IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニ・チャーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図1
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図2
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図3
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図4
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図5
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図6
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図7
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図8
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図9
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図10
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図11
  • 特開-吸収性物品、及び、不織布製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081379
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】吸収性物品、及び、不織布製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/514 20060101AFI20240611BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20240611BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20240611BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20240611BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240611BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A61F13/514 400
A61F13/511 500
A61F13/514 320
D04H3/14
D04H3/16
B32B5/26
A61F13/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194962
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 祐介
【テーマコード(参考)】
3B200
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA15
3B200BB01
3B200BB03
3B200CA06
3B200CA08
3B200DA02
3B200DA21
3B200DA25
3B200DC02
3B200DD02
3B200DD09
3B200EA08
3B200EA24
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DG04A
4F100DG04B
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100GB72
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JD14C
4F100JL10A
4F100JL10B
4F100JL12A
4F100JL12B
4F100YY00A
4F100YY00B
4L047AB03
4L047BA08
4L047CA01
4L047CA19
4L047CC04
4L047CC05
4L047EA05
(57)【要約】
【課題】低コストで複数の色味を有する吸収性物品を提供する。
【解決手段】着色された一枚の不織布(32)の少なくとも一部が、肌側又は非肌側に露出するように配置された吸収性物品(1)であって、前記一枚の不織布(32)は、積層された複数の層を有しており、前記複数の層は、或る色で着色された第1層(321)と、前記或る色とは異なる色で着色された第2層(322)とを有している
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色された一枚の不織布の少なくとも一部が、肌側又は非肌側に露出するように配置された吸収性物品であって、
前記一枚の不織布は、積層された複数の層を有しており、
前記複数の層は、或る色で着色された第1層と、前記或る色とは異なる色で着色された第2層とを有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記第1層及び前記第2層は、それぞれ長繊維によって構成されている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸収性物品であって、
前記着色された一枚の不織布は、積層された前記第1層と前記第2層とを互いに融着する複数の融着部を有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1または2に記載の吸収性物品であって、
前記着色された一枚の不織布について、L*a*b*色空間におけるa*値及びb*値を、厚さ方向の一方側及び他方側からそれぞれ測色したときに、
前記一方側におけるa*値と前記他方側におけるa*値との差の絶対値は0.11より大きく、
前記一方側におけるb*値と前記他方側におけるb*値との差の絶対値は0.11より大きい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1または2に記載の吸収性物品であって、
前記着色された一枚の不織布について、L*a*b*色空間におけるL*値及びa*値及びb*値を、厚さ方向の一方側及び他方側からそれぞれ測色したときに、
前記一方側におけるL*値と前記他方側におけるL*値との差の絶対値は、
前記一方側におけるa*値と前記他方側におけるa*値との差の絶対値、及び、前記一方側におけるb*値と前記他方側におけるb*値との差の絶対値よりも小さい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1または2に記載の吸収性物品であって、
前記着色された一枚の不織布について、L*a*b*色空間におけるa*値及びb*値を、厚さ方向の一方側及び他方側からそれぞれ測色したときに、
前記一方側または前記他方側の異なる20カ所について測色したときのa*値の標準偏差の3倍の値は1.6より大きく、
前記一方側または前記他方側の異なる20カ所について測色したときのb*値の標準偏差の3倍の値は1.6より大きい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1または2に記載の吸収性物品であって、
前記着色された一枚の不織布の坪量は8g/m以上、30g/m以下であり、
前記第1層の厚みは、前記着色された一枚の不織布の厚みの20%以上、80%以下である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項7に記載の吸収性物品であって、
前記着色された一枚の不織布は、積層された前記第1層と前記第2層とを融着する複数の融着部を有し、
前記着色された一枚の不織布において、前記融着部が形成されている部分の厚みは、前記融着部が形成されていない部分の厚みの20%以上、85%未満である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項8に記載の吸収性物品であって、
