は、成膜装置1の各構成要素(の動作)を制御する制御部43を更に有する。制御部43は、例えば、CPUに代表されるプロセッサ、RAM、ROMなどのメモリ及び各種インタフェースを含むコンピュータ(情報処理装置)で構成される。制御部43は、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することで、成膜装置1における各種の動作や処理を実現する。なお、制御部43に代えて、成膜システムSYを統括的に制御するホストコンピュータなどで成膜装置1の各構成要素を直接制御することも可能である。
【0020】
成膜ステージ30Aは、基板100Aに対して成膜処理を行うためのステージである。成膜ステージ30Aは、基板100A及びマスク101Aを支持するとともに、基板100Aとマスク101Aとの相対的な位置を調整する。成膜ステージ30Aは、基板支持部32Aと、マスク支持部34Aと、支柱35Aと、アライメント機構36Aと、を含む。
【0021】
基板支持部32Aは、基板100Aを支持する。基板支持部32Aは、本実施形態では、基板100Aの短辺がX方向に沿い、基板100Aの長辺がY方向に沿うように、基板100Aを支持する。基板支持部32Aは、基板100Aの縁を、基板100Aの下側から支持する。但し、基板支持部32Aは、基板100Aの縁を挟持することで基板100Aを支持してもよいし、静電チャック又は粘着チャックなどで基板100Aを吸着することで基板100Aを支持してもよい。基板支持部32Aは、基板搬送室62に設けられた搬送ロボット620を介して、成膜システムSYに搬入された基板100Aを受け取る。また、基板支持部32Aには、基板支持部32Aを昇降可能にする昇降機構(不図示)が設けられ、搬送ロボット620から受け取った基板100Aをマスク支持部34Aに支持されたマスク101Aの上に重ね合わせることができる。かかる昇降機構には、ボールねじ機構などの当業界で周知の技術を適用することが可能である。
【0022】
マスク支持部34Aは、マスク101Aを支持する。本実施形態では、マスク支持部34Aには、開口(不図示)が設けられ、かかる開口を介して、マスク101Aと重ね合わされた基板100Aの成膜面(膜を形成する面)に対して蒸着物質が付着(飛散)する。マスク支持部34Aは、支柱35Aを介して、チャンバ45に支持される。
【0023】
アライメント機構36Aは、基板100Aとマスク101Aとの相対的な位置を調整するアライメント(位置合わせ)を行う。アライメント機構36Aは、基板支持部32Aとマスク支持部34Aとの水平方向における相対位置を調整することで、基板支持部32Aに支持された基板100Aとマスク支持部34Aに支持されたマスク101Aとのアライメントを行う。基板100Aとマスク101Aとのアライメントには、当業界で周知の技術を適用することが可能である。例えば、まず、アライメント機構36Aは、基板100A及びマスク101Aのそれぞれに形成されたアライメント用のマークをカメラ(不図示)で検知する。そして、アライメント機構36Aは、これらのマークを検知することで得られる基板100Aの位置とマスク101Aの位置との関係が、所定の条件を満たすように、基板100Aとマスク101Aとの位置関係を調整する。具体的には、基板100Aに形成されたマークと、マスク101Aに形成されたマークとを重ね合わせ、それらのマークのずれ量をカメラで検知し、所定の条件を満たすように(許容範囲に収まるように)、基板100Aの位置を調整する。
【0024】
アライメント機構36Aによって基板100Aとマスク101Aとのアライメントが行われると、基板支持部32Aは、支持している基板100Aをマスク101Aの上に重ね合わせる。基板100Aとマスク101Aとが重ね合わせられた状態において、基板100Aに対して、蒸発源ユニット10による成膜処理が行われる。
【0025】
成膜ステージ30Bは、成膜ステージ30Aと同様な構成を含む。成膜ステージ30Bは、基板支持部32Bと、マスク支持部34Bと、支柱35Bと、アライメント機構36Bと、を含む。基板支持部32B、マスク支持部34B、支柱35B及びアライメント機構36Bは、それぞれ、基板支持部32A、マスク支持部34A、支柱35A及びアライメント機構36Aに対応する。
