(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081050
(43)【公開日】2024-06-17
(54)【発明の名称】AR表示装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/04817 20220101AFI20240610BHJP
【FI】
G06F3/04817
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194483
(22)【出願日】2022-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】田中 大
(72)【発明者】
【氏名】川喜田 裕之
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA27
5E555BE17
5E555CB44
5E555CC22
5E555DA08
5E555DB18
5E555DC31
5E555DC35
5E555DC43
5E555EA27
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】情報接触率を高めることが可能なAR表示装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】AR表示装置1は、ニュース記事に関する情報を取得するニュース記事取得部23と、ニュース記事の記事本文を高次元ベクトルに変換する自然言語処理部24と、高次元ベクトルを2次元ベクトルに変換する次元削減部25と、2次元ベクトルに1次元ベクトルを追加して3次元ベクトルとし、該3次元ベクトルに基づいて、ニュース記事のアイコンを空間上に提示する際の3次元座標を決定する座標決定部26と、アイコンを生成するアイコン生成部27と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニュース記事に関する情報を取得するニュース記事取得部と、
前記ニュース記事の記事本文を高次元ベクトルに変換する自然言語処理部と、
前記高次元ベクトルを2次元ベクトルに変換する次元削減部と、
前記2次元ベクトルに1次元ベクトルを追加して3次元ベクトルとし、該3次元ベクトルに基づいて、前記ニュース記事のアイコンを空間上に提示する際の3次元座標を決定する座標決定部と、
前記アイコンを生成するアイコン生成部と、
を備えるAR表示装置。
【請求項2】
前記1次元ベクトルの大きさは、前記ニュース記事の配信日時に基づいて決定される、請求項1に記載のAR表示装置。
【請求項3】
前記次元削減部は、前記高次元ベクトルに対してベクトルの近傍関係を保持したまま次元削減を行う、請求項1又は2に記載のAR表示装置。
【請求項4】
前記アイコンは、前記ニュース記事のタイトル、サムネイル、及びジャンルを示す、請求項1又は2に記載のAR表示装置。
【請求項5】
前記ジャンルは、前記サムネイルの枠の表示態様により区別される、請求項4に記載のAR表示装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1又は2に記載のAR表示装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AR(Augmented Reality;拡張現実)表示装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ARグラスに代表されるAR表示装置が各社から発売され、コンシューマーデバイスとしてのAR表示装置の普及が予想されている。例えば、特許文献1には、ARシステムとユーザデバイスが開示され、該ユーザデバイスは、頭部搭載式ディスプレイシステムと、3D視認をもたらすことが可能なディスプレイ構成要素を含み得ることが記載されている。
【0003】
AR表示装置の特徴として、スマートフォンやPC(Personal Computer)で主流の矩形状の表現ではなく、空間へ情報を提示することができる。AR表示装置の高い表現自由度を活用するアプリケーションの開発が求められているが、黎明期であるAR表示装置に特化したアプリケーションは少なく、一般的な矩形型のブラウザを空中へ表示するケースが多い(例えば、非特許文献1参照)。AR表示装置がスマートフォンに替わるメインのモバイルデバイスになった場合、より適したAR表示装置用アプリケーションを考える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
【非特許文献1】「新しい Microsoft Edge について」、[online]、2022年9月22日、[2022年11月25日検索]、インターネット<URL:https://learn.microsoft.com/ja-jp/hololens/hololens-new-edge>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スマートフォンで使用されるアプリケーションの一つとして、ニュース閲覧アプリがある。オンライン、特にスマートフォンでニュースへ接触する場合、小さい画面で情報が提示されるため、人力を含む適当なアルゴリズムによるレコメンド機能によりフィルタリングされた情報のみが提示される。アルゴリズムにより各ユーザが特定の情報へ接触しなくなる現象を、フィルターバブルと呼ぶ。ニュースのような、広く情報へ接触することが望ましいコンテンツの場合、ユーザがフィルターバブルに閉じこもってしまう状態は、ユーザにとってもニュース提供者にとっても好ましくない。
