(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081014
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】レーザ溶接方法、構造物
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20240610BHJP
B23K 26/323 20140101ALI20240610BHJP
【FI】
B23K26/21 G
B23K26/323
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194419
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】伊川 俊輔
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA87
4E168BA89
(57)【要約】
【課題】アルミニウム材を用いて成形された部材とアルミニウム材と銅とのクラッド材を用いて成形された部材とをレーザ溶接にて接合する場合に、反りを小さくすることができる技術を提供する。
【解決手段】アルミニウム材にて成形された平板状部11を有するヒートシンク10と、アルミニウム材にて成形された平板状の第1層221と、銅にて成形された平板状の第2層222とが積層されたカバー22と、をレーザ溶接にて接合するレーザ溶接方法であって、ヒートシンク10の平板状部11とカバー22の第1層221とを重ね合わせた状態で平板状部11に対してレーザ光152を照射し、溶接部40が第2層222まで到達するように照射する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材にて成形された平板状部を有する第1部材と、
アルミニウム材にて成形された平板状の第1層と、銅にて成形された平板状の第2層とが積層された第2部材と、
をレーザ溶接にて接合するレーザ溶接方法であって、
前記第1部材の前記平板状部と前記第2部材の前記第1層とを重ね合わせた状態で当該平板状部に対してレーザ光を照射し、溶接部が前記第2層まで到達するように照射する、
レーザ溶接方法。
【請求項2】
前記平板状部の厚さと前記第1層の厚さとを合わせた厚さをT、前記第2層における前記溶接部の深さをDとしたとき、Tに対するDの割合が20%以上となるように前記レーザ光を照射する、
請求項1記載のレーザ溶接方法。
【請求項3】
前記第1部材は、前記平板状部から板面に交差する方向に突出した複数のフィンを有し、
前記複数のフィンの内の一のフィンと他のフィンとの間に前記レーザ光を照射する、
請求項1記載のレーザ溶接方法。
【請求項4】
アルミニウム材にて成形された平板状部を有する第1部材と、
アルミニウム材にて成形された平板状の第1層と、銅にて成形された平板状の第2層とが積層された第2部材と、
を備え、
前記第1部材の前記平板状部と前記第2部材の前記第1層とを重ね合わせた状態で当該平板状部に対してレーザ光が照射され、前記第2層まで到達した溶接部を有する、
構造物。
【請求項5】
前記平板状部の厚さと前記第1層の厚さとを合わせた厚さをT、前記第2層における前記溶接部の深さをDとしたとき、Tに対するDの割合が20%以上である、
請求項4記載の構造物。
【請求項6】
前記第1部材は、前記平板状部から板面に交差する方向に突出した複数のフィンを有し、
前記溶接部は、前記複数のフィンの内の一のフィンと他のフィンとの間に形成されている、
請求項4記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接方法及び構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ溶接を行った部位が熱収縮して変形することに起因してレーザ溶接を行っていない部位が反り、所望の形状と異なってしまうことを抑制する技術が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の製造方法は、板状の第1の部材に重ね合わされた第2の部材にレーザ光の照射を行うことにより当該第1の部材と当該第2の部材とを接合する接合工程と、前記第1の部材における、前記第2の部材が重ね合わされる面とは反対側の面を溶融させる溶融工程と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ溶接にて接合する2つの部材としては、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム材を用いて成形された部材と、アルミニウム材と銅とのクラッド材を用いて成形された部材とが考えられる。これら2つの部材をレーザ溶接にて接合する場合においても、反りが小さいことが望ましい。
