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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080301
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】粉体混合方法および粉体混合装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 31/50 20220101AFI20240606BHJP
   B01F 23/60 20220101ALI20240606BHJP
   B01F 29/80 20220101ALI20240606BHJP
   B01F 35/222 20220101ALI20240606BHJP
【FI】
B01F31/50
B01F23/60
B01F29/80
B01F35/222
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193380
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】後藤 晋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大記
(72)【発明者】
【氏名】阪口 智律
【テーマコード(参考)】
4G035
4G036
4G037
【Fターム(参考)】
4G035AB48
4G035AE01
4G036AA21
4G036AB12
4G037DA25
4G037EA05
(57)【要約】
【課題】攪拌翼を使用しない簡易な構成で洗浄性および安全性の良好な粉体の混合を実現する。
【解決手段】粉体混合方法は、下方へ窄まった形状を有する混合容器10を準備し、混合容器10に少なくとも2種類の粉体を入れ、所定の範囲の周波数および所定の範囲の振幅で水平方向成分を有する方向に混合容器10を加振し、混合容器10に対する加振方向を変更することを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方へ窄まった形状を有する混合容器を準備し、
前記混合容器に少なくとも2種類の粉体を入れ、
所定の範囲の周波数および所定の範囲の振幅で水平方向成分を有する方向に前記混合容器を加振し、
前記混合容器に対する加振方向を変更する
ことを含む、粉体混合方法。
【請求項2】
前記混合容器を回転させることによって前記加振方向を変更する、請求項1に記載の粉体混合方法。
【請求項3】
前記所定の範囲の周波数は、以下の式で表される第1無次元パラメータαが5以上となるように設定される、請求項1または2に記載の粉体混合方法。
A:振幅[m]
f:周波数[Hz]
g:重力加速度[m/s
【請求項4】
前記所定の範囲の振幅は、以下の式で表される第2無次元パラメータβが0.15以上となるように設定される、請求項1または2に記載の粉体混合方法。
A:振幅[m]
r:粒子半径[m]
【請求項5】
前記所定の範囲の周波数は、以下の式で表される第1無次元パラメータαが6以上となるように設定され、
前記所定の範囲の振幅は、以下の式で表される第2無次元パラメータβが0.2以上となるように設定される、請求項1または2に記載の粉体混合方法。
A:振幅[m]
f:周波数[Hz]
g:重力加速度[m/s
r:粒子半径[m]
【請求項6】
前記混合容器は、球殻の少なくとも一部を含む、請求項1または2に記載の粉体混合方法。
【請求項7】
下方へ窄まった形状を有し、少なくとも2種類の粉体を入れる混合容器と、
所定の範囲の周波数および所定の範囲の振幅で水平方向成分を有する方向に前記混合容器を加振する加振機構と、
前記加振機構による前記混合容器に対する加振方向を変更する変更機構と
を備える、粉体混合装置。
【請求項8】
前記変更機構は、前記混合容器を回転させることによって前記加振方向を変更する、請求項7に記載の粉体混合装置。
【請求項9】
前記所定の範囲の周波数は、以下の式で表される第1無次元パラメータαが5以上となるように設定される、請求項7または8に記載の粉体混合装置。
A:振幅[m]
f:周波数[Hz]
g:重力加速度[m/s
【請求項10】
前記所定の範囲の振幅は、以下の式で表される第2無次元パラメータβが0.15以上となるように設定される、請求項7または8に記載の粉体混合装置。
A:振幅[m]
r:粒子半径[m]
【請求項11】
前記所定の範囲の周波数は、以下の式で表される第1無次元パラメータαが6以上となるように設定され、
前記所定の範囲の振幅は、以下の式で表される第2無次元パラメータβが0.2以上となるように設定される、請求項7または8に記載の粉体混合装置。
A:振幅[m]
f:周波数[Hz]
g:重力加速度[m/s
r:粒子半径[m]
【請求項12】
