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特開2024-81350ナノ粒子製造装置及びナノ粒子製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081350
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ナノ粒子製造装置及びナノ粒子製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20240611BHJP
   B22F 9/14 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B01J19/08 K
B22F9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194904
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】599098747
【氏名又は名称】竹内電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神原 淳
(72)【発明者】
【氏名】太田 遼至
(72)【発明者】
【氏名】田中 暁巳
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓
(72)【発明者】
【氏名】道垣内 将司
(72)【発明者】
【氏名】福田 健一
【テーマコード(参考)】
4G075
4K017
【Fターム(参考)】
4G075AA03
4G075AA27
4G075AA62
4G075BA05
4G075BB05
4G075BD09
4G075CA03
4G075CA48
4G075DA02
4G075EA05
4G075EB43
4G075EC09
4G075FC02
4K017AA02
4K017BA01
4K017BA05
4K017BA06
4K017BA10
4K017CA08
4K017EF02
(57)【要約】
【課題】ナノ粒子の回収効率に優れたナノ粒子製造装置及びナノ粒子製造方法を提供する。
【解決手段】ナノ粒子製造装置10は、プラズマフレーム16を発生するプラズマトーチ11と、プラズマフレーム16に原料20を供給し、原料20を気化させ原料ガス21を生成させる原料供給部12と、原料ガス21の凝縮により生成されたナノ粒子22を含むガス流23が生成される反応容器13と、ナノ粒子22を含むガス流23が導入され、ガス流23の流れを整流し、かつ、ガス流23を冷却する整流/冷却部14と、冷却されたガス流23が導入され、ナノ粒子22を回収する回収部15とを備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマフレームを発生するプラズマトーチと、
前記プラズマフレームに原料を供給し、前記原料を気化させ原料ガスを生成させる原料供給部と、
前記原料ガスの凝縮により生成されたナノ粒子を含むガス流が生成される反応容器と、
前記ナノ粒子を含む前記ガス流が導入され、前記ガス流の流れを整流し、かつ、前記ガス流を冷却する整流/冷却部と、
冷却された前記ガス流が導入され、前記ナノ粒子を回収する回収部とを備えるナノ粒子製造装置。
【請求項2】
前記整流/冷却部は、前記ガス流の流れを一方向に整流する直管と、冷媒が流れる冷媒管とを有する請求項1に記載のナノ粒子製造装置。
【請求項3】
前記整流/冷却部は、前記ガス流の流れを整流して旋回流とするベーンと、前記ガス流を冷却する冷却部と、前記冷却部により冷却された前記ガス流を前記回収部へ導く流路とを有する請求項1に記載のナノ粒子製造装置。
【請求項4】
前記回収部は、逆洗フィルタを有する請求項2または3に記載のナノ粒子製造装置。
【請求項5】
前記回収部は、前記逆洗フィルタを封止するバルブを有する請求項4に記載のナノ粒子製造装置。
【請求項6】
前記バルブにより、前記ナノ粒子の酸化度合いを制御する請求項5に記載のナノ粒子製造装置。
【請求項7】
プラズマフレームに原料を供給し、前記原料を気化させ原料ガスを生成し、
前記原料ガスの凝縮によりナノ粒子を生成し、
前記ナノ粒子を含むガス流の流れを整流し、かつ、前記ガス流を冷却し、
