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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080770
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20240610BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240610BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/19
A61K8/46
A61K8/44
A61Q11/00
A61K8/86
A61K8/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193988
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】片桐 百恵
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB131
4C083AB132
4C083AB172
4C083AB282
4C083AB472
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC781
4C083AC782
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC862
4C083AD282
4C083AD532
4C083AD632
4C083BB04
4C083BB05
4C083CC41
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】本開示の目的は、第四級アンモニウム塩と炭粉末とを含みながらも、第四級アンモニウム塩の活性が優れている口腔用組成物を提供することである。
【解決手段】本開示の口腔用組成物は、(A)第四級アンモニウム塩、(B)炭粉末、(C)アニオン性界面活性剤、及び(D)ノニオン性界面活性剤を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第四級アンモニウム塩、(B)炭粉末、(C)アニオン性界面活性剤、及び(D)ノニオン性界面活性剤を含有する、口腔用組成物。
【請求項2】
前記第四級アンモニウム塩は、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記炭粉末は、活性炭である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記活性炭は、平均粒子径が0.1~50μmである、請求項3に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
前記アニオン性界面活性剤は、アルキル硫酸塩、及びアシルアミノ酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
前記アルキル硫酸塩は、ラウリル硫酸ナトリウムである、請求項5に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
前記アシルアミノ酸塩は、アシルサルコシン塩である、請求項5に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
前記アシルサルコシン塩は、ラウロイルサルコシンナトリウムである、請求項7に記載の口腔用組成物。
【請求項9】
前記ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項10】
前記口腔用組成物は、液体歯磨剤、練歯磨剤、洗口液、又は口中清涼剤である、請求項1~9のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第四級アンモニウム塩と炭粉末とを含みながらも、第四級アンモニウム塩の活性が優れている口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化セチルピリジニウム等の第四級アンモニウム塩には、殺菌効果があることが知られており、口腔内の齲蝕菌や歯周病菌を減らす目的で口腔用組成物に広く使用されている。例えば、特許文献1では、炭素数8~10のアルキル基を有するアルキルグルコシド及び塩化セチルピリジニウムを含有する、フゾバクテリウム殺菌用の口腔用組成物が提案されている。
【0003】
また、炭粉末は、吸着剤としてよく知られており、歯垢、歯石、細菌類を吸着させて歯肉炎、歯槽膿漏を予防又は治療するため、あるいは口臭予防のために、口腔用組成物に配合することが提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-158545号公報
【特許文献2】特開2000-128751号公報
【特許文献3】特開2000-143467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、口腔用組成物の製剤処方について検討したところ、口腔用組成物に第四級アンモニウム塩と炭粉末とを共に配合すると、第四級アンモニウム塩の活性(歯面吸着性)が低下するという課題に直面した。
【0006】
本開示の目的は、第四級アンモニウム塩と炭粉末とを含みながらも、第四級アンモニウム塩の活性が優れている口腔用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
