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特開2024-80253組織状植物たん白、及び組織状植物たん白の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080253
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】組織状植物たん白、及び組織状植物たん白の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/14 20060101AFI20240606BHJP
   A23J 3/22 20060101ALI20240606BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240606BHJP
【FI】
A23J3/14
A23J3/22
A23L5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193295
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】本間 真彦
【テーマコード(参考)】
4B035
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LC03
4B035LC06
4B035LC11
4B035LC16
4B035LE05
4B035LE07
4B035LE20
4B035LG15
4B035LG31
4B035LG33
4B035LP02
4B035LP07
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP25
4B035LP32
4B035LP55
4B035LT01
4B035LT05
(57)【要約】
【課題】吸水処理せず、直接喫食しても、風味、食感が良好で、汎用性が高い組織状植物たん白、及びそのような組織状植物たん白の製造方法を提供する。
【解決手段】
水分が5質量%以下、油分が5質量%以下、NSIが20以下である焙煎組織状植物たん白、並びに本発明の焙煎組織状植物たん白を製造する方法であって、植物たん白原料を含む材料を、水と共に高温高圧処理して組織化及び膨化する工程、及び得られた組織化膨化物を焙煎処理する工程を含む焙煎組織状植物たん白の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分が5質量%以下、油分が5質量%以下、水溶性窒素指数(NSI)が20以下である焙煎組織状植物たん白。
【請求項2】
遊離アミノ酸含有量が、3000ppm以下である請求項1に記載の焙煎組織状植物たん白。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の焙煎組織状植物たん白を製造する方法であって、
植物たん白原料を含む材料を、水と共に高温高圧処理して組織化及び膨化する工程、及び
得られた組織化膨化物を焙煎処理する工程を含む焙煎組織状植物たん白の製造方法。
【請求項4】
前記焙煎処理する工程が、130~300℃で、30~180秒間焙煎処理する工程である請求項3に記載の焙煎組織状植物たん白の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の焙煎組織状植物たん白を含む食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織状植物たん白、及び組織状植物たん白の製造方法に関し、特に、直接喫食しても風味、食感が良好な組織状植物たん白、及びそのような組織状植物たん白の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、組織状植物たん白(粒状植物たん白、TVP(textured vegetable protein)とも称される)は、脱脂大豆等の植物たん白を原料とし、押出成形機等で高温高圧処理して組織化、膨化等することによって製造される。組織状植物たん白は、通常、吸水処理(湯戻しとも称される)されて、例えば、食肉加工品に副原料として混合されたり、食肉代替品として加工食品に混合されたり、様々な料理に利用される。一方、組織状植物たん白を、吸水処理せず、スナック食品、チョコレート菓子のパフ、お茶漬け用のあられ、スープやサラダのトッピングのクルトンのように直接喫食することは、風味や食感が適さない場合が多く、余り実施されていない。
【0003】
