(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000803
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】冷却構造体及び構造体
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099723
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福川 裕二
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】庄田 広明
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136CB07
5F136CB11
5F136FA02
5F136FA51
5F136GA12
(57)【要約】
【課題】軽量化しつつ配置位置の自由度が高い冷却構造体及び構造体を提供する。
【解決手段】冷媒の流入口及び流出口を設けてなる外包材と、前記外包材の内部に配置される内心材と、を備える冷却構造体である。前記内心材は、樹脂を含んで構成され、前記外包材の内部に、前記冷却構造体の厚み方向に対して前記内心材を補強する補強部材を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の流入口及び流出口を設けてなる外包材と、
前記外包材の内部に配置される内心材と、を備え、
前記内心材は、樹脂を含んで構成され、
前記外包材の内部に、前記内心材を補強する補強部材を備える、冷却構造体。
【請求項2】
前記補強部材は、冷却構造体の幅方向において左右対称となるように配置される、請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項3】
前記補強部材の高さが、前記外包材の内部における冷却構造体の厚み方向の距離の70%以上である、請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項4】
前記外包材が、金属層と、前記金属層の少なくとも一方の面に設けられる樹脂層と、を有する、請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項5】
前記内心材が、金属層と、前記金属層の両面に設けられる樹脂層と、を有する、請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の冷却構造体と、前記冷却構造体上に設けられる被冷却体と、を有する構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却構造体及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、パーソナルコンピューター等の電子機器、電気自動車、ハイブリッド車等に搭載される電池モジュールなどの分野では、発熱対策として水冷式冷却器、ヒートパイプ等を組み込む技術が知られている。また、シリコンカーバイド製等のパワー半導体モジュールにおいても、発熱対策のために冷却板、ヒートシンク等を用いた対策が提案されている。
【0003】
例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等のモータを搭載する車両には、モータを駆動する駆動手段が搭載されている。駆動手段は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体を複数備えるパワーモジュール、キャパシタ等の電子部品、これら電子部品を電気的に接合するバスバーなどから構成される。モータを駆動する際には、パワー半導体、キャパシタ等、これら電子部品を接合するバスバーに大電流が流れることがある。この場合、スイッチング損失、抵抗損失等によって駆動手段が発熱するため、駆動手段を効率的に冷却することが望まれる。また、車両に搭載された電池モジュールからの発熱についても効率的に冷却することが望まれる。
【0004】
冷却構造体としては、アルミニウム製冷却フィンの内心材を有するような、熱伝導性の高い金属で構成された構造を有する構造体が挙げられる。しかしながら、金属製のため重量があり、また溶接等によって被冷却体に配置するため、ある程度の厚さが必要となり薄型化することが難しい。
【0005】
