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特開2024-80623積層体、光学物品、コート層含有積層体、レンズ、及び眼鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080623
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】積層体、光学物品、コート層含有積層体、レンズ、及び眼鏡
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/10 20060101AFI20240606BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20240606BHJP
   G02B 5/23 20060101ALI20240606BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240606BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240606BHJP
   B32B 27/00 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
G02C7/10
G02C7/00
G02B5/23
G02B5/22
B32B7/023
B32B27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193285
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2022192848
(32)【優先日】2022-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】清水 康智
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
4F100
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BE02
2H006BE05
2H148CA20
2H148DA12
2H148DA24
4F100AJ04A
4F100AJ04E
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK25D
4F100AK25E
4F100AK41A
4F100AK41E
4F100AK42A
4F100AK42E
4F100AK45A
4F100AK45E
4F100AK46A
4F100AK46E
4F100AK51A
4F100AK51C
4F100AK51E
4F100AK53B
4F100AK53D
4F100AK53E
4F100AT00A
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA06
4F100CA13C
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EH46D
4F100EH46E
4F100GB41
4F100JK06
4F100JL11
4F100JN28C
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、密着性に優れた積層体と、この積層体を含むコート層含有積層体、光学物品、レンズ及び眼鏡とを提供することにある。
【解決手段】実施形態によると、積層体が提供される。積層体は、第1光学基材及び第2光学基材と、機能層と、第1接着層と、第2接着層とを備える。機能層は、第1光学基材及び第2光学基材の間に位置する。第1接着層は、第1光学基材及び機能層を接着させる。第2接着層は、第2光学基材及び機能層を接着させる。第1接着層及び第2接着層は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光学基材及び第2光学基材と、
前記第1光学基材及び前記第2光学基材の間に位置する機能層と
前記第1光学基材及び前記機能層を接着させる第1接着層と、
前記第2光学基材及び前記機能層を接着させる第2接着層と
を含み、
前記第1接着層及び第2接着層は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む積層体。
【請求項2】
前記第1接着層及び第2接着層の少なくとも一方は、エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第1光学基材及び第2光学基材は、セルロース樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びポリカーボネート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記機能層は、ウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、及びチオウレタンウレア樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記機能層は、機能性色素を含む請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記機能層は、フォトクロミック化合物を含む請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1に記載の積層体を含む光学物品。
【請求項8】
請求項1に記載の積層体と、
前記第1光学基材及び前記第2光学基材の少なくとも一部を被覆し、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、及びウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むコート層と
を含むコート層含有積層体。
【請求項9】
請求項8に記載のコート層含有積層体と、
前記コート層の少なくとも一部を被覆する光学素子基材と
を含む光学物品。
【請求項10】
請求項7に記載の光学物品を含むレンズ。
【請求項11】
請求項10に記載のレンズを含む眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、光学物品、コート層含有積層体、レンズ、及び眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック眼鏡は、レンズにプラスチック製のレンズを用いた眼鏡である。プラスチックレンズは、例えば、半完成品であるセミフィニッシュドレンズに様々な加工を施すことにより製造される。セミフィニッシュドレンズの凸面である表面には、ハードコート層や反射防止膜等の機能層が設けられる。また、セミフィニッシュドレンズの凹面である裏面には、切削及び研磨加工が施される。
【0003】
近年、紫外線の量により色調が変化するフォトクロミック性を有する調光レンズが注目を集めている。調光レンズは、フォトクロミック化合物をプラスチックレンズに付与することにより得られる。フォトクロミック化合物は、光の作用により、互いに異なる光吸収スペクトルを有する2以上の異性体を可逆的に生成可能な化合物である。
【0004】
フォトクロミックレンズの製造方法としては、従来、セミフィニッシュドレンズのマトリックスにフォトクロミック化合物を分散させる練り込み法、及び、セミフィニッシュドレンズの表面にフォトクロミック化合物を含む層を設ける積層法等が用いられてきた。
【0005】
バインダーシート法は、フォトクロミック化合物を含む樹脂層を2枚の光学シートで挟んだバインダーシートをレンズ基材と一体化させてセミフィニッシュドレンズを製造する方法である。この方法では、例えば、金型内にバインダーシートを装着し、これに向けて熱可塑性樹脂を射出成形することにより、セミフィニッシュドレンズが得られる。バインダーシート法によると、フォトクロミック化合物を含む自立した物品を用いてセミフィニッシュドレンズを製造できるため、練り込み法及び積層法と比較して、生産効率が高まり、大量生産が容易となる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-033131号公報
【特許文献2】国際公開第2019/163728号公報
【特許文献3】国際公開第2017/154901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、密着性に優れた積層体と、この積層体を含むコート層含有積層体、光学物品、レンズ及び眼鏡とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によると、積層体が提供される。積層体は、第1光学基材及び第2光学基材と、機能層と、第1接着層と、第2接着層とを備える。機能層は、第1光学基材及び第2光学基材の間に位置する。第1接着層は、第1光学基材及び機能層を接着させる。第2接着層は、第2光学基材及び機能層を接着させる。第1接着層及び第2接着層は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。
【0009】
実施形態によると、コート層含有積層体が提供される。コート層含有積層体は、実施形態に係る積層体と、コート層とを含む。コート層は、第1光学基材及び第2光学基材の少なくとも一部を被覆する。コート層は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、及びウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。
【0010】
実施形態によると、光学物品が提供される。光学物品は、実施形態に係る積層体若しくはコート層含有積層体を含む。
【0011】
実施形態によると、レンズが提供される。レンズは、実施形態に係る光学物品を含む。
【0012】
実施形態によると、眼鏡が提供される。眼鏡は、他の実施形態に係るレンズを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、光学素子基材との密着性、及び、形状安定性に優れた積層体と、この積層体を含む光学物品、レンズ及び眼鏡とが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る積層体の一例を概略的に示す断面図。
図2】実施形態に係るコート層含有積層体の一例を概略的に示す断面図。
図3】実施形態に係る光学物品の一例を概略的に示す断面図。
図4】実施形態に係る眼鏡の一例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態によると、積層体が提供される。積層体は、第1光学基材及び第2光学基材と、機能層と、第1接着層と、第2接着層とを備える。機能層は、第1光学基材及び第2光学基材の間に位置する。第1接着層は、第1光学基材及び機能層を接着させる。第2接着層は、第2光学基材及び機能層を接着させる。第1接着層及び第2接着層は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。
【0016】
実施形態に係る積層体は、例えば、上述したバインダーシートとして用いられる。このような積層体は、高い密着性を求められることがある。実施形態に係る積層体においては、機能性色素等を含み得る機能層が、第1及び第2接着層を介して、それぞれ、第1及び第2光学基材に接着されている。第1及び第2接着層の樹脂としては、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を用いる。このような構造を有することにより、機能層の性能を低下させることなく、第1及び第2光学基材を強固に接着させることができる。
【0017】
以下、実施形態に係る積層体について、詳述する。
【0018】
[積層体]
実施形態に係る積層体は、上述したとおり、バインダーシートとして用い得る。実施形態に係る積層体は、特に、接着層内にフォトクロミック化合物等の機能性色素が配合された機能性シートとして用い得る。
【0019】
実施形態に係る積層体の厚みは、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることが更に好ましい。積層体の厚みが厚いと、形状安定性が高まる傾向にある。積層体の厚みに上限は特にないが、一例によると、1000μm以下であり、他の例によると、500μm以下である。
【0020】
図1は、積層体の一例を概略的に示す断面図である。図1に示す積層体1は、第1光学基材2と、第2光学基材3と、これらの間に介在する機能層4と、機能層4と第1光学基材2との間に位置する第1接着層5と、機能層4と第2光学基材3との間に位置する第2接着層6とを備える。
【0021】
<第1及び第2光学基材>
第1及び第2光学基材は、可視光透過性を有する光学フィルム又はシートを用い得る。第1及び第2光学基材は、無色透明フィルム、半透明フィルム、又は有色透明フィルムであってもよい。
【0022】
第1及び第2光学基材は、無機材料を含むガラスであってもよく、樹脂を含んでいてもよい。樹脂としては、セルロース樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びポリカーボネート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を用い得る。第1及び第2光学基材は、加工性、耐熱性、耐溶媒性等の観点からは、セルロース樹脂及びポリビニルアルコール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましく、セルロース樹脂を含むことがより好ましい。
【0023】
第1光学基材の材質と第2光学基材の材質とは、互いに異なるものであってもよく、同一のものであってもよい。
【0024】
第1及び第2光学基材の厚みは、例えば、10μm以上100μm以下であり、好ましくは、20μm以上80μm以下である。第2光学基材の厚みは、第1光学基材の厚みと同一でもよく、異なっていてもよい。
【0025】
(セルロース樹脂)
セルロース樹脂としては、市販の樹脂を使用することができる。セルロース樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のアセチルセルロース、トリプロピルセルロース、ジプロピルセルロース等のプロピルセルロース等が好適に使用できる。
【0026】
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂としては、市販の樹脂を使用することができる。ポリアミド樹脂としては、例えばε-カプロラクタム、10-アミノデカン酸ラクタム、ω-ラウリンラクタムなどのω-アミノカルボン酸を重縮合反応して得られるポリアミド樹脂や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合反応で得られるポリアミド樹脂、更にはそれらの共重合体を使用できる。機械的強度、耐溶剤性、透明性の観点から、共縮重合反応で得られるポリアミド樹脂が好適に使用される。