【0007】
人間が本来接触・処理可能である情報の総量のうち、実際に接触した情報の割合を情報接触率とする。ニュースに触れる目的を社会情勢の把握、自己の興味の拡張、コミュニケーションの種とするならば、この情報接触率を高めることが目的達成のために必要となる。
【0008】
かかる事情を鑑みてなされた本発明の目的は、情報接触率を高めることが可能なAR表示装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 一実施形態に係るAR表示装置は、ニュース記事に関する情報を取得するニュース記事取得部と、前記ニュース記事の記事本文を高次元ベクトルに変換する自然言語処理部と、前記高次元ベクトルを2次元ベクトルに変換する次元削減部と、前記2次元ベクトルに1次元ベクトルを追加して3次元ベクトルとし、該3次元ベクトルに基づいて、前記ニュース記事のアイコンを空間上に提示する際の3次元座標を決定する座標決定部と、前記アイコンを生成するアイコン生成部と、を備える。
【0010】
(2) (1)に記載のAR表示装置において、前記1次元ベクトルの大きさは、前記ニュース記事の配信日時に基づいて決定されてもよい。
【0011】
(3) (1)又は(2)に記載のAR表示装置において、前記次元削減部は、前記高次元ベクトルに対してベクトルの近傍関係を保持したまま次元削減を行ってもよい。
【0012】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載のAR表示装置において、前記アイコンは、前記ニュース記事のタイトル、サムネイル、及びジャンルを示してもよい。
【0013】
(5) (4)に記載のAR表示装置において、前記ジャンルは、前記サムネイルの枠の表示態様により区別されてもよい。
【0014】
(6) 一実施形態に係るプログラムは、コンピュータを、(1)から(5)のいずれかに記載のAR表示装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、情報接触率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係るAR表示装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係るAR表示装置により2次元ベクトルに変換されたニュース記事の一例を示す図である。
【
図3】一実施形態に係るAR表示装置が生成するニュースアイコンの提示位置を示す座標系の一例を示す図である。
【
図4】一実施形態に係るAR表示装置が生成するニュースアイコンの一例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係るAR表示装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るAR表示装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示すAR表示装置1は、外界映像取得部10と、制御部20と、記憶部30と、表示部40と、を備える。AR表示装置1は、ネットワークを介してサーバ2と接続される。ネットワークは、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、イントラネットのいずれであってもよい。ネットワークは、無線ネットワーク、光ネットワーク、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0019】
サーバ2は、ニュース記事に関する情報(以下、「ニュース記事情報」という。)を保存する。「ニュース記事情報」は、「タイトル」、「記事内容」、「配信日時(掲載日時)」、「サムネイル」、及び「ジャンル」を含む。「記事内容」は、ニュース記事の「記事本文」及び「画像」からなるが、画像が含まれない場合もある。「サムネイル」とは、記事内容を連想させる画像をいい、アイキャッチともいう。
【0020】
外界映像取得部10は、AR表示装置1の外部を撮像して外界映像を取得する撮像装置(小型カメラ)である。外界映像取得部10は、外界映像を制御部20に出力する。外界映像取得部10は、外界映像に加えて、対象物までの距離を示す深度情報を撮影し、外界映像及び深度情報を制御部20に出力してもよい。
【0021】
制御部20は、ジェスチャー認識部21と、ニュース記事取得範囲設定部22と、ニュース記事取得部23と、自然言語処理部24と、次元削減部25と、座標決定部26と、アイコン生成部27と、表示制御部28と、を備える。制御部20は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit),FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。
