(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008016
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】パターン化基材の製造方法、加工方法、およびレーザ素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240112BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20240112BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20240112BHJP
H01S 5/12 20210101ALI20240112BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
G03F7/40 521
G03F7/26 511
H01S5/12
G03F7/20 504
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109497
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 勉
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
5F004
5F173
【Fターム(参考)】
2H196AA28
2H196BA09
2H196EA06
2H196HA03
2H196HA23
2H196KA08
2H196KA18
2H197CA09
2H197CE10
2H197HA03
2H197HA10
2H197JA15
5F004DA00
5F004DB19
5F004EA02
5F004EA04
5F004EB06
5F173AB13
5F173AH22
5F173AP05
5F173AP23
5F173AR92
(57)【要約】
【課題】得られるパターンの精度を向上可能なパターン化基材の製造方法を提供する。
【解決手段】基材の上にポジ型レジストからなるレジスト層を形成する工程と、前記レジスト層の一部を電子線により露光することにより、前記レジスト層に露光部と非露光部とを形成する工程と、前記レジスト層の現像を行うことにより、前記露光部が除去され前記非露光部が残存したパターン化レジスト層を得る工程と、前記パターン化レジスト層に電子線を照射する工程と、前記パターン化レジスト層をエッチングマスクとして、または、前記パターン化レジスト層のパターンを転写したパターン化マスク層をエッチングマスクとして、前記基材をエッチングする工程と、を有する、パターン化基材の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上にポジ型レジストからなるレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層の一部を電子線により露光することにより、前記レジスト層に露光部と非露光部とを形成する工程と、
前記レジスト層の現像を行うことにより、前記露光部が除去され前記非露光部が残存したパターン化レジスト層を得る工程と、
前記パターン化レジスト層に電子線を照射する工程と、
前記パターン化レジスト層をエッチングマスクとして、または、前記パターン化レジスト層のパターンを転写したパターン化マスク層をエッチングマスクとして、前記基材をエッチングする工程と、
を有する、パターン化基材の製造方法。
【請求項2】
前記レジスト層を形成する工程の前に、前記基材の上にマスク層を形成する工程を有し、
前記電子線を照射する工程の後に、前記パターン化レジスト層をエッチングマスクとして前記マスク層をエッチングし、前記パターン化マスク層を得る工程を有し、
前記基材をエッチングする工程において、前記パターン化マスク層をエッチングマスクとして前記基材をエッチングする、請求項1に記載のパターン化基材の製造方法。
【請求項3】
前記エッチングはドライエッチングである、請求項1に記載のパターン化基材の製造方法。
【請求項4】
前記露光部は、複数の領域からなる規則的なパターンである、請求項1に記載のパターン化基材の製造方法。
【請求項5】
上面視において、前記露光部は、規則的に配置された複数のストライプ領域を有し、
前記複数のストライプ領域のピッチは1μm未満である、請求項1に記載のパターン化基材の製造方法。
【請求項6】
上面視において、前記露光部の面積は、前記非露光部の面積よりも小さい、請求項1に記載のパターン化基材の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法によりパターン化基材を得る工程と、
前記パターン化基材のパターンを、被加工物の上に設けた加工用レジスト層に転写することにより、パターン化加工用マスク層を得る工程と、
前記パターン化加工用マスク層をエッチングマスクとして前記被加工物をエッチングする工程と、