【0027】
共縮重合反応で得られるポリアミドの中でも、脂環族ポリアミド樹脂または半芳香族ポリアミド樹脂が好ましい。脂環族ポリアミド樹脂は、脂環族ジアミン及び脂環族ジカルボン酸から選択された少なくとも一種を構成成分とするホモ又はコポリアミドである。また、芳香族ポリアミド樹脂などを含有するコポリアミドであってもよい。また、半芳香族ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸、ジアミンのうちの一方が芳香族化合物であり、他方が脂肪族化合物であるポリアミド樹脂である。
【0028】
好ましい脂環族ポリアミド樹脂としては、脂環族ジアミン[例えば、ビス(アミノシクロアルキル(炭素数5~10)アルカン(炭素数1~6)、好ましくはビスアミノシクロアルキル(炭素数6~8)アルカン(炭素数1~6)、さらに好ましくはビスアミノシクロヘキシルアルカン(炭素数1~3)]と、脂肪族ジカルボン酸(例えば、炭素数4~18のアルカンジカルボン酸、好ましくは炭素数6~16のアルカンジカルボン酸、さらに好ましくは炭素数8~14のアルカンジカルボン酸)とを構成成分とする樹脂(ホモ又はコポリアミド)などが挙げられる。
【0029】
脂環族ポリアミド樹脂の具体例には、ダイセル・エボニック社製「トロガミド(TROGAMID)」(登録商標)、EMS-GRIVORY社製「グリルアミド(Grilamid)」(登録商標)及び「グリルアミドTR(Grilamid TR)」(登録商標)などが挙げられる。また、脂環族ポリアミド樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0030】
脂環族ポリアミド樹脂の数平均分子量は、例えば、6,000~300,000、好ましくは10,000~200,000、さらに好ましくは15,000~100,000程度である。
【0031】
脂環族ポリアミド樹脂は、熱溶融温度又は融点を有していてもよい。熱溶融温度は、例えば、100~300℃、好ましくは110~280℃、さらに好ましくは130~260℃である。
【0032】
脂環族ポリアミド樹脂フィルムのビカット軟化点は、例えば、100~200℃、好ましくは110~170℃、さらに好ましくは130~150℃である。
【0033】
脂環族ポリアミド樹脂は、ガラス転移点が100~200℃、好ましくは110~170℃、さらに好ましくは125~150℃である。
【0034】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂としては、市販の樹脂を使用することができる。ポリエステル樹脂としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸と、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のジオールとの重縮合物を挙げることができる。その中でもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びそれらの共重合物等を好適に使用できる。
【0035】
((メタ)アクリル樹脂)
(メタ)アクリル樹脂としては、市販の樹脂を使用することができる。(メタ)アクリル樹脂としては、例えばメタクリル酸メチルなどの単重合体、もしくは複数の(メタ)アクリルモノマーの共重合体からなる樹脂を好適に使用できる。
【0036】
(ポリウレタン及びポリウレタンウレア樹脂)
ポリウレタン樹脂及びポリウレタンウレア樹脂としては、市販の樹脂を使用できる。ポリウレタン樹脂またはポリウレタンウレア樹脂は、分子内にウレタン結合または/及びウレア結合を有する樹脂である。具体的には、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール等のポリオール化合物とを反応させて得られる公知のものが使用される。更に、低分子量のジオール、トリオール、ジアミン、トリアミン等の鎖延長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂またはポリウレタンウレア樹脂を好適に使用することができる。
【0037】
(ポリイミド樹脂)
ポリイミド樹脂としては、市販の樹脂を使用できる。ポリイミド樹脂としては、芳香族テトラカルボン酸と芳香族ジアミンとの重合物を好適に使用できる。芳香族テトラカルボン酸としては、例えばピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、ピリジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸またはその酸無水物、もしくは酸二無水物、あるいはその酸のエステル化合物またはハロゲン化物から誘導される芳香族テトラカルボン酸類が挙げられる。芳香族ジアミンとしては、例えばパラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、パラキシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメトキシベンジジン、1,4-ビス(3-メチル-5-アミノフェニル)ベンゼン及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0038】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、市販の樹脂を使用できる。エポキシ樹脂からなる第一光学シート(Aa)及び第二光学シート(Ab)も市販のものを使用できる。
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールFなどとエピクロルヒドリンとの縮合反応した樹脂や、その他の他官能エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等を好適に使用することができる。
【0039】
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂としては、市販の樹脂を使用できる。ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体及びプロピレン-α-オレフィン共重合体等を好適に使用できる。
【0040】
(ポリビニルアルコール樹脂)
ポリビニルアルコール(PVA)樹脂としては、市販の樹脂を使用できる。基材は、PVA樹脂のみから構成されていてもよく、その他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0041】
PVA樹脂基材は、未延伸、1軸延伸、又は2軸延伸のいずれであってもよい。延伸方向は、未延伸フィルムの機械流れ方向(MD)、これに直交する方向(TD)、機械流れ方向に斜交する方向の何れでもよい。ここで、未延伸シートとは、延伸されていない状態のシートのことであり、1軸延伸シートとは、上記方向のうちいずれかの一方向に未延伸シートを延伸したものである。2軸延伸シートは、上述の延伸方向のうち2方向に延伸したものであり、同時に延伸する同時二軸延伸シートであっても、所定の方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次2軸延伸シートであってもよい。2軸延伸シートの場合、通常、MD、TDに延伸したものが好ましい。延伸倍率は、1.5~8倍であることが好ましい。
【0042】
PVA樹脂の平均重合度は、例えば、100以上10000以下であり、好ましくは、1500以上8000以下であり、より好ましくは、2000以上5000以下である。PVA樹脂の平均重合度は、日本工業規格(JIS)K6726;1994に準拠した方法で求められる
PVA樹脂は、ホウ酸を含んでいてもよい。ホウ酸は、PVA同士を架橋させる架橋剤として用いられる。PVA樹脂のホウ酸含有量は、例えば、1質量%以上20質量%以下であり、好ましくは、3質量%以上18質量%以下であり、より好ましくは、5質量%以上15質量%以下である。このホウ酸含有量は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;IPC)発光分析により算出できる。具体的には、先ず、基材を硝酸水溶液に溶解させて溶液を得る。この溶液を用いてIPC分析を行い、ホウ素含有量を算出する。このホウ素含有量からホウ酸含有量に換算する。
【0043】
PVA樹脂基材は、偏光性を有する偏光フィルムであってもよい。バインダーシートとして用いる場合、第1及び第2光学基材の少なくとも一方が、偏光フィルムであってもよい。偏光性を有する基材は、視感透過率が10%以上80%以下であり、偏光度が30%以上99.9%以下であることが好ましい。
【0044】
偏光性を有する基材は、2色性物質を含む。2色性物質は、ヨウ素及び2色性染料を含む。2色性染料は、アゾ系であってもよく、アントラキノン系であってもよい。2色性染料に具体例は、クロランチンファストレッド(C.I.28160)、コンゴーレッド(C.I.22120)、ブリリアントブルーB(C.I.24410)、ベンゾパープリン(C.I.23500)、クロラゾールブラックBH(C.I.22590)、ダイレクトブルー2B(C.I.22610)、ジアミングリーン(C.I.30295)、クリソフェニン(C.I.24895)、シリウスイエロー(C.I.29000)、ダイレクトファーストレッド(C.I.23630)、アシドブラック(C.I.20470)、ダイレクトスカイブルー(C.I.24400)、ソロフェニルブルー4GL(C.I.34200)、ダイレクトコッパーブルー2B(C.I.24185)、及び、ニッポンブリリアントヴァイオレットBKconc(C.I.27885)を含む。
【0045】
<機能層>
機能層は、フォトクロミック性、偏光性、紫外線吸収性、青色光吸収性、赤外線吸収性、エレクトロミック性、防眩性、コントラスト向上性、サーモクロミック性等の機能を1種又は2種以上備える。
【0046】
機能層は、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリチオウレタン樹脂、及びポリチオウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み得る。機能層は、フォトクロミック化合物等の機能性色素を含んでいてもよい。機能層は、後述する接着性組成物の硬化体を含んでいてもよい。
【0047】
機能層の厚みは、例えば、0.1μm以上100μm以下である。機能層の厚みは、第1及び第2基材の厚みよりも薄くてもよく、より厚くてもよい。
【0048】
(接着性組成物)
接着性組成物は、機能性色素と重合成分とを含み得る。重合成分は、接着層のマトリックスとなる。重合成分は、第2プレポリマー、又は第1ポリマー及び第2プレポリマー若しくは第3プレポリマーを含む。言い換えると、接着性組成物は、第2プレポリマーのみを含む重合成分と機能性色素との第1の組み合わせ、第1ポリマー及び第2プレポリマーを含む重合成分と機能性色素との第2の組み合わせ、第1ポリマー及び第3プレポリマーを含む重合成分と機能性色素との第3の組み合わせ、第1ポリマー、第2プレポリマー、及び第3プレポリマーを含む重合成分と機能性色素との第4の組み合わせ、並びに、第1ポリマーのみを含む重合成分と機能性色素との第5の組み合わせを含み得る。
【0049】
(機能性色素)
機能性色素は、例えば、フォトクロミック化合物、紫外線吸収剤、青色光吸収剤、赤外線吸収剤、染料、及びエレクトロミック化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0050】
フォトクロミック化合物としては、例えば、クロメン化合物、フルギド化合物、及びスピロオキサジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。フォトクロミック化合物としては、クロメン化合物を用いることが好ましい。クロメン化合物は、1-ベンゾピラン骨格を有する化合物、スピロピラン骨格を含むスピロピラン化合物、及び、ナフトピラン骨格を有するナフトピラン化合物を含む。ナフトピラン化合物には、インデノナフトピラン骨格を有するインデノナフトピラン化合物が含まれる。クロメン化合物は、インデノ〔2,1-f〕ナフト〔1,2-b〕ピラン骨格を有するインデノナフトピラン化合物を含むことが好ましい。インデノ〔2,1-f〕ナフト〔1,2-b〕ピラン骨格を有するクロメン化合物を含む硬化体は、耐久性に優れる傾向にある。
【0051】
インデノナフトピラン化合物は、下記式(IIIa)に示す化合物を含むことが好ましい。
【0052】
【化1】
【0053】
式(IIIa)において、Z環は、13位の炭素原子をスピロ原子とする置換若しくは非置換のスピロ環である。Z環は、13位の炭素原子と共に、脂肪族環を形成していてもよく、縮合多環を形成していてもよく、複素環を形成していてもよく、複素環式芳香族環を形成していてもよい。Z環は、環員炭素数が5~16の脂肪族環であることが好ましい。脂肪族環は、置換基として、炭素数1~3のアルキル基を有することが更に好ましい。
【0054】
式(IIIa)において、R11、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、置換基を有してもよい複素環基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアラルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、チオール基、アルコキシアルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、置換基を有してもよいシクロアルキルチオ基、又は、オリゴマー基である。
【0055】
アルキル基の炭素数は1~10であることが好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が挙げられる。
【0056】
ハロアルキル基の炭素数は1~10であることが好ましい。ハロアルキル基としては、フッ素原子、塩素原子もしくは臭素原子で置換されたアルキル基が好ましい。好適なハロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基、クロロメチル基、2-クロロエチル基、及びブロモメチル基が挙げられる。
【0057】
シクロアルキル基の環員炭素数は、3~8であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基は、置換基を有してもよいが、炭素数の数(炭素数3~8)には、置換基の炭素数は含まれないものとする。
【0058】
アルコキシ基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。好適なアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。
【0059】