【0022】
表示部40は、UI(User Interface)画面、ニュース記事のアイコン(以下、「ニュースアイコン」と称する。)などのオブジェクトを表示する。表示部40は、ハーフミラーなどの光学系である。表示部40にオブジェクトが投影されると、AR表示装置1を装着したユーザは、表示部40の先にある空間上に、現実には存在しないオブジェクトを知覚する。
【0023】
AR表示装置1は、まず表示部40にUI(User Interface)画面を投影する。ユーザは、空間上に提示されたUI画面に対応して手を動かしたり、タッチや掴む動作をしたりすることで、様々な操作を行う。例えば、ユーザは、所定のジェスチャー(インタラクション)により、空間上にニュースアイコンを提示させる。
【0024】
ジェスチャー認識部21は、外界映像取得部10から入力した外界映像から、ユーザのジェスチャーを認識する。外界映像取得部10から深度情報が得られた場合には、外界映像に加えて深度情報を用いることで、ジェスチャーの認識精度を向上させることができる。そして、ジェスチャー認識部21は、ユーザのジェスチャーを示すジェスチャー情報をニュース記事取得範囲設定部22及び表示制御部28に出力する。
【0025】
ニュース記事取得範囲設定部22は、ジェスチャー認識部21から入力したジェスチャー情報に基づいて、ニュース記事の取得範囲期間(例えば、何時間前又は何日前までのニュースを取得するか)を設定する。そして、ニュース記事取得範囲設定部22は、ニュース記事の取得範囲期間をニュース記事取得部23に出力する。
【0026】
ニュース記事取得部23は、ニュース記事取得範囲設定部22から入力したニュース記事の取得範囲期間に従って、サーバ2からニュース記事情報を取得する。そして、ニュース記事取得部23は、取得したニュース記事情報を記憶部30に出力する。
【0027】
自然言語処理部24は、記憶部30からニュース記事情報の「記事本文」を取得し、「記事本文」に対して分かち書き及び埋め込み計算を行うことにより、「記事本文」を高次元ベクトルに変換する。そして、自然言語処理部24は、生成した高次元ベクトルを次元削減部25に出力する。日本語文章データは英語と異なり単語単位に分割することが容易ではないため、ベクトル化には事前処理として分かち書きを行う必要がある。分かち書きには、例えば下記参考文献に開示されているJanomeを用いる。
[参考文献1]Welcome to janome's documentation! (Japanese) - Janome v0.4 documentation (ja) https://mocobeta.github.io/janome/ (Accessed on 10/17/2022)
【0028】
分かち書きされた文字データのベクトル化(埋め込み)はTF-IDF(Term Frequency-Inverse Document Frequency)を用いるケースやWord2Vec、ニューラルネットワークによりベクトル化するケースがある。これらの方法は、文章分類や検索などのタスクで用いられる。特に、TF-IDFの統計量を使用するものは文章検索で多く利用されており、記事の中の特徴的な単語の情報を重みづけることができる。TF-IDFは、ジャンルで分類されており、単語の特徴がジャンルに寄与する傾向のある今回のタスクにおいて、似た記事同士を近傍に埋め込むことに適している。TF-IDFにより埋め込まれた記事は、高次元ベクトルである。
【0029】
次元削減部25は、高次元データを実空間に表示するために、自然言語処理部24から入力した高次元ベクトルに対してベクトルの近傍関係を保持したまま次元削減を行い、高次元ベクトルを2次元ベクトルに変換する。そして、次元削減部25は、生成した2次元ベクトルを座標決定部26に出力する。
【0030】
ニュース記事のような非構造化データは、データの構造が決定されている構造化データと異なり一意に処理ができない。可視化のために、ニュース記事同士の距離を定義し、関係性の高いニュース記事が近傍に配置されるように処理をすることが望ましい。また、線形性を有するデータであれば主成分分析により近傍構造を保ったまま低次元空間へ変換することができるが、TF-IDFにより解析されたニュース記事データは線形性を有さない。そこで、次元削減部25は、非線形性を有する高次元データを、近傍構造を保ったまま低次元空間へ変換することが可能なt-SNE(t-Distributed Stochastic Neighbor Embedding)を用いてもよい。t-SNEの詳細については、例えば下記の参考文献2を参照されたい。
[参考文献2]Van der Maaten, Laurens, and Geoffrey Hinton. "Visualizing data using t-SNE." Journal of machine learning research 9.11, pp.2579-2605 (2008).