【0026】
本実施形態において、成膜装置1は、複数の成膜ステージ30A及び30Bを有し、所謂、デュアルステージの成膜装置として具現化されている。従って、成膜ステージ30Aにおいて、基板100Aに対する成膜処理(蒸着など)が行われる間に、成膜ステージ30Bにおいて、基板100Bとマスク101Bとのアライメントを行うことが可能であり、成膜処理を効率的に行うことができる。
【0027】
次いで、図3及び図4を参照して、蒸発源ユニット10について説明する。ここでは、蒸発源ユニット10を構成する各要素の概要を説明し、蒸発源ユニット10の配置構成や動作例については後で詳細に説明する。図3は、蒸発源ユニット10の構成を説明するための図であって、蒸発源ユニット10を横方向(Y方向)から模式的に示す図である。図4は、蒸発源ユニット10の構成を説明するための図であって、蒸発源ユニット10を上方向(Z方向)から模式的に示す図である。
【0028】
蒸発源ユニット10は、本実施形態では、X方向に移動しながら蒸着物質を放出することで、基板100に対して成膜処理を行うためのユニットである。蒸発源ユニット10は、複数の蒸発源11a~11rと、複数の監視装置12a~12rと、シャッタ161~163と、移動部20と、を含む。
【0029】
図5は、蒸発源11a~11rの構成を模式的に示す断面図である。複数の蒸発源11a~11rは、それぞれ、蒸着物質を放出する。複数の蒸発源11a~11rのそれぞれは、図5に示すように、材料容器111と、加熱部112と、を含む。
【0030】
材料容器111は、その内部に、基板100に付着させる蒸着物質を収容するるつぼである。材料容器111の上部には、材料容器111の内部で蒸発した蒸着物質を、材料容器111の外部に放出するための放出部1111が設けられている。放出部1111は、本実施形態では、材料容器111の上面に形成された開口(放出口)として構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、材料容器111を筒状の部材などで構成することで、放出部1111の機能を実現してもよい。また、材料容器111の上面には、放出部1111として、複数の開口が設けられていてもよい。
【0031】
加熱部112は、材料容器111に収容された蒸着物質を加熱して蒸発させる。加熱部112は、例えば、材料容器111の全体を覆うように設けられることが好ましい。加熱部112は、本実施形態では、電熱線を用いたシーズヒータとして具現化され、図5には、シーズヒータの電熱線を材料容器111の周囲に巻き付けたときの断面が示されている。
【0032】
加熱部112による蒸着物質の加熱は、制御部43によって制御される。本実施形態において、複数の蒸発源11a~11rは、それぞれが独立して、材料容器111及び加熱部112を含んでいる。従って、制御部43は、複数の蒸発源11a~11rによる蒸着物質の加熱(蒸発)を、それぞれ独立に制御することが可能である。
【0033】
図3及び図4に戻って、複数の蒸発源11a~11rは、蒸発源ユニット10の移動方向(X方向)に沿って互いに離間した3つの蒸発源群17A~17Cに大別される。蒸発源群17Aは、蒸発源ユニット10の移動方向に交差する交差方向(Y方向)に沿って配置された複数の蒸発源11a~11fを含む。蒸発源群17Bは、蒸発源ユニット10の移動方向に交差する交差方向に沿って配置された複数の蒸発源11g~11lを含む。蒸発源群17Cは、蒸発源ユニット10の移動方向に交差する交差方向に沿って配置された複数の蒸発源11m~11rを含む。
【0034】
3つの蒸発源群17A~17Cは、本実施形態では、蒸発源ユニット10の移動方向において、蒸発源群17A、蒸発源群17B、蒸発源群17Cの順に並んで配置されている。従って、蒸発源群17A~17Cのそれぞれに含まれる蒸発源に着目すると、例えば、蒸発源11d、蒸発源11j、蒸発源11pは、蒸発源ユニット10の移動方向に沿って、この順に並んで配置されている。また、3つの蒸発源群17A~17Cは、互いに異なる蒸着物質を放出することが可能である。
【0035】
