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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080513
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 107/02 20060101AFI20240606BHJP
   C10M 105/32 20060101ALI20240606BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20240606BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20240606BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20240606BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
C10M107/02
C10M105/32
C10M169/04
C10N20:02
C10N30:02
C10N40:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193771
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】金丸 正実
(72)【発明者】
【氏名】片山 清和
(72)【発明者】
【氏名】棚瀬 省二朗
(72)【発明者】
【氏名】大場 幸太
(72)【発明者】
【氏名】阪口 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】小比類巻 潤
(72)【発明者】
【氏名】藤浪 行敏
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB31A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BH03A
4H104CA04A
4H104CB14A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104EA02A
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB11
4H104LA01
4H104PA02
(57)【要約】
【課題】粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】下記基油(a)及び下記基油(b)を含み、基油(b)に対する基油(a)の質量比[(a)/(b)]が50/50~95/5である、潤滑油組成物。基油(a)は100℃動粘度が40~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンであり、基油(b)は100℃動粘度が1~30mm/sである基油である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記基油(a)及び下記基油(b)を含み、基油(b)に対する基油(a)の質量比[(a)/(b)]が50/50~95/5である、潤滑油組成物。
基油(a):100℃動粘度が40~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b):100℃動粘度が1~30mm/sである基油
【請求項2】
基油(a)が下記基油(a1)であり、基油(b)に対する基油(a1)の質量比[(a1)/(b)]が80/20~95/5である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
基油(a1):100℃動粘度が40~50mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
【請求項3】
基油(b)が下記基油(b1)及び下記基油(b2)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の潤滑油組成物。
基油(b1):100℃動粘度が1~10mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b2):100℃動粘度が10~15mm/sであるエステル
【請求項4】
基油(b)が下記基油(b3)であり、基油(b3)に対する基油(a1)の質量比[(a1)/(b3)]が90/10~95/5である、請求項2に記載の潤滑油組成物。
基油(b3):100℃動粘度が5~10mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
【請求項5】
基油(b)が下記基油(b2)、又は基油(b2)と基油(b1)であり、基油(b1)に対する基油(b2)の質量比[(b2)/(b1)]が80/20~100/0である、請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
基油(a)が下記基油(a2)であり、基油(b)が下記基油(b2)と下記基油(b4)であり、基油(b)に対する基油(a2)の質量比[(a2)/(b)]が50/50~70/30であり、基油(b4)に対する基油(b2)の質量比[(b2)/(b4)]が25/75~60/40である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
基油(a2):100℃動粘度が120~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b2):100℃動粘度が10~15mm/sであるエステル
基油(b4):100℃動粘度が1~30mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
【請求項7】
更に、極圧剤、耐摩耗剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤及び流動点降下剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を1~30質量%含有する、請求項1~6のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
40℃動粘度が288~352mm/sである、請求項1~6のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1つに記載の潤滑油組成物を含有する風力発電用ギヤオイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への負荷を軽減し、枯渇が懸念される化石燃料の使用を削減するために、再生可能なエネルギーを活用した風力発電は、今後さらなる需要の増加が予想されている。
風力を利用した風力発電は、風を受けて回転するプロペラその他のロータを使用して風の運動エネルギーを動力に変換し、この動力で発電機を駆動して電気エネルギーに変換する。
風力発電においては、ロータの回転速度が遅いため、発電機の発電効率を考慮し、増速機が使用される。この増速機としては、様々なものが知られているが、その中で遊星歯車式動力伝達装置が多用されている。
このような遊星歯車式動力伝達装置には、高性能のギヤオイルが必要とされ、更にオイル交換の頻度が少なく、長期間メンテナンスフリーで運用可能であることが要求される。
こうした要求に対して、潤滑油基油や添加剤の検討が行われている。
たとえば、特許文献1には、スラッジ発生量の低減、高粘度指数、極圧性の向上を目的として、鉱油及び合成油から選ばれた少なくとも1種の潤滑油基油、分子量が1200~50000のオレフィンとアルキルメタアクリレートとの共重合体を含有する潤滑油組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-249461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な機械用潤滑油においても、高温及び低温においても粘度の変化が少なく、安定した潤滑性能を示すことが好ましいが、特に風力発電機は、温度変化の大きな過酷な環境下で使用されるため、風力発電機に用いられるギヤオイルには、大きな温度変化に対する安定性が要求される。特に低温での粘度上昇を低減することが望まれる。
そのため、粘度指数が大きく、低温流動性の良好な潤滑油が求められていた。
本発明の目的は、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の動粘度であるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンと、特定の動粘度である基油を特定比率で含む潤滑油組成物が前記の課題を解決することを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<9>に関する。
<1>下記基油(a)及び下記基油(b)を含み、基油(b)に対する基油(a)の質量比[(a)/(b)]が50/50~95/5である、潤滑油組成物。
基油(a):100℃動粘度が40~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b):100℃動粘度が1~30mm/sである基油
<2>基油(a)が下記基油(a1)であり、基油(b)に対する基油(a1)の質量比[(a1)/(b)]が80/20~95/5である、上記<1>に記載の潤滑油組成物。
基油(a1):100℃動粘度が40~50mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
<3>基油(b)が下記基油(b1)及び下記基油(b2)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記<2>に記載の潤滑油組成物。
基油(b1):100℃動粘度が1~10mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b2):100℃動粘度が10~15mm/sであるエステル
<4>基油(b)が下記基油(b3)であり、基油(b3)に対する基油(a1)の質量比[(a1)/(b3)]が90/10~95/5である、上記<2>に記載の潤滑油組成物。
基油(b3):100℃動粘度が5~10mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
<5>基油(b)が基油(b2)、又は基油(b2)と基油(b1)であり、基油(b1)に対する基油(b2)の質量比[(b2)/(b1)]が80/20~100/0である、上記<3>に記載の潤滑油組成物。
<6>基油(a)が下記基油(a2)であり、基油(b)が下記基油(b2)と下記基油(b4)であり、基油(b)に対する基油(a2)の質量比[(a2)/(b)]が50/50~70/30であり、基油(b4)に対する基油(b2)の質量比[(b2)/(b4)]が25/75~60/40である、上記<1>に記載の潤滑油組成物。
基油(a2):100℃動粘度が120~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b2):100℃動粘度が10~15mm/sであるエステル
基油(b4):100℃動粘度が1~30mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
<7>更に、極圧剤、耐摩耗剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤及び流動点降下剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を1~30質量%含有する、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
<8>40℃動粘度が288~352mm/sである、上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
<9>上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の潤滑油組成物を含有する風力発電用ギヤオイル。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を提供することができる。当該潤滑油組成物は、風力発電用ギヤオイルとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[潤滑油組成物]
本発明の潤滑油組成物は、下記基油(a)及び下記基油(b)を含み、基油(b)に対する基油(a)の質量比[(a)/(b)]が50/50~95/5である、潤滑油組成物である。
基油(a):100℃動粘度が40~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b):100℃動粘度が1~30mm/sである基油
【0009】