冷却された前記ガス流に含まれた前記ナノ粒子を回収するナノ粒子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子製造装置及びナノ粒子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粒径1000nm未満のナノ粒子は、電子デバイス、センサ、バイオや医療、半導体などの様々な分野で用いられている。例えばリチウムイオン二次電池の負極材料として、カーボンが一般的に使用されているが、さらなる高容量化のためにシリコンが有力な候補になっている。シリコンを負極材料として用いる場合は、充放電に伴うシリコンの割れが問題となるが、この問題に対する有効な解決策としてシリコンのナノ粒子化が提案されている。
【0003】
材料のナノ粒子化により様々な効能が発揮されることは研究室レベルで実証されているが、産業規模での高品質なナノ粒子の製造に向けて大きな技術課題がある。ナノ粒子製造方法として、メカニカルアイロニング法、ゾル-ゲル法、CVD法が知られているが、大量生産に不向きである等の課題を有する。産業利用が期待されるナノ粒子製造方法のひとつとして、高周波プラズマスプレー法が知られている。高周波プラズマスプレー法は、原料を高温プラズマに供給することで、原料の完全蒸発による原料ガスの生成と、続く原料ガスの急速凝縮とにより、ナノ粒子を形成する。
【0004】
特許文献1には、高温プラズマを用いて原料を蒸発させ、ナノ粒子として回収するナノ粒子製造装置が開示されている。特許文献1では、ナノ粒子を含む高温ガスを、積層した冷却板の間を通すことで蒸発ガスが冷却板に接触する面積を大きくし、またガスに乱流を生じさせて効率的に冷却し、生成したナノ粒子を積極的に捕捉している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-136200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたナノ粒子製造装置では、冷却板に至る前に装置内を滞留して装置内壁に付着したナノ粒子、冷却板に付着したナノ粒子、装置下部に落下したナノ粒子をハケ等で掃き落とす作業が必要とされており、長時間連続運転が困難であるほか、作業者がナノ粒子に暴露するという問題があった。
【0007】
本発明は、ナノ粒子の回収効率に優れたナノ粒子製造装置及びナノ粒子製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るナノ粒子製造装置は、プラズマフレームを発生するプラズマトーチと、前記プラズマフレームに原料を供給し、前記原料を気化させ原料ガスを生成させる原料供給部と、前記原料ガスの凝縮により生成されたナノ粒子を含むガス流が生成される反応容器と、前記ナノ粒子を含む前記ガス流が導入され、前記ガス流の流れを整流し、かつ、前記ガス流を冷却する整流/冷却部と、冷却された前記ガス流が導入され、前記ナノ粒子を回収する回収部とを備える。
【0009】
本発明に係るナノ粒子製造方法は、プラズマフレームに原料を供給し、前記原料を気化させ原料ガスを生成し、前記原料ガスの凝縮によりナノ粒子を生成し、前記ナノ粒子を含むガス流の流れを整流し、かつ、前記ガス流を冷却し、冷却された前記ガス流に含まれた前記ナノ粒子を回収する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ナノ粒子の回収効率に優れたナノ粒子製造装置及びナノ粒子製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るナノ粒子製造装置の構成を示す模式図である。
図2】第2実施形態に係るナノ粒子製造装置の構成を示す模式図である。
図3】軸流型サイクロンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
1.全体構成
図1において、本実施形態に係るナノ粒子製造装置10は、プラズマトーチ11と、原料供給部12と、反応容器13と、整流/冷却部14と、回収部15とを備える。ナノ粒子製造装置10では、プラズマトーチ11と反応容器13とが直列に配置されており、プラズマトーチ11が上側であり、反応容器13が下側である。
【0014】
プラズマトーチ11は、反応容器13に設けられている。プラズマトーチ11はプラズマフレーム16を発生する。プラズマトーチ11としては、直流プラズマトーチ、高周波プラズマトーチ、直流プラズマトーチと高周波プラズマトーチとを有するハイブリッド型プラズマトーチなどを用いることができる。直流プラズマトーチは、直流電源と接続する陰極電極及び陽極電極と、両電極間に作動ガスを流通させる流路とを有する。直流プラズマトーチは、ガス流路に作動ガスが供給され、両電極間に直流電圧が印加されることで、両電極間に生じる放電によって作動ガスをプラズマ化させ、直流プラズマを発生する。高周波プラズマトーチは、作動ガスが流通する絶縁管と、絶縁管の外周に巻き付けられ、高周波電源と接続する高周波誘導コイルとを有する。高周波プラズマトーチは、絶縁管に作動ガスが供給され、高周波誘導コイルに高周波電流が印加されることで、電磁誘導によって作動ガスをプラズマ化させ、高周波プラズマを発生する。ハイブリッド型プラズマトーチは、直流プラズマと高周波プラズマとを重畳させたハイブリッドプラズマを発生する。本実施形態では、プラズマトーチ11として、ハイブリッド型プラズマトーチを用いている。