複数の監視装置12a~12rは、複数の蒸発源11a~11rに対応して設けられている。複数の監視装置12a~12rのそれぞれは、複数の蒸発源11a~11rのそれぞれから放出される蒸着物質の状態(放出状態)、例えば、蒸着物質のレート(蒸発レート(成膜レート))を監視する。監視装置12a~12rは、図3に示すように、ケース121と、ケース121の内部に厚膜センサとして設けられた水晶振動子123(水晶モニタ)と、を含む。水晶振動子123には、蒸発源11から放出され、ケース121に設けられた導入部122を介してケース121の内部に導入された蒸着物質が付着する。水晶振動子123の振動数は、水晶振動子123に付着する蒸着物質の量(付着量)に応じて変動する。従って、制御部43は、水晶振動子123の振動数に基づいて、基板100に付着(蒸着)した蒸着物質の膜厚を算出することができる。水晶振動子123に付着する蒸着物質の単位時間あたりの量は、蒸発源11から放出される蒸着物質の量と相関を有するため、監視装置12a~12rは、結果的に、複数の蒸発源11から放出される蒸着物質の状態を監視することができる。
【0036】
本実施形態では、監視装置12a~12rのそれぞれは、蒸発源11a~11rから放出される蒸着物質の状態を独立に監視する。また、制御部43は、監視装置12a~12rの監視結果に基づいて、蒸発源11a~11r(の各加熱部の出力)を独立に制御する。換言すれば、制御部43は、監視装置12a~12rのそれぞれで監視される蒸着物質のレートに基づいて、蒸発源11a~11rのそれぞれの成膜レートを制御する。
【0037】
制限部14は、複数の蒸発源11a~11rから放出される蒸着物質の放出範囲を制限する。制限部14は、本実施形態では、複数の板部材141~144を含む。板部材141及び142は、複数の蒸発源11a~11fから放出される蒸着物質のX方向における放出範囲を制限する。板部材142及び143は、複数の蒸発源11g~11lから放出される蒸着物質のX方向における放出範囲を制限する。板部材143及び144は、複数の蒸発源11g~11rから放出される蒸着物質のX方向における放出範囲を制限する。
【0038】
板部材141には、監視装置12a~12lに導入される(飛散する)蒸着物質が通過する筒状部材141a~141lが設けられる。板部材142には、監視装置12g~12lに導入される蒸着物質が通過する筒状部材142g~142lが設けられる。板部材144には、監視装置12m~12rに導入される蒸着物質が通過する筒状部材144m~144lが設けられる。筒状部材141a~141l、142g~142l、144m~144lは、隣接する蒸発源から放出される蒸着物質が監視対象外の監視装置に入り込むこと(所謂、クロストーク)による監視装置の監視精度の低下の抑制に寄与する。
【0039】
シャッタ161~163は、蒸発源群17A~17Cから放出される蒸着物質の基板100への飛散を制御する。シャッタ161~163は、蒸発源群17A~17Cから放出される蒸着物質の基板100への飛散を遮断する遮断位置と、かかる蒸着物質の基板100への飛散を許容する許容位置との間で変位可能に設けられている。例えば、シャッタ161は、蒸発源群17Aに含まれる蒸発源11a~11fから放出される蒸着物質の基板100への飛散を遮断する遮断位置と、かかる蒸着物質の基板100への飛散を許容する許容位置との間で変位可能に設けられている。シャッタ162及び163についても、シャッタ161と同様に、遮断位置と許容位置との間で変位可能に設けられている。
【0040】
シャッタ161は、蒸発源ユニット10の移動方向に交差する交差方向(Y方向)を軸方向とする回動軸1611と、回動軸1611に設けられた遮蔽部材1612と、を含む。シャッタ161は、遮蔽部材1612が回動軸1611を中心として回動して開閉動作を行うことで、遮断位置と許容位置との間で変位する。同様に、シャッタ162は、回動軸1621と、遮蔽部材1622と、を含み、シャッタ163は、回動軸1631と、遮蔽部材1632と、を含む。
【0041】
