(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080694
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】化合物、金属錯体、金属錯体の製造方法、オレフィン重合用触媒、(共)重合体の製造方法及びエチレン/ウンデセン酸エステル共重合体
(51)【国際特許分類】
C07F 9/50 20060101AFI20240606BHJP
C08F 4/70 20060101ALI20240606BHJP
C07F 15/04 20060101ALI20240606BHJP
C07F 19/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C07F9/50
C08F4/70
C07F15/04
C07F19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204134
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2022193678
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】山元 啓司
(72)【発明者】
【氏名】中島 右喬
【テーマコード(参考)】
4H050
4J128
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB40
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC48
4J128BA00B
4J128BA01A
4J128BB00A
4J128BB00B
4J128BC12A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB25
4J128EC02
4J128FA02
4J128GA01
4J128GA06
4J128GA19
4J128GB01
(57)【要約】
【課題】オレフィンと極性モノマーを共重合させる遷移金属錯体触媒であって、高い触媒活性を有し、高含量のオレフィン/極性モノマー共重合体を与える遷移金属錯体触媒、ならびに当該共重合体を製造する方法を提供することである。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物である。
【化1】
(式中、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。R
6は2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
(式中、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。R
6は2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。)
【請求項2】
前記R
6は、2位と6位に置換基を有する下記式で表されるフェニル基である、請求項1に記載の化合物。
【化2】
(式中、R
7及びR
8は、それぞれ独立に、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。)
【請求項3】
下記一般式(2)で表される金属錯体。
【化3】
(式中、MはNi又はPd、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。R
6は2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。R
10は水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基であり、単座の配位子であっても多座の配位子であってもよい。R
10が単座配位子の場合Lは中性のルイス塩基、R
10が多座でMに配位している場合にはLは存在しなくてもよい。Xはカウンターアニオンである。)
【請求項4】
下記一般式(3)で表される金属錯体。
【化4】
(式中、MはNi又はPd、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。R
6は2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。R
20は水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。Xはカウンターアニオンである。)
【請求項5】
下記一般式(4)で表される金属錯体。
【化5】
(式中、MはNi又はPd、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。R
6は2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。R
30は水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基であり、単座でMに配位する。Lは中性のルイス塩基、Xはカウンターアニオンである。)
【請求項6】
下記一般式(1)で表される化合物
【化6】
(式中、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。R
6は2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。)とニッケル又はパラジウムを含む遷移金属化合物を接触させることにより、下記一般式(3)で表される金属錯体を製造する金属錯体の製造方法。
【化7】
(式中、MはNi又はPd、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。R
6は2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。R
20は水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。Xはカウンターアニオンである。)で表される金属錯体を製造する金属錯体の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(1)で表される化合物
【化8】
(式中、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。R
6は2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。)とニッケル又はパラジウムを含む遷移金属化合物を接触させることにより、下記一般式(4)で表される金属錯体を製造する金属錯体の製造方法。
【化9】
(式中、MはNi又はPd、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。R
6は2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。R
30は水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基であり、単座でMに配位する。Lは中性のルイス塩基、Xはカウンターアニオンである。)
【請求項8】
請求項3~5のいずれか1項に記載の金属錯体を含む、オレフィン重合用触媒。
【請求項9】
請求項8に記載のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを(共)重合する、(共)重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンと極性基含有ビニルモノマーとを共重合する、共重合体の製造方法。
【請求項11】
前記極性基含有ビニルモノマーが、酸素原子及び/又は窒素原子を含有する、請求項10に記載の共重合体の製造方法。
【請求項12】
前記オレフィンがエチレンであり、前記極性基含有ビニルモノマーがウンデセン酸エステルである、請求項10に記載の共重合体の製造方法。
【請求項13】
金属錯体触媒を用いた配位共重合により合成され、チェーンウォーク由来のアルキル分岐が3/1000C以下であり、ウンデセン酸エステル含量が2mol%以上、50mol%以下含まれる、エチレン/ウンデセン酸エステル共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、金属錯体、金属錯体の製造方法、オレフィン重合体用触媒、(共)重合体の製造方法及びエチレン/ウンデセン酸エステル共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合体は機械的特性に優れており、各種成型体やフィルムなどの分野に用いられている。一方で、オレフィン重合体に対して様々な機能を付与するため、ポリマーに極性基を導入する方法が開発され続けている。代表的な方法がオレフィンと極性基含有ビニルモノマー(以下、「極性モノマー」と記載する。)を高温・高圧化でラジカル重合させることにより、極性基含有オレフィン共重合体を得る方法であり、エチレン-アクリル酸エステル共重合体やエチレン-酢酸ビニル共重合体などが合成されている。
また、後変性で極性基を導入する技術も開発されており、塩素化ポリプロピレンや無水マレイン酸変性ポリプロピレンなどが知られている。しかしながらこれらの極性基含有ポリマーの合成はラジカル反応を利用しているため、主鎖に対して多くの分岐が存在し、また分岐の位置や量は一般的に制御することは困難である。
【0003】
ラジカル反応を利用せずとも極性基含有オレフィン重合体を得る手法として、遷移金属錯体を触媒として用いたオレフィンと極性モノマーを共重合させる反応が知られている。
例えば、Brookhart等はパラジウムのジイミン錯体を用いてエチレンなどのオレフィンとアクリル酸エステルや長鎖エステルを含むオレフィンなどの極性モノマーを共重合させる方法を報告している(非特許文献1)。またGrubbs等は、ニッケルのフェノキシイミン錯体を用いてエチレンと極性基含有ノルボルネンを共重合させる方法を報告している(非特許文献2)。
【0004】
一般に極性モノマー中の極性基は中心金属に相互作用することで共重合反応の触媒活性を下げる、もしくは触媒を失活させてしまうことが知られている。極性モノマー中の極性基と中心金属の相互作用の大きさは、中心金属の種類や価数に大きく影響することが知られている。一般的に前周期遷移金属錯体触媒は酸素や窒素などのドナー性原子との親和性が大きすぎることにより触媒失活を招きやすく、極性基にかさ高い置換基を有するものや、多量のアルキルアルミを加えて極性基を保護するなどの手法をとらざるを得ない(非特許文献3、4)。
【0005】
他方で、高周期遷移金属錯体触媒は前周期遷移金属錯体触媒よりも極性基との親和性が高くないため、より一般的な極性モノマーを利用することができ、例えばニッケルのホスフィンフェノレート触媒がエチレン/アクリル酸エステルの共重合やプロピレン/アクリル酸エステルの共重合反応を進行させることが知られている(特許文献1~4、非特許文献5~8)。しかしながら、依然としてオレフィンと極性モノマーの共重合は、オレフィンのみを用いるホモ重合に比べて活性が下がる傾向があった。このような背景から、工業スケールに展開できるような重合活性を有し、かつ極性基を効率よく取り込むことができるオレフィン/極性モノマー共重合触媒の開発、ならびに製造方法の出現が望まれており、現在に至るまで精力的な研究が続けられている。
【0006】
これまでに、オレフィン/極性モノマー共重合に対して触媒活性を示す多くのニッケル・パラジウム触媒が報告されている。その多くは二座配位子を有するものである。ピリジンオキシドホスフィン配位子も二座配位子の一種であり、2020年にJian等によって同配位子を有するニッケル錯体触媒がエチレンとウンデセン酸メチルの共重合において、最高で3.50×105g/mol・hの活性を示し、また最高で含量が1.2mol%のポリマーを与えることが示されている(非特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2010/050256号
【特許文献2】米国特許第6559326号明細書
【特許文献3】特開2005-307021号公報
【特許文献4】特開2018-24646号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M. Brookhart et. al. J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 6414.
【非特許文献2】R. H. Grubbs et al. Science 2000, 287, 460.
【非特許文献3】T. J. Marks et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59,20522.
【非特許文献4】J. Imuta et al. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 1176.