【0015】
プラズマトーチ11は、図示しないが、電源、作動ガス供給部、冷媒供給部、及び制御部と接続している。電源は、プラズマトーチ11に対し電流と電圧とを印加する。作動ガス供給部は、プラズマトーチ11に対し作動ガスを供給する。作動ガスとしては、例えばArガスとHガスとの混合ガスが用いられる。冷媒供給部は、冷媒を用いてプラズマトーチ11を冷却する。冷媒としては、例えば水が用いられる。制御部は、電源、作動ガス供給部、冷媒供給部と電気的に接続しており、電流、電圧、作動ガスの供給量、作動ガスの流量、反応容器13内の圧力、冷媒の供給量、冷媒の温度などの制御と監視とを行う。プラズマトーチ11は、作動ガス供給部から作動ガスが供給され、電源から電流と電圧とが印加されることにより、作動ガスをプラズマ化させ、高温のプラズマフレーム16を発生する。プラズマフレーム16の平均速度は数十m/secである。プラズマフレーム16は、反応容器13の内部に導入される。
【0016】
プラズマフレーム16は、当該プラズマフレーム16の発生部17から尾炎部18に向かうほど温度が低くなっている。プラズマフレーム16の発生部17は、後述する粉末の原料20の沸点以上の温度領域を有する。発生部17は、プラズマフレーム16の最高温度領域である。
【0017】
原料供給部12は、プラズマトーチ11に設けられている。原料供給部12は、本実施形態ではプラズマトーチ11の上部に設けられているが、これに限定されず、例えばプラズマトーチ11の下部に設けても良い。原料供給部12は、プラズマフレーム16に、ナノ粒子を構成する元素を含む粉末の原料20を供給する。原料供給部12は、本実施形態では、キャリアガスを用いて粉末の原料20をプラズマフレーム16の発生部17に供給する。キャリアガスとしては、例えば、Ar、H、N、O、CH、C、これらの混合ガスが用いられる。なお、原料供給部12は、水やエタノールなどの溶媒に粉末の原料20を懸濁させた懸濁液をプラズマフレーム16に供給するように構成しても良い。原料供給部12から、プラズマフレーム16に原料20が供給されると、原料20が気化し、原料ガス21が生成される。
【0018】
原料20としては、プラズマフレーム16中で溶融、蒸発する材料であれば良く、例えばSi、Cu、Al、Fe、Ti等の金属、これら金属の混合粉末や合金、酸化物、窒化物、炭化物などのセラミックスが用いられる。よって、ナノ粒子製造装置10は、選択された原料20に応じて、金属のナノ粒子、合金のナノ粒子、セラミックスのナノ粒子ならびに複数の元素から構成される複合構造を有するナノ粒子を製造する。合金のナノ粒子や複数の元素を含む複合構造を有するナノ粒子を製造する場合は、原料20に合金を用いても良いし、合金を構成する複数の金属を原料20に用いても良い。本実施形態では、原料20としてSiを用いている。粉末の原料20の直径は、0.1μm以上100μm以下が好ましく、0.1μm以上20μm以下がより好ましく、0.1μm以上5μm以下が特に好ましい。
【0019】
反応容器13は、上部13aと、上部13aと対向するように設けられた下部13bと、上部13aと下部13bとを接続する側部13cとを有する。反応容器13の形状は、本実施形態では円柱状であるが、これに限定されず、楕円柱状、角柱状、逆円錐状、逆角柱状等でも良い。上部13aは、側部13cの上端に設けられた円盤状の蓋である。上部13aの中央にはプラズマトーチ11が設けられている。下部13bは、上端が開口した有底筒状の容器である。側部13cは、上部13aと接続された円筒部30と、下部13bと接続された円錐部31とにより構成されている。円筒部30は、その側面に、整流/冷却部14が接続される開口が設けられている。反応容器13は、上部13aがプラズマトーチ11と接続しており、プラズマトーチ11からプラズマフレーム16が導入される。反応容器13に導入されたプラズマフレーム16は、反応容器13の上部13aから下部13bへ向かうほど温度が低くなる。
【0020】
