IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジミインコーポレーテッドの特許一覧

特開2024-80610研磨用組成物、研磨方法および半導体基板の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080610
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】研磨用組成物、研磨方法および半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240606BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20240606BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20240606BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180807
(22)【出願日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2022193303
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 将志
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB29
3C158ED10
3C158ED23
3C158ED26
3C158ED28
5F057AA17
5F057AA28
5F057BA15
5F057BB05
5F057BB06
5F057BB08
5F057BB14
5F057BB15
5F057BB16
5F057BB19
5F057BB22
5F057BB23
5F057BB24
5F057BB25
5F057BB26
5F057BB27
5F057BB29
5F057BB32
5F057BB33
5F057BB34
5F057CA12
5F057CA25
5F057DA03
5F057DA38
5F057EA01
5F057EA16
5F057EA17
5F057EA18
5F057EA21
5F057EA22
5F057EA27
5F057EA32
5F057FA37
(57)【要約】
【課題】酸化ケイ素膜の研磨速度に対して窒化チタン膜を高い研磨速度で研磨でき(すなわち、窒化チタン膜の研磨速度/酸化ケイ素膜の研磨速度、で表される選択比が高く)、かつ分散安定性の高い研磨用組成物を提供する。
【解決手段】砥粒と、酸と、界面活性剤と、酸化剤と、を含む研磨用組成物であって、前記砥粒は、正のゼータ電位を有し、前記酸は、無機酸であり、前記界面活性剤は、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物を含み、前記酸化剤は、過酸化水素であり、pHが、2以上4以下である、研磨用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と、酸と、界面活性剤と、酸化剤と、を含む研磨用組成物であって、
前記砥粒は、正のゼータ電位を有し、
前記酸は、無機酸であり、
前記界面活性剤は、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物を含み、
前記酸化剤は、過酸化水素であり、
pHが、2以上4以下である、研磨用組成物。
【請求項2】
前記砥粒は、カチオン変性シリカである、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤は、数平均分子量が200以上1000以下のポリプロピレングリコールである、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸からなる群より選択される1種以上である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記砥粒の含有量が、前記研磨用組成物の全質量に対して0.01質量%以上3.0質量%以下である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法。
【請求項7】
半導体基板を請求項6に記載の研磨方法により研磨する工程を有する、半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、研磨方法および半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、デバイスを製造する際に、半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカやアルミナ、セリア等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法であり、研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、シリコン酸化物(酸化ケイ素)、シリコン窒化物や、窒化チタン、チタン、窒化タンタルまたはタンタル等を含む膜、銅やタングステンなどの金属等からなる配線、プラグなどである。
【0003】
中でも、窒化チタンの研磨に注目すると、特許文献1には、研磨材と、過酸化水素、クエン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、シュウ酸、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の錯生成剤と、ベンゾトリアゾール(BTA)等の膜生成剤とを含む、研磨用組成物によって、チタン膜や窒化チタン膜を研磨できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-021546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者は、特許文献1の研磨用組成物を用いて窒化チタン膜と酸化ケイ素膜とを含む研磨対象物を研磨する際、酸化ケイ素膜の研磨速度に対する窒化チタン膜の研磨速度の比が未だ不十分であることを発見した。さらに、特許文献1に記載の研磨用組成物の分散安定性が不十分であるということを、本発明者は知見した。
【0006】
そこで、本発明は、酸化ケイ素膜の研磨速度に対して窒化チタン膜を高い研磨速度で研磨でき(すなわち、窒化チタン膜の研磨速度/酸化ケイ素膜の研磨速度、で表される選択比が高く)、かつ分散安定性の高い研磨用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明者は鋭意研究を積み重ねた。その結果、砥粒と、酸と、界面活性剤と、酸化剤と、を含む研磨用組成物であって、前記砥粒は、正のゼータ電位を有し、前記酸は、無機酸であり、前記界面活性剤は、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物を含み、前記酸化剤は、過酸化水素であり、pHが、2以上4以下である、研磨用組成物により、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸化ケイ素膜の研磨速度に対して窒化チタン膜を高い研磨速度で研磨でき(すなわち、窒化チタン膜の研磨速度/酸化ケイ素膜の研磨速度、で表される選択比が高く)、かつ分散安定性の高い研磨用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されず、特許請求の範囲内で種々改変することができる。本明細書に記載される実施形態は、任意に組み合わせることにより、他の実施形態とすることができる。本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0010】