従来から、組織状植物たん白を吸水処理せずに、スナック様食品や菓子材料として直接喫食する技術が開発されている。例えば、特許文献1では、組織状たん白をフライすることにより、組織状たん白がもつ肉的な歯ごたえのある食感を、サクサクと砕けるような軽い食感にし、以ってスナック様食品を製造することを目的とし、水分10%以下の組織状たん白を、油脂を用いて135~145℃で30~90秒間フライしたのち、調香味付けすることを特徴とするスナック様食品の製造法が開示されている。また、特許文献2では、軽くてしかもサクイ食感を有するクッキーを目的とし、小麦粉、油脂、糖類及び見かけ比重0.3以下の粒状大豆蛋白を含むクッキーが開示されており、特許文献3では、ソフトな焼き菓子であって、食べると中にクリスピーな食感を感じることができるソフトな焼き菓子を目的とし、水分活性0.5~0.9であって、乾燥固形分の粗蛋白含量が15~95重量%のパフを含むことを特徴とするクリスピーな食感を有するソフトな焼き菓子が開示されている。さらに、特許文献4では、様々な加工食品に利用することができる色調、風味、食感に優れた植物蛋白食品素材の提供を目的とし、組織状植物蛋白を膨潤後に乾燥させたものであることを特徴とする植物蛋白食品素材が開示されており、この場合、膨潤後の乾燥は真空乾燥が好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-96949号公報
【特許文献2】特開平3-67536号公報
【特許文献3】特開2009-27956号公報
【特許文献4】特開2006-129703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術のように油脂でフライした場合、組織状植物たん白が油っぽくなり、用途が限定される場合がある。また、特許文献2及び特許文献3の技術は、用途がクッキーや焼き菓子材料に限定されており、汎用性が低い。さらに、特許文献4の技術のように、組織状植物たん白を膨潤後、乾燥させただけでは、風味や食感の向上が十分とは言えない場合がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、吸水処理せず、直接喫食しても、風味、食感が良好で、汎用性が高い組織状植物たん白、及びそのような組織状植物たん白の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、組織状植物たん白を、焙煎処理し、水分、油分、水溶性窒素指数(以下、NSIと称する)を所定のレベルにすることで、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、上記目的は、水分が5質量%以下、油分が5質量%以下、NSIが20以下である焙煎組織状植物たん白によって達成される。また、上記目的は、本発明の焙煎組織状植物たん白を製造する方法であって、植物たん白原料を含む材料を、水と共に高温高圧処理して組織化及び膨化する工程、及び得られた組織化膨化物を焙煎処理する工程を含む焙煎組織状植物たん白の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、吸水処理せず、直接喫食しても、風味、食感が良好で、スナック食品、チョコレート菓子のパフ、お茶漬け用のあられ、スープやサラダのトッピングのクルトンのように直接喫食することが可能な、汎用性が高い組織状植物たん白製品である焙煎組織状植物たん白を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[焙煎組織状植物たん白]
本発明の焙煎組織状植物たん白は、水分が5質量%以下、油分が5質量%以下、NSIが20以下である。組織状植物たん白は、一般に、脱脂大豆、濃縮大豆たん白、分離大豆たん白、小麦たん白、エンドウ豆たん白、ヒヨコ豆たん白等の植物性たん白と、必要に応じて副原料等の材料に加水し、エクストルーダ等の押出成形機等を用いて、高温高圧処理し、組織化、膨化させ、次いで細断、乾燥・冷却、整粒工程を経て製造されるものであり、例えば、粒状大豆たん白等が挙げられる。このような通常の組織状植物たん白は、上述の通り、吸水処理せずに、直接喫食することは、風味や食感が適さない場合が多く、実施されていなかった。特許文献1では、「スナック様食品」として、油脂でフライした組織状たん白が開示されているが、この場合、組織状植物たん白の油分が高く、油っぽくなり、風味改善効果が不十分であった。本発明においては、組織状植物たん白を焙煎処理により、所定の水分、油分、NSIに調整した焙煎組織状植物たん白とすることで、吸水処理せず、直接喫食しても、風味、食感が良好な汎用性が高い組織状植物たん白製品が得られることが見出された。本発明において、水分は、基準油脂分析試験法(1.4.1-2013、日本油化学会)に基づいて測定し、油分は基準油脂分析試験法(参2.1.2-2013、日本油化学会)に基づいて測定した。また、NSIは脱脂大豆の熱変性等の変性度の指標として用いられ、一般にNSIが低い程、たん白質の変性度が高い。NSIは、後述する実施例に示した方法で測定した。なお、本発明において、「焙煎処理」は、乾煎りとも称され、熱媒体として、油や水を用いずに加熱する加熱処理方法であり、「焙煎組織状植物たん白」は、焙煎処理された組織状植物たん白のことを意味する。