反応容器13にプラズマフレーム16が導入され、プラズマフレーム16中に原料ガス21が生成される。原料ガス21は、プラズマフレーム16の流れに沿って、発生部17から尾炎部18へ向けて移動し、この移動に伴い冷却される。原料ガス21が冷却される過程で急速凝縮してナノ粒子22が生成される。ここで、ナノ粒子とは、粒径1000nm未満の粒子である。反応容器13では、ナノ粒子22を含むガス流23が発生する。生成されたナノ粒子22は軽いため、ガス流23に乗って反応容器13の内部を浮遊する。ナノ粒子22が反応容器13の内壁に衝突すると、当該内壁にナノ粒子22が付着することがある。本実施形態では、後述する整流/冷却部14により、ナノ粒子22を含むガス流23を整流する。反応容器13の内壁へのナノ粒子22の衝突が抑制されるので、反応容器13の内壁に付着するナノ粒子22を減少させることができる。整流/冷却部14の整流効果により、反応容器13内でのナノ粒子22の対流循環を低減でき、反応容器13の内壁へのナノ粒子22の付着(確率)を抑えて、反応容器13の内壁に付着するナノ粒子22を減少させることができる。また、反応容器13では、ナノ粒子22のほか、原料20が完全に蒸発しないで凝集した粗大粒子24が生成される。ここで、粗大粒子とは、粒径1μm以上の粒子である。粗大粒子24は、ガス流23に乗らないで反応容器13の下部13bへ落下する。粗大粒子24は、反応容器13の下部13bから回収しても良い。
【0021】
本実施形態では、反応容器13は、冷却ガス導入部13dを有する。冷却ガス導入部13dは、図1では反応容器13の上部13aに設けられているが、これに限られず、反応容器13の側部13cに設けても良い。冷却ガス導入部13dは、図示しない冷却ガス供給部と接続しており、冷却ガス供給部から供給される冷却ガス25を反応容器13の内部に導入させる。冷却ガス25としては、Ar、H、N、O、CH、C、これらの混合ガスが用いられる。冷却ガス25としては、例えば、原料供給部12においてプラズマフレーム16に粉末の原料20を供給する際に用いたキャリアガスと同じガスが用いられる。なお、冷却ガス25として、キャリアガスと異なるガスを用いても良い。反応容器13に冷却ガス25が導入されることにより、後述する整流/冷却部14を流れるガス流23の流速が増大し、整流/冷却部14へのナノ粒子22の流入量が増加し、反応容器13の内壁へのナノ粒子22の付着が抑えられる。この結果、回収部15へのナノ粒子22の輸送量が増加し、回収部15でのナノ粒子22の回収量を高めることができる。なお、反応容器13は、冷却ガス導入部13dを有するものに限定されない。
【0022】
整流/冷却部14は、反応容器13と回収部15との間に設けられている。整流/冷却部14は、反応容器13と接続された入口14aと、回収部15と接続された出口14bとを有する。整流/冷却部14では、入口14aからガス流23が流入し、出口14bからガス流23が流出する。整流/冷却部14の入口14aは、反応容器13の側部13c(円筒部30)に配置されている。整流/冷却部14の入口14aは、プラズマフレーム16の発生部17と尾炎部18との間の反応容器13の側部13c(円筒部30)に配置されることが望ましい。整流/冷却部14の入口14aの温度は、200℃以上3000℃以下が好ましく、400℃以上2500℃以下がより好ましく、600℃以上2500℃以下が特に好ましい。本実施形態では、整流/冷却部14の入口14aは、プラズマフレーム16の尾炎部18近傍の円筒部30に設けられており、入口14aの温度は900℃である。入口14aの温度は、図示しない温度センサにより検出される。
【0023】
整流/冷却部14には、反応容器13からナノ粒子22を含むガス流23が導入される。整流/冷却部14の入口14aでは、排気部29からの吸引によってガス流23の流れを特定の向きに誘導し、かつ整流/冷却部14内を通過させることで、ガス流23を整流、冷却する。整流/冷却部14は、ガス流23に含まれたナノ粒子22が反応容器13の内壁に衝突しないように、ガス流23の流れを整流する。整流/冷却部14は、反応容器13から導入されたガス流23の温度を、回収部15の耐熱温度以下に冷却する。整流/冷却部14で冷却されたガス流23は、出口14bから回収部15へ導かれる。整流/冷却部14の出口14bの温度は、180℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、60℃以下が特に好ましい。本実施形態では、出口14bの温度は27℃である。出口14bの温度は、図示しない温度センサにより検出される。
【0024】