本発明は、砥粒と、酸と、界面活性剤と、酸化剤と、を含む研磨用組成物であって、前記砥粒は、正のゼータ電位を有し、前記酸は、無機酸であり、前記界面活性剤は、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物を含み、前記酸化剤は、過酸化水素であり、pHが、2以上4以下である、研磨用組成物である。このような研磨用組成物は、窒化チタン膜の研磨速度/酸化ケイ素膜の研磨速度、で表される選択比(以下、単に、「窒化チタン/酸化ケイ素の選択比」とも称する)が高く、かつ分散安定性が高い。本発明者は、本発明によってこのような効果が得られるメカニズムを以下のように推定している。
【0011】
本発明では、窒化チタン膜の研磨速度は向上させ、酸化ケイ素膜の研磨速度は抑制させることを目的とする。酸化剤である過酸化水素は、研磨速度を向上させるために用いられるが、酸化ケイ素膜の研磨速度を向上させてしまうと、窒化チタン/酸化ケイ素の選択比が低くなる。また、研磨用組成物のpHが2未満であったり、4を超える場合、酸化ケイ素膜の研磨速度を向上させてしまい、窒化チタン/酸化ケイ素の選択比が低下することもわかった。本発明の研磨用組成物においては、特定のpH範囲において、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物が、選択的に酸化ケイ素膜の表面上に吸着し、酸化ケイ素膜の表面を保護する膜を形成できたのではないかと考えられる。これにより、酸化ケイ素膜と砥粒との接触が抑制され、酸化ケイ素膜の研磨速度が抑制されるため、この窒化チタン/酸化ケイ素の選択比を高くすることができたものと考える。しかしながら、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物は砥粒や添加剤と相互作用するため、分散安定性に問題を生じることがある。本発明者は、長期分散安定性において鋭意検討した結果、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物と無機酸とを組み合わせて含有させ、pHを2以上4以下とすることにより、窒化チタン/酸化ケイ素の選択比を高く維持しつつ、高い分散安定性も発揮できる研磨用組成物が得られることがわかった。例えば、本発明の研磨用組成物において、無機酸を有機酸に置き換えると、沈殿が生じた。これは、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物は、疎水性が高いため、砥粒表面に吸着した有機酸の有する炭素と疎水性相互作用をし、凝集を促進するのではないかと考えられる。また、本発明の研磨用組成物において、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物を、ポリエチレングリコール構造を有する化合物に置き換えると、研磨用組成物が白濁し、長期の分散安定性が維持できないことがわかった。これは、ポリエチレングリコールは、ポリプロピレングリコールよりと比較してより高い親水性を有するため、砥粒表面の親水性のカチオン性官能基と直接相互作用をし、凝集を促進するのではないかと考えられる。このように、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物と無機酸とは研磨用組成物中で良好に相互作用することで、砥粒の分散性が良好に維持され、研磨用組成物の分散安定性が維持されたものと推測される。以上のように、本発明者は、砥粒と、無機酸と、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物と、酸化剤としての過酸化水素と、を含む、pH2以上4以下の研磨用組成物により、窒化チタン/酸化ケイ素の選択比が高く、かつ分散安定性が高い研磨用組成物を提供するという課題が解決されることを見出したのである。
【0012】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
【0013】
[研磨対象物]
本発明の研磨用組成物が研磨する研磨対象物に含まれる材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(SiN)、炭窒化ケイ素(SiCN)、多結晶シリコン(ポリシリコン)、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)、金属、SiGe、第13族元素等が挙げられる。
【0014】
酸化ケイ素を含む膜の例としては、例えば、オルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOS(Tetraethyl Orthosilicate)タイプ酸化ケイ素膜(以下、単に「TEOS膜」とも称する)、HDP(High Density Plasma)膜、USG(Undoped Silicate Glass)膜、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜、BPSG(Boron-Phospho Silicate Glass)膜、RTO(Rapid
Thermal Oxidation)膜等が挙げられる。
【0015】
金属を含む膜としては、例えば、タングステン(W)膜、窒化チタン(TiN)膜、ルテニウム(Ru)膜、白金(Pt)膜、金(Au)膜、ハフニウム(Hf)膜、コバルト(Co)膜、ニッケル(Ni)膜、銅(Cu)膜、アルミニウム(Al)膜、タンタル(Ta)膜などが挙げられる。導電率を向上させるという観点からは、好ましくはW膜、TiN膜、Ru膜、Pt膜またはAu膜が用いられ、特に好ましくはW膜またはTiN膜が用いられ、最も好ましくはW膜が用いられる。本発明の研磨用組成物は、一実施形態において、金属(例えばタングステン)を含む研磨対象物に対しても、好適に研磨できる。
【0016】
本発明に係る研磨対象物は、第13族元素を40質量%以上含む層(以下、単に13族元素層とも称する)を有するものであってもよい。第13族元素の例としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)が挙げられる。第13族元素は、1種単独でも、または2種以上組み合わせてもよい。
【0017】
13族元素層は、第13族元素以外の他の元素を含んでもよい。他の元素の例としては、例えば、シリコン(Si)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、リン(P)、ゲルマニウム(Ge)等が挙げられる。これら他の元素は、1種単独でも、または2種以上組み合わせて含んでもよい。
【0018】
13族元素層に含まれる第13族元素の量の下限は、層全体の質量に対して40質量%以上であり、45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、13族元素層に含まれる第13族元素の量の上限は、層全体の質量に対して100質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明に係る研磨対象物は、酸化ケイ素膜または窒化チタン膜を含むことが好ましい。よって、本発明の研磨用組成物は、酸化ケイ素膜または窒化ケイ素膜を含む研磨対象物を研磨する用途で用いられるのが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る研磨対象物は、一実施形態において、第13族元素を含むことが好ましい。よって、本発明の研磨用組成物は、第13族元素を含む研磨対象物を研磨する用途で用いられるのが好ましい。