前記着色された一枚の不織布において、前記融着部が形成されている部分の面積は、前記融着部が形成されていない部分の面積の5%以上、20%未満である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項1または2に記載の吸収性物品であって、
前記着色された一枚の不織布と、前記着色された一枚の不織布とは別体のシート部材とが積層された胴回り部を有し、
前記着色された一枚の不織布と前記別体のシート部材とを接着する接着部を有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項10に記載の吸収性物品であって、
前記別体のシート部材は不織布である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項11に記載の吸収性物品であって、
前記別体のシート部材は白色の不織布である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項1または2に記載の吸収性物品に使用される不織布を製造する方法であって、
或る色に着色された樹脂を溶融して第1ノズルから噴出させ、第1層のウェブを形成する第1層形成工程と、
前記或る色とは異なる色に着色された樹脂を溶融して第2ノズルから噴出させ、第2層のウェブを形成する第2層形成工程と、
前記第1層のウェブ及び前記第2層のウェブを含む2以上のウェブを積層させ、複数の融着部により融着して、連続する一枚の不織布を形成する融着工程と、
前記連続する一枚の不織布をロール状に巻き取る巻き取り工程と、
を有する不織布製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品、及び、不織布製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性物品を構成する不織布として、所定の色に着色された不織布を使用することで、全体として青やピンク等の色味を有する吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、部分着色模様が形成、固着され、かつ染料で全面が着色されている着色模様不織布が開示されており、このような着色模様不織布を使用することにより、色味を有する吸収性物品を製造することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-172857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように単色で着色された不織布では表現できる色に限界があり、吸収性物品に使用した場合に、当該吸収性物品のデザイン性や審美性を十分に高めることは難しかった。一方、色の異なる複数枚の不織布を厚さ方向に積層させれば、複数の色を表現できる可能性があるが、その場合、資材コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、低コストで複数の色味を有する吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、着色された一枚の不織布の少なくとも一部が、肌側又は非肌側に露出するように配置された吸収性物品であって、前記一枚の不織布は、積層された複数の層を有しており、前記複数の層は、或る色で着色された第1層と、前記或る色とは異なる色で着色された第2層とを有している、ことを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低コストで複数の色味を有する吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】おむつ1の概略斜視図である。
図2】展開且つ伸長状態のおむつ1を非肌側から見た平面図である。
図3図2のA-A線での概略断面図である。
図4図4Aは、吸収性本体10の平面図であり、図4Bは、吸収性本体10の概略断面図である。
図5】非肌側シート32を構成する着色不織布の厚さ方向の断面について拡大して撮像した写真である。
図6】非肌側シート32を構成する着色不織布を厚さ方向の非肌側から撮像した写真である。
図7】単色に着色された不織布(比較例1~2)について測色を行った結果を表す表である。
図8】異なる色で着色された2層の積層構造を有する不織布(実施例1~3)について測色を行った結果を表す表である。
図9】着色不織布の製造において実施される各工程のフロー図である。
図10】着色不織布を製造する着色不織布製造装置100について説明する概略図である。
図11】おむつ1の製造において実施される各工程のフロー図である。
図12】、おむつ1を製造する吸収性物品製造装置200について説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
(態様1)
着色された一枚の不織布の少なくとも一部が、肌側又は非肌側に露出するように配置された吸収性物品であって、前記一枚の不織布は、積層された複数の層を有しており、前記複数の層は、或る色で着色された第1層と、前記或る色とは異なる色で着色された第2層とを有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【0011】
態様1の吸収性物品によれば、互いに色の異なる第1層と第2層とを有する不織布(着色不織布)は、厚さ方向に見たときに、色の濃淡が不均一となり、一枚の不織布の表面に複数の色味が視認されるようになる。したがって、このような着色不織布を吸収性物品の肌側または非肌側に露出するように配置して、ユーザーが視認可能となるようにすることにより、色の異なる複数枚の不織布を用いることなく、低コストで複数の色味を有する吸収性物品を実現することができる。
【0012】
(態様2)
前記第1層及び前記第2層は、それぞれ長繊維によって構成されている、態様1に記載の吸収性物品。
【0013】
態様2の吸収性物品によれば、長繊維を着色し、着色された複数の長繊維同士が絡み合って層(ウェブ)が形成されることにより、短繊維によって構成されている場合と比較して、良好な発色の層を形成できる。そして、そのような良好な発色の層を積層させた着色不織布を用いることで、複数の色味を有する吸収性物品を実現しやすくすることができる。
【0014】
(態様3)
前記着色された一枚の不織布は、積層された前記第1層と前記第2層とを互いに融着する複数の融着部を有している、態様1または2に記載の吸収性物品。
【0015】
態様3の吸収性物品によれば、融着部が形成された部分では着色不織布の密度が高められるため、融着部が形成されていない場合と比較して、色の濃淡がより生じやすくなる。例えば、厚さ方向から見たときに、融着部が形成された部分の色が他の部分よりも濃く見えるようになる。したがって、ユーザーに色味の違いをより認識させやすくすることができる。
【0016】
(態様4)
前記着色された一枚の不織布について、L*a*b*色空間におけるa*値及びb*値を、厚さ方向の一方側及び他方側からそれぞれ測色したときに、前記一方側におけるa*値と前記他方側におけるa*値との差の絶対値は0.11より大きく、前記一方側におけるb*値と前記他方側におけるb*値との差の絶対値は0.11より大きい、態様1~3の何れかに記載の吸収性物品。
【0017】
態様4の吸収性物品によれば、|Δa*|及び|Δb*|の差が何れも0.11よりも大きいことにより、0.11以下である場合と比較して、厚さ方向の一方側から見たときと他方側から見たときとで色の違いが認識されやすくなり、複数の色味を有する吸収性物品を実現しやすくすることができる。
【0018】
(態様5)
前記着色された一枚の不織布について、L*a*b*色空間におけるL*値及びa*値及びb*値を、厚さ方向の一方側及び他方側からそれぞれ測色したときに、前記一方側におけるL*値と前記他方側におけるL*値との差の絶対値は、前記一方側におけるa*値と前記他方側におけるa*値との差の絶対値、及び、前記一方側におけるb*値と前記他方側におけるb*値との差の絶対値よりも小さい、態様1~4の何れかに記載の吸収性物品。
【0019】
態様5の吸収性物品によれば、明度(L*値)が低い環境で視認した場合であっても、表と裏とで色の違いが生じやすくなり、複数の色味を表現しやすい。これにより、厚さ方向の一方側から見たときと他方側から見たときとでの色の違いがより認識されやすくなり、複数の色味を有する吸収性物品を実現しやすくすることができる。