アミノ基は、1級アミノ基(-NH)である。置換アミノ基は、1つまたは2つの水素原子が置換された2級または3級アミノ基である。置換アミノ基が有する置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基等が挙げられる。好適なアミノ基の例としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることできる。
【0060】
複素環基の原子数は3~10であることが好ましい。複素環基は、脂肪族複素環基であってもよく、芳香族複素環基であってもよい。脂肪族複素環基の具体例には、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N-メチルピペラジノ基が挙げられる。芳香族複素環基の具体例にはインドリニル基が挙げられる。複素環基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。置換基を有する好適な複素環基としては、例えば2,6-ジメチルモルホリノ基、2,6-ジメチルピペリジノ基および2,2,6,6-テトラメチルピペリジノ基等が挙げられる。
【0061】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0062】
アルキルチオ基の炭素数は1~10であることが好ましい。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、及びt-ブチルチオ基が挙げられる。
【0063】
アリールチオ基の炭素数は6~10であることが好ましい。アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、及び2-ナフチルチオ基が挙げられる。
【0064】
アルキルカルボニル基の炭素数は2~10であることが好ましい。アルキルカルボニル基の例としては、アセチル基及びエチルカルボニル基が挙げられる。
【0065】
アルコキシカルボニル基の炭素数は2~10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられる。
【0066】
アラルキル基の炭素数は7~11であることが好ましい。アラルキル基の例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、及びナフチルメチル基が挙げられる。
【0067】
アラルコキシ基の炭素数は7~11であることが好ましい。アラルコキシ基の例としては、ベンジロキシ基及びナフチルメトキシ基が挙げられる。
【0068】
アリール基の炭素数は6~12であることが好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、1-ナフチル基、及び2-ナフチル基が挙げられる。
【0069】
アリールオキシ基の炭素数は6~12であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基及びナフチルオキシ基が挙げられる。
【0070】
ヘテロアリール基の炭素数は3~12であることが好ましい。ヘテロアリール基の例には、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、及びベンゾピロリニル基が挙げられる。
【0071】
アルコキシアルキルチオ基の炭素数は2~10であることが好ましい。アルコキシアルキルチオ基の例としては、メトキシメチルチオ基、メトキシエチルチオ基、メトキシn-プロピルチオ基、メトキシn-ブチルチオ基、エトキシエチルチオ基、及びn-プロポキシプロピルチオ基等が挙げられる。
【0072】
ハロアルキルチオ基の炭素数は1~10であることが好ましい。ハロアルキルチオ基の例としては、トリフルオロメチルチオ基、テトラフルオロエチルチオ基、クロロメチルチオ基、2-クロロエチルチオ基、及びブロモメチルチオ基が挙げられる。
【0073】
シクロアルキルチオ基の炭素数は3~8であることが好ましい。シクロアルキルチオ基の例としては、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、及びシクロヘキシルチオ基が挙げられる。なお、シクロアルキルチオ基は、置換基を有してもよいが、炭素数の数(炭素数3~8)には、置換基の炭素数は含まれないものとする。
【0074】
オリゴマー基は、オリゴマー鎖と、連結基と、末端基とを含む。
オリゴマー鎖は、ポリアルキレンオキシド鎖、ポリシロキサン鎖、及び、ポリエステル鎖からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み得る。オリゴマー鎖は、2価の基である。
【0075】
ポリアルキレンオキシド鎖は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分岐状のポリアルキレンオキシドを繰り返し単位とする。繰り返し単位の繰り返し数は、例えば、3以上1000以下である。繰り返し単位は、例えば、-CHO-、-CHCHO-、-CH(CH)CHO-、-CHCH(CH)O-、-CHCHCHO-、又は、-CHCHC(CH)O-である。
【0076】
ポリシロキサン鎖は、例えば、ジメチルシリレンオキシ(-Si(CHO-)を繰り返し単位とする。繰り返し単位の繰り返し数は、例えば、3以上1000以下である。
【0077】
ポリエステル鎖は、例えば、-OC(=O)CH-、-OC(=O)CHCHCHCHC(=O)O-、又は、-OC(=O)CHCHCHCHC(=O)OCHCH-)を繰り返し単位とする。繰り返し単位の繰り返し数は、例えば、3以上1000以下である。
【0078】
連結基は、フォトクロミック化合物とオリゴマー鎖の一方の端部とを結合する。連結基は、例えば、-O-、-O-CHCH-O-、-O-CHCH-OC(=O)CHCHC(=O)-O-、又は、-O-CHCH-OC(=O)CHCHC(=O)-O-CH-である。連結基は、2価の基であってもよく、2価以上の基であってもよい。
【0079】
末端基は、オリゴマー鎖の他端と結合する。末端基は、例えば、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、炭素数2以上30以下の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、又は、炭素数1以上10以下、酸素数1以上3以下の有機残基である。末端基は、メチル基であることが好ましい。
【0080】
オリゴマー基は、第1の連結基と、オリゴマー鎖と、第2の連結基とを含んでいてもよい。第1の連結基と第2の連結基とは、互いに同一構造を有していてもよく、互いに異なる構造を有していてもよい。第1の連結基は第1のフォトクロミック化合物と連結する。第2の連結基は、第2のフォトクロミック化合物と連結する。第1のフォトクロミック化合物と第2のフォトクロミック化合物とは、互いに同一構造を有していてもよく、互いに異なる構造を有していてもよい。
【0081】
上述したシクロアルキル基、アリールチオ基、アラルキル基、アラルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、およびシクロアルキルチオ基は、非置換であってもよく、置換基を有していてもよい。
【0082】
シクロアルキル基、アリールチオ基、アラルキル基、アラルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、およびシクロアルキルチオ基が有し得る置換基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のハロアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、炭素数1以上20以下のアルキルアリール基、1以上5以下のヘテロ原子を含む炭素数1以上8以下のヘテロシクロアルキル基、1以上5以下のヘテロ原子を含む、炭素数1以上8以下のヘテロアリール基、炭素数6以上12以下のアリールオキシ基、炭素数6以上12以下のアリールチオ基、シアノ基、ニトロ基、及び、ハロゲン原子からなる置換基群から選択され得る。置換基の数は、1つであってもよく、2以上であってもよい。
【0083】
13及びR14、R14及びR15、並びにR15及びR16は、互いに結合して、炭素数2以上5以下の脂肪族環、1以上3以下のヘテロ原子を含む炭素数1以上4以下の脂肪族複素環、炭素数4以上12以下の芳香族環、又は、1以上6以下のヘテロ原子を含む炭素数3以上11以下の芳香族複素環を形成していてもよい。脂肪族環、脂肪族複素環、芳香族環、及び、芳香族複素環は、非置換でもよく、上記の置換基群から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい。
【0084】
式(IIIa)において、mは、0以上4以下の整数である。mは、1以上であってもよく、2以上であってもよい。
【0085】
紫外線吸収剤は、400nm以下の紫外線(UV)領域において吸収波長を有する。紫外線吸収剤は、330nm以上380nm以下の領域に最大吸収波長を有してもよく、250nm以上330nm未満の領域に最大吸収波長を有してもよい。紫外線吸収剤としては、有機化合物を用い得る。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ベンゾトリアゾール誘導体、及びトリアジン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン誘導体、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、及び、ベンゾトリアゾール誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0086】
青色光吸収剤としては、吸収スペクトルにおいて、400nmより高く450nm以下の波長領域に吸収ピークを有する化合物を用い得る。このような化合物としては、例えば、ペリレン系化合物、ポルフィリン系化合物、カロテノイド系化合物、及び、シアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。青色光吸収剤としては、ポルフィリン系化合物を用いることが好ましく、テトラアザポルフィリン化合物を用いることがより好ましい。
【0087】
高エネルギー可視光線吸収剤は、400nm以上420nm以下の波長領域に吸収ピークを有する青色光吸収剤である。高エネルギー可視光線吸収剤としては、青色光吸収剤と同様のものを用い得る。
【0088】
染料は、吸収スペクトルにおいて、540nm以上650nm以下の波長領域に吸収ピークを有する化合物を含むことが好ましく、550nm以上600nm以下の波長領域に吸収ピークを有する化合物を含むことがより好ましい。このような化合物を含むと、光学物品の防眩性を高められる。このような化合物としては、ニトロ系化合物、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、スレン系化合物、ポルフィリン系化合物、希土類金属化合物等が挙げられる。このような化合物としては、テトラアザポルフィリン化合物及びネオジム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0089】
エレクトロミック化合物としては、ビオロゲン等の有機物、エレクトロミック性を有するポリマー、d原子を有する金属塩錯体等が挙げられる。
【0090】
接着性組成物の固形分において、機能性色素が占める割合は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは、1質量%以上5質量%以下である。
【0091】
(第2プレポリマー)
第2プレポリマーは、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる第1プレポリマーと、鎖延長剤である第2多官能活性水素化合物とを反応させて得られる。第2プレポリマーは、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する。第2プレポリマーは、主鎖の両末端にイソ(チオ)シアネート基を有することが好ましい。第2プレポリマーは、ウレタンプレポリマー、ウレアプレポリマー、ウレタンウレアプレポリマー、チオウレタンプレポリマー、チオウレアプレポリマー、及びチオウレタンウレアプレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第2プレポリマーは、重合により、(チオ)ウレタン樹脂、(チオ)ウレア樹脂、及び(チオ)ウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を形成する。
【0092】
第2プレポリマーの数平均分子量は、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、13000以上であることが更に好ましい。数平均分子量が大きい第2プレポリマーを用いると、積層体の剥離強度が高まる傾向にある。すなわち、数平均分子量が大きい第2プレポリマーは、互いに絡み合い易いため、凝集力が高まり、それゆえ、接着力が高まると考えられる。
【0093】
第2プレポリマーの数平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。第2プレポリマーの数平均分子量が過剰に大きいと、積層体の剥離強度が低まる傾向にある。すなわち、数平均分子量が大きい第2プレポリマーは、単位質量当たりに含まれるイソ(チオ)シアネート基の量が少なく、それゆえ、接着力が弱まる傾向にある。
【0094】
第2プレポリマーの数平均分子量は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)により測定できる。測定に際しては、カラム:Shodex KD-806M(昭和電工株式会社製)を2本直列接続、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、第2プレポリマー試料溶液:1.0%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件にて測定する。解析ソフトとしては、日本ウォーターズ株式会社製GPC解析ソフト『Empower Personal GPC Option』を用いる。
【0095】
第2プレポリマーの軟化点は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが更に好ましい。第2プレポリマーの軟化点が高いと、積層体の耐熱性が向上し、密着性がより高まる傾向にある。第2プレポリマーの軟化点に上限は特にないが、一例によると、200℃以下であり、他の例によると、160℃以下である。
【0096】