【0021】
さらに、研磨対象物の形状は特に制限されない。本発明の一実施形態において、研磨用組成物は、たとえば、板状や多面体状等の、平面を有する研磨対象物の研磨に好ましく適用され得る。
【0022】
[砥粒]
本発明に係る研磨用組成物は、砥粒を含む。本発明に係る研磨用組成物に含まれる砥粒は、正のゼータ電位を有する。砥粒は、好ましくはカチオン変性シリカ(カチオン性基を有するシリカ)であり、より好ましくはカチオン変性コロイダルシリカ(カチオン性基を有するコロイダルシリカ)である。砥粒は、1種単独でも、または2種以上組み合わせて用いてもよい。また、砥粒は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
【0023】
コロイダルシリカの製造方法としては、ケイ酸ソーダ法、ゾルゲル法が挙げられ、いずれの製造方法で製造されたコロイダルシリカであっても、本発明に係る砥粒として好適に用いられる。しかしながら、金属不純物低減の観点から、ゾルゲル法により製造されたコロイダルシリカが好ましい。ゾルゲル法によって製造されたコロイダルシリカは、半導体中に拡散性のある金属不純物や塩化物イオン等の腐食性イオンの含有量が少ないため好ましい。ゾルゲル法によるコロイダルシリカの製造は、従来公知の手法を用いて行うことができ、具体的には、加水分解可能なケイ素化合物(例えば、アルコキシシランまたはその誘導体)を原料とし、加水分解・縮合反応を行うことにより、コロイダルシリカを得ることができる。
【0024】
ここで、カチオン変性とは、シリカ(好ましくはコロイダルシリカ)の表面にカチオン性基(例えば、アミノ基または第四級アンモニウム基)が結合した状態を意味する。そして、本発明の好ましい実施形態によれば、カチオン変性シリカ粒子は、アミノ基変性シリカ粒子であり、より好ましくはアミノ基変性コロイダルシリカ粒子である。かかる実施形態によれば、上記効果をより向上させることができる。
【0025】
シリカ(コロイダルシリカ)をカチオン変性するには、シリカ(コロイダルシリカ)に対して、カチオン性基(例えば、アミノ基または第四級アンモニウム基)を有するシランカップリング剤を加えて、所定の温度で所定時間反応させればよい。本発明の好ましい実施形態において、カチオン変性シリカは、アミノ基を有するシランカップリング剤または第四級アンモニウム基を有するシランカップリング剤をシリカ(より好ましくはコロイダルシリカ)の表面に固定化させてなる。
【0026】
この際、用いられるシランカップリング剤としては、例えば、特開2005-162533号公報に記載されているものが挙げられる。具体的には、例えば、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン((3-アミノプロピル)トリエトキシシラン)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-トリエトキシシリル-N-(α,γ-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリエトキシシランの塩酸塩、オクタデシルジメチル-(γ-トリメトキシシリルプロピル)-アンモニウムクロライド、N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド等のシランカップリング剤が挙げられる。なかでも、コロイダルシリカとの反応性が良好であることから、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。なお、本発明において、シランカップリング剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
なお、シランカップリング剤は、そのまま、または親水性有機溶媒もしくは純水で希釈して、シリカ(コロイダルシリカ)に加えることができる。親水性有機溶媒または純水で希釈することによって、凝集物の生成を抑制することができる。シランカップリング剤を親水性有機溶媒または純水で希釈する場合、シランカップリング剤が親水性有機溶媒または純水 1L中、好ましくは0.01g以上1g以下、より好ましくは0.1g以上0.7g以下程度の濃度になるように、親水性有機溶媒または純水に希釈すればよい。親水性有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールなどを例示することができる。
【0028】
また、シランカップリング剤の添加量を調節することにより、シリカ(コロイダルシリカ)の表面に導入されるカチオン性基の量を調節することができる。シランカップリング剤の使用量は特に限定されないが、反応液に対して、好ましくは0.1mM(mmol/L)以上5mM以下、より好ましくは0.5mM以上3mM以下程度である。
【0029】
シランカップリング剤でシリカ(コロイダルシリカ)をカチオン変性する際の処理温度は特に限定されず、室温(例えば、25℃)から、シリカ(コロイダルシリカ)を分散する分散媒の沸点程度の温度であればよく、具体的には0℃以上100℃以下、好ましくは室温(例えば、25℃)以上90℃以下程度とされる。
【0030】
研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位の下限は、5mV以上が好ましく、10mV以上がより好ましく、15mV以上がさらに好ましく、20mV以上が特に好ましく、25mV以上が最も好ましい。また、研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位の上限は、70mV以下が好ましく、65mV以下がより好ましく、60mV以下がさらに好ましく、55mV以下が特に好ましく、50mV以下が最も好ましい。すなわち、研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位は、5mV以上70mV以下が好ましく、10mV以上65mV以下がより好ましく、15mV以上60mV以下がさらに好ましく、20mV以上55mV以下が特に好ましく、25mV以上50mV以下が最も好ましい。
【0031】
上記のようなゼータ電位を有する砥粒であれば、窒化チタン膜を、より高い研磨速度で研磨することができ、窒化チタン膜の研磨速度が、酸化ケイ素膜の研磨速度に比べてより高くなる(窒化チタン/酸化ケイ素の選択比がより高くなる)。また、研磨用組成物の分散安定性をより一層高めることができる。
【0032】
砥粒の形状は、特に制限されず、球形状であってもよいし、非球形状であってもよい。非球形状の具体例としては、三角柱や四角柱などの多角柱状、円柱状、円柱の中央部が端部よりも膨らんだ俵状、円盤の中央部が貫通しているドーナツ状、板状、中央部にくびれを有するいわゆる繭状、複数の粒子が一体化しているいわゆる会合型球形状、表面に複数の突起を有するいわゆる金平糖形状、ラグビーボール形状等、種々の形状が挙げられ、特に制限されない。
【0033】