【0020】
(態様6)
前記着色された一枚の不織布について、L*a*b*色空間におけるa*値及びb*値を、厚さ方向の一方側及び他方側からそれぞれ測色したときに、前記一方側または前記他方側の異なる20カ所について測色したときのa*値の標準偏差の3倍の値は1.6より大きく、前記一方側または前記他方側の異なる20カ所について測色したときのb*値の標準偏差の3倍の値は1.6より大きい、態様1~5の何れかに記載の吸収性物品。
【0021】
態様6の吸収性物品によれば、a*値及びb*値の標準偏差の3倍の値が何れも1.60よりも大きいことにより、1.60以下である場合と比較して、厚さ方向の一方側から見たときと他方側から見たときとで色の違いのばらつきが大きくなり、複数の色味を有する吸収性物品を実現しやすくすることができる。
【0022】
(態様7)
前記着色された一枚の不織布の坪量は8g/m以上、30g/m以下であり、
前記第1層の厚みは、前記着色された一枚の不織布の厚みの20%以上、80%以下である、態様1~6の何れかに記載の吸収性物品。
【0023】
態様7の吸収性物品によれば、一枚の着色不織布の坪量を、8g/m以上、30g/m以下とすることで、逆の場合と比較して強度を確保しつつ、地合いムラを認識させやすくすることができる。また、着色不織布の第1層の厚さを不織布の厚みの20%以上、80%以下とすることで、逆の場合と比較して当該第1層及び第1スと積層された層(第2層)の発色をしっかりと認識させやすくすることができる。したがって、複数の色味を有する吸収性物品を低コストで実現しやすくすることができる。
【0024】
(態様8)
前記着色された一枚の不織布は、積層された前記第1層と前記第2層とを融着する複数の融着部を有し、前記着色された一枚の不織布において、前記融着部が形成されている部分の厚みは、前記融着部が形成されていない部分の厚みの20%以上、85%未満である、態様1~7の何れかに記載の吸収性物品。
【0025】
態様8の吸収性物品によれば、融着部が形成されている部分の厚さが形成されていない部分の厚さの20%以上であることにより、逆の場合と比較して当該融着部における厚さが薄くなりすぎず、着色不織布がきれいに発色しやすくなる。そして、融着部が形成されている部分の厚さが形成されていない部分の厚さの85%未満であることにより、逆の場合と比較して当該融着部における厚さが厚くなりすぎず、積層されている層の色を厚さ方向に透かしてして視認しやすくなる。したがって、複数の色味を有する吸収性物品を低コストで実現しやすくすることができる。
【0026】
(態様9)
前記着色された一枚の不織布において、前記融着部が形成されている部分の面積は、前記融着部が形成されていない部分の面積の5%以上、20%未満である、態様1~8の何れかに記載の吸収性物品。
【0027】
態様9の吸収性物品によれば、融着部が形成されている部分の面積が全体の面積の5%以上であることにより、逆の場合と比較して融着部が形成されている部分が小さくなりすぎず、色の濃淡を認識しやすい。そして、融着部が形成されている部分の面積が全体の面積の20%未満であることにより、逆の場合と比較して融着部が多くなりすぎず、不織布としての柔軟性が維持されやすく、良好な肌触りを実現しやすくなる。したがって、複数の色味を有し、良好な肌触りの吸収性物品を低コストで実現しやすくすることができる。
【0028】
(態様10)
前記着色された一枚の不織布と、前記着色された一枚の不織布とは別体のシート部材とが積層された胴回り部を有し、前記着色された一枚の不織布と前記別体のシート部材とを接着する接着部を有している、態様1~9の何れかに記載の吸収性物品。
【0029】
態様10の吸収性物品によれば、胴回り部において、2枚のシート部材が接着部を介して接合されている部分と、接合されていない部分とで厚さが異なるため、厚さ方向に見たときに、着色不織布の色味が一様に見えず、複数の色味が視認されやすくなる。これにより、複数の色味を有する吸収性物品を低コストで実現しやすくすることができる。
【0030】
(態様11)
前記別体のシート部材は不織布である、態様1~10の何れかに記載の吸収性物品。
【0031】
態様11の吸収性物品によれば、2枚の不織布の地合いムラが重なり合って、厚さ方向から見たときに色味の変化が大きくなる。すなわち、2枚の不織布のそれぞれの繊維の密度が一様では無いため、色の濃淡がより複雑に視認されやすくなる。したがって、胴回り部において、より複雑な色味を視認させやすくすることができる。
【0032】
(態様12)
前記別体のシート部材は白色の不織布である、態様1~11の何れかに記載の吸収性物品。
【0033】
態様12の吸収性物品によれば、胴周り部材を着色不織布側(非肌側)から見たときに、着色不織布の背景色(下地色)が白となるため、背景色がグレーや褐色である場合と比較して、着色不織布の着色剤がきれいに発色しやすい。すなわち、着色不織布において、色の異なる第1層と第2層とによって形成される複数の色味がより鮮やかに視認されやすくなる。したがって、胴回り部において、より複雑な色味を視認させやすくすることができる。
【0034】
(態様13)
態様1~11の何れかに記載の吸収性物品に使用される不織布を製造する方法であって、或る色に着色された樹脂を溶融して第1ノズルから噴出させ、第1層のウェブを形成する第1層形成工程と、前記或る色とは異なる色に着色された樹脂を溶融して第2ノズルから噴出させ、第2層のウェブを形成する第2層形成工程と、前記第1層のウェブ及び前記第2層のウェブを含む2以上のウェブを積層させ、複数の融着部により融着して、連続する一枚の不織布を形成する融着工程と、前記連続する一枚の不織布をロール状に巻き取る巻き取り工程と、を有する不織布製造方法。
【0035】
態様13の不織布製造方法によれば、互いに色の異なる第1層と第2層とを有する着色不織布を用いることによって、複数枚の不織布を用いることなく、低コストで複数の色味を有する吸収性物品を実現することができる。また、着色不織布をロール状に巻き取った原反ロールとすることにより、吸収性物品の製造において、取り回しが便利になる。
【0036】
===本実施形態===
本発明に係る吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)を例に挙げて説明する。ただし、本発明に係る吸収性物品には、テープ型使い捨ておむつ、ショーツ型ナプキン、吸収パッド、生理用ナプキンやその他の吸収性物品も含まれる。また、吸収性物品の着用者は、乳幼児、大人、又は動物等の生物であってもよい。
【0037】
<おむつ1の構成>
図1は、おむつ1の概略斜視図である。図2は、展開且つ伸長状態のおむつ1を非肌側から見た平面図である。図3は、図2のA-A線での概略断面図である。なお、おむつ1の「伸長状態」とは、おむつ1全体(製品全体)を皺なく伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述する吸収性本体10や,胴回り部30,40等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことを言う。
【0038】
おむつ1は、図1のパンツ型状態において、互いに交差する「上下方向」と「左右方向」と「前後方向」とを有し、胴回り開口部BHと一対の脚回り開口部LH,LHとを有している。上下方向の上側が胴回り開口部BH側に対応し、下側が股下側に対応する。前後方向の前側が着用者の腹側に対応し、後側が着用者の背側に対応する。また、おむつ1は、図2に示される展開状態において、互いに直交する「縦方向」と「横方向」とを有している。「縦方向」は、パンツ型における上下方向に沿った方向であり、「横方向」は、パンツ型における左右方向に沿った方向である。また、図3に示すように、各部材が積層された方向である「厚さ方向」を有している。厚さ方向のうち、着用者がおむつ1を着用した状態で着用者の肌と接触する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0039】
おむつ1は、液吸収性の吸収性本体10と、着用者の腹側部を覆う前側胴回り部30と、着用者の背側部を覆う後側胴回り部40とを有する所謂3ピースタイプのパンツ型おむつである。
【0040】