【非特許文献5】J. Heinicke et al. Chem. Eur. J. 2003, 9, 6093.
【非特許文献6】B. S. Xin et al. J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 3611.
【非特許文献7】Y. Konishi et al. ACS Macro Lett. 2018, 7, 213.
【非特許文献8】J. Heinicke et al. Eur. J. Inorg. Chem. 2000, 3, 431.
【非特許文献9】Z. Jian et al. Polymer 2020, 194, 122410.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記文献において、特に触媒活性は工業スケールで適用するには十分であるとは言えず、さらなる活性の向上が望まれる。本発明は、オレフィンと極性モノマーを共重合させる遷移金属錯体触媒であって、高い触媒活性を有し、高含量の極性基を有するオレフィン/極性モノマー共重合体を与える金属錯体触媒、ならびに当該共重合体を製造する方法を提供することを課題とする。また、上記金属錯体触媒を製造するための化合物、該化合物を用いた金属錯体、該金属錯体の製造方法をも提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、新規構造のピリジンオキシドホスフィン配位子、同配位子を有する複数の錯体触媒が、例えば、エチレンとウンデセン酸エステルとの共重合反応において、報告されている触媒よりも活性が優位であり、同時にポリマー中のウンデセン酸エステルの含量も高いことを見出した。本発明は上記知見に基づき完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1]下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
(式中、R
1~R
5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。R
6は2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。)
【0012】
[2]前記R
6は、2位と6位に置換基を有する下記式で表されるフェニル基である、上記[1]に記載の化合物。
【化2】
(式中、R
7及びR
8は、それぞれ独立に、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。)
【0013】
[3]下記一般式(2)で表される金属錯体。
【化3】
(式中、MはNi又はPd、R
1~R
6は前記一般式(1)に記載のものと同じ、R
10は水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基であり、単座の配位子であっても多座の配位子であってもよい。R
10が単座配位子の場合Lは中性のルイス塩基、R
10が多座でMに配位している場合にはLは存在しなくてもよい。Xはカウンターアニオンである。)
【0014】
[4]下記一般式(3)で表される金属錯体。
【化4】
(式中、MはNi又はPd、R
1~R
6は前記一般式(1)に記載のものと同じ、R
20は水素、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。Xはカウンターアニオンである。)
【0015】
[5]下記一般式(4)で表される金属錯体。
【化5】
(式中、MはNi又はPd、R
1~R
6は前記一般式(1)に記載のものと同じ、R
30は水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基であり、単座でMに配位する。Lは中性のルイス塩基、Xはカウンターアニオンである。)
【0016】
[6]前記一般式(1)で表される化合物と、ニッケル又はパラジウムを含む遷移金属化合物を接触させることにより、前記一般式(3)で表される金属錯体を製造する金属錯体の製造方法。
[7]前記一般式(1)で表される化合物と、ニッケル又はパラジウムを含む遷移金属化合物を接触させることにより、前記一般式(4)で表される金属錯体を製造する金属錯体の製造方法。
[8]上記[3]~[5]のいずれかに記載の金属錯体を含む、オレフィン重合用触媒。
[9]上記[8]に記載のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを(共)重合する、(共)重合体の製造方法。
[10]上記[8]に記載のオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンと極性基含有ビニルモノマーとを共重合する、共重合体の製造方法。
[11]前記極性基含有ビニルモノマーが、酸素原子及び/又は窒素原子を含有する、上記[10]に記載の共重合体の製造方法。
[12]前記オレフィンがエチレンであり、前記極性基含有ビニルモノマーがウンデセン酸エステルである、上記[10]又は[11]に記載の共重合体の製造方法。
[13]金属錯体触媒を用いた配位共重合により合成され、チェーンウォーク由来のアルキル分岐が3/1000C以下であり、ウンデセン酸エステル含量が2mol%以上、50mol%以下含まれる、エチレン/ウンデセン酸エステル共重合体。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オレフィンと極性モノマーを共重合させる遷移金属錯体触媒であって、高い触媒活性を有し、高含量の極性基を有するオレフィン/極性モノマー共重合体を与える遷移金属錯体触媒、ならびに当該共重合体を製造する方法を提供することができる。また、上記金属錯体触媒を製造するための化合物、該化合物を用いた金属錯体、該金属錯体の製造方法をも提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
【0019】
[化合物]
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される新規な化合物(配位子)であり、このようなピリジンオキシドホスフィン配位子、同配位子を有する複数の錯体触媒は従来の触媒に比較して触媒活性が高く、例えば、エチレンとウンデセン酸エステルとの共重合反応において、報告されている触媒よりも活性が優位であり、同時にポリマー中のウンデセン酸エステルの含量も高い。
【0020】
【0021】
一般式(1)中、R1~R5は、それぞれ独立に、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)ヘテロ原子を含む基又は(iv)有機基である。また、R6は2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。
【0022】
前記(ii)ハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、中でも、活性向上、合成時の副反応の抑制の点で、フッ素原子と塩素原子が好ましい。
また、前記(iii)ヘテロ原子を含む基におけるヘテロ原子としては、酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、ケイ素が挙げられる。これらのヘテロ原子のうち、活性向上の点で、酸素、窒素、硫黄、ケイ素が好ましい。
なお、(iii)ヘテロ原子を含む基は、ヘテロ原子からなる基であってもよいし、ヘテロ原子を含む基であってもよい。
【0023】
ヘテロ原子を含む基としては、具体的には、OR11、CO2R11、CO2M’、C(O)N(R11)2、C(O)R11、SR11、SO2R11、SOR11、OSO2R11、P(O)(OR11)2-y(R12)y、CN、NHR11、N(R11)2、Si(OR12)3-x(R12)x、OSi(OR12)3-x(R12)x、NO2、SO3M’、PO3M’2、P(O)(OR11)2M’、及びエポキシ含有基等が挙げられる。ここで、R12は水素または炭素数1~20の炭化水素基である。また、R11は炭素数1~20の炭化水素基である。M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウムまたはホスホニウムであり、xは0から3までの整数、yは0から2までの整数である。
【0024】
ヘテロ原子を含む基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、ニトリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリメチルシリルオキシ基、トリメトキシシロキシ基、シクロヘキシルアミノ基、スルフォン酸ナトリウム基、スルフォン酸カリウム基、リン酸ナトリウム基、リン酸カリウム基等が挙げられる。
【0025】
(iv)有機基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、カルバゾリル基、ナフチル基、アントラセニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、2,6-ジフェニルフェニル基などが好適に挙げられる。また、(iv)有機基としては、ヘテロ原子を有していてもよく、(iv)有機基中に(iii)で示されるような、ヘテロ原子からなる基および/又はヘテロ原子を含有する基が置換されていてもよい。
ヘテロ原子を有していてもよい有機基としては、それぞれの置換基の総炭素数が、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20であり、さらに好ましくは4~15である。またここでいう有機基としては、直鎖状アルキル基、非環状アルキル基、アルケニル基、側鎖を有していてもよいシクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、及びアルキルアリール基等が挙げられる。
なお、(iv)有機基はヘテロ原子を有していてもよいが、(iii)と(iv)は同一ではない。
【0026】
