(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080294
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置、および高周波電力算出ユニット
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240606BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 L
H01L21/302 101G
H01L21/302 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193364
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】土居 謙太
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏幸
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA04
2G084AA05
2G084AA07
2G084BB11
2G084CC03
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD38
2G084DD55
2G084HH06
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH28
2G084HH43
2G084HH52
5F004AA16
5F004BB13
5F004BB18
5F004BC03
5F004BD04
5F004BD05
5F004CA03
5F004CA06
5F004CB05
(57)【要約】
【課題】電力量を算出するリアルタイム性を高めるプラズマ処理装置、および高周波電力算出ユニットを提供する。
【解決手段】電力供給路51の電流値として第1アナログ信号S1を出力する電流検出部52と、電力供給路51の電圧値として第2アナログ信号S2を出力する電圧検出部53と、電力供給路51に供給されている電力量の算出に、電流値に電圧値を乗算する処理を含め、当該処理を、第1アナログ信号S1に第2アナログ信号S2を乗算するアナログ乗算とするアナログ演算部と、電極に供給されている高周波電力の設定電力量PSと、アナログ演算部の算出電力量PAと、の乖離を抑えるように、高周波電源に電源制御信号PNを送信する電源制御部60と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーが備える電極と、
高周波電源に接続された整合回路に前記電極を接続する電力供給路と、を備え、
前記高周波電源から前記電極に高周波電力を供給するプラズマ処理装置であって、
前記電力供給路の電流値として第1アナログ信号を出力する電流検出部と、
前記電力供給路の電圧値として第2アナログ信号を出力する電圧検出部と、
前記電力供給路に供給されている電力量の算出に、前記電流値に前記電圧値を乗算する処理を含め、当該処理を、前記第1アナログ信号に前記第2アナログ信号を乗算するアナログ乗算とするアナログ演算部と、
前記電極に供給されている高周波電力の設定電力量と、前記アナログ演算部の算出電力量と、の乖離を抑えるように、前記高周波電源に電源制御信号を送信する電源制御部と、を備える
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記アナログ演算部は、
整流平滑されていない前記第1アナログ信号に、整流平滑されていない前記第2アナログ信号を乗算するアナログ乗算回路と、
前記アナログ演算部の算出電力量として、前記アナログ乗算回路が出力する信号を整流平滑した信号を出力する整流平滑回路と、を備える
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記電流検出部は、
電流検出素子と、
前記電流検出素子が出力したアナログ信号を整流平滑することによって前記第1アナログ信号を生成する第1整流平滑回路と、を備え、
前記電圧検出部は、
電圧検出素子と、
前記電圧検出素子が出力したアナログ信号を整流平滑することによって前記第2アナログ信号を生成する第2整流平滑回路を備え、
前記アナログ演算部は、
