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特開2024-80234酸化物多結晶膜の製造方法、酸化物多結晶膜の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080234
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】酸化物多結晶膜の製造方法、酸化物多結晶膜の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/64 20060101AFI20240606BHJP
   C04B 35/01 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C04B35/64
C04B35/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193260
(22)【出願日】2022-12-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/共通課題解決型基盤技術開発/燃料電池セパレーター製造プロセスの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】中島 智彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 巖
(72)【発明者】
【氏名】野本 淳一
(72)【発明者】
【氏名】北中 佑樹
(57)【要約】
【課題】任意の箇所に高速で有機成分の含有量が少なく緻密化した酸化物多結晶膜の製造方法を提供する。
【解決手段】ナノ粒子分散液を調製する第1工程と、ナノ粒子分散液からなる前駆体膜を形成する第2工程と、前駆体膜に波長350nm以上の光を含む連続光を20W/cm以上の強度で照射した後、前駆体膜に波長193nm~355nmのいずれかの光を含むパルス光をパワーの最終値が1.20×10~2.50×10W・s/cmの範囲でp回(p≧200)照射する第3工程とを有し、第3工程においてパワーの最終値の1/pの値を1パルス当たりの増加速度としてスロープ制御で増加させるか又はスロープ制御におけるパワーの最終値の中央値に対するスロープ制御直線に対して中央値の±35%の範囲内に収まるように全体を3段階以上に分けたステップ制御によって増加させて酸化物多結晶膜を得る酸化物多結晶膜の製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物材料のナノ粒子を、前記酸化物材料に含まれる金属を含む金属有機化合物を溶解させた溶媒中に分散させてナノ粒子分散液を調製する第1工程と、
前記ナノ粒子分散液を基材に塗布して前駆体膜を形成する第2工程と、
前記前駆体膜に、波長350nm以上の光を含む連続光を20W/cm以上の強度で照射した後、前記前駆体膜に、波長193nm~355nmのいずれかの光を含むパルス光を、該パルス光のパワーの最終値が1.20×10W・s/cm~2.50×10W・s/cmの範囲でp回(p≧200)照射する第3工程と、
を有し、
前記第3工程において、前記パワーの最終値の1/pの値を1パルス当たりの増加速度としてスロープ制御で増加させるか、または、前記スロープ制御における前記パワーの最終値の中央値(1.85×10W・s/cm)に対するスロープ制御直線に対して、前記中央値の±35%の範囲内に収まるように全体を3段階以上に分けたステップ制御によって増加させることにより、酸化物多結晶膜を得る、酸化物多結晶膜の製造方法。
【請求項2】
前記連続光の光源は、波長350nm~390nmの範囲内にピーク強度を有する発光ダイオード、波長400nm~480nmの範囲内にピーク強度を有する発光ダイオード、または波長350nm~390nmと波長400~480nmの両方の範囲内に各々ピーク強度を有する発光ダイオードである、請求項1に記載の酸化物多結晶膜の製造方法。
【請求項3】
前記パルス光の光源は、パルス幅5ns~50nsかつ波長266nm~355nmの固体レーザー、または波長193nm~308nmのエキシマレーザーである、請求項1に記載の酸化物多結晶膜の製造方法。
【請求項4】
前記酸化物材料は、In、Sn、Zn、Ti、Ga、Ru、LaおよびNiから選択される少なくとも1種の金属を含む酸化物である、請求項1に記載の酸化物多結晶膜の製造方法。
【請求項5】
前記金属有機化合物は、前記金属を含む炭素数2~30の有機酸、前記金属を含む炭素数6~20ヒドロキシ有機酸、および前記金属を含む芳香族ヒドロキシカルボン酸から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の酸化物多結晶膜の製造方法。
【請求項6】
前記酸化物多結晶膜の欠損部に、前記ナノ粒子分散液を塗布して前駆体膜を形成する第4工程と、
前記第4工程で形成した前記前駆体膜に、波長350nm以上の光を含む連続光を20W/cm以上の強度で照射した後、前記前駆体膜に、波長193nm~355nmのいずれかの光を含むパルス光を、該パルス光のパワーの最終値が1.20×10W・s/cm~2.50×10W・s/cmの範囲でp回(p≧200)照射する第5工程と、
を有し、
前記第5工程において、前記パワーの最終値の1/pの値を1パルス当たりの増加速度としてスロープ制御で増加させるか、または、前記スロープ制御における前記パワーの最終値の中央値(1.85×10W・s/cm)に対するスロープ制御直線に対して、前記中央値の±35%の範囲内に収まるように全体を3段階以上に分けたステップ制御によって増加させることにより、前記酸化物多結晶膜の欠損部に酸化物多結晶膜を形成する、請求項1に記載の酸化物多結晶膜の製造方法。
【請求項7】
基材を搬送しながら、前記基材上に酸化物多結晶膜を形成する、酸化物多結晶膜の製造装置であって、
前記基材を搬送する自動搬送部と、
前記自動搬送部の搬送ステージ上に配置された前記基材に、酸化物材料のナノ粒子を、前記酸化物材料の金属成分を含む金属有機化合物を溶解させた溶媒中に分散させてなるナノ粒子分散液を塗布する塗布部と、
前記基材上に形成された前記ナノ粒子分散液からなる前駆体膜に連続光を照射する連続光照射部と、
前記連続光を照射した後の前記前駆体膜にパルス光を照射するパルス光照射部と、
前記パルス光のスロープ制御、または前記パルス光のステップ制御を行うパワー制御部と、
を備え、
前記塗布部、前記連続光照射部、および前記パルス光照射部は、前記自動搬送部による前記基材の搬送方向に沿って、この順に配置されている、酸化物多結晶膜の製造装置。
【請求項8】
前記酸化物多結晶膜の欠損部を認識する画像取得部を備え、
