(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081282
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ショ糖脂肪酸エステルを含む飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20240611BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20240611BHJP
A23F 5/24 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A23L2/52
A23F3/16
A23F5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194793
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】原 英之
(72)【発明者】
【氏名】大倉野 孝
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 久義
(72)【発明者】
【氏名】川俣 勇太
【テーマコード(参考)】
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FB24
4B027FC01
4B027FC02
4B027FC05
4B027FK04
4B027FK06
4B027FP85
4B027FQ19
4B117LG17
4B117LK06
4B117LK10
4B117LK13
4B117LL06
(57)【要約】
【課題】
風味に優れ、乳化安定性の高い飲料を提供すること。
【解決手段】
ショ糖が有する水酸基の一部が脂肪族炭化水素基に置換されたショ糖脂肪酸エステルと油脂を含む飲料であって、前記ショ糖脂肪酸エステルの35~100重量%が水酸基の平均置換度が2.23~2.80であり、前記油脂の含有量が15重量%以下である、飲料。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショ糖が有する水酸基の一部が脂肪族炭化水素基に置換されたショ糖脂肪酸エステルと油脂を含む飲料であって、前記ショ糖脂肪酸エステルの35~100重量%が水酸基の平均置換度が2.23~2.80であり、前記油脂の含有量が15重量%以下である、飲料。
【請求項2】
前記ショ糖脂肪酸エステルが水酸基の平均置換度が1.45~2.22であるショ糖脂肪酸エステルを含まないか、含む場合にはその含有量が300ppm以下である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記水酸基の平均置換度が2.23~2.80であるショ糖脂肪酸エステルの含有量に対する、前記水酸基の平均置換度が1.45~2.22であるショ糖脂肪酸エステルの含有量が、重量比で0.8を超えない、請求項2に記載の飲料。
【請求項4】
前記水酸基の平均置換度が2.23~2.80であるショ糖脂肪酸エステルの含有量が550~5000ppmである、請求項1に記載の飲料。
【請求項5】
イオン性乳化剤及び微結晶セルロースの少なくとも何れかをさらに含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項6】
前記飲料が紅茶又はコーヒーである、請求項1~5に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショ糖脂肪酸エステル及び油脂を含む飲料に関する。より詳細には、ショ糖が有する水酸基の一部が脂肪族炭化水素基に置換されたショ糖脂肪酸エステルと油脂を含む飲料であって、前記ショ糖脂肪酸エステルの35~100重量%が水酸基の平均置換度が2.23~2.80であり、前記油脂の含有量が15重量%以下である飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ショ糖脂肪酸エステル(以下、「SE」と記載することもある。)は、ショ糖分子骨格における8箇の水酸基の少なくとも一部が脂肪酸族炭化水素基によりエステル化された化合物である(特許文献1)。SEのエステル置換度は、分布があり、通常、平均置換度(以下、単に「置換度」と記載することもある)で表す。
【0003】