第2プレポリマーの軟化点は、例えば、以下の方法で測定する。先ず、第2プレポリマーを有機溶剤に溶解させて溶液を得る。溶液中の第2プレポリマーの濃度は、例えば、34質量%とする。この溶液をステンレスの容器に流し込み、40℃で10時間、60℃で10時間、さらに真空乾燥機にて60℃で12時間にわたって乾燥させて、厚み1mmの試験片を作製する。得られた試験片について、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用いて分析を行い、軟化点を得る。測定条件は、昇温速度を10℃/分とし、測定温度範囲を30~200℃とし、先端径0.5mmの針入プローブを用いる。
【0097】
接着性組成物の固形分において、第2プレポリマーは主成分を占め得る。接着性組成物の固形分において第2プレポリマーが占める割合は、例えば、90質量%以上99質量%以下である。なお、接着性組成物が、第1ポリマー及び第2プレポリマーを含む重合成分とフォトクロミック化合物との第2若しくは第4の組み合わせの場合、接着性組成物の固形分において第2プレポリマーが占める割合は、例えば、5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは、10質量%以上40質量%以下である。
【0098】
(第1プレポリマー)
第1プレポリマーは、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる。第1プレポリマーは、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する。第1プレポリマーは、主鎖の両末端にイソ(チオ)シアネート基を有することが好ましい。第1プレポリマーは、ウレタンプレポリマー、ウレアプレポリマー、チオウレタンプレポリマー、及びチオウレアプレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第1プレポリマーは、第2プレポリマーの原料となる。
【0099】
第1プレポリマーの数平均分子量は、500以上10000以下であることが好ましく、1000以上5000以下であることがより好ましい。第1プレポリマーの数平均分子量は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0100】
(第1イソ(チオ)シアネート化合物)
第1イソ(チオ)シアネート化合物は、2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する。第1イソ(チオ)シアネート化合物は、2つのイソ(チオ)シアネート基を有することが好ましい。第1イソ(チオ)シアネート化合物は、2つのイソシアネート基を含むジイソシアネート化合物であることがより好ましい。
【0101】
第1イソ(チオ)シアネート化合物のモル質量は、好ましくは、100以上500以下である。この範囲内の第1イソ(チオ)シアネート化合物を用いると、所望の数平均分子量の第2プレポリマー及び第1ポリマーを得られる傾向にある。第1イソ(チオ)シアネート化合物のモル質量は、より好ましくは、150以上300以下である。
【0102】
第1イソ(チオ)シアネート化合物は、脂肪族イソ(チオ)シアネート化合物、脂環族イソ(チオ)シアネート化合物、及び芳香族イソ(チオ)シアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第1イソ(チオ)シアネート化合物は、脂環族イソ(チオ)シアネート化合物であることが好ましい。第1イソ(チオ)シアネート化合物としては、単一種類を用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0103】
脂肪族イソシアネート化合物の例には、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,4,4,-トリメチルヘキサンメチレンジイソシアネート、1,2-ビス(2-イソシアナトエチルチオ)エタン等が挙げられる。
【0104】
脂環族イソシアネート化合物の例には、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン等が挙げられる。
【0105】
芳香族イソシアネート化合物の例には、キシレンジイソシアネート(o-,m-,p-)、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0106】
脂肪族イソチオシアネート化合物の例としては、ヘキサメチレンジイソチアシネート、1,2-ジイソチオシアネートエタン、1,3-ジイソチオシアネートプロパン、1,4-ジイソチオシアネートブタン、1,6-ジイソチオシアネートヘキサン、2,4,4,-トリメチルヘキサンメチレンジイソチアシネート、チオビス(3-イソチオシアネートプロパン)、チオビス(2-イソチオシアネートエタン)、ジチオビス(2-イソチオシアネートエタン)等が挙げられる。
【0107】
脂環族イソチオシアネート化合物の例には、イソホロンジイソチオシアネート、シクロヘキサンジイソチオシアネート、2,4-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、2,5-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、2,6-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、3,5-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、ノルボルナンジイソチアネート等が挙げられる。
【0108】
芳香族イソチオシアネート化合物の例には、p-フェニレンジイソプロピリデンジイソチオシアネート、1,2-ジイソチオシアネートベンゼン、1,3-ジイソチオシアネートベンゼン、1,4-ジイソチオシアネートベンゼン、2,4-ジイソチオシアネートトルエン、キシレンジイソチオシアネート(o-,m-,p-)、2,4-トリレンジイソチオシアネート、2,6-トリレンジイソチオシアネート、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネート2-メチルベンゼン)、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネート3-メチルベンゼン)等が挙げられる。
【0109】
(第1多官能活性水素化合物)
第1多官能活性水素化合物は、2以上の活性水素基を有する。第1多官能活性水素化合物は、2つの活性水素基を有することが好ましい。活性水素基は、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第1多官能活性水素化合物は、例えば、2以上の水酸基を含むポリオール化合物、2以上のアミノ基を含むポリアミン化合物、2つのカルボキシ基を含むジカルボン酸、及び2以上のチオール基を含むポリチオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。第1多官能活性水素化合物としては、単一種類を用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0110】
第1多官能活性水素化合物は、ポリオール化合物を含むことが好ましい。ポリオール化合物を用いると、(チオ)ウレタン結合を有する第1プレポリマーが得られる。ポリオール化合物の繰り返し構造部分は、接着層において、フォトクロミック化合物の構造変化を妨げにくいマトリックスを提供することに寄与し得る。ポリオール化合物を用いると、積層体のフォトクロミック性が高まる傾向にある。
【0111】
ポリオール化合物の数平均分子量は、500以上3000以下であることが好ましい。この範囲内の数平均分子量を含むポリオール化合物を用いると、所望の数平均分子量の第2プレポリマー及び第1ポリマーを得られる傾向にある。ポリオール化合物の数平均分子量は、800以上2000以下であることがより好ましい。
【0112】
ポリオール化合物は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み得る。ポリオール化合物は、ポリカーボネートポリオールを含むことが好ましい。ポリカーボネートポリオールを用いると、積層体の密着性が高まる傾向にある。
【0113】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、低分子ポリオール類の1ホスゲン化、あるいは、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネート等のエステル交換法により得られる。低分子ポリオールの例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-4-ブチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0114】
ポリカーボネートポリオールとしては、旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノール(登録商標)」シリーズ、株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標)」シリーズ、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社製「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどを用い得る。
【0115】
ポリカプロラクトンポリオールは、例えば、ε-カプロラクトンの開環重合により得られる。ポリカプロラクトンポリオールとしては、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズなどを用い得る。
【0116】
ポリエーテルポリオールは、例えば、分子中に活性水素基を2個以上有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られる。活性水素含有基を2個以上有する化合物としては、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物が挙げられる。
【0117】
ポリエーテルポリオールとしては、旭硝子株式会社製「エクセノール(登録商標)」シリーズ及び「エマルスター(登録商標)」シリーズ、株式会社ADEKA製「アデカポリエーテル」シリーズなどが挙げられる。
【0118】
ポリエステルポリオールは、例えば、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応により得られる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3-ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。多塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0119】
ポリエステルポリオールとしては、DIC株式会社製「ポリライト(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、川崎化成工業株式会社製「マキシモール(登録商標)」シリーズなどを用い得る。
【0120】
ポリチオール化合物は、脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオール、及びメルカプト基以外に硫黄原子を含有するポリチオールからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0121】
脂肪族ポリチオールの例には、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2-メチルシクロヘキサン-2,3-ジチオール、1,1-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、2,3-ジメルカプトコハク酸(2-メルカプトエチルエステル)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(2-メルカプトアセテート)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(3-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール等が含まれる。
【0122】
芳香族ポリチオールの例には、1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3-トリメルカプトベンゼン、1,2,4-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,4-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン等が含まれる。
【0123】
メルカプト基以外に硫黄原子を含有するポリチオールの例には、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、2-メルカプトエチルチオ-1,3-プロパンジチオール、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン等が含まれる。
【0124】
第1多官能活性水素化合物の量は、第1多官能活性水素化合物に含まれる活性水素基のモル量M11と、第1イソ(チオ)シアネート化合物に含まれるイソ(チオ)シアネート基のモル量M12との比M11/M12が、0.30以上0.90以下となるように調整されることが好ましい。比M11/M12が上記の範囲内にあると、第1プレポリマーに十分な量のウレタン結合及びウレア結合の少なくとも一方が形成され、かつ、フォトクロミック化合物の構造変化を阻害しにくい柔軟な接着層を形成できる。比M11/M12は、0.40以上0.850以下であることが好ましく、0.50以上0.80以下であることがより好ましい。
【0125】
第1多官能活性水素化合物の質量S1と、第1イソ(チオ)シアネート化合物の質量S2との比S1/S2は、0.1以上10以下であることが好ましい。比S1/S2が上記の範囲内にあると、単位質量当たりに十分な量のイソシアネート基を有する第2プレポリマーが得られる。比S1/S2は、0.8以上5以下であることが好ましく、1以上4以下であることがより好ましい。
【0126】
(第2多官能活性水素化合物)
第2多官能活性水素化合物は、2以上の活性水素基を有する。第2多官能活性水素化合物は、第1プレポリマーと反応し、第2プレポリマーを生成する。第2多官能活性水素化合物は、第1プレポリマー同士を連結する鎖延長剤として機能する。第2多官能活性水素化合物は、2つの活性水素基を有することが好ましい。第2多官能活性水素化合物としては、第1多官能活性水素化合物で挙げた化合物を用い得る。
【0127】