前記画像取得部、前記塗布部、前記連続光照射部、および前記パルス光照射部は、前記自動搬送部による前記基材の搬送方向に沿って、この順に配置されている、請求項7に記載の酸化物多結晶膜の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物多結晶膜の製造方法、および酸化物多結晶膜の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会を構築するために、省資源・省エネルギー性の高い製造プロセスの構築が強く望まれている。電子デバイス中には、多種多様なセラミックス薄膜が用いられている。セラミックス薄膜の製造方法としては、多品種少量生産に対応可能で、原料ロスの少ない製膜プロセスが必要となっている。セラミックス薄膜の製造方法のなかでも、印刷技術を適用した製膜方法は、多品種少量生産に対応可能で、原料ロスが少ないという要求を満たすものとして注目を集めている。このようなオンデマンド性の高い製膜プロセスは、セラミックス透明導電膜配線の欠損部の補修のようなリマニュファクチャリングプロセスとしても用いることができる。
【0003】
しかしながら、印刷による結晶性セラミックス薄膜の製造方法は、一般に500℃以上の高温プロセスが必要である。そのため、製膜プロセスの途中に、印刷によって形成した前駆体膜を有する基材を高温炉へ搬送する工程を設けたり、電気炉やホットプレートにより、前記の基材を加熱したりしただけでは、必要な部分のみを局所的に加熱することは難しい。したがって、従来の印刷による結晶性セラミックス薄膜の製造方法は、多様な部品が集積する基材に対して、各々の部品に適した条件で処理することが困難であり、処理時間の短縮(高速処理)も難しかった。また、基材の耐熱温度の制約により、最終的なセラミックスの結晶化温度(800℃以上)まで昇温できないことがあった。
【0004】
低温でセラミックス薄膜の結晶化を可能にする方法としては、例えば、印刷によって基材上に形成した前駆体膜に、レーザーやフラッシュランプ光を照射する方法が知られている(例えば、特許文献1、2、非特許文献1参照)。セラミックス薄膜の原料液を塗布して、基材上に形成した前駆体膜は、加熱乾燥した後、エキシマレーザー等の紫外線パルスレーザーの照射によって、室温で結晶化することが可能である。
【0005】
例えば、特許文献1には、光照射によって塗布法によって形成した前駆体膜を結晶化させて、有機基材上に成膜できるサーミスタ材料の製膜手法が記載されている。また、非特許文献1には、厚さ5μmの薄型ポリイミドシート上に、セラミックサーミスタ膜を形成する方法が記載されている。このように、低温製膜技術の向上によって、樹脂シート状の基材上にセラミックからなるサーミスタ材料の製膜が可能になってきている。
【0006】
特許文献2には、透明導電膜の低温形成方法が記載されている。特許文献2では、紫外線ランプと紫外線パルスレーザーによる紫外線の照射によって、スズドープインジウム酸化物(ITO)膜を室温で形成している。
【0007】
しかしながら、透明導電膜の低温形成方法では、ナノ粒子を含む原料分散液を塗布した後、100℃で乾燥工程を行う必要があったり、エキシマランプを用いた真空紫外光照射を行う必要があったりする。そのため、透明導電膜の低温形成方法では、総工程が20分~50分程度掛かり、短時間に酸化物導電膜の形成を可能とする手法を構築できていなかった(特許文献3、非特許文献2参照)。
【0008】
例えば、特許文献3には、基材上にナノ粒子分散液を塗布して前駆体膜を形成した後、その基材を100℃で5分間、乾燥する工程Aと、前記の前駆体膜に、波長172nmの真空紫外光を5分照射した後、エキシマレーザーを照射する工程Bと、再び基材上にナノ粒子分散液を塗布して前駆体膜を形成した後、その前駆体膜に真空紫外光を照射し、エキシマレーザーを照射する工程Cと、を有する酸化物導電膜の製造方法が記載されている。工程Cは2回繰り返される。特許文献3に記載の酸化物導電膜の製造方法では、膜厚120nmの酸化物導電膜を得るためには、少なくとも25分以上を要する。酸化物導電膜の製造工程における欠陥部をリマニュファクチャリングするためや、局所部位に素子を形成するためには、1ヶ所につき酸化物導電膜を数分以内に形成することは極めて重要である。1ヶ所につき酸化物導電膜の製膜に数十分を要する製造方法では、欠陥部のリマニュファクチャリングや、局所部位への素子の形成に対応できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6529023号公報
【特許文献2】特開2016-91599号公報
【特許文献3】特許第5288601号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ACS Appl. Mater. Interfaces 12 (2020) 36600.
【非特許文献2】Appl. Physics. A 99 (2010) 745.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、任意の箇所に高速で、不純物としての有機成分の含有量が少なく、緻密化した酸化物多結晶膜が得られる酸化物多結晶膜の製造方法、および酸化物多結晶膜の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者等は、基材上に原料となるナノ粒子分散液を塗布して前駆体膜を形成した後、電気炉やホットプレート等の加熱機構を用いずに前駆体を形成し、連続光照射による乾燥とパルス光の多段ステップ照射によって、酸化物多結晶膜が原料塗布から180秒以内に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。連続光とパルス光照射時の昇温機構の違いを用い、酸化物多結晶膜の結晶成長が速やかに促進される。
【0013】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]酸化物材料のナノ粒子を、前記酸化物材料に含まれる金属を含む金属有機化合物を溶解させた溶媒中に分散させてナノ粒子分散液を調製する第1工程と、
前記ナノ粒子分散液を基材に塗布して前駆体膜を形成する第2工程と、
前記前駆体膜に、波長350nm以上の光を含む連続光を20W/cm以上の強度で照射した後、前記前駆体膜に、波長193nm~355nmのいずれかの光を含むパルス光を、該パルス光のパワーの最終値が1.20×10W・s/cm~2.50×10W・s/cmの範囲でp回(p≧200)照射する第3工程と、
を有し、
前記第3工程において、前記パワーの最終値の1/pの値を1パルス当たりの増加速度としてスロープ制御で増加させるか、または、前記スロープ制御における前記パワーの最終値の中央値(1.85×10W・s/cm)に対するスロープ制御直線に対して、前記中央値の±35%の範囲内に収まるように全体を3段階以上に分けたステップ制御によって増加させることにより、酸化物多結晶膜を得る、酸化物多結晶膜の製造方法。
[2]前記連続光の光源は、波長350nm~390nmの範囲内にピーク強度を有する発光ダイオード、波長400nm~480nmの範囲内にピーク強度を有する発光ダイオード、または波長350nm~390nmと波長400~480nmの両方の範囲内に各々ピーク強度を有する発光ダイオードである、[1]に記載の酸化物多結晶膜の製造方法。