を有する、加工方法。
【請求項8】
複数の半導体層が積層された半導体積層体を形成する工程と、
請求項7に記載の加工方法を用いて、前記半導体積層体に回折格子を形成する工程と、
を有する、レーザ素子の製造方法。
【請求項9】
前記基材は、窒化物半導体基板であり、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法によりパターン化基材としてパターン化基板を得る工程と、
前記パターン化基板の上に複数の半導体層を積層する工程と、
を有する、レーザ素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン化基材の製造方法、加工方法、およびレーザ素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線照射によるレジストのパターン化は、例えばナノサイズの微細加工などに適用が期待されている。例えば、特許文献1には、電子線照射により露光するポジ型レジストとネガ型レジストを組み合わせたエッチングマスクを用いたナノインプリントモールドの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1ではポジ型レジストの形成時のパターン形状の乱れに着目しているが、形成後においても、ポジ型レジストはエッチングの際に形状が変化することがある。得たいパターン形状が微細であるほど形状変化の影響は大きく、変化の程度によっては被加工物に意図通りのパターン形状を加工できないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態のパターン化基材の製造方法は、基材の上にポジ型レジストからなるレジスト層を形成する工程と、前記レジスト層の一部を電子線により露光することにより、前記レジスト層に露光部と非露光部とを形成する工程と、前記レジスト層の現像を行うことにより、前記露光部が除去され前記非露光部が残存したパターン化レジスト層を得る工程と、前記パターン化レジスト層に電子線を照射する工程と、前記パターン化レジスト層をエッチングマスクとして、または、前記パターン化レジスト層のパターンを転写したパターン化マスク層をエッチングマスクとして、前記基材をエッチングする工程と、を有する。
【0006】
本開示の一実施形態の加工方法は、上述の方法によりパターン化基材を得る工程と、前記パターン化基材のパターンを、被加工物の上に設けた加工用レジスト層に転写することにより、パターン化加工用マスク層を得る工程と、前記パターン化加工用マスク層をエッチングマスクとして前記被加工物をエッチングする工程と、を有する。
【0007】
本開示の一実施形態のレーザ素子の製造方法は、複数の半導体層が積層された半導体積層体を形成する工程と、上述の加工方法を用いて、前記半導体積層体に回折格子を形成する工程と、を有する。
【0008】
本開示の一実施形態のレーザ素子の製造方法は、前記基材は、窒化物半導体基板であり、上述の方法によりパターン化基材としてパターン化基板を得る工程と、前記パターン化基板の上に複数の半導体層を積層する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示における一実施形態のパターン化基材の製造方法によれば、得られるパターン化基材のパターンの精度を向上させることができる。本開示における一実施形態の加工方法によれば、加工精度を向上させることができる。本開示における一実施形態のレーザ素子の製造方法によれば、レーザ素子へのパターン加工の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態のパターン化基材の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2A】
図2Aは、第1実施形態のパターン化基材の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図2B】
図2Bは、第1実施形態のパターン化基材の製造方法の一工程を示す模式的な上面図である。
【
図2D】
図2Dは、第1実施形態のパターン化基材の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図2E】
図2Eは、第1実施形態のパターン化基材の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図2F】
図2Fは、第1実施形態のパターン化基材の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態における変形例の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態における変形例の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図4B】