第2多官能活性水素化合物は、ポリアミンを含むことが好ましい。ポリアミンを用いると、(チオ)ウレタンウレア結合を有する第2プレポリマーが得られる。このような第2プレポリマーを用いると、積層体の密着性が高まる傾向にある。ポリアミンのモル質量は、50以上500以下であることが好ましい。モル質量がこの範囲内にあるポリアミンを用いると、所望の数平均分子量の第2プレポリマーを得られる傾向にある。ポリアミンのモル質量は、50以上300以下であることがより好ましい。ポリアミンは、ジアミン及びトリアミンを含み、ジアミンを含むことが好ましい。
【0128】
ポリアミンとしては、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N-ビス-(2-アミノエチル)ピペラジン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス-(4-アミノ-3-ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2-、1,3-及び1,4-ジアミノシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン、フェニレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジブチルエチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,2,5-ペンタントリアミン等が挙げられる。
【0129】
ポリアミンは、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、及び1,6-ジアミノヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0130】
第2多官能活性水素化合物の量は、第2多官能活性水素化合物に含まれる活性水素基のモル量M13と、第1プレポリマーに含まれるイソ(チオ)シアネート基のモル量M14との比M13/M14が、0.21以上0.9以下となるように調整されることが好ましい。比M13/M14が上記の範囲内にあると、十分な量の第2プレポリマーが生成される。
【0131】
第2多官能活性水素化合物の質量S3と、第1プレポリマーの質量S4との比S3/S4は、0.01以上0.5以下であることが好ましい。比S3/S4が上記の範囲内にあると、単位質量当たりに十分な量のイソシアネート基を有する第2プレポリマーが得られる。比S3/S4は、0.05以上0.3以下であることがより好ましい。
【0132】
(第1ポリマー)
第1ポリマーは、第2プレポリマーと1つの活性水素基を有する単官能活性水素化合物とを反応させて得られる。第1ポリマーは、典型的には、イソ(チオ)シアネート基を有さない。第1ポリマーの末端は、非反応性の官能基で修飾されている。第1ポリマーは、ウレタンポリマー、ウレアポリマー、ウレタンウレアポリマー、チオウレタンポリマー、チオウレアポリマー、及びチオウレタンウレアポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0133】
第1ポリマーは、高温下で、第2プレポリマー若しくは第3プレポリマー及び第1及び第2基材の表面上の水酸基と化学結合して、(チオ)ウレタン樹脂、(チオ)ウレア樹脂、及び(チオ)ウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を生成する。
【0134】
第1ポリマーの数平均分子量は、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、13000以上であることが更に好ましい。数平均分子量が大きい第1ポリマーを用いると、積層体の剥離強度が高まる傾向にある。第1ポリマーの数平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。第1ポリマーの数平均分子量が過剰に大きいと、積層体の剥離強度が低まる傾向にある。この数平均分子量は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0135】
第1ポリマーの軟化点は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが更に好ましい。第1ポリマーの軟化点が高いと、積層体の耐熱性が向上し、密着性がより高まる傾向にある。第1ポリマーの軟化点に上限は特にないが、一例によると、200℃以下であり、他の例によると、160℃以下である。混合物の軟化点は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0136】
第1ポリマーは、第2プレポリマーとの混合物として存在し得る。第1ポリマーと第2プレポリマーとの混合物は、単官能活性水素化合物の量を調整することにより得られる。すなわち、第2プレポリマーに含まれるイソ(チオ)シアネート基のモル量M6と、単官能活性水素化合物に含まれる活性水素基のモル量M5との比M5/M6が、1を下回るように調整されることにより、第2プレポリマーと、第2プレポリマーのイソ(チオ)シアネート基が単官能活性水素化合物で保護された第1ポリマーとの混合物が生成される。比M5/M6は、0.75以上0.95以下であることが好ましい。
【0137】
この混合物の数平均分子量は、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、13000以上であることが更に好ましい。数平均分子量が大きい混合物を用いると、積層体の剥離強度が高まる傾向にある。混合物の数平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。混合物の数平均分子量が過剰に大きいと、積層体の剥離強度が低まる傾向にある。この数平均分子量は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0138】
この混合物の軟化点は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが更に好ましい。混合物の軟化点が高いと、積層体の耐熱性が向上し、密着性がより高まる傾向にある。混合物の軟化点に上限は特にないが、一例によると、200℃以下であり、他の例によると、160℃以下である。混合物の軟化点は、第2プレポリマーと同様の方法で測定できる。
【0139】
接着性組成物の固形分において、第1ポリマーが占める割合は、例えば、75質量%以上95質量%以下である。
【0140】
第1ポリマーと第2プレポリマーとの混合物は、第4プレポリマーを含み得る。第4プレポリマーは、第2プレポリマーのイソ(チオ)シアネート基の一部が単官能活性水素化合物で保護され、残部が保護されていない化合物である。第4プレポリマーは、1つのイソ(チオ)シアネート基と、1つの単官能活性水素化合物保護基とを含み得る。第4プレポリマーは、イソ(チオ)シアネート基を有しているため、第2プレポリマーと同様に積層体の密着性を高め得る。
【0141】
第1ポリマー、第2プレポリマー、及び第4プレポリマーの混合物において、第1ポリマーが占める割合は、一例によると、1質量%以上40質量%以下であり、他の例によると、10質量%以上30質量%以下である。上記混合物において、第2プレポリマーが占める割合は、一例によると、1質量%以上40質量%以下であり、他の例によると、10質量%以上30質量%以下である。上記混合物において、第4プレポリマーが占める割合は、一例によると、1質量%以上80質量%以下であり、他の例によると、40質量%以上80質量%以下である。
【0142】
接着層は、第1ポリマー、第2プレポリマー、及び第4プレポリマーを含む接着性組成物の硬化体であってもよく、第1ポリマー、及び第4プレポリマーを含む接着性組成物の硬化体であってもよい。
【0143】
(単官能活性水素化合物)
単官能活性水素化合物は、1つの活性水素基を有する。単官能活性水素化合物は、第2プレポリマーのイソ(チオ)シアネート基と反応し、第1ポリマーを生成して、更なる反応を停止させる。活性水素基は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、及びチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0144】
単官能活性水素化合物は、例えば、1つの水酸基を含むモノオール化合物、1つのアミノ基を含むモノアミン化合物、1つのカルボキシル基を含むカルボン酸、及び1つのチオール基を含むモノチオール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。単官能活性水素化合物としては、単一種類を用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0145】
単官能活性水素化合物は、モノアミン化合物であることが好ましい。モノアミン化合物を用いると、(チオ)ウレア結合を有する第1ポリマーが得られる。
【0146】
単官能活性水素化合物は、下記式(3)に表されるように、2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル部位を有するアミンを含むことが好ましい。2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル部位を有するアミンは、ヒンダードアミンとして機能し得るため、積層体の光安定性を高められる。
【0147】
【化2】
【0148】
式(3)において、R21は、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。R22は、炭素数1以上3以下のアルキレン基である。aは、0又は1である。
【0149】
単官能活性水素化合物は、R21がメチル基であり、aが0である1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-アミノピペリジンであることが好ましい。
【0150】
単官能活性水素化合物の質量S5と、第2プレポリマーの質量S6との比S5/S6は、0.001以上0.100以下であることが好ましい。比S5/S6が上記の範囲内にあると、単位質量当たりに十分な量のイソシアネート基を有する第1プレポリマーが得られる。比S5/S6は、0.010以上0.030以下であることがより好ましい。
【0151】
(第3プレポリマー)
第3プレポリマーは、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて得られる2以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物である。すなわち、第3プレポリマーは、第1プレポリマーと同様の化合物である。第3プレポリマーは、高温下で、第1プレポリマー及び第1及び第2基材の表面上の水酸基と化学結合して、(チオ)ウレタン樹脂、(チオ)ウレア樹脂、及び(チオ)ウレタンウレア樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を生成する。
【0152】
接着性組成物が、第1ポリマー及び第3プレポリマーを含む重合成分とフォトクロミック化合物との第3若しくは第4の組み合わせの場合、接着性組成物の固形分において第3プレポリマーが占める割合は、例えば、5質量%以上20質量%以下である。
【0153】
(添加剤)
接着性組成物は、例えば、重合触媒、重合開始剤、帯電防止剤、内部離型剤、酸化防止剤、光安定剤、着色防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、溶剤、レベリング剤、及び樹脂改質剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含んでいてもよい。接着性組成物は、酸化防止剤及びレベリング剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0154】
酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル-フェノール、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トルイル]プロピオネート]、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チバ・スペチャルティ・ケミカルズ製IRGANOX1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のIRGANOX1035、1075、104、3790、5057、565等を用い得る。
【0155】
レベリング剤としては、シリコーン界面活性剤、フッ素含有界面活性剤等を用い得る。具体的には、東レ・ダウコーニング株式会社製L-7001、L-7002、L-7604、FZ-2123、大日本インキ化学工業株式会社製メガファックF-470、メガファックF-1405、メガファックF-479、住友スリーエム社製フローラッドFC-430等を用い得る。
【0156】
光安定剤としては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル骨格を有するヒンダートアミン系の化合物を使用することが好ましく、市販のものを使用できる。例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-4-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート、2-[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-2-ブチルプロパン二酸[1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル]、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート等が挙げられる。商品名としては、株式会社ADEKA社製アデカスタブ(登録商標)LAシリーズ(LA-52,LA-57,LA-63P,LA-68,LA-72,LA-77Y,LA-81,LA-82など)、BASFジャパン株式会社製のTINUVIN(登録商標)シリーズ(TINUVIN123,TINUVIN171,TINUVIN249,TINUVIN292,TINUVIN765,TINUVIN622SFなど)、Chimassorb(登録商標)シリーズ(Chimassorb2020FDL,Chimassorb944FDL)等が挙げられる。
【0157】
接着性組成物の固形分において、添加剤が占める割合は、例えば、0.1質量%以上1質量%以下である。
【0158】
(有機溶媒)
接着性組成物は、その粘度を調整するために、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルケトン、t-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、及びシクロヘキサノンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み得る。