上記式(1)におけるR6は、2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有するフェニル基である。2位~6位のうち少なくとも2箇所に置換基を有すればよく、例えば2位と6位(オルト位)、3位と4位(メタ位)などであってもよい。また3箇所以上に置換基を有していてもよく、例えば、2位、4位、6位(オルト位及びパラ位)に置換基を有する3置換体であってもよい。
R6における置換基としては、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基が挙げられる。ハロゲン、ヘテロ原子を含む基及び有機基としては、前記式(1)中のR1~R5にて例示した具体例と同様である。
これらのうち、本発明の効果を十分に奏する点から、2位と6位に置換基を有する下記式で示される2置換フェニル基であることが最も好ましい。
【0027】
【0028】
上記式において、R7及びR8は、それぞれ独立に、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。ハロゲン、ヘテロ原子を含む基及び有機基としては、前記式(1)中のR1~R5にて例示した具体例と同様である。これらの中でも触媒活性を向上させる観点から、ヘテロ原子を含む基が好ましく、OR11がより好ましい。
上記式(1)におけるR1は上述の(i)~(iv)から選ばれる。R1は金属錯体を形成した際に金属中心に近接する置換基であり、立体的な影響も加味して置換基が選定され、好ましくは、t-ブチル基や2位と6位に上記記載の(iv)有機基を置換基として有するアリール基が選ばれる。
また、上記式(1)におけるR2~R4は上述の(i)~(iv)から選ばれ、好ましくは水素が選ばれる。
上記式(1)におけるR5は上述の(i)~(iv)から選ばれる。本発明の効果を十分に奏功する点から、R6と同様に2位と6位に置換基を有する2置換フェニル基であることが好ましい。
本発明における前記一般式(1)中の置換基などの具体的な組み合わせを、下記表1に示す。ただし、具体例は、下記例示に限定されるものではない。
【0029】
【0030】
なお、表1において、MeOはメトキシ基、Phはフェニル基、tBuはターシャリーブチル基、Adはアダマンチル基、Cyはシクロヘキシル基、PhOはフェノキシ基、EtOはエトキシ基、iPrOはイソプロポキシ基、t-BuOはターシャリーブトキシ基をそれぞれ示す。
【0031】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、下記式(1-a)及び(1-b)が好適に挙げられる。
【0032】
【0033】
【0034】
上記式(1-a)及び(1-b)におけるDMPは2,6-ジメトキシフェニル基を表し、iPrはイソプロピル基、tBuはターシャリーブチル基である。
【0035】
上記式(1-a)及び(1-b)で示される化合物の製造方法としては、実施例において、詳細に説明する。
【0036】
[金属錯体及び金属錯体の製造方法]
本発明の金属錯体の第一の態様は、下記式(2)で示される金属錯体である。当該金属錯体は、前記一般式(1)で表される化合物(以下、「ピリジンオキシドホスフィン化合物」と記載することがある。)と、ニッケルまたはパラジウムを含む遷移金属化合物(以下、「ニッケル・パラジウム化合物」と記載することがある。)を接触させ、反応させることにより得られる。
【0037】
【0038】
一般式(2)において、MはNi(ニッケル)又はPd(パラジウム)である。R1~R6は、一般式(1)にて説明したものと同様である。R10は、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基については、上記一般式(1)で記載したものと同様である。
R10は重合反応の開始基であることから、効率的にモノマーのオレフィンに付加することが求められる。以上の観点から、好ましくは金属―炭素結合を与えるものであり、アルキル基やアリール基がより好ましい。
また、R10が単座配位子の場合、Lは中性のルイス塩基であり、R10が多座でMに配位している場合にはLは存在しなくてもよい。
Xはカウンターアニオンである。カウンターアニオンは、カチオン性錯体と対をなし、一般式(2)の金属錯体を中性状態にするものであればよい。Xは原子状アニオン、分子状アニオン、高分子状アニオン、アニオン性の担体表面であってもよい。またアニオンとしてはモノアニオンには限らず、ジアニオンやより高次のアニオンであってもよいが、この場合は存在するアニオンの量は一般式(2)全体を中性状態になるようにする。
好ましくは、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[ペンタフルオロフェニル]ボレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、トリフルオロメタンスルホナート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレートである。特に好ましくは、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[ペンタフルオロフェニル]ボレートである。
【0039】
前記ルイス塩基としては、芳香族アミン類、脂肪族アミン類、アルキルエーテル類、アリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類、環状エーテル類、アルキルニトリル類、アリールニトリル類、アルコール類、アミド類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類、フォスフェート類、フォスファイト類、チオフェン類、チアンスレン類、チアゾール類、オキサゾール類、モルフォリン類、環状不飽和炭化水素類等を挙げることができる。これらのうち、特に好ましいルイス塩基は、芳香族アミン類、脂肪族アミン類、環状エーテル類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類であり、なかでも好ましいルイス塩基は、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピペリジン誘導体、イミダゾール誘導体、アニリン誘導体、ピペリジン誘導体、トリアジン誘導体、ピロール誘導体、フラン誘導体、脂肪族エステル誘導体である。
上記ルイス塩基のうち、本発明では、芳香族アミン類及び脂肪族アミン類が好ましく、例えば、ピリジン等の芳香族アミン類が好適に挙げられる。
【0040】
一般式(2)で示される金属錯体の製造方法としては、上述のように、一般式(1)で表される化合物(ピリジンオキシドホスフィン化合物)と、ニッケルまたはパラジウムを含む遷移金属化合物(ニッケル・パラジウム化合物)を接触させ、反応させることにより得られる。
ピリジンオキシドホスフィン化合物とニッケル・パラジウム化合物は互いに混合することによって、接触させ、反応させるが、混合する条件は特に限定されない。また、Xはカチオン性錯体と対をなして、全体で中性になるのに必要なカウンターアニオン部位を表わしており、錯体を形成させるときに使われたニッケル・パラジウム化合物由来のものでもよいし、アニオン交換試薬由来のものでもよい。アニオン交換試薬は一般式(2)で示される錯体と反応させてもよいし、また一般式(2)の錯体を形成させる際に同時に添加してもよい。好ましくは、一般式(2)の錯体を形成させる際にアニオン試薬を同時に添加し、所望のカウンターアニオンを有する一般式(2)の錯体を得ることが好ましい。
ここで混合とはこれらの化合物を直接混合することや、溶媒を用いて溶液中で混合することを意味する。特に、均一な混合を達成する観点から、溶媒を用いることが好ましい。
なお、上記に記載の反応により、一般式(2)で与えられる金属錯体が生成すると考えられるが、一般式(2)に示す構造以外の構造を有する金属錯体が、一般式(2)で示す金属錯体と同様に、重合体の製造に用いることが可能であることを否定するものではない。
【0041】
本発明における前記一般式(2)中の置換基等の具体的な組み合わせを、下記表2に示す。なお、R1~R6の組み合わせに関しては、表1における組み合わせの中から任意に選択することができる。ただし、具体例は、下記例示に限定されるものでない。
【0042】
【0043】
一般式(2)の金属錯体を合成する方法としては、下記反応式(5)に示す方法が例示される。なお、ここではルイス塩基がピリジン(py)の場合を示す。
【0044】
【0045】
上記式(5)において、NaBArFは、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウムである。この製造方法により、Pにアリール(DMP)が結合しているピリジンオキシドホスフィン化合物から、py錯体を合成することが可能となった。
【0046】
本発明の第二の態様は、下記一般式(3)に示される金属アリル錯体である。当該金属アリル錯体は、一般式(1)で表される本発明の化合物(配位子)に対して、非特許文献9で用いられる金属錯体の合成方法によって、下記一般式(3)に示される金属アリル錯体を合成することができる。なお、式(3)中「)〉」は「π-アリル構造」を意味する。
【0047】
【0048】
ここで、上記式(3)中のMはNi又はPdである。R1~R6は一般式(1)で記載したものと同様である。また、R20は、水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基である。水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基については、上記式(1)で記載したものと同様である。
R20はオレフィンの挿入反応を促進させる観点から、水素、または有機基が好ましく、水素、または炭素数1-4の炭化水素基がより好ましい。
Xはカウンターアニオンである。カウンターアニオンについては、上記式(2)で記載したものと同様である。
一般式(3)で示される金属アリル錯体は、一般式(1)で表される本発明の化合物(配位子)に対して、従来用いられる金属錯体の合成方法によって合成することができる。
より具体的には、下記式(7)に示す方法によって、本発明の化合物(1)から、式(3)に記載される金属アリル錯体を合成することができる。なお、ここでは、金属としてNiを用いた例を示したが、Pdでも同様の反応にてパラジウム錯体を得ることができる。