そこで、軽量化等の観点から、金属製の伝熱層を樹脂層でラミネートしたラミネート材で外包材及び内心材を構成し、内心材で仕切られた流路に冷媒を流通させる冷却構造体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の熱交換器は、熱融着層を有するラミネート材を熱融着して製作するため、十分な薄型化が図られることが記載されている。さらに、特許文献1に記載の熱交換器では、外包材及び内心材としてのラミネート材は形状及び大きさを簡単に変更できるため、設計の自由度が増して汎用性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の冷却構造体は軽量化され取り扱い性に優れるものの、水路がラミネート材で構成されるため、冷却構造体の上に配置する被冷却体の重量等の外力によってラミネート材が変形し水路が圧し潰されて冷却能が低下する場合がある。
かかる状況に鑑み、本開示は軽量化しつつ被冷却体からの押圧等に対して冷却能の著しい低下を抑制可能な冷却構造体及び構造体を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 冷媒の流入口及び流出口を設けてなる外包材と、
前記外包材の内部に配置される内心材と、を備え、
前記内心材は、樹脂を含んで構成され、
前記外包材の内部に、前記内心材を補強する補強部材を備える、冷却構造体。
<2> 前記補強部材は、冷却構造体の幅方向において左右対称となるように配置される、<1>に記載の冷却構造体。
<3> 前記補強部材の高さが、前記外包材の内部における冷却構造体の厚み方向の距離の70%以上である、<1>又は<2>に記載の冷却構造体。
<4> 前記外包材が、金属層と、前記金属層の少なくとも一方の面に設けられる樹脂層と、を有する、<1>~<3>のいずれか1項に記載の冷却構造体。
<5> 前記内心材が、金属層と、前記金属層の両面に設けられる樹脂層と、を有する、<1>~<4>のいずれか1項に記載の冷却構造体。
<6> <1>~<5>のいずれか1項に記載の冷却構造体と、前記冷却構造体上に設けられる被冷却体と、を有する構造体。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、軽量化しつつ被冷却体からの押圧等に対して冷却能の著しい低下を抑制可能な冷却構造体及び構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一態様の冷却構造体100の外観を表す概略斜視図である。
【
図2】
図1の冷却構造体100を部品ごとに分けた分解図である。
【
図3】本開示の一態様における内心材40の部分的な概略斜視図である。
【
図4】本開示の一態様における冷却構造体の幅方向の一部分での概略断面図である。
【
図5】本開示の他の一態様における冷却構造体の幅方向の一部分での概略断面図である。
【
図6】本開示の他の一態様における冷却構造体の幅方向の一部分での概略断面図である。
【
図7】本開示の他の一態様における内心材40の概略斜視図である。
【
図8】冷却構造体の変形例を説明する概略斜視図であり、上側の外包材30Bを外したときの内部を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示の実施形態は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0012】
本開示における実施形態について図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、各図面において、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面同じ符号を付与し、重複する説明は省略する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0013】
<冷却構造体>
本開示の冷却構造体は、冷媒の流入口及び流出口を設けてなる外包材と、前記外包材の内部に配置される内心材と、を備え、前記内心材は樹脂を含んで構成され、前記外包材の内部に、前記内心材を補強する補強部材を備える。
【0014】
特許文献1に記載の熱交換器は、ラミネート材をプリーツ加工等して複数の凹凸形状を形成し、この複数の凹凸形状を冷却構造体の厚み方向に配置する内心材で構成されるため、冷却構造体の厚み方向からの荷重に対してある程度の強度を有している。