本発明の潤滑油組成物は、下記基油(a)及び下記基油(b)を配合して得られ、基油(b)に対する基油(a)の質量比[(a)/(b)]が50/50~95/5である潤滑油組成物である。基油(a)と基油(b)を上記割合で配合することによって、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
基油(a):100℃動粘度が40~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b):100℃動粘度が1~30mm/sである基油
以下に、本発明の潤滑油組成物の各成分及び組成、特性等について詳細に説明する。
【0010】
[基油(a)]
本発明の潤滑油組成物には、100℃動粘度が40~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンである基油(a)を含む。
基油(a)は、メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンであり、「メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン」とは、「重合触媒としてメタロセン触媒を用いて重合されたポリ-α-オレフィン」のことをいう。
メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンは、重合触媒として従来の触媒を用いて重合されたポリ-α-オレフィン(非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン)に比べ、組成分布が狭く、規則性の低い成分が少なく、分子量分布が狭いといった特徴を有する。本発明の潤滑油組成物では、このような特徴を有し、特定の動粘度を有するメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンを主成分として含有することで、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物とすることができるものと考えられる。
【0011】
基油(a)は、好ましくは、下記式(1)を満たす。
(流動点(℃))≦0.01×(40℃動粘度(mm/s))-56 (1)
【0012】
基油(a)は、好ましくは、40℃動粘度が350~450mm/sであり、かつ流動点が-50℃以下である。
基油(a)は、好ましくは、下記式(2)を満たす。
(流動点(℃))≦0.28×(粘度指数)-102 (2)
【0013】
基油(a)は、好ましくは、1-オクテンに由来する構成単位と1-ドデセンに由来する構成単位を含有する。
基油(a)中の1-オクテンに由来する構成単位と1-ドデセンに由来する構成単位の合計の比率は、好ましくは、90~100モル%である。
【0014】
基油(a)が、1-オクテンに由来する構成単位と1-ドデセンに由来する構成単位を含有する場合、基油(a)中の1-オクテンに由来する構成単位と1-ドデセンに由来する構成単位の比率は、モル比で、好ましくは3:7~7:3であり、より好ましくは4:6~6:4であり、更に好ましくは4.5:5.5~5.5:4.5である。
【0015】
基油(a)は、基油(b)の種類、含有量によって、好適な物性が異なる。
後述の<潤滑油組成物の組成>に記載した組成物の番号によって説明する。
潤滑油組成物(1)、潤滑油組成物(1-1)、潤滑油組成物(1-2)、及び潤滑油組成物(1-1-1)では、基油(a)として、基油(a1)が好ましい。
基油(a1)は、100℃動粘度が40~50mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンである。
基油(a1)の100℃動粘度は、40~50mm/sであり、好ましくは43~50mm/sであり、より好ましくは45~50mm/sであり、更に好ましくは45~49mm/sである。
基油(a1)の40℃動粘度は、好ましくは300~500mm/sであり、より好ましくは350~450mm/sであり、更に好ましくは380~420mm/sである。
100℃動粘度及び40℃動粘度が上記の範囲であれば、蒸発損失が少なく、粘性抵抗による動力損失が大きくなることがなく、好ましい。
【0016】
潤滑油組成物(2)では、基油(a)として、基油(a2)が好ましい。
基油(a2)は、100℃動粘度が120~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンである。
基油(a1)の100℃動粘度は、120~130mm/sであり、好ましくは122~130mm/sであり、より好ましくは125~130mm/sであり、更に好ましくは127~130mm/sである。
基油(a1)の40℃動粘度は、好ましくは800~1800mm/sであり、より好ましくは1000~1500mm/sであり、更に好ましくは1100~1400mm/sである。
100℃動粘度及び40℃動粘度が上記の範囲であれば、蒸発損失が少なく、粘性抵抗による動力損失が大きくなることがなく、好ましい。
【0017】
<基油(a)の製造方法>
基油(a)は、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて重合されたポリ-α-オレフィンであれば、製造方法に制限はないが、次の方法によって得ることが好ましい。
具体的には、メタロセン化合物(A)と、上記メタロセン化合物と反応してカチオンに変換しうるイオン性化合物(B)と、有機金属化合物(C)と、炭素数が2以上異なる複数の原料モノマー(D)と、アルコール類(E1)、フェノール類(E2)及びエーテル化合物(E3)から選択される少なくとも1種である(E)成分とを混合して触媒混合物を得る工程1、及び前記触媒混合物を用いて前記複数の原料モノマー(D)を含有するα-オレフィンを重合する工程2を有する製造方法によって得ることが好ましい。
以下に、詳細に説明する。
【0018】
(工程1)
工程1は、メタロセン化合物(A)と、上記メタロセン化合物と反応してカチオンに変換しうるイオン性化合物(B)と、有機金属化合物(C)と、炭素数が2以上異なる複数の原料モノマー(D)と、アルコール類(E1)、フェノール類(E2)及びエーテル化合物(E3)から選択される少なくとも1種である(E)成分とを混合して触媒混合物を得る工程である。
【0019】
〔メタロセン化合物(A)〕
メタロセン化合物(A)としては、無架橋メタロセン化合物、単架橋メタロセン化合物、及び二架橋メタロセン化合物が挙げられ、好ましくは二架橋メタロセン化合物であり、より好ましくは下記一般式(I)で表される二架橋メタロセン化合物である。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、下記一般式-[L(R)(R)]-で表わされる連結基である。X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、またはハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子、イオウ原子、窒素原子およびリン原子から選ばれる一種以上の原子を含有する炭素数1~20の有機基を示す。Mは周期表第4~6族の遷移金属を示す。nは1~3の整数である。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、または炭素数1~20のハロゲン含有炭化水素基を示す。Lは周期表第14族の原子を示す。)
【0020】
式(I)において、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、またはハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子、イオウ原子、窒素原子およびリン原子から選ばれる一種以上の原子を含有する炭素数1~20の有機基を示す。
Mは周期表第4~6族の遷移金属を示し、好ましくはジルコニウム、チタン、又はハフニウムである。
及びRは、それぞれ独立に、-[L(R)(R)]-で表わされる連結基であり、好ましくは、-C(R)(R)-、-Si(R)(R)-、-C(R)(R)-C(R)(R)-又は-Si(R)(R)-Si(R)(R)-である。
nは1~3の整数である。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、または炭素数1~20のハロゲン含有炭化水素基を示し、好ましくは水素原子または炭素数1~4の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。
Lは周期表第14族の原子を示し、好ましくは炭素原子又はケイ素原子である。
【0021】
前記一般式(I)で表される二架橋メタロセン化合物の具体例としては、(1,1’-エチレン)(2,2’-エチレン)ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、(1,1’-ジメチルシリレン)(2,2’-ジメチルシリレン)ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、(1,1’-ジメチルシリレン)(2,2’-エチレン)ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、(1,1’-イソプロピリデン)(2,2’-ジメチルシリレン)ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、(1,1’-イソプロピリデン)(2,2’-イソプロピリデン)ビス(3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド等のジクロル体及び上記化合物のジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体が挙げられ、(1,1’-ジメチルシリレン)(2,2’-ジメチルシリレン)ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリドが好ましい。
また、上記化合物のジルコニウムを、チタン又はハフニウムに置き換えた化合物が挙げられる。
メタロセン化合物(A)は、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
〔イオン性化合物(B)〕
イオン性化合物(B)は、前記メタロセン化合物(A)と反応してカチオンに変換しうるイオン性化合物であれば、制限はないが、好ましくは下記一般式(V)で表される化合物又は下記一般式(VI)で表される化合物であり、より好ましくは下記一般式(V)で表される化合物である。
([L-Rk+([Z] ・・・(V)
([Lk+([Z] ・・・(VI)
【0023】
一般式(V)において、Lはルイス塩基を示し、Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基、または、アリール基、アルキルアリール基およびアリールアルキル基から選ばれる炭素数6~20の炭化水素基を示す。
【0024】
ここで、Lの具体例としては、アンモニア、メチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルアニリン、ジフェニルアミン、N,N-ジメチルアニリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、メチルジフェニルアミン、ピリジン、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン、p-ニトロ-N,N-ジメチルアニリンなどのアミン類、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどのホスフィン類、テトラヒドロチオフェンなどのチオエーテル類、安息香酸エチルなどのエステル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類などを挙げることができる。Rの具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基、トリチル基などを挙げることができる。
【0025】
一般式(VI)において、LはM、R、R C又はRを表す。R及びRは、それぞれ独立に、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基又はフルオレニル基を示し、Rは炭素数1~20のアルキル基、または、アリール基、アルキルアリール基およびアリールアルキル基から選ばれる炭素数6~20の炭化水素基を示す。Rはテトラフェニルポルフィリン、フタロシアニン等の大環状配位子を示す。
は、周期律表第1~3、11~13、17族元素を含むものであり、Mは、周期律表第7~12族元素を示す。
【0026】
ここで、R、Rの具体例としては、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基などを挙げることができる。Rの具体例としては、フェニル基、p-トリル基、p-メトキシフェニル基等を挙げることができ、Rの具体例としては、テトラフェニルポルフィリン、フタロシアニンなどを挙げることができる。また、Mの具体例としては、Li、Na、K、Ag、Cu、Br、I、Iなどを挙げることができ、Mの具体例としては、Mn、Fe、Co、Ni、Znなどを挙げることができる。