置換度が低いSEは、親水性が高く、ミルク入コーヒー等の水中油型(O/W型)の乳化安定剤等として食品用乳化剤市場で用いられている(特許文献1~5)。しかしながら、置換度が低いSEは、乳化剤特有の異味を感じやすいという欠点があり、特に飲料など官能上センシティブな食品系での使用では問題となる。一方、置換度が大きいSEは、水への溶解性が低く、水を多く含む食品への使用量が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-28077号
【特許文献2】特開2004-194653号
【特許文献3】WO2015/034068
【特許文献4】特開2019-150021号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な課題は、風味に優れ、乳化安定性の高い飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、平均置換度が2.23~2.80であるショ糖脂肪酸エステルを特定量使用することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の[1]~[6]を提供する。
[1] ショ糖が有する水酸基の一部が脂肪族炭化水素基に置換されたショ糖脂肪酸エステルと油脂を含む飲料であって、前記ショ糖脂肪酸エステルの35~100重量%が水酸基の平均置換度が2.23~2.80であり、前記油脂の含有量が15重量%以下である、飲料。
[2]前記ショ糖脂肪酸エステルが水酸基の平均置換度が1.45~2.22であるショ糖脂肪酸エステルを含まないか、含む場合にはその含有量が300ppm以下である、[1]に記載の飲料。
[3]前記水酸基の平均置換度が2.23~2.80であるショ糖脂肪酸エステルに対する、前記水酸基の平均置換度が1.45~2.22であるショ糖脂肪酸エステルの含有量が、重量比で0.8を超えない、[2]に記載の飲料。
[4]前記水酸基の平均置換度が2.23~2.80であるショ糖脂肪酸エステルの含有量が550~5000ppmである、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5]イオン性乳化剤及び微結晶セルロースの少なくとも何れかをさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6]前記飲料が紅茶又はコーヒーである、[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の飲料は、乳化剤特有の異味がなく、経時的安定性に優れているため、缶入りコーヒー飲料や茶飲料など、長期保存が必要な飲料に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.ショ糖脂肪酸エステル
ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖分子骨格における8箇の水酸基の一部が脂肪酸族炭化水素基によりエステル化された化合物である。
【0010】
本発明の飲料は、脂肪酸による水酸基の平均置換度(「エステル平均置換度」又は単に「(平均)置換度」と言う。)が2.23~2.80であるショ糖脂肪酸エステル(高置換度SE)と、油脂を含み、前記水酸基の平均置換度が2.23~2.80であるショ糖脂肪酸エステルがショ糖脂肪酸エステルの35~100重量%であり、油脂の含有量が15重量%以下であることを特徴とする。
以下、本発明の飲料に使用されるショ糖脂肪酸エステルを「本発明のショ糖脂肪酸エステル」と記載することもある。
【0011】
「エステル平均置換度」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、エステル組成を分析し、以下の計算式に則って、その平均値を算出することにより確認することができる。
平均置換度=[mono置換体の量(wt%)×1+di置換体の量(wt%)×2+tri置換体の量(wt%)×3+tetra置換体の量(wt%)×4+penta置換体の量(wt%)×5]×0.01
【0012】
平均置換度が2.23~2.80である高置換度SEは1種類でも2種類以上であってもよい。高置換度SEとしては、例えば、平均置換度が2.48~2.80の市販のショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカル製:リョートーシュガーエステル S-370(平均置換度:2.58、HLB:約3)や、後述する実施例に記載する平均置換度が2.23~2.47のショ糖脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0013】