本発明は、アルミニウム材を用いて成形された部材とアルミニウム材と銅とのクラッド材を用いて成形された部材とをレーザ溶接にて接合する場合に、反りを小さくすることができるレーザ溶接方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、アルミニウム材にて成形された平板状部を有する第1部材と、アルミニウム材にて成形された平板状の第1層と、銅にて成形された平板状の第2層とが積層された第2部材と、をレーザ溶接にて接合するレーザ溶接方法であって、前記第1部材の前記平板状部と前記第2部材の前記第1層とを重ね合わせた状態で当該平板状部に対してレーザ光を照射し、溶接部が前記第2層まで到達するように照射する、レーザ溶接方法である。
ここで、前記平板状部の厚さと前記第1層の厚さとを合わせた厚さをT、前記第2層における前記溶接部の深さをDとしたとき、Tに対するDの割合が20%以上となるように前記レーザ光を照射しても良い。
また、前記第1部材は、前記平板状部から板面に交差する方向に突出した複数のフィンを有し、前記複数のフィンの内の一のフィンと他のフィンとの間に前記レーザ光を照射しても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、アルミニウム材にて成形された平板状部を有する第1部材と、アルミニウム材にて成形された平板状の第1層と、銅にて成形された平板状の第2層とが積層された第2部材と、を備え、前記第1部材の前記平板状部と前記第2部材の前記第1層とを重ね合わせた状態で当該平板状部に対してレーザ光が照射され、前記第2層まで到達した溶接部を有する、構造物である。
ここで、前記平板状部の厚さと前記第1層の厚さとを合わせた厚さをT、前記第2層における前記溶接部の深さをDとしたとき、Tに対するDの割合が20%以上であっても良い。
また、前記第1部材は、前記平板状部から板面に交差する方向に突出した複数のフィンを有し、前記溶接部は、前記複数のフィンの内の一のフィンと他のフィンとの間に形成されていても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アルミニウム材を用いて成形された部材とアルミニウム材と銅とのクラッド材を用いて成形された部材とをレーザ溶接にて接合する場合に、反りを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る冷却装置を構成する部品を分解した図の一例である。
【
図2】第1実施形態に係る冷却装置の断面の一例を示す図である。
【
図3】ヒートシンクとカバーとの接合を説明するための図である。
【
図5】溶接部の深さと反りの大きさとの相関関係の一例を示す実験結果である。
【
図6】第2実施形態に係る冷却装置の断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る冷却装置1を構成する部品を分解した図の一例である。
図2は、第1実施形態に係る冷却装置1の断面の一例を示す図である。
第1実施形態に係る冷却装置1は、フィン12を有するヒートシンク10と、ヒートシンク10を収容するとともに、冷却液が流通する空間を形成するケース20とを備えている。冷却装置1は、発熱体の一例としての半導体モジュール5を、冷却液及びヒートシンク10を用いて冷却する液冷式冷却装置である。
【0009】
(ケース20)
ケース20は、凹状のケース本体21と、ケース本体21の開口部を覆うカバー22と、ケース本体21とカバー22との間を密封するOリング23と、ケース本体21とカバー22とを締め付けるボルト24とを備えている。また、ケース20は、ケース20内に冷却液を流入させる流入管25と、ケース20内から冷却液を流出させる流出管26とを備えている。
【0010】
((ケース本体21))
ケース本体21は、平板状の矩形の底部31と、底部31における周囲の端部から底部31の板面に直交する方向に突出した4つの側壁32とを有している。
4つの側壁32の内の第1側壁321には、第1側壁321を貫通する第1貫通孔323が形成されている。また、4つの側壁32の内の、第1側壁321に対向する第2側壁322には、第2側壁322を貫通する第2貫通孔324が形成されている。第1貫通孔323には、流入管25が嵌め込まれ、第2貫通孔324には、流出管26が嵌め込まれている。
【0011】
また、4つの側壁32におけるカバー22側の端面には、ケース本体21の開口部の周囲に、Oリング23が嵌め込まれる溝325と、溝325の外側の四隅それぞれに、ボルト24が締め付けられる雌ねじ326とが形成されている。
ケース本体21は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム材にて成形されていることを例示することができる。