図4Bは、第1実施形態における変形例の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図4C】
図4Cは、第1実施形態における変形例の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、電子線照射工程およびパターン化マスク層を得る工程を行った後のパターン化レジスト層の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図6】
図6は、電子線照射工程を行わずにパターン化マスク層を得る工程を行った後のパターン化レジスト層のSEM写真である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の加工方法を示すフローチャートである。
【
図8A】
図8Aは、第2実施形態の加工方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図8B】
図8Bは、第2実施形態の加工方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図8C】
図8Cは、第2実施形態の加工方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図8D】
図8Dは、第2実施形態の加工方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図8E】
図8Eは、第2実施形態の加工方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態のレーザ素子の製造方法を示すフローチャートである。
【
図10A】
図10Aは、第3実施形態のレーザ素子の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図10B】
図10Bは、第3実施形態のレーザ素子の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図10C】
図10Cは、第3実施形態のレーザ素子の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態のレーザ素子の製造方法を示すフローチャートである。
【
図12A】
図12Aは、第4実施形態のレーザ素子の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【
図12B】
図12Bは、第4実施形態のレーザ素子の製造方法の一工程を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について適宣図面を参照して説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0012】
<第1実施形態>
図1~
図2Fを用いて、第1実施形態に係るパターン化基材の製造方法を説明する。
図1は、第1実施形態のパターン化基材の製造方法を示すフローチャートである。
図2A~
図2Fは、第1実施形態のパターン化基材の製造方法を説明するための模式図である。
【0013】
図1に示すように、第1実施形態に係るパターン化基板の製造方法は、レジスト層形成工程S101と、露光部および非露光部形成工程S102と、パターン化レジスト層を得る工程S103と、電子線照射工程S104と、エッチング工程S105と、を有する。本実施形態の方法によれば、エッチングにおけるパターン化レジスト層の形状変化の度合いを低減することができ、得られるパターン化基材のパターンの精度を向上させることができる。
【0014】
(レジスト層形成工程S101)
まず、
図2Aに示すように、基材1の上にレジスト層2を形成する。レジスト層2は、ポジ型レジストからなる。レジスト層2は、電子線露光用レジストである。レジスト層2は、例えば塗布により形成することができる。レジスト層2の厚さは、例えば10nm以上1000nm以下とすることができる。
【0015】
ポジ型レジストは、電子線の照射によって現像液に対する可溶性が増すレジストである。ポジ型レジストとして、例えば化学増幅型ポジ型レジストを用いることができる。ポジ型レジストとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)(例えば、米国マイクロケム社製)、ポリメチルグルタルイミド(PMGI)(例えば、米国マイクロケム社製)、日本ゼオン社製のZEP520などを用いることができる。
【0016】
基材1は、後に行うエッチング工程S105において加工したい材料である。基材1の材料としては、例えば、シリコンや窒化物半導体などの半導体や、ガラスなどが挙げられる。
【0017】
(露光部および非露光部形成工程S102)
次に、
図2Bおよび
