(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081241
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】素管の塗装方法およびシャフトの製造方法
(51)【国際特許分類】
A63B 53/10 20150101AFI20240611BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240611BHJP
【FI】
A63B53/10 A
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194713
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】岸 真弘
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002MM02
2C002PP04
(57)【要約】
【課題】ホログラム層上にカラー層を設けた光輝性および意匠性に優れるゴルフクラブ用シャフトの製造中に、カラー塗装を失敗した場合でもその修正が容易で、生産性の低下を抑制できる技術を提供すること。
【解決手段】素管1の外周面1a上の少なくとも一部に第1ホログラム層22aおよび第2ホログラム層22bを設け、それらホログラム層を包含する領域に第1ホログラム保護層23aおよび第2ホログラム保護層23bを設け、ホログラム保護層の少なくとも一部を含み、かつホログラム層の少なくとも一部を含む領域にカラー層24を設けることを含む、ゴルフクラブに用いられるシャフトを得るための素管の塗装方法、およびゴルフクラブに用いられるシャフトの製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブに用いられるシャフトを得るための素管の塗装方法であって、
素管の外周面上の少なくとも一部にホログラム層を設けること、
前記ホログラム層を包含する領域にホログラム保護層を設けること、および、
前記ホログラム保護層の少なくとも一部を含み、かつ前記ホログラム層の少なくとも一部を含む領域にカラー層を設けること、
を含む、素管の塗装方法。
【請求項2】
スプレー塗装およびしごき塗装から選択される方法により前記カラー層を設ける、請求項1に記載の素管の塗装方法。
【請求項3】
高圧スプレー塗装により前記カラー層を設ける、請求項1に記載の素管の塗装方法。
【請求項4】
前記カラー層を包含する領域にマット層を設ける、請求項1~3のいずれか一項に記載の素管の塗装方法。
【請求項5】
前記マット層を、前記素管の外周面全体にわたって設ける、請求項4に記載の素管の塗装方法。
【請求項6】
前記カラー層と前記マット層の間に、前記カラー層を包含するようにカラー保護層を設ける、請求項4に記載の素管の塗装方法。
【請求項7】
前記マット層の少なくとも一部を含む領域にグロス層を設ける、請求項4に記載の素管の塗装方法。
【請求項8】
スプレー塗装およびしごき塗装から選択される方法により前記グロス層を設ける、請求項7に記載の素管の塗装方法。
【請求項9】
前記素管の径方向の外側から見て、前記ホログラム層全体が前記グロス層に覆われている、請求項7に記載の素管の塗装方法。
【請求項10】
前記素管の外周面上における太径端部から管軸方向の70%までの領域に前記グロス層を設ける、請求項7に記載の素管の塗装方法。
【請求項11】
ゴルフクラブに用いられるシャフトの製造方法であって、
素管の外周面上の少なくとも一部にホログラム層を設けること、
前記ホログラム層を包含する領域にホログラム保護層を設けること、および、
前記ホログラム保護層の少なくとも一部を含み、かつ前記ホログラム層の少なくとも一部を含む領域にカラー層を設けること、
を含む、シャフトの製造方法。
【請求項12】
スプレー塗装およびしごき塗装から選択される方法により前記カラー層を設ける、請求項11に記載のシャフトの製造方法。
【請求項13】
高圧スプレー塗装により前記カラー層を設ける、請求項11に記載のシャフトの製造方法。
【請求項14】
前記カラー層を包含する領域にマット層を設ける、請求項11~13のいずれか一項に記載のシャフトの製造方法。
【請求項15】
前記マット層を、前記素管の外周面全体にわたって設ける、請求項14に記載のシャフトの製造方法。
【請求項16】
前記カラー層と前記マット層の間に、前記カラー層を包含するようにカラー保護層を設ける、請求項14に記載のシャフトの製造方法。
【請求項17】
前記マット層の少なくとも一部を含む領域にグロス層を設ける、請求項14に記載のシャフトの製造方法。
【請求項18】
スプレー塗装およびしごき塗装から選択される方法により前記グロス層を設ける、請求項17に記載のシャフトの製造方法。
【請求項19】
前記素管の径方向の外側から見て、前記ホログラム層全体が前記グロス層に覆われている、請求項17に記載のシャフトの製造方法。