【0011】
本発明の焙煎組織状植物たん白において、水分は、4質量%以下が好ましく、0.2~3質量%がより好ましく、0.5~2質量%が特に好ましい。また、油分は、4質量%以下が好ましく、1~3質量%がより好ましく、1.5~3質量%がさらに好ましい。また、NSIは、4~18が好ましく、5~15がさらに好ましく、6~13が特に好ましい。さらに、本発明の焙煎組織状植物たん白は、遊離アミノ酸含有量が、3000ppm以下であることが好ましく、2800ppm以下であることがより好ましい。後述する通り、本発明者の検討によって、焙煎処理により、焙煎組織状植物たん白中の遊離アミノ酸含有量が低下することが認められ、前記遊離アミノ酸含有量の低下は、良好な風味に寄与することが見出された。本発明の焙煎組織状植物たん白の遊離アミノ酸含有量は、1000ppm以上が好ましく、1500ppm以上がより好ましい。なお、遊離アミノ酸総量は、後述する実施例に示した方法で測定した。本発明の焙煎組織状植物たん白の大きさ、形状は特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができる。前記焙煎組織状植物たん白の形状は、焙煎処理し易い点で、粒状が好ましく、大きさは、直接喫食し易いように、通常、長径が1~15mmであり、好ましくは2~10mmである。前記焙煎組織状植物たん白の焙煎処理する前の組織状植物たん白に、特に制限はない。組織状植物たん白は、一般に、脱脂大豆、濃縮大豆たん白、分離大豆たん白、小麦たん白等の植物たん白原料を含む材料を、水と共に高温高圧処理して組織化及び膨化処理して製造される組織化膨化物である。焙煎処理する前の組織状植物たん白は、得られる焙煎組織状植物たん白の風味、食感が良好な点で、植物たん白原料として脱脂大豆等の大豆たん白を用いた粒状大豆たん白(粒状の組織状大豆たん白とも称される)であることが好ましい。本発明の焙煎組織状植物たん白は、吸水処理をせずに容易に使用することができるので、スナック食品として直接喫食したり、チョコレート菓子のパフ等の菓子材料として使用したり、お茶漬け用のあられ、スープやサラダのトッピングのクルトン等の代わりに、種々の食品とともに喫食したりすることができる。
【0012】
[焙煎組織状植物たん白の製造方法]
本発明の焙煎組織状植物たん白の製造方法は、本発明の焙煎組織状植物たん白を製造する方法であって、植物たん白原料を含む材料を、水と共に高温高圧処理して組織化及び膨化する工程、及び得られた組織化膨化物を焙煎処理する工程を含む。前記植物たん白原料は、脱脂大豆、濃縮大豆たん白、分離大豆たん白、小麦グルテン等の植物性たん白が挙げられる。植物たん白原料は、得られる焙煎組織状植物たん白の風味、食感が良好な点で、脱脂大豆、濃縮大豆たん白、分離大豆たん白等の大豆たん白が好ましい。
【0013】
本発明において、組織化膨化工程に用いる材料は、植物たん白原料及び水以外のその他の材料を含んでいてもよい。例えば、乳たん白、卵たん白等の他のたん白材料;澱粉;食用油脂;食物繊維;調味料;無機塩類、ビタミン類、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、保存料、増粘剤、色素、香料等の添加剤を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。前記組織化膨化工程は、組織状植物たん白を製造する工程と同様であり、植物たん白原料を含む材料を、水と共に高温高圧処理して組織化及び膨化する工程を含めば特に制限はない。前記高温高圧処理は、例えば、二軸エクストルーダ等の押出成形機を用いることができる。高温高圧処理後の膨化物を細断、乾燥、冷却、整粒工程等により所望の形態の組織化膨化物を製造することができる。本発明において、組織化膨化物の形態は、例えば、粒状、フレーク状等が挙げられる。次の焙煎処理する工程において均一に焙煎し易い点で、粒状であることが好ましい。大きさは、直接喫食し易いように、通常、長径が1~20mmであり、好ましくは3~12mmである。本発明において、組織化膨化物の水分、油分、及びNSIは、焙煎処理後に、本発明の焙煎組織状植物たん白の規定、すなわち、水分5質量%以下、油分5質量%以下、NSIが20以下にすることができれば、特に制限はない。後述する焙煎条件との関係で、組織化膨化物の水分は10質量%以下が好ましく、油分は、1%以下が好ましく、NSIは30以下が好ましい。