図2Cに示すように、レジスト層2の一部を電子線EBにより露光することにより、レジスト層2に露光部2aと非露光部2bとを形成する。露光部2aは、電子線EBを用いて描画することにより形成することができる。電子線描画による露光部2aの形成は、微細なパターンの形成に適している。電子線描画は、マスクを用いず、任意の箇所に電子線を照射する方法である。電子線描画は、電子ビームを照射する位置を移動させながら間欠的に照射することで行ってもよい。レジスト層2に照射される電子ビームの1ショットあたりのスポット径は、形成したい露光部2aのサイズに応じて決定することができる。電子ビームのスポット径は、例えば、10nm以上100nm未満とすることができる。
【0018】
図2Bに示すように、露光部2aは、複数の領域からなる規則的なパターンとすることができる。上面視において、露光部2aは、規則的に配置された複数のストライプ領域を有することができる。複数のストライプ領域のピッチPは1μm未満とすることができる。本実施形態の方法によれば、このような微細形状の露光部2aを形成する場合であっても、得られるパターンの精度を向上させることができる。ピッチPは、500nm以下であってもよく、100nm以下であってもよい。ピッチPは、例えば20nm以上としてよい。露光部2aのストライプ領域は、一方の長辺と他方の長辺を有する。ピッチPは、1つのストライプ領域の一方の長辺から隣のストライプ領域の一方の長辺までの距離を指す。露光部2aの上面視形状は、円形、楕円、多角形、またはそれらの組み合わせでもよく、網目状でもよい。
【0019】
上面視において、露光部2aの面積は、非露光部2bの面積よりも小さいことが好ましい。これにより、そうでない場合と比較して、電子線描画にかかる時間を短縮することができる。非露光部2bの面積に対する露光部2aの面積の比は、1未満であることが好ましく、1/2以下であることがより好ましく、1/6以下であることがさらに好ましい。例えば、
図2Bに示すように、露光部2aは、上面視において、レジスト層2の外縁に到達しない形状および配置としてよい。レジスト層2はポジ型レジストであるので、露光部2aを形成した領域の直下が加工される予定の領域である。もしレジスト層2としてネガ型レジストを用いて同様の加工を行う場合は、露光部と非露光部の配置を逆転させることとなり、
図2Bのような形状で加工を行いたい場合は、露光部の面積が非露光部の面積よりも大きくなる。レジスト層2としてポジ型レジストを用いることにより、ネガ型レジストを用いる場合と比較して露光のための電子線描画を行う時間を短縮することができる。
【0020】
露光部2aの深さは、レジスト層2の厚さと同じであってもよく、それより小さくてもよい。露光部2aの深さは、例えば、レジスト層2の厚さの半分以上とすることができる。露光部2aの深さは、照射する電子線の強さや照射時間によって調整してよい。
【0021】
(パターン化レジスト層を得る工程S103)
次に、
図2Dに示すように、レジスト層2の現像を行うことにより、露光部2aが除去され非露光部2bが残存したパターン化レジスト層3を得る。
図2Dでは、露光部2aが除去された部分において基材1が露出している。基材1が露出しない程度に露光部2aが除去されていてもよい。この場合、パターン化レジスト層3は、凹部と凸部を有する形状であるといえる。
【0022】
レジスト層2の現像は、基材1とレジスト層2を含む複合体を、現像液に浸漬することにより行うことができる。現像液に浸漬することで、露光部2aが現像液に溶解し、非露光部2bが残存する。現像に用いる現像液としては、アルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が挙げられる。アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等が挙げられる。現像液は、炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤等の有機溶剤、又は有機溶剤を含有する溶剤であってもよい。
【0023】
現像液に浸漬する前に、露光部2aと非露光部2bの現像液に対する溶解性の差を生じさせるためにレジスト層2を加熱してもよい。この加熱の温度は、例えば50℃~180℃とすることができる。この加熱の時間は、例えば5秒~600秒とすることができる。また、現像液に浸漬した後、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥してよい。
【0024】
(電子線照射工程S104)
次に、
図2Eに示すように、パターン化レジスト層3に電子線EBを照射する。これにより、後に行うエッチング工程S105において、パターン化レジスト層3の形状変化の程度を小さくすることができるため、得られるパターン精度を向上させることができる。
【0025】