【0027】
一般式(V)および(VI)において、kは[L-R]、[L]のイオン価数で1~3の整数、aは1以上の整数、b=(k×a)である。
[Z]は、非配位性アニオン[Z又は[Zを表す。
[Zは複数の基が元素に結合したアニオン、すなわち[M・・・Gを表す。ここで、Mは周期律表第5~15族元素、好ましくは周期律表第13~15族元素を示す。G~Gはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~40のジアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数7~40のアルキルアリール基、炭素数7~40のアリールアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1~20のアシルオキシ基又は有機メタロイド基又は炭素数2~20のヘテロ原子含有炭化水素基を示す。G~Gのうち二つ以上が環を形成してもよい。fは[(中心金属Mの原子価)+1]の整数を示す。
[Zは酸解離定数の逆数の対数(pKa)が-10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基、又は一般的に超強酸と定義される酸の共役塩基を示す。また、ルイス塩基が配位していてもよい。
【0028】
ここで、[Z、すなわち[M・・・Gにおいて、Mの具体例としては、B、Al、Si、P、As、Sbなど、好ましくはB及びAlを挙げることができる。また、G、G~Gの具体例としては、ジアルキルアミノ基としてジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基など、アルコキシ基又はアリールオキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、フェノキシ基など、炭化水素基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-オクチル基、n-エイコシル基、フェニル基、p-トリル基、ベンジル基、4-t-ブチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基など、ハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヘテロ原子含有炭化水素基として、p-フルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基など、有機メタロイド基として、ペンタメチルアンチモン基、トリメチルシリル基、トリメチルゲルミル基、ジフェニルアルシン基、ジシクロヘキシルアンチモン基、ジフェニルホウ素基などを挙げることができる。
【0029】
また、非配位性のアニオン、すなわちpKaが-10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基[Zの具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン(CFSO、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ベンジルアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、過塩素酸アニオン(ClO、トリフルオロ酢酸アニオン(CFCOO)、ヘキサフルオロアンチモンアニオン(SbF、フルオロスルホン酸アニオン(FSO、クロロスルホン酸アニオン(ClSO、フルオロスルホン酸アニオン/5-フッ化アンチモン(FSO/SbF、フルオロスルホン酸アニオン/5-フッ化ヒ素(FSO/AsF、トリフルオロメタンスルホン酸/5-フッ化アンチモン(CFSO/SbFなどを挙げることができる。
【0030】
イオン性化合物(B)は、好ましくは置換基を有していてもよいテトラフェニルホウ酸塩であり、より具体的には、テトラフェニルホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸トリ-n-ブチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸メチル(トリ-n-ブチル)アンモニウム、テトラフェニルホウ酸ベンジル(トリ-n-ブチル)アンモニウム、テトラフェニルホウ酸ジメチルジフェニルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラフェニルホウ酸トリメチルアニリニウム、テトラフェニルホウ酸メチルピリジニウム、テトラフェニルホウ酸ベンジルピリジニウム、テトラフェニルホウ酸メチル(2-シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリ-n-ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ベンジル(トリ-n-ブチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチルジフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ベンジルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチル(2-シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ベンジル(2-シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸メチル(4-シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルホスホニウム、テトラキス[ビス(3,5-ジトリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ジメチルアニリニウム、テトラフェニルホウ酸フェロセニウム、テトラフェニルホウ酸銀、テトラフェニルホウ酸トリチル、テトラフェニルホウ酸テトラフェニルポルフィリンマンガン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸フェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸(1,1’-ジメチルフェロセニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸デカメチルフェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸リチウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸テトラフェニルポルフィリンマンガン、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヘキサフルオロヒ素酸銀、過塩素酸銀、トリフルオロ酢酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀などが挙げられる。これらのなかでも、イオン性化合物(B)は、好ましくはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウムである。
イオン性化合物(B)は一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
〔有機金属化合物(C)〕
有機金属化合物(C)は、好ましくは有機アルミニウム化合物及び有機亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、より好ましくは有機アルミニウム化合物(C1)である。
有機アルミニウム化合物としては、一般式(VII)で示される化合物が用いられる。
(RAlQ3-v ・・・(VII)
(式中、Rは炭素数1~10のアルキル基、Qは水素原子、炭素数1~20のアルコキシ基,炭素数6~20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1~3の整数または1.5である。)
有機亜鉛化合物としては、一般式(VIII)で示される化合物が用いられる。
(RZnP2-u ・・・(VIII)
(式中、Rは炭素数1~10のアルキル基、Pは炭素数1~20のアルコキシ基,炭素数6~20のアリール基又はハロゲン原子を示し、uは1~2の整数である。)
【0032】
前記一般式(VII)で示される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘプチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられ、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。
【0033】
前記一般式(VIII)で示される有機亜鉛化合物の具体例としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛、ジオクチル亜鉛等を挙げることができる。
有機金属化合物(C)は一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本製造方法においてメタロセン化合物(A)とイオン性化合物(B)との使用割合は、モル比で、好ましくは10:1~1:100、より好ましくは2:1~1:10である。メタロセン化合物(A)と有機金属化合物(C)は、好ましくはモル比で1:1~1:10,000、より好ましくは1:10~1:1,000である。また、イオン性化合物(B)、有機金属化合物(C)はそれぞれ1種類又は二種以上組み合わせて用いることもできる。二種以上組み合わせて用いる場合にも、二種以上の合計での使用割合が上記の範囲内であることが触媒活性の観点から好ましい。
【0035】
〔炭素数が2以上異なる複数の原料モノマー(D)〕
工程1において、用いられる複数の原料モノマー(D)は、炭素数が2以上異なるα-オレフィンであり、工程2で重合されるα-オレフィンに含まれる。
本工程で炭素数が2以上異なるα-オレフィンを用いることで、得られるポリ-α-オレフィンを含む潤滑油組成物が低温流動性に優れるものとなる。炭素数が2以上異なるα-オレフィンを触媒混合物を得る際に用いることで、得られるポリ-α-オレフィンを含む潤滑油組成物が低温流動性に優れる理由は定かではないが、ポリ-α-オレフィンの分子末端に複数の原料モノマーを由来とする構成単位がランダムに配列するために低温流動性に優れるものと考えられる。
【0036】
複数の原料モノマー(D)としては、好ましくは炭素数3~30のα-オレフィンであり、より好ましくは炭素数6~20のα-オレフィンであり、更に好ましくは炭素数8~14のα-オレフィンである。具体的には、複数の原料モノマー(D)としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-イコセン、1-ヘンイコセン、1-ドコセン、1-トリコセン、1-テトラコセン、1-ペンタコセン、1-ヘキサコセン、1-ヘプタコセン、1-オクタコセン、1-ノナコセン、1-トリアコンテン等が挙げられ、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンからなる群より選ばれる少なくとも2つが好ましく、より好ましくは、1-オクテン(D1)と1-ドデセン(D2)である。
複数の原料モノマー(D)が、1-オクテン(D1)と1-ドデセン(D2)を含む場合、工程1で用いられる1-オクテン(D1)と1-ドデセン(D2)の比率[D1/D2]は、モル比で、好ましくは3:7~7:3であり、より好ましくは4:6~6:4であり、更に好ましくは4.5:5.5~5.5:4.5である。
【0037】
複数の原料モノマー(D)は、第1の原料モノマーと第2の原料モノマーの炭素数が2以上異なるが、第1の原料モノマーと第2の原料モノマーの炭素数の差は2以上であり、好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上である。第1の原料モノマーと第2の原料モノマーの炭素数の差は、好ましくは6以下であり、より好ましくは5以下であり、更に好ましくは4である。
【0038】
複数の原料モノマー(D)は、少なくとも2種を使用するが、3種以上使用してもよい。好ましくは2種である。
複数の原料モノマー(D)はそのまま重合反応に使用しても良いが、活性アルミナ、モレキュラーシーブ等の吸着剤で処理して使用すると不純物が除去され、活性が向上しより好ましい。
【0039】
工程1において、メタロセン化合物(A)に対する前記複数の原料モノマー(D)の合計の比率[D/A]が、モル比で、好ましくは1~1000であり、より好ましくは40~300である。複数の原料モノマー(D)の使用量を上記範囲とすることで、得られるポリ-α-オレフィンを含む潤滑油組成物の低温流動性を向上させることができる。