図2の展開状態では、前側胴回り部30と後側胴回り部40とが互いに縦方向に間隔をあけて平行に並んだ状態で、これらの間に吸収性本体10が掛け渡されつつ、吸収性本体10の縦方向(長手方向)の各端部10ea,10ebがそれぞれ最寄りの胴回り部30,40の肌側に接合固定されており、外観形状は平面視略H形状をなす。そして、この状態から、吸収性本体10の長手方向の中央位置CLを折り位置として二つ折りされる。この二つ折りの状態において、互いに対向する前側胴回り部30と後側胴回り部40とが、左右方向両側の側部30sw及び側部40swにて互いに接合・連結され、一対のサイド接合部50,50が形成される。すなわち、一対のサイド接合部50,50によって前側胴回り部30と後側胴回り部40とが環状に成形される。これにより、図1に示すような胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHが形成されたパンツ型状態のおむつ1となる。なお、サイド接合部50は、溶着や接着等の公知の接合手段によって形成されている。
【0041】
(吸収性本体10)
吸収性本体10は着用者の股間部にあてがわれ尿等の排泄物を吸収する。図4Aは、吸収性本体10の平面図であり、図4Bは、吸収性本体10の概略断面図である。吸収性本体10は、排泄液を吸収する吸収性コア11と、吸収性コア11よりも肌側に配置されたトップシート12と、吸収性コア11よりも非肌側に配置されたバックシート13とを有する。但し、吸収性本体10が、これ以外のシート部材を備えていても良い。例えば、トップシート12と吸収性コア11との厚さ方向の間に、セカンドシート(不図示)を備えていてもよい。
【0042】
吸収性コア11は、尿等の排泄液を吸収して保持する部材であり、例えば高吸収性ポリマー(SAP)が混入したパルプ繊維等の液体吸収性繊維により形成される。なお、吸収性コア11は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシート部材(コアラップシート11b)によって、外周面が覆われていても良い。また、本実施形態では、図4Bのように吸収性コア11が厚さ方向に2層重ねられた状態となっているが、吸収性コア11の形状はこの限りではない。
【0043】
トップシート12は、液透過性のシートであり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等が用いられる。本実施形態では、図4Bのように吸収性コア11を巻き込むように、左右方向の両側部が非肌側に折り返されている。
【0044】
バックシート13は、液不透過性シート13aと、その非肌側に配された疎水性の外装シート13bと、の二層構造である。液不透過性シート13aとしては、例えば樹脂フィルム等が用いられ、外装シート13bとしては、例えば柔軟性を有する不織布等が用いられる。
【0045】
吸収性本体10の左右方向の両側部には、吸収性本体10の長手方向に沿って一対の防漏壁部15が設けられている。本実施形態において、防漏壁部15は、外装シート13bによって形成されている。具体的には、左右方向において、外装シート13bの一部が吸収性コア11の両端よりも外側に延出しつつ、図4Bのように肌側に複数個所で折り曲げられることによって、一対の防漏壁部15が形成される。防漏壁部15の肌側端部(先端部)には、糸ゴム等の防漏壁弾性部材16が吸収性本体10の長手方向に沿って伸長した状態で取り付けられている。おむつ1の着用時には、防漏壁弾性部材16が発現する伸縮性に基づいて、防漏壁部15が着用者の肌側に起立し、着用者の股間部にフィットする。
【0046】
また、吸収性本体10の左右方向の両側部には、糸ゴム等の脚回り弾性部材17が吸収性本体10の長手方向に沿って伸長した状態で取り付けられている。おむつ1の着用時には、脚回り弾性部材17が発現する伸縮性に基づいて、吸収性本体10の両側部が収縮し、着用者の脚回り沿ってフィットしやすくなる。
【0047】
(前側胴回り部30)
前側胴回り部30は、吸収性本体10の非肌側に配置されている。図3に示されるように、前側胴回り部30は、厚さ方向の肌側に配置された肌側シート31と、肌側シート31の非肌側に隣接するように積層された非肌側シート32と、肌側シート31と非肌側シート32との間に設けられた糸ゴム等の胴回り弾性部材35を有する。前側胴回り部30は、基本的に肌側シート31と非肌側シート32との2層構造であるが、例えば、肌面シート36(後述)等、部分的に3層以上の構成を有していていも良い。
【0048】
肌側シート31は、平面視長方形状のシート部材であり、例えば、SMS不織布等の不織布によって形成されている。肌側シート31は、不織布を構成する繊維同士を溶着接合してシート状に形成するための複数の融着部31m,31m…を有している(図2参照)。融着部31mは、不織布の製造工程において形成され、当該融着部31mが設けられていることにより、肌側シート31の繊維の脱落を軽減させたり、シート形状を維持させやすくしたりすることができる。
【0049】
非肌側シート32は、平面視長方形状のシート部材であり、例えば、SMS不織布等の不織布によって形成されている。非肌側シート32は、肌側シート31の融着部31mと同様に、不織布を構成する繊維同士を溶着接合してシート状に形成するための複数の融着部32m,32m…を有している(図2参照)。また、本実施形態において、非肌側シート32は、不織布を構成する繊維の少なくとも一部が着色されており、図1のようにおむつ1を外側(非肌側)から見たときに、前側胴回り部30のうち非肌側に露出した面が着色されているように見える。着色された不織布の詳細については、後で説明する。
【0050】
前側胴回り部30は、非肌側シート32の上端部が非肌側から肌側、且つ、縦方向の前側から後側に折り返された折り返し部32fを有している。この折り返し部32fによって肌側シート31の一部(上端部)が覆われることにより、肌側シート31の上端エッジが着用者の肌に食い込んでしまうことが抑制される。但し、折り返し部32fは必ずしも設けられていなくても良い。
【0051】
胴回り弾性部材35は、左右方向に沿って設けられた左右方向に伸縮可能な伸縮部材であり、本実施形態では、白色の糸ゴムが用いられている。胴回り弾性部材35は、肌側シート31と非肌側シート32の間に、上下方向に並んで複数配置されるとともに、左右方向に伸長された状態で取り付けられている。胴回り弾性部材35が発現する伸縮性によって、前側胴回り部30は、着用者の腹側胴回りにフィットする。なお、本実施形態のおむつ1は、前側胴回り部30に胴回り弾性部材35を設けたが、糸ゴムに限らず、伸縮シート等の伸縮部材を配置して前側胴回り部30を左右方向に伸縮させてもよい。
【0052】
胴回り弾性部材35の取り付けは、ホットメルト接着剤等の接着剤を用いて行うことができる。例えば、胴回り弾性部材35にホットメルト接着剤を塗布して所定の伸長倍率で伸長させ、肌側シート31と非肌側シート32とで挟み込むことによって胴回り弾性部材35を取り付けることができる。
【0053】
また、前側胴回り部30は、肌面シート36を有していても良い。肌面シート36は、図3に示されるように、吸収性本体10の上端部を肌側から覆うように配置されたシート部材であり、カバーシートとしての機能を有している。これにより、おむつ1の着用時に吸収性本体10の上端エッジが着用者の肌に食い込んでしまうことが抑制される。肌面シート36は、例えばSMS不織布等によって形成されている。なお、肌面シート36は必ずしも設けられていなくても良い。
【0054】
(後側胴回り部40)
後側胴回り部40は、前側胴回り部30と略同様の構成を有する。すなわち、後側胴回り部40は、吸収性本体10の非肌側に配置されており、厚さ方向の最も肌側に配置された肌側シート41と、肌側シート41の非肌側に隣接するように積層された非肌側シート42と、肌側シート41と非肌側シート42との間に設けられた左右方向に沿った胴回り弾性部材45とを有する。また、前側胴回り部30と同様に、折り返し部42f、肌面シート46等を有していても良い(図2図3参照)。
【0055】
前側胴回り部30と同様に、後側胴回り部40の非肌側シート42は、不織布を構成している繊維の少なくとも一部が着色されることによって、外側(非肌側)から見たときに、後側胴回り部40のうち非肌側に露出した面が着色されているように見える。