【0031】
図2は、自然言語処理部24及び次元削減部25により、分かち書き、埋め込み、及び次元削減の処理を行い、2次元ベクトルに変換されたニュース記事の一例を示す図である。この例では、3日分のNHKニュースの「記事本文」を2次元空間にプロットしている。縦軸と横軸は、2次元に低次元化されたベクトルの1番目の要素と2番目の要素の値を示す。プロットの形状・色で各記事のジャンルを区別しており、大きな丸印は各ジャンルにおけるクラスターの代表点である。この例では、ジャンルは、「政治」、「ビジネス」、「国際」、「災害」、「社会」、「科学・文化」、「スポーツ」、「地域」、及び「暮らし」である。
【0032】
図2より、ジャンルごとに緩やかにまとまり、かつ隣のジャンルの記事とも適度に混ざっている様子が確認できる。従来のようにジャンルごとに記事を表示する場合には、異なるジャンルの記事は明示的に提示しない限りユーザの目には入らない。一方、AR表示装置1による空間配置では、異なるジャンルであっても似たようなコンテキストの記事を近くに表示できることが分かる。
【0033】
座標決定部26は、次元削減部25から入力した2次元ベクトルに1次元ベクトルを追加して3次元ベクトルとし、該3次元ベクトルに基づいて、ニュースアイコンを空間上に提示する際の3次元座標を決定する。そして、座標決定部26は、生成した3次元座標を記憶部30に出力する。ニュース情報は時系列情報が重要である。そこで、時系列を空間的な配置に取り込むために、1次元ベクトルの大きさは、記憶部30から取得した「配信日時」に基づいて決定されてもよい。
【0034】
図3は、ニュースアイコンの提示位置を示す座標系の一例を示す図である。x軸はユーザUの右方向を正方向とし、y軸はユーザUの上方向を正方向とし、z軸はユーザUの正面方向を正方向とする。すなわち、x軸及びz軸は地面に対して水平な方向であり、y軸は地面に対して垂直な方向である。また、原点をユーザUの頭部(頭部に装着されたAR表示装置1の左右のグラスの中心)とする。
図3(a)に示すように、ニュースアイコンIは、AR表示装置1を通して実空間上に1以上提示される。
【0035】
表示するN個のニュースのうち、自然言語処理部24により高次元ベクトル化された、時系列順で最新から数えてi番目のニュース記事のベクトルをaiとする。また、空間上に提示される、i番目のニュース記事のニュースアイコンIの中心座標をbi=(xi,yi,zi)とする。ベクトルaiは、次元削減部25により2次元へマッピングされる。t-SNEでは、ベクトルaiとベクトルajの類似度を、ベクトルaiが与えられた時にベクトルajが近傍として選ばれる条件付確率とみなす。t-SNEは、この条件付確率の分布がなるべく座標biと座標bjでも一致するように最適化を行う。この最適化を行うことで、次元削減部25は、高次元空間の近傍関係を保持したまま、2次元に次元削減することができる。
【0036】
座標決定部26は、次元削減部25から入力した2次元上の座標を、スケーリング変数sを用いて、ニュースアイコンIを提示する空間領域(以下、「アイコン提示領域」と称する。)に収まるように調整し、xi,ziとする。次に、座標決定部26は、yiを決定する。本実施形態では、座標決定部26は以下のようにして、y座標(空間的な高低)に時系列情報を割り当てる。
【0037】
AR表示装置1は実空間にニュースアイコンIを提示するため、アイコン提示領域には制限がある。
図3(b)に示すように、アイコン提示領域Rの高さをhとする。アイコン提示領域Rは人間の視野角に基づいて定められてもよい。座標決定部26は、例えば式(1)によりy
iを算出する。ここで、Nは表示部40に表示するニュースアイコンIの数である。式(1)を用いた場合、iが増加するにつれて、つまり記事が古くなるにつれて、ニュースアイコンIがアイコン提示領域Rの下側に提示される。
【0038】
【0039】
原点Oは、AR表示装置1の中心から所定の範囲内とする。例えば、原点OをAR表示装置1の中心とすると、最新のニュース記事を示すニュースアイコンIをユーザの目線上に配置することができる。また、ユーザは、アイコン提示領域Rに提示された複数のニュースアイコン全体を見渡すことができる。
【0040】