本実施形態では、整流/冷却部14は、ナノ粒子22を含むガス流23の流れを一方向に整流する直管26と、冷媒28が流れる冷媒管27とを有する直管型ラジエータである。ここで言う直管型ラジエータは、冷媒管27を流れる冷媒28により直管26内部のナノ粒子22を含むガス流23を冷却する二重管式熱交換器のような構造、または複数の直管26とその周囲を覆う冷媒管27(外殻とも言う)とから構成され外殻内部を流れる冷媒28により直管26内部のナノ粒子22を含むガス流23を冷却するシェルアンドチューブ熱交換器のような構造であって、ガス流路が直管であるためガス流23及びガス流23に含まれるナノ粒子22が直線的に移動しつつ冷却されることを特徴とする。ガス流23は管壁との熱交換により冷却されるほか、ナノ粒子22はガス流23を介した熱伝達冷却のほか直管26壁への放射により効果的に冷却が行われるため、固気混相流における粒子冷却を促進することができる。熱伝達及び放射の効果を高めるため、直管26の内部に、当該直管26の軸方向と平行に延びるフィンを設け、伝熱面を大きくしても良い。
【0025】
整流/冷却部14としての直管型ラジエータは、直管26の外側に冷媒管27を設けた二重管構造を有する。図1では、整流/冷却部14は、直管26を流通するガス流23と冷媒管27を流通する冷媒28とが互いに対向して流れるように構成されている。直管26を流通するガス流23と冷媒管27を流通する冷媒28との熱交換によりガス流23が冷却される。整流/冷却部14は、反応容器13から導入されたガス流23を、直管26の内壁に沿って一方向に流通させ、回収部15へ導く。ガス流23に含まれたナノ粒子22は直管26の内壁に衝突する機会が減少し、かつ管内流速が飛散開始気流速度以上の場合は付着粒子が剥離するので、直管26の内壁に付着するナノ粒子22が減少し、回収部15まで到達するナノ粒子22が増加する。
【0026】
直管26の長さは、1250mm以下が好ましく、750mm以下がより好ましく、500mm以下が特に好ましい。直管26の断面積は、5mm以上180mm以下が好ましく、5mm以上20mm以下がより好ましく、5mm以上10mm以下が特に好ましい。このとき、直管26の長さと合わせて考えると、直管1本あたりの伝熱面積は単純計算で5500mm以上59000mm以下となる。直管26の内部を流れるガス流23の流速は、直管26の内壁への粒子付着の抑制及びせん断力による付着粒子の剥離の点から、0.1m/s以上120m/s以下が好ましく、25m/s以上120m/s以下が特に好ましい。
【0027】
整流/冷却部14は、本実施形態では直管26と冷媒管27とを1つずつ有するものであるが、これに限定されない。整流/冷却部14は、複数の直管26を有するシェルアンドチューブ型でも良い。複数の直管26を有する場合、複数の直管26は、直管26の軸方向から見たときにハニカム状に配置されていることが好ましい。整流/冷却部14は、複数の冷媒管27を有するものでも良い。複数の冷媒管27を有する場合、複数の冷媒管27は、1つの直管26を覆うように設けても良いし、束ねられた複数の直管26を覆うように設けても良い。複数の直管26を互いに間隔を開けて配置し、直管26同士の間に冷媒管27を設けても良い。直管26の断面形状は、本実施形態では円形であるが、これに限られず、楕円形、多角形、或いは直管26の内壁とガス流23との接触面積が大きくなるような凹凸形状(例えば多葉状)でも良い。冷媒管27の断面形状は、本実施形態では円形であるが、これに限られず、楕円形、多角形、或いは冷媒管27の内壁と冷媒28との接触面積が大きくなるような凹凸形状(例えば多葉状)でも良い。
【0028】
回収部15は、整流/冷却部14により冷却されたガス流23が導入され、ガス流23に含まれたナノ粒子22を回収する。回収部15は、真空ポンプ等で構成された排気部29と接続しており、ガス流23を排出するように構成されている。回収部15は、整流/冷却部14及び排気部29に対し、着脱自在に構成しても良い。
【0029】
回収部15は、フィルタ15aと、バルブ15b、15cとを有する。フィルタ15aは、ガス流23に含まれたナノ粒子22を捕集するためのものである。回収部15は、フィルタ15aとして、逆洗フィルタを有することが望ましい。逆洗とは、フィルタでナノ粒子を捕集する際の気流とは反対方向の気流(逆洗気流と称する)を発生させて、フィルタに付着したナノ粒子を離脱させる動作を言う。逆洗気流によって、フィルタで捕集されたナノ粒子が、フィルタの表面から離隔してフィルタ容器内に沈降する。このような逆洗の動作により、フィルタ15aの目詰まりを解消してナノ粒子捕集能力を回復させることができるほか、手作業での粒子回収作業が不要になり作業効率や安全性が向上する。
【0030】