工程1における複数の原料モノマー(D)の使用量は、工程1で得られる触媒混合物に対して、好ましくは0.1~30体積%であり、より好ましくは0.5~20体積%であり、更に好ましくは0.5~15体積%であり、より更に好ましくは0.6~12体積%であり、より更に好ましくは0.6~10体積%である。複数の原料モノマー(D)の使用量を上記範囲とすることで、得られるポリ-α-オレフィンを含む潤滑油組成物の低温流動性を向上させることができる。
【0040】
〔(E)成分〕
工程1における(E)成分は、アルコール類(E1)、フェノール類(E2)及びエーテル化合物(E3)からなる群より選択される少なくとも1種であり、好ましくはアルコール類(E1)である。
(E)成分、特にアルコール類(E1)を用いることで、得られるポリ-α-オレフィンを含む潤滑油組成物の低温流動性をより向上させることができる。その理由は定かではないが、次のように考えられる。工程1における触媒液中では、活性化体と不活性化体が共存していると推定されるが、特にアルコール類(E1)を添加した触媒液では、アルコール類が活性体構造に作用し、保護構造を形成することで、不活性化体の生成を抑制し、触媒の活性向上に寄与すると考えられる。この保護構造を持った活性化体になることで、異なった分子量を有する複数の原料モノマーのいずれもが作用しやくすくなり、より複数の原料モノマーを由来とする構成単位がランダムに配列しやすくなり、得られるポリ-α-オレフィンを含む潤滑油組成物は低温流動性に優れるものと考えられる。
【0041】
(アルコール類(E1))
アルコール類(E1)は、好ましくは炭素数1~20のアルコールであり、より好ましくは炭素数1~8のアルコールであり、さらに好ましくは炭素数1~6のアルコールである。アルコール類の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール、1-ペンチルアルコール、2-ペンチルアルコール、3-メチル-1-ブチルアルコール、1-ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、1-ヘプチルアルコール、1-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、トリフェニルメタノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、ベンジルアルコール、α-メチルベンジルアルコール等が挙げられ、好ましくはターシャリーブチルアルコールである。アルコール類(E1)は一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(フェノール類(E2))
フェノール類(E2)は、好ましくは環形成炭素数が6~20のフェノールであり、より好ましくは環形成炭素数が6~14のフェノールであり、さらに好ましくは環形成炭素数が6~12のフェノールである。フェノール類の具体例としては、フェノール、カテコール、クレゾール、ナフトール、4-フェニルフェノール、チモール、ビスフェノールA等が挙げられる。フェノール類(E2)は一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(エーテル化合物(E3))
エーテル化合物(E3)は、一般式R10-O-R11で表した場合、R10及びR11は、それぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基、または炭素数1~20のハロゲン含有炭化水素基であり、R10及びR11の総炭素数が8個以下のものが好適に用いられる。
【0044】
エーテル化合物の具体的な化合物としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル、メチルノルマルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルターシャリ-ブチルエーテル、エチルノルマルブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチルターシャリ-ブチルエーテル、メチルフェニルエーテル、クロロメチルメチルエーテル、クロロメチルエチルエーテル、ブロモメチルメチルエーテル、2,2-ジクロロエチルメチルエーテル、2-クロロエチルメチルエーテル、2-ブロモエチルメチルエーテル、2-ブロモエチルエチルエーテル、2-クロロエチルエチルエーテル、α,α-ジクロロメチルメチルエーテル、1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、ジフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルメチルエーテル、2,2-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチルメチルエーテル、2-ブロモ-1,1,2-トリフルオロエチルエチルエーテル、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルエチルエーテル、エチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、ヘプタフルオロプロピル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、n-ブチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、4-ブロモフェニルトリフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルクロリド、2-ブロモフラン、3-ブロモフラン、パーフルオロ-2-ブチルテトラヒドロフラン、ビス(4-フルオロフェニル)エーテル、2-ブロモエチルエーテル、2-クロロエチルエーテル、1,2-ジクロロエチルエチルエーテル、ペンタフルオロアニソール、2,3,5,6-ペンタフルオロアニソール、2,4,6-トリブロモアニソール、2,3,4-トリクロルアニソール、2,4,6-トリクロロアニソール、2,4,5-トリフルオロアニソール、2-ブロモ-4-フルオロアニソール、4-ブロモ-2-フルオロアニソール、2,4-ジブロモアニソール、α,4-ジクロロアニソール、2,3-ジクロロアニソール、2,4-ジフルオロアニソール、2-ブロモアニソール、2-クロロアニソール、2-フルオロアニソール、2-ヨードアニソール、ベンジル-3-ブロモプロピルエーテル等が挙げられる。エーテル化合物(E3)は一種用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(E)成分としては(E1)~(E3)から選択されるものを単独又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
メタロセン化合物(A)と(E)成分との比率(使用割合)[A/E]は、モル比で、好ましくは10:1~1:100であり、より好ましくは1:1~1:50であり、さらに好ましくは1:1~1:30である。有機金属化合物(C)と(E)成分との使用割合は、有機金属化合物(C)に対して(E)成分のモル比が1未満であることが好ましく、有機金属化合物(C)と(E)成分とのモル比が10:9~1000:1であることが好ましい。(E)成分であるアルコール類(E1)は一般的には重合反応の後に停止剤として多量に添加されることが多い。本製造方法では意外にも少量の(E)成分を重合前に添加することで活性を向上することができる。
【0046】
〔溶媒〕
工程1において、更に溶媒を混合してもよく、触媒混合物の各成分を均一に混合する観点から、溶媒を混合することが好ましい。
工程1で用いることができる溶媒としては、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族炭化水素及びハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、芳香族炭化水素がより好ましい。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、トルエン又はキシレンが好ましく、トルエンがより好ましい。
脂環式炭化水素としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。
溶媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせてもよい。
【0047】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、メタロセン化合物(A)の濃度が、0.1~10mmol/Lとなる量が好ましく、0.5~5mmol/Lとなる量がより好ましく、1~3mmol/Lとなる量が更に好ましい。
【0048】
〔混合〕
工程1は、上記成分を混合して触媒混合物を得る工程である。
工程1において、好ましくは、50℃以下で30分間以上混合する。
上記成分を混合する際の温度は、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは40℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。下限値としては、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは10℃以上である。
上記成分を混合する際の時間は、好ましくは30分間以上であり、より好ましくは30分間~10時間であり、更に好ましくは1~7時間である。
つまり、工程1において、好ましくは、50℃以下で30分間以上混合するものである。混合する際の温度と時間を上記の範囲にすることによって、得られるポリ-α-オレフィンを含む潤滑油組成物は低温流動性に優れる。
【0049】
(工程2)
工程2は、前記触媒混合物を用いて前記複数の原料モノマー(D)を含有するα-オレフィンを重合する工程である。
【0050】
本製造方法は、α-オレフィンを重合して、ポリ-α-オレフィンを得るものであるため、工程2で用いられるα-オレフィンは、ポリ-α-オレフィンの原料である。
工程2で用いられるα-オレフィンは、前記複数の原料モノマー(D)を含有する。
【0051】
〔α-オレフィン〕
工程2で用いられるα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数3~30のα-オレフィンであり、より好ましくは炭素数6~20のα-オレフィンであり、更に好ましくは炭素数8~14のα-オレフィンである。具体的には、複数の原料モノマー(D)としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-イコセン、1-ヘンイコセン、1-ドコセン、1-トリコセン、1-テトラコセン、1-ペンタコセン、1-ヘキサコセン、1-ヘプタコセン、1-オクタコセン、1-ノナコセン、1-トリアコンテン等が挙げられ、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンからなる群より選ばれる少なくとも2つが好ましく、より好ましくは、1-オクテン(D1)と1-ドデセン(D2)である。
工程2で用いられるα-オレフィンが、1-オクテン(D1)と1-ドデセン(D2)を含む場合、工程2で用いられる1-オクテン(D1)と1-ドデセン(D2)の比率[D1/D2]は、モル比で、好ましくは3:7~7:3であり、より好ましくは4:6~6:4であり、更に好ましくは4.5:5.5~5.5:4.5である。
工程2で用いられるα-オレフィン中の複数の原料モノマー(D)の比率は、好ましくは70~100モル%であり、より好ましくは80~100モル%であり、更に好ましくは90~100モル%であり、より更に好ましくは95~100モル%である。工程2で用いられるα-オレフィンは、複数の原料モノマー(D)のみからなっていてもよく、1-オクテン(D1)と1-ドデセン(D2)のみからなっていてもよい。
【0052】
工程2で用いられるα-オレフィンは、前記複数の原料モノマー(D)を含有するため、少なくとも2種を使用するが、3種以上使用してもよい。好ましくは2種である。
工程2で用いられるα-オレフィンはそのまま重合反応に使用しても良いが、活性アルミナ、モレキュラーシーブ等の吸着剤で処理して使用すると不純物が除去され、活性が向上しより好ましい。
【0053】
工程2において、原料として用いられるα-オレフィンの量は、好ましくは200kg以上であり、より好ましくは300kg以上であり、更に好ましくは400kg以上であり、より更に好ましくは500kg以上である。反応スケールが大きくなることで、反応器壁による触媒活性への影響が少なくなり、得られるポリ-α-オレフィンを含む潤滑油組成物は、より低温流動性に優れるものとなると考えられる。
【0054】
〔重合〕
工程2において、重合方法は特に制限されず、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、スラリー重合法、気相重合法、などのいずれの方法を用いてもよい。
重合温度は、好ましくは0~200℃であり、より好ましくは30~150℃であり、更に好ましくは40~120℃であり、より更に好ましくは80~120℃である。