【0159】
接着性組成物において、有機溶媒が占める割合は、例えば、30質量%以上80質量%以下である。
【0160】
(接着性組成物の製造方法)
接着性組成物は、例えば、下記第1乃至第5の製造方法により得られる。
【0161】
接着性組成物の第1の製造方法は、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと機能性色素と任意の添加剤とを混合することとを含む。
【0162】
接着性組成物の第2の製造方法は、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて第1ポリマー及び第2プレポリマーの混合物を得ることと、第1ポリマー、第2プレポリマー、機能性色素及び任意の添加剤を混合することとを含む。
【0163】
接着性組成物の第3の製造方法は、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマー及び第3プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて第1ポリマーを得ることと、第1ポリマー、第3プレポリマー、機能性色素及び任意の添加剤を混合することとを含む。
【0164】
接着性組成物の第4の製造方法は、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて第1ポリマー、第2プレポリマー及び第4プレポリマーの混合物を得ることと、第1ポリマー、第2プレポリマー、第4プレポリマー、機能性色素及び任意の添加剤を混合することとを含む。
【0165】
接着性組成物の第5の製造方法は、第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物とを反応させて第1プレポリマーを得ることと、第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物とを反応させて第2プレポリマーを得ることと、第2プレポリマーと単官能活性水素化合物とを反応させて第1ポリマーを得ることと、第1ポリマー、機能性色素及び任意の添加剤を混合することとを含む。
【0166】
第1多官能活性水素化合物と第1イソ(チオ)シアネート化合物との反応は、有機溶媒存在下で行われることが好ましい。有機溶媒としては上述したものを用い得る。この反応は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。また、この反応は、例えば、60℃以上150℃以下の反応温度で、3時間以上10時間以下にわたって行われる。この反応は、イソシアネート基の逆滴定法により、終点が確認されるまで行われることが好ましい。
【0167】
第1プレポリマーと第2多官能活性水素化合物との反応は、有機溶媒存在下で行われることが好ましい。有機溶媒としては上述したものを用い得る。この反応は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。また、この反応は、例えば、10℃以上30℃以下の反応温度で、0.1時間以上5時間にわたって行われる。
【0168】
第2プレポリマーと単官能活性水素化合物との反応は、有機溶媒存在下で行われることが好ましい。有機溶媒としては上述したものを用い得る。この反応は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。また、この反応は、例えば、-10℃以上10℃以下の反応温度で、0.1時間以上5時間以下にわたって行われる。
【0169】
<第1及び第2接着層>
第1及び第2接着層は、それぞれ、第1及び第2光学基材と機能層とを接着させる。第1接着層は、第1光学基材と機能層との間に位置する。第2接着層は、第2光学基材と機能層との間に位置する。第1及び第2接着層は、第1及び第2機能層の表面の全面を被覆することが好ましい。
【0170】
第1及び第2接着層の厚みは、例えば、1μm以上である。第1及び第2接着層の厚みが厚いと、第1及び第2光学基材と機能層との密着性が向上する傾向にある。第1及び第2接着層の厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。一方、第1及び第2接着層の厚みが過剰に厚いと、積層体の外観性が低下する傾向にある。第1及び第2接着層の厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。
【0171】
第1及び第2接着層の少なくとも一方は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。第1及び第2接着層は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂を含む第1及び第2接着層は、外観性に優れ、光学基材との密着性がより高い傾向にある。第1及び第2接着層に含まれる樹脂の種類は、ガスクロマトグラフ法やフーリエ変換赤外分光(FT-IR)分析により確認できる。第1及び第2接着層は、ウレタン樹脂を更に含んでいてもよい。
【0172】
第1及び第2接着層は、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、チオール基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アリル基、及び、ビニル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。これらの官能基を有する第1及び第2接着層は、光学基材と機能層との密着性が向上する傾向にある。
【0173】
第1及び第2接着層の少なくとも一方は、エポキシ基若しくはチオエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。このような接着層を備えると、光学基材と光学基材と機能層との密着性がより高まる。
【0174】
第1及び第2接着層の官能基は、例えば、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)分析により確認できる。
【0175】
第1及び第2接着層は、例えば、下記接着層形成用組成物を第1及び第2基材の少なくとも一方の表面上に塗布し、硬化させることにより形成できる。
【0176】
(接着層形成用組成物)
接着層形成用組成物としては、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂と、これらの樹脂を溶解若しくは分散させる有機溶媒とを含み得る。接着層形成用組成物は、ウレタン樹脂を更に含んでいてもよい。
【0177】
接着層形成用組成物は、エポキシ樹脂を含むことが好ましく、エポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0178】
有機溶媒は、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、アセトン、フェノール、ジエチルケトン、キシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0179】
接着層形成用組成物において、樹脂が占める割合は、例えば、10質量%以上50質量%以下であり、好ましくは、20質量%以上30質量%以下である。
【0180】
接着層形成用組成物は、アクリロイル基、メタクリロイル基、及び、ビニル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する第1化合物を更に含んでいてもよい。このような第1化合物を含むと、上記の官能基を有する接着層が得られる。
【0181】
(メタ)アクリロイル基を有する第1化合物は、例えば、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートである。単官能(メタ)アクリレートは、エポキシ基、オキセタニル基、ビニル基、アルコキシ基、イソシアネート基(-N=C=O)、イソチオシアネート基(-N=C=S)、及び、アルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。このような官能基を有する単官能(メタ)アクリレートを用いると、接着層の密着性が高まる傾向にある。
【0182】
単官能(メタ)アクリレートの具体例は、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどの他に、下記式(11)で示されるエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0183】
【化3】
【0184】
式(11)において、R13及びR14は、それぞれ、水素原子又はメチル基である。
【0185】
15及びR16は、それぞれ、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキレン基または下記式(12)で示される基である。
【0186】
【化4】
【0187】
h及びiは、平均値でそれぞれ0~20の数である。
【0188】
ここで、R15及びR16で示されるアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。また、上記式(11)で示される化合物は、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる場合がある。そのため、h及びiは、平均値で示されている。
【0189】
上記式(11)で示される化合物としては、例えばグリシジルメタクリレート、グリシジルオキシメチルメタクリレート、2-グリシジルオキシエチルメタクリレート、3-グリシジルオキシプロピルメタクリレート、4-グリシジルオキシブチルメタクリレート、平均分子量406のポリエチレングリコールグリシジルメタクリレート、平均分子量538のポリエチレングリコールグリシジルメタクリレート、平均分子量1022のポリエチレングリコールグリシジルメタクリレート、平均分子量664のポリプロピレングリコールグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA-モノグリシジルエーテル-メタクリレート、3-(グリシジル-2-オキシエトキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルオキシメチルアクリレート、2-グリシジルオキシエチルアクリレート、3-グリシジルオキシプロピルアクリレート、4-グリシジルオキシブチルアクリレート、平均分子量406のポリエチレングリコールグリシジルアクリレート、平均分子量538のポリエチレングリコールグリシジルアクリレート、平均分子量1022のポリエチレングリコールグリシジルアクリレート、3-(グリシジルオキシ-1-イソプロピルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-(グリシジルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられる。
【0190】
単官能(メタ)アクリレートとしては、グリシジルメタクリレート、グリシジルオキシメチルメタクリレート、2-グリシジルオキシエチルメタクリレート、3-グリシジルオキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレートが好ましく、グリシジルメタクリレートが特に好ましい。
【0191】
ビニル基を有する第1化合物としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、エチルビニルエーテル、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ブタジエン、1,4-ペンタジエン、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン、1,2-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルプロパンジシロキサン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジビニルスルホキシド、ジビニルペルスルフィド、ジメチルジビニルシラン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、メチルトリビニルシラン、N-ビニルピロリドン、α-メチルスチレン及びα-メチルスチレンダイマー、(ビニルオキシ)メタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)エタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)プロパノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)ブタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)ペンタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)ヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシ)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキサノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルメタノールグリシジルエーテル、(ビニルオキシエチル)シクロヘキシルエタノールグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0192】
第1化合物は、グリシジルメタクリレート、グリシジルオキシメチルメタクリレート、2-グリシジルオキシエチルメタクリレート、3-グリシジルオキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレートが好ましく、グリシジルメタクリレート(GMA)が特に好ましい。特に、エポキシ樹脂を含む接着層形成用組成物に、グリシジルメタクリレートが添加されることが好ましい。このような組成物を用いると、密着性により優れた接着層を得られる。
【0193】
接着層形成用組成物において、第1化合物が占める割合は、例えば、0.05質量%以上5質量%以下であり、好ましくは、0.1質量%以上1質量%以下である。第1化合物が占める割合が高いと、接着層の密着性が高まる傾向にある。第1化合物が占める割合が低いと、積層体の外観性が高まる傾向にある。
【0194】
接着層形成用組成物としては、市販の接着剤や表面処理剤を用いてもよい。市販の接着剤としては、例えば、東亞合成株式会社製のアロンマイティ(登録商標)シリーズを用いる。
【0195】
<支持体>
実施形態に係る積層体は、更に支持体を含んでいてもよい。支持体は、機能層と第1又は第2接着層との間に位置してもよく、第1又は第2接着層と第1又は第2光学基材との間に位置してもよい。支持体は、積層体の形状安定性を更に高め得る。支持体は、無色透明であってもよく、白色透明であってもよく、有色透明であってもよい。