【0049】
【0050】
本発明の第三の態様は、下記一般式(4)に示される金属錯体である。
【0051】
【0052】
一般式(4)中、MはNi又はPd、R1~R6は前記一般式(1)に記載のものと同じであり、R30は水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基であり、単座でMに配位する。R30は重合反応の開始基であることから、効率的にモノマーのオレフィンに付加することが求められる。以上の観点から、好ましくは金属―炭素結合を与えるものであり、アルキル基やアリール基がより好ましい。
Lは中性のルイス塩基であり、Xはカウンターアニオンであり、前記したものと同様である。R30における水素、ハロゲン、ヘテロ原子を含む基又は有機基についても、R10と同様である。
【0053】
[オレフィン重合用触媒]
本発明のオレフィン重合用触媒は、前記金属錯体(2)~(4)のいずれかを含む。前記したように、一般式(2)~(4)で表される金属錯体は、一般式(1)で表される化合物と遷移金属錯体成分との反応によって、形成させることができる。一般式(2)~(4)で表される金属錯体を触媒成分に用いる場合、単離したものを用いてもよいし、反応の系中で発生させたものを用いてもよい。さらに金属錯体を担体に担持してもよく、担体への担持は重合に使用する反応器中で、これらのモノマーの存在下または非存在下で行ってもよいし、重合に使用する反応器とは別の容器中で行ってもよい。
【0054】
使用可能な担体としては、本発明の主旨をそこなわない限りにおいて、任意の担体を用いることができる。一般に、無機酸化物やポリマー担体が好適に使用できる。具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2-Al2O3、SiO2-V2O5、SiO2-TiO2、SiO2-MgO、SiO2-Cr2O3等の混合酸化物も使用することができ、無機ケイ酸塩、ポリエチレン担体、ポリプロピレン担体、ポリスチレン担体、ポリアクリル酸担体、ポリメタクリル酸担体、ポリアクリル酸エステル担体、ポリエステル担体、ポリアミド担体、ポリイミド担体などが使用可能である。これらの担体については、粒径、粒径分布、細孔容積、比表面積などに特に制限はなく、任意のものが使用可能である。
【0055】
無機ケイ酸塩としては、粘土、粘土鉱物、ゼオライト、珪藻土等が使用可能である。これらは、合成品を用いてもよいし、天然に産出する鉱物を用いてもよい。
粘土、粘土鉱物の具体例としては、アロフェン等のアロフェン族、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、アタパルジャイト、セピオライト、パイゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト、リョクデイ石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
人工合成物としては、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライト等が挙げられる。
これら具体例のうち好ましくは、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられ、特に好ましくはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられる。
【0056】
これらの担体は、そのまま用いてもよいが、塩酸、硝酸、硫酸等による酸処理および/または、LiCl、NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、Li2SO4、MgSO4、ZnSO4、Ti(SO4)2、Zr(SO4)2、Al2(SO4)3等の塩類処理を行ってもよい。該処理において、対応する酸と塩基を混合して反応系内で塩を生成させて処理を行ってもよい。また粉砕や造粒等の形状制御や乾燥処理を行ってもよい。
【0057】
[(共)重合体の製造方法]
本発明のオレフィン(共)重合体の製造方法の一実施形態は、上記オレフィン重合用触媒の存在下で、(a)オレフィンを重合又は共重合するものである。なお、本発明において「重合」とは、1種類のモノマーの単独重合と、複数種のモノマーの共重合を総称するものであり、特に両者を区別する必要がない場合には、総称して「重合」と記載する。
本発明における(a)成分は、エチレン、もしくは一般式:CH2=CHR13で表されるオレフィンである。ここで、R13は、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基であり、分岐、環、および/または不飽和結合を有していてもよい。R13の炭素数が20より大きいと、十分な重合活性が発現しない傾向がある。このため、好ましい(a)成分としては、エチレン(R13が水素原子)またはR13が炭素数1~10の炭化水素基であるα-オレフィンが挙げられる。
さらに好ましい(a)成分としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキセン、スチレンが挙げられる。なお、単独の(a)成分を使用してもよいし、複数の(a)成分を併用してもよい。
【0058】
本発明のα-オレフィン重合体の製造方法の他の実施形態は、上記重合用の触媒成分の存在下に、(a)オレフィンと、(b)極性モノマーとを共重合するものである。
(a)成分は上記に記載のものであり、単独の(a)成分でもよいし、複数の(a)成分でもよい
本発明の(b)成分の極性モノマーは下記の(i)ビニルモノマー、(ii)(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(iii)アリルモノマーである。本発明の金属錯体触媒は、特にオレフィンと極性基含有ビニルモノマーとを共重合させるのに有効な触媒である。
【0059】
(i)のビニルモノマーとしては含ハロゲン、含窒素、含酸素、含硫黄等の極性基を有するものであり、本発明では、特に酸素原子及び/又は窒素原子を含有するビニルモノマーであることが好ましい。その他、ハロゲン、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ホルミル基、エステル基、エポキシ基、ニトリル基等を含有するビニルモノマーに対しても有効である。
具体的には、5-ヘキセン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、10-ウンデセン酸メチル、10-ウンデセン酸エチル、10-ウンデセン-1-オール、12-トリデセン-2-オール、10-ウンデカノイック酸、メチル-9-デセネート、t-ブチル-10-ウンデセネート、1,1-ジメチル-2-プロペン-1-オール、9-デセン-1-オール、3-ブテン酸、3-ブテン-1-オール、N-(3-ブテン-1-イル)フタルイミド、5-ヘキセン酸、5-ヘキセン酸メチル、5-ヘキセン-2-オン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。これらの中でも、特に10-ウンデセン酸メチル、10-ウンデセン酸エチル等のウンデセン酸エステルが好ましい。
【0060】
(ii)の(メタ)アクリル酸エステルモノマーは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
【0061】
(iii)のアリルモノマーは炭素数3のアリルモノマー(プロぺニルモノマー)、アリル基を有する、炭素数4以上のアリル系モノマーが例示される。アリルモノマーとしては、含ハロゲン、含窒素、含酸素、含硫黄等の極性基を有するアリルモノマーが好ましく、特にハロゲン、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ホルミル基、エステル基、エポキシ基、ニトリル基等を含有するビニルモノマーであることが好ましい。
好ましい具体例として、酢酸アリル、アリルアルコール、アリルアミン、N-アリルアニリン、N-t-ブトキシカルボニル-N-アリルアミン、N-ベンジルオキシカルボニル-N-アリルアミン、N-アリル-N-ベンジルアミン、塩化アリル、臭化アリル、アリルエーテル、ジアリルエーテルなどが挙げられる。
【0062】
本発明において、重合形式に特に制限はない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、または、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。また、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。
本重合反応に溶媒を用いて行う場合、溶媒としてはプロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶媒や液化α-オレフィン等の液体、また、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、安息香酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、ホルムアミド、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のような極性溶媒の存在下あるいは非存在下に行われる。また、ここで記載した液体化合物の混合物を溶媒として使用してもよい。さらに、イオン液体も溶媒として使用可能である。
【0063】
重合温度、重合圧力および重合時間に、特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。すなわち、重合温度は、通常-20℃~290℃、好ましくは0℃~250℃、重合圧力は、0.1MPa~300MPa、好ましくは、0.3MPa~250MPa、重合時間は、0.1分~10時間、好ましくは、0.5分~7時間、さらに好ましくは1分~6時間の範囲から選ぶことができる。
【0064】
本発明において、重合は、一般に不活性ガス雰囲気下で行われる。例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素雰囲気が使用でき、窒素雰囲気が好ましく使用される。なお、少量の酸素や空気の混入があってもよい。