バルブ15b、15cは、フィルタ15a(逆洗フィルタ)を封止するためのものである。バルブ15b、15cとしては、例えばゲートバルブが用いられる。バルブ15bは、整流/冷却部14とフィルタ15aとの間に設けられている。バルブ15cは、フィルタ15aと排気部29との間に設けられている。バルブ15b、15cを開くことで、反応容器13で発生したガス流23が、整流/冷却部14、回収部15、排気部29の順に流れる。バルブ15b、15cを閉じることにより、回収部15によりナノ粒子22を大気非暴露で回収することができる。このため、ナノ粒子製造装置10では、回収部15により回収されるナノ粒子22の酸化を抑制することができる。また、ナノ粒子製造装置10では、バルブ15b、15cにより、ナノ粒子22の酸化度合いを制御することができる。例えば、バルブ15b、15cの開度を増加させることで、ナノ粒子22の酸化度合いを高くする(酸化を進行させる)ことができる。
【0031】
2.製造方法
ナノ粒子22を製造するナノ粒子製造方法について以下に説明する。
【0032】
まず、プラズマフレーム16に原料20を供給する。プラズマフレーム16に供給された粉末の原料20は、当該原料20の沸点以上の温度領域を通過するようにプラズマフレーム16中を飛翔して完全蒸発する。この例では、原料20は、プラズマフレーム16の最高温度領域である発生部17を通過して完全蒸発する。このようにして原料20を気化させ、原料ガス21を生成する。
【0033】
原料ガス21は、プラズマフレーム16の流れに沿って、プラズマフレーム16の発生部17から尾炎部18へ向けて移動し、この移動に伴い冷却される。原料ガス21の冷却過程で、原料ガス21の凝縮によりナノ粒子22を生成する。
【0034】
次に、ナノ粒子22を含むガス流23の流れを整流し、かつ、ガス流23を冷却する。ここで、ナノ粒子22を含むガス流23の流れを整流しない場合は、ガス流23が反応容器13内の低速ガスとの摩擦などによって乱流となることで、ガス流23に含まれたナノ粒子22が反応容器13の内壁に衝突し、反応容器13の内壁にナノ粒子22が付着し易くなる。これに対し、本実施形態では、ガス流23に含まれたナノ粒子22が反応容器13の内壁に衝突しないように整流され、反応容器13の内壁へのナノ粒子22の付着が抑制される。ガス流23は、回収部15の耐熱温度以下に冷却される。そして、冷却されたガス流23に含まれたナノ粒子22を回収する。
【0035】
3.作用及び効果
以上のナノ粒子製造装置10は、ナノ粒子22を含むガス流23の流れを整流し、かつ、ガス流23を冷却する整流/冷却部14と、冷却されたガス流23に含まれたナノ粒子22を回収する回収部15とを備える。反応容器13の内壁に付着するナノ粒子22が減少し、回収部15まで到達するナノ粒子22が増加する。したがって、ナノ粒子製造装置10は、ナノ粒子22の回収効率に優れている。
【0036】
ナノ粒子製造装置10は、整流/冷却部14として直管型ラジエータを備えており、ガス流23に含まれたナノ粒子22が直管26の内壁に衝突しないので、回収部15へのナノ粒子22の輸送量が増加する。また、直管型ラジエータによりガス流23の急冷が可能となり、反応容器13の小型化が図れる。反応容器13の小型化により、反応容器13の内壁の面積を最小化させることができ、回収部15へのナノ粒子22の輸送量がより増加する。
【0037】
回収部15は、フィルタ15aとして逆洗フィルタを有している。ナノ粒子製造装置10は、フィルタ15aの目詰まりを解消してナノ粒子捕集能力を回復させることができるほか、手作業での粒子回収作業が不要になり作業効率や安全性が向上する。
【0038】
回収部15は、バルブ15b、15cを有している。ナノ粒子製造装置10は、バルブ15b、15cを閉じることにより、ナノ粒子22を大気非暴露で回収することができるので、ナノ粒子22の回収効率に優れるとともに、ナノ粒子22の酸化を抑制することができる。ナノ粒子製造装置10は、バルブ15b、15cの開度を調整することで、ナノ粒子22の酸化度合いを制御することができる。
【0039】
以上のナノ粒子製造方法は、ナノ粒子22を含むガス流23の流れを整流し、かつ、ガス流23を冷却し、冷却されたガス流23に含まれたナノ粒子22を回収する。上述したように、反応容器13の内壁に付着するナノ粒子22が減少し、回収部15まで到達するナノ粒子22が増加する。したがって、ナノ粒子製造方法は、ナノ粒子22の回収効率に優れている。
【0040】
<第2実施形態>
上記第1実施形態は、整流/冷却部14として直管型ラジエータを備えたものであるが、第2実施形態は、整流/冷却部として軸流型サイクロンを備えている。上記第1実施形態と同じ部材を用いているものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0041】