【0012】
((カバー22))
カバー22は、平板状の部材であり、アルミニウム材にて成形された平板状の第1層221と、銅にて成形された平板状の第2層222とが積層されたクラッド材を用いて成形された部材である。
カバー22の四隅には、それぞれ、ボルト24を通すための孔223が形成されている。
【0013】
カバー22におけるケース本体21側の面である内面224には、ヒートシンク10が接合されている。
一方、カバー22における内面224とは反対側の面である外面225には、半導体モジュール5が接合されている。
【0014】
カバー22においては、アルミニウム材にて成形された第1層221にヒートシンク10が接合され、銅にて成形された第2層222に半導体モジュール5が接合される。これにより、半導体モジュール5の熱を早期にヒートシンク10に伝導させ、冷却装置1の冷却性能を高めている。
【0015】
ここで、半導体モジュール5は、絶縁層51と、絶縁層51上に設けられた配線層52と、配線層52に、はんだ層54を介して装着された半導体素子53とを有している。また、半導体モジュール5は、絶縁層51からの熱を冷却装置1に伝達する伝熱層55を有している。
そして、半導体モジュール5は、伝熱層55がカバー22の外面225に接合されている。伝熱層55とカバー22とを接合する手法としては、ろう付、はんだ付け、シンタリング(焼結)、樹脂による接着、熱伝導グリスによる貼り付け等を例示することができる。
【0016】
((ヒートシンク10))
ヒートシンク10は、アルミニウム材を用いて成形された部材であり、鍛造、押出、及び、切削の少なくともいずれかにて成形されることを例示することができる。ヒートシンク10は、平板状の平板状部11と、平板状部11から板面に直交する方向に突出した複数のフィン12とを有している。
フィン12は、平板状部11からの突出方向が柱方向となる柱状であることを例示することができる。そして、フィン12における突出方向に見た場合の形状、言い換えれば、突出方向に直交する面にて切断した形状(以下、「断面形状」と称する場合がある。)は、円や楕円であることを例示することができる。また、断面形状は、正方形、長方形、ひし形等の四角形であることを例示することができる。また、フィン12は、平板状であっても良い。平板状である場合には、流入管25から流出管26への方向に平行であっても良いし、流入管25から流出管26への方向に傾斜した部位を有する波状であっても良い。
【0017】
以上のように構成された冷却装置1と半導体モジュール5とは、以下のように組み立てられることを例示することができる。
先ず、カバー22とヒートシンク10とをレーザ溶接にて接合する。この接合については後で詳述する。
その後、カバー22と半導体モジュール5とをろう付する。
そして、ヒートシンク10が接合されたカバー22を、半導体モジュール5が外部に位置し、ヒートシンク10がケース20の内部に収容されるように、ケース本体21に被せ、ケース本体21の開口部をカバー22で覆う。ケース本体21にカバー22を被せるときには、ケース本体21に形成された溝325にOリング23を嵌め込んでおく。
ケース本体21にカバー22を被せた後、カバー22に形成された孔223に通したボルト24を、ケース本体21に形成された雌ねじ326に締め付ける。
これにより、ヒートシンク10とケース本体21の凹部34との間に囲まれた空間に冷却液が流通する流通空間35が形成される。流通空間35は、Oリング23にて密封される。
【0018】
次に、ヒートシンク10をカバー22に接合する方法について説明する。
図3は、ヒートシンク10とカバー22との接合を説明するための図である。
図4は、溶接部40の一例を示す図である。
図3に示すように、カバー22の第1層221の上に、ヒートシンク10の平板状部11が接触して載るように、カバー22とヒートシンク10とを重ね合わせる。そして、ヒートシンク10の複数のフィン12側から、複数のフィン12間における平板状部11に対して、レーザ装置150のレーザヘッド151からレーザ光152を照射する。そして、複数のフィン12間の隙間の形状に沿ってレーザヘッド151を移動させることで、レーザ光152を連続的に照射する。
【0019】
ヒートシンク10の平板状部11に対してレーザ光152が照射されると、レーザ光152のエネルギーが熱に変換されることによって、ヒートシンク10の平板状部11とカバー22の母材自体が溶融し、その後急速に冷却される。この急速加熱・急速冷却により溶接部40が形成される。
【0020】
そして、溶接部40が銅にて成形された第2層222まで到達するようにレーザ光152が照射されている。これは、本発明者等の鋭意研究により、溶接部40が銅にて成形された第2層222まで到達することで、第2層222の外面225の反りを抑制できることを見出したためである。