口腔用組成物に第四級アンモニウム塩と炭粉末とを共に配合すると、第四級アンモニウム塩の活性(歯面吸着性)が低下する理由は明らかではないが、第四級アンモニウム塩が炭粉末に吸着し、第四級アンモニウム塩の歯面への吸着が阻害されるためと推測される。本発明者は、前記推測を基にして前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、口腔用組成物に、第四級アンモニウム塩及び炭粉末と共に、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を含有させることにより、第四級アンモニウム塩の活性(歯面吸着性)の低下を抑制できることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本開示は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
項1.(A)第四級アンモニウム塩、(B)炭粉末、(C)アニオン性界面活性剤、及び(D)ノニオン性界面活性剤を含有する、口腔用組成物。
項2.前記第四級アンモニウム塩は、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の口腔用組成物。
項3.前記炭粉末は、活性炭である、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4.前記活性炭は、平均粒子径が0.1~50μmである、項3に記載の口腔用組成物。
項5.前記アニオン性界面活性剤は、アルキル硫酸塩、及びアシルアミノ酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
項6.前記アルキル硫酸塩は、ラウリル硫酸ナトリウムである、項5に記載の口腔用組成物。
項7.前記アシルアミノ酸塩は、アシルサルコシン塩である、項5又は6に記載の口腔用組成物。
項8.前記アシルサルコシン塩は、ラウロイルサルコシンナトリウムである、項7に記載の口腔用組成物。
項9.前記ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である、項1~8のいずれかに記載の口腔用組成物。
項10.前記口腔用組成物は、液体歯磨剤、練歯磨剤、洗口液、又は口中清涼剤である、項1~9のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、口腔用組成物に、第四級アンモニウム塩及び炭粉末と共に、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を含有させることにより、第四級アンモニウム塩の活性の低下を効果的に抑制できる。また、特定のアニオン性界面活性剤と特定のノニオン性界面活性剤とを組み合わせて配合することによって、第四級アンモニウム塩の活性を向上させることもできる。本開示の口腔用組成物は、炭粉末による歯垢、歯石、及び細菌類等の吸着効果及び/又は口臭予防効果と、第四級アンモニウム塩による優れた殺菌効果とを合わせ持つものである。口腔用組成物にアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を含有させることにより、第四級アンモニウム塩の活性の低下が抑制又は向上する理由は明らかではないが、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が、第四級アンモニウム塩の炭粉末への吸着を物理的又は化学的に阻害したり、第四級アンモニウム塩の歯面への吸着を手助けしていると推測される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、数値範囲に関する表記X~Yは、X以上Y以下であることを指す。
【0011】
1.口腔用組成物
本開示の口腔用組成物は、(A)第四級アンモニウム塩(以下、(A)成分と表記することがある。)、(B)炭粉末(以下、(B)成分と表記することがある。)、(C)アニオン性界面活性剤(以下、(C)成分と表記することがある。)、及び(D)ノニオン性界面活性剤(以下、(D)成分と表記することがある。)を含有することを特徴とする。以下、本開示の口腔用組成物について詳述する。
【0012】
[(A)第四級アンモニウム塩]
本開示の口腔用組成物は、(A)成分として第四級アンモニウム塩を含有する。
【0013】
第四級アンモニウム塩は、殺菌作用があることが知られている公知の成分である。本開示で使用される第四級アンモニウム塩としては、口腔内に適用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム等が挙げられる。第四級アンモニウム塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。また、第四級アンモニウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
前記例示の第四級アンモニウム塩のうち、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤による活性低下抑制効果がより効果的に得られる観点から、好ましくは塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムよりなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくは塩化セチルピリジニウムである。
【0015】