[3]前記パルス光の光源は、パルス幅5ns~50nsかつ波長266nm~355nmの固体レーザー、または波長193nm~308nmのエキシマレーザーである、[1]に記載の酸化物多結晶膜の製造方法。
[4]前記酸化物材料は、In、Sn、Zn、Ti、Ga、Ru、LaおよびNiから選択される少なくとも1種の金属を含む酸化物である、[1]に記載の酸化物多結晶膜の製造方法。
[5]前記金属有機化合物は、前記金属を含む炭素数2~30の有機酸、前記金属を含む炭素数6~20ヒドロキシ有機酸、および前記金属を含む芳香族ヒドロキシカルボン酸から選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載の酸化物多結晶膜の製造方法。
[6]前記酸化物多結晶膜の欠損部に、前記ナノ粒子分散液を塗布して前駆体膜を形成する第4工程と、
前記第4工程で形成した前記前駆体膜に、波長350nm以上の光を含む連続光を20W/cm以上の強度で照射した後、前記前駆体膜に、波長193nm~355nmのいずれかの光を含むパルス光を、該パルス光のパワーの最終値が1.20×10W・s/cm~2.50×10W・s/cmの範囲でp回(p≧200)照射する第5工程と、
を有し、
前記第5工程において、前記パワーの最終値の1/pの値を1パルス当たりの増加速度としてスロープ制御で増加させるか、または、前記スロープ制御における前記パワーの最終値の中央値(1.85×10W・s/cm)に対するスロープ制御直線に対して、前記中央値の±35%の範囲内に収まるように全体を3段階以上に分けたステップ制御によって増加させることにより、前記酸化物多結晶膜の欠損部に酸化物多結晶膜を形成する、[1]に記載の酸化物多結晶膜の製造方法。
[7]基材を搬送しながら、前記基材上に酸化物多結晶膜を形成する、酸化物多結晶膜の製造装置であって、
前記基材を搬送する自動搬送部と、
前記自動搬送部の搬送ステージ上に配置された前記基材に、酸化物材料のナノ粒子を、前記酸化物材料の金属成分を含む金属有機化合物を溶解させた溶媒中に分散させてなるナノ粒子分散液を塗布する塗布部と、
前記基材上に形成された前記ナノ粒子分散液からなる前駆体膜に連続光を照射する連続光照射部と、
前記連続光を照射した後の前記前駆体膜にパルス光を照射するパルス光照射部と、
前記パルス光のスロープ制御、または前記パルス光のステップ制御を行うパワー制御部と、
を備え、
前記塗布部、前記連続光照射部、および前記パルス光照射部は、前記自動搬送部による前記基材の搬送方向に沿って、この順に配置されている、酸化物多結晶膜の製造装置。
[8]前記酸化物多結晶膜の欠損部を認識する画像取得部を備え、
前記画像取得部、前記塗布部、前記連続光照射部、および前記パルス光照射部は、前記自動搬送部による前記基材の搬送方向に沿って、この順に配置されている、[7]に記載の酸化物多結晶膜の製造装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、任意の箇所に高速で、不純物としての有機成分の含有量が少なく、緻密化した酸化物多結晶膜が得られる酸化物多結晶膜の製造方法、および酸化物多結晶膜の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る酸化物多結晶膜の製造装置の概略構成を示す模式図である。
図2】実施例1で得られたITO分散液C1に含まれる酸化物ITOナノ粒子の粒度分布を示す図である。
図3】実施例1におけるパルス光の照射のパワー変化のパターンを示す図である。
図4】実施例1で得られたITO膜と光照射を行っていない前駆体膜のX線回折パターンを示す図である。
図5】実施例1において、前駆体膜を形成した直後から、連続光の照射時の前駆体膜の抵抗値変化とパルス光の照射時の前駆体膜の抵抗値変化をモニタリングした結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態による酸化物多結晶膜の製造装置および酸化物多結晶膜の製造方法について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、便宜上、特徴となる部分を拡大して示しており、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。
また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更できる。
【0017】
[酸化物多結晶膜の製造装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る酸化物多結晶膜の製造装置の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、酸化物多結晶膜の製造装置1は、自動搬送部10と、塗布部20と、連続光照射部30と、パルス光照射部40と、光パワー制御部50と、を備える。本実施形態の酸化物多結晶膜の製造装置1は、自動搬送部10で基材100を搬送しながら、基材100上(基材100の一面100a)に酸化物多結晶膜を形成する装置である。
本実施形態の酸化物多結晶膜の製造装置1では、塗布部20、連続光照射部30、およびパルス光照射部40が、自動搬送部10による基材100の搬送方向に沿って、この順に配置されている。図1では、自動搬送部10の搬送ステージ11の上面11aに沿う矢印が、基材100の搬送方向を示す。
【0018】
自動搬送部10は、搬送ステージ11を有し、搬送ステージ11の上面11aにて、図1に示す矢印方向に基材100を搬送する。
【0019】
塗布部20は、自動搬送部10の搬送ステージ11上に配置された基材100に、酸化物材料のナノ粒子を、前記酸化物材料の金属成分を含む金属有機化合物を溶解させた溶媒中に分散させてなるナノ粒子分散液を塗布し、前駆体膜200を形成する。
塗布部20としては、例えば、スピンコート、バーコート、ダイコート等を行うコーティング装置、ジェットディスペンサー装置、インクジェット装置等が挙げられる。
【0020】
連続光照射部30は、基材100上(基材100の一面100a)に形成されたナノ粒子分散液からなる前駆体膜200に連続光を照射する。
連続光照射部30としては、例えば、発光ダイオード(LED)、CW(連続光)レーザーが挙げられる。
【0021】
パルス光照射部40は、連続光照射部30によって連続光を照射した後の前駆体膜200にパルス光を照射する。
パルス光照射部40としては、例えば、固体レーザー、エキシマレーザーが挙げられる。
【0022】
光パワー制御部50は、配線51を介してパルス光照射部40に接続されている。これにより、光パワー制御部50は、パルス光照射部40から前駆体膜200に照射するパルス光のスロープ制御、またはパルス光照射部40から前駆体膜200に照射するパルス光のステップ制御を行う。