原料のα-オレフィンに対する触媒の使用割合は、工程1で用いられるメタロセン化合物(A)に対する工程2で用いられるα-オレフィンのモル比[α-オレフィン/メタロセン化合物(A)]が、好ましくは1~10であり、より好ましくは100~10である。
重合時間は、好ましくは5分間~20時間であり、反応圧力は、好ましくは0~0.2MPaGである。
【0055】
工程2においては、生産性の観点から、好ましくは無溶媒で重合を行うが、溶媒を用いてもよい。工程2で用いることができる溶媒としては、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族炭化水素及びハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、芳香族炭化水素がより好ましい。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、トルエン又はキシレンが好ましく、トルエンがより好ましい。
脂環式炭化水素としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。
溶媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせてもよい。
【0056】
工程2において、α-オレフィンを重合する際に、水素を添加することで活性が向上するため、水素を添加することが好ましい。水素を用いる場合の水素分圧は、好ましくは0.2MPaG以下であり、より好ましくは0.1MPaG以下である。水素分圧の下限は、0.01MPaGである。
【0057】
工程2は、前記触媒混合物を用いてα-オレフィンを重合する工程であるが、工程2においては、α-オレフィンと有機アルミニウム化合物(C2)を混合し、次に触媒混合物を混合し、α-オレフィンを重合することが好ましい。ここで用いられる有機アルミニウム化合物(C2)は、工程1で用いられる有機アルミニウム化合物(C1)と同様であり、好ましい化合物も同様である。有機アルミニウム化合物(C2)と有機アルミニウム化合物(C1)は同一の化合物であることが更に好ましい。
更に、工程2において、α-オレフィンと有機アルミニウム化合物(C2)を混合し、次に触媒混合物を混合し、次に80℃以上に昇温し、α-オレフィンを重合することがより好ましい。好ましい重合温度は前記のとおりであり、80~120℃であることが好ましい。
【0058】
工程2において、各触媒成分の種類、使用量、反応量、重合温度、溶媒を調整することによって、α-オレフィン重合体の分子量を調節することができる。
工程2の重合は、700L以上の容量を有する反応容器で行うことが好ましく、800L以上の容量を有する反応容器で行うことが好ましく、1000L以上の容量を有する反応容器で行うことが好ましく、反応スケールが大きくなることで、反応器壁による触媒活性への影響が少なくなり、得られるポリ-α-オレフィンを含む潤滑油組成物は、より低温流動性に優れるものとなると考えられる。
【0059】
工程2のあとにモノマーやオリゴマー成分を除去することが好ましい。除去方法としては、たとえば、蒸留等が挙げられる。
【0060】
〔水素添加工程〕
工程2で得られたα-オレフィン重合体をそのまま潤滑油、潤滑油基油、潤滑油の添加剤として用いてもよいが、更に水素添加を行うことが好ましい。
水素添加を行うことで、安定性を向上させることができる。
水素添加工程の反応条件は、一般的な水素添加反応の条件で行えばよいが、好ましい条件は以下のとおりである。
この水素添加工程では、一般に使用される気相水素化法を用いることができる。触媒に、パラジウム、白金などの貴金属触媒を用いた場合は、反応温度を60~100℃とし、水素圧を0.1~1MPaとすることが好ましい。ニッケル系触媒を用いた場合は、反応温度を100~250℃とし、水素圧を1~20MPaとすることが好ましい。触媒量は、いずれの系も、工程2で得られた重合体に対し、好ましくは0.05~50質量%であり、反応時間は、好ましくは2~48時間である。なお、水素添加反応は、前記の水素添加触媒を用いることで速やかに進行するが、水素の顕著な吸収が収まってからも、残存する微量の原料の水素添加を完全に行うため、昇温ないし昇圧などの追加操作を行ってもよい。
【0061】
[基油(b)]
本発明の潤滑油組成物には、100℃動粘度が1~30mm/sである基油(b)を含む。
基油(b)は、メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンであってもよいが、好ましくは、非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン及びエステルからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。基油(a)の種類(100℃動粘度)によって、好適な基油(b)の種類が異なる。
「非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン」とは、「重合触媒としてメタロセン触媒以外の触媒を用いて重合されたポリ-α-オレフィン」のことをいい、重合触媒として従来の触媒を用いて重合されたポリ-α-オレフィンをいう。
【0062】
<非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン>
上記非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンは、好ましくは炭素数8~12のα-オレフィンを一種又は二種以上用いて得られるポリ-α-オレフィンである。
上記非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンは、重合触媒としてメタロセン触媒以外の触媒を用いて重合されたポリ-α-オレフィンであり、好ましくは重合触媒として、カチオン触媒又はチーグラー触媒を用いて重合されたポリ-α-オレフィンであり、より好ましくはカチオン触媒を用いて重合されたポリ-α-オレフィンである。
本発明の潤滑油組成物に、メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンに比べて多様な構造を有する非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンを、メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンと混合して用いることによって、低温流動性に優れる潤滑油となる。更に、非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンによって、本発明の潤滑油組成物の各種添加剤の溶解性が向上し、添加剤の機能発現という点においても優れるものとなる。これは、非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンがメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンに比べて、構造の多様性に優れるという特徴を有するためである。
非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンの粘度指数は、好ましくは80以上であり、より好ましくは100以上であり、更に好ましくは130以上である。粘度指数が上記範囲であれば、温度の変化による粘度変化が小さい。
また、非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンの流動点は、好ましくは-25℃以下であり、より好ましくは-30℃以下であり、更に好ましくは-40℃以下である。流動点が上記範囲であれば、これを含有する本発明の潤滑油組成物は、低温環境においても十分な流動性を有するものとなる。
なお、前記動粘度及び粘度指数は、JIS K 2283に準拠して測定した値であり、流動点は、JIS K 2265に準拠して測定した値である。
【0063】
基油(b)は、基油(a)の種類、含有量によって、好適な物性が異なる。
後述の<潤滑油組成物の組成>に記載した組成物の番号によって説明する。基油(b)のうち、好適な非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンとしては、基油(b3)、基油(b1)及び基油(b4)が挙げられる。
【0064】
潤滑油組成物(1-2)では、基油(b)として、基油(b3)が好ましい。
基油(b3)は、100℃動粘度が5~10mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンである。
基油(b3)の100℃動粘度は、5~10mm/sであり、好ましくは5~9mm/sであり、より好ましくは5~8mm/sであり、更に好ましくは5~7mm/sである。
基油(b3)の40℃動粘度は、好ましくは25~50mm/sであり、より好ましくは25~40mm/sであり、更に好ましくは25~35mm/sであり、より更に好ましくは30~35mm/sである。
100℃動粘度及び40℃動粘度が上記の範囲であれば、蒸発損失が少なく、粘性抵抗による動力損失が大きくなることがなく、好ましい。
【0065】
潤滑油組成物(1-1)及び潤滑油組成物(1-1-1)においては、基油(b1)を用いることは任意であるが、基油(b)として、基油(b1)を用いることが好ましい。
基油(b1)は、100℃動粘度が1~10mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンである。
基油(b1)の100℃動粘度は、1~10mm/sであり、好ましくは3~10mm/sであり、より好ましくは5~10mm/sであり、更に好ましくは5~9mm/sであり、より更に好ましくは5~8mm/sであり、より更に好ましくは5~7mm/sである。
基油(b1)の40℃動粘度は、好ましくは10~50mm/sであり、より好ましくは20~50mm/sであり、更に好ましくは25~50mm/sであり、より更に好ましくは25~40mm/sであり、より更に好ましくは25~35mm/sであり、より更に好ましくは30~35mm/sである。
100℃動粘度及び40℃動粘度が上記の範囲であれば、蒸発損失が少なく、粘性抵抗による動力損失が大きくなることがなく、好ましい。
【0066】
潤滑油組成物(2)では、基油(b)として、基油(b4)が好ましい。
基油(b4)は、100℃動粘度が1~30mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンである。
基油(b4)の100℃動粘度は、1~30mm/sであり、好ましくは1~20mm/sであり、より好ましくは1~10mm/sであり、更に好ましくは3~10mm/sであり、より更に好ましくは5~10mm/sであり、より更に好ましくは5~9mm/sであり、より更に好ましくは5~8mm/sであり、より更に好ましくは5~7mm/sである。
基油(b4)の40℃動粘度は、好ましくは10~300mm/sであり、より好ましくは10~150mm/sであり、更に好ましくは10~50mm/sであり、より更に好ましくは20~50mm/sであり、より更に好ましくは25~50mm/sであり、より更に好ましくは25~40mm/sであり、より更に好ましくは25~35mm/sであり、より更に好ましくは30~35mm/sである。
100℃動粘度及び40℃動粘度が上記の範囲であれば、蒸発損失が少なく、粘性抵抗による動力損失が大きくなることがなく、好ましい。
【0067】
<エステル>
上記エステルとしては、ジエステル、芳香族エステル、ポリオールエステル等、既知のエステルを使用することができる。好ましくはポリオールエステルであり、より好ましくはポリオールの部分エステル及びポリオールの完全エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである。
本発明の潤滑油組成物にエステルを用いることによって、本発明の潤滑油組成物の流動性が向上し、低い流動点が得られるという点で優れるものとなる。これは、エステルが低温流動性に優れるという特徴を有するためである。ポリ-α-オレフィン、特にメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィンと、エステルを混合することにより、更に優れた低温流動性を有する。
前記ポリオールエステルの原料となるポリオールとしては、特に制限はないが、脂肪族ポリオールが好ましく、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビットなどの四価以上の多価アルコールを挙げることができる。
【0068】
ポリオールエステルのカルボン酸部分を構成する炭化水素基としては、炭素数が6~30のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数が12~24のアルキル基又はアルケニル基がより好ましく、例えば各種のヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基などを挙げることができる。