【0196】
支持体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリアミド、ポリカーボネートシート、セルロースアセテートブチレート、及び、(メタ)アクリルからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0197】
支持体の厚みは、50μm以上であることが好ましい。支持体の厚みが厚いと、積層体の強度がより高まる傾向にある。支持体の厚みに上限は特にないが、一例によると、1000μm以下であり、他の例によると、500μm以下である。
【0198】
<製造方法>
積層体の製造方法は、第1光学基材及び第2光学基材の少なくとも一方の主面に、上述した接着層形成用組成物を塗布し乾燥させて第1塗膜及び第2塗膜を設けることと、支持体上に上述した接着性組成物を塗布して第3塗膜を得ることと、この第3塗膜を支持体から剥離し、第1光学基材の第1塗膜上に積層させることと、第1塗膜上の第3塗膜上に第2塗膜が積層するように、第2光学基材を積層させて第1構造体を得ることと、この第1構造体を加熱して、第1塗膜、第2塗膜、及び第3塗膜を硬化させることとを含む。なお、第1塗膜上に接着性組成物を塗布し乾燥させて、直接第3塗膜を設けてもよい。
【0199】
積層体の製造方法について、以下、詳細に説明する。
【0200】
先ず、第1及び第2光学基材を準備する。第1及び第2光学基材としては、市販の樹脂フィルム若しくはシートを用い得る。第1及び第2光学無延伸シートを用いてもよく、これに延伸処理及び染色処理を施したものを用いてもよい。第1及び第2光学基材は、エッチング処理、アルカリ処理、コロナ処理等の表面処理が施されてもよい。
【0201】
次に、第1光学基材及び第2光学基材の一方の主面上に接着層形成用組成物を、例えば、バーコータを用いて塗布し塗膜を形成する。この塗膜を、例えば、70℃以上150℃以下の温度で1分間以上1時間以下にわたって乾燥させる。これにより、一方の主面上に第1塗膜が形成された第1光学基材と、一方の主面上に第2塗膜が形成された第2光学基材とを得る。
【0202】
次に、支持体上に上記の接着性組成物を塗布し塗膜を形成する。この塗膜を、例えば、70℃以上150℃以下の温度で1分間以上1時間以下にわたって乾燥させる。これにより、第3塗膜を得る。支持体から剥離した第3塗膜を、第1光学基材上の第1塗膜上に積層させる。これにより、第1光学基材、第1塗膜、及び第3塗膜がこの順で積層された構造を得る。
【0203】
次に、この第3塗膜と接触するように第2光学基材上の第2塗膜を積層させる。これにより、第1光学基材、第1塗膜、第3塗膜、第2塗膜、及び第2光学基材がこの順で積層された第1構造体を得る。
【0204】
次に、この第1構造体を加熱して、第1乃至第3塗膜を硬化させる。これにより、第1光学基材と第2光学基材とが、第1接着層、機能層、及び第2接着層を介して接着された積層体が得られる。第1構造体の加熱処理に際しては、例えば、40℃以上160℃の温度で1分間以上10時間以下にわたって加熱する。
【0205】
得られた積層体を脱気処理に供してもよい。脱気処理に際しては、積層体を、例えば、500Paの真空下、40℃以上80℃以下の温度で、5時間以上20時間以下にわたって静置する。脱気処理後の構造体を加熱処理に供する。
【0206】
[コート層含有積層体]
実施形態に係るコート層含有積層体は、実施形態に係る積層体とコート層とを含む。コート層は、第1光学基材及び第2光学基材の少なくとも一部を被覆する。コート層は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、及びウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。
【0207】
コート層含有積層体は、実施形態に係る積層体と同様に、上述したバインダーシートとして用い得る。コート層含有積層体は、コート層を含有しているため、加工安定性に優れる。また、後述する光学素子基材との密着性に優れる。
【0208】
実施形態に係るコート層含有積層体の厚みは、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることが更に好ましい。コート層含有積層体の厚みが厚いと、形状安定性が高まる傾向にある。コート層含有積層体の厚みに上限は特にないが、一例によると、1000μm以下であり、他の例によると、500μm以下である。
【0209】
図2は、実施形態に係るコート層含有積層体の一例を概略的に示す断面図である。図1に示すコート層含有積層体7は、図1に示す積層体1と、第1光学基材2の表面を全面的に被覆する第1コート層7と、第2光学基材3の表面を全面的に被覆する第2コート層8とを備える。第1コート層7は、第1光学基材2の一部を被覆していてもよく、第2コート層8は、第2光学基材3の一部を被覆していてもよい。第1コート層7及び第2コート層8の一方は省略してもよい。
【0210】
<コート層>
コート層は、第1及び第2基材の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆する。コート層は、第1及び第2基材の両方の表面を被覆することが好ましい。コート層は、第1及び第2基材の表面の全面を被覆することが好ましい。第1及び第2基材の表面において、コート層が被覆する面積が大きいと、光学素子基材との密着性及び積層体の形状安定性が向上する傾向にある。
【0211】
コート層の厚みは、例えば、5μm以上である。コート層の厚みが厚いと、光学素子基材との密着性及び積層体の形状安定性が向上する傾向にある。コート層の厚みは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることが更に好ましい。一方、コート層の厚みが過剰に厚いと、積層体の外観性が低下する傾向にある。コート層の厚みは、100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。
【0212】
コート層は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。コート層は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂を含むコート層は、外観性に優れ、光学素子基材との密着性がより高い傾向にある。コート層に含まれる樹脂の種類は、ガスクロマトグラフ法やフーリエ変換赤外分光(FT-IR)分析により確認できる。
【0213】
コート層の表面は、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及び、ビニル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。これらの官能基を表面に有するコート層を備えると、光学素子基材との密着性が向上する傾向にある。コート層は、アクリロイル基、メタクリロイル基、及び、ビニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基と、エポキシ基とを含むことがより好ましい。このようなコート層は、密着性をより高め得る。
【0214】
コート層の表面に官能基を有することは、例えば、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)分析により確認できる。すなわち、表面にアクリロイル基、メタクリロイル基やビニル基を有する場合、IRスペクトルにおいて、1600cm-1以上1680cm-1以下、及び、790cm-1以上1000cm-1以下の範囲内にピークが検出され得る。
【0215】
コート層は、例えば、上述した接着層形成用組成物を第1及び第2光学基材の少なくとも一方の表面上に塗布し、硬化させることにより形成できる。
【0216】
より具体的には、上述したのと同様の方法で、一方の主面上に第1塗膜が形成された第1光学基材と、一方の主面上に第2塗膜が形成された第2光学基材とを得る。この第1光学基材において、第1塗膜が形成されていない他方の主面上に、接着層形成用組成物を塗布し、例えば、70℃以上150℃以下の温度で1分間以上1時間以下にわたって乾燥させる。これにより、一方の主面に第1塗膜が、他方の主面に第4塗膜が形成された第1光学基材を得る。第2光学基材において、第2塗膜が形成されていない他方の主面上に、接着層形成用組成物を塗布し、例えば、70℃以上150℃以下の温度で1分間以上1時間以下にわたって乾燥させる。これにより、一方の主面に第2塗膜が、他方の主面に第5塗膜が形成された第2光学基材を得る。この第1光学基材及び第2光学基材を用いること以外は、上述した積層体の製造方法と同様の方法により、コート層含有積層体が得られる。
【0217】
[光学物品]
実施形態に係る光学物品は、実施形態に係る積層体を含む。光学物品は、実施形態に係る積層体と、第1光学基材及び第2光学基材の少なくとも一部を被覆する光学素子基材とを含んでいてもよい。また、光学物品は、実施形態に係るコート層含有積層体を含んでいてもよい。光学物品は、実施形態に係るコート層含有積層体と、コート層の少なくとも一部を被覆する光学素子基材とを含んでいてもよい。
【0218】
光学物品としては、バインダーシート、レンズ、眼鏡、家屋や自動車の窓材、液晶ディスプレイ、サンバイザー、時計等が挙げられる。レンズは、セミフィニッシュドレンズ及びフィニッシュドレンズを含む。
【0219】
図3は、実施形態に係る光学物品の一例を概略的に示す断面図である。図3に示す光学物品10は、第1光学素子基材12と、第2光学素子基材11と、これらの間に介在する図1に示す積層体1とを含む。光学物品10は、凹凸レンズ形状を有している。積層体1は、レンズの形状に沿った曲面を有している。第1光学素子基材12は凸面側に位置し、第2光学素子基材12は凹面側に位置している。第1光学素子基材12は、積層体1の図示しない第1光学基材の表面全体を被覆している。第2光学素子基材11は、積層体1の図示しない第2光学基材の表面全体を被覆している。積層体1の側面は、第1及び第2光学素子基材により被覆されていない。積層体1の側面は、第1及び第2光学素子基材により被覆されていてもよい。
【0220】
実施形態に係る光学物品は、図1に示す積層体1に変えて、図2に示すコート層含有積層体7を用いてもよい。第1光学素子基材12は、コート層含有積層体7の第1コート層8の表面全体を被覆していてもよい。第2光学素子基材11は、コート層含有積層体7の第2コート層9の表面全体を被覆していてもよい。
【0221】
図4は、実施形態に係る眼鏡の一例を概略的に示す断面図である。図4に示す眼鏡100は、レンズ101と、このレンズ101を支持するフレーム102とを含む。レンズ101は、実施形態に係る光学物品を含む。
【0222】
(光学素子基材)
光学素子基材は、樹脂を含み得る。樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アリル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ポリチオウレタンウレア樹脂、ポリチオエポキシ樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み得る。
【0223】
光学素子基材は、アリル樹脂を含むことが好ましい。アリル樹脂は、積層体のコート層との密着性が高い傾向にある。
【0224】
(光学素子基材形成用硬化性組成物)
アリル系樹脂用の硬化性組成物は、アリル基を有するアリルモノマーと重合開始剤とを含む。アリルモノマーは、例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルイソフタレート、及びジアリルテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。重合開始剤は、例えば、ジイソプロピルパーオキシカーボネートを含む。
【0225】
(メタ)アクリル系樹脂用の硬化性組成物は、(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリルモノマーと重合開始剤とを含む。
【0226】
ウレタンウレア系樹脂用の硬化性組成物は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とのプレポリマー、及び、ジアミン化合物とを含む。ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及びジアミン化合物としては、それぞれ、接着性組成物において上述したものを用い得る。
【0227】
チオウレタン系樹脂用の硬化性組成物は、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物と重合触媒とを含む。ポリイソシアネート化合物としては、接着性組成物において上述したものを用い得る。
【0228】
チオエポキシ系樹脂用の硬化性組成物は、チオエポキシ基を有するモノマーと硬化剤と重合触媒とを含む。
【0229】
(光学物品の製造方法)
実施形態に係る光学物品は、例えば、以下の方法で製造される。
先ず、鋳型及びガスケットを準備する。鋳型は、上型と下型とを含む。上型と下型とを組み合わせることにより、内部に中空部が形成される。ガスケットは、この上型と下型との境界面に設置される。ガスケットの内側には、積層体を固定するための切込みが設けられている。ガスケットの内側には、切込みの代わりに、凸部又は凹部が設けられていてもよい。鋳型及びガスケットは、例えば、公知のプラスチックレンズ成型用のものである。
【0230】
積層体は、鋳型の形状に合わせて湾曲させる等の形状加工が施されていてもよい。具体的には、曲面加工装置の金型内に、積層体を設置する。金型は、例えば、半球形等のレンズ形状を有している。金型の底面には、空孔が設けられている。空孔には、管を介して真空ポンプ等の圧力調整装置が接続されている。圧力調整装置を起動し、金型と積層体との間の空間の圧力を低下させる。これにより、積層体の第1光学基材が金型の底面部に張り付くように変形する。この際、積層体が変形し易いように、環境温度を70℃以上160℃以下に設定してもよい。一定時間経過後、圧力調整装置の動作を停止して、変形した積層体を金型から取り外す。取り外した積層体を、例えば、0℃以上40℃以下の温度下で冷却する。このようにして、曲面加工された積層体を得る。
【0231】
次に、ガスケットの切込みに積層体の端部を差し込み固定する。このガスケットを、鋳型の境界面に設置する。これにより、鋳型の中空部内にまたがるように積層体が設置される。次に、この鋳型の中空部内に、光学素子基材形成用の硬化性組成物を充填する。硬化性組成物充填後の鋳型を、熱処理して、硬化性組成物を硬化させる。熱処理に際しては、例えば、常温から硬化温度まで徐々に昇温し、硬化温度に達した後、一定時間保持する。硬化温度は、例えば、60℃以上100℃以下である。昇温速度は、例えば、1℃/時間以上10℃/時間以下である。硬化温度での保持時間は、例えば、1時間以上30時間以下である。