電子線EBは、パターン化レジスト層3の全体に照射してもよく、一部に照射してもよい。電子線EBを照射する領域は、少なくとも、パターン化レジスト層3が有するパターンの境界部分を含むことが好ましい。これによって、後に行うエッチング工程S105において、パターンの境界部分の形状変化の程度を小さくすることができるため、基材1に形成される加工パターンの精度をより確実に向上させることができる。電子線EBは、例えば、パターン化レジスト層3の全体に照射する。
【0026】
露光部および非露光部形成工程S102と同様の電子ビームを用いて、電子線描画により、パターン化レジスト層3に電子線EBを照射してもよい。この場合は、パターン化レジスト層3の一部のみに電子線EBを照射することで、照射時間の短縮を図ることができる。パターン化レジスト層3に照射する電子線EBのビームサイズは、パターン化レジスト層3の全体を同時に照射できるサイズであってもよい。これにより、電子線描画を行う場合よりも短い時間でパターン化レジスト層3の全体に電子線EBを照射することができる。パターン化レジスト層3の全体に電子線EBを同時に照射する方法としては、例えば特表2003-502698号公報に記載の方法が挙げられる。
【0027】
(エッチング工程S105)
次に、パターン化レジスト層3をエッチングマスクとして、基材1をエッチングする。これにより、
図2Fに示すように、パターン化基材4を得ることができる。電子線照射工程S104を経ていることにより、エッチングにおいてパターン化レジスト層3の形状が変化する度合いを小さくすることができる。したがって、得られるパターン化基材4に形成されるパターンの精度を向上させることができる。エッチング工程S105は、パターン化レジスト層3のパターンを転写したパターン化マスク層をエッチングマスクとして、基材1をエッチングしてもよい。
【0028】
エッチングは、例えばドライエッチングである。ドライエッチングで基材1を加工することにより、ウェットエッチングで加工する場合と比較して、エッチングマスクのパターンにより近いパターンを基材1に形成することができる。ドライエッチングの場合、パターン化レジスト層3がエッチングガスと反応して局所的に成長することによってパターン化レジスト層3の形状変化が生じることがある。電子線照射工程S104を行うことで、そのようなパターン化レジスト層3とエッチングガスとの反応を抑制することが可能であると考えられる。エッチングガスは、パターン化レジスト層3に対するエッチングレートが、基材1のような被加工物に対するエッチングレートよりも低いものを選択する。エッチングガスとしては、例えば、塩素系ガスまたはフッ素系ガスの少なくともいずれか一方を含むガスを用いることができる。
【0029】
エッチング工程S105は、パターン化レジスト層3が完全に除去されるまで行ってもよく、パターン化レジスト層3が残存する程度で止めてもよい。エッチング工程S105を経てもパターン化レジスト層3が残っている場合は、エッチング工程S105の後に、パターン化レジスト層3を除去する工程を行ってよい。
【0030】
(変形例)
パターン化レジスト層3のパターンを転写したパターン化マスク層をエッチングマスクとしてエッチング工程S105を行う場合の一例を、変形例として説明する。
図3は、変形例の製造方法を示すフローチャートである。
図4A~
図4Cは、変形例の製造方法を説明するための模式図である。変形例の製造方法は、レジスト層形成工程S101の前に、マスク層形成工程S106を有し、電子線照射工程S104の後に、パターン化マスク層を得る工程S107を有する。
【0031】
(マスク層形成工程S106)
図4Aに示すように、基材1の上にマスク層5を形成する。レジスト層2は、マスク層5の上に形成する。マスク層5の材料は、マスク層5のエッチングレートがパターン化レジスト層3のエッチングレートよりも大きくなるように選定する。マスク層5は、例えばシリコン酸化膜である。シリコン酸化膜はSiO
2膜であってよい。
【0032】
(パターン化マスク層を得る工程S107)
図4Bに示すようにパターン化レジスト層3を得た後、
図4Cに示すように、パターン化レジスト層3をエッチングマスクとしてマスク層5をエッチングし、パターン化マスク層6を得る。
図4Cではパターン化レジスト層3が残存しているが、残存していなくてもよい。
【0033】
エッチングは、例えばドライエッチングである。ドライエッチングでマスク層5を加工することにより、ウェットエッチングで加工する場合と比較して、パターン化レジスト層3のパターンにより近いパターンをマスク層5に形成することができる。先に電子線照射工程S104を行うことで、パターン化レジスト層3とエッチングガスとの反応を抑制することが可能であると考えられる。エッチングガスは、パターン化レジスト層3に対するエッチングレートが、パターン化レジスト層3に対するエッチングレートよりも低いものを選択する。エッチングガスとしては、例えば、塩素系ガスまたはフッ素系ガスの少なくともいずれか一方を含むガスを用いることができる。
【0034】