光パワー制御部50としては、パルス光のパワーを低強度から高強度まで徐々に変化させるスロープ制御を実現するパワー制御機構が挙げられる。パワー制御機構としては、パルス光照射部40内部に設けられた自動エネルギー制御機構(第1の機構)や、パルス光照射部40の照射エネルギーを一定とし、パルス光の出射口より基材100側に光アッテネータを設置し、光アッテネータの光遮蔽率を自動制御する機構(第2の機構)が挙げられる。パルス光のパワーが安定することから、第2の機構が好ましい。
【0023】
本実施形態の酸化物多結晶膜の製造装置1は、酸化物多結晶膜の欠損部を認識する画像取得部60を備えることが好ましい。
本実施形態の酸化物多結晶膜の製造装置1が画像取得部60を備える場合、画像取得部60、塗布部20、連続光照射部30、およびパルス光照射部40が、自動搬送部10による基材100の搬送方向に沿って、この順に配置される。
【0024】
画像取得部60としては、例えば、AI画像認識装置等の画像診断装置が挙げられる。
画像取得部60を備えることにより、本実施形態の酸化物多結晶膜の製造装置1をオンデマンドの装置とすることができる。
【0025】
本実施形態の酸化物多結晶膜の製造装置1によれば、自動搬送部10の搬送ステージ11の上面11aに基材100を設置し、塗布部20、連続光照射部30、およびパルス光照射部40の順に基材100を搬送することにより、基材100の一面100aに酸化物多結晶膜を自動で形成することができる。また、塗布部20の前段に画像取得部60を設けることにより、酸化物多結晶膜の欠損部を認識して、その欠損部に高速で酸化物多結晶膜を形成し、欠損部を修復することができる。
【0026】
[酸化物多結晶膜の製造方法]
本発明の一実施形態に係る酸化物多結晶膜の製造方法は、酸化物材料のナノ粒子を、前記酸化物材料に含まれる金属を含む金属有機化合物を溶解させた溶媒中に分散させてナノ粒子分散液を調製する第1工程と、前記ナノ粒子分散液を基材に塗布して前駆体膜を形成する第2工程と、前記前駆体膜に、波長350nm以上の光を含む連続光を20W/cm以上の強度で照射した後、前記前駆体膜に、波長193nm~355nmのいずれかの光を含むパルス光を、該パルス光のパワーの最終値が1.20×10W・s/cm~2.50×10W・s/cmの範囲でp回(p≧200)照射する第3工程と、を有する。
【0027】
「第1工程」
ナノ粒子分散液は、酸化物多結晶膜の原料となる酸化物材料のナノ粒子と、前記酸化物材料に含まれる金属を含む金属有機化合物と、溶媒と、を含む。
【0028】
酸化物多結晶膜の原料となる酸化物材料としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、ルテニウム(Ru)、ランタン(La)およびニッケル(Ni)から選択される少なくとも1種類の金属を含む酸化物(金属酸化物)が挙げられる。
前記酸化物材料は、前記金属酸化物の他に、前記金属の原子量比で10atm%以内の範囲で異種金属を含有していてもよい。
【0029】
上記金属酸化物は結晶相を形成する。金属酸化物としては、例えば、InやSnがドープされたスズドープインジウム酸化物(ITO)、SnO、ZnO、TiO、Ga、RuO、LaNiOが挙げられる。
SnOは、Sn原子量比で10%以内のSbやTaを含有していてもよい。Inは、In原子量比で3%以内のTi、Zr、W、Ceを含有していてもよい。ZnOは、Zn原子量比で3%以内のAlやGaを含有していてもよい。TiOは、Ti原子量比で3%以内のNbを含有していてもよい。Gaは、Ga原子量比で3%以内のSnやSiを含有していてもよい。
また、金属酸化物における酸素量は定比組成から、欠損した状態で表されるものであってもよい(例えば、Inに対するIn3-d)。
また、金属酸化物としては、例えば、BaTiOやMnが挙げられる。BaTiOはBaをSrやCaで部分置換あるいは全置換することもできる。MnのMnは、原子量比90%以内のCo、Ni、Cu、Zn、Fe、Al及びZrから選ばれる少なくとも1種の元素で置換することもできる。
【0030】
上記ナノ粒子の平均一次粒子径は0.5nm以上50nm以下が好ましく、1nm以上30nm以下がより好ましい。ナノ粒子の平均一次粒子径が前記下限値未満であると、粒子間空隙が大きくなり、電気伝導性の悪化やパルス光照射時の熱拡散が妨げられ、クラック発生の原因となる。ナノ粒子の平均一次粒子径が前記上限値を超えると、結晶子を増大するためにパルス光照射数を過大に要するため、高速処理が困難となることがある。
【0031】
上記ナノ粒子の平均一次粒子径は、動的光散乱法(光子相関法)粒度分布計測システムによって測定することができる。
【0032】
ナノ粒子分散液の総量(100質量%)に対する、上記ナノ粒子の含有量は、1質量%以上25質量%以下が好ましく、2質量%以上15質量%以下がより好ましい。ナノ粒子の含有量が前記下限値未満であると、前駆体膜の厚さが過大となって、パルス光照射時にクラックの原因となったり、基材と前駆体膜の密着性が低下したりする原因となる。ナノ粒子の含有量が前記上限値を超えると、結晶成長の高速性が得られず、所望の速度で製膜が完了しない。
【0033】
金属有機化合物としては、上記金属を含む炭素数2~30の有機酸、上記金属を含む炭素数6~20ヒドロキシ有機酸、および上記金属を含む芳香族ヒドロキシカルボン酸から選択される少なくとも1種を含む化合物が挙げられる。金属有機化合物としては、例えば、上記金属を含む、β-ジケトナト、ナフテン酸塩、2エチルヘキサン酸塩、アセチルアセトナト塩が挙げられる。
【0034】
ナノ粒子分散液の総量(100質量%)に対する、上記金属有機化合物の含有量は、5質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上25質量%以下がより好ましい。金属有機化合物の含有量が前記下限値未満であると、ナノ粒子分散液の粘性が過大になり、塗布工程(第2工程)に悪影響を及ぼすことがある。金属有機化合物の含有量が前記上限値を超えると、ナノ粒子間隙を埋める効果を果たす効果が十分に得られず、電気伝導性が十分に向上しない。
【0035】
溶媒としては、上記ナノ粒子を分散可能であり、かつ上記金属有機化合物を溶解することができるものであれば、特に限定されず、非極性溶媒および極性溶媒を用いることができる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、イソプロパノール、ブタノール、エタノールが挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶媒は、金属有機化合物の溶解度や、ナノ粒子の分散性、基材にナノ粒子分散液を塗布する際の濡れ性も考慮して選択される。
【0036】
ナノ粒子分散液の総量(100質量%)に対する、上記溶媒の含有量は、50質量%以上85質量%以下が好ましく、60質量%以上80質量%以下がより好ましい。溶媒の含有量が前記下限値未満であると、主成分濃度が低く、一度の塗布工程で所望の膜厚が得られないため、複数回の塗布工程を実施する必要が生じる。その結果、製膜の高速性が失われることがある。溶媒の含有量が前記上限値を超えると、ナノ粒子分散液の粘性が高くなり、前駆体膜の厚さが過大となる結果、パルス光照射時のクラック発生の要因となることがある。