シャッタ161の回動軸1611は、蒸発源11a~11fの放出部1111に対して、蒸発源ユニット10の移動方向(X方向)にずれて配置される。同様に、シャッタ162の回動軸1621は、蒸発源11g~11lの放出部1111に対して蒸発源ユニット10の移動方向にずれて配置される。また、シャッタ163の回動軸1631は、蒸発源11p~11rの放出部1111に対して蒸発源ユニット10の移動方向にずれて配置される。これにより、シャッタ161~163が許容位置に位置したときに、シャッタ161~163と蒸発源11a~11rの放出範囲との干渉を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、シャッタ161の回動軸1611の高さとシャッタ162の回動軸1621の高さとが異なる。これにより、シャッタ161、162を同時に開閉させる際に、シャッタ161とシャッタ162との干渉を抑制するとともに、シャッタ161、162をX方向にコンパクトに配置することができる。
【0043】
また、本実施形態では、蒸発源群17AよりもX方向+側に配置される蒸発源群17Bの上方を覆うシャッタ162の回動軸1621が蒸発源11g~11lの放出部1111に対してX方向+側にずれて配置される。一方、蒸発源群17BよりもX方向-側に配置される蒸発源群17Aの上方を覆うシャッタ161の回動軸1611が蒸発源11a~11fの放出部1111に対してX方向-側にずれて配置されている。従って、シャッタ161とシャッタ162とは、両開きの扉のような構成となる。これにより、蒸発源群17Aと蒸発源群17Bとで共蒸着を行う場合に、シャッタ161が蒸発源群17Bの放出範囲と干渉したり、シャッタ162が蒸発源群17Aの放出範囲と干渉したりすることを抑制することができる。
【0044】
移動部20は、蒸発源ユニット10、具体的には、複数の蒸発源11a~11r及び複数の監視装置12a~12rを移動方向(X方向)に移動させる。本実施形態では、移動部20によって、蒸発源ユニット10を基板100に対して移動させながら、蒸発源ユニット10から放出される蒸着物質を基板100に付着(蒸着)させることで基板100に蒸着物質の膜(層)を形成する成膜処理を行う。
【0045】
移動部20は、蒸発源ユニット10に設けられる構成要素として、モータ(不図示)と、モータの駆動により回転する軸部材に設けられたピニオン202と、ガイド部材203と、を含む。また、移動部20は、ピニオン202に係合するラック(不図示)と、ガイド部材203が摺動するガイドレール206と、を更に含む。蒸発源ユニット10は、モータの駆動により回転するピニオン202がラックと係合することで、ガイドレール206に沿ってX方向に移動する。
【0046】
このように構成された成膜装置1において、蒸発源群17A(蒸発源11a~11f)、蒸発源群17B(蒸発源11g~11l)及び蒸発源群17C(蒸発源11m~11r)のそれぞれが放出(収容)する蒸着物質について考える。
【0047】
従来技術では、蒸発源群17A~17Cのそれぞれから放出される蒸着物質に特別な規定(制限)はなく、蒸発源群17A~17Cのそれぞれには任意の蒸着物質が収容されている。但し、蒸発源群17Aと蒸発源群17Cとの間(中央列)に配置された蒸発源群17Bに、監視装置が含む水晶振動子への付着量(重量)が少ない蒸着物質を収容すると、蒸発源群17Bから放出される蒸着物質のレートを高精度に制御することが困難となる。これには、以下に説明するように、主に、2つの理由が挙げられる。
【0048】
1つ目の理由は、蒸発源群(蒸発源)から放出される蒸着物質のレートの制御(精度)は、水晶振動子に付着する蒸着物質の付着量に依存しているからである。中央列の蒸発源群17Bと監視装置12g~12lとの間の物理的な距離は、蒸発源群17Aと監視装置12a~12fとの間の物理的な距離や蒸発源群17Cと監視装置12m~12rとの間の物理的な距離よりも長くなる。このような蒸発源群17Bに水晶振動子への付着量が少ない蒸着物質が収容されていると、監視装置12g~12lが含む水晶振動子123への蒸着物質の付着量が著しく少なくなり、監視装置12g~12lによる監視精度が低下してしまう。
【0049】
2つ目の理由は、蒸発源群17Bに隣接する蒸発源群17Aや蒸発源群17Cから放出される蒸着物質が、監視対象外である監視装置12g~12lに入り込むこと(クロストーク)によって、監視装置12g~12lによる監視精度が低下してしまうからである。