前記アナログ演算部の算出電力量として、前記第1アナログ信号に前記第2アナログ信号を乗算した信号を出力するアナログ乗算回路である
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記電極は、プラズマ処理の対象が載置されるステージに搭載された下部電極であり、
前記高周波電力は、前記対象にプラズマ中のイオンを引き込む
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記電極は、プラズマ処理の対象が載置されるステージに搭載された下部電極であり、
前記高周波電源は、下部電源であり、
前記チャンバーに搭載される上部電極と、
前記下部電源とは異なる周波数で前記上部電極に高周波電力を供給する上部電源と、
前記下部電源の電力供給に先駆けて前記上部電源の電力供給を実行することによって前記上部電極にプラズマを生成させはじめる装置制御部と、をさらに備える
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
電力供給路に供給されている電力量を算出する高周波電力算出ユニットであって、
高周波電源に接続された整合回路にチャンバーの電極を接続する前記電力供給路と、
前記電力供給路の電流値を第1アナログ信号として出力する電流検出部と、
前記電力供給路の電圧値を第2アナログ信号として出力する電圧検出部と、
前記電力供給路に供給されている電力量の算出に、前記電流値に前記電圧値を乗算する処理を含め、当該処理を、前記第1アナログ信号に前記第2アナログ信号を乗算するアナログ乗算とするアナログ演算部と、を備える
ことを特徴とする高周波電力算出ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波電力を供給されている電極を備えたプラズマ処理装置、および電極に供給されている電力量を算出する高周波電力算出ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置のチャンバーが備える電極は、インピーダンス整合回路を介して高周波電源に接続される。高周波電源から電極に供給されている高周波電力は、チャンバーのなかでプラズマ生成に消費される。電極に供給されている電力量を設定値に保つことは、プラズマを安定させてプラズマ処理の加工精度や再現性を高める。
【0003】
電極に供給されている電力量の算出装置は、インピーダンス整合回路の入力端における高周波信号の位相と振幅、出力端における電圧値と電流値、およびインピーダンス整合回路の可変リアクタンスにおける位置情報を用いる。電力量の算出装置は、インピーダンス整合回路の電力通過損失を求めることなく電極に供給されている電力量を算出する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した電力量の算出装置は、入力端における高周波信号の位相と振幅、出力端における電圧値と電流値、および可変リアクタンスの位置情報をそれぞれA/D変換する。電力量の算出装置が備える電力算出用コンピュータは、A/D変換後のデジタル値から電力量を算出する。
【0006】
一方、電極に供給されている高周波電力は、インピーダンス整合回路の動作遅延や処理空間のプラズマ変動などの負荷変動に伴って、処理期間の全体にわたり変動し続ける。他方、出力端における電圧値と電流値とをA/D変換したり、A/D変換後のデジタル値から電力量を算出したりするデジタル演算は、A/D変換の処理周期や高周波電力の算出周期を少なくとも要する。このため、電極に供給されている電力量の算出結果は、A/D変換の処理周期や高周波電力の算出周期の経過した分だけ、算出終了時に供給されている電力量から大きく乖離してしまう。プラズマ処理の微細化や高精度化が進み続ける近年では、電力量の測定精度を高めるために算出のリアルタイム性を高める要請が新たに生じている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのプラズマ処理装置は、チャンバーが備える電極と、高周波電源に接続された整合回路に前記電極を接続する電力供給路と、を備え、前記高周波電源から前記電極に高周波電力を供給するプラズマ処理装置であって、前記電力供給路の電流値として第1アナログ信号を出力する電流検出部と、前記電力供給路の電圧値として第2アナログ信号を出力する電圧検出部と、前記電力供給路に供給されている電力量の算出に、前記電流値に前記電圧値を乗算する処理を含め、当該処理を、前記第1アナログ信号に前記第2アナログ信号を乗算するアナログ乗算とするアナログ演算部と、前記電極に供給されている高周波電力の設定電力量と、前記アナログ演算部の算出電力量と、の乖離を抑えるように、前記高周波電源に電源制御信号を送信する電源制御部と、を備える。