【0037】
ナノ粒子分散液は、ナノ粒子の分散性を向上させるために、分散剤を含んでいてもよい。分散剤としては、アニオン系分散剤またはカチオン系分散剤を用いることができる。ナノ粒子分散液における分散剤の含有量は、光照射時の脱離のためできる限り少量であることが望ましい。
【0038】
ナノ粒子分散液は、ボールミルを用いた湿式粉砕法によって調製することができる。詳細には、ボールミルを用いた湿式粉砕法によって、上記ナノ粒子を、上記金属有機化合物を溶解させた溶媒中に分散させて、上記ナノ粒子の平均二次粒子径が100nm以下であるナノ粒子分散液を調製する。ナノ粒子分散液は、ナノ粒子の一次粒子の単分散液であることが好ましい。ナノ粒子分散液は、平均二次粒子径が100nm以下のナノ粒子の二次粒子を含んでいてもよい。
【0039】
例えば、酸化物多結晶膜としてITO膜を形成する場合、平均粒子径10nm~20nmのITOナノ粒子を、2-エチルヘキサン酸インジウムと2-エチルヘキサン酸スズを溶解したトルエンに加えて混合物とし、この混合物を、ボールミルを用いて撹拌することにより、ITOナノ粒子を粉砕して、ナノ粒子分散液を得る。例えば、膜厚が150nm以上のITO膜を得るためには、ナノ粒子分散液は、ナノ粒子の一次粒子の単分散液であることが好ましいが、ナノ粒子の二次粒子を含んでいてもよい。ナノ粒子の二次粒子の平均二次粒子径は、40nm~80nmが好ましい。
【0040】
「第2工程」
基材にナノ粒子分散液を塗布する方法(塗布方法)としては、例えば、スピンコート法、バーコート法、ダイコート法等のナノ粒子分散液を面状に塗布する方法や、ジェットディスペンサー装置、インクジェット装置等を用いて、基材に直接描画する方法が挙げられる。直接描画する方法は、配線形状やスポット素子形状の酸化物多結晶膜を得る場合に用いられる。基材を平面視した場合の直径が200μm~数mm程度の酸化物多結晶膜を形成したい場合、一滴の液滴量がnLスケールの塗布が可能な塗布装置が好ましく、ジェットディスペンサー装置が好ましい。ジェットディスペンサー装置によれば、一か所当たり数百msで塗布を完了させることもできる。これらの塗布方法によれば、必要な箇所に、簡便かつ高速にナノ粒子分散液からなる前駆体膜を形成することができるため、酸化物多結晶膜の製造プロセスを高速化することができる。
【0041】
基材上に形成するナノ粒子分散液からなる前駆体膜の厚さは、特に限定されず、目的とする酸化物多結晶膜の導電性や、大きさ(面積)等に応じて適宜調整される。第3工程における連続光とパルス光の照射において最適な効果を得るためには、一度の光照射のために用意する前駆体膜の厚さは2μm以下が好ましい。パルス光の照射では、光の侵入長が200nm~500nmとなることが多く、前駆体膜の表面付近の光吸収によるパルス加熱効果を用いた熱伝導を利用しても、前駆体膜の厚さが厚すぎると、前駆体膜の下部まで十分な効果が及ばない場合がある。
【0042】
「第3工程」
第3工程では、まず、上記前駆体膜に、波長350nm以上の光を含む連続光を20W/cm以上の強度で照射する。
前駆体膜に対する連続光の照射は、前駆体膜の乾燥による、前駆体膜の緻密化を促進するために行われる。連続光の照射により、一定の加熱効果を得る必要があるため、波長350nm以上の光を、十分な照射強度で照射する必要がある。波長350nm以上の光を用いることで前駆体膜および基材の表面近傍の光加熱効果も利用し、局所的に80℃以上の加熱効果を得る。これにより、第一段階として、溶媒の揮発を促進し、有機成分の分解までの前駆体の緻密化を進める。
【0043】
連続光の強度は、20W/cm以上であり、24W/cm以上がより好ましい。連続光の強度が前記下限値未満では、十分な溶媒乾燥と前駆体膜の緻密化効果が得られず、その後のパルス光照射工程で十分な効果が得られない。
【0044】
連続光の照射時間は、30秒以上150秒以下が好ましく、40秒以上90秒以下がより好ましい。連続光の照射時間が前記下限値以上であると、十分な溶媒乾燥の効果が得られ、後段のパルス光の照射を行う際に、酸化物多結晶膜の劣化が生じることを抑制できる。連続光の照射時間が前記上限値以下であると、十分な溶媒乾燥と前駆体膜の緻密化効果が得られず、その後のパルス光照射工程で十分な効果が得られない。
【0045】
連続光を照射した際の前駆体膜中の温度分布は、厚さ2μm程度の前駆体膜に対して均一な昇温状態になることが好ましい。光源(連続光照射装置)としては、十分な光量が得られるものであれば特に限定されないが、局所的に酸化物多結晶膜を形成することを前提とするならば、集光したLEDを用いることができる。LEDを用いる場合、光源サイズが小さいため、局所的に酸化物多結晶膜を形成することを可能にする利点がある。局所的に酸化物多結晶膜を形成する場合、CWレーザーも利用可能である。大面積処理には、LEDをアレイ配列させた大面積用光源が利用可能である。
【0046】
連続光の波長は、前駆体膜に含まれる材料の光吸収がある波長を選択することが好ましい。連続光の光源は、波長350nm~390nmの範囲内にピーク強度を有するLED、波長400nm~480nmの範囲内にピーク強度を有するLED、または波長350nm~390nmと波長400~480nmの両方の範囲内に各々ピーク強度を有するLEDが好ましい。なかでも、波長350nm~390nmの範囲内にピーク強度を有するLEDがより好ましい。波長350nm~390nmの範囲内にピーク強度を有するLEDが発する連続光は、20W/cm以上の強度で溶媒乾燥の効果が得られる。
【0047】
第3工程では、連続光を照射した後の前駆体膜に、波長193nm~355nmのいずれかの光を含むパルス光(紫外パルス光)を、そのパルス光のパワーの最終値が1.20×10W・s/cm~2.50×10W・s/cmの範囲でp回(p≧200)照射する。
【0048】
上記パワーの最終値の1/pの値を1パルス当たりの増加速度としてスロープ制御で増加させるか、または、前記スロープ制御における上記パワーの最終値の中央値(1.85×10W・s/cm)に対するスロープ制御直線に対して、前記中央値の±35%の範囲内に収まるように全体を3段階以上に分けたステップ制御によって増加させる。
【0049】
パルス光の光源としては、パルス幅5ns~50nsかつ波長266nm~355nmの固体レーザー、または波長193nm~308nmのエキシマレーザーが好ましい。例えば、波長266nmの固体レーザーや、波長248nmのエキシマレーザー等が好適な光源である。前駆体膜にパルス光を照射することによって、前駆体膜の緻密化と多結晶成長の両方を進行させることができる。また、パルス光の光源としては、1μs以上のパルス幅を有するフラッシュランプを用いることもできる。
【0050】