本開示の口腔用組成物における(A)成分の含有量は、特に限定されず、使用する第四級アンモニウム塩の種類、口腔用組成物の製剤形態及び用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.001~5質量%であり、好ましくは0.005~2質量%、より好ましくは0.01~1.5質量%、更に好ましくは0.01~1質量%、より更に好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0016】
[(B)炭粉末]
本開示の口腔用組成物は、(B)成分として炭粉末を含有する。
【0017】
炭粉末は、歯垢、歯石、細菌類等を吸着させて歯肉炎、歯槽膿漏を予防又は治療するため、及び/又は口臭予防のために、吸着剤として口腔用組成物に配合されるものである。
【0018】
本開示で使用される炭粉末としては、黒炭であれば特に限定されず、例えば、木炭、活性炭、竹炭、骨炭などが挙げられ、好ましくは活性炭である。炭粉末は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。木炭、活性炭、竹炭、骨炭などの炭粉末は、吸着力に優れており、また、歯のエナメル質に対して適度な高度を持つため研磨効果もあり、歯磨剤等として非常に適した材料である。また、炭粉末は、口内の細菌及び食べ滓などの異物を吸着あるいは研磨除去したり、炭に含まれる天然ミネラルで口内をアルカリ性にし、細菌の出す老廃物で口内が酸性化するのを防ぐなど様々な効果を持つ。さらに、炭粉末は、天然素材であるため人にやさしく、かつ水質汚染をしないため環境にやさしいという利点がある。
【0019】
炭粉末の平均粒子径は特に制限されないが、例えば、0.1~500μmであり、歯垢、歯石、細菌類等の吸着効果、及び歯のエナメル質に対する研磨効果の観点から、好ましくは0.1~50μm、より好ましくは1~40μm、更に好ましくは10~30μmである。本開示において、平均粒子径(μm)とは、体積基準の累計粒度分布における50%粒子径(D50)であり、平均粒子径(μm)は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて、レーザー回折・散乱法により測定する。
【0020】
本開示の口腔用組成物における(B)成分の含有量は、特に限定されず、使用する炭粉末の種類、口腔用組成物の製剤形態及び用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01~5質量%であり、好ましくは0.05~3質量%、より好ましくは0.1~2質量%、更に好ましくは0.1~1.5質量%、より更に好ましくは0.1~1質量%である。
【0021】
本開示の口腔用組成物において、(A)成分に対する(B)成分の含有比率については、使用する第四級アンモニウム塩及び炭粉末の種類、口腔用組成物の製剤形態及び用途等に応じて適宜設定すればよいが、(B)成分の含有量は、(A)成分1質量部当たり、例えば、0.01~300質量部であり、好ましくは0.1~200質量部、より好ましくは0.2~150質量部、更に好ましくは0.3~100質量部である。
【0022】
[(C)アニオン性界面活性剤]
本開示の口腔用組成物は、(C)成分としてアニオン性界面活性剤を含有する。第四級アンモニウム塩及び炭粉末を含有する口腔用組成物に、アニオン性界面活性剤と後述するノニオン性界面活性剤とを共存させることにより、第四級アンモニウム塩の活性の低下を効果的に抑制できる。
【0023】
アニオン性界面活性剤としては、口腔用組成物で使用されるアニオン性界面活性剤を特に制限することなく使用でき、例えば、アルキル硫酸塩、アシルアミノ酸塩、アシルタウリン塩、α-オレフィンスルホン酸塩、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩、及びアルキルスルホ酢酸塩などが挙げられる。アニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。アルキル基を有する場合、アルキル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれでもよく、飽和及び不飽和のいずれでもよく、アルキル基の炭素原子数は、通常8~20であり、好ましくは10~18であり、より好ましくは12~18である。アシル基を有する場合、アシル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれでもよく、飽和及び不飽和のいずれでもよく、アシル基の炭素原子数は、通常8~20であり、好ましくは10~18であり、より好ましくは12~18である。塩は、薬理学的に許容される塩から選択され得る。薬理学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩;トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩等の有機塩基塩;アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩等のアミノ酸塩が挙げられる。前記例示の塩のうち、無機塩基塩が好ましく、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)又はアンモニウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が更に好ましい。
【0024】