【0008】
上記課題を解決するための高周波電力算出ユニットは、電力供給路に供給されている電力量を算出する高周波電力算出ユニットであって、高周波電源に接続された整合回路にチャンバーの電極を接続する前記電力供給路と、前記電力供給路の電流値を第1アナログ信号として出力する電流検出部と、前記電力供給路の電圧値を第2アナログ信号として出力する電圧検出部と、前記電力供給路に供給されている電力量の算出に、前記電流値に前記電圧値を乗算する処理を含め、当該処理を、前記第1アナログ信号に前記第2アナログ信号を乗算するアナログ乗算とするアナログ演算部と、を備える。
【0009】
上記各構成によれば、電力供給路の電流値に電力供給路の電圧値を乗算する処理は、第1アナログ信号に第2アナログ信号を乗算するアナログ乗算として実行される。このため、電力供給路の電圧値や電流値をA/D変換するための処理周期、およびA/D変換値から高周波電力を算出する算出周期を要することなく電流値に電圧値を乗算した値が得られる。結果として、電力量の算出に要する期間を短くすること、すなわち電力量の算出におけるリアルタイム性を高めることが可能になる。
【0010】
上記プラズマ処理装置において、整流平滑されていない前記第1アナログ信号に、整流平滑されていない前記第2アナログ信号を乗算するアナログ乗算回路と、前記アナログ演算部の算出電力量として、前記アナログ乗算回路が出力する信号を整流平滑した信号を出力する整流平滑回路と、を備えてもよい。
【0011】
上記構成によれば、アナログ演算部の算出電力量は、第1アナログ信号に第2アナログ信号を乗算した信号をさらに整流平滑した信号として出力される。このため、アナログ演算部の出力する算出電力量に安定性を得られる。
【0012】
上記プラズマ処理装置において、前記電流検出部は、電流検出素子と、前記電流検出素子が出力したアナログ信号を整流平滑することによって前記第1アナログ信号を生成する第1整流平滑回路と、を備え、前記電圧検出部は、電圧検出素子と、前記電圧検出素子が出力したアナログ信号を整流平滑することによって前記第2アナログ信号を生成する第2整流平滑回路を備え、前記アナログ演算部は、前記アナログ演算部の算出電力量として、前記第1アナログ信号に前記第2アナログ信号を乗算した信号を出力するアナログ乗算回路でもよい。
【0013】
上記構成によれば、電流検出素子の出力した信号の整流平滑化によって第1アナログ信号が出力される。電圧検出素子の出力した信号の整流平滑化によって第2アナログ信号が出力される。このため、アナログ演算部の出力する算出電力量に安定性を得られる。
【0014】
上記プラズマ処理装置において、前記電極は、プラズマ処理の対象が載置されるステージに搭載された下部電極であり、前記高周波電力は、前記対象にプラズマ中のイオンを引き込んでもよい。
【0015】
上記プラズマ処理装置において、前記電極は、プラズマ処理の対象が載置されるステージに搭載された下部電極であり、前記高周波電源は、下部電源であり、前記チャンバーに搭載される上部電極と、前記下部電源とは異なる周波数で前記上部電極に高周波電力を供給する上部電源と、前記下部電源の電力供給に先駆けて前記上部電源の電力供給を実行することによって前記上部電極にプラズマを生成させはじめる装置制御部と、をさらに備えてもよい。
【0016】