平均置換度が2.48~2.80のショ糖脂肪酸エステルは、稀に消泡目的で配合されることを除けば、一般的に飲料に使用される乳化剤ではない。平均置換度が2.48~2.80のショ糖脂肪酸エステルのHLBは通常約3である。
【0014】
平均置換度が2.23~2.47のショ糖脂肪酸エステルはこれまで知られておらず、発明者らが初めて製造したものである。このショ糖脂肪酸エステルは、親水性が高く、水への分散性に優れ、乳化安定性の高い乳化組成物、特に水中油型の乳化組成物を提供することができる。さらに、このショ糖脂肪酸エステルは食品用途に用いても乳化剤特有の異味が感じられ難く、風味に優れるという利点も有する。平均置換度が2.23~2.47のショ糖脂肪酸エステルのHLBは通常約4である。
【0015】
なお、本明細書において、「約」とは、基準値に対してプラス又はマイナスそれぞれ10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%または1%まで変動する値を示す。好ましくは、「約」という用語は、基準値に対してプラス又はマイナスそれぞれ10%、5%、又は1%の範囲を示す。
【0016】
本発明の飲料は、平均置換度が1.45~2.22であるショ糖脂肪酸エステルを含んでいてもよい。平均置換度が1.45~2.22であるショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、三菱ケミカル製:リョートーシュガーエステル S-570(平均置換度:2.18、HLB:約5)を挙げることができる。平均置換度が1.45~2.22のショ糖脂肪酸エステルは、従来より乳化剤として飲料に使用されているが、乳化剤特有の異味を感じる場合があるため、後述するように、飲料中での含有量は少ない方が好ましい。平均置換度が1.45~2.22のショ糖脂肪酸エステルのHLBは通常約5~12である。
【0017】
本発明の飲料は、平均置換度が1.00~1.44であるショ糖脂肪酸エステルを含んでいてもよい。平均置換度が1.00~1.44であるショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、三菱ケミカル製:リョートーシュガーエステル P-1670(平均置換度:1.22、HLB:約16)を挙げることができる。平均置換度が1.00~1.44のショ糖脂肪酸エステルは、従来より乳化剤として飲料に使用されているが、乳化剤特有の異味を感じる場合があるため、後述するように、飲料中での含有量は少ない方が好ましい。平均置換度が1.00~1.44のショ糖脂肪酸エステルのHLBは通常約13~18である。
【0018】
本発明のショ糖脂肪酸エステルが有する脂肪族炭化水素基としては、高い乳化安定性を有する水中油型の乳化物を得るためには、飽和炭化水素基が好ましい。また脂肪族炭化水素基は、鎖状炭化水素基が好ましく、直鎖状炭化水素基がより好ましい。
【0019】
脂肪族炭化水素基の炭素数は、親水性、水への分散性、水中油型乳化剤における乳化安定性という点では多いことが好ましい。一方、乳化剤特有の異味を感じ難いという点では、脂肪族炭化水素基の炭素数は少ないことが好ましい。具体的に言えば、脂肪族炭化水素基の炭素数は、乳化安定性等の点では、12以上であることが好ましく、16以上であることがより好ましく、風味の点では、22以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明のショ糖脂肪酸エステルが有する脂肪族炭化水素基としては、具体的には、パルミチン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ベヘン酸及びステアリン酸由来の基が好ましく、パルミチン酸又はステアリン酸由来の基がより好ましい。
【0021】
本発明のショ糖脂肪酸エステルが有する脂肪族炭化水素基は、55%以上がパルミチン酸又はステアリン酸由来の基であることが好ましく、60%以上がパルミチン酸又はステアリン酸由来の基であることがより好ましく、65%以上がパルミチン酸又はステアリン酸由来の基であることがさらに好ましい。
【0022】