上記アルキル基やアルケニル基としては、直鎖状のものであっても分岐状のものであってもよい。
【0069】
ポリオールの完全エステルの具体例としては、ネオペンチルグリコールジラウレート、ネオペンチルグリコールジミリステート、ネオペンチルグリコールジパルミテート、ネオペンチルグリコールジステアレート、ネオペンチルグリコールジイソステアレート等のネオペンチルグリコールエステル;トリメチロールプロパントリラウレート、トリメチロールプロパントリミリステート、トリメチロールプロパントリパルミテート、トリメチロールプロパントリステアレート、トリメチロールプロパントリイソステアレート等のトリメチロールプロパンエステル;グリセリントリラウレート、グリセリントリステアレート、グリセリントリイソステアレート等のグリセリンエステル;ジペンタエリスリトールヘキサラウレート等のジペンタエリスリトールエステルなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
ポリオールの部分エステルは、少なくとも一つの水酸基が残存していれば特に制限はない。
当該ポリオールの部分エステルの具体例としては、ネオペンチルグリコールモノラウレート、ネオペンチルグリコールモノミリステート、ネオペンチルグリコールモノパルミテート、ネオペンチルグリコールモノステアレート、ネオペンチルグリコールモノイソステアレート等のネオペンチルグリコールの部分エステル;トリメチロールプロパンモノ又はジラウレート、トリメチロールプロパンモノ又はジミリステート、トリメチロールプロパンモノ又はジパルミテート、トリメチロールプロパンモノ又はジステアレート、トリメチロールプロパンモノ又はジイソステアレート等のトリメチロールプロパンの部分エステル;グリセリンモノ又はジラウレート、グリセリンモノ又はジステアレート、グリセリンモノ又はジイソステアレート等のグリセリンの部分エステル;ジペンタエリスリトールペンタラウレート等のジペンタエリスリトールの部分エステルなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
上記ポリオールエステルとしては、下記一般式(B2)で表されるものが、泡立ち防止性等の観点から好ましい。
(R-COO-)L ・・・(B2)
(式中、Rは炭素数6~30の炭化水素基であり、nは2~6の整数であり、Lはn価の炭化水素基、またはn価のエーテル結合を含む炭化水素基である。)
上記Rとしては、炭素数8~18のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。
nは3又は4であることが好ましい。
Lは炭素数3~10のn価の炭化水素基、またはn価のエーテル結合を含む炭化水素基であることが好ましい。ここで「エーテル結合を含む炭化水素基」とは、2つの炭化水素基がエーテル結合(-O-)を介して結合したものをいう。
Lが炭素数3~10のn価の炭化水素基である場合のエステルの好ましい具体例としては、ネオペンチルグリコールジラウレート、ネオペンチルグリコールジミリステート等のネオペンチルグリコールエステル等が挙げられる。また、Lがエーテル結合を含む炭化水素基である場合のエステルの好ましい具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサラウレート、ジペンタエリスリトールペンタラウレート等のジペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
【0072】
本発明の潤滑油組成物においては、当該エステルとして、ポリオールエステルを一種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
基油(b)は、基油(a)の種類、含有量によって、好適な物性が異なる。
後述の<潤滑油組成物の組成>に記載した組成物の番号によって説明する。基油(b)のうち、好適なエステルとしては、基油(b2)が挙げられる。
【0074】
潤滑油組成物(1-1-1)及び潤滑油組成物(2)では、基油(b)として、基油(b2)が好ましい。
潤滑油組成物(1-1)及び潤滑油組成物(1-2)においては、基油(b2)を用いることは任意であるが、基油(b)として、基油(b2)を用いることが好ましい。
基油(b2)は、100℃動粘度が10~15mm/sであるエステルである。
基油(b2)の100℃動粘度は、10~15mm/sであり、好ましくは11~15mm/sであり、より好ましくは12~15mm/sであり、更に好ましくは12~14mm/sである。
基油(b2)の40℃動粘度は、好ましくは50~200mm/sであり、より好ましくは60~150mm/sであり、更に好ましくは70~130mm/sであり、より更に好ましくは80~120mm/sである。
100℃動粘度及び40℃動粘度が上記の範囲であれば、蒸発損失が少なく、粘性抵抗による動力損失が大きくなることがなく、好ましい。
【0075】
[その他の基油]
本発明の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の基油(a)及び基油(b)以外の基油を含有していてもよい。
その他の基油としては、その種類については特に制限はなく、鉱油および合成油のいずれをも使用することができる。ここで鉱油としては、従来公知の種々のものが使用可能であり、例えば、パラフィン基系鉱油、中間基系鉱油、ナフテン基系鉱油などが挙げられ、具体例としては、溶剤精製または水素精製による軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油又はブライトストックなどを挙げることができる。
また、合成油としては、やはり従来公知の種々のものが使用可能であり、例えば、ポリブテン、リン酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール、シリコーンオイル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、更にはヒンダードエステルなどを用いることができる。これらの基油は、単独で、あるいは二種以上組み合わせて使用することができ、鉱油と合成油とを組み合わせて使用してもよい。
【0076】
[添加剤]
本発明の潤滑油組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に各種の添加剤を含んでいてもよく、各種の添加剤を潤滑油組成物の用途等に応じて、適宜添加剤を用いることができる。
本発明の潤滑油組成物は、好ましくは、更に、極圧剤、耐摩耗剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤及び流動点降下剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を1~30質量%含有する。
本発明の潤滑油組成物中の添加剤の含有量は、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、更に好ましくは1~10質量%であり、より更に好ましくは1~5質量%であり、より更に好ましくは1~4質量%であり、より更に好ましくは2~4質量%である。
【0077】
極圧剤としては、硫黄系極圧剤、リン系極圧剤、硫黄及び金属を含む極圧剤、リン及び金属を含む極圧剤が挙げられる。これらの極圧剤は一種を単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。極圧剤としては、分子中に硫黄原子及び/又はリン原子を含み、耐荷重性や耐摩耗性を発揮しうるものであればよい。
極圧剤の配合量は、配合効果及び経済性の点から、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01~20質量%であり、好ましくは0.01~10質量%である。
【0078】
耐摩耗剤としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類、ポリサルファイド類等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
耐摩耗剤の配合量は、配合効果および経済性の観点から潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.01~10質量%である。
【0079】
上記無灰清浄分散剤としては、例えばコハク酸イミド類、ホウ素含有コハク酸イミド類、ベンジルアミン類、ホウ素含有ベンジルアミン類、コハク酸エステル類、脂肪酸あるいはコハク酸で代表される一価又は二価カルボン酸アミド類などが挙げられる。
【0080】
酸化防止剤としては、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの酸化防止剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
アミン系酸化防止剤としては、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系化合物、4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジペンチルジフェニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系化合物、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系化合物、α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、ブチルフェニル-α-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-α-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-α-ナフチルアミン、オクチルフェニル-α-ナフチルアミン、ノニルフェニル-α-ナフチルアミンなどのナフチルアミン系化合物が挙げられる。
【0081】
フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのモノフェノール系化合物、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)などのジフェノール系化合物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、五硫化リンとピネンとの反応物などのチオテルペン系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのジアルキルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
本発明の潤滑油組成物に含まれる酸化防止剤の量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上であり、より更に好ましくは0.4質量%以上である。好ましくは20質量%以下であり、3質量%以下であってもよい。
【0082】
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステルなどを挙げることができる。
防錆剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.05~5質量%である。
【0083】
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。金属不活性化剤の好ましい配合量は、配合効果の点から、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.01~1質量%である。
【0084】
流動点降下剤としては、重量平均分子量が5万~15万のポリメタクリレートなどを用いることができる。
【0085】
また、本発明の潤滑油組成物には、添加剤として、潤滑油用添加剤パッケージを使用することもできる。潤滑油用添加剤パッケージには、極圧剤、耐摩耗剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤及び流動点降下剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤が含まれる。潤滑油用添加剤パッケージは、本発明の潤滑油組成物の用途によって、適宜選択すればよいが、ギヤオイルに用いる場合には、歯車油用添加剤パッケージを用いることが好ましい。
潤滑油用添加剤パッケージに含有される添加剤としては、好ましくは、極圧剤、耐摩耗剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤及び流動点降下剤からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、より好ましくは、極圧剤、耐摩耗剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である。更に上記の添加剤以外の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の潤滑油組成物中の潤滑油用添加剤パッケージの含有量は、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、更に好ましくは1~10質量%であり、より更に好ましくは1~5質量%であり、より更に好ましくは1~4質量%であり、より更に好ましくは2~4質量%である。