前記混合容器は、球殻の少なくとも一部を含む、請求項7または8に記載の粉体混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体混合方法および粉体混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体の混合には、攪拌翼を用いるのが一般的である。具体的には、容器内に粉体を入れ、攪拌翼で粉体を攪拌することによって粉体を混合する。そのような粉体混合装置が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1では、ブレード(攪拌翼)にカット部を有するスクリュー式混合機が開示されている。当該スクリュー式混合機では、各カット部の側面に沿って掬い板を突出して取付けると共に、ブレード間の所定位置には掻きあげ板が所定個数取付けられている。これにより、ブレードの回転に応じてカット部の前段にて粉体が除去され、その結果カット部を経由した粉体の抜けを良くし、ひいては混合効率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-239255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような攪拌翼を使用した粉体混合装置では、攪拌翼を洗浄する必要があり、洗浄性に欠ける。また、攪拌翼による粉体の混合は、粉体を損傷するおそれがあるため、繊細な粉体材料には不向きである。また、攪拌翼の回転は、作業時の安全を損なうおそれもある。
【0006】
本発明は、粉体混合方法および粉体混合装置において、攪拌翼を使用しない簡易な構成で洗浄性および安全性の良好な粉体の混合を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
下方へ窄まった形状を有する混合容器を準備し、
前記混合容器に少なくとも2種類の粉体を入れ、
所定の範囲の周波数および所定の範囲の振幅で水平方向成分を有する方向に前記混合容器を加振し、
前記混合容器に対する加振方向を変更する
ことを含む、粉体混合方法を提供する。
【0008】
この方法によれば、攪拌翼を必要としないため、良好な洗浄性および安全性を確保できる。ここで、水平方向成分を有する方向とは、厳密な水平方向だけでなく水平方向から傾斜した方向に加振することを含む(鉛直方向のみを除く)。また、加振方向として鉛直方向成分を大きく含まない場合(例えば完全な水平方向加振の場合)には混合容器の上方を開口させることもできるため、少なくとも2種類の粉体の出し入れが容易となり得るだけでなく、機構として単純化できるため小型化も実現できる。また、加振方向を変更しながら混合容器を加振するという簡易な構成で少なくとも2種類の粉体を容易に混合できるため、汎用性が高い。混合原理としては、加振によって粉体内に対流が生成され、さらに加振方向の変更によって当該対流が変化して粉体の混合が促進される。また、下方へ窄まった形状は、例えば球殻体のような湾曲面形状および錐体のような傾斜面形状を含んでもよい。
【0009】
前記粉体混合方法において、前記混合容器を回転させることによって前記加振方向を変更してもよい。
【0010】
この方法によれば、混合容器に対する加振方向の変更を容易に実現できる。また、上記回転は、定速であってもよいし、変速であってもよいし、逆回転を伴ってもよい。また、回転軸は、鉛直方向に延びていてもよいし、鉛直方向から傾斜していてもよい。
【0011】
前記粉体混合方法において、前記所定の範囲の周波数は、以下の式で表される第1無次元パラメータαが5以上となるように設定されてもよい。
A:振幅[m]
f:周波数[Hz]
g:重力加速度[m/s
【0012】
この方法によれば、混合容器を加振するときの周波数を具体的に規定することにより、安定した対流の発生を実現でき、安定した混合を実現できる。当該周波数の範囲の有効性は、数値シミュレーションにより確認したものである。
【0013】
前記粉体混合方法において、前記所定の範囲の振幅は、以下の式で表される第2無次元パラメータβが0.15以上となるように設定されてもよい。
A:振幅[m]
r:粒子半径[m]
【0014】
この方法によれば、混合容器を加振するときの振幅を具体的に規定することにより、安定した対流の発生を実現でき、安定した混合を実現できる。当該振幅の範囲の有効性は、数値シミュレーションにより確認したものである。ここで、粒子半径rは、少なくとも2種類の粉体の粒子半径の最小値である。
【0015】
前記粉体混合方法において、前記所定の範囲の周波数は、以下の式で表される第1無次元パラメータαが6以上となるように設定されてもよく、
前記所定の範囲の振幅は、以下の式で表される第2無次元パラメータβが0.2以上となるように設定されてもよい、請求項1または2に記載の粉体混合方法。