アイコン生成部27は、記憶部30から取得した3次元座標及びニュース記事情報を用いて、ニュースアイコンを生成する。そして、アイコン生成部27は、生成したニュースアイコン、ニュースアイコンの3次元座標、「記事内容」を表示制御部28に出力する。ニュースアイコンに必要な要素として「タイトル」、「配信日時」、「サムネイル」、及び「ジャンル」の4点が挙げられる。これらの要素は一般的なニュースサイトのアイコンとして用いられており、それぞれクリックされるか否かに影響を与える。本実施形態では、ニュースアイコンの上下方向の座標を「配信日時」を用いて求め、水平方向の座標を「記事本文」を用いて求めている。そのため、ニュースアイコンは、「タイトル」、「サムネイル」、及び「ジャンル」を示すことが望ましい。
【0041】
図4は、ニュースアイコンの一例を示す図である。
図4(a)に示す例では、ニュース記事のサムネイルAの上側に、ニュース記事のタイトルB、及びジャンルCを表示している。
図4(b)に示す例では、ジャンルCは、サムネイルAの枠の表示態様(模様又は色などの違い)により区別される。例えば、ジャンルCが9種類ある場合には、9種類の異なる色によりジャンルCを区別してもよい。なお、ニュースアイコンのサイズは可変であってもよい。ユーザがニュースアイコンに対してタッチ、掴むなどのインタラクションを行うと、
図4(c)に示すように、ニュース記事の記事内容Dを表示する。
図4(c)に示す例では「記事本文」のみを示しているが、「記事内容」に「画像」が含まれる場合には「記事本文」と共に「画像」も表示する。
【0042】
表示制御部28は、アイコン生成部27から入力したニュースアイコンを、アイコン生成部27から入力した3次元座標に従って表示部40に表示(投影)する。また、表示制御部28は、ジェスチャー認識部21からジェスチャー情報を取得し、ユーザのインタラクションに応じて、「記事内容」の表示・非表示を変更する。
【0043】
(AR表示装置の処理手順)
次に、AR表示装置1の処理手順について、
図5を参照して説明する。
図5は、AR表示装置1の処理手順を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS11では、ジェスチャー認識部21により、ユーザのニュース記事の取得範囲期間を指定するジェスチャーを認識する。そして、ニュース記事取得範囲設定部22により、ニュース記事の取得範囲期間を設定する。
【0045】
ステップS12では、ニュース記事取得部23により、ニュース記事情報を取得する。
【0046】
ステップS13では、自然言語処理部24により、ニュース記事情報の「記事本文」に対して分かち書き処理及びTF-IDF計算を行い、高次元ベクトルに変換する。
【0047】
ステップS14では、次元削減部25により、高次元ベクトルに対してT-SNE計算を行い、2次元ベクトルに変換する。
【0048】
ステップS15では、座標決定部26により、ニュースアイコンを空間上に提示する際の3次元座標を決定する。
【0049】
ステップS16では、アイコン生成部27により、ニュースアイコンを生成する。
【0050】
ステップS17では、表示制御部28により、ニュースアイコンを表示部40に表示する。
【0051】
ステップS18では、ジェスチャー認識部21により、ユーザの第1インタラクションを認識する。第1インタラクションとは、所定のニュースアイコンに対応する記事内容の表示を指示する動作である。
【0052】
ステップS19では、表示制御部28により、所定のニュースアイコンに対応する記事内容を表示部40に表示する。
【0053】
ステップS20では、ジェスチャー認識部21により、ユーザの第2インタラクションを認識する。第2のインタラクションとは、所定の記事内容の非表示を指示する動作である。
【0054】
ステップS21では、表示制御部28により、表示部40に表示されている所定の記事内容を非表示にする。
【0055】
上述したように本発明に係るAR表示装置1によれば、フィルタリングを行わず、多くの情報を空間へ配置することで、情報接触率を向上させることが可能となる。また、ニュースが持つ情報同士の距離を利用し、関連するニュースを近くへ配置するとともに、一覧性の高いニュースのマップ空間を作成することができる。ユーザは、ジャンルをまたいだ記事へのアクセスが容易となり、かつニュース全体を見渡すことができ、普段目にしないニュースアイコンも視野に入れることが可能になる。したがって、既存のメディアでは実現が難しいセレンディピティの高いニュース接触体験をユーザに提供することが可能となる。