【0014】
本発明において、焙煎処理工程は、常法に従って実施することができる。例えば、回転式焙煎機、振動流動床式連続焙煎機、ロータリー流動焙焼装置、ガス流動層焙煎装置等の一般的な焙煎機を使用することで、食材を撹拌等により動かしながら、むらなく焙煎することができる。焙煎温度は、通常100~330℃であり、130~300℃が好ましく、180~300℃がより好ましく、200~250℃がさらに好ましい。焙煎時間は、通常20~200秒間であり、30~180秒間が好ましい。焙煎温度及び焙煎時間をこの範囲にすることで良好な風味が得られやすい。上記の水分、油分、及びNSIの組織化膨化物であれば、上記の焙煎条件で、焙煎組織状植物たん白の水分、油分、及びNSIが本発明の焙煎組織状植物たん白の規定に容易に調整することができる。なお、前記組織化膨化工程と前記焙煎処理工程は、連続して行ってもよく、組織化膨化工程で得られた組織化膨化物(すなわち、組織状植物たん白)を製品として保存し、必要に応じて、焙煎処理工程を行い、焙煎組織状植物たん白を製造してもよい。したがって、本発明において、組織化膨化物は、市販の組織状植物たん白を適宜選択して使用することができる。
【0015】
[食品]
本発明の食品は、本発明の焙煎組織状植物たん白を含む。本発明の焙煎組織状植物たん白は、吸水処理せず、直接喫食しても、風味、食感が良好で、容易に使用することができるので、種々の食品に利用することができる。本発明の食品としては、例えば、本発明の焙煎組織状植物たん白を、塩、アミノ酸、スパイス、エキス類等で調味したスナック食品、チョコレート菓子のパフ等の菓子材料として使用した菓子類、お茶漬け用のあられ、スープやサラダのトッピングのクルトン等の代わりに用いた種々の食品が挙げられる。なお、後述する実施例に示す通り、本発明の焙煎組織状植物たん白は、市販のクルトンと比較して、吸水速度が緩やかであり、スープ等の水分と接触した場合でも、クリスピー感が長時間感じられるので、新しい食感の食品を提供することができる。
【実施例0016】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.組織状植物たん白の処理方法
(1)焙煎処理
組織状植物たん白として、市販の粒状大豆たん白(ミーテックスK3(長径:2~6mm)(昭和産業株式会社製))を用い、ガス流動層焙煎装置(株式会社藤製作所製)で品温が表1及び表2に記載の温度で、30~180秒間焙煎処理した。
(2)真空乾燥処理
(1)に記載した粒状大豆たん白を、真空乾燥機(東京理化器械株式会社)にて、30℃で水分値が4%程度になるように処理した。
(3)フライ処理
(1)に記載した粒状大豆たん白を、昭和キャノーラ油(昭和産業株式会社製)を用い、180℃、4分間油ちょうした。
【0017】
2.各処理を行った組織状植物たん白の分析方法、及び評価方法
(1)分析方法
(i)水分
水分は、基準油脂分析試験法(1.4.1-2013、日本油化学会)に基づいて測定した。
(ii)油分
油分は、基準油脂分析試験法(参2.1.2-2013、日本油化学会)に基づいて測定した。
(iii)NSI
NSIは以下の通り測定した。まず、試料10.0gをビーカーへ秤量し、30℃の蒸留水450mLと消泡剤(シリコーンオイル)1滴を加えて撹拌し、10分間放置した。80℃の水浴中にビーカーを固定し、25分間加温撹拌した後、冷水で30℃まで冷却し、30℃の蒸留水を加えて500mLに定容した。得られた抽出液50mlを遠心分離(3000rpm、10分間)して、分離された上清25mLを分解蒸留管に移し、ケルダール法により前記上清中の全窒素量を測定した。具体的には、前記分解蒸留管に、分解助剤(CuSO4:CaSO4=9:1)4g、濃硫酸15mLを加え、420℃で1時間加熱分解を行い、放冷後、蒸留を行い、常法により窒素量を測定した。また、ケルダール法にて、試料中の全窒素量を測定し、熱水で抽出される窒素を全窒素に対する百分率でNSIを算出した。
(iv)遊離アミノ酸
遊離アミノ酸分析は、サンプルを10倍量の水と混合し、ろ過して沈殿を除去した後、3%トリクロロ酢酸溶液を等量混合し、0.2μmのフィルターで処理したものを分析サンプルとした。分析機器は高速アミノ酸分析計「LA8080」((株)日立ハイテクサイエンス製)を用いた。
各処理を行った組織状植物たん白の水分、油分、NSI、遊離アミノ酸の分析値を表1及び表2に示す。なお、表中%は、質量%を示す。