A:振幅[m]
f:周波数[Hz]
g:重力加速度[m/s
r:粒子半径[m]
【0016】
この方法によれば、混合容器を加振するときの周波数と振幅の両方を具体的に規定することにより、安定した対流の発生を実現でき、安定した混合を実現できる。当該振幅の範囲の有効性は、数値シミュレーションにより確認したものである。ここで、粒子半径rは、少なくとも2種類の粉体の粒子半径の最小値である。

【0017】
前記粉体混合方法において、前記混合容器は、球殻の少なくとも一部を含んでもよい。
【0018】
この方法によれば、非常に簡易な形状として下方に窄まった形状を容易に形成できる。
【0019】
本発明の第2の態様は、
下方へ窄まった形状を有し、少なくとも2種類の粉体を入れる混合容器と、
所定の範囲の周波数および所定の範囲の振幅で水平方向成分を有する方向に前記混合容器を加振する加振機構と、
前記加振機構による前記混合容器に対する加振方向を変更する変更機構と
を備える、粉体混合装置を提供する。
【0020】
前記粉体混合装置において、前記変更機構は、前記混合容器を回転させることによって前記加振方向を変更してもよい。
【0021】
前記粉体混合装置において、前記所定の範囲の周波数は、以下の式で表される第1無次元パラメータαが5以上となるように設定されてもよい。
A:振幅[m]
f:周波数[Hz]
g:重力加速度[m/s
【0022】
前記粉体混合装置において、前記所定の範囲の振幅は、以下の式で表される第2無次元パラメータβが0.15以上となるように設定されてもよい。
A:振幅[m]
r:粒子半径[m]
【0023】
前記粉体混合装置において、前記所定の範囲の周波数は、以下の式で表される第1無次元パラメータαが6以上となるように設定されてもよく、
前記所定の範囲の振幅は、以下の式で表される第2無次元パラメータβが0.2以上となるように設定されてもよい、請求項1または2に記載の粉体混合方法。
A:振幅[m]
f:周波数[Hz]
g:重力加速度[m/s
r:粒子半径[m]
【0024】
前記粉体混合装置において、前記混合容器は、球殻の少なくとも一部を含んでもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、粉体混合方法および粉体混合装置において、攪拌翼を使用しない簡易な構成で洗浄性および安全性の良好な粉体の混合を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る粉体混合装置の正面図。
図2図1の粉体混合装置の平面図。
図3図1の粉体混合装置の斜視図。
図4】粉体の対流を解析した数値シミュレーション結果。
図5図4の対流の様子を示す模式図。
図6】数値シミュレーションの初期状態を示す斜視図。
図7図6の初期状態から混合容器が半回転した後の状態を示す斜視図。
図8図6の初期状態から混合容器が1回転した後の状態を示す斜視図。
図9】実験の初期状態を示す正面図。
図10図9と同じ実験の初期状態を示す平面図。
図11図9の初期状態から混合容器が1回転した後の状態を示す正面図。
図12図10の初期状態から混合容器が1回転した後の状態を示す平面図。
図13】第1無次元パラメータαが8であり、かつ、第2無次元パラメータβが0.2である場合の数値シミュレーションの結果。
図14】第1無次元パラメータαおよび第2無次元パラメータβと混合結果との関係を示す相関図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0028】
図1~3を参照して、本実施形態の粉体混合装置1は、少なくとも2種類の粉体を混合するものである。X方向は水平面内における一方向を示し、Y方向は水平面内においてX方向に直交する方向を示し、Z方向は鉛直方向を示している。以降の説明では、便宜上、X方向を前後方向と称し、Y方向を左右方向と称し、Z方向を上下方向と称する場合がある。
【0029】
まず、本実施形態の粉体混合装置1の構成について説明する。
【0030】
粉体混合装置1は、下方へ窄まった形状を有するとともに混合対象の少なくとも2種類の粉体を入れる混合容器10と、混合容器10を加振する加振機構20と、加振機構20による混合容器10に対する加振方向を変更する変更機構30とを有している。また、本実施形態では、粉体混合装置1は、各部を制御するための制御装置40を有している。
【0031】
本実施形態では、混合容器10は、上方が開口した半球殻状である。混合容器10は、滑らかな内面を有している。混合容器10は、内部に複雑な形状の攪拌パーツなどの追加的な部品を有していない。従って、洗浄性および安全性に優れている。なお、混合容器10の材質は、任意に設定され得る。
【0032】