前記例示のアニオン性界面活性剤のうち、後述する特定のノニオン性界面活性剤と組み合わせて配合することによって第四級アンモニウム塩の活性を向上させる観点から、アルキル硫酸塩、及びアシルアミノ酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、アルキル硫酸塩とアシルアミノ酸塩を併用することがより好ましい。
【0025】
本開示の口腔用組成物において、(C)成分としてアルキル硫酸塩とアシルアミノ酸塩とを併用する場合、アルキル硫酸塩とアシルアミノ酸塩との含有比率は特に制限されないが、後述する特定のノニオン性界面活性剤との組み合わせによって第四級アンモニウム塩の活性を向上させる観点から、アシルアミノ酸塩の含有量は、アルキル硫酸塩1質量部当たり、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~8質量部、更に好ましくは0.3~6質量部、より更に好ましくは0.3~4質量部である。
【0026】
アルキル硫酸塩としては、例えば、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、パルミチル硫酸塩、及びステアリル硫酸塩等が挙げられる。塩としては、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくはナトリウム塩である。アルキル硫酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記例示のアルキル硫酸塩のうち、第四級アンモニウム塩の活性をより向上させる観点から、好ましくはラウリル硫酸ナトリウムである。
【0027】
アシルアミノ酸塩としては、例えば、ラウロイルサルコシン塩、ミリストイルサルコシン塩、パルミトイルサルコシン塩、ココイルサルコシン塩、及びステアロイルサルコシン塩等のアシルサルコシン塩;ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩、及びパルミトイルグルタミン酸塩等のアシルグルタミン酸塩;N-ラウロイル-N-メチルグリシン塩、及びココイルグリシン塩等のアシルグリシン塩;N-ラウロイル-β-アラニン塩、N-ミリスチル-β-アラニン塩、N-ココイル-β-アラニン塩、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニン塩、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニン塩、及びN-メチル-N-アシルアラニン塩等のアシルアラニン塩;ラウロイルアスパラギン酸塩等のアシルアスパラギン酸塩が挙げられる。塩としては、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくはナトリウム塩である。アシルアミノ酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記例示のアシルアミノ酸塩のうち、第四級アンモニウム塩の活性をより向上させる観点から、好ましくはアシルサルコシン塩、より好ましくはラウロイルサルコシンナトリウムである。
【0028】
本開示においては、第四級アンモニウム塩の活性をさらに向上させる観点から、ラウリル硫酸ナトリウムとラウロイルサルコシンナトリウムとを併用することがさらに好ましい。
【0029】
本開示の口腔用組成物における(C)成分の含有量は、例えば、0.01~10質量%であり、第四級アンモニウム塩の活性の低下をより抑制する観点から、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~3質量%、更に好ましくは0.3~2質量%である。
【0030】
本開示の口腔用組成物において、(A)成分に対する(C)成分の含有比率については、使用する第四級アンモニウム塩及びアニオン性界面活性剤の種類、口腔用組成物の製剤形態及び用途等に応じて適宜設定すればよいが、第四級アンモニウム塩の活性の低下をより抑制する観点から、(C)成分の含有量は、(A)成分1質量部当たり、好ましくは0.1~300質量部、より好ましくは1~250質量部、更に好ましくは2~200質量部、より更に好ましくは3~150質量部である。
【0031】
本開示の口腔用組成物において、(B)成分に対する(C)成分の含有比率については、使用する炭粉末及びアニオン性界面活性剤の種類、口腔用組成物の製剤形態及び用途等に応じて適宜設定すればよいが、第四級アンモニウム塩の活性の低下をより抑制する観点から、(C)成分の含有量は、(B)成分1質量部当たり、好ましくは0.01~100質量部、より好ましくは0.1~50質量部、更に好ましくは0.5~25質量部、より更に好ましくは0.5~15質量部である。
【0032】
[(D)ノニオン性界面活性剤]
本開示の口腔用組成物は、(D)成分としてノニオン性界面活性剤を含有する。第四級アンモニウム塩及び炭粉末を含有する口腔用組成物に、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤とを共存させることにより、第四級アンモニウム塩の活性の低下を効果的に抑制することができる。
【0033】
ノニオン性界面活性剤としては、口腔用組成物で使用されるノニオン性界面活性剤を特に制限することなく使用でき、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びレシチン誘導体等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