【0056】
なお、後側胴回り部40の外観形状は、前側胴回り部30とは異なり、図2のように、サイド接合部50(側部40sw)よりも上下方向の下側が略台形形状となった股下領域40bを有している。股下領域40bでは、上下方向の下側から上側に向かって横幅が広くなっており、股下領域40bが設けられていることによって、おむつ1の着用時時に後側胴回り部40が着用者の臀部を被覆することができる。すなわち、股下領域40bは、臀部カバーとしての機能を有している。
【0057】
そして、股下領域40bには、図2に示されるような糸ゴム等の湾曲弾性部材47が設けられている。湾曲弾性部材47は、股下領域40bの外縁に沿って伸長した状態で肌側シート41と非肌側シート42との間に取り付けられており、湾曲弾性部材47が発現する伸縮性によって、おむつ1着用時に、後側胴回り部40の股下領域40bが着用者の臀部にフィットしやすくなり、臀部から捲れにくくなる。
【0058】
<非肌側シート32(42)の色について>
続いて、前側胴回り部30の非肌側シート32の詳細について説明する。なお、後側胴回り部40の非肌側シート42は、非肌側シート32とほぼ同等の構成を有しているため、ここでは非肌側シート42についての説明は省略する。本実施形態の非肌側シート32は、上述したように繊維の一部が所定の色で着色された不織布(以下、「着色不織布」とも呼ぶ)によって構成されている。図5は、非肌側シート32を構成する着色不織布の厚さ方向の断面について拡大して撮像した写真である。図6は、非肌側シート32を構成する着色不織布を厚さ方向の非肌側から撮像した写真である。
【0059】
非肌側シート32(着色不織布)は、繊維が絡み合ってシート状に形成された層(ウェブ)が厚さ方向に複数積層した多層構造を有している。図5では、厚さ方向の非肌側に設けられた第1層321と、第1層322の肌側に積層された第2層322との2つの層を有している。第1層321は、白色以外の或る色(例えば青色)で着色された着色不織布であり、第2層322は、第1層321の色とは異なる色(例えば赤色)で着色された着色不織布である。各層は、厚さ方向の断面を視認したときの色の違いによって識別される(図5参照)。すなわち、厚さ方向において異なる色の境界が存在すると判断できる場合は、その境界を挟んで肌側と非肌側に2つの層を定義することができる。逆に、厚さ方向において異なる色の境界が存在すると判断できない場合は、1つの層として扱うものとする。例えば、図5において、第1層321と第2層322が同じ色(例えば青色)で形成されていた場合、第1層321及び第2層322は、2つの層(複数層)ではなく1つの層(単層)として扱われる。
【0060】
なお、上述した白色以外の或る色で着色された着色不織布について、「白色」の不織布とは、例えば、マンセル表色系で「N9.5」と表される色や、RGB色空間で「255,255,255」と表される色(所謂、真っ白)に加え、真っ白との色差が12未満である色も白色に含まれるものとする。白色についての色差の測定は、例えば、色差測定器として、Konica Minolta社製 CR-300を用いることができ、測定機器の光源としては、C光源(国際照明委員会(CIE)の規格)を用いることができる。この場合の測定機器の測定窓の直径は、40mmである。色差は、白色基準板に対する(L*a*b*)色空間のΔL*、Δa*及びΔb*である。白色基準板に対する色差は、白色基準板のlab値と対象サンプルのlab値をそれぞれ測定して算出できる。白色基準板は、(X93.19、Y95.20、Z112.28)でlab0に設定する。ここでL*は、明るさを指標する値であり、a*、b*は、色度の平面座標である。白色基準板のLab値をL0、a0、b0とし、対象サンプルのLab値をL1、a1、b1とすると、ΔL*=L0‐L1、Δa*=a0‐a1、Δb*=b0‐b1によって算出できる。
【0061】
一方、「或る色」で着色された不織布とは、無色透明及び上記の白色以外の不織布であり、所定の着色剤によって繊維を着色すること等によって実現される。
【0062】
また、第1層と第2層とが「異なる色」であるとは、ユーザーが各層の色を視認した際に異なる色であると判断できればよい。具体的には、上述の色差測定器又はそれと同等のものを使用して測定したときに、第1層のL*a*b*値が(L1*,a1*,b1*)、第2層のL*a*b*値が(L2*,a2*,b2*)である場合に、第1層と第2層との色差ΔE={(L1*-L2*)+(a1*-a2*)+(b1*-b2*)1/2が13以上であればよい。または、オストワルト色相環によって分類された24色の色票で2以上ずれていればよい。
【0063】
このような着色不織布からなる非肌側シート32を厚さ方向(非肌側若しくは肌側)から見ると、図6のように表面に濃淡が生じた斑のような模様が視認される。これは、非肌側シート32が、互いに色の異なる複数の層を積層させることによって形成されているためである。一般に、不織布の繊維密度は場所によって異なっており、所謂「地合いムラ」が形成されている。そのため、本実施形態の非肌側シート32(着色不織布)のように、色の異なる第1層321と第2層322とを有している場合、厚さ方向に見たときに、色の濃淡が不均一となり、一枚の不織布の表面に複数の色味が視認されるようになる。例えば、図6の領域32saと領域32sbとでは色味が異なり、更に同一の領域内(例えば領域32sa)でも色の濃さが均一ではない。そして、異なる色の層が重なっていることにより、一枚の不織布の表面で色の見え方がさらに複雑となり、例えば、マーブル模様や虹色のような模様が視認されるようになる。
【0064】
ところで、複数の色を有する不織布を実現する方法として、色の異なる複数枚の不織布を厚さ方向に重ねて配置することで、様々な色を表現することも考えられる。例えば、前側胴回り部30において、非肌側シート32を青色の着色不織布で構成し、肌側シート31を赤色の着色不織布で構成すれば、前側胴回り部30の表面に色の異なる領域が視認可能となる場合がある。しかしながら、この場合、少なくとも2枚の着色不織布が必要となり、資材コストが高くなるおそれがある。また、各々の不織布はそれぞれ単色(例えば、青や赤)で構成され、色の異なる複数の層(例えば、図5の第1層321と第2層322)を有していないため、図6のような繊細なマーブル模様や虹色を表現することは難しい。
【0065】
これに対して、本実施形態では、非肌側シート32の様に色の異なる複数の層が積層された着色不織布をおむつ1の表面(肌側若しくは非肌側)に配置して視認可能としている。これにより、色の異なる複数枚の不織布を用いることなく、低コストで複数の色味を有する吸収性物品を実現することができる。
【0066】
なお、おむつ1を構成する部材のうち、前側胴回り部30の非肌側シート32、(後側胴回り部40の非肌側シート42)が上述の様な着色不織布によって構成される例について説明したが、他の部材が着色不織布によって構成されていてもよい。特に、おむつ1の肌側又は非肌側に露出するように配置されているシート部材(不織布)として上述の様な着色不織布が用いられていれば、ユーザーが視認した際に複雑な色味を認識させやすくすることができる。例えば、胴回り部30(40)の肌側シート31(41)が着色不織布によって構成されていても良いし、吸収性本体10のトップシート12や、外装シート13b(防漏壁部15)が着色不織布によって構成されていても良い。
【0067】
また、本実施形態において、非肌側シート32(着色不織布)のうちの第1層321及び第2層322は、いずれも長繊維によって構成されていることが好ましい。ここで「長繊維」は、平均繊維長が100mmを超える繊維を言い、「長繊維によって構成されている」とは、第1層321(第2層322)に含まれる繊維のうち長繊維の重量%が50%を超えていることを言う。このような長繊維を着色し、着色された複数の長繊維同士が絡み合って層(ウェブ)が形成されることにより、主に平均繊維長が100mm以下の短繊維によって構成されている場合と比較して、良好な発色の層を形成できる。そして、そのような良好な発色の層を積層させることで、マーブル模様や虹色等の複数の色味を有する着色不織布とすることができる。本実施形態では、異なる色で着色された第1層321と第2層322とがそれぞれ長繊維で構成されていることにより、前側胴回り部30の表面に、複数の色味が視認されやすくなり(図6参照)、おむつ1の審美性をより高めることができる。