エッチングは、パターン化レジスト層3が完全に除去されるまで行ってもよく、パターン化レジスト層3が残存する程度で止めてもよい。パターン化マスク層を得る工程S107を経てもパターン化レジスト層3が残存している場合は、エッチング工程S105の前に、パターン化レジスト層3を除去する工程を行ってもよいが、残存したままでもよい。
【0035】
そして、エッチング工程S105において、パターン化マスク層6をエッチングマスクとして基材1をエッチングする。パターン化レジスト層3が残存している場合は、パターン化レジスト層3もエッチングマスクに一部であるといえる。エッチング工程S105におけるパターン化レジスト層3のエッチングレートが基材1のエッチングレートよりも大きい場合に、このようにパターン化マスク層6を形成することが好ましい。これにより、効率的に基材1の加工を行うことができる。エッチング工程S105におけるパターン化マスク層6のエッチングレートは基材1のエッチングレートよりも小さいことが好ましい。これにより、さらに効率的に基材1の加工を行うことができる。例えば、パターン化マスク層6をシリコン酸化膜とし、基材1を窒化物半導体基板とすることができる。エッチング工程S105におけるエッチングマスクのエッチングレートは基材1のエッチングレートよりも必ずしも小さくなくてもよい。その場合は、エッチング工程S105を行う間にエッチングマスクが完全に除去されない程度にエッチングマスクを厚く形成する。
【0036】
電子線照射工程S104を行い、且つパターン化マスク層を得る工程S107としてドライエッチングを行った後のパターン化レジスト層3の走査電子顕微鏡(SEM)写真を
図5に示す。
図5において、電子線照射工程S104はSEM装置に搭載の電子銃を用いて行った。電子線照射工程S104を行わずにパターン化マスク層を得る工程S107としてドライエッチングを行った後のパターン化レジスト層3のSEM写真を
図6に示す。
図5および
図6はいずれも上面から撮影したものであり、薄い灰色の部分がパターン化レジスト層3である。ピッチはいずれも約95nmである。
図6に示すようにパターン化レジスト層3の形状の変化が生じたのは、電子線照射工程S104を行っていないパターン化レジスト層3がドライエッチングのエッチングガスと反応したためと考えられる。
【0037】
<第2実施形態>
図7~
図8Eを用いて、第2実施形態に係る加工方法を説明する。
図7は、第2実施形態の加工方法を示すフローチャートである。
図8A~
図8Eは、第2実施形態の加工方法を説明するための模式図である。
【0038】
図7に示すように、第2実施形態に係る加工方法は、パターン化基材を得る工程S201と、パターン化加工用マスク層を得る工程S202と、エッチング工程S203と、を有する。本実施形態の方法によれば、加工精度を向上させることができる。
【0039】
(パターン化基材を得る工程S201)
第1実施形態で述べた方法により、パターン化基材4を得る。
【0040】
(パターン化加工用マスク層を得る工程S202)
次に、パターン化基材4のパターンを、被加工物12の上に設けた加工用レジスト層13に転写することにより、パターン化加工用マスク層14を得る。パターン化基材4のパターンの転写は、加工用レジスト層に直接行ってもよいが、
図8A~
図8Cに示すように、レプリカモールド11を経由してもよい。加工用レジスト層13に直接転写する場合はパターン化基材4のパターンの凹凸が反転したものがパターン化加工用マスク層14のパターンとなるが、レプリカモールド11を経由する場合はパターン化基材4のパターンの凹凸がそのままパターン化加工用マスク層14のパターンとなる。パターンの転写とはいずれを意味していてもよい。パターン化基材4のパターンのパターン化加工用マスク層14への転写には、公知のインプリント技術を用いることができる。
【0041】
レプリカモールド11を経由する場合は、パターン化基材4を型として用いてレプリカモールド11を形成する工程をさらに有する。そして、パターン化加工用マスク層14を得る工程S202において、レプリカモールド11のパターンを、被加工物12の上に設けた加工用レジスト層13に転写することにより、パターン化加工用マスク層14を得る。レプリカモールド11を経由する場合は、パターン化加工用マスク層14の形成にはレプリカモールド11を繰り返し使用すればよく、レプリカモールド11のパターンが摩耗したときに再びパターン化基材4を使用して新しいレプリカモールド11を作製すればよい。このため、パターンの加工精度をより向上させることができる。
【0042】
レプリカモールド11および加工用レジスト層13の材料としては、公知のインプリント技術で用いられる材料を採用することができる。例えば、紫外線によって硬化するレジストにパターン化基材4を押圧し、紫外線を照射することで硬化させ、その硬化物をレプリカモールド11とすることができる。例えば、紫外線によって硬化する加工用レジスト層13にレプリカモールド11を押圧し、紫外線を照射することで硬化させ、その硬化物をパターン化加工用マスク層14とすることができる。レプリカモールド11は、基板とレジストの複合部材から構成されていてもよい。