図2に示すように、ナノ粒子製造装置40は、プラズマトーチ11と、原料供給部12と、反応容器43と、整流/冷却部44と、回収部15とを備える。プラズマトーチ11、原料供給部12、及び回収部15の説明は省略する。
【0042】
反応容器43は、上部13aと、上部13aと対向するように設けられた下部13bと、上部13aと下部13bとを接続する側部13cとを有する。反応容器43は、第1実施形態の冷却ガス導入部13d(図1参照)を有しないこと以外は、第1実施形態の反応容器13と同じ構成を有する。反応容器43にプラズマフレーム16が導入され、プラズマフレーム16中に原料ガス21が生成される。原料ガス21がプラズマフレーム16の流れに沿って移動することで冷却され、原料ガス21の急速凝縮によりナノ粒子22が生成される。反応容器43では、ナノ粒子22を含むガス流23が発生する。なお、反応容器43は、冷却ガス導入部13dを有するものでも良い。冷却ガス導入部13dを有する場合は、整流/冷却部44を流れるガス流23の流速が増大し、整流/冷却部44へのナノ粒子22の流入量が増加し、反応容器43の内壁へのナノ粒子22の付着が抑えられる。この結果、回収部15へのナノ粒子22の輸送量が増加し、回収部15でのナノ粒子22の回収量を高めることができる。
【0043】
整流/冷却部44は、反応容器43の内部に設けられている。より具体的には、整流/冷却部44は、プラズマフレーム16の尾炎部18近傍に設けられている。整流/冷却部44には、反応容器43で生成されたナノ粒子22を含むガス流23が導入される。整流/冷却部44は、ガス流23の流れを整流し、かつ、ガス流23を冷却する。
【0044】
図3に示すように、整流/冷却部44は、ガス流23の流れを整流して旋回流とするベーン45と、ガス流23を冷却する冷却部46と、冷却されたガス流23を回収部15へ導く流路47とを有する、軸流型サイクロンである。整流/冷却部44としての軸流型サイクロンは、複数のベーン45が間隔をあけて環状に配置されており、隣接するベーン45の隙間からガス流23が吸引されるように構成されている。隣接するベーン45の隙間は、整流/冷却部44の入口として機能する。整流/冷却部44の入口の温度は、200℃以上3000℃以下が好ましく、400℃以上2500℃以下がより好ましく、600℃以上2500℃以下が特に好ましい。ガス流23は、ベーン45の隙間から吸引され、ベーン45に沿って流れることで、反応容器43の上部13aから下部13bへ向けて旋回しながら移動する。反応容器43の下部13bへ移動したガス流23は、その流れの方向が反転し、反応容器43の下部13bから上部13aへ向けて移動する。ナノ粒子22は、ガス流23に乗って反応容器43の下部13bから上部13aへ移動し、流路47を介して、回収部15に導かれる。ガス流23中に粗大粒子24が含まれている場合、粗大粒子24は、ガス流23の旋回流により遠心力を受けて反応容器43の側部13c(円筒部30及び円錐部31)の内壁に押し付けられ、自重により反応容器43の下部13bに落下する。反応容器43の下部13bに落下した粗大粒子24を回収しても良い。ベーン45は、本実施形態では反応容器43の側部13cとの間に隙間をあけて配置されているが(図2参照)、これに限定されず、反応容器43の側部13cとの間に隙間なく配置しても良い。冷却部46は、図示しない冷媒供給部と接続しており、冷媒供給部から供給される冷媒により、ガス流23を冷却する。流路47は、回収部15と接続している。流路47は、反応容器43の内部に設けられた流入口47aと、反応容器43の側部13cに設けられた流出口47bとを有する。流路47は、流入口47aからガス流23が流入し、流出口47bからガス流23を流出する。流路47の流出口47bは、整流/冷却部44の出口として機能する。整流/冷却部44の出口の温度は、180℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、60℃以下が特に好ましい。
【0045】
以上のナノ粒子製造装置40は、ナノ粒子22を含むガス流23の流れを整流し、かつ、ガス流23を冷却する整流/冷却部44と、冷却されたガス流23に含まれたナノ粒子22を回収する回収部15とを備える。反応容器43の内壁に付着するナノ粒子22が減少し、回収部15まで到達するナノ粒子22が増加する。したがって、ナノ粒子製造装置40は、ナノ粒子22の回収効率に優れている。
【0046】