しかしながら、被冷却体の重量によっては、ラミネート材で構成される外包材及び内心材が変形し、水路が圧し潰され、結果、流通する冷媒量が低下して、冷却能が低下する場合がある。
【0015】
このような不具合への改善策として、外包材を強化すること等も考えられる。しかしながら、この方法では、冷却構造体の軽量化が阻害されたり、冷却構造体全体の大きさが嵩んだりして、ラミネート材を使用する利点が損なわれる。
【0016】
これに対して、本開示の冷却構造体では、樹脂を含む内心材で構成して軽量化を図りつつ、外包材の内部に前記補強部材を備えるため、冷却構造体の全体の大きさを増加させずに済む。したがって、本開示の冷却構造体では、自動車等における搭載スペースを増加させなくともよい。
【0017】
冷却構造体における補強部材の位置は、外包材の内部であれば特に制限はない。被冷却体は冷却構造体の厚み方向に積層して搭載されるため、補強部材は、冷却構造体の厚み方向からの外力に対して内心材を補強する機能を有する。補強部材は、外包材の内部において、冷却構造体の厚み方向に延びて設けられることが好ましい。
【0018】
冷却構造体における補強部材の個数は特に限定はない。例えば、被冷却体の搭載位置に応じて補強部材を配置するよう設計してもよく、あるいは予め冷却構造体に補強部材を設け、この補強部材の位置に被冷却体を配置してもよい。後者の場合には、冷却構造体に複数個の補強部材を設けると、被冷却体の搭載位置の自由度がより高い冷却構造体となる。
【0019】
補強部材は、冷却構造体の幅方向において左右対称となるように配置されることが好ましい。補強部材を幅方向で左右対称に配置すると、冷却構造体への厚み方向からの荷重に対して、幅方向での強度が均等化される。
【0020】
以下、本開示の冷却構造体について図面を参照して説明する。なお、本開示の実施形態は図面に記載の態様に限定されない。
【0021】
図1は、本開示の一態様の冷却構造体100の外観を表す概略斜視図である。
図1に示される冷却構造体100は、冷媒の流入口10と流出口20とを有し、外包材30で全体が覆われている。
【0022】
図2は、
図1の冷却構造体100を部品ごとに分けた分解図である。
外包材30は上側の外包材30Aと下側の外包材30Bで構成されている。本開示では図面での上下に即して上及び下と表記するが、上下を逆にしてもよい。
【0023】
上側の外包材30Aには、冷媒の流入口10としてのジョイントパイプ及び流出口20としてのジョイントパイプを貫通させるための穴が設けられている。そして、ジョイントパイプを固定し、組み立て性の観点から、冷媒の流入口10のジョイントパイプはヘッダー部12の一部として設けられ、流出口20のジョイントパイプはフッダー部22の一部として設けられていることが好ましい。冷媒の流入口10のジョイントパイプはヘッダー部12と一体成型されていてもよく、流出口20のジョイントパイプはフッダー部22と一体成型されていてもよい。
【0024】
なお、
図1及び
図2の冷却構造体100では、ジョイントパイプの向きが冷却構造体100の厚み方向の外側に延びているが、ジョイントパイプの向きはこれに限定されない。例えば、ジョイントパイプは、冷却構造体100の面方向の外側に延びていてもよい。また、流入口10のジョイントパイプと流出口20のジョイントパイプの向きが異なっていてもよい。
【0025】
外包材30の内部に内心材40が配置される。内心材40は、ヘッダー部12からフッダー部22へ流れる冷媒の流路を複数に仕切る。そして、上側の外包材30Aと下側の外包材30Bの周囲を閉じて密閉させる。外包材30A及び外包材30Bが樹脂層を有する場合、樹脂層を融着することにより外包材30Bと外包材30Bの周囲を閉じることができる。
【0026】
外包材30の内部には、内心材40を補強する補強部材50を有する。補強部材50の形状は限定されず、円柱、角柱、円錐、角錐等であってもよい。
【0027】
図3は、本開示の一態様における内心材40の部分的な概略斜視図である。内心材40は冷媒の流路を複数に仕切る凹凸形状を有し、複数の凸部42及び複数の凹部44を有している。
【0028】
図4は、本開示の一態様における冷却構造体の幅方向の一部分での概略断面図である。補強部材50は、外包材30Bから外包材30Aまで冷却構造体100の厚み方向に延びて設けられている。