【0086】
<潤滑油組成物の組成>
本発明は、下記基油(a)及び下記基油(b)を含み、基油(b)に対する基油(a)の質量比[(a)/(b)]が50/50~95/5である潤滑油組成物であるが、基油(a)と基油(b)の種類及び動粘度、並びに各含有量を特定の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
基油(a):100℃動粘度が40~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b):100℃動粘度が1~30mm/sである基油
【0087】
本発明の潤滑油組成物中の基油(b)に対する基油(a)の質量比[(a)/(b)]は、50/50~95/5である。基油(a)と基油(b)の質量比を特定の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
本発明の潤滑油組成物中の基油(a)と基油(b)の合計含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、より更に好ましくは95質量%以上であり、より更に好ましくは96質量%以上である。上限値には制限はなく、本発明の潤滑油組成物は、基油(a)と基油(b)のみからなっていてもよいが、本発明の潤滑油組成物中の基油(a)と基油(b)の合計含有量は、好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは100質量%未満であり、更に好ましくは99質量%以下であり、より更に好ましくは98質量%以下である。
以下に、好ましい潤滑油組成物の各組成について説明する。便宜上、各組成を有する潤滑油組成物に対して、潤滑油組成物(1)、潤滑油組成物(1-1)、潤滑油組成物(2)等の番号を付す。
【0088】
(潤滑油組成物(1))
潤滑油組成物(1)は、本発明の潤滑油組成物のうち、基油(a)が下記基油(a1)であり、基油(b)に対する基油(a1)の質量比[(a1)/(b)]が80/20~95/5である潤滑油組成物である。潤滑油組成物(1)は、本発明の潤滑油組成物のなかでも、より粘度指数が大きく、より低温流動性に優れる潤滑油組成物である。
基油(a1):100℃動粘度が40~50mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
【0089】
すなわち、潤滑油組成物(1)は、下記基油(a1)及び下記基油(b)を含み、基油(b)に対する基油(a1)の質量比[(a1)/(b)]が80/20~95/5である潤滑油組成物である。
基油(a1):100℃動粘度が40~50mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b):100℃動粘度が1~30mm/sである基油
【0090】
(潤滑油組成物(1-1))
潤滑油組成物(1)は、更に潤滑油組成物(1-1)であることが好ましい。
潤滑油組成物(1-1)は、潤滑油組成物(1)のうち、基油(b)が下記基油(b1)及び下記基油(b2)からなる群より選ばれる少なくとも1種である潤滑油組成物である。潤滑油組成物(1-1)は、潤滑油組成物(1)のなかでも、より粘度指数が大きく、より低温流動性に優れる潤滑油組成物である。
基油(b1):100℃動粘度が1~10mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b2):100℃動粘度が10~15mm/sであるエステル
【0091】
すなわち、潤滑油組成物(1-1)は、下記基油(a1)及び下記基油(b)を含み、基油(b)に対する基油(a1)の質量比[(a1)/(b)]が80/20~95/5であり、基油(b)が下記基油(b1)及び下記基油(b2)からなる群より選ばれる少なくとも1種である潤滑油組成物である。
基油(a1):100℃動粘度が40~50mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b1):100℃動粘度が1~10mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b2):100℃動粘度が10~15mm/sであるエステル
【0092】
潤滑油組成物(1-1)中の基油(b)に対する基油(a1)の質量比[(a1)/(b)]は、80/20~95/5である。基油(a1)と基油(b)の質量比を特定の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
【0093】
(潤滑油組成物(1-2))
潤滑油組成物(1)は、更に潤滑油組成物(1-2)であることが好ましい。
潤滑油組成物(1-2)は、潤滑油組成物(1)のうち、基油(b)が下記基油(b3)であり、基油(b3)に対する基油(a1)の質量比[(a1)/(b3)]が90/10~95/5である潤滑油組成物である。潤滑油組成物(1-2)は、潤滑油組成物(1)のなかでも、より粘度指数が大きく、より低温流動性に優れる潤滑油組成物である。なお、潤滑油組成物(1-2)は、潤滑油組成物(1-1)にも含まれ、潤滑油組成物(1-2)は、潤滑油組成物(1-1)のなかでも、より粘度指数が大きく、より低温流動性に優れる潤滑油組成物である。
基油(b3):100℃動粘度が5~10mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
【0094】
すなわち、潤滑油組成物(1-2)は、下記基油(a1)及び下記基油(b3)を含み、基油(b3)に対する基油(a1)の質量比[(a1)/(b3)]が90/10~95/5である潤滑油組成物である。
基油(a1):100℃動粘度が40~50mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b3):100℃動粘度が5~10mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
【0095】
潤滑油組成物(1-2)において、基油(a1)の含有量は、潤滑油組成物(1-2)全量に対して、好ましくは90~95質量%であり、より好ましくは90~94質量%であり、更に好ましくは90~93質量%であり、より更に好ましくは90~92質量%であり、より更に好ましくは91~92質量%である。
潤滑油組成物(1-2)において、基油(b3)の含有量は、好ましくは5~9質量%であり、より好ましくは5~8質量%であり、更に好ましくは5~7質量%であり、より更に好ましくは5~6質量%である。
【0096】
潤滑油組成物(1-2)中の基油(b3)に対する基油(a1)の質量比[(a1)/(b3)]は、90/10~95/5であり、好ましくは91/9~95/5であり、より好ましくは92/8~95/5であり、更に好ましくは93/7~95/5であり、より更に好ましくは94/6~95/5である。基油(a1)と基油(b3)の質量比を上記の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
【0097】
(潤滑油組成物(1-1-1))
潤滑油組成物(1-1)は、更に潤滑油組成物(1-1-1)であることが好ましい。
潤滑油組成物(1-1-1)は、潤滑油組成物(1-1)のうち、基油(b)が基油(b2)、又は基油(b2)と基油(b1)であり、基油(b1)に対する基油(b2)の質量比[(b2)/(b1)]が80/20~100/0である潤滑油組成物である。
すなわち、潤滑油組成物(1-1-1)は、下記基油(a1)及び基油(b2)を含み、基油(b1)を含まないか、基油(b1)を含み、基油(b1)と基油(b2)の合計に対する基油(a1)の質量比[(a1)/((b1)+(b2))]が80/20~95/5であり、基油(b1)に対する基油(b2)の質量比[(b2)/(b1)]が80/20~100/0である潤滑油組成物である。
基油(a1):100℃動粘度が40~50mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b1):100℃動粘度が1~10mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b2):100℃動粘度が10~15mm/sであるエステル
【0098】
潤滑油組成物(1-1-1)において、基油(a1)の含有量は、潤滑油組成物(1-1-1)全量に対して、好ましくは80~95質量%であり、より好ましくは82~92質量%であり、更に好ましくは83~89質量%である。基油(b)が基油(b1)を含まない場合、基油(a1)の含有量は、潤滑油組成物(1-1-1)全量に対して、より更に好ましくは83~87質量%であり、より更に好ましくは83~86質量%である。基油(b)が基油(b1)を含む場合、基油(a1)の含有量は、潤滑油組成物(1-1-1)全量に対して、より更に好ましくは84~89質量%であり、より更に好ましくは84~87質量%である。
【0099】
潤滑油組成物(1-1-1)において、基油(b)の含有量は、好ましくは5~20質量%であり、より好ましくは8~18質量%であり、更に好ましくは9~16質量%である。基油(b)が基油(b1)を含まない場合、基油(b)の含有量は、潤滑油組成物(1-1-1)全量に対して、より更に好ましくは10~16質量%であり、より更に好ましくは11~15質量%である。基油(b)が基油(b1)を含む場合、基油(b)の含有量は、潤滑油組成物(1-1-1)全量に対して、より更に好ましくは9~15質量%であり、より更に好ましくは10~14質量%である。
潤滑油組成物(1-1-1)において、基油(b2)の含有量は、好ましくは5~20質量%であり、より好ましくは7~18質量%であり、更に好ましくは9~16質量%である。基油(b)が基油(b1)を含まない場合、基油(b2)の含有量は、潤滑油組成物(1-1-1)全量に対して、より更に好ましくは10~16質量%であり、より更に好ましくは11~15質量%である。基油(b)が基油(b1)を含む場合、基油(b2)の含有量は、潤滑油組成物(1-1-1)全量に対して、より更に好ましくは8~14質量%であり、より更に好ましくは9~13質量%である。
潤滑油組成物(1-1-1)において、基油(b1)の含有量は、好ましくは0~5質量%であり、より好ましくは0~3質量%であり、更に好ましくは0~2質量%である。
【0100】
潤滑油組成物(1-1-1)中の基油(a1)と基油(b)の質量比[(a1)/(b)]は、80/20~95/5であり、好ましくは82/18~92/8であり、より好ましくは84/16~91/9である。基油(b)が基油(b1)を含まない場合、潤滑油組成物(1-1-1)中の基油(a1)と基油(b)の質量比[(a1)/(b)]は、更に好ましくは84/16~89/11であり、より更に好ましくは85/15~88/12である。基油(b)が基油(b1)を含む場合、潤滑油組成物(1-1-1)中の基油(a1)と基油(b)の質量比[(a1)/(b)]は、更に好ましくは86/14~91/9であり、より更に好ましくは87/13~90/10である。基油(a1)と基油(b)の質量比を上記の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
【0101】
潤滑油組成物(1-1-1)中の基油(a1)と基油(b2)の質量比[(a1)/(b2)]は、好ましくは85/15~95/5であり、より好ましくは85/15~93/7であり、更に好ましくは85/15~92/8である。基油(b)が基油(b1)を含まない場合、潤滑油組成物(1-1-1)中の基油(a1)と基油(b2)の質量比[(a1)/(b2)]は、より更に好ましくは85/15~89/11であり、より更に好ましくは85/15~88/12である。基油(b)が基油(b1)を含む場合、潤滑油組成物(1-1-1)中の基油(a1)と基油(b2)の質量比[(a1)/(b2)]は、より更に好ましくは86/14~92/8であり、より更に好ましくは88/12~91/9である。基油(a1)と基油(b2)の質量比を上記の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
潤滑油組成物(1-1-1)中の基油(a1)と基油(b1)の質量比[(a1)/(b1)]は、好ましくは95/5~100/0であり、より好ましくは97/3~100/0であり、更に好ましくは98/2~100/0である。基油(b)が基油(b1)を含む場合、より更に好ましくは98/2~99/1である。基油(a1)と基油(b1)の質量比を上記の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
【0102】