【0056】
さらに、本発明に係るAR表示装置1によれば、自分とニュースアイコンまでの距離という身体性が生まれ、ニュース体験に新たな軸を導入することができる。また、空間的な高低に時系列情報を割り当てることにより、目線上に最新ニュースを提示することが可能となる。
【0057】
(プログラム)
上述したAR表示装置1として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0058】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースである。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースであり、例えばLAN(Local Area Network)インターフェースである。
【0059】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0060】
例えば、AR表示装置1として機能させるためのプログラムは、ニュース記事に関する情報を取得するステップと、ニュース記事の記事本文を高次元ベクトルに変換するステップと、高次元ベクトルを2次元ベクトルに変換するステップと、2次元ベクトルに1次元ベクトルを追加して3次元ベクトルとし、該3次元ベクトルに基づいて、ニュース記事のアイコンを空間上に提示する際の3次元座標を決定するステップと、アイコンを生成するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0061】
また、上述したAR表示装置1は、1つ又は複数の半導体チップにより構成されてもよい。この半導体チップは、AR表示装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを実行するCPUを搭載してもよい。
【0062】
(変形例)
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、幾つかの変形例について簡潔に説明する。
【0063】
ユーザはジェスチャーだけでなく、音声によって操作可能であってもよい。すなわち、AR表示装置1は、音声を認識する音声認識部を備え、音声認識部は認識した情報を表示制御部28に出力してもよい。また、ユーザは視線の動きによって操作可能であってもよい。すなわち、AR表示装置1は、視線の動きを認識する視線認識部を備え、視線認識部は認識した情報を表示制御部28に出力してもよい。
【0064】
ニュース記事取得範囲設定部22は、ユーザが指定するキーワードによりニュース記事の取得範囲を設定する機能を有していてもよい。本発明によれば、キーワード検索をした場合であっても、関連するニュース記事を近傍に提示することができるため、フィルターバブルに閉じ込められる可能性は低減される。
【0065】
座標決定部26は、次元削減部25から入力した2次元ベクトルに追加する1次元ベクトルの大きさを、ユーザの興味度に基づいて決定してもよい。ユーザの興味度はAR表示装置1が自動で判定してもよいし、ユーザが興味のあるジャンルを順位付けして入力してもよい。
【0066】
アイコン生成部27が生成するニュースアイコンは、「タイトル」及び「サムネイル」のみを示し、「ジャンル」を示さなくてもよい。
【0067】
表示制御部28は、「記事内容」を表示する場合に、「記事内容」に注目して読みやすくするために、「記事内容」の表示範囲に応じて、ニュースアイコンの大きさ、配置位置などを変更してもよい。「記事内容」を表示した場合には、一部又は全てのニュースアイコンを非表示としてもよい。また、「記事内容」は音声で読み上げられてもよい。
【0068】
AR表示装置1は、ハーフミラー(表示部40)を設けないで、ユーザの網膜にオブジェクトを投影してもよい。
【0069】
本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、他にも特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 AR表示装置
2 サーバ
10 外界映像取得部
20 制御部
21 ジェスチャー認識部
22 ニュース記事取得範囲設定部
23 ニュース記事取得部
24 自然言語処理部
25 次元削減部
26 座標決定部
27 アイコン生成部
28 表示制御部
30 記憶部
40 表示部