【請求項20】
前記素管の外周面上における太径端部から管軸方向の70%までの領域に前記グロス層を設ける、請求項17に記載のシャフトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに用いられるシャフトを得るための素管の塗装方法、およびゴルフクラブに用いられるシャフトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフクラブなどのスポーツ用品には、光輝性、意匠性などの観点から、ホログラム層を設けることが行われている。
例えば、ホログラム層の表面を透明状保護層で覆い、さらにクリヤー層を設けることで、装飾の耐久性を向上させることが行われている(特許文献1)。
また、スポーツ用品の外側にホログラム層を配置し、その上にカラー層を設けることで、ホログラム層の色を隠蔽し、ホログラム層の色抜けを抑えることが行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-182546号公報
【特許文献2】特開2010-88373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、ホログラム層上に直接カラー層を設ける場合について詳細に検討した。その結果、ホログラム層の表面に対するカラー塗装に失敗し、カラー層を取り除こうとすると、同時にホログラム層も剥がれ落ちてしまい、カラー塗装の修正ができず、生産性が悪くなることを見出した。
【0005】
本発明の主たる目的は、ホログラム層上にカラー層を設けた光輝性および意匠性に優れるゴルフクラブ用シャフトの製造中に、カラー塗装を失敗した場合でもその修正が容易で、生産性の低下を抑制できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を含み得る。
[1]ゴルフクラブに用いられるシャフトを得るための素管の塗装方法であって、
素管の外周面上の少なくとも一部にホログラム層を設けること、
前記ホログラム層を包含する領域にホログラム保護層を設けること、および、
前記ホログラム保護層の少なくとも一部を含み、かつ前記ホログラム層の少なくとも一部を含む領域にカラー層を設けること、
を含む、素管の塗装方法。
[2]スプレー塗装およびしごき塗装から選択される方法により前記カラー層を設ける、[1]に記載の素管の塗装方法。
[3]高圧スプレー塗装により前記カラー層を設ける、[1]に記載の素管の塗装方法。
[4]前記カラー層を包含する領域にマット層を設ける、[1]~[3]のいずれかに記載の素管の塗装方法。
[5]前記マット層を、前記素管の外周面全体にわたって設ける、[4]に記載の素管の塗装方法。
[6]前記カラー層と前記マット層の間に、前記カラー層を包含するようにカラー保護層を設ける、[4]または[5]に記載の素管の塗装方法。
[7]前記マット層の少なくとも一部を含む領域にグロス層を設ける、[4]~[6]のいずれかに記載の素管の塗装方法。
[8]スプレー塗装およびしごき塗装から選択される方法により前記グロス層を設ける、[7]に記載の素管の塗装方法。
[9]前記素管の径方向の外側から見て、前記ホログラム層全体が前記グロス層に覆われている、[7]または[8]に記載の素管の塗装方法。
[10]前記素管の外周面上における太径端部から管軸方向の70%までの領域に前記グロス層を設ける、[7]~[9]のいずれかに記載の素管の塗装方法。
[11]ゴルフクラブに用いられるシャフトの製造方法であって、
素管の外周面上の少なくとも一部にホログラム層を設けること、
前記ホログラム層を包含する領域にホログラム保護層を設けること、および、
前記ホログラム保護層の少なくとも一部を含み、かつ前記ホログラム層の少なくとも一部を含む領域にカラー層を設けること、
を含む、シャフトの製造方法。
[12]スプレー塗装およびしごき塗装から選択される方法により前記カラー層を設ける、[11]に記載のシャフトの製造方法。
[13]高圧スプレー塗装により前記カラー層を設ける、[11]に記載のシャフトの製造方法。
[14]前記カラー層を包含する領域にマット層を設ける、[11]~[13]のいずれかに記載のシャフトの製造方法。
[15]前記マット層を、前記素管の外周面全体にわたって設ける、[14]に記載のシャフトの製造方法。
[16]前記カラー層と前記マット層の間に、前記カラー層を包含するようにカラー保護層を設ける、[14]または[15]に記載のシャフトの製造方法。
[17]前記マット層の少なくとも一部を含む領域にグロス層を設ける、[14]~[16]のいずれかに記載のシャフトの製造方法。
[18]スプレー塗装およびしごき塗装から選択される方法により前記グロス層を設ける、[17]に記載のシャフトの製造方法。
[19]前記素管の径方向の外側から見て、前記ホログラム層全体が前記グロス層に覆われている、[17]または[18]に記載のシャフトの製造方法。