【0021】
溶接部40が第2層222まで到達するようにレーザ溶接するためには、単位時間当たりのエネルギー密度を調整すれば良い。単位時間当たりのエネルギー密度が大きくなるのに応じて、より深い溶接部40が成形されるため、単位時間当たりのエネルギー密度を第2層222まで到達する大きさとする。単位時間当たりのエネルギー密度を大きくするには、レーザヘッド151の移動速度を小さくすれば良い。また、単位時間当たりのエネルギー密度を大きくするには、レーザ出力を大きくすれば良い。それゆえ、レーザヘッド151の移動速度を小さくするか、又は、レーザ出力を大きくするか、の少なくともいずれかの手法を採用することで、溶接部40が第2層222まで到達するようにレーザ溶接を施すことが可能となる。
【0022】
次に、溶接部40の深さD40と反りの大きさとの相関関係について説明する。
溶接部40の深さD40に応じて、言い換えれば、銅にて成形された第2層222における溶接部40の深さD222に応じて、カバー22の外面225の反りの大きさがどのように変化するかを把握するために実験を行った。
【0023】
図5は、溶接部40の深さD40と反りの大きさとの相関関係の一例を示す実験結果である。
ヒートシンク10として、平板状部11の厚さT11が900(μm)のアルミニウム材を用いた。
カバー22として、アルミニウム材にて成形された厚さT221が450(μm)の第1層221と、銅にて成形された厚さT222が1650(μm)の第2層222とが積層されたクラッド材を用いた。
【0024】
カバー22の第1層221とヒートシンク10の平板状部11とが接触するように、カバー22の上にヒートシンク10を載せた状態でヒートシンク10のフィン12間における平板状部11に対してレーザ光152を照射し、溶接部40が第2層222まで到達するようにレーザ溶接を施した。さらに、試料に応じて単位時間当たりのエネルギー密度を変えて、溶接部40の深さD40を変えた。
【0025】
レーザ溶接を施した後の溶接部40の深さD40(単位は(μm))は、
図5に示すように、試料1が1450、試料2が1523、試料3が1520、試料4が1738、試料5が1683、試料6が1796、試料7が1904、試料8が2018、試料9が1981であった。
【0026】
第2層222まで到達しているので、溶接部40の深さD40(μm)から、平板状部11の厚さT11(μm)とカバー22の第1層221の厚さT221(μm)とを合計したアルミニウム材の厚さTa(=1350(μm))を減算した値が銅にて成形された第2層222における深さD222(μm)である。
【0027】
各試料における深さD222(単位は(μm))は、
図5に示すように、試料1が100、試料2が173、試料3が170、試料4が388、試料5が333、試料6が446、試料7が554、試料8が668、試料9が631であった。
【0028】
各試料のカバー22の外面225の反りの大きさを目視したところ、深さD222が0より大きく173(μm)以下の試料1~3、深さD222が333(μm)以上でありかつ446(μm)以下の試料4~6、深さD222が554(μm)以上でありかつ668(μm)以下の試料7~9の順に、反りが大きかった。
【0029】
ただし、反りが大き目の試料1~3の反りは、溶接部40が第2層222まで到達せずに、ヒートシンク10の平板状部11とカバー22の第1層221とに溶接部40が形成されて接合された場合における反りよりも小さかった。
【0030】
以上より、溶接部40が銅にて成形された第2層222まで到達するようにレーザ溶接を施すことで、溶接部40が第2層222まで到達しないようにレーザ溶接が施された場合よりもカバー22の外面225の反りを小さくすることができる。
そして、銅にて成形された第2層222における溶接部40の深さD222が深いほどカバー22の外面225の反りを小さくすることができる。例えば、深さD222が300(μm)以上であると好ましく、深さD222が500(μm)以上であるとより好ましい。また、深さD222は、第2層222の厚さT222未満であることが好ましい。
【0031】
また、アルミニウム材の部分における溶接部40の深さDalは全ての試料が1350(μm)であることから、各試料の、アルミニウム材の部分における溶接部40の深さDalに対する銅の部分における溶接部40の深さD222の割合は以下の通りである。つまり、
図5に示すように、試料1が7%、試料2が13%、試料3が13%、試料4が29%、試料5が25%、試料6が33%、試料7が41%、試料8が49%、試料9が47%であった。
【0032】