重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じてさまざまな供給法をとることができる。たとえばバッチ重合の場合、あらかじめ所定量のモノマーを重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を重合反応器に連続的に、または間歇的に供給し、重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
【0065】
特に本発明により得られる極性基を含有する共重合体は、共重合体の極性基にもとづく効果により、良好な塗装性、印刷性、帯電防止性、無機フィラー分散性、他樹脂との接着性、他樹脂との相溶化能などが発現する。こうした性質を利用して、本発明の共重合体は、さまざまな用途に使用することができる。例えば、フィルム、シート、接着性樹脂、バインダー、相溶化剤、ワックスなどとして使用可能である。
【0066】
本発明で用いられる遷移金属化合物については、一般式(1)で示される化合物と反応して、重合能を有する錯体を形成可能なものが使用される。これらは、プリカーサー(前駆体)とも呼ばれることがある。例えばニッケルを含む遷移金属錯体として、[Ni(allyl)X]2や(tmeda)NiArXがある。なお、tmedaはテトラメチルエチレンジアミンを表す。
本発明で用いられるアニオン交換試薬については、一般式(1)と遷移金属錯体と反応して、重合能を有する錯体を形成可能なものが使用される。例えばM[テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート](M=アルカリ金属)がある。
【0067】
本発明において、錯体形成反応は重合に使用する反応器とは別の容器で予め行い得られた一般式[II]の錯体を重合に供してもよい。また錯体形成反応は重合容器のなかで行ってもよく、この際に重合中に容器内に存在する成分が、錯体形成時に存在していても存在していなくてもよい。また一般式[I]および[II]で示される成分については、それぞれ単独の成分を用いてもよいし、それぞれ複数種の成分を併用してもよい。特に、分子量分布やコモノマー分布を広げる目的には、複数種の併用が有用である。
【0068】
[重合用の触媒成分]
本発明のオレフィン重合用触媒は上記の金属錯体触媒成分を含むが、1種類の金属錯体のみを用いてもよいし、2種類以上の金属錯体を組み合わせて用いてもよい。分子量分布を広げる目的で複数種類の金属錯体が用いられる場合もある。また金属錯体触媒に加えて、次の(A)、(B)の成分を助触媒や添加剤として含んでいてもよい。また(A)や(B)の成分を加える場合、重合触媒成分との混合は、重合に使用する反応器中で、これらのモノマーの存在下または非存在下で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。
【0069】
成分(A):金属錯体触媒成分と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩
成分(B):有機アルミニウム化合物
【0070】
成分(A)の一つとして、有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中に、Al-O-Al結合を有し、その結合数は通常1~100、好ましくは1~50個の範囲にある。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常、有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる生成物である。
有機アルミニウムと水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
【0071】
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物は、下記一般式で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
(R40)tAl(Q1)(3-t)(式中、R40は、炭素数1~18、好ましくは1~12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基を示し、Q1は、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。)
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのいずれでも差し支えないが、メチル基、イソブチル基が好ましく、メチル基であることが特に好ましい。上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
【0072】
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1~1.2/1、特に、0.5/1~1/1であることが好ましく、反応温度は、通常-70~100℃、好ましくは-20~20℃の範囲である。反応時間は、通常5分~24時間、好ましくは10分~5時間の範囲で選ばれる。
なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常、アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサン(実質的にメチルアルミノキサン(MAO)からなるものを含む)は、有機アルミニウムオキシ化合物として、好適である。MAO溶液を溶媒留去して得られた固体状のドライメチルアルミノキサン(DMAO)もまた好適である。
有機アルミニウムオキシ化合物としては、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶解又は分散させた溶液としたものを用いてもよい。
【0073】
成分(B)として使用される、有機アルミニウム化合物の一例は、次の一般式で表される。
Al(R50)a(Q2)(3-a) 一般式中、R50は、炭素数1~20の炭化水素基、(Q2)は、水素、ハロゲン、アルコキシ基又はシロキシ基を示し、aは0より大きく3以下の数を示す。
【0074】
上記一般式で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ(n-オクチル)アルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲン又はアルコキシ含有アルキルアルミニウムが挙げられる。これらの中では、トリ(n-オクチル)アルミニウムが好ましい。また、上記の有機アルミニウム化合物を2種以上併用してもよい。
また、上記のアルミニウム化合物をアルコール、フェノールなどで変性して用いてもよい。これらの変性剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、フェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノールなどが例示され、好ましい具体例は、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノールである。
【0075】
本発明に係るオレフィン重合用触媒の調製法においては、金属錯体触媒成分は必須であり、成分(A)や成分(B)は必要に応じて添加される。
例えば、金属錯体触媒は一般式(2)~(4)で示されるものであるが、R10,R2
0,R30が重合を開始させる置換基、例えばアルキル基、アリール基、アリル基である場合、成分(A)や(B)は必ずしも必須ではない。一方で、R10,R20,R30が重合を開始させない置換基の場合は、成分(A)や(B)を加えることにより金属錯体上に重合開始基を導入する必要がある。
また、R10,R20,R30が重合を開始させる置換基であった場合でも、分子量や共重合比を変える目的で、添加剤として(A)や(B)を加えてもよい。
【0076】
[エチレン/ウンデセン酸エステル共重合体]
本発明の金属錯体触媒を用いた配位重合により得られるエチレン/ウンデセン酸エステル共重合体は、アルキル分岐が3/1000C以下と極めて小さい。これは、本発明の共重合体が、ニッケルやパラジウム等の高周期系の重合触媒に頻繁に見られる現象であるチェーンウォークが極めて少ないためと考えられる。チェーンウォークは、ポリマーが成長する「金属」部分がポリマー鎖をわたり歩くことで、アルキルブランチ構造が形成されることに起因する。アルキルブランチ構造はポリマーの機械物性を下げる原因となるものであり、本発明のエチレン/ウンデセン酸エステル共重合体は、結晶性が維持され、高い融点を維持し、良好な機械特性を有することがわかる。
すなわち、当該金属錯体触媒によって製造された本発明のポリマーは、チェーンウォーク由来のアルキル分岐が非常に少ないため、アルキル分岐量が多いものに比べて、ポリマーの融点が高く、良好な機械特性を有するものである。
【0077】
上記に記載のエチレン/ウンデセン酸エステル共重合体としてチェーンウォーク由来のアルキル分岐の量は3/1000C以下であり、好ましくは2/1000C以下であり、さらに好ましくは1/1000C以下である。
また本発明の金属錯体触媒を用いた配位重合により得られるエチレン/ウンデセン酸エステル共重合体におけるエステル基は極性官能基であるため、ポリマーの接着性や意匠性を向上させることにつながると考えられる。またエステル基を化学変換反応により別の極性基へ誘導することも可能になり、新規機能性ポリオレフィンの製造に繋がることが期待できる。
すなわち、当該金属錯体触媒によって製造された本発明のポリマーは、ウンデセン酸エステル由来のエステル基を有しており、極性官能基由来の機能性を有するものである。
【0078】
上記に記載のエチレン/ウンデセン酸エステル共重合体として、ウンデセン酸エステルの含量は2mol%以上であり、好ましくは4mol%以上であり、さらに好ましくは7mol%以上であり、特に好ましくは8mol%以上である。