【0043】
(エッチング工程S203)
図8Dに示すように、パターン化加工用マスク層14をエッチングマスクとして被加工物12をエッチングする。これにより、
図8Eに示すように、パターン化被加工物15を得ることができる。エッチングマスクおよびエッチング方法は、第1実施形態で述べたエッチング工程S105と同様のものを採用することができる。例えば、エッチングマスクは、上述の変形例1のパターン化マスク層であってもよい。
【0044】
<第3実施形態>
図9~
図10Cを用いて、第3実施形態に係るレーザ素子の製造方法を説明する。
図9は、第3実施形態のレーザ素子の製造方法を示すフローチャートである。
図10A~
図10Cは、第3実施形態のレーザ素子の製造方法を説明するための模式図である。
【0045】
図9に示すように、第3実施形態に係るレーザ素子の製造方法は、半導体積層体形成工程S301と、回折格子形成工程S302と、を有する。本実施形態の方法によれば、得られるレーザ素子のパターンの精度を向上させることができる。
【0046】
(半導体積層体形成工程S301)
まず、
図10Aに示すように、複数の半導体層が積層された第1半導体積層体22を形成する。第1半導体積層体22は、基板21の上に形成することができる。基板21は、例えば半導体基板である。半導体基板としては、GaN、AlGaN、AlNなどの窒化物半導体の基板が挙げられる。基板21は、例えば導電性の基板である。基板21は、絶縁性の基板であってもよい。第1半導体積層体22を構成する半導体としては、例えばIII-V族半導体が挙げられる。第1半導体積層体22を構成する半導体は、例えば、GaN、AlGaN、AlN、AlInGaN、InGaNなどの窒化物半導体である。第1半導体積層体22は、例えば有機金属気相成長(MOCVD)法により形成することができる。
【0047】
(回折格子形成工程S302)
次に、
図10Bに示すように、第2実施形態に記載の加工方法を用いて、第1半導体積層体22に回折格子を形成する。回折格子は、例えば、得られるレーザ素子の共振器と対応する位置に形成する。この場合、例えば、
図2Bに示すような、露光部2aの面積が非露光部2bの面積よりも小さくなる露光を行う。
【0048】
回折格子形成工程S302の後、
図10Cに示すように、第1半導体積層体22の上に第2半導体積層体23を形成してよい。第2半導体積層体23は、第1半導体積層体22に形成された回折格子を埋めるように形成することができる。第2半導体積層体23は、例えばMOCVD法により形成することができる。例えば、第1半導体積層体22を構成する半導体が窒化物半導体であれば、第2半導体積層体23を構成する半導体も窒化物半導体としてよい。第1半導体積層体22および第2半導体積層体23からなる積層体は、n型半導体層と、p型半導体層と、それらの間に位置する活性層とを有する。第1電極24および第2電極25を形成し、レーザ素子20Aを得ることができる。半導体積層体形成工程S301および回折格子形成工程S302をウェハの状態で行い、得られたウェハを個片化し、複数のレーザ素子20Aを得てもよい。レーザ素子20Aは、例えば分布帰還型(Distributed Feedback:DFB)レーザ素子である。回折格子形成工程S302において形成する回折格子のパターンは、レーザ素子20Aが出射するレーザ光のピーク波長が短いほど、微細なものとなる。レーザ素子20Aが出射するレーザ光のピーク波長は、例えば200nm以上600nm以下とすることができ、200nm以上500nm以下であってよい。例えば、第1半導体積層体22および第2半導体積層体23からなる積層体を窒化物半導体で構成することにより、そのような波長のレーザ光を出射するレーザ素子20Aを形成することができる。
【0049】
<第4実施形態>
図11~
図12Bを用いて、第4実施形態に係るレーザ素子の製造方法を説明する。
図11は、第4実施形態のレーザ素子の製造方法を示すフローチャートである。
図12Aおよび
図12Bは、第4実施形態のレーザ素子の製造方法を説明するための模式図である。
【0050】
図11に示すように、第4実施形態に係るレーザ素子の製造方法は、パターン化基板を得る工程S401と、半導体積層工程S402と、を有する。本実施形態の方法によれば、得られるレーザ素子のパターンの精度を向上させることができる。
【0051】
(パターン化基板を得る工程S401)
まず、
図12Aに示すように、第1実施形態で述べた方法により、パターン化基材としてパターン化基板26を得る。この場合、第1実施形態で述べた基材1は、窒化物半導体基板であることが好ましい。窒化物半導体基板であればレーザ素子20Bとして窒化物半導体レーザ素子を得るために適している。窒化物半導体基板としては、例えば、GaN基板、InGaN基板、AlGaN基板、AlN基板が挙げられる。パターン化基板26は、例えば導電性の基板である。パターン化基板26は、絶縁性の基板であってもよい。