従来の紫外パルス光の照射による多結晶成長では、紫外パルス光の照射は、緻密化された前駆体からの結晶成長に対するエネルギー投入という役割が強い。しかしながら、本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法は、前駆体膜に連続光を照射した後、さらに、前駆体膜に紫外パルス光を照射して、酸化物多結晶膜を結晶化するために、前駆体膜を緻密化する点が、従来の方法とは大きく異なる。連続光を照射した後の前駆体膜は、溶媒の乾燥と前駆体膜中の一部の有機成分の脱離がなされているものの、密度が十分に高くなっていない。そこで、本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法では、パルス光の照射強度を最小から最終目的値まで徐々に上げることによって、低照射強度のパルス光で有機成分を分解し、中程度の照射強度のパルス光で前駆体膜に含まれる酸化物材料をアモルファス酸化物化すると共に、前駆体膜を緻密化する。さらに、高照射強度のパルス光で前駆体膜に含まれる酸化物材料の多結晶成長を開始・促進させる。従来、有機成分の分解、および前駆体膜の緻密化は、電気炉加熱や高強度の連続光照射で行っていたが、耐熱性に劣る基材への熱ダメージが避けられなかった。そのため、本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法では、前駆体膜への紫外パルス光の照射により、有機成分の分解、および前駆体膜の緻密化を行う。
【0051】
本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法におけるパルス光の照射強度は、フルエンス(J/cm)でなく、パワー(W・s/cm)で表す。特に中程度の照射強度のパルス光で前駆体膜に含まれる酸化物材料をアモルファス酸化物化すると共に、前駆体膜を緻密化する場合、パルス幅を考慮したレーザー強度の時間変化に対する尖頭値が大きく影響するため、パワーで評価することが重要となる。
【0052】
本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法では、有機成分の分解、前駆体膜に含まれる酸化物材料のアモルファス酸化物化と前駆体膜の緻密化、前駆体膜に含まれる酸化物材料の多結晶成長の開始・促進を順に行うために、パルス光のパワーを低強度から高強度まで徐々に変化させる。パルス光のパワーの最終値が1.20×10W・s/cm~2.50×10W・s/cmの範囲でp回(p≧200)照射する場合、前記最終値の1/pの値を1パルス当たりの増加速度として(例えば、p=1000で最終値が1.20×10W・s/cmの場合は1.2×10W・s/cm/pulse、2.50×10W・s/cmの場合は2.5×10W・s/cm/pulse)、スロープ制御で増加させることにより、酸化物多結晶膜を得ることができる。また、スロープ制御における前記最終値の中央値(1.85×10W・s/cm)に対するスロープ制御直線に対して、前記中央値の±35%の範囲内に収まるように全体を3段階以上に分けたステップ制御(図3参照)によって増加させることにより、酸化物多結晶膜を得ることができる。
【0053】
多くの場合、結晶成長はパルス光のパワーが1.00×10W・s/cm以上の領域で進行し、波長193nm~355nmの短波長を含むパルス光の照射による前駆体膜の表面近傍の吸収を主に利用し、前駆体膜の表面からの熱拡散により結晶化を促進する。短波長の光は、特に反応界面の活性化にも寄与し、結晶子の増大を促進することが知られている。パルス光のパワーが1.00×10W・s/cm以上の領域においては、材料の密度、熱伝導率、比熱の値にも依存するが、前駆体膜の表面近傍のみでおよそ数百ナノ秒間、概ね500℃~1500℃の領域にパルス昇温することを想定し、イオンマイグレーションを促進して結晶成長を速やかに進める効果を得る。このとき、前駆体膜に含まれる酸化物材料の融点を超えて溶融再結晶するような温度は、前駆体膜に大きなクラックが生じたり、前駆体膜の表面が疎化することに繋がったりするため好ましくない。また、パルス光のパワーについて、想定するパルス光の加熱の最高温度を、前駆体膜に含まれる酸化物材料の融点以下程度に制御することが好ましい。
【0054】
例えば、前駆体膜に連続光を照射した後、上述のスロープ制御またはステップ制御されたパルス光の照射を行わずに、直接、最終値のみで、前駆体膜にパルス光を照射した場合、前駆体膜が緻密化されていないため、乾燥して得られた酸化物多結晶膜はアブレーションによって表面が劣化し、十分な導電性を有する膜ではない。
また、上述のステップ制御を2段階とした場合、前駆体膜の最適化が十分に進まず、有機成分の脱離や、前駆体膜の緻密化が不十分になるため、乾燥して得られた酸化物多結晶膜はアブレーションによって表面が劣化し、十分な導電性を有する膜ではない。
【0055】
以上の理由から、有機成分の分解や、前駆体膜の緻密化を十分に行うためには、前駆体膜に、上述のスロープ制御またはステップ制御されたパルス光を照射する必要がある。このようにパルス光のパワーを逐次、増加することによって、電気炉加熱等に頼っていた乾燥前駆体膜形成工程を省略して、光照射のみによる酸化物多結晶膜の形成が可能となる。加えて、酸化物多結晶膜の形成の高速化を図ることができる。
【0056】
なお、パルス光のパワーが最終値に到達した後、パルス光の照射を継続してもよい。パルス光の照射を継続することにより、前駆体膜に含まれる酸化物材料の結晶子をさらに増大させることができる。概ねパルス光を照射する回数が20000回に到達するまでに、前駆体膜に含まれる酸化物材料の結晶化が完了する。
【0057】
「第4工程」
本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法は、酸化物多結晶膜の欠損部に、ナノ粒子分散液を塗布して前駆体膜を形成する第4工程を有していてもよい。
第4工程は、上述の第2工程と同様に行う。
第4工程を行う前に、上記の画像取得部60を用いて、酸化物多結晶膜の欠損部を認識して、ナノ粒子分散液を塗布する場所を特定する。
【0058】
「第5工程」
本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法は、第4工程で酸化物多結晶膜の欠損部に形成した前駆体膜に、波長350nm以上の光を含む連続光を20W/cm以上の強度で照射した後、前記前駆体膜に、波長193nm~355nmのいずれかの光を含むパルス光を、そのパルス光のパワーの最終値が1.20×10W・s/cm~2.50×10W・s/cmの範囲でp回(p≧200)照射する。
第5工程は、上述の第3工程と同様に行う。
【0059】
上述の第4工程と第5工程により、酸化物多結晶膜の欠損部を修復することができる。
【0060】
本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法によれば、基材上に形成した前駆体膜に連続光を照射した後、前駆体膜に上述のスロープ制御またはステップ制御されたパルス光の照射を行うことにより、電気炉加熱等による乾燥前駆体膜形成工程を省略して、光照射のみにより、有機成分の含有量が少なく、緻密化した酸化物多結晶膜の形成が可能となる。加えて、酸化物多結晶膜の形成の高速化を図ることができる。また、本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法によれば、180秒以内に、酸化物多結晶膜の抵抗値を5.0×10-2Ω・cm以下とすることができる。