【0050】
そこで、本実施形態では、蒸発源群17A~17Cの配置関係を考慮して、蒸発源群17A~17Cのそれぞれが放出(収容)する蒸着物質を規定することで、水晶振動子への付着量が少ない蒸着物質に対する監視装置による監視精度の低下を抑制する。
【0051】
例えば、蒸発源ユニット10の移動方向(X方向)において、中央列に配置された蒸発源群17B(第1蒸発源群)、及び、蒸発源群17Bよりも外側の外側列に配置された蒸発源群17A(第2蒸発源群)に着目する。そして、蒸発源群17A(蒸発源11a~11f)、及び、蒸発源群17B(蒸発源11g~11l)のそれぞれに、蒸発源から放出されて水晶振動子に付着する付着量が互いに異なる第1蒸着物質及び第2蒸着物質を収容する場合を考える。なお、蒸発源から放出されて水晶振動子に付着する第1蒸着物質の付着量を第1付着量とすると、蒸発源から放出されて水晶振動子に付着する第2蒸着物質の付着量は、第1付着量よりも小さい第2付着量であるものとする。このように、第2蒸着物質は、第1蒸着物質と比較して、水晶振動子への付着量が少ない蒸着物質である。
【0052】
この場合、本実施形態では、中央列に配置された蒸発源群17Bに含まれる蒸発源11g~11l(第1蒸発源)に第1蒸着物質を収容し、外側列に配置された蒸発源群17Aに含まれる蒸発源11a~11f(第2蒸発源)に第2蒸着物質を収容する。従って、監視装置12a~12fの水晶振動子123に付着する第2蒸着物質の付着量は、監視装置12g~12lの水晶振動子123に付着する第1蒸着物質の付着量よりも小さくなる。このように、本実施形態では、水晶振動子123への付着量が少ない第2蒸着物質を収容する蒸発源11a~11fを含む蒸発源群17Aを外側列に配置する。換言すれば、監視装置12a~12fの水晶振動子に付着する蒸着物質の付着量が、監視装置12g~12lの水晶振動子に付着する蒸着物質の付着量よりも小さくなるように、蒸発源群17Aを蒸発源群17Bよりも監視装置12a~12lの近くに配置する。なお、図4に示すように、監視装置12a~12fと、監視装置12g~12lとは、蒸発源ユニット10の移動方向(X方向)に交差する交差方向(Y方向)に沿って並んで配置されている。また、監視装置12a~12fと、監視装置12g~12lとは、蒸発源ユニット10の移動方向において、蒸発源群17Aよりも外側に配置されている。
【0053】
上述したように、蒸発源群17A及び17Bの配置関係を考慮して、蒸発源群17A及び17Bのそれぞれが放出(収容)する蒸着物質を規定することで、蒸発源群17Aから放出される第2蒸着物質のレートを高精度に制御することが可能となる。これは、水晶振動子への付着量が少ない蒸着物質を収容する蒸発源群17Aと監視装置12a~12fとの間の物理的な距離が短く、水晶振動子への蒸着物質の付着量が著しく少なくなることを抑制しているからである。また、蒸発源群17Aに隣接する蒸発源群17Bから放出される蒸着物質が、監視対象外である監視装置12g~12lに入り込むこと(クロストーク)も抑制されるからである。
【0054】
以下、蒸発源群17A及び17Bの配置関係を考慮して、蒸発源群17A及び17Bのそれぞれが放出(収容)する蒸着物質を規定することによる効果、特に、クロストークが抑制される効果について、具体的な数値例を挙げて説明する。
【0055】
ここでは、蒸発源群17A及び蒸発源群17Bに、マグネシウム(Mg)及び銀(Ag)のいずれかの蒸着材料を収容するものとし、蒸発源群17Aに含まれる蒸発源11d及び蒸発源群17Bに含まれる蒸発源11jに注目する。マグネシウム(Mg)は、銀(Ag)と比較して、水晶振動子への付着量が少ない蒸着物質である。水晶振動子への蒸着物質の付着量は、成膜レート[Å/s]と膜密度[g/cm]との積で定義し、マグネシウム(Mg)の膜密度は1.7[g/cm]であり、銀(Ag)の膜密度は10.4[g/cm]である。なお、監視装置12d及び12jのそれぞれに表示される成膜レートには、実際の蒸着物質の成膜レートに対して、補正値(所謂、ツーリングファクタ)が入る。また、蒸発源11dと監視装置12dとの間の物理的な距離を1[L]とし、蒸発源11jと監視装置12jとの間の物理的な距離を2[L]とする。