本発明のショ糖脂肪酸エステルが有する脂肪族炭化水素基の種類と、全脂肪族炭化水素基の量に対するその割合は、高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーにより確認することができる。
【0023】
本発明のショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖と脂肪酸とのエステル化反応、又はショ糖の脂肪酸クロリドや脂肪酸無水物によるエステル化反応、ショ糖と脂肪酸の低級エステル化合物とのエステル交換反応、酵素による反応、脂肪酸エステルや脂肪酸を含む混合物へのマイクロ波照射等により製造することができる。低置換度のショ糖脂肪酸エステルは、前記製造工程において、脂肪酸メチルエステルとショ糖の比を調整することにより製造することができる。
【0024】
本発明のショ糖脂肪酸エステルは、水に分散した場合における水中油型の乳化に優れるとともに、その経時的安定性に優れる。
【0025】
本発明のショ糖脂肪酸エステルは、乳化剤特有の異味が感じられ難く、乳化安定性も高いため、飲料、とくにコーヒーや茶飲料の乳化剤として好適に使用することができる。
【0026】
2.本発明のショ糖脂肪酸エステルを含む飲料
本発明のショ糖脂肪酸エステルを含有する飲料(以下、単に「本発明の飲料」と言う場合がある。)に含有される高置換度SEの含有量は、乳化安定性の点からは多いことが好ましく、風味の点では少ないことが好ましい。具体的には、乳化安定性の点では、300ppm以上が好ましく、600ppm以上がより好ましく、800ppm以上がさらに好ましい。具体的には、風味の点では、3000ppm以下が好ましく、2000ppm以下がより好ましく、1800ppm以下がさらに好ましい。
【0027】
より詳細には、平均置換度が2.23~2.80のショ糖脂肪酸エステルは、550~5000ppmであることが好ましく、550~3000ppmであることがより好ましく、550~2500ppmであることがさらに好ましく、800~2000ppmであることが最も好ましい。
【0028】
本発明の飲料に含有される平均置換度が1.45~2.22のショ糖脂肪酸エステルの含有量は、風味の点から300ppm以下が好ましく、280ppm以下がより好ましく、150ppm以下であることがさらに好ましく、含まないことが特に好ましい。
【0029】
本発明の飲料に含有される平均置換度が1.00~1.44のショ糖脂肪酸エステルの含有量は、静菌性の点から100ppm~2000ppmであることが好ましく、300~1500ppmであることがより好ましく、500ppm~1200ppmであることがさらに好ましい。
【0030】
平均置換度が2.23~2.80であるショ糖脂肪酸エステルは飲料中において、風味の点からショ糖脂肪酸エステル全体の35~100重量%であることが好ましく、35~80重量%であることがより好ましく、50~80重量%であることがさらに好ましい。
【0031】
平均置換度が2.23~2.80のショ糖脂肪酸エステルの含有量に対する、平均置換度が1.45~2.22のショ糖脂肪酸エステルの含有量は、風味の点から、重量比で0.8を超えないことが好ましく、0.5を超えないことがより好ましく、0.4を超えないことがさらに好ましく、0.2を超えないことがもっとも好ましい。
【0032】
本発明に使用されるショ糖脂肪酸エステルは油とあらかじめ混合して均質化処理された水中油型乳化物の状態にして飲料に添加してもよい。
【0033】
本発明の飲料は、乳化安定性をより向上させるために、イオン性乳化剤を含有していてもよい。イオン性乳化剤としては、DATEM、コハク酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド及びSSLが好ましく、DATEM及びクエン酸モノグリセリドがより好ましく、DATEMが特に好ましい。本発明の飲料に含有されるイオン性乳化剤の含有量は、乳化安定性の点では多いほうが好ましく、具体的には、30ppm以上が好ましく、75ppm以上がより好ましく、150ppm以上がさらに好ましい。一方で、風味の点では少ないほうが好ましく、具体的には、500ppm以下が好ましく、350ppm以下がより好ましい。
【0034】
本発明の飲料は、乳化安定性をより向上させるために、平均重合度が2~10のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有していてもよい。
【0035】