ナノ粒子製造装置40は、整流/冷却部44として軸流型サイクロンを備えており、ガス流23の流れを整流して旋回流とすることで、ナノ粒子22と粗大粒子24とを分離して回収することができる。そのため、回収するナノ粒子22に粗大粒子24が混じらず、回収後の分級作業が不要になる。また軸流型サイクロンは、接線流入型サイクロンと比べて小型化が可能であり、反応容器43の小型化が図れる。反応容器43の小型化により、反応容器43の内壁の面積を最小化させることができ、回収部15へのナノ粒子22の輸送量がより増加する。
【0047】
4.実施例
回収部15でのナノ粒子22の回収量を調べる実験を行った。整流/冷却部14として直管型ラジエータを用いたナノ粒子製造装置10を実施例1、2とした。実施例1では、反応容器13に冷却ガス25を導入しなかった。実施例2では、反応容器13に冷却ガス25を導入した。すなわち、実施例2では、反応容器13に冷却ガス25を導入することにより、整流/冷却部14を流れるガス流23の流速を実施例1より増大させた。なお冷却ガス導入部13dは反応容器13の側部13cに設けた。冷却板を用いてナノ粒子を含むガス流を冷却するナノ粒子製造装置を比較例とした。
【0048】
実施例1及び実施例2のナノ粒子製造装置10は、プラズマトーチ11としてハイブリッド型プラズマトーチを用いており、直流電源の電力を3kWとし、高周波電源の電力を55kWとした。作動ガスとして、ArガスとHガスとの混合ガスを用いた。Arガスの流量は140slmとした。Hガスの流量は20slmとした。プラズマトーチ11を冷却する冷媒として水を用いた。原料供給部12は、平均粒径16μmのSi粉末を供給量5g/minで供給した。反応容器13の内部の圧力は30kPaとした。整流/冷却部14は、605本の直管26を用い、直管26の長さを500mm、直管26の断面積を9.6mmとした。Si粉末を供給するためのキャリアガスの流量は、10slmとした。実施例2において、冷却ガス25の流量は、300slmとした。比較例のナノ粒子製造装置は、整流/冷却部14の代わりに、反応容器の下部に、ナノ粒子を含むガス流と衝突するように冷却板を配置したこと以外は、実施例1と同様に構成した。
【0049】
表1は、反応容器13の内壁と回収部15とから回収したSiナノ粒子の総回収量に対する、回収部15でのSiナノ粒子の回収量の比率(回収量比)を比較したものである。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1及び実施例2は、比較例よりも回収部15で回収できるSiナノ粒子が多いことが確認できた。実施例1及び実施例2は、整流/冷却部14によりガス流23の流れが整流され、Siナノ粒子を効率的に回収部15まで輸送できることがわかる。
実施例1と実施例2とを比べると、冷却ガス25を導入した実施例2は、冷却ガス25を導入しなかった実施例1よりSiナノ粒子の回収量が多い。これは、整流/冷却部14の直管26を流れるガス流23の流速が増大し、Siナノ粒子の直管26の内壁への付着が抑制され、回収部15へ輸送されるSiナノ粒子が増加した結果と考えられる。
【0052】
本発明に係るナノ粒子製造装置は、整流/冷却部と回収部とを備えることにより、24時間稼働が可能であり、市場性、産業的優位性が高い。また高効率な冷却機構を備えることで熱源の高出力化が可能になり、生産速度の向上にも寄与するほか、生成したナノ粒子の回収における手作業を削減することからも、産業利用に適する。また熱流体シミュレーションを活用して原料粒子の温度履歴を設計することでプロセス条件を最適化し、粒子の高品質化を行うことも可能である。加えて、ナノ粒子を回収する際に作業者のナノ粒子曝露機会や周辺環境への放出を削減できることから、安全衛生の面でも有用である。よって、本発明に係るナノ粒子製造装置及びナノ粒子製造方法は、産業用ナノ粒子製造装置及び産業用ナノ粒子製造方法として好適である。
【0053】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、整流/冷却部14と回収部15とを合わせた機構を、ひとつの反応容器13に対して複数並列で設置した装置構成とすることが可能である。通常運転によるナノ粒子の捕集と、捕集後のフィルタの逆洗及びナノ粒子取り出しのプロセスを並行して行うことで、長時間連続運転でのナノ粒子製造を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
10、40 ナノ粒子製造装置
11 プラズマトーチ
12 原料供給部
13、43 反応容器
14、44 整流/冷却部
15 回収部
15a フィルタ
15b、15c バルブ
16 プラズマフレーム
20 原料
21 原料ガス
22 ナノ粒子
23 ガス流
26 直管
27 冷媒管
28 冷媒
45 ベーン
46 冷却部
47 流路
図1
図2
図3