プラズマ処理の対象にイオンを引き込む高周波電力は、プラズマを生成するための高周波電力と比べてプラズマ処理の加工精度に大きな影響を与えやすい。上記各プラズマ処理装置によれば、電力量の算出におけるリアルタイム性を高める効果がプラズマ処理においてさらに際立つ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、プラズマエッチング装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、高周波電力算出ユニットの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、変更例の高周波電力算出ユニットの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、プラズマ処理装置の一例であるプラズマエッチング装置10、およびプラズマエッチング装置10が備える高周波電力算出ユニット50を説明する。プラズマエッチング装置10は、プラズマ処理の一例であるエッチングを行う。
【0019】
[プラズマエッチング装置10]
図1が示すように、プラズマエッチング装置10は、チャンバー本体11を備える。チャンバー本体11の上側開口は、石英板12によって封止されている。チャンバー本体11と石英板12とが区切る空間は、チャンバー空間11Sである。チャンバー空間11Sは、石英板12を挟んで上部電極21と対向する。チャンバー空間11Sは、ステージ13を収容する。ステージ13は、エッチングの対象である基板Sを載置する。基板Sの一例は、化合物半導体を含む。ステージ13は、下部電極13Pを搭載する。チャンバー空間11Sは、プラズマPを生成する真空空間である。
【0020】
下部電極13Pは、高周波電力算出ユニット50、および下部整合回路14を介して下部電源15に接続されている。下部電極13Pは、高周波電力算出ユニット50を介して下部整合回路14に接続されている。下部電源15は、高周波電力を出力する高周波電源の一例である。下部電源15が出力する高周波電力の周波数は、例えば100kHz以上40MHz以下である。高周波電力算出ユニット50は、下部電極13Pに供給される高周波電力の電力量を算出する。下部整合回路14は、下部電源15の出力インピーダンスに、高周波電力が下部電源15から入力される負荷の入力インピーダンスを整合させる。
【0021】
上部電極21は、基板Sの周方向に巻き回された渦巻き形状を有する誘導コイルである。上部電極21の入力端子は、上部整合回路22を介して上部電源23に接続されている。上部電源23は、高周波電力を出力する。上部電源23が出力する高周波電力の周波数は、下部電源15が出力する高周波電力の周波数とは異なってもよいし、同じであってもよい。上部電源23が出力する高周波電力の周波数の一例は、100kHz以上40MHz以下である。上部電極21の出力端子は、ブロッキングコンデンサ24を介して接地電位に接続されている。上部整合回路22は、上部電源23の出力インピーダンスに、高周波電力が上部電源23から入力される負荷の入力インピーダンスを整合させる。ブロッキングコンデンサ24は、出力端子における電位の振幅を増大させる。ブロッキングコンデンサ24は、チャンバー空間11Sに所定のプラズマ密度を得るように、上部電極21に流れる電流を調整する。
【0022】
チャンバー本体11は、排気ポート11P1を介して排気部31に接続されている。排気部31は、チャンバー空間11Sの圧力を調整するための圧力調整弁と、各種の排気ポンプと、を備える。チャンバー本体11は、ガス供給ポート11P2を介してガス供給部32に接続されている。ガス供給部32は、プロセスガスを供給するマスフローコントローラーを備える。
【0023】
プラズマエッチング装置10は、装置制御部33、および電源制御部60を備える。装置制御部33は、プラズマ処理のプロセス条件を記憶する。
プロセス条件は、エッチングガスの流量値の設定値、およびチャンバー空間11Sの圧力値の設定値を含む。装置制御部33は、エッチングガスの流量値が設定値になるように、ガス供給部32の駆動を制御する。装置制御部33は、チャンバー空間11Sの圧力値が設定値になるように、排気部31の駆動を制御する。
【0024】
プロセス条件は、上部電極21に供給されている高周波電力の電力量の設定値、および下部電極13Pに供給されている高周波電力の電力量の設定値を含む。装置制御部33は、上部電極21に供給されている高周波電力の電力量が設定値になるように、上部電源23の駆動を制御する。装置制御部33は、下部電極13Pに供給されている高周波電力の設定電力量PSを電源制御部60に送信する。電源制御部60は、下部電源15に供給されている高周波電力の電力量が設定電力量PSになるように、下部電源15の駆動を制御する。
【0025】