【0068】
また、非肌側シート32(着色不織布)では、厚さ方向に積層された層同士が、点在する複数の融着部32m,32m…によって互いに接合されている。融着部32mが形成された部分では着色不織布の密度が高められ、融着部32mが形成されていない部分と比較して、色の濃淡がより生じやすくなる。図5では、第1層321と第2層322とが融着部32mによって溶着されている部分において、その他の部分よりも厚さ方向の密度が高められている。したがって、厚さ方向から見たときに、融着部32mが形成された部分の色が他の部分よりも濃く見えるようになる。これにより、前側胴回り部30において、ユーザーに色味の違いをより認識させやすくすることができる。
【0069】
次に、異なる色で着色された第1層と第2層とを有する着色不織布を視認したときの色味の違いについて、具体的に検証を行った結果について説明する。検証では、着色された複数種類の不織布(比較例1~2、及び実施例1~3)を用意し、それぞれ厚さ方向の一方側(表側とする)の面について異なる20カ所で、(L*a*b*)色空間におけるΔL*値、Δa*値及びΔb*値の測色を行った。同様に、複数種類の不織布(比較例1~2、及び実施例1~3)のそれぞれ厚さ方向の他方側(裏側とする)の面について異なる20カ所で、(L*a*b*)色空間におけるΔL*、Δa*及びΔb*値の測定を行った。なお、測定は、上述した色差測定器を用いて行うものとする。また、各々の不織布の厚さ方向の一方側から他方側に向かって、融着部32mに相当するエンボス(高密度部)が形成されているものとする。
【0070】
図7は、比較例として、単色に着色された不織布(比較例1~2)について測色を行った結果を表す表である。同図7で、比較例1は、不織布を構成する繊維が青色(単色)の着色材で着色された着色不織布であり、比較例2は、不織布を構成する繊維が赤色(単色)の着色材で着色された着色不織布である。
【0071】
図8は、異なる色で着色された2層の積層構造を有する不織布(実施例1~3)について測色を行った結果を表す表である。同図8で、実施例1~3は本実施形態の非肌側シート32と同等の構成を有する着色不織布である。具体的に、実施例1は、厚さ方向の一方側に配置された層(第1層に相当)を構成する繊維が赤の着色材(重量%:0.75%)で着色されており、厚さ方向の他方側に配置された層(第2層に相当)を構成する繊維が青の着色材(重量%:1.0%)で着色されている。同様に、実施例2は、第1層を構成する繊維が赤の着色材(重量%:0.5%)で着色され、第2層構成する繊維が青の着色材(重量%:1.0%)で着色されている。実施例3は、第1層を構成する繊維が赤の着色材(重量%:1.0%)で着色され、第2層構成する繊維が青の着色材(重量%:0.85%)で着色されている。
【0072】
図7より、比較例1,2の単色の着色不織布では、厚さ方向の一方側で測定されたa*値と、厚さ方向の他方側で測定されたa*値との差の絶対値は0.11(比較例2)以下となっていることが分かる(|Δa*|≦0.11)。同様に、厚さ方向の一方側で測定されたb*値と、厚さ方向の他方側で測定されたb*値との差の絶対値は0.05(比較例1,2)以下となっていることが分かる(|Δb*|≦0.05)。
【0073】
これに対して、図8より、実施例1~3の異なる色で着色された2層構造を有する着色不織布では、厚さ方向の一方側で測定されたa*値と、厚さ方向の他方側で測定されたa*値との差の絶対値は2.20(実施例1)以上となっている(|Δa*|≧2.20)。同様に、厚さ方向の一方側で測定されたb*値と、厚さ方向の他方側で測定されたb*値との差の絶対値は1.64(実施例1)以上となっている(|Δb*|≧1.64)。
【0074】
通常、|Δa*|及び|Δb*|の差が大きいほど、表面と裏面とで色の違いが大きくなる。したがって、異なる2色の積層構造を有する着色不織布(実施例1~3)では、単色からなる着色不織布(比較例1~2)よりも、表と裏とで色の違いが生じやすくなり、複数の色味を表現しやすいことが明らかとなった。すなわち、本実施形態に係る着色不織布(例えば非肌側シート32)では、L*a*b*色空間におけるL*、a*、b*の値を厚さ方向の一方側及び他方側からそれぞれ測色したときに、一方側におけるa*値と他方側におけるa*値との差の絶対値、及び一方側におけるb*値と他方側におけるb*値との差の絶対値が、何れも0.11よりも大きくなっている。これにより、|Δa*|及び|Δb*|の差が0.11以下である場合と比較して、厚さ方向の一方側から見たときと他方側から見たときとで色の違いが認識されやすくなり、複数の色味を有するおむつ1を実現しやすくすることができる。
【0075】
また、図7より、比較例1,2では、厚さ方向の一方側で測定されたL*値と、厚さ方向の他方側で測定されたL*値との差の絶対値は、厚さ方向の一方側で測定されたa*値と、厚さ方向の他方側で測定されたa*値との差の絶対値、及び、厚さ方向の一方側で測定されたb*値と、厚さ方向の他方側で測定されたb*値との差の絶対値よりも大きいことが分かる(|ΔL*|>|Δa*|,|Δb*|)。
【0076】
一方、図8より、実施例1~3では、厚さ方向の一方側で測定されたL*値と、厚さ方向の他方側で測定されたL*値との差の絶対値は、厚さ方向の一方側で測定されたa*値と、厚さ方向の他方側で測定されたa*値との差の絶対値、及び、厚さ方向の一方側で測定されたb*値と、厚さ方向の他方側で測定されたb*値との差の絶対値よりも小さいことが分かる(|ΔL*|<|Δa*|,|Δb*|)。
【0077】
したがって、異なる2色の積層構造を有する着色不織布(実施例1~3)では、単色からなる着色不織布(比較例1~2)と比較して、厚さ方向の表側と裏側とで、明度(L*)の差が小さいにもかかわらず、a*値及びb*値の差が大きくなることが明らかとなった。すなわち、明度が低い環境で視認した場合であっても、表と裏とで色の違いが認識されやすくなり、複数の色味を表現しやすいことが明らかとなった。したがって、厚さ方向の一方側から見たときと他方側から見たときとでの色の違いがより認識されやすくなり、複数の色味を有するおむつ1を実現しやすくすることができる。
【0078】
また、図7より、比較例1,2では、厚さ方向の一方側又は他方側の異なる20カ所で測定されたa*値の標準偏差の3倍の値は、1.32以下(比較例2)となっている(3σ(a*)≦1.32)。同様に、厚さ方向の一方側又は他方側の異なる20カ所で測定されたb*値の標準偏差の3倍の値は、1.26以下(比較例1)となっている(3σ(b*)≦1.26)。
【0079】
これに対して、図8より、実施例1~3では、厚さ方向の一方側又は他方側の異なる20カ所で測定されたa*値の標準偏差の3倍の値は、1.68以上(実施例1)となっている(3σ(a*)≧1.68)。同様に、厚さ方向の一方側又は他方側の異なる20カ所で測定されたb*値の標準偏差の3倍の値は、1.95(実施例2)以上となっている(3σ(b*)>≧1.95)。
【0080】
実施例1~3では、比較例1~2と比較して、a*及びb*値の標準偏差の3倍の値が大きくなっている。したがって、実施例1~3では、測定される色の範囲のばらつきが大きく、多様な色が視認される可能性が高くなることが明らかとなった。すなわち、本実施形態に係る着色不織布(例えば肌側シート32)では、L*a*b*色空間におけるL*、a*、b*の値を厚さ方向の一方側及び他方側からそれぞれ測色したときに、一方側または他方側の異なる20カ所について測色したときのa*値の標準偏差の3倍の値、及び、一方側または他方側の異なる20カ所について測色したときのb*値の標準偏差の3倍の値が、何れも1.60よりも大きくなっている。これにより、a*値及びb*の標準偏差の3倍の値が1.60以下である場合と比較して、厚さ方向の一方側から見たときと他方側から見たときとで色のばらつきが大きくなり、複数の色味を有するおむつ1を実現しやすくすることができる。
【0081】