【0061】
また、本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法によれば、上述の第1工程~第5工程を実行する自動製膜装置を構築することができる。
【0062】
本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法は、必要な箇所に高速で酸化物導電膜を形成することができるため、以下のような用途に用いることができる。
ディスプレイ、太陽電池等に用いられる酸化物透明電極配線の製造時に発生する部分的欠陥を自動修復して、従来、廃棄されてきたものを高速にリマニュファクチャリングすることができる。これにより、製造ロスを大きく低減し、省資源性を高めることができる。また、燃料電池のセパレーター金属表面への中間層の高速形成等、導電性酸化物膜を必要とする場所へ高速かつ高い省資源性を実現することができる。本実施形態の酸化物多結晶膜の製造方法によれば、デバイス特性を最大化するための表面機能付与を低コストで実現することができるため、様々な用途へ実用展開が可能となるものと期待される。
【実施例0063】
以下、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
In:Snの物質量比(いわゆるモル比)が0.95:0.05となるようにSYM-IN02(Symmetrix社製)を2.85mL、SYM-SN05(Symmetrix社製)を0.15mL、および分散剤DIS-S1(坂本薬品工業製)0.1gを13mLのトルエン中に溶解させ、1次粒子径18nmのITO(In:Sn=95:5)のナノ粒子(US Research Nanomaterials製)1.5gを加えて、ボールミルで6時間粉砕混合し、粗大沈降粒子を除いてITO分散液C1を得た。
【0065】
ITO分散液C1に含まれる酸化物ITOナノ粒子の粒度分布を、粒子径測定システム(商品名:ELSZ-1000、大塚電子社製)により測定した。結果を図1に示す。
図1に示す結果から、酸化物ITOナノ粒子の粒子径は50nm~150nmの範囲で分布しており、粒子数の分布において70.6nmのメディアン径をもつことが確認された。体積分率でも粒子直径84.9nmがメディアン径となり、概ね100nm以下の2次粒子径を有するナノ粒子分散液が得られた。
【0066】
次に、得られたITO分散液C1をガラス基材上へ1500rpmの回転速度で5秒間スピンコートして、良好な塗布性のもと前駆体膜を形成できることを確認した。
前駆体膜に対して24W/cmの強度で365nmの波長を有する紫外LED光を60秒間照射し、前駆体膜に含まれる溶媒を揮発させることを目的として、前駆体膜を乾燥した。紫外LED光照射から連続して波長266nmのYAGレーザー(第4高調波、パルス幅10ns)を10Hzで3.0×10W・s/cmのパワーで200パルス、5.0×10W・s/cmのパワーで200パルス、8.5×10W・s/cmのパワーで200パルス、1.2×10W・s/cmのパワーで200パルス、1.5×10W・s/cmのパワーで200パルスの順に、5段階に分けて連続照射を行い、ITO膜を得た。実施例1におけるパルス光の照射のパワー変化のパターンを図3に示す。
【0067】
X線回折装置(商品名:SmartLab、リガク社製)を用いて、得られたITO膜を分析した。結果を図4に示す。なお、図4は、実施例1で得られたITO膜と光照射を行っていない前駆体膜のX線回折パターンを示す図である。
図4に示すX線回折パターンを確認したところ、光照射を行っていない前駆体膜と比較して、実施例1で得られたITO膜では、X線回折ピークが明確に増大し、多結晶成長が進行したことが確認された。
【0068】
また、実施例1で前駆体膜を形成した直後から、連続光の照射時の前駆体膜の抵抗値変化とパルス光の照射時の前駆体膜の抵抗値変化をモニタリングした。結果を図5に示す。
図5に示す結果から、抵抗値が前駆体膜を形成した直後から30秒程度で数GΩ台まで低下し、その後60秒程度まで減少し続け、10kΩ台となった。60秒以降はパルスレーザー光の照射が開始し、ステップ照射中、抵抗値が段階的に低下し、160秒後には抵抗値が終段階に収束した。この段階で本条件での結晶成長過程は完了し、抵抗率1.3×10-2Ω・cmのITO多結晶膜が得られた。
【0069】
[実施例2]
紫外LED光の照射時間を30秒としたこと以外は実施例1と同一の工程を行って、ITO膜を作製した。その結果、抵抗率5.0×10-2Ω・cm以下のITO多結晶膜が得られた。
【0070】
[実施例3]
5段階のパルス光の照射の5段階目の照射パワーを2.4×10W・s/cmに変更したこと以外は実施例1と同一の工程を行って、ITO膜を作製した。その結果、抵抗率5.0×10-2Ω・cm以下のITO多結晶膜が得られた。
【0071】
[実施例4]
Sn:Sbの物質量比(いわゆるモル比)が0.9:0.1となるようにSYM-SN05(Symmetrix社製)を3.5mL、SYM-SB05(Symmetrix社製)を0.65mL、および分散剤SN9228(サンノプコ製)0.167gを12mLのトルエン中に溶解させ、1次粒子径22~44nmの10%のSbをドーピングしたSnOのナノ粒子(Alfa Aesar製)0.9gを加えてボールミルで7時間粉砕混合し、粗大沈降粒子を除いてSbドープSnO(ATO)分散液C2を得た。
【0072】
ATO分散液C2に含まれる酸化物ATOナノ粒子のナノ粒子粒度分布を、実施例1と同様にして測定した。その結果、酸化物ATOナノ粒子の粒子径は1nm~2nmの範囲で分布しており、100nm以下の2次粒子直径を有するナノ粒子分散液が得られた。
【0073】
次に、得られたATO分散液C2をガラス基材上へ1500rpmの回転速度で5秒間スピンコートして、良好な塗布性のもと前駆体膜を形成できることを確認した。
前駆体膜に対して24W/cmの照度で365nmの波長を有する紫外LED光を60秒間照射し、前駆体膜に含まれる溶媒を揮発させることを目的として、前駆体膜を乾燥した。紫外LED光照射から連続して波長266nmのYAGレーザー(第4高調波、パルス幅10ns)を10Hzで3.0×10W・s/cmのパワーで200パルス、5.0×10W・s/cmのパワーで200パルス、8.5×10W・s/cmのパワーで200パルス、1.2×10W・s/cmのパワーで200パルス、1.5×10W・s/cmのパワーで200パルスの順に、5段階に分けて連続照射を行い、ATO膜を得た。
【0074】
X線回折装置(商品名:SmartLab、リガク社製)を用いて、得られたATO膜を分析した。ATO膜のX線回折パターンを確認したところ、光照射を行っていない前駆体膜と比較して、実施例4で得られたATO膜では、X線回折ピークが増大し、アブレーションによる膜質が劣化なく、多結晶成長が進行したことが確認された。