【0056】
まず、比較例(従来技術)として、蒸発源11dに銀(Ag)を、蒸発源11jにマグネシウム(Mg)を収容し、基板にAgとMgを同時に付着させてAgとMgの混合膜(銀マグネシウム(AgMg))を1.0[Å/s]の成膜レートで成膜する(共蒸着)。この際、実際のマグネシウム(Mg)の成膜レートを1.00[Å/s]、実際の銀(Ag)の成膜レートを0.01[Å/s]とする。この場合、監視装置12jでは、実際には、0.01[Å/s]×1/2[L]=0.005[Å/s]のレートであるが、1.0[Å/s]の成膜レートとするために、200(=1.0[Å/s]/0.005[Å/s])の補正値が入る。従って、蒸発源11dから0.01[Å/s]のクロストーク成分(Ag)が監視装置12jに入るものとすると、その影響は、0.01[Å/s]×200(補正値)=2.0[Å/s]となる。そのため、監視装置12jに含まれる水晶振動子に付着するクロストーク成分の付着量は、2.0[Å/s](成膜レート)×10.4[g/cm](銀(Ag)の膜密度)=20.8となる。
【0057】
一方、実施例(本発明)として、蒸発源11dにマグネシウム(Mg)を、蒸発源11jに銀(Ag)を収容し、基板にAgとMgを同時に付着させてAgとMgの混合膜(銀マグネシウム(AgMg))を1.0[Å/s]の成膜レートで成膜する(共蒸着)。この際、実際のマグネシウム(Mg)の成膜レートを1.00[Å/s]、実際の銀(Ag)の成膜レートを0.01[Å/s]とする。この場合、監視装置12jでは、実際には、1.0[Å/s]×1/2[L]=0.5[Å/s]のレートであるが、1.0[Å/s]の成膜レートとするために、2(=1.0[Å/s]/0.5[Å/s])の補正値が入る。従って、蒸発源11dから0.01[Å/s]のクロストーク成分(Mg)が監視装置12jに入るものとすると、その影響は、0.01[Å/s]×2(補正値)=0.02[Å/s]となる。そのため、監視装置12jに含まれる水晶振動子に付着するクロストーク成分の付着量は、0.02[Å/s](成膜レート)×1.7[g/cm](マグネシウム(Mg)の膜密度)=0.034となる。
【0058】
このように、実施例では、比較例に対して、監視装置12jにおけるクロストークの影響(クロストーク成分の付着量)が大幅に低減されている。従って、監視装置12jにおいて、蒸発源11jに隣接する蒸発源11dからの蒸着物質が入り込むこと(クロストーク)による監視精度の低下が抑制される。なお、実施例では、監視装置12jについて説明したが、監視装置12g~12i、12k、12lについても同様に、蒸発源11a~c、11e、11fからの蒸着物質が入り込むことによる監視精度の低下が抑制されることは明らかである。
【0059】
また、実施例(及び比較例)に示したように、監視装置12g~12lへのクロストーク成分の付着量は、成膜レートや膜密度に大きく依存している。従って、蒸発源群17A(蒸発源11a~11f)の成膜レートは、蒸発源群17B(蒸発源11g~11l)よりも低いことが好ましい。従って、成膜レートが低い蒸着物質を収容する蒸発源11a~11fを含む蒸発源群17Aを外側列に、即ち、成膜レートが高い蒸着物質を収容する蒸発源11g~11lを含む蒸発源群17Bよりも外側に配置するとよい。また、蒸発源群17A(蒸発源11a~11f)から放出されて水晶振動子に付着する蒸着物質の膜密度は、蒸発源群17B(蒸発源11g~11l)から放出されて水晶振動子に付着する蒸着物質の膜密度よりも低いことが好ましい。従って、膜密度が低い蒸着物質を収容する蒸発源11a~11fを含む蒸発源群17Aを外側列に、即ち、膜密度が高い蒸着物質を収容する蒸発源11g~11lを含む蒸発源群17Bよりも外側に配置するとよい。
【0060】