本実施形態では、混合容器10は、回転盤31に吊り下げられるようにして取り付けられている。回転盤31は、水平配置された上壁21に回転可能に保持されている。上壁21にはモータ32が取り付けられており、回転盤31およびモータ32はベルト33を介して機械的に接続されている。従って、モータ32が駆動されると、モータ32の回転力がベルト33と回転盤31を介して混合容器10に伝達され、混合容器10が回転軸RA(図3参照)まわりに回転される。本実施形態では、回転軸RAは鉛直方向(Z方向)に延びており、さらに混合容器10の中心を通っている。代替的には、回転軸RAは、鉛直方向から傾斜していてもよいし、混合容器10の中心を通っていなくてもよい。本実施形態では、回転盤31とモータ32とベルト33とによって変更機構30が構成されている。
【0033】
上壁21は、左右方向に離間して対向配置された一対の内側壁23の上部を接続している。また、上壁21と上下方向に離間して下壁22が設けられている。下壁22は、上壁21と対向して配置されるとともに、一対の内側壁23の下端部を接続している。下壁22は、床面(図示せず)と接しておらず、一対の内側壁23によって床面から持ち上げられている。
【0034】
一対の内側壁23の左右方向の外側には、一対の外側壁24が配置されている。一対の外側壁24および一対の内側壁23は、左右方向に対向するとともに、シャフト25とリニアブッシュ26とばね27とを介して機械的に接続されている。シャフト25、リニアブッシュ26、およびばね27は、一対の外側壁24に対して一対の内側壁23の左右方向の揺動を許容する。なお、図3では、図示を明瞭にするために、一対の外側壁24の一つ、一対の内側壁23の一つ、およびそれらに関連する構成が図示省略されている。
【0035】
下壁22の上には、加振装置28が載置されている。加振装置28は、左右方向の振動を発生させることができ、下壁22と一対の内側壁23と上壁21とを介して混合容器10を水平方向に加振する。本実施形態では、上壁21と下壁22と一対の内側壁23と一対の外側壁24とシャフト25とリニアブッシュ26とばね27と加振装置28とによって加振機構20が構成されている。
【0036】
混合容器10は、加振機構20によって加振され、変更機構30によって回転されることによって加振方向が変更される。このようにして、加振および加振方向の変更が実現され、混合容器10内の少なくとも2種類の粉体が混合される。このような加振機構20および変更機構30の動作は、制御装置40によって制御されている。
【0037】
制御装置40は、加振機構20および変更機構30の動作制御を含む、演算処理および装置全体の制御を行う。本実施形態では、制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)等のハードウェアと、それらに実装されたソフトウェアとにより構成されている。
【0038】
本実施形態では、制御装置40は、変更機構30のモータ32を制御し、回転軸RAまわりの混合容器10の回転速度を調整する。回転速度は、定速であってもよいし、変速であってもよいし、逆回転を伴ってもよい。
【0039】
また、制御装置40は、加振機構20の加振装置28を制御し、混合容器10を加振するときの振幅および周波数を調整する。
【0040】
好ましくは、周波数は、以下の式(1)で表される第1無次元パラメータαが5以上となるように所定の範囲内で設定される。第1無次元パラメータαは、周波数に起因する指標値である。第1無次元パラメータαが大きいほど、周波数も大きく、混合が促進される傾向にある。当該所定の範囲の妥当性については後述する。なお、以下の式(1)中のπは円周率を意味する。
【0041】
【数1】
A:振幅[m]
f:周波数[Hz]
g:重力加速度[m/s
【0042】
好ましくは、振幅は、以下の式(2)で表される第2無次元パラメータβが0.15以上となるように所定の範囲内で設定される。第2無次元パラメータβは、振幅に起因する指標値である。第2無次元パラメータβが大きいほど、振幅も大きく、混合が促進される傾向にある。当該所定の範囲の妥当性については後述する。ここで、粒子半径rは、少なくとも2種類の粉体の粒子半径の最小値である。
【0043】
【数2】
A:振幅[m]
r:粒子半径[m]
【0044】
さらに好ましくは、周波数は上記の式(1)で表される第1無次元パラメータαが6以上となるように所定の範囲内で設定されるとともに、振幅は上記の式(2)で表される第2無次元パラメータβが0.2以上となるように所定の範囲内で設定される。当該所定の範囲の妥当性については後述する。
【0045】
次に、本実施形態の粉体混合方法について説明する。
【0046】
本実施形態の粉体混合方法では、上記粉体混合装置1を準備し、混合対象の少なくとも2種類の粉体を混合容器10内に入れる。
【0047】