[高周波電力算出ユニット50]
図2が示すように、高周波電力算出ユニット50は、電力供給路51、電流検出部52、電圧検出部53、アナログ乗算回路54、および整流平滑回路55を備える。アナログ乗算回路54、および整流平滑回路55は、アナログ演算部の一例である。アナログ演算部は、電力供給路51に供給されている高周波電力の電力量の算出に、電力供給路51の電流値に電力供給路51の電圧値を乗算する乗算処理を含める。アナログ演算部は、乗算処理を、電力供給路51の第1アナログ信号S1に電圧検出部53の第2アナログ信号S2を乗算するアナログ乗算とする。
【0026】
電力供給路51は、下部電極13Pに下部整合回路14を接続する。電力供給路51は、高周波信号の伝送路である。電力供給路51は、下部電極13Pに下部整合回路14から出力される高周波電力を供給する。
【0027】
電流検出部52は、電流検出素子を備える。電流検出素子は、電力供給路51に誘導結合される誘導コイルでもよいし、電力供給路51に誘導結合されると共に、抵抗素子と並列回路を構成する誘導コイルでもよい。電流検出素子は、電力供給路51に流れる高周波電流を連続的に検出する。電流検出素子は、検出信号にアナログ電圧信号を出力する。電流検出部52は、電流検出素子の検出信号を用いて、電力供給路51の電流値として第1アナログ信号S1を出力する。電流検出部52は、整流平滑されていない第1アナログ信号S1を出力する。電流検出部52は、第1アナログ信号S1に電流検出素子の検出信号を出力してもよい。
【0028】
電圧検出部53は、電圧検出素子を備える。電圧検出素子は、電力供給路51に並列接続される容量素子でもよいし、電力供給路51に並列接続されると共に、容量分割回路を構成する1つの容量素子でもよい。電圧検出素子は、電力供給路51に印加される高周波電圧を連続的に検出する。電圧検出素子は、検出信号にアナログ電圧信号を出力する。電圧検出部53は、電圧検出素子の検出信号を用いて、電力供給路51の電圧値として第2アナログ信号S2を出力する。電圧検出部53は、整流平滑されていない第2アナログ信号S2を出力する。電圧検出部53は、第2アナログ信号S2に電圧検出素子の検出信号を出力してもよい。
【0029】
アナログ乗算回路54は、第1アナログ信号S1に第2アナログ信号S2をアナログ乗算する。アナログ乗算回路54は、第1アナログ信号S1に第2アナログ信号S2をアナログ乗算することによって乗算出力信号S3を生成する。アナログ乗算回路54は、整流平滑回路55に乗算出力信号S3を出力する。アナログ乗算回路54は、対数変換回路でもよいし、差動増幅回路でもよいし、対数変換回路と差動増幅回路との組み合わせでもよい。
【0030】
整流平滑回路55は、整流回路と、平滑回路と、を備える。整流回路は、全波整流回路でもよいし、半波整流回路でもよい。整流回路は、アナログ乗算回路54の出力した乗算出力信号S3を整流する。平滑回路は、整流回路による整流後の乗算出力信号S3を容量素子によって平滑化する。
【0031】
アナログ演算部は、アナログ乗算回路54、および整流平滑回路55を備える。アナログ演算部は、第1アナログ信号S1に第2アナログ信号S2をアナログ乗算する処理と、電力供給路51に供給されている電力量をアナログ演算する処理と、を行う。電力量をアナログ演算する処理は、乗算出力信号S3の整流平滑後に行われてもよいし、乗算出力信号S3を生成する処理と、乗算出力信号S3を整流平滑する処理と、に予め組み込まれてもよい。アナログ演算によって得られる電力量は、整流平滑回路55から出力される算出電力量PAである。
【0032】
例えば、アナログ乗算回路54は、アナログ演算による算出電力量PAが電力供給路51に供給されている電力量であるように、乗算出力信号S3を生成する際に、オフセット調整、およびゲイン調整を行ってもよい。整流平滑回路55は、アナログ演算による算出電力量PAが電力供給路51に供給されている電力量であるように、乗算出力信号S3を整流平滑する際に、オフセット調整、およびゲイン調整を行ってもよい。
【0033】
例えば、アナログ演算部は、アナログ演算による算出電力量PAが電力供給路51に供給されている電力量であるように、整流平滑後の乗算出力信号S3に、さらにオフセット調整、およびゲイン調整を行ってもよい。アナログ演算部が行うオフセット調整、およびゲイン調整は、アナログ演算による算出電力量PAが電力供給路51に供給されている電力量に一致するように、校正用負荷が電力供給路51に接続された環境下で予め校正されてもよい。