[20]前記素管の外周面上における太径端部から管軸方向の70%までの領域に前記グロス層を設ける、[17]~[19]のいずれかに記載のシャフトの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
実施形態によれば、ホログラム層上にカラー層を設けた光輝性および意匠性に優れるゴルフクラブ用シャフトの製造中に、カラー塗装を失敗した場合でもその修正が容易で、生産性の低下を抑制できる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る方法に用いる素管の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施態様に係る方法により形成される層構成の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施態様に係る方法により形成される層構成の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施態様に係る方法により形成される層構成の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施態様に係る方法により形成される層構成の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施態様に係る方法により形成される層構成の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施態様に係る方法により形成される層構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[素管の塗装方法]
実施形態に係る方法は、ゴルフクラブに用いられるシャフトを得るための素管の塗装方法であって、素管の外周面上の少なくとも一部にホログラム層を設けること、前記ホログラム層を包含する領域にホログラム保護層を設けること、および、前記ホログラム保護層の少なくとも一部を含み、かつ前記ホログラム層の少なくとも一部を含む領域にカラー層を設けること、を含む。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲において、「A層を包含する領域にB層を設ける」とは、素管の径方向の外側から見てA層全体が覆われるようにB層を設けることを意味する。具体的には、素管の径方向の外側から見て、A層を設けた領域と同じ領域にB層を重ねて設ける構成のほか、A層を設けた領域を含むそれよりも広い領域にB層を設ける構成を含む。
また、「A層の少なくとも一部を含む領域にB層を設ける」とは、素管の径方向の外側から見たときにA層とB層の少なくとも一部が重なっていることを意味する。具体的には、素管の径方向の外側から見て、A層とB層を一部だけ重なるようにずらして設ける構成のほか、A層を設けた領域内の一部にB層を部分的に設ける構成や、A層を設けた領域を含むそれよりも広い領域にB層を設ける構成を含む。
【0011】
(素管)
シャフトの基体となる素管としては、例えば、炭素繊維を含む複数の繊維強化樹脂層の積層体が用いられ、通常、管状体である。
素管は、例えば、UDプリプレグ等のシート状のプリプレグをマンドレルに複数枚巻きつけ、加熱硬化させて成形した後、マンドレルを引き抜くシートラッピング法により製造される。
【0012】
(下地処理)
素管の外周面には、ホログラム層を設ける前に、下塗り層、ベースカラー層等を設けてもよい。例えば、素管の外周面から順に、下塗り層、ベースカラー層を順に設けることができ、また他の層との密着性を高める目的でクリヤー層を設けてもよい。
下塗り層、ベースカラー層、クリヤー層等は、例えばスプレー塗装、しごき塗装等の公知の塗装方法によって形成することができる。
ホログラム層よりも素管側には下塗り層、ベースカラー層、クリヤー層を設けなくてもよいが、それらのうちの少なくとも1層が設けられることが好ましい。
【0013】
下塗り層の形成には、素管や、下塗り層の上に設ける層との密着性が高い塗装材料を用いる。このような塗装材料としては、例えば、樹脂部材の表面に塗装処理を施す際に、下地として用いられる塗装材料を何ら制限無く用いることができ、例えば、「9-7010EPシゴキプライマーダークグレー(登録商標:ミクニペイント社製)」等を用いることができる。
ベースカラー層を形成する有色塗料としては、例えば黒色塗料が挙げられるが、限定はされない。
【0014】
(ホログラム層の形成)
実施形態に係る方法では、素管の外周面上の少なくとも一部にホログラム層を設ける。
ただし、「素管の外周面上にホログラム層を設ける」とは、素管の外周面に直接ホログラム層を設けるほか、素管の外周面との間に他の層を介してホログラム層を設けることを含む。
好適例では、素管の外周面に下塗り層、ベースカラー層、クリヤー層等を設けた後、それらの層の表面の少なくとも一部にホログラム層を設ける。
【0015】