【0075】
[実施例5]
Ba:Tiの物質量比(いわゆるモル比)が1.0:1.0となるようにSYM-BA05(Symmetrix社製)を2.0mL、SYM-TI05(Symmetrix社製)を、2.0mLを2.0mLのトルエン中に溶解させ、1次粒子径50~90nmのBaTiOのナノ粒子(BT-Min、NYACOL製)6.0mLを加えてボールミルで3時間混合し、BaTiO(BTO)分散液C3を得た。
【0076】
次に、得られたBTO分散液C3をガラス基材上へ1500rpmの回転速度で5秒間スピンコートして、良好な塗布性のもと前駆体膜を形成できることを確認した。
前駆体膜に対して24W/cmの照度で365nmの波長を有する紫外LED光を60秒間照射し、前駆体膜に含まれる溶媒を揮発させることを目的として、前駆体膜を乾燥した。紫外LED光照射から連続して波長266nmのYAGレーザー(第4高調波、パルス幅10ns)を1.85×10W・s/cm/pulseの傾きで1.85×10W・s/cmまで1000パルス照射を行い、BTO膜を得た。
【0077】
X線回折装置(商品名:SmartLab、リガク社製)を用いて、得られたBTO膜を分析した。BTO膜のX線回折パターンを確認したところ、光照射を行っていない前駆体膜と比較して、実施例5で得られたBTO膜では、X線回折ピークが増大し、アブレーションによる膜質が劣化なく、多結晶成長が進行したことが確認された。
【0078】
[実施例6]
Mn:Co:Niの物質量比(いわゆるモル比)が1.5:1.0:0.5となるようにニッカオクチックスMn(日本化学産業製)を1.43mL、2エチルヘキサン酸コバルトミネラルスピリット溶液(Strem製)を0.61mL、ニッカオクチックスNi(日本化学産業製)を、0.58mLを12mLのトルエン中に溶解させ、Mn1.5Co1.0Ni0.5粉体1.5gを加えてボールミルで12時間混合し、Mn1.5Co1.0Ni0.5(MCN)分散液C4を得た。
【0079】
次に、得られたMCN分散液C4をガラス基材上へ3000rpmの回転速度で10秒間スピンコートして、良好な塗布性のもと前駆体膜を形成できることを確認した。
前駆体膜に対して24W/cmの照度で365nmの波長を有する紫外LED光を60秒間照射し、前駆体膜に含まれる溶媒を揮発させることを目的として、前駆体膜を乾燥した。紫外LED光照射から連続して波長266nmのYAGレーザー(第4高調波、パルス幅10ns)を1.85×10W・s/cm/pulseの傾きで1.85×10W・s/cmまで1000パルス照射を行い、MCN膜を得た。
【0080】
X線回折装置(商品名:SmartLab、リガク社製)を用いて、得られたMCN膜を分析した。MCN膜のX線回折パターンを確認したところ、光照射を行っていない前駆体膜と比較して、実施例6で得られたMCN膜では、X線回折ピークが増大し、アブレーションによる膜質が劣化なく、多結晶成長が進行したことが確認された。
【0081】
[比較例1]
紫外LED光の照射を行わずに、レーザー照射を行ったこと以外は実施例1と同一の工程を行って、ITO膜を作製した。その結果、ITO膜にはアブレーションに起因するクラックが発生し、ITO膜の抵抗値を十分に低減することができなかった。
【0082】
[比較例2]
5段階のパルス光の照射の5段階目の照射パワーを3.0×10W・s/cmに変更したこと以外は実施例1と同一の工程を行って、ITO膜を作製した。その結果、ITO膜にはアブレーションに起因するクラックが発生し、ITO膜の抵抗値を十分に低減することができなかった。
【0083】
[比較例3]
5段階のパルス光の照射の1段階目の照射パワーを1.5×10W・s/cmに変更したこと以外は実施例1と同一の工程を行って、ITO膜を作製した。その結果、ITO膜にはアブレーションに起因するクラックが発生し、ITO膜の抵抗値を十分に低減することができなかった。
【0084】
[比較例4]
パルス光の照射をステップ制御せずに、照射パワーを1.5×10W・s/cmのみでパルス光の照射を行ったこと以外は実施例1と同一の工程を行って、ITO膜を作製した。その結果、ITO膜にはアブレーションに起因する表面劣化が発生し、ITO膜の抵抗値を十分に低減することができなかった。
【0085】
[比較例5]
紫外LED光の照射時間を10秒としたこと以外は実施例1と同一の工程を行って、ITO膜を作製した。その結果、ITO膜にはアブレーションに起因するクラックが発生し、ITO膜の抵抗値を十分に低減することができなかった。
【0086】
[比較例6]
紫外LED光の強度を12W/cmとしたこと以外は実施例1と同一の工程を行って、ITO膜を作製した。その結果、ITO膜にはアブレーションに起因するクラックが発生し、ITO膜の抵抗値を十分に低減することができなかった。
【0087】
[比較例7]
パルス光の照射をステップ制御せずに、照射パワーを3.0×10W・s/cmのみでパルス光の照射を行ったこと以外は実施例1と同一の工程を行って、ITO膜を作製した。その結果、ITO膜にはアブレーションに起因する表面劣化が発生し、ITO膜が白濁してX線回折ピークも小さく、ITO膜の抵抗値を十分に低減することができなかった。
【0088】
[比較例8]
5段階のパルス光の照射の5段階目の照射パワーを3.0×10W・s/cmに変更したこと以外は実施例4と同一の工程を行って、ATO膜を作製した。その結果、ATO膜にはアブレーションに起因する表面劣化が発生し、ATO膜の抵抗値を十分に低減することができなかった。
【0089】
[比較例9]
パルス光の照射をステップ制御せずに、照射パワーを1.5×10W・s/cmのみでパルス光の照射を行ったこと以外は実施例4と同一の工程を行って、ATO膜を作製した。その結果、ATO膜にはアブレーションに起因する表面劣化が発生し、結晶性の良いATO膜が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の酸化物多結晶膜の製造方法、および酸化物多結晶膜の製造装置は、基材の加熱を必要とせずに、光照射を主とした工程によって、酸化物多結晶膜の前駆体膜の結晶化を完了させることを特徴とし、極めて高速に結晶成長を進行させることが可能である。本発明の酸化物多結晶膜の製造方法、および酸化物多結晶膜の製造装置は、光照射装置の光学系を最適化すれば、酸化物多結晶膜の形成場所、形状や大きさに制約されずに高速形成が可能である。そのため、本発明の酸化物多結晶膜の製造方法、および酸化物多結晶膜の製造装置は、配線形成もしくは配線欠損の修復、あるいは導電膜中間層の高速形成等をオンデマンド性とコストメリットの高い導電膜形成手法としての利用が期待できる。
【符号の説明】
【0091】
1 酸化物多結晶膜の製造装置
10 自動搬送部
20 塗布部
30 連続光照射部
40 パルス光照射部
50 光パワー制御部
60 画像取得部
100 基材
200 前駆体膜
図1
図2
図3
図4
図5