それゆえ、アルミニウム材の部分における深さDalに対する銅の部分における深さD222の割合が20%以上であると好ましく、深さDalに対する深さD222の割合が40%以上であるとより好ましい。
【0033】
また、各試料のカバー22の外面225の状態を目視したところ、深さD222が0より大きく173(μm)以下の試料1~3には割れが発生しており、深さD222が333(μm)以上でありかつ446(μm)以下の試料4~6、及び、深さD222が554(μm)以上でありかつ668(μm)以下の試料7~9には割れが発生していなかった。それゆえ、カバー22の外面225に割れが発生しないようにするという観点においても、例えば、深さD222が300(μm)以上であると好ましく、アルミニウム材の部分における深さDalに対する銅の部分における深さD222の割合が20%以上であると好ましい。
【0034】
以上、説明したように、ヒートシンク10とカバー22とを接合するレーザ溶接方法は、アルミニウム材にて成形された平板状部11を有するヒートシンク10(第1部材の一例)と、アルミニウム材にて成形された平板状の第1層221と、銅にて成形された平板状の第2層222とが積層されたカバー22(第2部材の一例)と、をレーザ溶接にて接合するレーザ溶接方法である。そして、ヒートシンク10の平板状部11とカバー22の第1層221とを重ね合わせた状態で平板状部11に対してレーザ光152を照射し、溶接部40が第2層222まで到達するように照射する。これにより、カバー22の第2層222の外面225の反りを抑制できる。
【0035】
そして、平板状部11の厚さT11と第1層221の厚さT221とを合わせた厚さをT(=T11+T221)、第2層222における溶接部40の深さをD(=D222)としたとき、Tに対するDの割合が20%以上となるようにレーザ光152を照射することが好ましい。これにより、例えば、Tに対するDの割合が20%未満となるようにレーザ光152を照射した場合と比べて、カバー22の第2層222の外面225の反りを小さくすることができる。
【0036】
また、ヒートシンク10は、平板状部11から板面に交差する方向に突出した複数のフィン12を有し、複数のフィン12の内の一のフィン12と他のフィン12との間にレーザ光152を照射することが好ましい。これにより、平板状部11とカバー22とを確度高く接合することができる。
【0037】
また、カバー22における半導体モジュール5を保持する部位である外面225に溶接部40が形成されることに起因して、外面225に凹凸が発生することが抑制される。例えば、ヒートシンク10とカバー22とを接合するために、カバー22の外面225に対してレーザ光152を照射する場合には、カバー22の外面225に溶接部が形成されて凹凸が形成される。そして、この凹凸により、カバー22と半導体モジュール5との間の隙間が大きくなると、半導体モジュール5からの熱を効率良くカバー22に伝達することができずに冷却性能が悪化するおそれがある。これに対して、冷却装置1によれば、平板状部11に対してレーザ光152を照射するので、カバー22の外面225に凹凸が形成されることを抑制することができる。
【0038】
また、以上のように構成された冷却装置1は、アルミニウム材にて成形された平板状部11を有するヒートシンク10と、アルミニウム材にて成形された平板状の第1層221と、銅にて成形された平板状の第2層222とが積層されたカバー22とを備える構造物の一例である。そして、冷却装置1は、ヒートシンク10の平板状部11とカバー22の第1層221とを重ね合わせた状態で平板状部11に対してレーザ光152が照射され、第2層222まで到達した溶接部40を有する。
【0039】
冷却装置1によれば、例えば、ヒートシンク10の平板状部11とカバー22の第1層221とに溶接部が形成される構成と比べて、カバー22の第2層222の外面225の反りが小さくなる。その結果、カバー22の第2層222の外面225と半導体モジュール5との間の隙間が小さくなり、半導体モジュール5からの熱を効率良くカバー22に伝達することができるので、冷却性能を向上させることができる。
【0040】
そして、平板状部11の厚さT11と第1層221の厚さとを合わせた厚さをT(=T11+T221)、第2層222における溶接部40の深さをD(=D222)としたとき、Tに対するDの割合が2割以上であることが好ましい。これにより、例えば、Tに対するDの割合が20%未満となるようにレーザ光152を照射した場合と比べて、カバー22の第2層222の外面225の反りが小さくなる。
【0041】
また、ヒートシンク10は、平板状部11から板面に交差する方向に突出した複数のフィン12を有し、溶接部40は、複数のフィン12の内の一のフィン12と他のフィン12との間に形成されていることが好ましい。これにより、例えば複数のフィン12間の隙間の形状に沿ってレーザヘッド151を移動させてレーザ光152を照射することができるので、確度高く平板状部11とカバー22とを接合することができる。