【0018】
(2)官能評価
(i)食感
各処理を行った組織状植物たん白を直接喫食し、食感を以下の評価基準に基づいて評価した。なお、各評価結果は訓練を受けた専門パネル10名の評点の平均値を示した。
5:歯応えがあり、クリスピー感が非常に良好
4:歯応えがあり、クリスピー感が良好
3:歯応えがややあり、クリスピー感がやや良好
2:歯応えがやや弱く、クリスピー感がやや不良
1:歯応えが弱く、クリスピー感が不良
(ii)風味
各処理を行った組織状植物たん白を直接喫食し、風味を以下の評価基準に基づいて評価した。なお、各評価結果は訓練を受けた専門パネル10名の評点の平均値を示した。
5:大豆の青臭さが全くなく、風味が非常に良好
4:大豆の青臭さがなく、風味が良好
3:大豆の青臭さがほとんどなく、風味がやや良好
2:大豆の青臭さがあり、風味がやや悪い
1:大豆の青臭さが強く、風味が悪い
官能評価の結果を表1及び表2に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
表1及び2に示した通り、焙煎処理によって、水分が5質量%以下、油分が5質量%以下、NSIが20以下になるように調製した実施例1~10の焙煎粒状大豆たん白は、吸水処理をせずに直接喫食しても、食感及び風味が良好であった。焙煎温度については、表2に示した通り、上記の水分、油分、NSIになるように焙煎時間を調製することで、180~300℃の範囲で、食感及び風味が良好な焙煎粒状大豆たん白が得られた。一方、焙煎が足りず、水分、NSIが所定の範囲に達していない比較例1の焙煎粒状大豆たん白では、食感及び風味が悪かった。また、比較例2の真空乾燥処理した粒状大豆たん白では、食感及び風味が悪く、比較例3のフライ処理した粒状大豆たん白では、食感は良好であったが、油っぽく風味が悪かった。したがって、水分が5質量%以下、油分が5質量%以下、NSIが20以下の焙煎組織状植物たん白が、吸水処理せず、直接喫食しても、風味、食感が良好な、汎用性が高い組織状植物たん白製品であることが示された。
【0022】
3.浸漬吸水試験
本発明の焙煎組織状植物たん白の食品利用の1種として、スープ等のトッピングのクルトンの代わりに用いた場合の評価として、以下の通り、浸漬吸水試験を行った。試料は、焙煎組織状植物たん白として、1.で調製した実施例8及び実施例9の焙煎粒状大豆たん白を用い、参考として、未処理の粒状大豆たん白と、市販のノンフライ製法のクルトン(ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社製)を用いた。
(1)吸水試験
70℃のお湯に各試料を10粒ずつ入れ、所定時間毎に質量を測定し、試験前の質量に基づいて、吸水率を測定した。
(2)官能評価
所定時間毎に、各試料を喫食し、食感(クリスピー感)を以下の評価基準に基づいて評価した。なお、各評価結果は訓練を受けた専門パネル10名の評点の平均値を示した。
5:全体のクリスピー感が残っている
4:表面はやわらかいが中心部のクリスピー感がほぼ残っている
3:表面はやわらかいが中心部のクリスピー感がやや残っている
2:表面はやわらかいが中心部のクリスピー感がわずかに残っている
1:表面がやわらかく中心部のクリスピー感が全くない
結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
【0024】
表3に示した通り、実施例11及び実施例12では、お湯に浸漬した場合、参考例3の市販のクルトンと比較して、吸水速度が緩やかであり、クリスピー感が長時間感じられることが示された。したがって、上記規定を満たす焙煎組織状植物たん白は、スープ等の水分に接触した場合でも、クリスピー感が長時間感じられる新しい食感を示すことが示唆された。なお、参考例2の未処理の粒状大豆たん白は、吸水速度は市販のクルトンよりも速く、食感の評価も低かった。
【0025】
以上により、上記規定を満たす焙煎組織状植物たん白が、吸水処理せず、直接喫食しても、風味、食感が良好で、スナック食品、チョコレート菓子のパフ、お茶漬け用のあられ、スープやサラダのトッピングのクルトンのように直接喫食することが可能な、汎用性が高い組織状植物たん白製品であることが示された。
【0026】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明により、吸水処理せず、直接喫食しても、風味、食感が良好で、スナック食品、チョコレート菓子のパフ、お茶漬け用のあられ、スープやサラダのトッピングのクルトンのように直接喫食することが可能な、汎用性が高い組織状植物たん白製品である焙煎組織状植物たん白を提供することができる。