ホログラム層は、シャフトにホログラム模様を付与する層である。ホログラム層を設ける領域は、シャフトに付与する文字や模様、それらを付与する位置等に応じて適宜設定できる。
ホログラム層は、1層のみ設けてもよく、少なくとも一部が素管の径方向の外側から見て重なるように2層以上設けてもよいし、重ならないように複数の箇所に配置してもよい。
【0016】
ホログラム層は、例えば、金属箔を含む転写箔を転写する方法、ホログラム材料を蒸着し、必要な部分にマスク印刷した後、不要部分をアルカリ溶液で除去する方法により形成できる。
ホログラム層の材料としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム、クロム、スズ等の材料を何ら制限無く用いることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、鏡面調で、かつ、高輝度であり、見栄えが良いことから、アルミニウムが好ましい。
【0017】
(ホログラム保護層の形成)
ホログラム層を設けた後、該ホログラム層を包含する領域にホログラム保護層を設ける。例えば、ホログラム層を設けた領域と同じ領域にホログラム保護層を重ねて設けるか、ホログラム層を設けた領域を含むそれよりも広い領域にホログラム保護層を設ける。
好適例では、ホログラム層を設けた後、該ホログラム層全体を覆うように素管の外周面全体にわたるホログラム保護層を設ける。
【0018】
特許文献2のようにホログラム層の表面に直接カラー層を設ける場合、カラー塗装に失敗してカラー層を取り除こうとしたときに、ホログラム層も同時に剥がれ落ちてしまうため、カラー塗装の修正ができず生産性が悪くなる。
これに対し、ホログラム層をホログラム保護層で覆ったうえで該ホログラム保護層上にカラー層を設ける構成とすれば、カラー塗装に失敗してカラー層を取り除くときでもホログラム層の剥がれを防止でき、生産性の低下を抑制できる。
【0019】
ホログラム保護層は、例えばスプレー塗装、しごき塗装等の公知の塗装方法によって形成することができる。
ホログラム保護層の材料としては、例えば、透明または半透明の樹脂塗装材料が挙げられる。
具体的には、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、接着性、耐衝撃性、透明性、研磨性等に優れることから、ウレタン樹脂、またはアクリルウレタン樹脂が好ましい。
【0020】
ホログラム保護層の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは5μm以上、特に好ましくは8μm以上である。ホログラム保護層が前記下限値以上であれば、ホログラム層を保護する効果が得られやすい。
一方、ホログラム保護層の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である。ホログラム保護層が前記上限値以下であれば、ホログラム保護層がはがれにくくなるため、シャフトの品質が向上する。
ホログラム保護層の厚さの前記下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0021】
(カラー層の形成)
カラー層は、ホログラム保護層の少なくとも一部を含み、かつホログラム層の少なくとも一部を含む領域に設ける。
例えば、素管の外周面全体にわたるホログラム保護層を設けた場合、該ホログラム保護層の表面において、素管の径方向の外側から見てホログラム層と一部だけ重なるようにカラー層をずらして設けるか、ホログラム層を設けた領域内の一部にカラー層を部分的に設けるか、ホログラム層を設けた領域を含むそれよりも広い領域にカラー層を設ける。
【0022】
ホログラム層の少なくとも一部にカラー層を重ねることにより、光輝性に優れるホログラム模様に所望の色を付与することができ、意匠性がさらに向上する。また、素管の径方向から見てホログラム層とカラー層が重なる部分には、それらの層間にホログラム保護層が存在しているため、前述のようにカラー塗装を失敗してカラー層を取り除くときでもホログラム層が剥がれず、修正が容易である。
【0023】
カラー層を設ける方法としては、スプレー塗装およびしごき塗装から選択される方法が好ましく、ムラなく速やかにカラー層を形成できることから、高圧スプレー塗装が特に好ましい。
【0024】
カラー層の材料としては、例えば、透明または半透明の着色された有色塗装が挙げられる。
具体的には、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂等に着色顔料が配合された塗料が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
(他の層の形成)
ホログラム層、ホログラム保護層およびカラー層に加えて、それら以外の他の層を更に設けてもよい。
一例としては、カラー層を包含する領域にカラー保護層を設けることができる。例えば、カラー層を設けた領域と同じ領域にカラー保護層を重ねて設けるか、カラー層を設けた領域を含むそれよりも広い領域にカラー保護層を設ける。