図4(A)の冷却構造体では、補強部材50は、冷却構造体の幅方向の中心部分に1個配置されている。
図4(B)の冷却構造体では、補強部材50は、冷却構造体の幅方向の中心部分に1個、幅方向の左右にそれぞれ1個、計3個配置されている。
図4(C)の冷却構造体では、補強部材50は、冷却構造体の幅方向の左右にそれぞれ1個、計2個配置されている。
【0029】
補強部材50の材質は特に制限されず、樹脂等の有機物、無機物及び金属からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられ、具体的には、アルミニウム等を挙げることができる。
補強部材50は、内心材40に用いる樹脂よりも強度の高い材料を用いて構成されることが好ましい。内心材40の樹脂よりも強度の強い材料を用いて補強部材50を構成すると、補強部材の幅を内心材の幅よりも薄くしても強度を保つことができ、補強部材の設置によって流路を塞いでしまう面積を小さく抑えることができる。
【0030】
内心材40の幅W1(内心材がラミネート材の場合にはラミネート材の厚みに相当)に対する補強部材50の幅W2は、それぞれの材質によって適宜調整することができる。
ここで、内心材40の幅W1とは、冷却構造体の幅方向における内心材40の寸法を意味し、補強部材50の幅とは、冷却構造体の幅方向における補強部材50の寸法を意味する。
また、冷却構造体の幅方向において、内心材40により流路が複数に区分けされている場合において、内心材40の幅W1とは、流路を仕切るそれぞれの壁毎の厚さ(冷却構造体の幅方向における壁の寸法)をいう。
冷却構造体の幅方向において、補強部材50が複数存在する場合において、補強部材50の幅W2とは、それぞれの補強部材50の冷却構造体の幅方向における寸法をいう。
【0031】
内心材40に用いる樹脂と同程度の強度の樹脂を用いて補強部材50を構成する場合には、内心材40の幅W1よりも、補強部材50の幅W2を広くして、内心材40を補強することができる。但し、内心材40に用いる樹脂よりも強度の高い材料を用いて補強部材50を構成する場合にも、内心材40の幅W1よりも補強部材の幅W2を広くしてもよい。
一例として、内心材40の幅W1に対する補強部材50の幅W2は、70%以下であってもよく、60%以下であってもよく、50%以下であってもよい。
【0032】
冷却構造体の長手方向における補強部材50の長さは特に制限されない。
【0033】
図4に示すように、冷却構造体の厚み方向での外包材30Bから外包材30Aまでの距離Aを100%としたときに補強部材50の高さBが100%であってもよいが、
図5に示すように100%未満としてもよく、95%以下としてもよい。基準となる「距離A」は、外力が付与されていない状態で測定する。
【0034】
図5は、本開示の他の一態様における冷却構造体の幅方向の一部分での概略断面図であり、距離Aに対して補強部材50の高さBが100%未満の例である。
補強部材50の高さを100%未満とすると、距離Aと高さBとの差分で尤度が存在する。そのため、このような冷却構造体では、昇温及び冷却により冷却構造体及び被冷却体の少なくとも一方が膨張収縮した場合でも、その膨張収縮の変形にも対応することができる。また、膨張収縮以外の変形、例えば、冷却構造体の外力からの変形であっても、冷却構造体の厚み方向での補強機能を維持することができる。
【0035】
補強部材50の高さBは、冷却構造体の厚み方向での外包材の内部における距離(外包材30Bから外包材30Aまでの距離A)に対して、70%以上とすることが好ましく、80%以上としてもよく、90%以上としてもよい。補強部材50の高さBを70%以上とすることで、冷却構造体の厚み方向からの押圧により水路が圧し潰されても、流通する冷媒量をある程度確保することができる。
また、補強部材50の高さBは距離Aに対して100%であってもよく、100%未満であってもよく、95%以下であってもよい。
【0036】
図5では、距離Aに対して100%未満の高さBを有する補強部材50を、冷却構造体100の幅方向の中心部分に1個設けているが、2個以上設けてもよい。この場合、それぞれの補強部材50の高さBを揃えてもよく、被冷却体の表面形状に応じて、補強部材50の高さBを変えてもよい。
【0037】
また、
図5では補強部材50は外包材30B側に付いているが、外包材30A側に付いていてもよい。
【0038】