エチレン/ウンデセン酸エステル共重合体におけるエステル基の含量が多いほど上記に記載の極性官能基由来の機能が現れる一方で、ウンデセン酸エステルの含量が多いと主鎖に対する分岐構造が増えることになるから、ポリマーの結晶性が下がることで融点が減少し、機械物性が下がることが考えられる。その観点からポリマーの上記に記載のエチレン/ウンデセン酸エステル共重合体として、ウンデセン酸エステルの含量は50mol%以下であり、好ましくは30mol%以下であり、さらに好ましくは15mol%以下である。
【実施例0079】
以下の実施例および比較例において本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
以下の合成例や実施例でとくに断りのない限り、操作は精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は脱水・脱酸素したものを用いた。
【0080】
1.評価法
(1)重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mn
以下のGPC測定により求めた。具体的には、以下の手順で行った。
はじめに、試料約20mgをポリマーラボラトリー社製高温GPC用前処理装置PL-SP 260VS用のバイアル瓶に採取し、安定剤としてBHTを含有するo-ジクロロベンゼン(BHT濃度=0.5g/L)を加え、ポリマー濃度が0.1質量%になるように調整した。ポリマーを上記高温GPC用前処理装置PL-SP 260VS中で135℃に加熱して溶解させ、グラスフィルターにて濾過して試料を調製した。なお、本発明におけるGPC測定において、グラスフィルターに捕捉されたポリマーはなかった。
次に、カラムとして、東ソー社製TSKgel GMH-HT(30cm×4本)およびRI検出器を装着したウォーターズ社製GPCV 2000を使用してGPC測定を行った。測定条件としては、試料溶液注入量:約520μL、カラム温度:135℃、溶媒:o-ジクロロベンゼン、流量:1.0mL/minを採用した。
分子量の算出は以下のように行った。すなわち、標準試料として市販の単分散のポリスチレンを使用し、該ポリスチレン標準試料およびエチレン系重合体の粘度式から、保持時間と分子量に関する校正曲線を作成し、該校正曲線に基づいて分子量の算出を行った。なお、粘度式としては、[η]=K×Mαを使用し、ポリスチレンに対しては、K=1.38E-4、α=0.70を使用し、エチレン系重合体に対しては、K=4.77E-4、α=0.70を使用し、プロピレン系重合体に対しては、K=1.03E-4、α=0.78を使用した。
【0081】
(2)触媒活性
触媒活性(Vp)は、重合反応により得られた重合体の量(g)、重合反応に用いられた触媒の量(単位:mol)、重合反応時間(h)を用いて以下の計算式(i)で与えられる。
【0082】
【0083】
(3)重合体中のウンデセン酸エステル成分の含量
重合体中のウンデセン酸エステル成分の含量(Xm)は以下の計算式(ii)で与えられる。
【0084】
【0085】
重合体中のエチレン成分とウンデセン酸エステル成分の量は1H-NMR測定により求めた。1H-NMR測定は試料約30mgをオルトジクロロベンゼン-d4に130℃で加熱しながら溶解させ、130℃においてNMR測定した。なお、本重溶媒由来のシグナルは7.11ppmと7.39ppmとした。エチレン/ウンデセン酸メチル共重合体において、3.73ppmにメチルエステルのメチル基のシグナルが観測された。またエチレン/ウンデセン酸エチル共重合体において、4.24ppmにエチルエステルのメチレン基のシグナルが観測された。
また、ウンデセン酸エステルの量は得られたポリマーをフィルム上に成型しIR測定することで、1655―1836cm-1に相当するカルボニル基の吸収から算出することも可能である。この場合、あらかじめ、NMRから得られた含量と、IR測定によるカルボニル基由来の吸収量を基に検量線を引くことで、次回以降はウンデセン酸エステルの量をIR測定により算出することが可能になる。
【0086】
(4)チェーンウォーク由来のアルキル分岐量の導出
1000C単位において、チェーンウォーク由来のアルキル分岐の量は以下の計算式(iii)で与えられる。
【0087】
【0088】
重合体中にはポリエチレン構造を主鎖として、ウンデセン酸エステル由来の分岐とチェーンウォーク由来のアルキル分岐が存在しており、それぞれ1H―NMRと13C―NMR測定により求めた。13C―NMR測定は試料約30mgをオルトジクロロベンゼン-d4に130℃で加熱しながら溶解させ、130℃においてNMR測定した。また式(iii)の説明を以下の[i]―[v]に記載する。
[i]エチレン/ウンデセン酸エステル共重合体においてはウンデセン酸エステルが低含量の範囲において組成式をCnH2nと近似して考える。
[ii]1H―NMRの積分値の合計を2000Hで規格化する。
[iii]1H―NMRの1.05ppmのシグナル(アルキル分岐と飽和末端)の積分値を[I1]とする。
[iv]13C NMRにおいて、チェーンウォーク由来のアルキル分岐の末端Me基のシグナルの合計積分値を[I2]とする。例えば、Me基は19.8ppmのシグナルであり、Et基の末端Me基のシグナルは11.1ppmであり、それより炭素鎖が長いアルキル分岐の末端Me基のシグナルは14.5ppm付近に観測される。
[v]13C―NMRの13.8ppmのシグナル(主鎖の飽和末端のMe基)の積分値を[I3]とする。
【0089】
2.配位子の合成
合成例1:ピリジンオキシドホスフィンX-110の合成
以下の反応式に従って、ピリジンオキシドホスフィンX-110を合成した。
(1)化合物2の合成
【化15】
【0090】
窒素雰囲気下において1,3―ジメトキシベンゼン(上記式中の1)(20g,144.8mmol)をフラスコに取り、THF(200mL)に溶解させた。0℃でn-BuLi(2.5M、59.1mL、1当量)を滴下した。反応溶液を20℃まで昇温し2時間撹拌すると、反応溶液が黄色に変化した。反応溶液に対してI2(40.4g、159.2mmol、1.1当量)を0℃下で加え、20℃で14時間撹拌することで黄色の懸濁液を得た。飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(200mL)を加えたのち、THFを除くため濃縮操作をした。固体が析出したため、濾別して灰色の固体を得た。固体をメタノール(100mL)と有機エーテル(100mL)で洗浄することで、目的物2(76g、287.8mmol、99%)の黄色固体を得た。
【0091】
【0092】
窒素雰囲気下において、化合物2(15g,56.8mmol)のTHF溶液(50mL)に対して、iPrMgBr(2M in THF,29.8mL,1.05当量)を0℃で加えた。反応溶液を20℃で2時間撹拌すると黄色溶液に変化した。反応溶液に対して、PCl3(3.90g,28.4mmol,0.5当量)を-78℃で加え、20℃に昇温して1.5時間撹拌することで黄色の懸濁液を得た(化合物3の懸濁液)。続いて、LiAlH4(2.37g,62.5mol,1.1当量)を0℃で加え、20℃に昇温後12時間撹拌すると白色の懸濁液に変化した。反応溶液を0℃に冷却し、蒸留水(3mL)、15%NaOH水溶液(3mL)、蒸留水(9mL)の順で加えた。室温で1時間撹拌した後、反応溶液をフィルターろ過し、ろ液を濃縮することで白色の固体を得た。固体を水(100mL)で洗浄し、ジクロロメタン(200mLx2)で抽出した。
有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過後濃縮した。得られた固体を有機エーテル(70mL)で洗浄し、シリカカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=5:1)で精製することで、化合物4(7.9g,25.8mmol,45%)を得た。
【0093】
【0094】
窒素雰囲気下において、フラスコにMg(3.22g,132.69mmol)をとり、ヒートガンで10分間加熱した。フラスコ内を真空置換して、さらに撹拌子を用いてMgを激しく撹拌することでMgの活性化を行った。無水THF(10mL)と1,2―ジブロモエタン(62.32mg,331.72μmol)を加えた。しばらく撹拌した後、化合物5(8.0g,33.2mmol,1当量)の無水THF溶液(40mL)をフラスコにゆっくりと加えた。反応溶液を20℃で30分間撹拌することで化合物6のTHF溶液を得た。
【0095】
【0096】
窒素雰囲気下において、CuI(9.29g,48.8mmol)を無水THF(5mL)に溶解させた。化合物6のTHF溶液(0.63M,77.4mL,48.8mmol)を20℃で10分間かけて滴下した。その後、化合物7(8.0g,48.8mmol)を20℃で滴下し、0℃で12時間撹拌することで黄色の反応溶液を得た。反応溶液を水(50mL)に加えて、EtOAc(50mLx2)で抽出した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮することで粗生成物を得た。シリカカラムクロマトグラフィー(EtOAc:PE=50:1)で精製することで、8(1.9g,6.6mmol,13%)で化合物8の黄色固体を得た。
【0097】
【0098】
窒素雰囲気下において、化合物8(1.5g,5.18mmol)、化合物4(1.90g,6.21mmol,1.2当量), DPEphos(557.5mg,1.04mmol,0.2当量)、Cs2CO3(5.06g,15.5mmol,3当量)、Pd2(dba)3 (474.0mg,517.6μmol,0.1当量)を脱気したジオキサン(20mL)中で混合した。反応溶液を110℃、72時間窒素下で加熱すると、茶色懸濁液を得た。反応溶液を濃縮し、得られた茶色オイルをシリカカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAcグラジエント)で精製することでX-110(600mg,1.07mmol,21%収率)の黄色固体を得た。以下のNMRの測定結果から、X-110であることを確認した。
1H-NMR(CDCl3,δ, ppm):0.99 (d,6H),1.07(d,6H),2.45(sept,2H),3.51(s,12H),6.42(d,4H),6.9-7.3(m,8H).31P{1H}NMR(CDCl3,δ,ppm):-63.4(s).