本発明の飲料は、保管中の沈殿発生を抑制するために、微結晶セルロースを含有していてもよい。微結晶セルロースの含有量は、200~2000ppmが好ましく、350~1300ppmがより好ましい。
【0036】
本発明の飲料は、上述したショ糖脂肪酸エステル以外の安定剤を含んでもよい。安定剤としては、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、タラガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、ペクチン、ローカストビンガム、カードランなどが挙げられる。
【0037】
本発明の飲料に含有される油は、殺菌による風味劣化が起こり難く、好ましい風味にするという点で、乳脂肪、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、菜種油およびこれらの油脂に水素添加した油脂やこれらの油脂をエステル交換した油脂が好ましく、乳脂肪、ヤシ油、パーム油およびパーム核油がより好ましい。本発明の飲料に含有される油脂の含有量は、風味や乳化安定性の点から、0.1~15重量%であることが好ましく、0.3~10重量%であることがより好ましく、0.3~5重量%であることがさらに好ましく、0.5~2重量%であることが最も好ましい。
【0038】
本発明の飲料は、有機酸およびその塩、重曹、リン酸塩等のpH調整剤を含んでもよい。
【0039】
本発明の飲料は、糖類、糖アルコール、甘味料、香料、風味付け素材、ミネラル素材、栄養素材、酸化防止剤、保存料および酒類などを含んでもよい。
【0040】
糖類としては、砂糖、グラニュー糖、果糖、ブドウ糖、マルトース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、トレハロース、ラクトース、マンノオリゴ糖、マルトオリゴ糖等の単糖やオリゴ糖などが挙げられる。
【0041】
糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール等の糖アルコールなどが挙げられる。
【0042】
甘味料としては、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物等が挙げられる。
【0043】
香料としては、レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル、コーヒーフレーバー、紅茶フレーバー、バター香料、クリーム香料、ミルク香料等が挙げられる。
【0044】
風味付け素材としては、β-カロテン、アスタキサンチン、リコピン、パプリカ色素などのカロテノイド、クロロフィル等の色素、食塩等が挙げられる。
【0045】
ミネラル素材としては、カルシウム、鉄、マグネシウム、カリウムなどの塩が挙げられる。
【0046】
栄養素材としては、ビタミンやコエンザイムQ10、アミノ酸、ペプチド、DHA、EPA等が挙げられる。
【0047】
酸化防止剤としては、ビタミンC、ビタミンCナトリウム、ビタミンE、ローズマリー抽出物、茶抽出物、ヤマモモ抽出物等が挙げられる。
【0048】
保存料としては、カラシ抽出物、リゾチーム等の日持向上剤、ナイシン、ソルビン酸およびその塩等が挙げられる。
【0049】
酒類としては、リキュール、ウォッカ、焼酎等が挙げられる。
【0050】
上記した成分及び本発明のショ糖脂肪酸エステルは、適宜水などと混合した後に撹拌することにより乳化させる。乳化方法としては、通常食品に用いられる均質乳化方法であれば特に制限なく行うことができる。具体的には、例えば、ホモジナイザーを用いる方法や、コロイドミルを用いる方法、ホモミキサーを用いる方法などいずれも用いることができる。
【0051】
均質乳化処理は、通常40~80℃の加温条件下で行われる。なお、ホモジナイザーを用いた均質乳化処理として、高圧乳化処理を適用することも好ましい。1段式であればその高圧乳化時点の処理圧が、2段式等の多段式であれば、少なくとも1段の高圧乳化時点の処理圧が、通常5MPa以上、好ましくは10MPa以上、より好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上、最も好ましくは25MPa以上、通常200MPa以下、好ましくは100MPa以下の高圧乳化処理を行うことで、安定な飲料を得ることができる。
【0052】