【0034】
電源制御部60は、下部電極13Pに供給されている高周波電力の設定電力量PS、およびアナログ演算による算出電力量PAに基づいて電源制御信号PNを生成する。電源制御部60は、算出電力量PAと設定電力量PSとの乖離を抑えるように、言い換えれば算出電力量PAが設定電力量PSになるように、電源制御信号PNを生成する。電源制御部60は、下部電源15に電源制御信号PNを送信し、これによって、下部電源15に供給されている電力量が設定電力量PSになるように、下部電源15の駆動を制御する。
【0035】
[プラズマエッチング装置10の作用]
装置制御部33は、基板Sのプラズマ処理に際して、まず、エッチングガスの流量値がプロセス条件に一致するように、ガス供給部32の駆動を制御する。装置制御部33は、チャンバー空間11Sの圧力値がプロセス条件に一致するように、排気部31の駆動を制御する。
【0036】
次に、装置制御部33は、上部電源23の出力する電力量がプロセス条件に一致するように、上部電源23の駆動を制御する。これによって、プラズマエッチング装置10は、チャンバー空間11SにプラズマPを生成する。そして、装置制御部33は、下部電源15の出力する電力量がプロセス条件に一致するように、下部電源15を駆動しはじめる。これによって、プラズマエッチング装置10は、基板SにプラズマP中のイオンを引き込みはじめる。
【0037】
次に、電源制御部60は、下部電源15が高周波電力を出力する期間の全体にわたり、高周波電力算出ユニット50の算出電力量PAと設定電力量PSとの乖離を抑えるように、電源制御信号PNの生成を繰り返す。電源制御部60は、下部電源15に電源制御信号PNの送信を繰り返す。これによって、プラズマエッチング装置10は、下部電源15に供給されている電力量が設定電力量PSになるように、下部電源15の駆動を制御し続ける。
【0038】
[効果]
以上説明したように、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)電力供給路51の電流値に電圧値を乗算する処理は、第1アナログ信号S1に第2アナログ信号S2を乗算するアナログ乗算として実行される。このため、電力供給路51の電圧値や電流値をA/D変換するための処理周期、およびA/D変換値から高周波電力を算出するための算出周期を要することなく電流値に電圧値を乗算した値が得られる。結果として、電力供給路51に高周波電力を供給してから当該電力量を算出するまでに要する期間の短縮、すなわち電力量の算出におけるリアルタイム性を高めることが可能になる。
【0039】
(2)化合物半導体などをエッチングするプロセスは、下部電源15の設定電力量PSに、50Wにも満たない非常に低い値を要求する場合がある。この際、設定電力量PSが低いほど、プラズマPの変動によるエッチングの誤差が大きい。この点、電力量の算出におけるリアルタイム性の向上は、電源制御信号PNの送信と相まって、プラズマPの変動による電力量の変動そのものを抑える。このため、設定電力量PSが50Wにも満たないように低い場合、上記(1)に準じた効果が際立つ。
【0040】
(3)第1アナログ信号S1に第2アナログ信号S2を乗算した信号をさらに整流平滑した信号が、アナログ演算部の算出電力量PAとして出力される。このため、アナログ演算部の算出電力量PAに安定性を得られる。
【0041】
(4)電流検出素子の出力した信号の整流平滑によって第1アナログ信号S1が出力される。電圧検出素子の出力した信号の整流平滑によって第2アナログ信号S2が出力される。このため、第1アナログ信号S1に第2アナログ信号S2を乗算した信号であるアナログ演算部の算出電力量PAに安定性を得られる。
【0042】
(5)基板Sにイオンを引き込む高周波電力は、プラズマPを生成するための高周波電力と比べてプラズマ処理の加工精度に大きな影響を与えやすい。この点、下部電極13Pの電力量算出に高周波電力算出ユニット50を適用するプラズマエッチング装置10によれば、電力量の算出におけるリアルタイム性を高める効果がさらに際立つ。
【0043】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[電流検出部52]