混合容器10内に少なくとも2種類の粉体を入れた後、加振機構20によって混合容器10を加振しながら、変更機構30によって混合容器10を回転軸RAまわりに回転させる。これにより、加振方向が経時的に変更される。本実施形態では、混合容器10を一定速度で回転させる。
【0048】
加振機構20によって混合容器10が加振されると、混合容器10内の粉体には対流が生成される。そして、変更機構30によって混合容器10が回転されると、加振方向の変更に伴って、対流が変化し、混合が促進される。
【0049】
図4は、本実施形態の一例として、2種類の粉体を球殻状の混合容器10に入れて混合容器10を回転させながら加振した際の対流を、数値シミュレーションによって再現し、可視化した図である。図5は、図4の対流の様子を示す模式図である。
【0050】
図4,5に示す数値シミュレーションにおいて、混合容器10の半径0.04m、加振の周波数115Hz、および加振の振幅0.4mm(0.0004m)に設定した。また、混合容器10の中心を通る鉛直軸まわりの回転速度を1.38rpmに設定した。また、2種類の粉体のうち一方の粒子半径を1.0mm(即ち0.001m)に設定し、混合容器10内においてY方向の左半分に配置した。また、他方の粒子半径を1.4mm(即ち0.0014m)に設定し、混合容器10内においてY方向の右半分に配置した。
【0051】
図4,5を参照して、2種類の粉体のそれぞれにおいて、X方向に延びる回転軸を有する対流が発生していることが確認された。このような対流は2つの渦流V1,V2が入り混じるようにして生成されていた。具体的には、図5を参照して、渦流V1および渦流V2はそれぞれ閉じた流れでなく、領域V12にて渦流V1から渦流V2への流れが生成されており、領域V21にて渦流V2から渦流V1への流れが生成されている。従って、2種類の粉体が互いに入り混じるようにして良好に混合されることが確認でき、本実施形態の有効性が確認できた。
【0052】
また、対流の発生を確認する数値シミュレーションだけでなく、2種類の粉体の混合状態を可視化した数値シミュレーションも行った。図6は、そのような本実施形態の数値シミュレーションの初期状態を示す斜視図である。図7は、図6からの半回転後を示す斜視図である。図8は、図6からの1回転後を示す斜視図である。
【0053】
図6~8に示す数値シミュレーションにおける解析条件は、図4,5と実質的に同じである。
【0054】
図6~8を参照して、2種類の粉体は、図6(初期状態)では未混合の状態であったが、図7(半回転後)では混合が進み、図8(1回転後)では概ね混合が完了した状態であった。従って、2種類の粉体の混合状態を可視化した数値シミュレーションにおいても良好な混合の実現が確認できた。
【0055】
また、数値シミュレーションだけでなく実験においても本実施形態の粉体混合方法の有効性を確認した。
【0056】
図9,10は、実験の初期状態を示す正面図および平面図である。図11,12は、図9,10からの1回転後を示す正面図および平面図である。
【0057】
実験では、内部を確認しやすいように透明のアクリル製の半球殻状の混合容器10を用意し、粉体として2種類のビーズを用意した。実験条件は、数値シミュレーションの解析条件と実質的に同じである。
【0058】
図9~12に示すように、混合容器10内の粉体は、図9,10(初期状態)では未混合の状態であったが、図11,12(1回転後)では概ね混合が完了した状態であった。従って、実験と数値シミュレーションの結果はよく一致していることを確認し、実験においても良好な混合の実現が確認できた。
【0059】
図13は、前述の第1無次元パラメータαが8であり、かつ、第2無次元パラメータβが0.2である場合の数値シミュレーションの結果を示している。図13に示す数値シミュレーションの解析条件は、加振の周波数70Hz、加振の振幅0.4mm(0.0004m)、回転速度0.63rpmに設定した以外、実質的に同じである。
【0060】
図13を参照して、図4と同様に、X方向に延びる回転軸を有する渦流V1,V2が2種類の粉体の境界を越えて入り混じるようにして発生していることが確認された。従って、2種類の粉体が混合されることが確認された。
【0061】
図13に示す結果と、第1無次元パラメータαおよび第2無次元パラメータβが大きいほど混合が促進される傾向にあることから、少なくとも、第1無次元パラメータαは8以上において良好な混合が実現され、第2無次元パラメータβは0.2以上において良好な混合が実現されることがわかる。
【0062】
また、第1無次元パラメータαおよび第2無次元パラメータβを実際に様々に変更した数値シミュレーションの結果についても説明する。
【0063】
図14は、前述の第1無次元パラメータαおよび第2無次元パラメータβと、混合結果との関係を示す相関図である。図14に示す数値シミュレーションの解析条件は、図13と実質的に同じである。
【0064】