潤滑油組成物(1-1-1)中の基油(b1)に対する基油(b2)の質量比[(b2)/(b1)]は、80/20~100/0であり、好ましくは85/15~100/0であり、より好ましくは87/13~100/0である。基油(b)が基油(b1)を含む場合、更に好ましくは87/13~95/5である。基油(b2)と基油(b1)の質量比を特定の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
【0103】
(潤滑油組成物(2))
潤滑油組成物(2)は、本発明の潤滑油組成物のうち、基油(a)が下記基油(a2)であり、基油(b)が下記基油(b2)と下記基油(b4)であり、基油(b)に対する基油(a2)の質量比[(a2)/(b)]が50/50~70/30であり、基油(b4)に対する基油(b2)の質量比[(b2)/(b4)]が25/75~60/40である潤滑油組成物である。潤滑油組成物(2)は、本発明の潤滑油組成物のなかでも、より粘度指数が大きく、より低温流動性に優れる潤滑油組成物である。
基油(a2):100℃動粘度が120~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b2):100℃動粘度が10~15mm/sであるエステル
基油(b4):100℃動粘度が1~30mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
【0104】
すなわち、潤滑油組成物(2)は、下記基油(a2)、下記基油(b2)及び下記基油(b4)を含み、基油(b)に対する基油(a2)の質量比[(a2)/(b)]が50/50~70/30であり、基油(b4)に対する基油(b2)の質量比[(b2)/(b4)]が25/75~60/40である潤滑油組成物である。
基油(a2):100℃動粘度が120~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b2):100℃動粘度が10~15mm/sであるエステル
基油(b4):100℃動粘度が1~30mm/sである非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
【0105】
潤滑油組成物(2)において、基油(a1)の含有量は、潤滑油組成物(2)全量に対して、好ましくは50~70質量%であり、より好ましくは53~68質量%であり、更に好ましくは55~67質量%であり、より更に好ましくは57~65質量%であり、より更に好ましくは58~64質量%である。
潤滑油組成物(2)において、基油(b)の含有量は、好ましくは25~45質量%であり、より好ましくは27~43質量%であり、更に好ましくは28~42質量%であり、より更に好ましくは30~40質量%であり、より更に好ましくは34~38質量%である。
潤滑油組成物(2)において、基油(b2)の含有量は、好ましくは10~20質量%であり、より好ましくは10~19質量%であり、更に好ましくは11~18質量%であり、より更に好ましくは12~17質量%であり、より更に好ましくは13~16質量%である。
潤滑油組成物(2)において、基油(b4)の含有量は、好ましくは15~25質量%であり、より好ましくは17~23質量%であり、更に好ましくは18~22質量%である。
【0106】
潤滑油組成物(2)中の基油(b)に対する基油(a2)の質量比[(a2)/(b)]は、50/50~70/30であり、好ましくは53/47~70/30であり、より好ましくは55/45~70/30であり、更に好ましくは57/43~70/30であり、より更に好ましくは60/40~70/30である。基油(a1)と基油(b)の質量比を上記の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
潤滑油組成物(2)中の基油(a2)と基油(b2)の質量比[(a2)/(b2)]は、好ましくは70/30~90/10であり、より好ましくは73/27~90/10であり、更に好ましくは75/25~87/13であり、より更に好ましくは77/23~85/15であり、より更に好ましくは80/20~85/15である。基油(a2)と基油(b2)の質量比を上記の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
潤滑油組成物(2)中の基油(a2)と基油(b4)の質量比[(a2)/(b4)]は、好ましくは65/35~85/15であり、より好ましくは70/30~83/17であり、更に好ましくは73/27~81/19であり、より更に好ましくは75/25~80/20である。基油(a2)と基油(b4)の質量比を上記の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
潤滑油組成物(2)中の基油(b4)に対する基油(b2)の質量比[(b2)/(b4)]は、25/75~60/40であり、好ましくは35/15~50/50であり、より好ましくは45/55~50/50であり、更に好ましくは40/60~45/55である。基油(b2)と基油(b4)の質量比を特定の範囲に設定することによって、より本発明の効果を高めることができ、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
【0107】
<潤滑油組成物の特性>
本発明の潤滑油組成物の40℃動粘度は、好ましくは288~352mm/sである。すなわち、ISO粘度グレードでISO VG320に該当するものであることが好ましい。本発明の潤滑油組成物の40℃動粘度が上記範囲であることによって、風力発電用ギヤオイルとして適するものとなる。本発明の潤滑油組成物の40℃動粘度は、より好ましくは290~350mm/sであり、更に好ましくは300~340mm/sであり、より更に好ましくは310~330mm/sである。
【0108】
[風力発電用ギヤオイル]
本発明の風力発電用ギヤオイルは、前記潤滑油組成物を含有する風力発電用ギヤオイルである。すなわち、本発明の風力発電用ギヤオイルは、下記基油(a)50~95質量%、及び下記基油(b)5~50質量%を含む潤滑油組成物を含有する風力発電用ギヤオイルである。
基油(a):100℃動粘度が40~130mm/sであるメタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン
基油(b):100℃動粘度が1~30mm/sである基油
【0109】
本発明の風力発電用ギヤオイルは、前記潤滑油組成物を含有する風力発電用ギヤオイルであり、好ましい潤滑油組成物も前記のとおりである。
本発明の風力発電用ギヤオイルは、前記潤滑油組成物を、好ましくは80質量%以上含有し、より好ましくは90質量%以上含有し、更に好ましくは95質量%以上含有し、より更に好ましくは99質量%以上含有する。含有量の上限には制限はないが、好ましくは100質量%以下であり、100質量%であってもよく、本発明の風力発電用ギヤオイルは、前記潤滑油組成物のみからなっていてもよい。
本発明の風力発電用ギヤオイルは、前記潤滑油組成物を含有するため、粘度指数が大きく、低温流動性に優れる。したがって、本発明の風力発電用ギヤオイルは、温度変化の大きな過酷な環境下で使用されても、安定であり、特に低温での粘度上昇を低減することができる。
【実施例0110】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0111】
基油の物性評価は以下の方法により行った。結果は表1に示す。
(1)100℃動粘度、40℃動粘度及び粘度指数
動粘度は、JIS K 2283に準拠し測定した。粘度指数は、動粘度より、JIS K 2283に準拠し計算して求めた。粘度指数が大きいほど、温度による粘度変化が小さく、潤滑油として優れる。したがって、粘度指数が大きいほど、特に風力発電用ギヤオイルのような使用時の温度変化が大きい用途に適している。
(2)流動点
JIS K 2269に準拠し測定した。流動点の温度が低いほど、低温流動性に優れる。
(3)-30℃粘度
設定温度を-30℃として、ASTM D2983-09に準拠して測定した。-30℃粘度が小さいほど、低温流動性に優れる。
【0112】
[基油(a-1)(メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン)]
製造例1(基油(a-1)(メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン)の製造)
(工程1)
30Lのステンレス製容器に、窒素雰囲気下で、水分10ppm以下まで脱水したトルエン18.9kg、トリイソブチルアルミニウム(C1)(20%トルエン溶液)1.2kg、ターシャリーブチルアルコール(E1)0.0440kg、(1,1’-ジメチルシリレン)(2,2’-ジメチルシリレン)-ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(A)30mmol、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(B)36mmol、1-オクテン(D1)0.586kg、1-ドデセン(D2)0.880kgを添加し、室温(25℃)で2時間撹拌し、触媒混合物を得た。
【0113】
(工程2)
内容積1.2m3(1200L)のステンレス製反応容器を十分乾燥し、窒素置換の後に、1-ドデセン(D2)230kg、1-オクテン(D1)345kgを導入し、次にトリイソブチルアルミニウム(C1)(20%トルエン溶液)0.19kgを入れ、95℃に昇温した。水素0.2MPaGを導入し、工程1で得られた触媒混合物を1時間あたり0.4kgの速度で連続的に導入した。触媒混合物導入開始後内温を103℃に維持して反応させた。反応途中の反応液を少量抜き出し、転化率を測定し、転化率が90%に達したところで反応を停止した。
50Pa、250℃の減圧蒸留を行い、残留モノマー等を除去して、ポリ-α-オレフィンを得た。
【0114】
(水素添加工程)
工程2で得られたα-オレフィン重合体に、ニッケル触媒を質量比で0.25質量%添加後、0.4MPaの水素のもと、150℃で6時間反応させた。反応終了後、触媒成分をろ過で除去し、無色透明な水素添加ポリ-α-オレフィン(基油(a-1))を得た。
得られた水素添加ポリ-α-オレフィン(基油(a-1))の100℃動粘度は46.7mm/sであり、40℃動粘度は399.9mm/sであった。
【0115】
[基油(a-2)(メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン)]
製造例2(基油(a-2)(メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン)の製造)
製造例1において、ターシャリーブチルアルコール(E1)の量を0.0440kgから、0.0264kgに変更した以外は製造例1と同様にして、無色透明な水素添加ポリ-α-オレフィン(基油(a-2))を得た。
得られた水素添加ポリ-α-オレフィン(基油(a-2))の100℃動粘度は129.2mm/sであり、40℃動粘度は1267.6mm/sであった。
【0116】
[基油(c)(非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン)]
重合触媒として、カチオン触媒を用いて、1-デセンを重合したポリ-α-オレフィン(デセンオリゴマー)。
非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン(基油(c))の100℃動粘度は103.1mm/sであり、40℃動粘度は1263.2mm/s、粘度指数は172であった。
【0117】
[基油(b-1)(非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン)]
重合触媒として、カチオン触媒を用いて、1-デセンを重合したポリ-α-オレフィン(デセンオリゴマー)。
非メタロセン触媒系ポリ-α-オレフィン(基油(b-1))の100℃動粘度は5.9mm/sであり、40℃動粘度は30.6mm/s、粘度指数は138であった。
【0118】
[基油(b-2)(エステル)]
トリメチロールプロパンと飽和脂肪酸を反応させたポリオールエステル。(基油(b-2))の100℃動粘度は、13.1mm/sであり、40℃動粘度は、100.5mm/s、粘度指数は128であった。
【0119】
[添加剤]
全ての実施例及び比較例で同一の歯車油用添加剤パッケージを用いた。該歯車油用添加剤パッケージには、極圧剤、耐摩耗剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、及び酸化防止剤が含まれる。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例で得られた潤滑油組成物は、比較例の潤滑油組成物と同様の40℃動粘度、同様の100℃動粘度であるにもかかわらず、比較例の潤滑油組成物に比べ、粘度指数が大きく、流動点が非常に低く、低温流動性に優れることがわかる。このことから、本発明の潤滑油組成物は、粘度指数が大きく、低温流動性に優れ、特に、温度変化の大きな過酷な環境下で使用される風力発電機に用いられるギヤオイルとして好適に用いることができる。