砥粒の平均一次粒子径は、1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることがさらに好ましい。砥粒の平均一次粒子径が大きくなるにつれて、窒化チタン膜の研磨速度が向上する。また、砥粒の平均一次粒子径は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。砥粒の平均一次粒子径が小さくなるにつれて、窒化チタン膜の研磨速度が、酸化ケイ素膜の研磨速度に比べてより高くなる(窒化チタン/酸化ケイ素の選択比がより高くなる)。
【0034】
すなわち、砥粒の平均一次粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましく、3nm以上50nm以下であることがより好ましく、5nm以上30nm以下であることがさらに好ましい。なお、砥粒の平均一次粒子径は、例えば、BET法から算出した砥粒の比表面積(SA)と、砥粒の密度とを基に算出することができる。より具体的には、砥粒の平均一次粒子径は、実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
【0035】
また、砥粒の平均二次粒子径は、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、25nm以上であることがさらに好ましい。砥粒の平均二次粒子径が大きくなるにつれて、研磨中の抵抗が小さくなり、窒化チタン膜の安定的な研磨が可能になる。また、砥粒の平均二次粒子径は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。砥粒の平均二次粒子径が小さくなるにつれて、砥粒の単位質量当たりの表面積が大きくなり、研磨対象物との接触頻度が向上し、窒化チタン膜の研磨速度がより向上する。すなわち、砥粒の平均二次粒子径は、15nm以上200nm以下であることが好ましく、20nm以上150nm以下であることがより好ましく、25nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。なお、砥粒の平均二次粒子径は、例えばレーザー回折散乱法に代表される動的光散乱法により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
【0036】
砥粒の平均一次粒子径に対する平均二次粒子径の比(平均二次粒子径/平均一次粒子径、以下「平均会合度」とも称する)は、1.0超であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましい。砥粒の平均会合度が大きくなるにつれて、窒化チタン膜の研磨速度がより向上する。また、砥粒の平均会合度は、4以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。砥粒の平均会合度が小さくなるにつれて、窒化チタン膜の研磨速度が、酸化ケイ素膜の研磨速度に比べてより高くなる(窒化チタン/酸化ケイ素の選択比がより高くなる)。すなわち、砥粒の平均会合度は、1.0超4以下であることが好ましく、1.1以上3.5以下であることがより好ましく、1.2以上3以下であることがさらに好ましい。
【0037】
なお、砥粒平均会合度は、砥粒の平均二次粒子径の値を平均一次粒子径の値で除することにより得られる。
【0038】
研磨用組成物中の砥粒のアスペクト比の上限は、特に制限されないが、2.0未満であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、研磨対象物表面の欠陥をより低減することができる。なお、アスペクト比は、走査型電子顕微鏡により砥粒の画像に外接する最小の長方形をとり、その長方形の長辺の長さを同じ長方形の短辺の長さで除することにより得られる値の平均であり、一般的な画像解析ソフトウエアを用いて求めることができる。研磨用組成物中の砥粒のアスペクト比の下限は、特に制限されないが、1.0以上であることが好ましい。
【0039】
砥粒の大きさ(平均一次粒子径、平均二次粒子径、アスペクト比等)は、砥粒の製造方法の選択等により適切に制御することができる。
【0040】
本明細書において、砥粒のゼータ電位は、実施例に記載の方法によって測定される値を採用する。砥粒のゼータ電位は、砥粒が有するカチオン性基の量、研磨用組成物のpH等により調整することができる。
【0041】
本発明に係る研磨用組成物において、砥粒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、砥粒は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0042】
研磨用組成物中の砥粒の含有量(濃度)は、特に制限されないが、研磨用組成物の全質量に対して、例えば、0.01質量%以上であり、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、0.5質量%超であることが特に好ましい。また、研磨用組成物中の砥粒の含有量の上限は、研磨用組成物の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、4質量%以下であることがさらに好ましく、4質量%未満であることが特に好ましい。すなわち、砥粒の含有量は、研磨用組成物の全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上4質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%超4質量%未満であることが特に好ましい。一実施形態において、研磨用組成物中の砥粒の含有量(濃度)は、0.01質量%以上3.0質量%以下である。
【0043】
砥粒の含有量がこのような範囲であれば、窒化チタン膜を、より高い研磨速度で研磨することができ、窒化チタン膜の研磨速度が、酸化ケイ素膜の研磨速度に比べてより高くなる(窒化チタン/酸化ケイ素の選択比がより高くなる)。また、研磨用組成物の分散安定性もより一層高くなる。研磨用組成物が2種以上の砥粒を含む場合には、砥粒の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0044】
本発明に係る研磨用組成物において砥粒としてカチオン変性シリカを用いる場合、本発明の効果を阻害しない範囲内において、カチオン変性シリカ以外の他の砥粒をさらに含んでもよい。このような他の砥粒は、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれであってもよい。無機粒子の具体例としては、例えば、未変性のシリカ、アルミナ、セリア、チタニア等の金属酸化物からなる粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子が挙げられる。
【0045】
[界面活性剤]
本発明に係る研磨用組成物は、界面活性剤としてポリプロピレングリコール構造を有する化合物(以下、「ポリプロピレングリコール系化合物」と称する)を含む。ポリプロピレングリコール系化合物は、窒化チタン膜の研磨を促進する(研磨速度を向上させる)働きを有する。ポリプロピレングリコール系化合物は、1種単独でも、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ポリプロピレングリコール系化合物は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0046】