【0232】
熱処理終了後、鋳型から硬化体を取り出す。取り出した硬化体を、60℃以上150℃以下の範囲内で更に1時間以上10時間以下にわたって加熱する。このようにして、積層体の第1及び第2光学基材の表面が、光学素子基材により被覆された光学物品が得られる。
【0233】
実施形態に係る光学物品は、以下の方法により得てもよい。先ず、上記の鋳型の下型に、硬化性組成物の一部を充填する。充填後の硬化性組成物の表面に、積層体を設置する。次に、下型と向き合うように上型を設置して中空部を形成する。この中空部内に硬化性組成物の残りを充填する。得られた鋳型を上記と同様の方法で加熱し、硬化体を得る。このようにして、積層体の主面及び側面の全面が、実施形態に係る光学素子基材により被覆された光学物品が得られる。
また、実施形態に係る光学物品は、以下の方法により得てもよい。先ず、鋳型の上面に沿うように積層体を設置する。積層体の鋳型の上面と接しない面、すなわち、裏面側に向けて硬化性組成物を充填し、上記と同様の条件で熱処理し、第1硬化体を得る。この第1硬化体を、鋳型内に設置する。積層体の硬化体により被覆されていない表面に向けて硬化性組成物を充填し、上記と同様の条件で熱処理し、第2硬化体を得る。このようにして、積層体の主面と任意に側面とが、光学素子基材により被覆された光学物品が得られる。
【0234】
また、積層体に変えて、コート層含有積層体を用いてもよい。
【実施例0235】
以下に例示するいくつかの実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に、本発明を説明するためのものであり、本発明の精神及び範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
【0236】
<実施例1>
(第1プレポリマーFPP1の製造)
2Lの反応容器に、100gの第1イソシアネート化合物FI1、315gの第1多官能活性水素化合物FA1、及び40gの有機溶媒OS1を投入して混合物を得た。第1イソシアネート化合物FI1としては、イソホロンジイソシアネートを用いた。第1多官能活性水素化合物FA1としては、数平均分子量1000のポリカーボネートジオールを用いた。有機溶媒OS1としては、ジエチルケトンを用いた。窒素雰囲気下、100℃で5時間にわたってこの混合物を150rpmで攪拌して、第1プレポリマーを含む反応液を得た。以下、この第1プレポリマーを、第1プレポリマーFPP1とも称する。反応の終点は、イソシアネート基の逆滴定法により確認した。
【0237】
(第2プレポリマーSPP1の製造)
第1プレポリマーFPP1を含む10℃の反応液に、560gの有機溶媒OS1と150gの有機溶媒OS2を加えた後、液温を15℃に保持した。有機溶媒OS2としては、tert―ブチルアルコールを用いた。この反応液に、21.3gの第2多官能活性水素化合物SA1を滴下し、15℃で1時間反応させることにより、第2プレポリマーを含む反応液を得た。この第2多官能活性水素化合物SA1としては、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタンを用いた。以下、この第2プレポリマーを、第2プレポリマーSPP1とも称する。なお、第2プレポリマーSPP1を含む反応液において、固形分濃度は37.6質量%であった。
【0238】
第2プレポリマーSPP1の数平均分子量を測定したところ、13000であった。また、軟化点は98℃であった。
【0239】
(接着性組成物AC1の調製)
第2プレポリマーSPP1を含む100gの反応液、1.02gのフォトクロミック化合物PC1、0.34gのエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、及び0.05gのDOW CORNING TORAY L-7001を混合し、室温で攪拌して接着性組成物を得た。以下、この接着性組成物を接着性組成物AC1とも称する。
【0240】
PC1:下記式で示される化合物。
【0241】
【化5】
【0242】
(積層体OL1の作製)
先ず、第1及び第2光学基材として、60μmの厚みのTACフィルムを準備した。以下、このフィルムをTAC1とも称する。
【0243】
TAC1の一方の主面上に、バーコーターを用いて接着層形成用組成物を塗布して塗膜を得た。この塗膜を120℃で5分間にわたって乾燥させた。このようにして、一方の主面上に第1塗膜が設けられた第1光学基材を得た。その後、同様の方法により、一方の主面上に第2塗膜が設けられた第2光学基材を得た。第1及び第2塗膜の厚みは5μmであった。接着層形成用組成物としては、エポキシ樹脂をトルエン及びメタノールの混合溶媒に溶解させた溶液を用いた。以下、このコート層形成用組成物を、接着層形成用組成物CF1とも称する。
【0244】
次に、接着性組成物AC1を、バーコーターを用いて、PET(ポリエチレンテレフタレート)製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)に塗布して第3塗膜を得た。この第3塗膜を100℃で5分間乾燥させた後、PET製フィルムを剥がして、厚み約30μmのフォトクロミック性接着シートを得た。得られたフォトクロミック性接着シートを、第1光学基材の第1塗膜が設けられている主面と、第2光学基材の第2塗膜が設けられている主面とで挟み、これらを貼り合わせて構造体を得た。なお、構造体は長方形の短冊状であった。構造体の長辺方向の一方の端部には、接着性組成物を塗工せず、未塗工部分とした。
【0245】
この構造体を、収縮しないように四方を抑えながら、100℃で6時間加熱することで、第1塗膜、第2塗膜、及びフォトクロミック性接着シートを硬化させ、積層体を得た。以下、この積層体を積層体OL1とも称する。
【0246】
<実施例2>
実施例1と同様に一方の主面上に第1塗膜が設けられた第1光学基材、及び、一方の主面上に第2塗膜が設けられた第2光学基材を得た。第1塗膜が設けられていない第1光学基材の他方の主面上に接着層形成用組成物CF1を塗布し、この塗膜を120℃で5分間にわたって乾燥させた。これにより、一方の主面上に第1塗膜が、他方の主面上に第4塗膜が形成された第1光学基材を得た。また、第2塗膜が設けられていない第2光学基材の他方の主面に接着層形成用組成物CF1を塗布し、この塗膜を120℃で5分間にわたって乾燥させた。これにより、一方の主面上に第2塗膜が、他方の主面上に第5塗膜が形成された第2光学基材を得た。第4及び第5塗膜の厚みは30μmであった。
【0247】
この第1光学基材及び第2光学基材を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でコート層含有積層体を得た。このコート層含有積層体を、積層体OL2とも称する。
【0248】
<実施例3>
第1及び第2塗膜の厚みを50μmにしたこと以外は実施例2と同様の方法でコート層含有積層体を得た。このコート層含有積層体を、積層体OL3とも称する。
【0249】
<比較例1>
第1及び第2接着層の形成を省略したこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。この積層体を積層体OL4とも称する。
【0250】
<比較例2>
第1及び第2接着層の形成を省略したこと以外は、実施例2と同様の方法で積層体を得た。この積層体OL5とも称する。
【0251】
<比較例4>
TAC1の表面を0.02kWの条件でコロナ処理を施したこと以外は比較例1と同様の方法で積層体を得た。この積層体OL6とも称する。
【0252】
<比較例5>
実施例1の接着性組成物CF1の代わりにポリウレタン水分散体のスーパーフレックス170(第一工業表製薬製)を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。この積層体OL7とも称する。
【0253】
(積層体及びレンズのフォトクロミック性の測定)
得られた積層体の最大吸収波長、発色濃度、及び退色速度を測定した。
具体的には、先ず、23℃の温度下で、株式会社浜松ホトニクス製のキセノンランプL-2480(300W)SHL-100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して、積層体の一方の面に120秒間照射して、フォトクロミック化合物を発色させた。ビーム強度は、365nm=2.4mW/cm、245nm=24μW/cmとした。
【0254】
発色後の最大吸収波長(λmax)を、株式会社大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた。
【0255】
キセノンランプ未照射時の積層体の最大吸収波長の吸光度ε(0)を測定した。次に、上記ビーム強度で120秒間にわたって積層体にキセノンランプを照射して、積層体の最大吸収波長の吸光度ε(120)を測定した。吸光度ε(120)からε(0)を差し引いた値を、発色濃度とした。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
【0256】
発色濃度が1/2まで低下するのに要する時間を測定し、これを退色速度〔t1/2(sec.)とした。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0257】
すべての実施例及び比較例の積層体及びレンズにおいて、発色濃度は1.1であり、退色速度は42秒であった。
【0258】
(積層体の剥離強度評価)
以下の方法により、積層体について、剥離強度評価を行った。具体的には、光学積層シートを、25mm×100mmの短冊状となるように切り出して試験片を得た。この際、接着性組成物の塗膜を含まない、一方の長辺端部を含むように切り出した。この試験片の第1基材及び第2基材の接着性組成物が塗工されていない部分を、手で引っ張り、剥離強度が強いか弱いかを判断した。判断の基準を以下のとおりである。この結果を表1に示す。
【0259】
1:手では剥離できず、第1光学基材若しくは第2光学基材が破れる。
【0260】
2:手で簡単に剥離できる。
【0261】
【表1】
【0262】
<実施例4>
(硬化性組成物CC1の調製)
ジエチレングリコールビスアリルカーボネート97質量部、及び、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3質量部を混合して、硬化性組成物を得た。以下、この硬化性組成物を硬化性組成物CC1とも称する。
【0263】
(積層体OL2の曲面加工)
先ず、実施例2で得られた積層体OL2について型抜きを行い、10cm角の試験片を得た。この試験片を45℃90%RHの環境下で30分静置した後、直径83mmの凸型6カーブの金型で球面形状へ加工した。加工後の試験片を乾燥させることで、径が83mmの6カーブに加工された積層体OL2を得た。
【0264】
(レンズLS1の製造)
曲面加工を施した積層体OL2を、ガスケットの内側の切込み部に設置した。このガスケットを、中空部内に積層体OL2が位置するようにガラスモールド内に設置した。ガラスモールドは、レンズの度数Dは6.00となり、レンズ径は83mmとなり、レンズ厚みは7.5mmとなるように設定した。このガラスモールドの中空部内に、硬化性組成物CC1を注入した。硬化性組成物CC1を注入後のガラスモールドを、空気炉を用いて、35℃から85℃まで17時間かけて徐々に昇温した。加熱後、ガスケット及びガラスモールド内から硬化体を取り出し、これを90℃のオーブンに入れ3時間加熱した。加熱後の硬化体の外周を玉摺機にて研磨して、直径70mmの図3に示す光学物品を得た。この操作を繰り返し、合計3枚のレンズを得た。以下、このレンズをレンズLS1とも称する。
【0265】
<実施例5>
積層体OL2の代わりに積層体OL3を用いた以外は、実施例6と同様の方法でレンズを得た。
【0266】
<比較例3>
積層体OL2の代わりに積層体OL5を用いた以外は、実施例6と同様の方法でレンズを得た。
【0267】
<評価試験>
(レンズの密着性評価)
以下の方法により、得られたレンズにおける積層体と光学素子基材との密着性を評価した。先ず積層体を幅10mmに切り出した後、光学素子基材との界面に超硬刃スクレーパーを押し当て、剥がれが見られるかどうか確認した。評価基準は以下のとおりとした。この結果を表2に示す。
【0268】
1:積層体及び光学素子基材の間で、簡単に剥がれが見られる。
【0269】
2:積層体及び光学素子基材の間で、剥がれが見られるが、簡単には剥がれない。
【0270】
3:積層体及び光学素子基材の間で、剥がれる前に、レンズが割れるほど密着している。
【0271】
【表2】
【0272】
以下に、出願当初の特許請求の範囲の発明を付記する。
【0273】
[1]
第1光学基材及び第2光学基材と、
前記第1光学基材及び前記第2光学基材の間に位置する機能層と
前記第1光学基材及び前記機能層を接着させる第1接着層と、
前記第2光学基材及び前記機能層を接着させる第2接着層と
を含み、
前記第1接着層及び第2接着層は、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む積層体。
【0274】
[2]
前記第1接着層及び第2接着層の少なくとも一方は、エポキシ樹脂を含む、[1]に記載の積層体。
【0275】
[3]
前記第1光学基材及び第2光学基材は、セルロース樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びポリカーボネート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、[1]に記載の積層体。
【0276】
[4]
前記機能層は、ウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、及びチオウレタンウレア樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、[1]に記載の積層体。
【0277】
[5]
前記機能層は、機能性色素を含む[1]に記載の積層体。
【0278】
[6]
前記機能層は、フォトクロミック化合物を含む[1]に記載の積層体。
【0279】
[7]
[1]に記載の積層体を含む光学物品。
【0280】
[8]
[1]に記載の積層体と、
前記第1光学基材及び前記第2光学基材の少なくとも一部を被覆し、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、及びウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むコート層と
を含むコート層含有積層体。
【0281】
[9]
[8]に記載のコート層含有積層体と、
前記コート層の少なくとも一部を被覆する光学素子基材と
を含む光学物品。
【0282】
[10]
[7]に記載の光学物品を含むレンズ。
【0283】
[11]
[10]に記載のレンズを含む眼鏡。
図1
図2
図3
図4