前記例示のノニオン性界面活性剤のうち、第四級アンモニウム塩の活性の低下をより抑制する観点、及び特定のアニオン性界面活性剤と組み合わせて配合することによって第四級アンモニウム塩の活性を向上させる観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることが好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とは、硬化ヒマシ油をポリオキシエチレン鎖でエーテル化した化合物である。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油におけるポリオキシエチレン鎖のエチレンオキサイドの平均付加モル数としては、例えば、5~100であり、第四級アンモニウム塩の活性の低下をさらに抑制する観点、及び特定のアニオン性界面活性剤と組み合わせて配合することによって第四級アンモニウム塩の活性をより向上させる観点から、好ましくは10~80、より好ましくは40~80、更に好ましくは50~70である。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本開示の口腔用組成物における(D)成分の含有量は、例えば、0.01~10質量%であり、第四級アンモニウム塩の活性の低下をより抑制する観点から、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~3質量%、更に好ましくは0.3~1質量%である。
【0036】
本開示の口腔用組成物において、(A)成分に対する(D)成分の含有比率については、使用する第四級アンモニウム塩及びノニオン性界面活性剤の種類、口腔用組成物の製剤形態及び用途等に応じて適宜設定すればよいが、第四級アンモニウム塩の活性の低下をより抑制する観点から、(D)成分の含有量は、(A)成分1質量部当たり、好ましくは0.1~300質量部、より好ましくは0.5~200質量部、更に好ましくは1~150質量部、より更に好ましくは1.5~100質量部である。
【0037】
本開示の口腔用組成物において、(B)成分に対する(D)成分の含有比率については、使用する炭粉末及びノニオン性界面活性剤の種類、口腔用組成物の製剤形態及び用途等に応じて適宜設定すればよいが、第四級アンモニウム塩の活性の低下をより抑制する観点から、(D)成分の含有量は、(B)成分1質量部当たり、好ましくは0.01~100質量部、より好ましくは0.1~50質量部、更に好ましくは0.3~20質量部、より更に好ましくは0.5~10質量部である。
【0038】
本開示の口腔用組成物において、(C)成分に対する(D)成分の含有比率については、使用するアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の種類、口腔用組成物の製剤形態及び用途等に応じて適宜設定すればよいが、第四級アンモニウム塩の活性の低下をより抑制する観点から、(D)成分の含有量は、(C)成分1質量部当たり、好ましくは0.01~100質量部、より好ましくは0.1~10質量部、更に好ましくは0.2~5質量部、より更に好ましくは0.3~3質量部である。
【0039】
[水]
本開示の口腔用組成物は、基剤として水が含まれていることが好ましい。本開示の口腔用組成物における水の含有量については、添加する成分を除いた残部であればよく、口腔用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば、10~99.9質量%、好ましくは15~99.5質量%、より好ましくは25~99質量%、更に好ましくは30~99質量%である。
【0040】
[その他の含有成分]
本開示の口腔用組成物は、前述する成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物の形態に応じて、当該技術分野で通常使用される成分を含有していてもよい。当該技術分野で通常使用される成分としては、例えば、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消炎剤、研磨剤、グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害剤、プラーク抑制剤、知覚過敏抑制剤、歯石予防剤、歯質強化/再石灰化剤、局所麻酔剤、血行促進剤、増粘剤、湿潤剤、賦形剤、界面活性剤(アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤以外)、アルコール、油脂、甘味剤、清涼化剤、香料、色素、消臭剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0041】
[剤型・形態]
本開示の口腔用組成物の剤型については、口腔内への適用が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、液状又は半固形状(ゲル状、ペースト状)が挙げられる。
【0042】
本開示の口腔用組成物の形態については、口腔内に適用されて口腔内で一定時間滞留し得るものである限り特に制限されないが、例えば、液体歯磨剤、練歯磨剤、洗口液(液体歯磨剤、洗口液は、一般にマウスリンス、マウスウォッシュ、デンタルリンス等と呼称されることがある)、口中清涼剤(マウススプレー等)、口腔用軟膏剤等の口腔衛生剤が挙げられる。前記例示のうち、好ましくは液体歯磨剤、練歯磨剤、及び洗口液である。
【実施例0043】
以下に実施例を示して本開示の発明をより具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0044】
[活性炭の平均粒子径(μm)の測定]