ポリプロピレングリコール系化合物の種類としては、特に制限されないが、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールランダム共重合体、ポリプロピレングリコール-ポリテトラメチレングリコールランダム共重合体、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリテトラメチレングリコールランダム共重合体、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールトリブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールトリブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレングリコールが好ましい。
【0047】
ポリプロピレングリコール系化合物の数平均分子量(Mn)は、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、200以上がさらに好ましく、250以上が特に好ましく、300以上が最も好ましい。また、ポリプロピレングリコール系化合物の重量平均分子量(Mw)は、例えば、2000以下であってもよく、1000以下が好ましく、900以下がより好ましく、800以下がさらに好ましく、700以下が特に好ましく、600以下が最も好ましい。すなわち、ポリプロピレングリコール系化合物の数平均分子量(Mn)は、100以上1000以下が好ましく、150以上900以下がより好ましく、200以上800以下がさらに好ましく、250以上700以下が特に好ましく、300以上600以下が最も好ましい。一実施形態において、ポリプロピレングリコール系化合物の数平均分子量(Mn)は、200以上1,000以下である。
【0048】
なお、本明細書において、ポリプロピレングリコール系化合物の数平均分子量(Mn)は、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0049】
[ポリプロピレングリコール系化合物の数平均分子量(Mn)の測定]
ポリプロピレングリコール系化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した数平均分子量(ポリエチレングリコール換算)の値を用いた。数平均分子量は、下記の装置および条件によって測定した:
GPC装置:株式会社島津製作所製
型式:Prominence + ELSD検出器(ELSD-LTII)
カラム:VP-ODS(株式会社島津製作所製)
移動相 A:メタノール
B:酢酸1%水溶液
流量:1mL/分
検出器:ELSD temp.40℃、Gain 8、NGAS 350kPa
オーブン温度:40℃
注入量:40μL。
【0050】
研磨用組成物中のポリプロピレングリコール系化合物の含有量(濃度)は、特に制限されないが、研磨用組成物の全質量に対して、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、0.05質量%以上であることが特に好ましく、0.07質量%以上であることが最も好ましい。また、研磨用組成物中のポリプロピレングリコール系化合物の含有量は、研磨用組成物の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましく、0.8質量%以下であることが最も好ましい。ポリプロピレングリコール系化合物の含有量がこのような範囲であれば、窒化チタン膜を、より高い研磨速度で研磨することができ、窒化チタン膜の研磨速度が、酸化ケイ素膜の研磨速度に比べてより高くなる(窒化チタン/酸化ケイ素の選択比がより高くなる)。また、研磨用組成物の分散安定性をより一層高めることができる。
【0051】
すなわち、研磨用組成物中のポリプロピレングリコール系化合物の含有量(濃度)は、研磨用組成物の全質量に対して、0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以上1質量%以下であることが特に好ましく、0.07質量%以上0.8質量%以下であることが最も好ましい。
【0052】
本発明に係る研磨用組成物は、ポリプロピレングリコール系化合物以外の他の界面活性剤(以下、「他の界面活性剤」と称する)を含んでいてもよい。他の界面活性剤としては、分子中に、カチオン性基、アニオン性基およびノニオン性基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する界面活性剤であり得る。凝集物の低減や洗浄性向上等の観点から、上記界面活性剤としてノニオン性の界面活性剤を好ましく採用し得る。他の界面活性剤の数平均分子量(Mn)は、100以上1000以下であるのが好ましい。他の界面活性剤は、1種単独でも、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明に係る研磨用組成物において他の界面活性剤を含む場合、界面活性剤としてのポリプロピレングリコール系化合物と他の界面活性剤との質量比(ポリプロピレングリコール系化合物:他の界面活性剤)が、80:20~99.99:0.01であるのが好ましく、90:10~99.9:0.1であるのがより好ましい。
【0053】
[酸]
本発明に係る研磨用組成物は、酸として無機酸を含む。無機酸は、pH調整剤としての役割を有する。無機酸の例としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸およびリン酸が挙げられる。なかでも好ましいのは、塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸である。無機酸は、1種単独でもまたは2種以上を組み合わせて使ってもよい。一実施形態において、無機酸は、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸からなる群より選択される1種以上である。
【0054】
研磨用組成物中の無機酸の含有量(濃度)は、特に制限されないが、研磨用組成物の全質量に対して、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましい。また、研磨用組成物中の無機酸の含有量は、研磨用組成物の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。酸の含有量がこのような範囲であれば、窒化チタン膜を、より高い研磨速度で研磨することができ、窒化チタン膜の研磨速度が、酸化ケイ素膜の研磨速度に比べてより高くなる(窒化チタン/酸化ケイ素の選択比がより高くなる)。
【0055】
本発明に係る研磨用組成物において、無機酸は研磨用組成物のpH調整剤としての役割を担うため、その添加量は、研磨用組成物のpHが、例えば2以上4以下となるように適宜調整すればよい。一例として、硝酸を用いる場合、その添加量は研磨用組成物の全質量に対して、0.005質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0056】
[酸化剤]
本発明に係る研磨用組成物は、酸化剤を含む。酸化剤は、研磨過程において研磨対象物表面との間で酸化反応を起こし、当該表面の硬度を低くし、当該表面を脆弱にし得る。酸化剤を用いることにより、窒化チタン膜等の研磨対象物の研磨速度を効果的に向上させることができる。
【0057】
本発明に係る研磨用組成物において、酸化剤は、過酸化水素である。過酸化水素を用いることにより、酸化ケイ素膜の研磨速度に対して窒化チタン膜を高い研磨速度で研磨でき、かつ研磨用組成物の分散安定性を高めることができる。
【0058】
本発明に係る研磨用組成物において、過酸化水素以外の酸化剤を含んでいてもよいが、本発明の効果をより発揮するためには、過酸化水素以外の酸化剤を含有しない方が好ましい。