均質乳化処理後には、UHT殺菌、レトルト殺菌などの殺菌処理を行う。通常レトルト殺菌は、110~140℃、例えば121℃で、10~40分の条件で行われる。一方、PETボトル用飲料などに用いられるUHT殺菌は、より高温、例えば殺菌温度120~150℃で、且つ121℃での殺菌価(Fo)が10~50に相当する超高温殺菌である。UHT殺菌は飲料に直接水蒸気を吹き込むスチームインジェクション式や飲料を水蒸気中に噴射して加熱するスチームインフュージョン式などの直接加熱方式、プレートやチューブなど表面熱交換器を用いる間接加熱方式など公知の方法で行うことができ、例えばプレート式殺菌装置を用いることができる。
【0053】
あるいは、本発明のショ糖脂肪酸エステルをコーヒー成分、茶成分、ココア成分を含有しない水中油型乳化物に配合し、調整した水中油型乳化物をコーヒー成分、茶成分、ココア成分等と混合し、上述の均質化工程、殺菌工程を行うことで飲料を製造することもできる。
【0054】
本発明のショ糖脂肪酸エステルは、異味を感じにくいため、コーヒー、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料、茶飲料、ココア飲料、アーモンド飲料、オーツ飲料、ココナッツミルク、ライスミルク、カシューナッツミルク、豆乳、果汁飲料、胡桃飲料、大麦ミルク、マカダミアミルク、育児用ミルク、高齢者向け高栄養食、イミテーションミルクに使用できる。とくに、コーヒー飲料、茶飲料、アーモンド飲料、オーツ飲料に好適であり、なかでもコーヒー飲料に好適である。
【0055】
本発明の飲料は容器詰め飲料に好適であり、例えば、缶飲料、ペットボトル飲料、紙パック飲料、ビン詰飲料、プラスチック容器飲料などに適用することができる。
【0056】
3.本発明のショ糖脂肪酸エステルを含むコーヒー、茶飲料
本発明にかかるコーヒーには、コーヒー豆由来の成分を含有する液体、例えば、粉砕した焙煎豆を水や温水を用いて抽出した溶液、或いは、該溶液を濃縮したコーヒーエキスや該溶液を乾燥させたインスタントコーヒーを水等に溶解した液体を含む。本発明において使用されるコーヒー抽出液の原料であるコーヒー豆は、アラビカ種でもロブスタ種でもよく、特に限定されない。例えば、当該生豆としては、メキシコ、グアテマラ、ブルーマウンテン、クリスタルマウンテン、コスタリカ、コロンビア、ベネズエラ、ブラジル・サントス、ハワイ・コナ、モカ、ケニア、キリマンジャロ、マンデリン、及びロブスタから選択される豆、又はこれらの混合豆が挙げられる。
【0057】
本発明で用いられるコーヒー抽出液は、例えば、コーヒー豆1~100g、より好ましくは20~80gに対して1Lの水で抽出されるのが好ましく、抽出時の水は、60~95℃であることが好ましい。また、当該コーヒー抽出液の抽出時間は30~120分間であることが好ましい。本発明のコーヒー抽出液の抽出方法は特に限定されず、例えば一般的なドリップ法や浸漬法、エスプレッソ法などで抽出されうる。
【0058】
本発明にかかる茶飲料(茶系飲料)は、茶及び茶外茶による飲料であって、緑茶系飲料、紅茶飲料、ブレンド茶飲料、ウーロン茶飲料、麦茶飲料を含む。本発明の茶飲料は、通常の茶抽出液の調製に用いられている方法を用いて製造される茶抽出液やその濃縮液または希釈液から調製することができる。例えば、茶葉と水(0~100℃)を混合接触させるか、あるいは、茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物を水(0~100℃)に混合または溶解させることにより、本発明に用いられる茶抽出液を得ることができる。また、上記の茶葉と水を混合接触させて得られる茶抽出液と、上記の茶エキスや茶パウダーとを混合したものを茶抽出液として本発明の茶飲料に用いてもよい。茶葉と水を混合接触させた場合には、遠心分離や濾過などの分離手段を用いて茶葉と茶抽出液を分離することができる。また、茶抽出液の調製に際し茶葉以外の任意の原料を配合してもよい。
【0059】
コーヒーまたは茶飲料に含有される本発明のショ糖脂肪酸エステルの含有量は、飲料において記載したとおりである。コーヒーまたは茶飲料に使用する場合にも、乳化安定性をより向上させるために、イオン性乳化剤や平均重合度が2~10のポリグリセリン脂肪酸エステル、微結晶セルロースを含むことが好ましい。
【実施例0060】
以下、実施例により本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
試験例1
1.ショ糖脂肪酸エステルの製造
以下のようにして、平均置換度2.31のショ糖脂肪酸エステルを製造した。