【0099】
合成例2:ピリジンオキシドホスフィンX-140の合成
以下の反応式に従って、ピリジンオキシドホスフィンX-140を合成した。
【0100】
【0101】
フラスコに化合物9(1.0g,6.1mmol)をとり、CuI(46.5mg,243.9μmol)のTHF溶液(5mL)を加えた。反応溶液にtBuMgClのTHF溶液(1.7M,5.4mL,1.5当量)を0℃で滴下した。反応溶液を20℃まで昇温して12時間20℃で撹拌すると、黄色の溶液へと変化した。反応溶液を蒸留水(100mL)の入った容器に移し、EtOAc(100mLx3)で抽出した。有機層を合わせて、ブライン(200mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、有機層を濃縮することで粗生成物を得た。クルードをシリカカラムクロマトグラフィー(EtOAc:PEグラジエント)で精製することで化合物10(0.48g,2.59mmol,42%)を得た。
【0102】
【0103】
窒素雰囲気下において、化合物10(1.0g,5.39mmol)、化合物4(1.98g,6.46mmol,1.2当量)、Pd2(dba)3(493.3mg,538.7μmol,0.1当量)、DPEphos(580.2mg,1.08mmol,0.2当量)、tBuONA(1.04g, 10.8mmol, 2当量)をトルエン(40mL)中で混合した。反応溶液を110℃、16時間加熱することで茶色の懸濁液を得た。懸濁液を濃縮し茶色の粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc:PEグラジエント)で精製することで、X-140(0.95g,2.09mmol,39%)を得た。以下のNMRの測定結果から、X-140であることを確認した。
1H NMR (CDCl3,δ,ppm):1.44(s,9H),3.47(s,12H),6.40(d,4H),6.7-7.2(m,5H)
31P{1H}NMR(CDCl3,δ,ppm):-64.2(s).
【0104】
3.金属錯体の製造
製造例1[(X-110)Ni(allyl)][BArF]の製造
【化22】
【0105】
窒素雰囲気下において、X-110(559.6mg,1.0mmol)、[Ni(allyl)Cl]2(135.22mg,0.5mmol)、NaBArF(886.20mg,1.0mmol)をそれぞれフラスコに取り、CH2Cl2(5mL)をそれぞれに加えた。X-110とNaBArFの溶液を混合し、その混合液を[Ni(allyl)Cl]2溶液に加えた。室温で30分間撹拌し、セライトろ過することで橙色の溶液を得た。またセライトを10mLのCH2Cl2で洗い流し、ろ液とともに回収した。ろ液を減圧留去することで、[(X-110)Ni(allyl)][BArF]の橙色の粉末を得た。
【0106】
製造例2[(X-110)NiAr(py)][BArF]の製造
【化23】
【0107】
窒素雰囲気下において、X-110(500mg,0.893mmol)、(tmeda)NiArBr(Ar=4-トリフルオロフェニル基)(357mg,0.893mmol)、NaBArF(791mg,0.893mmol)をそれぞれフラスコに取り、CH2Cl2(5mL)をそれぞれに加えた。X-110とNaBArFの溶液を混合し、その混合液を(tmeda)NiArBr溶液に加えた。室温で30分間撹拌し、セライトろ過することで橙色の溶液を得た。またセライトを10mLのCH2Cl2で洗い流し、ろ液とともに回収した。ろ液を減圧留去することで、橙色の粉末を得た。得られた黄色粉末600mgを別のフラスコに分けて、トルエンで溶解させたのちにピリジン(272mg)を加えた。室温で30分間撹拌後、減圧留去することで、[(X-110)NiAr(py)][BArF]の黄色粉末を得た。
【0108】
製造例3[(X-140)Ni(allyl)][BArF]の製造
【化24】
【0109】
窒素雰囲気下において、X-140(455mg,1.0mmol)、[Ni(allyl)Cl]2(135.22mg,0.5mmol)、NaBArF(886.20mg,1.0mmol)をそれぞれフラスコに取り、CH2Cl2(5mL)をそれぞれに加えた。X-140とNaBArFの溶液を混合し、その混合液を[Ni(allyl)Cl]2溶液に加えた。室温で30分間撹拌し、セライトろ過することで橙色の溶液を得た。またセライトを10mLのCH2Cl2で洗い流し、ろ液とともに回収した。ろ液を減圧留去することで、[(X-140)Ni(allyl)][BArF]の橙色の粉末を得た。
【0110】
製造例4[(X-140)NiAr(py)][BArF]の製造
【化25】
【0111】
窒素雰囲気下において、X-140(455mg,1.0mmol)、(tmeda)NiArBr(Ar=4-トリフルオロフェニル基)(400mg,1.0mmol)、NaBArF(886mg,1.0mmol)をそれぞれフラスコに取り、CH2Cl2
(5mL)をそれぞれに加えた。X-140とNaBArFの溶液を混合し、その混合液を(tmeda)NiArBr溶液に加えた。室温で30分間撹拌し、セライトろ過することで橙色の溶液を得た。またセライトを10mLのCH2Cl2で洗い流し、ろ液とともに回収した。ろ液を減圧留去することで、橙色の粉末を得た。得られた橙色粉末500mgを別のフラスコに分けて、トルエンで溶解させたのちにピリジン(250mg)を加えた。室温で30分間撹拌後、減圧留去することで、[(X-140)NiAr(py)][BArF]の黄色粉末を得た。
【0112】
比較製造例1
比較触媒として、[(IM-5D)Ni(allyl)][BArF]を用いた。合成例を以下に記す。
【化26】
【0113】
【0114】
1-ナフチルアミン(反応式中の1)(50g、349.2mmol、49.0mL、1equiv.)とピコリン酸(反応式中の1A)(47.29g、384.12mmol、1.1equiv.)をジクロロメタン(30mL)に溶解させた。この溶液に対して、HATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩)(146.05g、384.12mmol、1.1equiv.)とDIEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)(90.26g、698.40mmol、121.65mL、2equiv.)を加え、窒素下のもと反応溶液を20℃で12時間撹拌した。反応溶液を水(500mL)に注ぎ込み、ジクロロメタンで抽出し(500mLで2回)、集めた有機層をブライン(500mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を濃縮し、得られた固体をEtOAc(10mL)で洗浄することで、化合物2(86.7g)の粗生成物を得た。
【0115】
化合物2(20g、80.55mmol、1equiv.)、3,5-ジメチル-1-ヨードベンゼン(反応式中の3)(73.09g、314.97mmol、45.40mL、3.9equiv.)、酢酸銀(20.17g、120.83mmol、6.19mL、1.5equiv.)、酢酸パラジウム(1.17g、5.21mmol)を混合し、140℃、24時間撹拌した。ジクロロメタン(200mL)を加え懸濁させ、ろ過し、ジクロロメタンで洗浄した(100mLで2回)。得られた固体を乾燥させることで粗生成物を得た。粗生成物はシリカゲルカラム(展開溶媒に、石油エーテル/酢酸エチル10:1)により精製し、化合物4(28g、79.45mmol、99%)の茶色固体を得た。
【0116】
化合物4をNaOHエタノール水溶液(エタノール;200mL、水;24mL、NaOH;31.78g、794.49mmol)中で90℃で加熱還流した。反応溶液を室温まで冷却し溶媒を濃縮した。残渣をジクロロメタン(150mL)で懸濁させてろ過した。ろ過物を水(200mLで3回)とブライン(200mL)で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を濃縮することで、精製前のX-94を得た。得られた固体をヘキサン:EtOAc(10:1、77mLで2回)洗浄することで、精製されたX‐94(6.0g、24.28mmol)を得た。
【0117】
50mLのフラスコにX‐94(2g、8.09mmol、1equiv.)とジフェニルメタノール(2.98g、16.17mmol、2equiv. 反応式中の化合物5)を混合し、120℃で加熱した。塩化亜鉛(551.08mg、4.04mmol)の濃塩酸溶液(796mg、8.09mmol、37%、0.5equiv.)をフラスコに加えた。加えた直後、発熱と激しい発泡を確認した。反応溶液を160℃、90分間加熱すると茶色の溶液に変化した。反応溶液を室温まで冷却し、ジクロロメタン(100mL)を加えて懸濁させた。有機層を取り出し、水(100mLで2回)、ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、有機層を濃縮することで粗生成物を得た。分取カラムにより精製されたX‐95を得た(3.00g、5.17mmol、64%)。1H-NMRによる同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3,δ,ppm): 2.32(s,6H),3.75(brs,2H), 5.46(s,1H),6.08(s,1H),6.36(s,1H),6.90-7.00(m,9H),7.02(s,2H),7.05-7.20(m,13H),7.27(m,1H),7.91(d,J=8.4 Hz,1H).