【0059】
研磨用組成物中の酸化剤の含有量は、0.001mol/L(1mM)以上とすることが適当である。窒化チタン膜の研磨速度向上の観点から、いくつかの態様において、酸化剤の含有量は、上記濃度は0.001mol/L(1mM)以上が好ましく、0.005mol/L(5mM)以上がより好ましく、0.007mol/L(7mM)以上がさらに好ましく、0.01mol/L(10mM)以上が特に好ましく、0.02mol/L(20mM)以上が最も好ましい。
【0060】
また、研磨用組成物の分散安定性の観点から、上記酸化剤の含有量は、10mol/L(10000mM)以下とすることが適当であり、5mol/L(5000mM)以下とすることが好ましく、3mol/L(3000mM)以下(例えば2.5mol/L(2500mM)以下、あるいは2mol/L(2000mM)以下)とすることがより好ましく、1mol/L以下(1000mM)とすることがさらに好ましく、0.5mol/L以下(500mM)とすることが特に好ましく、0.1mol/L(100mM)以下とすることが最も好ましい。
【0061】
上記より、研磨用組成物中の酸化剤の含有量は、0.001mol/L以上10mol/L以下が適当であり、0.001mol/L以上5mol/L以下が好ましく、0.005mol/L以上3mol/L以下であることがより好ましく、0.007mol/L以上1mol/L以下がさらに好ましく、0.01mol/L以上0.5mol/L以下が特に好ましく、0.02mol/L以上0.1mol/L以下が最も好ましい。
【0062】
[pH]
本発明の研磨用組成物のpHは、2以上4以下であり、2.0以上4.0以下であるのが好ましく、2を超え4未満であるのがより好ましく、2.2以上3.8以下であるのが
さらに好ましく、2.5以上3.5以下であるのが特に好ましい。pHが上記範囲の場合、本発明の所期の効果がより発揮される。
【0063】
なお、研磨用組成物のpHは、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0064】
本発明の研磨用組成物は、砥粒、ポリプロピレングリコール系化合物、無機酸および酸化剤を必須成分とするが、これらのみによって所望のpHを得ることが難しい場合は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、pH調整剤を添加してpHを調整してもよい。
【0065】
pH調整剤はアルカリおよび上記無機酸以外の酸(すなわち、有機酸)のいずれであってもよい。ただし、本発明の効果をより一層発揮するためには、本発明の研磨用組成物は有機酸を含有しないほうが好ましい。pH調整剤は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0066】
pH調整剤として用いられる有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸および乳酸などのカルボン酸、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、10-カンファースルホン酸、およびイセチオン酸等の有機硫酸等の有機酸等が挙げられる。
【0067】
pH調整剤として使用できる塩基の例としては、例えば、第1族元素の水酸化物または塩、第2族元素の水酸化物、または塩、水酸化第四級アンモニウムまたはその塩等が挙げられる。塩の例としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
【0068】
pH調整剤の添加量は、特に制限されず、研磨用組成物が所望のpHとなるように適宜調整すればよい。
【0069】
[分散媒]
本発明に係る研磨用組成物は、各成分を分散するための分散媒を含むことが好ましい。分散媒としては、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類等や、これらの混合物などが例示できる。これらのうち、分散媒としては水が好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態によると、分散媒は水を含む。本発明のより好ましい形態によると、分散媒は実質的に水からなる。なお、上記の「実質的に」とは、本発明の効果が達成され得る限りにおいて、水以外の分散媒が含まれ得ることを意図する。より具体的には、分散媒は、好ましくは90質量%以上100質量%以下の水と0質量%以上10質量%以下の水以外の分散媒とからなり、より好ましくは99質量%以上100質量%以下の水と0質量%以上1質量%以下の水以外の分散媒とからなる。最も好ましくは、分散媒は水である。
【0070】
研磨用組成物に含まれる成分の作用を阻害しないようにするという観点から、分散媒は、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後、フィルタを通して異物を除去した純水や超純水、または蒸留水がより好ましい。
【0071】
[その他の成分]
本発明に係る研磨用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、錯化剤、防腐剤、防カビ剤、水溶性高分子、溶解助剤等の、研磨用組成物に用いられ得る公知の添加剤をさらに含有してもよい。本発明に係る研磨用組成物は、酸性である。このため、研磨用組成物は、防カビ剤を含むことがより好ましい。すなわち、本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、砥粒、界面活性剤、分散媒、無機酸および酸化剤、ならびにpH調整剤、溶解助剤および防カビ剤からなる群より選択される少なくとも一種から実質的に構成される。本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、砥粒、界面活性剤、分散媒、無機酸および酸化剤、ならびにpH調整剤、溶解助剤および防カビ剤の少なくとも一方から実質的に構成される。ここで、「研磨用組成物が、砥粒、界面活性剤、分散媒、無機酸および酸化剤、ならびにpH調整剤、溶解助剤および防カビ剤の少なくとも一方から実質的に構成される」とは、砥粒、界面活性剤、分散媒、無機酸、酸化剤、pH調整剤、溶解助剤および防カビ剤の合計含有量が、研磨用組成物に対して、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意図する。好ましくは、研磨用組成物は、砥粒、界面活性剤、分散媒、無機酸、酸化剤、pH調整剤、溶解助剤および防カビ剤の少なくとも一方から構成される(上記合計含有量=100質量%)。
【0072】
防カビ剤(防腐剤)は、特に制限されず、所望の用途、目的に応じて適切に選択できる。具体的には、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(BIT)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンや、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、およびフェノキシエタノール等が挙げられる。
【0073】
溶解助剤とは、水溶性高分子を分散媒(溶媒)に溶解させる際に共存させて、水溶性高分子の溶解性を向上させる物質である。本発明の一実施形態による研磨用組成物は、溶解助剤をさらに含んでもよい。
【0074】