好適例では、カラー層を設けた後、該カラー層全体を覆うように素管の外周面全体にわたるカラー保護層を設ける。
【0026】
カラー保護層は、例えばスプレー塗装、しごき塗装等の公知の塗装方法によって形成することができる。
カラー保護層の材料としては、ホログラム保護層と同じ透明または半透明の樹脂塗装材料を用いることができる。
【0027】
カラー保護層の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは5μm以上、特に好ましくは8μm以上である。カラー保護層が前記下限値以上であれば、カラー層を保護する効果が得られやすい。
一方、カラー保護層の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である。カラー保護層が前記上限値以下であれば、カラー保護層がはがれにくくなるため、シャフトの品質が向上する。
カラー保護層の厚さの前記下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0028】
艶調整層として、マット層やグロス層を設けることもできる。
一例としては、カラー層を包含する領域にマット層を設けることができる。例えば、カラー層を設けた領域と同じ領域にマット層を重ねて設ける構成のほか、カラー層を設けた領域を含むそれよりも広い領域にマット層を設ける。
好適例では、カラー層を設けた後、素管の外周面全体にわたるカラー保護層とマット層を順次設ける。マット層を設ける場合に、マット層とカラー層の間にカラー保護層が設けられることにより、カラー層が侵食されることがなくなり、シャフトの外観が向上する。
【0029】
マット層は、例えばスプレー塗装、しごき塗装等の公知の塗装方法により形成することができる。
マット層の材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂を用いた塗料を用いることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
更に他の一例では、マット層の少なくとも一部を含む領域にグロス層を設けることができる。
例えば、素管の径方向の外側から見てマット層と一部だけ重なるようにグロス層をずらして設けるか、マット層を設けた領域内の一部にグロス層を部分的に設けるか、マット層を設けた領域を含むそれよりも広い領域にグロス層を設ける。
【0031】
好適例では、素管の径方向の外側から見て、ホログラム層全体がグロス層に覆われる。例えば、素管の外周面全体にわたるマット層の表面に、ホログラム層全体が覆われるようにグロス層を設ける。ホログラム層全体がグロス層に覆われることにより、ホログラム模様に艶が追加され、意匠性が更に向上する。
ゴルフクラブ用シャフトは一般に、管軸方向に垂直な面の外径が、管軸方向の一端から他端に向かって変化している。一例として、グロス層は、素管の外周面上における太径端部から管軸方向の70%までの領域に設けることができる。
【0032】
グロス層を設ける方法としては、スプレー塗装およびしごき塗装から選択される方法が好ましい。
グロス層の材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂を用いた塗料を用いることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
シャフトに係る属性等を示す文字情報や、ロゴ等の模様等を付与する印刷層を設けてもよい。例えば、ホログラム保護層やカラー保護層の表面に印刷層を設けることができる。
印刷層としては、特に限定されず、1種以上の着色印刷インクによって形成することができる。具体的には、例えば、飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂等をビヒクルとして、これに着色顔料を配合したインクを用い、印刷法によって形成できる。
印刷法としては、特に限定されず、例えばシルク印刷法が挙げられる。
【0034】
(塗装例)
以下、実施形態に係る塗装方法の具体例について、図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0035】
図1は、実施形態に係る方法に用いる素管1を示す模式図である。
図2は、素管1の外周面1aに塗装する層構成を模式的に示した断面図である。
図1に示すように、ゴルフクラブに用いられるシャフトを得るための素管1は、管軸方向に垂直な面の外径が、管軸方向の一端から他端に向かって変化している。素管1は、管軸方向において、テーパ状とされた部位と、径が一定とされた部位との両方を有することもある。以下、外径が小さい側の端部を細径端部11、外径が大きい側の端部を太径端部12とする。
【0036】
図2に示す例では、素管1の外周面1aの全体に、スプレー塗装、しごき塗装等により、下塗り層21a、ベースカラー層21bおよびクリヤー層21cを順に設ける。