図14において、横軸は第1無次元パラメータαを示し、縦軸は第2無次元パラメータβを示している。図14において、白丸のデータ点「○」は混合結果として良好であったことを示し、黒丸のデータ点「●」は混合結果として不良であったことを示している。
【0065】
図14を参照して、第1無次元パラメータαは5以上において良好な混合結果が確認される場合があり、第2無次元パラメータβは0.15以上において良好な混合結果が確認される場合があった。さらに言えば、第1無次元パラメータαが6以上かつ第2無次元パラメータβが0.2以上においては混合がいずれの場合も達成されており、より良好な結果として確認された。
【0066】
図14の結果から、周波数の範囲について第1無次元パラメータαを5以上に設定することが有効であることが確認できた。また、振幅の範囲について第2無次元パラメータβを0.15以上に設定することが有効であることが確認できた。より好ましくは、第1無次元パラメータαを6以上かつ第2無次元パラメータβを0.2以上に設定することが有効であることが確認できた。
【0067】
本実施形態の粉体混合装置1および粉体混合方法によれば、以下の作用効果を奏する。
【0068】
攪拌翼を必要としないため、良好な洗浄性および安全性を確保できる。特に、加振方向が水平方向であるため、加振方向が鉛直方向の場合に比べて、加振機構20を単純化できる。さらに、混合容器10の上方を開口させることもできるため、少なくとも2種類の粉体の出し入れが容易となり得るだけでなく小型化も実現できる。また、加振方向を変更しながら混合容器10を加振するという簡易な構成で少なくとも2種類の粉体を容易に混合できるため、汎用性が高い。
【0069】
混合容器10は、半球殻状または球殻状であり、非常に簡易な形状である。
【0070】
混合容器10を回転させることによって加振方向を変更するため、混合容器10に対する加振方向の変更を容易に実現できる。
【0071】
第1無次元パラメータαを具体的に規定することにより(α≧5)、即ち混合容器10を加振するときの周波数を具体的に規定することにより、安定した対流の発生を実現でき、安定した混合を実現できる。
【0072】
第2無次元パラメータβを具体的に規定し(β≧0.15)、即ち混合容器10を加振するときの振幅を具体的に規定することにより、安定した対流の発生を実現でき、安定した混合を実現できる。
【0073】
第1無次元パラメータαと第2無次元パラメータβの両方を具体的に規定することにより(α≧6かつβ≧0.2)、即ち混合容器10を加振するときの振幅および周波数の両方を具体的に規定することにより、安定した対流の発生を実現でき、安定した混合を実現できる。
【0074】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0075】
例えば、混合容器10の形状は、半球殻、球殻、または部分球殻のような球殻の少なくとも一部を含む形状に限定されず、下方に窄まった形状を有する任意の形状であり得る。例えば、混合容器10は、錐体、錐台、または回転楕円体などの形状を有する容器であってもよい。例えば、錐体は円錐や多角錐を含み、錐台は円錐台や多角錐台を含む。特に、錐台については、底面が水平に限らず、底面が水平から傾斜してもよい。また、回転軸RAと混合容器10の中心軸は、完全に一致していなくてもよく、ずれて(偏心して)いてもよい。回転軸RAは、鉛直方向から傾斜していてもよく、例えば数度程度傾斜してもよい。
【0076】
加振機構20は、上壁21と下壁22と一対の内側壁23と一対の外側壁24とシャフト25とリニアブッシュ26とばね27と加振装置28とによって構成される態様に限定されず、混合容器10を加振可能な任意の態様であり得る。例えば、加振装置28が混合容器10に直接取り付けられてもよい。また、加振方向は、水平方向成分を有する方向としてもよい。水平方向成分を有する方向とは、厳密な水平方向だけでなく水平方向から傾斜した方向に加振することを含む(鉛直方向のみを除く)。従って、例えば、加振機構20は、混合容器10を水平方向から数度以内程度傾斜した方向に加振してもよい。
【0077】
変更機構30は、回転盤31とモータ32とベルト33とによって構成される態様に限定されず、混合容器10に対する加振方向を変更可能な任意の態様であり得る。例えば、変更機構30によって混合容器10に対する加振装置28の向きを変更してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 粉体混合装置
10 混合容器
20 加振機構
21 上壁
22 下壁
23 内側壁
24 外側壁
25 シャフト
26 リニアブッシュ
27 ばね
28 加振装置
30 変更機構
31 回転盤
32 モータ
33 ベルト
40 制御装置
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