【0118】
【0119】
1-メチルイサチン(166mg、1.03mmol)、X‐95(600mg、1.03mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、ギ酸を数滴加えた。40時間加熱還流した。生成物をシリカゲルカラム(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル グラジエント)で精製しIM-5D(598、0.922mmol、90%)を得た。1H-NMRによる同定結果を以下に示す。
1H NMR(CDCl3,δ,ppm): 1.82(s,3H),2.43(s,3H),3.02(s,3H),5.24(d,J=8.1Hz),5.62(s,1H),5.87(s,1H),6.1-8.1(m,29H).
【0120】
(3)[(IM-5D)Ni(allyl)][BArF]の合成
【化29】
【0121】
フラスコにIM-5D、[Ni(allyl)Cl]2、NaBArF(BArF=3,5-(CF3)2C6H3)をそれぞれ取り、ジクロロメタン(5mL)をそれぞれに加えた。配位子(IM-5D)とNaBArFの溶液をあらかじめ混合し、混合した溶液を[Ni(allyl)Cl]2の入ったフラスコに加えた。室温で1h撹拌した後、セライトろ過した。溶媒を留去し、金属錯体(カルボニルイミン錯体)を得た。1H-NMRによる同定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3,δ,ppm):1.63(s,3H),2.00(d,J=12.0 Hz,1H),2.22(d,J=14.0 Hz,1H),2.48(s,3H),2.87(brs,1H),3.02(s,3H),3.13(brs,1H), 5.58(m,1H),5.72(s,1H),6.07(s,1H),6.10(d,J=7.7 Hz,1H),6.26(s,1H),6.65-6.74(m,3H),6.75-6.89(m,7H),6.93-7.02(m,5H),7.15-7.26(m,9H),7.28(d,J=6.9 Hz,1H),7.34(t,J=7.8Hz,1H),7.47(t,7.8 Hz,1H),7.49(s,4H),7.70(s,8H),8.14(d,J=8.4 Hz,1H).
【0122】
実施例1~4及び比較例1
上記製造例1~4及び比較製造例1で製造した金属錯体触媒を用いて、以下の重合反応における触媒活性で評価した。具体的には、触媒活性は、エチレン/ウンデセン酸エチル共重合の反応で評価した。各製造例及び比較製造例で製造した金属錯体触媒を用いて、以下の反応式に示すエチレン/ウンデセン酸エチル共重合の反応で評価した。
【0123】
【0124】
内容積2Lの誘導撹拌式オートクレーブを窒素置換し、脱水トルエン(400mL)、脱水ウンデセン酸エチル(73mL、300mmol)を導入した。触媒フィーダーに表1に記載の錯体からなる錯体触媒(20μmol)をジクロロメタン(5mL)に希釈したものを加えた。オートクレーブを70℃に昇温し、昇温過程で触媒溶液をエチレンガスを用いて導入した。混合物を撹拌しながら、70℃で1時間撹拌し、その間エチレン圧は1MPaを維持するように、適宜エチレンを補充した。反応後室温まで冷却し、得られた懸濁液にエタノールを加えることでポリマーを析出させた。吸引ろ過し、固体をエタノールとアセトンで洗浄し、加熱乾燥をおこない、重合体を得た。得られたポリマーの重量を天秤にて秤量し、上述の計算式(i)に基づいて触媒活性を算出した。
また上述の方法により、重量平均分子量Mw、分子量分布Mw/Mnを測定し、上述の計算式(ii)により含量を決定した。これらの結果を表3に示す。
【0125】
【0126】
実施例5~6及び比較例2
表4に示す金属錯体を用いて、エチレンと脱水ウンデセン酸メチルの重合反応を行った。反応条件は、表1の条件から、ウンデセン酸エチルをウンデセン酸メチルに変更した以外は同じである。比較例2は、従来技術である下記錯体Aを用いて同様の重合反応を行った結果である(非特許文献9を参照)。なお、比較例2の反応条件は、上記反応条件と異なり、相違部分は以下である。脱水トルエン量が25mL、脱水ウンデセン酸エチルの量が0.5M、錯体触媒の量が10μmol、エチレン圧0.8MPa、反応時間120分間である。
【0127】
【0128】
【0129】
実施例7~8
表5に示す金属錯体を用いて、エチレンと脱水ウンデセン酸エチルの重合反応を行った。反応条件は、表1の条件において、ウンデセン酸エチルの添加量を300mmolから829mmol、1326mmolに変更した以外は同じである。
【0130】
【0131】
表3から、本発明の金属錯体を用いることで、エチレン/ウンデセン酸エチルの共重合体が高い活性で得られることがわかる。特に、実施例2に記載の金属錯体を用いた重合反応では、5.45×106という高活性が得られることがわかった。
また、ウンデセン酸エチル/(ウンデセン酸エチル+エチレン)の比率(含量)が高く共重合性が高いことがわかる。特に、実施例2及び4の金属錯体では、含量が高く、高い共重合性を示した。
さらに、アルキル分岐量が低く、メチル分岐のみしか観察されなかった。特に、比較例1との比較において、本発明の金属錯体触媒のアルキル分岐量の低さは際立っていることがわかる。これは融点の違いとしても認識することができる。
【0132】
さらに、表4の結果から、エチレン/ウンデセン酸メチルの共重合体も高い活性で得られることが分かり、特に、実施例6に記載の金属触媒を用いることで、比較例2に示される従来の金属錯体触媒よりも高い活性を示すことが分かる。また、実施例5や6と比較例2で得られた共重合体の分子量から、従来の金属錯体触媒と比較して、分子量を大きくすることができることがわかる。
また、表5の結果から、ウンデセン酸エチルの仕込み量を増やすことで、得られる共重合体に含まれるウンデセン酸エチル成分量が増加することが分かる。
本発明の金属錯体を用いることにより、極性基を含有することで発現する新規機能性ポリオレフィンを製造可能となるため、特に接着性や意匠性が必要な用途において産業上極めて有用である。