次いで、クリヤー層21cの表面の一部に、転写箔を転写する方法等により第1ホログラム層22aを設ける。更に、スプレー塗装、しごき塗装等により、第1ホログラム層22a全体を覆う、素管1の外周面1a全体にわたる第1ホログラム保護層23aを設ける。また、これらの操作を繰り返し、第1ホログラム保護層23aの表面の一部に第2ホログラム層22bを設けた後、第2ホログラム層22b全体を覆う、素管1の外周面1a全体にわたる第2ホログラム保護層23bを設ける。
【0037】
次いで、スプレー塗装、しごき塗装等により、第2ホログラム保護層23bの表面の一部に、第1ホログラム層22aおよび第2ホログラム層22bの全体を覆うようにカラー層24を設けた後、カラー層24全体を覆う、素管1の外周面1a全体にわたるカラー保護層25を設ける。
【0038】
次いで、カラー保護層25の表面に、例えばシルク印刷等によって文字情報やロゴ等を付与する印刷層26を設ける。その後、スプレー塗装、しごき塗装等により、素管1の外周面1a全体にわたるマット層27を設け、更にその表面の一部にグロス層28を設ける。
この例では、素管1の外周面1a上における太径端部12から管軸方向の70%までの領域にグロス層28を設け、第1ホログラム層22a、第2ホログラム層22bおよびカラー層24もこの領域内に設けることが好ましい。
【0039】
(他の塗装例)
本発明の素管の塗装方法は、前述の方法には限定されない。以下、他の一例について
図3~
図7に基づいて説明する。
図3~
図7における同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
カラー層は素管の径方向の外側から見てホログラム層の少なくとも一部を覆っていればよく、例えば
図3に示す例のように、第1ホログラム層22aおよび第2ホログラム層22bが設けられていない領域まで拡がるカラー層24を設けてもよい。
図7に示す例ように、素管1の径方向の外側から見て、ホログラム層の一部がカラー層24に覆われていれば、ホログラム層の残部はカラー層24に覆われなくてもよい。
【0040】
グロス層は素管の径方向の外側から見てホログラム層を覆っていればよく、例えば
図4に示す例のように、第1ホログラム層22aおよび第2ホログラム層22bが設けられていない領域まで拡がるグロス層28を設けてもよい。
ホログラム層は2層を重ねなくてもよく、例えば
図5に示す例のように、第2ホログラム層22bおよび第2ホログラム保護層23bを設けなくてもよい。
また、ホログラム層よりも素管側の層構成も限定されず、例えばホログラム層よりも素管側に、下塗り層、ベースカラー層およびクリヤー層から選ばれる1層または2層だけを設けてもよい。
図6に示す例のように、印刷層を設けなくてもよい。
【0041】
[シャフトの製造方法]
他の実施形態に係る方法は、ゴルフクラブに用いられるシャフトの製造方法であって、素管の外周面上の少なくとも一部にホログラム層を設けること、前記ホログラム層を包含する領域にホログラム保護層を設けること、および、前記ホログラム保護層の少なくとも一部を含み、かつ前記ホログラム層の少なくとも一部を含む領域にカラー層を設けること、を含む。
素管の外周面上にホログラム層、ホログラム保護層およびカラー層を設けること、また必要に応じてその他の層を設けることについては、前述の素管の塗装方法と同様である。
【0042】
実施形態に係るシャフトの製造方法は、プリプレグを用いて素管を製造する工程を含んでもよい。
例えば、UDプリプレグ等のシート状のプリプレグをマンドレルに複数枚巻きつけ、加熱、成形した後、マンドレルを引き抜くシートラッピング法により、素管を製造することができる。また、内圧成形法、フィラメントワインディング法等の他の方法で素管を製造してもよい。
【0043】
プリプレグに用いる強化繊維としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維が挙げられ、炭素繊維が好ましい。
プリプレグに用いるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよいが、成形後の物性が高いことから、熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂が挙げられる。マトリックス樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明は前述の実施形態には限定されない。本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 素管
1a 外周面
21a 下塗り層
21b ベースカラー層
21c クリヤー層
22a 第1ホログラム層
22b 第2ホログラム層
23a 第1ホログラム保護層
23b 第2ホログラム保護層
24 カラー層
25 カラー保護層
26 印刷層
27 マット層
28 グロス層