図6は、本開示の他の一態様における冷却構造体の幅方向の一部分での概略断面図であり、補強部材50の補強部材の変形例である。
図6では、補強部材50が内心材40と一体化している。
図6では、内心材40の内部に補強部材50を設けているが、内心材40の表面に補強部材50を設けてもよい。補強部材50が金属等の場合には、腐食を防止する観点から、補強部材50は内心材40の内部に設けることが好ましい。
【0039】
内心材40の一部として補強部材50を設ける場合、内心材40の高さと補強部材50の高さは同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、
図6の形態において、補強部材50の高さは、内心材40の高さに対して、100%であってもよく、100%未満であってもよく、95%以下であってもよい。また、補強部材50の高さは、内心材40の高さに対して、70%以上とすることが好ましく、80%以上としてもよく、90%以上としてもよい。
補強部材50の高さが内心材40よりも低い場合において冷却構造体の厚み方向から外力が掛かった場合、内心材40は樹脂を含んで構成されるため、少なくとも補強部材50の高さまでは、内心材40の樹脂による弾性によって変形を許容することができる。
【0040】
図7は、本開示の他の一態様における内心材40の概略斜視図である。
図7に示すように、内心材40は長さ方向で2以上に分離していてもよい。この場合、内心材40の分離位置に補強部材50を設けてもよい。また、内心材40の分離位置とは別の位置に補強部材50を設けてもよい。
【0041】
以下、外包材30、内心材40等の詳細を説明する。
外包材30は、融着により外包材30Bと外包材30Bの周囲を閉じる観点からは、樹脂層を有することが好ましく、金属層と、前記金属層の少なくとも一方の面に設けられる樹脂層と、を有することがより好ましい。外包材30の内側に樹脂層を設けると、冷媒による腐食の発生が抑制されやすくなる。また、外包材30の外側に樹脂層を設けると、絶縁を図ることが可能となる。外包材30は、金属層の両面に樹脂層が設けられていることが好ましい。下側の外包材30Aと上側の外包材30Bの材質は同じであっても異なっていてもよい。
【0042】
金属層としては、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、めっき加工した銅箔、ニッケル箔及び銅箔のクラッドメタル等が挙げられる。熱伝導性、コスト等の観点からは、アルミニウム箔が好ましい。
【0043】
金属層の厚みは、4μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましい。また、金属層の厚みは、300μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【0044】
樹脂層は、熱融着性を有する樹脂で構成されることが好ましく、樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂又はそれらの変性樹脂、フッ素系樹脂、PET樹脂等のポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
【0045】
樹脂層の厚みは、4μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましい。また、金属層の厚みは、300μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【0046】
金属層と樹脂層とは積層されてラミネート材を形成してもよい。金属層と内側の樹脂層との間に他の層が設けられてもよく、設けられなくてもよい。
【0047】
ラミネート材の最外層に被覆層を設けてもよい。外包材30に被覆層を設けることによって、金属層の耐食が防止され、外圧及び内圧による破損が防止されやすくなる傾向にある。また、絶縁性樹脂を被覆層に用いる場合には、被冷却体に対して短絡、漏電防止等の効果を付与できる傾向にある。また、導電性樹脂を被覆層に用いる場合には、被冷却体に対する帯電防止の効果を付与できる傾向にある。
【0048】
被覆層としては、上述の樹脂層と同様の樹脂を用いることができる。被覆層は、樹脂層と同種の材質であってもよく、異種の材質であってもよい。外包材30の樹脂層と内心材40とを熱融着させ、被覆層は熱融着させなくともよい観点からは、被覆層は樹脂層より融点が高いものを用いるのが好ましく、特に融点が10℃以上高い樹脂を使用することがより好ましい。