使用した活性炭の平均粒子径は、レーザー回折測定法により測定した。具体的には、測定対象である活性炭、界面活性剤およびイオン交換水を混合して分散液を得て、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:MT3300(LOW-DRY))を用い、活性炭の平均粒子径を測定した。分散液における活性炭の濃度は、当該測定装置で表示される測定濃度範囲に収まるように調整した。界面活性剤としては、和光純薬工業社製の「ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル」を用い、測定に影響する気泡等が発生しない適当な量を添加および混合した。分析条件を以下に示す。測定結果において、体積基準の累計粒度分布における50%粒子径であるD50の値を平均粒子径(μm)とした。使用した活性炭の平均粒子径は、25μm、又は10μmであった。
(分析条件)
測定回数:1回
測定時間:20秒
分布表示:体積
粒径区分:等比分割(8)
計算モード:MT3000II
溶媒名:AIR
測定上限:1086μm、測定下限:0.243μm
残分比:0.00%
通過分比:0.00%
残分比設定:有効
粒子透過性:吸収
粒子屈折率:N/A
粒子形状:N/A
溶媒屈折率:1.00
フィルタ:標準
DV値:0.0094
透過率(TR):0.987
拡張フィルタ:無効
【0045】
試験例
〔試験液の調製〕
表1に示す組成の試験液を常法に従って調製した(表1中の数値の単位は質量%である)。
【0046】
〔測定及び評価〕
調製した試験液における塩化セチルピリジニウム(CPC)の活性は、アパタイト粉末へのCPCの吸着量で評価した。調製した試験液を用いて、下記方法でアパタイト粉末へのCPCの吸着量を測定した。
【0047】
<CPCの吸着量の測定>
参考例1及び2の試験液10gを精製水25mlで希釈した各希釈液を攪拌し、遠心した後、上清を取り出した。また、実施例1~3及び比較例1~3の試験液10gを精製水25mlで希釈した各希釈スラリーを攪拌し、遠心した後、上清を取り出した。得られた各上清は、活性炭を含んでいないものである。得られた各上清2mlに、ヒドロキシアパタイト(DNA GradeBio-Gel HTP、BIO-RAD製)50mgをそれぞれ加えて第1混合液を得た。第1混合液を37℃にて15分間振盪浸漬した。その後、第1混合液を遠心(3000rpm、10分間)し、第1混合液の上清を除去した。第1混合液の残渣に蒸留水2mlを添加して得られた第2混合液を攪拌し、さらに遠心(3000rpm、10分間)した。その後、第2混合液の上清を除去し、第2混合液の残渣に蒸留水2mlを添加して第3混合液を得た。第3混合液を攪拌し、さらに遠心(3000rpm、10分間)した。その後、第3混合液の上清を除去し、第3混合液の残渣を得た。次に、下記の抽出液を用いて、第3混合液の残渣中のヒドロキシアパタイトに吸着しているCPCを抽出した。得られたCPC抽出液を用いて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて下記測定条件でCPC量を定量し、ヒドロキシアパタイト50mgに吸着したCPC吸着量(μg/アパタイト粉末50mg)を求めた。結果を表1に示す。
抽出液:pH3の0.02Mクエン酸緩衝液1Lあたり2.88gのラウリル硫酸ナトリウムを溶解させた溶液:アセトニトリル=1:3
HPLCの測定条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長258nm)
移動相:過塩素酸ナトリウム一水和物(7→500)/アセトニトリル=29:21
カラム:Inertsil CN-3(4.6mm×150mm、5μm、ジーエルサイエンス製)
カラム温度:40℃
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、塩化セチルピリジニウム及び活性炭と共に、アニオン性界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム及び/又はラウロイルサルコシンナトリウムと、ノニオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油とを含有する試験液(実施例1~3)は、参考例1の試験液に比べて、塩化セチルピリジニウムの活性が大きく向上していることがわかる。ラウリル硫酸ナトリウムとラウロイルサルコシンナトリウムとを含有する試験液(実施例3)は、塩化セチルピリジニウムの活性が特に大きく向上していることがわかる。アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤の一方のみを含有する試験液(比較例1~3)は、塩化セチルピリジニウムの活性が大きく低下していることがわかる。塩化セチルピリジニウム及び活性炭を含む組成物に、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤とを含有させることにより、塩化セチルピリジニウムの活性の低下を効果的に抑制できることがわかった。
【0050】
処方例
表2及び3に示す組成の歯磨剤、表4に示す組成の洗口液、表5に示す組成のマウススプレーを調製した。調製した口腔用組成物を使用して、前記試験方法にて第四級アンモニウム塩の活性を確認したところ、すべての口腔用組成物において第四級アンモニウム塩の活性が大きく向上していた。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】