溶解助剤の例としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール化合物;ジエチレングリコールジエチルエーテル、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物等が挙げられる。これら溶解助剤は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0075】
[研磨方法および半導体基板の製造方法]
本発明に係る研磨用組成物は、例えば、窒化チタンおよび酸化ケイ素を含む研磨対象物の研磨に好適に用いられる。よって、本発明は、本発明に係る研磨用組成物を用いて、研磨対象物を研磨することを有する、研磨方法を提供する。また、本発明は、本発明に係る研磨用組成物を用いて、半導体基板を研磨することを有する、半導体基板の製造方法を提供する。また、本発明は、半導体基板を、本発明に係る研磨方法により研磨することを有する、半導体基板の製造方法を提供する。
【0076】
研磨装置としては、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと回転数を変更可能なモーター等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
【0077】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0078】
研磨条件については、例えば、研磨定盤およびキャリアの回転速度は、10rpm(0.17s-1)以上500rpm(8.33s-1)以下が好ましい。研磨対象物を有する基板にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.4kPa)以上10psi(68.9kPa)が好ましい。
【0079】
研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明に係る研磨用組成物で覆われていることが好ましい。
【0080】
研磨終了後、基板を流水中で洗浄し、スピンドライヤ等により基板上に付着した水滴を払い落として乾燥させることにより、研磨済みの基板が得られる。
【0081】
本発明に係る研磨用組成物は、一液型であってもよいし、二液型をはじめとする多液型であってもよい。また、本発明に係る研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水などの希釈液を使って、例えば3倍以上(または、例えば5倍以上)に希釈することによって調製されてもよい。
【0082】
すなわち、本発明に係る研磨用組成物は、研磨用組成物の構成成分を2つ以上の複数のスラリーに分けて調製および保管し、研磨直前または研磨時に混合して研磨用組成物とする形態であってもよい。この場合、砥粒および界面活性剤を含む第1の液と、酸化剤および無機酸を含む第2の液とを準備し、第1の液と第2の液とを研磨直前または研磨時に混合して研磨用組成物とする。ここで、研磨時とは、研磨用組成物が研磨対象物に供給された状態を意味し、研磨直前とは、研磨用組成物が研磨対象物に供給される前の1時間前までの状態を意味する。
【0083】
上記のような第1の液と第2の液とを研磨直前または研磨時に混合することにより研磨用組成物とする場合、第1の液と第2の液との混合方法は、以下のような方法が挙げられる。例えば、第1の液と第2の液とを別々の配管で送液し、これらの配管を合流、混合させて供給する方法;研磨直前にあらかじめ第1の液と第2の液とを混合しておき供給する方法;第1の液と第2の液とをそれぞれ研磨定盤上へ供給する方法;を用いることができる。
【0084】
[窒化チタン/酸化ケイ素の選択比]
本発明に係る研磨方法は、酸化ケイ素および窒化チタンを含む研磨対象物を特定の研磨速度比で研磨し得る。本発明に係る研磨方法は、酸化ケイ素および窒化チタンを含む研磨対象物の研磨(例えば仕上げ研磨)に好ましく適用され得る。
【0085】
窒化チタンの研磨速度の下限は、500Å/min超が好ましく、550Å/min以上がより好ましく、600Å/min以上がさらに好ましく、650Å/min以上が特に好ましく、700Å/min以上が最も好ましい。研磨速度が500Å/min超であることにより、窒化チタンの研磨が好適に進行する。窒化チタン膜の研磨速度の上限は、特に制限はないが、実用上、8000Å/min以下である。なお、1Å=0.1nmである。
【0086】
酸化ケイ素の研磨速度の上限は、50Å/min以下が好ましく、50Å/min未満がより好ましく、48Å/min以下がさらに好ましい。研磨速度が50Å/min以下であることにより、酸化ケイ素に対する窒化チタンの研磨選択性を更に向上させることができる。酸化ケイ素膜の研磨速度の下限は、特に制限はないが、実用上、5Å/min以上である。酸化ケイ素に対する窒化チタンの選択比は、10以上が好ましく、12以上が好ましく、15以上がさらに好ましい。
【0087】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【0088】
本発明は、下記態様および形態を包含する。
1.砥粒と、酸と、界面活性剤と、酸化剤と、を含む研磨用組成物であって、
前記砥粒は、正のゼータ電位を有し、
前記酸は、無機酸であり、
前記界面活性剤は、ポリプロピレングリコール構造を有する化合物を含み、前記酸化剤は、過酸化水素であり、pHが、2以上4以下である、研磨用組成物。
2.前記砥粒は、カチオン変性シリカである、上記1.に記載の研磨用組成物。
3.前記界面活性剤は、数平均分子量が200以上1000以下のポリプロピレングリコールである、上記1.または2.に記載の研磨用組成物。
4.前記無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸からなる群より選択される1種以上で
ある、上記1.~3.のいずれかに記載の研磨用組成物。
5.前記砥粒の含有量が、前記研磨用組成物の全質量に対して、0.01質量%以上3.0質量%以下である、上記1.~4.のいずれかに記載の研磨用組成物。
6.上記1.~5.のいずれかに記載の研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法。
7.半導体基板を上記6.に記載の研磨方法により研磨する工程を有する、半導体基板の製造方法。
【実施例0089】
本発明を、以下の実施例及び比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0090】
<砥粒の平均一次粒子径>
砥粒の平均一次粒子径は、マイクロメリティックス社製の“Flow Sorb II
2300”を用いて測定されたBET法によるシリカ粒子の比表面積と、砥粒の密度とから算出した。
【0091】
<砥粒の平均二次粒子径>
砥粒の平均二次粒子径は、動的光散乱式粒子径・粒度分布装置 UPA-UTI151(日機装株式会社製)により、体積平均粒子径(体積基準の算術平均径;Mv)として測定した。
【0092】
<砥粒の平均会合度>
砥粒の平均会合度は、砥粒の平均二次粒子径の値を砥粒の平均一次粒子径の値で除することにより算出した。
【0093】
<砥粒のゼータ電位>
研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位は、研磨用組成物をマルバーン・パナリティカル社製、Zetasizer Nanoに供し、測定温度25℃の条件下でレーザードップラー法(電気泳動光散乱測定法)にて測定し、得られるデータをSmoluchowskiの式で解析することにより、算出した。