被覆層の厚みは特に限定されないが、樹脂層と同程度、又は樹脂層よりも薄く設定することが好ましい。
【0049】
外包材30の厚みは特に制限されない。強度及び熱伝導性の観点からは、外包材30の厚みは8μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、12μm以上であることがさらに好ましい。薄型化及び変形性の観点からは、外包材30の厚みは300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。かかる観点からは、外包材30の厚みは、8μm~300μmであることが好ましく、10μm~250μmであることがより好ましく、12μm~200μmであることがさらに好ましい。
【0050】
ラミネート材は、金属箔又は金属板に樹脂フィルムを貼付して製造してもよい。樹脂フィルムは延伸フィルムでも、無延伸フィルムでもよい。貼付に接着剤を用いてもよい。
【0051】
内心材40は樹脂を含んで構成され、金属層と樹脂層とが積層されたラミネート材であってもよい。内心材40は、金属層と、金属層の両面に設けられる樹脂層と、を有してもよい。内心材40の表面が樹脂で構成されていると、外包材30と融着させることが可能である。また、内心材40の表面が樹脂で構成されていると、冷媒による腐食の発生が抑制されやすくなる。
【0052】
内心材40の金属層は、外包材30の金属層と同様のものを好適に用いることができる。内心材40としてのラミネート材の金属層は、外包材30としてのラミネート材の金属層と同種の材質であってもよく、異種の材質であってもよい。
【0053】
内心材40としてのラミネート材の樹脂層は、外包材30としてのラミネート材の樹脂層と同様のものを好適に用いることができる。内心材40を外包材30に熱融着させる観点からは、内心材40としてのラミネート材の樹脂層と、外包材30としてのラミネート材の樹脂層とは同種の材質であることが好ましい。
【0054】
し
内心材40としてのラミネート材は、金属箔又は金属板に樹脂フィルムを貼付して製造してもよい。樹脂フィルムは延伸フィルムでも、無延伸フィルムでもよい。貼付に接着剤を用いてもよい。
【0055】
内心材40の凹凸形状は、プレス加工、プリーツ加工等によって波板形状に形成されたものであってもよい。波板形状だけでなく、千鳥格子状等に凹部及び凸部が分散したエンボス形状であってもよい。
【0056】
プレス加工は非連続プレス加工であっても連続プレス加工であってもよい。非連続プレス加工としては上型と下型を用いる形成法が挙げられ、連続プレス加工としてはロール成形法が挙げられる。ロール成形法としてはコルゲート加工法が挙げられる。
【0057】
上型と下型を用いる形成法では、上型と下型の各々に凹部及び凸部が交互に並ぶように形成されている。上型の各凹部が下型の各凸部に対応し、上型の各凸部が下型の各凹部に対応し、上型と下型は互いの凹凸部がかみ合うように構成されている。そして加工前の内心材を上型と下型で挟み込み押圧することにより、内心材を波板形状に成形することができる。
【0058】
コルゲート加工法は、一対のコルゲートロールを用いて行うことができる。各コルゲートロールは、その外周面に回転方向に凹部及び凸部が交互に並ぶように形成されている。一方のコルゲートロールの各凹部が他方のコルゲートロールの各凸部に対応し、一方のコルゲートロールの各凸部が他方のコルゲートロールの各凹部に対応し、一対のコルゲートロールが互いの凹凸部がかみ合うように構成されている。そして加工前の内心材を一対のコルゲートロールで挟み込みつつ回転させることにより、内心材を一対のコルゲートロール間に通過させて波板形状に成形することができる。
【0059】
ロール成形法においてエンボス加工を行う場合、一対のエンボスロールを用いて行うことができる。例えばエンボスロールとして、外周面に回転方向及び軸心方向に沿って凹部及び凸部が交互に並んで配置されるように形成されたものが用いられる。さらに一対のエンボスロールのうち、一方のエンボスロールの各凹部を他方のエンボスロールの各凸部に対応し、一方のエンボスロールの各凸部を他方のエンボスロールの各凹部に対応させて、一対のエンボスロールを互いの凹凸部がかみ合うように配置する。そして加工前の内心材を一対のエンボスロールで挟み込みつつ回転させることにより、内心ラミネート材を一対のエンボスロール間に通過させて凹凸加工する。これにより千鳥格子状等に凹部及び凸部が分散したエンボス状の内心材を製作することができる。