【0052】
(半導体積層工程S402)
次に、
図12Bに示すように、パターン化基板26の上に複数の半導体層を積層する。複数の半導体層を積層することにより、半導体積層体27が形成される。半導体積層体27は、例えばMOCVD法により形成することができる。半導体積層体27は、n型半導体層と、p型半導体層と、それらの間に位置する活性層とを有する。第1電極24および第2電極25を形成し、レーザ素子20Bを得ることができる。パターン化基板を得る工程S401および半導体積層工程S402をウェハの状態で行い、得られたウェハを個片化し、複数のレーザ素子20Bを得てもよい。レーザ素子20Bは、例えばDFBレーザ素子である。この場合、パターン化基板26に形成するパターンは回折格子である。
【0053】
半導体積層体27を構成する半導体としては、例えばIII-V族半導体が挙げられる。半導体積層体27を構成する半導体は、例えば、GaN、AlGaN、AlN、AlInGaN、InGaNなどの窒化物半導体である。レーザ素子20Aが出射するレーザ光のピーク波長は、例えば200nm以上600nm以下とすることができ、200nm以上500nm以下であってよい。例えば、半導体積層体27を窒化物半導体で構成することにより、そのような波長のレーザ光を出射するレーザ素子20Bを形成することができる。
【0054】
このように、第2実施形態で述べた加工方法を用いずに、第1実施形態で得られるパターン化基材4をレーザ素子20Bの一部として用いてもよい。第4実施形態ではパターン化基材4を基板としたが、半導体積層体の一部がパターン化基材4であってもよい。また、第2実施形態で述べた加工方法を用いて、パターン化基板26を得てもよい。
【0055】
本明細書でこれまで説明してきた内容を通し、以下の技術事項が開示される。
(項1)
基材の上にポジ型レジストからなるレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層の一部を電子線により露光することにより、前記レジスト層に露光部と非露光部とを形成する工程と、
前記レジスト層の現像を行うことにより、前記露光部が除去され前記非露光部が残存したパターン化レジスト層を得る工程と、
前記パターン化レジスト層に電子線を照射する工程と、
前記パターン化レジスト層をエッチングマスクとして、または、前記パターン化レジスト層のパターンを転写したパターン化マスク層をエッチングマスクとして、前記基材をエッチングする工程と、
を有する、パターン化基材の製造方法。
(項2)
前記レジスト層を形成する工程の前に、前記基材の上にマスク層を形成する工程を有し、
前記電子線を照射する工程の後に、前記パターン化レジスト層をエッチングマスクとして前記マスク層をエッチングし、前記パターン化マスク層を得る工程を有し、
前記基材をエッチングする工程において、前記パターン化マスク層をエッチングマスクとして前記基材をエッチングする、項1に記載のパターン化基材の製造方法。
(項3)
前記エッチングはドライエッチングである、項1または2に記載のパターン化基材の製造方法。
(項4)
前記露光部は、複数の領域からなる規則的なパターンである、項1~3のいずれか1項に記載のパターン化基材の製造方法。
(項5)
上面視において、前記露光部は、規則的に配置された複数のストライプ領域を有し、
前記複数のストライプ領域のピッチは1μm未満である、項1~4のいずれか1項に記載のパターン化基材の製造方法。
(項6)
上面視において、前記露光部の面積は、前記非露光部の面積よりも小さい、項1~5のいずれか1項に記載のパターン化基材の製造方法。
(項7)
項1~6のいずれか1項に記載の方法によりパターン化基材を得る工程と、
前記パターン化基材のパターンを、被加工物の上に設けた加工用レジスト層に転写することにより、パターン化加工用マスク層を得る工程と、
前記パターン化加工用マスク層をエッチングマスクとして前記被加工物をエッチングする工程と、
を有する、加工方法。
(項8)
複数の半導体層が積層された半導体積層体を形成する工程と、
項7に記載の加工方法を用いて、前記半導体積層体に回折格子を形成する工程と、
を有する、レーザ素子の製造方法。
(項9)
前記基材は、窒化物半導体基板であり、
項1~6のいずれか1項に記載の方法によりパターン化基材としてパターン化基板を得る工程と、
前記パターン化基板の上に複数の半導体層を積層する工程と、
を有する、レーザ素子の製造方法。
【符号の説明】
【0056】
1 基材
2 レジスト層
2a 露光部
2b 非露光部
3 パターン化レジスト層
4 パターン化基材
5 マスク層
6 パターン化マスク層
11 レプリカモールド
12 被加工物
13 加工用レジスト層
14 パターン化加工用マスク層
15 パターン化被加工物
20A、20B レーザ素子
21 基板
22 第1半導体積層体
23 第2半導体積層体
24 第1電極
25 第2電極
26 パターン化基板
27 半導体積層体