ショ糖1モルに対して、ステアリン酸メチルエステル0.56モルを反応させた。反応は、ショ糖とステアリン酸とパルミチン酸の混合脂肪酸メチルエステル30重量%に対し、70重量%のDMSOを溶媒として用いて行った。反応は、無水状態下で炭酸カリウムを触媒として用いて行った。反応は90℃で、2.7KPaで行った。副生した低級アルコールは留去させながら反応させた。反応終了後、乳酸を用いて(炭酸カリウム)触媒を中和して粗ショ糖脂肪酸エステルを得た。溶媒を除去して粗ショ糖脂肪酸エステルを精製し、平均置換度2.31のショ糖脂肪酸エステル(粉末)を得た。なお、このショ糖脂肪酸エステルのHLBは約4、構成脂肪酸のうちステアリン酸は70%であった。
【0062】
2.缶入りミルクコーヒーの製造
上記ショ糖脂肪酸エステルに加えて、2種類の市販のショ糖脂肪酸エステルを用いて、後述する手順により缶入りミルクコーヒー(実施例1~9及び比較例1~3)を製造した。
・1で製造したショ糖脂肪酸エステル(平均置換度:2.31、HLB:約4、ステアリン酸70%)
・市販品 三菱ケミカル製:リョートーシュカ゛ーエステル S-370(平均置換度:2.58、HLB:約3、ステアリン酸70%)
・市販品 三菱ケミカル製:リョートーシュカ゛ーエステル S-570(平均置換度:2.18、HLB:約5、ステアリン酸70%)
・市販品 三菱ケミカル製:リョートーシュカ゛ーエステル P-1670(平均置換度:1.22、HLB:約16、パルミチン酸70%)
<有機酸モノグリセリド>
DATEM:ダニスコ社製「DATEM517K」
クエン酸モノグリセリド:ダニスコ社製「GRINDSTED CITREM BC/B」
<乳成分>
脱脂粉乳:よつ葉乳業社製「よつ葉北海道脱脂粉乳」
<粉末油脂>
Nestle C40:ネスレ社製(脂質含量34.5%)
<その他の成分>
微結晶セルロース:旭化成ケミカル社製「セオラスSC-900S」
重曹:富士フィルム和光純薬社製
グラニュー糖:日新製糖社製
インスタントコーヒー:ロブスタ インドネシア 高砂香料社製
【0063】
インスタントコーヒーに10倍量の熱水を加えたコーヒー液に、予め熱水で溶解した重曹を加えてpHを調整後、表1に記載する組成(重量%)となるように各成分を加えて混合、溶解させ、さらに水を加えた。この液を65℃に昇温し、高圧ホモジナイザーにて20MPaの圧力で均質化後、缶容器に充填、密封し、121℃、30分間のレトルト殺菌を行い、缶入りミルクコーヒーを製造した。殺菌後の飲料のpHは6.8~7.0であり、飲料に分散した油滴のメジアン径は0.15~0.20μmであった。
【0064】
【0065】
実施例1~9、比較例1~3の缶入りミルクコーヒーに含まれるショ糖脂肪酸エステル、及び安定剤の組成を表2に示す。
【0066】
2.各缶入りミルクコーヒーの評価
得られた各缶入りミルクコーヒーについて、以下の評価を行い、結果を表2に示した。
【0067】
<風味評価>
殺菌後のミルクコーヒーについて、訓練された1名のパネルにより風味を下記基準で評価した。
良:後味の渋みが弱く、良好な風味である。
否:後味の渋みが強く、風味が劣る。
【0068】
<60℃、2週間後安定性>
油粒:各缶入りミルクコーヒーを60℃で2週間保管し、その後、4℃で一晩静置した。翌日、缶を開けた際のクリーミングの発生状況と、内容液をカップに移した際の油粒の発生状況を目視観察し、下記基準で評価した。
1:油粒が多量に存在する。
2:油粒が少量存在する。
3:開缶時のクリーミングが少し見られるが、内容液をカップに移した際の油粒が全くない状態である。
4:開缶時のクリーミングがほとんど見られず、内容液をカップに移した際の油粒が全くなく、良好な状態である。
【0069】
沈殿:上記の油粒の評価において、内容液をカップに移した後の缶底を目視観察し、下記基準で評価した。
1:沈殿物がある。
2:沈殿物がわずかに存在する。
3:沈殿物が全くなく良好である。
【0070】
【0071】
3.結果
平均置換度が2.58のショ糖脂肪酸エステルあるいは平均置換度が2.31のショ糖脂肪酸エステルを含む実施例1~9の飲料は、風味に優れていることが裏付けられた。これに対して、比較例1及び2の飲料は、風味に劣り、比較例3の飲料は安定性が悪かった。
【0072】
実施例4~8の結果から、更にイオン性乳化剤を含むことで安定性が改善されることが裏付けされた。また、実施例6及び7の結果から、更に微結晶セルロースを含むことで沈殿生成が抑制できることが裏付けされた。