【0060】
連続プレス加工では、凹凸加工された内心材を、加工装置の下流側に配置されたシャーナイフ(シャー切断刃)等によって所定長さに切断し内心材40とする。連続プレス加工では、ロールトゥロールによって連続的に行うことができ、生産効率の向上を図ることができる。
【0061】
内心材40がラミネート材で形成される場合には、補強部材50は、
図4及び
図5のように、内心材40とは別部材として構成されることが好ましい。
【0062】
内心材40がリブのように樹脂で構成される場合には、真空成型により凹凸形状を形成してもよい。内心材40が樹脂で構成されている場合には、補強部材50は、
図6のように、内心材40の一部として補強部材50を設けることが好ましい。
【0063】
補強部材50は、他の部品と共に組み込まれて形成しても、後から挿入して配置してもよい。
図6のように、内心材40の一部として補強部材50を設ける場合には、内心材40に補強部材50をインサート成形により設けてもよい。
【0064】
内心材40の凹凸形状で仕切られる冷媒流路の断面形状は、半円形状;半楕円形状;三角形、四角形、五角形等の多角形状;異形状;これらの組み合わせなどであってもよい。
複数の凹凸は規則的に配列させてもよく、不規則に配列させてもよい。不規則な配列例としては、凹凸の周期が一律ではないものが挙げられる。規則的な配列の場合、凹部の周期と凸部との周期が同じであっても、異なっていてもよい。
【0065】
冷媒流路の断面形状が一律の場合には、連続プレス加工によって内心材を加工することが生産効率の観点から好ましく、一律ではない場合には、非連続プレス加工によって内心材を加工することが好ましい。
【0066】
内心材40の凹凸形状により複数に仕切られる流路には、冷媒が流通する。冷媒の種類は、特に制限されない。冷媒としては、水、有機溶媒等の液体、空気等の気体などが挙げられる。冷媒として用いられる水には、不凍液等の成分が含まれていてもよい。
【0067】
図8は、冷却構造体の変形例を説明する概略斜視図であり、上側の外包材30Bを外したときの内部を表す。
図1及び
図2の冷却構造体100では、冷媒の流入口10と流出口20は長さ方向のそれぞれの端部(前端部、後端部)に設けられている。これに対して、
図8の冷却構造体110では、一方の端部に流入口10及び流出口20の双方を設けている。
図8の冷却構造体110では、ヘッダー部に流入口10のジョイントパイプと流出口20のジョイントパイプとを設ける。
【0068】
図8の冷却構造体110では、図中の矢印Fで示すように、ヘッダー部12の流入口10から流通した冷媒は、フッダー部22でUターンして方向を反転させ、ヘッダー部12の流出口20まで戻る。
【0069】
図8では、冷媒は長さ方向で一往復としているが、一往復半させてもよい。この場合、ヘッダー部12に流入口40を設け、フッダー部22に流出口20を設けてもよい。冷媒の往復回数をさらに多くしてもよい。
冷媒を長さ方向で往復させる場合には、往路側の流路と復路側の流路の間に仕切りを設けることが好ましい。
【0070】
さらなる他の一形態として、流入口40及び流出口20はそれぞれ一つだけでなく複数個も設けてもよい。
【0071】
本開示の冷却構造体は、発熱体の冷却に広く利用可能であり、例えば、スマートフォン、パーソナルコンピューター等の電子機器、電気自動車、ハイブリッド車等に搭載される電池モジュール、パワー半導体モジュールなどの冷却に有効である。
【0072】
<構造体>
本開示の構造体は、前述の本開示の冷却構造体と、前記冷却構造体上に設けられる被冷却体と、を有する。
被冷却体としては、発熱体として、例えば、スマートフォン、パーソナルコンピューター等の電子機器、電気自動車、ハイブリッド車等に搭載される電池モジュール、パワー半導体モジュールなどが挙げられる。
被冷却体は、冷却構造体100の外包材30B側及び外包材30A側のいずれの側に設けてもよく、両側に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 冷媒の流入口
20 冷媒の流出口
30、30A、30B 外包材
40 内心材
42 凸部
44 凹部
50 補強部材
100、110 冷却構造体