また、実施例のように、蒸発源群17A(蒸発源11a~11f)にマグネシウム(Mg)を、蒸発源群17B(蒸発源11g~11l)に銀(Ag)を収容する場合、蒸発源群17C(蒸発源11m~11r)には、例えば、イッテルビウム(Yb)を収容する。蒸発源群17Cは、蒸発源ユニット10の移動方向(X方向)において、蒸発源群17Bよりも外側、且つ、蒸発源群17Aとは反対側に配置されている。この場合、蒸発源群17Cから放出されるYbを、蒸発源群17Bから放出されるAgや蒸発源群17Aから放出されるMgから独立して基板に付着させてYbの膜を形成する(単独蒸着)。この際、蒸発源ユニット10では、制御部43によってシャッタ161~163の動作が制御され、Ybの膜(第1層)と、銀マグネシウム(AgMg)の膜(第2層)とを基板に成膜する。なお、これらの蒸着物質(成膜材料)は、例示であって、限定されるものではない。
【0061】
また、基板100に形成される蒸着物質の膜厚の均一性には、蒸発源ユニット10の移動方向(X方向)に交差する交差方向(Y方向)に隣接する2つの蒸発源の間の距離(間隔)も関連している。例えば、蒸発源ユニット10の移動方向に交差する交差方向に隣接する2つの蒸発源の間の距離について、複数の蒸発源のレイアウト領域の外側を中心側よりも短くすることで、基板100に形成される蒸着物質の膜の膜厚の均一化に寄与することができる。
【0062】
具体的には、蒸発源群17Aに含まれる蒸発源11a、11b及び11cに着目すると、蒸発源11bと蒸発源11aとの間の距離L3を、蒸発源11cと蒸発源11bとの間の距離L2よりも短くする。このように、複数の蒸発源11a~11fのうち、蒸発源ユニット10の移動方向に交差する交差方向に隣接する2つの蒸発源の間の距離を互いに異ならせる。
【0063】
また、上述したように、本実施形態では、蒸発源ユニット10の移動方向(X方向)に交差する交差方向(Y方向)に隣接する2つの蒸発源の間の距離が一定ではなく、隣接する2つの蒸発源の間隔が広くなる部分がある。このような場合、複数の監視装置12a~12rの配置に関して、図4に示すように、クロストークの抑制効果が高い配置を採用することが可能となる。
【0064】
具体的には、監視装置12a~12fについては、各監視装置12a~12fと、蒸発源群17Aに含まれる複数の蒸発源11a~11fのうちの対応する蒸発源とを結ぶ線が蒸発源ユニット10の移動方向(X方向)に平行となるように配置する。また、監視装置12g~12lについては、各監視装置12g~12lと、蒸発源群17Bに含まれる複数の蒸発源11g~11lのうちの対応する蒸発源とを結ぶ線が蒸発源ユニット10の移動方向に交差するように配置する。また、監視装置12a~12f、及び、監視装置12g~12lは、蒸発源ユニット10の移動方向(X方向)の一方の側、本実施形態では、蒸発源群17Aの側に配置される。従って、監視装置12a~12lが配置される領域に近い蒸発源群17Aに含まれる蒸発源11a~11fから放出される蒸着物質の状態については、監視装置12a~12fによって最短距離で監視することになる。また、蒸発源群17Bに含まれる蒸発源11g~11lから放出される蒸着物質の状態については、監視装置12g~12lによって斜め方向から監視することになる。これにより、監視装置12a~12f(蒸発源11a~11f)や監視装置12g~12lでのクロストークが抑制され、監視装置12a~12lの監視精度の低下を抑えることができる。
【0065】
一方、監視装置12m~12rについては、各監視装置12m~12rと、蒸発源群17C(第3蒸発源群)に含まれる複数の蒸発源11m~11rのうちの対応する蒸発源とを結ぶ線が蒸発源ユニット10の移動方向に平行となるように配置する。また、監視装置12m~12rは、蒸発源ユニット10の移動方向の他方の側、本実施形態では、蒸発源群17Cの側に配置される。従って、監視装置12m~12rが配置される領域に近い蒸発源群17Cに含まれる蒸発源11m~11rから放出される蒸着物質の状態については、監視装置12m~12rによって最短距離で監視することになる。これにより、監視装置12m~12rでのクロストークが抑制され、監視装置12m~12rの監視精度の低下を抑えることができる。
【0066】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0067】
1:成膜装置 10:蒸着源ユニット 11a~11r:蒸発源 12a~12r:監視装置 43:制御部 100:基板 101:マスク
図1
図2
図3
図4
図5