【0042】
なお、上述した冷却装置1と半導体モジュール5とを組み立てる方法においては、カバー22とヒートシンク10とを接合した後に半導体モジュール5をろう付する方法を例示したが特にかかる態様に限定されない。例えば、先ず、カバー22と半導体モジュール5とをろう付し、その後、半導体モジュール5が接合されたカバー22とヒートシンク10とをレーザ溶接にて接合しても良い。
【0043】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る冷却装置2は、発熱体の一例としての半導体モジュール5を、空気及びヒートシンク10を用いて冷却する空冷式の冷却装置である点が第1の実施形態に係る冷却装置1と異なる。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。第1の実施形態と第2実施形態とで、同じ機能を有するものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0044】
図6は、第2実施形態に係る冷却装置2の断面の一例を示す図である。
冷却装置2は、ヒートシンク10と、ヒートシンク10を保持するベース60とを備えている。
ベース60は、平板状の部材であり、アルミニウム材にて成形された平板状の第1層61と、銅にて成形された平板状の第2層62とが積層されたクラッド材を用いて成形された部材である。
【0045】
ベース60には、例えば四隅に、冷却装置2が装着される製品に取り付けるためのボルト70を通すための孔63が形成されている。
そして、ベース60には、第1実施形態に係るカバー22と同様に、第1層61における第2層62とは反対側の面である第1面64にヒートシンク10が接合され、第2層62における第1層61とは反対側の面である第2面65に半導体モジュール5が接合されている。
【0046】
ベース60に半導体モジュール5を接合する方法は、第1実施形態に係るカバー22に半導体モジュール5を接合する方法と同様である。
また、ベース60にヒートシンク10を接合する方法は、第1実施形態に係るカバー22にヒートシンク10を接合する方法と同様である。つまり、ベース60の第1面64上に、ヒートシンク10の平板状部11が接触して載るように、ベース60とヒートシンク10とを重ね合わせる。そして、ヒートシンク10の複数のフィン12側から、複数のフィン12間における平板状部11に対して、レーザ光152を照射する。そして、溶接部(不図示)が銅にて成形された第2層62まで到達するようにレーザ光152を照射する。
【0047】
以上、説明したように、ヒートシンク10とベース60とを接合するレーザ溶接方法は、アルミニウム材にて成形された平板状部11を有するヒートシンク10(第1部材の一例)と、アルミニウム材にて成形された平板状の第1層61と、銅にて成形された平板状の第2層62とが積層されたベース60(第2部材の一例)と、をレーザ溶接にて接合するレーザ溶接方法である。そして、ヒートシンク10の平板状部11とベース60の第1層61とを重ね合わせた状態で平板状部11に対してレーザ光152を照射し、溶接部40が第2層62まで到達するように照射する。これにより、ベース60の第2層62の第2面65の反りを抑制できる。
【0048】
また、以上のように構成された冷却装置2は、アルミニウム材にて成形された平板状部11を有するヒートシンク10と、アルミニウム材にて成形された平板状の第1層61と、銅にて成形された平板状の第2層62とが積層されたベース60とを備える構造物の一例である。そして、冷却装置2は、ヒートシンク10の平板状部11とベース60の第1層61とを重ね合わせた状態で平板状部11に対してレーザ光152が照射され、第2層62まで到達した溶接部40を有する。
【0049】
冷却装置2によれば、例えば、ヒートシンク10の平板状部11とベース60の第1層61とに溶接部が形成される構成と比べて、ベース60の第2層62の第2面65の反りが小さくなる。その結果、ベース60の第2層62の第2面65と半導体モジュール5との間の隙間が小さくなり、半導体モジュール5からの熱を効率良くベース60に伝達することができるので、冷却性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1,2…冷却装置(構造物の一例)、10…ヒートシンク(第1部材の一例)、11…平板状部、12…フィン、20…ケース、22…カバー(第2部材の一例)、40…溶接部、60…ベース(第2部材の一例)、61…第1層、62…第2層、151…レーザヘッド、152…レーザ光、221…第1層、222…第2層