また、おむつ1で非肌側シート32等を構成する着色不織布の坪量は、8~30(g/m2)であり、且つ、当該着色不織布において積層されている複数の層のうち、上述した第1層321の厚さ(厚み)は、着色不織布全体の厚さ(厚み)の20~80%であることが好ましい。坪量が8g/mより小さい不織布では、十分な強度が確保され難く、吸収性物品が破れやすくなるおそれがある。一方、坪量が30g/mよりも大きいと、繊維密度が高くなり、地合いムラが視認され難くなるため、多様な色味を表現し難くなるおそれがある。また、着色された層(第1層321等)の厚さが不織布全体の20%よりも小さいと、当該層の発色が視認され難くなるおそれがある。一方、着色された層(第1層321等)の厚さが不織布全体の80%よりも大きいと、当該層の発色が強くなりすぎて、他の層の発色が認識され難くなるおそれがある。
【0082】
これに対して、おむつ1において、一枚の着色不織布の坪量を、8g/m以上、30g/m以下とすることで、逆の場合と比較して強度を確保しつつ、地合いムラを認識させやすくすることができる。そして、着色不織布の第1層321の厚さを20%以上、80%以下とすることで、逆の場合と比較して当該第1層321及び積層された他の層(第2層322)の発色をしっかりと認識させやすくすることができる。したがって、複数の色味を有するおむつ1を低コストで実現しやすくすることができる。
【0083】
なお、着色不織布(第1層321)の厚さの測定は、以下のようにして行うことができる。先ず、測定対象の着色不織布から所定の大きさの試験片を切り出す。試験片を切り出す際には、液体窒素で固めてから試験片を切断するとよい。そして、切り出した試験片の厚さ方向の断面(図5に相当する断面)について、マイクロスコープ等を用いて複数個所(例えば10個所)の厚さを測定して平均値を求め、その値を着色不織布全体の厚みとする。次に、試験片の厚さ方向の断面について、上述した「異なる色」を有する第1層321及び第2層322をそれぞれ特定する。そして、第1層311についてマイクロスコープ等を用いて複数個所(例えば10個所)の厚さを測定して平均値を求め、その値を第1層321の厚みとする。また、試験片の厚さ方向の断面について撮影を行い、コンピューターを用いた画像解析によってそれぞれの厚さの平均値を算出しても良い。
【0084】
また、着色不織布(非肌側シート32等)において融着部(融着部32m等)が形成されている部分の平均の厚さ(厚み)は、融着部32mが形成されていない部分の平均の厚さ(厚み)の20%以上、85%未満であることが好ましい。融着部32mが形成されている部分の厚さが形成されていない部分の厚さの20%以上であることにより、逆の場合(20%未満)と比較して当該融着部32mにおける厚さが薄くなりすぎず、着色不織布がきれいに発色しやすくなる。そして、融着部32mが形成されている部分の厚さが形成されていない部分の厚さの85%未満であることにより、逆の場合(85%以上)と比較して当該融着部32mにおける厚さが厚くなりすぎず、積層されている色層の色を厚さ方向に透かしてして視認しやすくなる。したがって、複数の色味を有するおむつ1を低コストで実現しやすくすることができる。
【0085】
着色不織布(非肌側シート32)のうち、融着部(融着部32m)が形成されている部分の厚さの平均値は、上述した測定方法と略同様の方法にて測定することができる。すなわち、測定対象の着色不織布から試験片を切り出して、切り出した試験片の厚さ方向の断面(図5に相当)について、マイクロスコープ等を用いて、融着部が形成されている部分、及び、融着部が形成されていない部分の厚さを各々10か所程度測定して、それぞれ平均値を算出する。
【0086】
また、着色不織布(非肌側シート32等)を厚さ方向から見たときに、融着部(融着部32m等)が形成されている部分の面積は、着色不織布全体の面積の5%以上、20%未満であることが好ましい。融着部32mが形成されている部分の面積が全体の面積の5%以上であることにより、逆の場合(5%未満)と比較して融着部32mが形成されている部分が極端に小さくなりすぎず、色の濃淡を認識しやすい。そして、融着部32mが形成されている部分の面積が全体の面積の20%未満であることにより、逆の場合(20%以上)と比較して融着部32mが多くなりすぎず、不織布としての柔軟性が維持されやすく、良好な肌触りを実現しやすくなる。したがって、複数の色味を有し、良好な肌触りのおむつ1を低コストで実現しやすくすることができる。
【0087】
なお、着色不織布(非肌側シート32)のうち、融着部(融着部32m)が形成されている部分の面積は、以下のようにして測定することができる。まず、上述したのと同様の試験片を切り出して、厚さ方向から見た平面(図6に相当)について、マイクロスコープ等を用いて融着部32mの面積を測定する。そして、試験片の単位面積当たりに設けられている融着部32mの面積の割合を算出する。また、コンピューターを用いた画像解析によって各部の面積を算出しても良い。
【0088】
また、おむつ1の前側胴回り部30(後側胴回り部40)は、厚さ方向に積層された少なくとも2枚のシート部材(肌側シート31及び非肌側シート32)によって構成されている。すなわち、着色不織布(非肌側シート32)と、当該着色不織布とは別体のシート部材(肌側シート31)とが積層され、各々のシート部材の対向する面同士は、ホットメルト接着剤等の接着剤によって互いに接合されている。図3では、前側胴回り部30(40)において、着色不織布からなる非肌側シート32(42)が、別体の不織布からなる肌側シート31(41)と厚さ方向に積層されており、両シートは、接着部39(49)によって互いに接合されている。なお、図3では示されていないが、接着部39(49)は、ホットメルト背着材をストライプ状やΩ字状に塗布することによって形成されている。
【0089】
このような胴回り部30(40)において、2枚のシート部材が接着部39(49)を介して接合されている部分と、接合されていない部分とでは、厚さが異なっている。すなわち、胴回り部30(40)は、厚みが一様ではなく、部分的に異なる厚さを有している。したがって、厚さ方向に見たときに、着色不織布(非肌側シート32)の色味も一様に見えず、複数の色味が視認されやすくなる。これにより、複数の色味を有するおむつ1を低コストで実現しやすくすることができる。
【0090】
また、胴回り部30(40)では、非肌側シート32(着色不織布)と肌側シート31(不織布)とが積層されていることから、2枚の不織布の地合いムラが重なり合って、厚さ方向から見たときに色味の変化が大きくなる。すなわち、着色不織布において繊維の密度が一様で無いことに応じて色の濃淡が生じ易くなっているのに加えて、当該着色不織布と積層された不織布も繊維の密度が一様では無いため、厚さ方向から見たときの色の濃淡がより複雑に視認されやすくなる。したがって、胴回り部30(40)において、より複雑な色味を視認させやすくすることができる。
【0091】
さらに、おむつ1において、非肌側シート32(着色不織布)と積層される肌側シート31(不織布)は、白色である。したがって、胴回り部30(40)を非肌側(おむつ1の外側)から見たときに、着色不織布の背景色(下地色)が白となるため、背景色が他の色(例えばグレーや褐色)である場合と比較して、着色不織布の着色剤がきれいに発色しやすい。すなわち、着色不織布において、色の異なる第1層と第2層とによって形成される複数の色味(マーブル模様や虹色)がより鮮やかに視認されやすくなる。したがって、胴回り部30(40)において、より複雑な色味を視認させやすくすることができる。
【0092】
<着色不織布、及び、おむつ1の製造方法>
続いて、本実施形態で用いられる着色不織布、及び、当該着色不織布を用いておむつ1を製造する方法について説明する。先ず、本実施形態に係る着色不織布の製造方法について説明する。図9は、着色不織布の製造において実施される各工程のフロー図である。図10は着色不織布を製造する着色不織布製造装置100について説明する概略図である。
【0093】
図10に示す着色不織布製造装置100は、図9に示される各工程(S101~S104)を順次実施することによって、本実施形態に係る着色不織布を製造する。着色不織布製造装置100は、ウェブ形成機構110と、融着機構120と、巻き取り機構130とを備える。
【0094】