【0094】
[ポリプロピレングリコール系化合物の数平均分子量(Mn)の測定]
ポリプロピレングリコール系化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した数平均分子量(ポリエチレングリコール換算)の値を用いた。数平均分子量は、下記の装置および条件によって測定した:
GPC装置:株式会社島津製作所製
型式:Prominence + ELSD検出器(ELSD-LTII)
カラム:VP-ODS(株式会社島津製作所製)
移動相 A:メタノール
B:酢酸1%水溶液
流量:1mL/分
検出器:ELSD temp.40℃、Gain 8、NGAS 350kPa
オーブン温度:40℃
注入量:40μL。
【0095】
<研磨用組成物のpH>
研磨用組成物のpHは、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(株式会社堀場製作所製 型番:F-23)を使用し、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液pH:6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液pH:10.01(25℃))を用いて3点校正した後で、ガラス電極を研磨用組成物に入れて、2分以上経過して安定した後の値をpH値とした。
【0096】
[研磨用組成物の調製]
(実施例1)
特開2005-162533号公報の実施例1に記載の方法と同様にして、シリカゾルの水分散液(シリカ濃度=20質量%)1Lに対してシランカップリング剤としてγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を0.113mmolの濃度(0.113mM)で使用して、平均一次粒子径:25.0nm、平均二次粒子径:50.0nm、平均会合度:2.0、アスペクト比:1.2の繭型形状のカチオン変性コロイダルシリカを作製した。
【0097】
砥粒として上記で得られたカチオン変性コロイダルシリカを最終濃度0.9質量%となるように、分散媒である純水に室温(25℃)で加えた。さらに、最終濃度0.014mMとなるように防カビ剤として2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(THE DOW CHEMICAL COMPANY製)を加え混合液を得た。
【0098】
その後、界面活性剤としてポリプロピレングリコール(Mn:400、三洋化成株式会社製)(表中、「PPG」と示す)を最終濃度0.1質量%となるように加え、無機酸として硝酸をpH3.0となるように加え、室温(25℃)で30分攪拌混合し、酸化剤として31質量%過酸化水素水溶液(三徳化学工業株式会社製)を、表1および表2に記載の所定の含有量(mM)となるように添加し、研磨用組成物を調製した。得られた混合液のpHを測定すると3.0、電気伝導度は0.4mS/cmであった。
【0099】
得られた研磨用組成物中のカチオン変性コロイダルシリカのゼータ電位を、上記の方法に従い測定したところ、+32mVであった。さらに、研磨用組成物中のカチオン変性コロイダルシリカの粒子径は、用いたカチオン変性コロイダルシリカの粒子径と同様であった。
【0100】
(実施例2~8、比較例1~12)
各成分の種類およびその濃度、並びにpHを下記表1および表2のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、各研磨用組成物を調製した。各研磨用組成物の構成を下記表1および表2に示す。また、各研磨用組成物のpHを測定したところ、表1および表2に示す値となった。なお、下記表1および表2中の「-」は、その剤を使用しなかったことを表す。表1中、比較例9で用いた界面活性剤の「PEG」は、ポリエチレングリコールを表す。
【0101】
[評価]
〈分散安定性の評価〉
研磨用組成物の分散安定性を粗大粒子数に基づき評価した。具体的には、研磨用組成物の調製直後(0日)、25℃で保管し1日経過後、25℃で保管し3日経過後について、粗大粒子数の変化を評価した。研磨用組成物を日本インテグリス合同会社製、AccuSizer FXに供し、光学的検知方式にて粒子数を測定した。検出した0.7μm以上の粗大粒子の個数を1mL当たりに含まれる個数に換算し、粗大粒子数とした。粗大粒子数の経時的な増大の有無を確認し、粗大粒子の増大傾向が見られないときに、分散安定性が良好であると判断した。また、25℃で3日経過後の粗大粒子数が15,000個/mL未満であれば、実用可能である。
【0102】
〈分散安定性試験後の研磨用組成物の研磨速度の評価〉
上記調製した各研磨用組成物を25℃で3日保管した後、その研磨用組成物を使用して、研磨対象物の表面を下記の条件で研磨した。研磨対象物としては、表面に厚さ2500Åの窒化チタン(TiN)膜を形成したシリコンウェーハ(300mm、ブランケットウェーハ)、および表面に厚さ10000ÅのTEOSタイプ酸化ケイ素(SiO)膜(以下、「TEOS膜」)を形成したシリコンウェーハ(300mm、ブランケットウェーハ)を準備した。
【0103】
(研磨装置および研磨条件)
研磨装置:株式会社荏原製作所製の研磨機(型式FREX 300E)
研磨パッド:ニッタ・デュポン株式会社製 ポリウレタンパッド IC1000
研磨圧力:3.0psi(1psi=6894.76Pa)
研磨定盤回転数:113rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物供給量:250ml/分
研磨時間:1分間。
【0104】
(研磨速度の評価)
窒化チタン膜について、研磨前後の厚みを直流4探針法を原理とするシート抵抗測定器(VR120/08SD:株式会社国際電気セミコンダクターサービス製)を用いて求めた。TEOS膜について、研磨前後の厚みを光学式膜厚測定器(ASET-f5x:ケーエルエー・テンコール株式会社製)で求めた。求めた厚みから、[(研磨前の厚み)-(研磨後の厚み)]を研磨時間で除することにより、それぞれの研磨対象物における研磨速度を算出した。窒化チタン膜について、研磨速度が500Å/minを超えれば、実用可能である。TEOS膜について、50Å/min以下であれば、実用可能である。
【0105】
以上の評価結果を表1および表2に併せて示す。表1および表2において、窒化チタン膜は「TiN」で示し、TEOS膜は「SiO」で示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
上記表1および上記表2から明らかなように、実施例の研磨用組成物は、比較例の研磨用組成物に比べて、時間経過に伴う粗大粒子の増大傾向が観測されず、分散安定性が高い
ことが分かった。また、25℃で3日間保管した実施例の研磨用組成物を用いた場合、窒化チタン(TiN)膜を高い研磨速度で研磨しながらも、酸化ケイ素(SiO)膜の研磨速度を抑制し、高い選択比を示すことがわかった。一方、比較例の研磨用組成物は、時間経過に伴い粗大粒子数が増大する傾向が観測され、さらに、25℃で3日間保管した比較例の研磨用組成物を用いた場合、酸化ケイ素膜の研磨速度が上昇する傾向が観測された。すなわち、比較例の研磨用組成物は、時間経過とともに粗大粒子数が増大し、それに伴い酸化ケイ素膜の研磨速度が上昇する傾向が見えており、実用できないといえる。
【0109】
よって、本発明に係る研磨用組成物は、酸化ケイ素膜の研磨速度に対して窒化チタン膜を高い研磨速度で研磨でき、かつ分散安定性の高いことがわかる。