・電流検出部52は、電流検出素子の検出信号を補正するアナログ回路を備えてもよい。アナログ回路は、オフセット調整機能、およびゲイン調整機能を備えてもよい。電流検出部52は、電流検出素子の検出信号にオフセット調整、およびゲイン調整を施して第1アナログ信号S1を生成してもよい。オフセット調整機能、およびゲイン調整機能は、第1アナログ信号S1が電力供給路51の電流値に一致するように、校正用負荷が電力供給路51に接続された環境下で予め校正されてもよい。
【0044】
[電圧検出部53]
・電圧検出部53は、電圧検出素子の検出信号を補正するアナログ回路を備えてもよい。アナログ回路は、オフセット調整機能、およびゲイン調整機能を備えてもよい。電圧検出部53は、電圧検出素子の検出信号にオフセット調整、およびゲイン調整を施して第2アナログ信号S2を生成してもよい。オフセット調整機能、およびゲイン調整機能は、第2アナログ信号S2が電力供給路51の電流値に一致するように、校正用負荷が電力供給路51に接続された環境下で予め校正されてもよい。
【0045】
[アナログ演算部]
・
図3が示すように、高周波電力算出ユニット50は、整流平滑回路55を割愛してもよい。電流検出部52は、第1整流平滑回路56をさらに備えてもよい。電圧検出部53は、第2整流平滑回路57をさらに備えてもよい。アナログ乗算回路54のみが、アナログ演算部の一例でもよい。なお、高周波電力算出ユニット50は、第1整流平滑回路56と、第2整流平滑回路57とのいずれか一方を備えてもよい。
【0046】
このように、電流検出部52は、電流検出素子と、第1整流平滑回路56と、を備えてもよい。電流検出部52は、電流検出素子が出力したアナログ信号S1を整流平滑することによって第1アナログ信号S1Aを生成してもよい。そして、電流検出部52は、アナログ乗算回路54に、整流平滑された第1アナログ信号S1Aを出力してもよい。
【0047】
また、電圧検出部53は、電圧検出素子と、第2整流平滑回路57と、を備えてもよい。電圧検出部53は、電圧検出素子が出力したアナログ信号S2を整流平滑することによって第2アナログ信号S2Aを生成してもよい。そして、電圧検出部53は、アナログ乗算回路54に、整流平滑された第2アナログ信号S2Aを出力してもよい。
【0048】
アナログ乗算回路54は、整流平滑された第1アナログ信号S1Aに、整流平滑された第2アナログ信号S2Aをアナログ乗算した信号を、アナログ演算部の算出電力量PAとして出力してもよい。
【0049】
・高周波電力算出ユニット50は、第1整流平滑回路56と、第2整流平滑回路57とのいずれか一方を備えてもよい。さらに、高周波電力算出ユニット50は、第1整流平滑回路56と、第2整流平滑回路57とのいずれか一方と、整流平滑回路55とを備えてもよい。
【0050】
[プラズマ処理装置]
・電力供給路51は、上部電極21と上部整合回路22とに接続されてもよい。すなわち、高周波電力算出ユニット50は、上部電極21に接続された電力供給路51に供給されている電力量を算出してもよい。電源制御信号PNは、上部電源23に送信されてもよい。すなわち、電源制御部60は、上部電極21に供給されている高周波電力の設定電力量PSと、高周波電力算出ユニット50の算出電力量PAと、の乖離を抑えるように、上部電源23に電源制御信号PNを送信してもよい。
【0051】
・プラズマ処理装置は、高周波電力算出ユニット50、および電源制御部60を備えてプラズマ処理の対象にプラズマPを照射する装置であればよい。プラズマ処理装置は、プラズマCVD装置でもよいし、プラズマPVD装置でもよいし、プラズマ処理の対象における表面を改質する表面処理装置でもよい。
【符号の説明】
【0052】
P…プラズマ
PA…算出電力量
PN…電源制御信号
PS…設定電力量
S1,S1A…第1アナログ信号
S2,S2A…第2アナログ信号
10…プラズマエッチング装置
13…ステージ
13P…下部電極
14…下部整合回路
15…下部電源
21…上部電極
22…上部整合回路
23…上部電源
33…装置制御部
50…高周波電力算出ユニット
51…電力供給路
52…電流検出部
53…電圧検出部
54…アナログ乗算回路
55…整流平滑回路
56…第1整流平滑回路
57…第2整流平滑回路
60…電源制御部