ウェブ形成機構110は、不織布の原材料となる樹脂チップを溶融して長繊維を形成し(紡糸)、当該長繊維を複数のノズル(ノズル群)から噴出して、長繊維をランダムに集積させ絡み合わせることによってウェブを形成する。本実施形態において、ウェブ形成機構110は、搬送方向の上流側から下流側に向かって、第ゼロ層形成部111と、第1層形成部112と、第2層形成部113と、第3層形成部114とを有し、4層のウェブを形成しながら、各々のウェブを厚さ方向に積層させることができる。但し、形成されるウェブは3層以下でも良いし、層形成部を増設することで(図10では不図示)、5層以上のウェブが形成されるようにしても良い。
【0095】
ウェブ形成機構110のうち、少なくとも第1層形成部112及び第2層形成部113には、樹脂チップと共に所定の着色剤が付加されることにより、樹脂が着色され、着色された樹脂からなる長繊維によって、着色されたウェブ(層)が形成される。本実施形態では、或る色に着色された樹脂を溶融して第1層形成部112の第1ノズル(第1ノズル群)から噴出することで、或る色に着色された第1層のウェブ(図5の第1層321に相当)を形成する第1層形成工程が行われる(S101)。次いで、或る色とは異なる色に着色された樹脂を溶融して第2層形成部113に設けられた第2ノズル(第2ノズル群)から噴出することで、或る色とは異なる色に着色された第2層のウェブ(図5の第2層322に相当)を形成する第2層形成工程が行われる(S102)。そして、それぞれ色の異なる2つのウェブ(層)が厚さ方向に積層された状態で、搬送方向の上流側から下流側へ搬送される。
【0096】
なお、第ゼロ層形成部111及び第3層形成部114にも着色剤が付加されることによって着色されたウェブ(層)が形成されても良い。例えば、第ゼロ層形成部111及び第1層形成部112によって或る色に着色されたウェブ(第ゼロ層及び第1層)が形成され、第2層形成部113及び第3層形成部114によって或る色とは異なる色に着色されたウェブ(第2層及び第3層)が形成されるのであっても良い。上述したように、本実施形態においては、厚さ方向に積層された2以上の層(第ゼロ層及び第1層)が同じ色で形成されている場合(すなわち、2つの層の間で色の境界が視認できない場合)は一つの層として扱うものとする。
【0097】
次いで、或る色で着色された第1層のウェブ、及び、或る色とは異なる色で着色された第2層のウェブを含む2以上(図10では4層)のウェブを厚さ方向に積層させて、複数の融着部によって融着し、連続する一枚の不織布を形成する融着工程が行われる(S103)。融着工程では、図2で説明したような融着部32mが分散して多数形成され、これにより、それぞれのウェブ(層)の繊維同士が結合してシート状の着色不織布となる。
【0098】
最後に、連続する着色不織布をロール状に巻き取る、巻き取り工程が行われる(S104)。着色不織布をロール状に巻き取って原反ロール(例えば、後述する原反ロール32r)とすることにより、おむつ1等の吸収性物品の製造において、取り回しが便利になる。
【0099】
次に、図10の着色不織布製造装置100を用いて図9で説明した方法によって製造された着色不織布を原材料として、おむつ1を製造する方法について説明する。図11は、おむつ1の製造において実施される各工程のフロー図である。図12は、おむつ1を製造する吸収性物品製造装置200について説明する概略図である。吸収性物品製造装置200は、着色不織布製造装置100とは異なる製造ラインに配置されている。
【0100】
図12に示す吸収性物品製造装置200は、図11に示される各工程(S201~S205)を順次実施することによって、おむつ1を製造する。吸収性物品製造装置200は、搬送機構210と、胴回り部形成機構220と、吸収性本体取り付け機構230と、接合機構240と、切断機構250とを備える。
【0101】
先ず、おむつ1の胴回り部30(40)を構成する肌側シート31(41)、非肌側シート32(42)等の基材を、所定の搬送方向(MD方向)へ搬送する搬送工程が行われる(S201)。なお、吸収性物品製造装置200において搬送方向(MD方向)は、おむつ1の左右方向に沿った方向である。搬送工程では、肌側シート31(41)が搬送方向(左右方向)に連なった状態の肌側シート連続体31L(41L)と、非肌側シート32(42)が搬送方向(左右方向)に連なった状態の非肌側シート連続体32L(42L)とが、搬送機構210によって、それぞれ所定の搬送速度で搬送方向の上流側から下流側へ搬送される。
【0102】
ここで、非肌側シート連続体32L(42L)は、図10の製造方法によって製造された着色不織布の原反ロール32r(42r)から連続的に繰り出される。これにより複数の色味を有する吸収性物品(胴回り部30(40))を効率的に製造することができる。
【0103】
次いで、搬送方向に搬送されている非肌側シート連続体32Lと、肌側シート連続体31Lとを積層させ、厚さ方向の間に胴回り弾性部材35を取り付けて胴回り部30(40)を形成する胴回り部形成工程が行われる(S202)。胴回り部形成工程では、搬送方向(左右方向)に連なった状態の胴回り弾性部材の連続体35L(45L)を、搬送方向に所定の伸長倍率で伸長させながら搬送方向に沿って繰り出す。そして、胴回り部形成機構220によって非肌側シート連続体32Lと肌側シート連続体31Lとの間に挟み込むようにして接着剤を用いて両シート間に接合する。胴回り弾性部材の連続体35Lを接合する接着剤は、弾性部材側(35L)に塗布されても良いし、シート側(31L,32L)に塗布されても良い。これにより、胴回り部30(40)の連続体が形成される。
【0104】
次いで、胴回り部30(40)の連続体の肌側に、吸収性本体10を取り付ける吸収性本体取り付け工程が行われる(S203)。図12では、吸収性物品製造装置200とは異なるラインで別途製造された吸収性本体10が、転写ドラムを備えた吸収性本体取り付け機構230によって、胴回り部30(40)(連続体)の肌側に転写される。
【0105】
次いで、接合機構240を用いて、吸収性本体10を搬送方向(MD方向)と交差する交差方向(CD方向)の所定位置(図2の縦方向における中央位置CL)にて二つに折り曲げ、厚さ方向に重なった部分を搬送方向の所定位置にて前側胴回り部30と後側胴回り部40とを接合してサイド接合部50を形成する接合工程が行われる(S204)。
【0106】
最後に、切断機構250を用いて、胴回り部30(40)の連続体を搬送方向の所定位置(おむつ1の左右方向における両端位置)にて切断する切断工程が行われる(S205)。これにより、胴回り部30(40)の非肌側(非肌側シート32,42)に着色不織布を備えたおむつ1が形成される。
【0107】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。
【0108】
上述の実施形態では、肌側シート31として白色の不織布を用い、非肌側シート32(42)として白色以外の色を有する着色不織布を用いたが、これに限られない。例えば、肌側シート31(前側胴回り部30の肌側面)として着色不織布を用いて、非肌側シート32(42)(前側胴回り部30の非肌側面)として白色の不織布を用いても良い。
【符号の説明】
【0109】
1 おむつ(吸収性物品、パンツ型吸収性物品)、
10 吸収性本体、
11 吸収性コア、11b コアラップシート、
12 トップシート、
13 バックシート、
13a 液不透過性シート(肌側シート)、
13b 外装シート(非肌側シート)、
15 防漏壁部、16 防漏壁弾性部材、17 脚回り弾性部材、
30 前側胴回り部、30sw 側部、
31 肌側シート、31m 融着部、
32 非肌側シート、32m 融着部、32f 折り返し部、
321 第1層、322 第2層、
35 胴回り弾性部材(糸ゴム)、
36 肌面シート、39 接着部、
40 後側胴回り部、40b 股下領域、40sw 側部、
41 肌側シート、
42 非肌側シート、42f 折り返し部、
42h 開孔部、
45 胴回り弾性部材(糸ゴム)、
46 肌面シート、47 湾曲弾性部材、49 接着部、
50 サイド接合部、
100 着色不織布製造装置、
110 ウェブ形成機構、120 融着機構、130 巻き取り機構、
200 吸収性物品製造装置、
210 搬送機構、220 胴回り部形成機構、
230 吸収性本体取り付け機構、240 接合機構、250 切断機構、
BH 胴回り開口、LH 脚回り開口、
CL 中央位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12