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特開2024-81400極端紫外光生成システム、及び電子デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081400
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】極端紫外光生成システム、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240611BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195005
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】西村 祐一
(72)【発明者】
【氏名】植野 能史
(72)【発明者】
【氏名】宮下 光太郎
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】EUV光の出力を向上させる。
【解決手段】EUV光生成システムは、第1領域を含むチャンバと、第1領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、パルスレーザ光を出力するレーザ装置と、パルスレーザ光を第1領域に導く光学系と、第1領域に入射するパルスレーザ光の光路軸に直交し第1領域と交差する平面内でターゲットに対するレーザ照射位置を調整する照射位置調整機構と、パルスレーザ光をEUV集光ミラーの外側を通過させ第1領域に導くように配置したEUV集光ミラーと、第1領域から互いに異なる放射方向に放射されたEUV光のエネルギーを計測する複数のEUVセンサであって、光路軸からEUV集光ミラーに近づく方向に離れた位置にEUVセンサの幾何重心がある、EUVセンサと、パルスレーザ光の目標照射位置を複数のEUVセンサで計測される放射エネルギーに基づいて設定して照射位置調整機構を制御するプロセッサと、を備える。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域を含むチャンバと、
前記第1領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、
パルスレーザ光を出力するレーザ装置と、
前記パルスレーザ光を前記第1領域に導く光学素子を含む光学系と、
前記光学素子の位置又は姿勢を変化させることにより、前記第1領域に入射する前記パルスレーザ光の光路軸に直交し前記第1領域と交差する平面内で前記ターゲットに対するレーザ照射位置を調整する照射位置調整機構と、
前記第1領域から放射されるEUV光を反射して第2領域に集光するEUV集光ミラーであって、前記パルスレーザ光が前記EUV集光ミラーの外側を通過して前記第1領域に導かれるように配置された前記EUV集光ミラーと、
前記第1領域から互いに異なる放射方向に放射されたEUV光の放射エネルギーを計測する複数のEUVセンサであって、前記光路軸から前記EUV集光ミラーに近づく方向に離れた位置に前記EUVセンサの幾何重心がある、前記EUVセンサと、
前記パルスレーザ光の目標照射位置を前記EUVセンサで計測される前記放射エネルギーに基づいて設定して前記照射位置調整機構を制御するプロセッサと、
を備える、極端紫外光生成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記幾何重心は、前記第1領域から前記EUV集光ミラーに近づく方向に離れた位置にある、
極端紫外光生成システム。
【請求項3】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記幾何重心は、前記第1領域内の点を頂点とし前記EUV集光ミラーの外縁を含む側面を有する錐体状の領域内部に位置する、
極端紫外光生成システム。
【請求項4】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記幾何重心は、前記第1領域内の点を頂点とし、前記頂点から前記EUV集光ミラーへ入射する光の中心軸からの半頂角を5°とする円錐の内部に位置する、
極端紫外光生成システム。
【請求項5】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記幾何重心は、前記第1領域内の点から前記EUV集光ミラーへ入射する光の中心軸上に位置する、
極端紫外光生成システム。
【請求項6】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記目標照射位置を前記EUVセンサでそれぞれ計測される前記放射エネルギーの平均値が最大となる基準位置に設定する、
極端紫外光生成システム。
【請求項7】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記幾何重心は、前記第1領域内の点を頂点とし、前記光路軸からの半頂角を40°とする円錐の内部に位置する、
極端紫外光生成システム。
【請求項8】
請求項7に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記幾何重心は、前記第1領域内の点を頂点とし前記EUV集光ミラーの外縁を含む側面を有する錐体状の領域内部に位置する、
極端紫外光生成システム。
【請求項9】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、
前記放射エネルギーの平均値が最大となる基準位置に前記パルスレーザ光が照射された場合よりも前記第2領域に到達するEUV光の出力エネルギーが大きくなるレーザ照射位置を改善照射位置として取得し、
前記改善照射位置に基づいて前記目標照射位置を設定する、
極端紫外光生成システム。
【請求項10】
請求項9に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記改善照射位置は、前記第2領域に到達するEUV光の出力エネルギーが最大となるレーザ照射位置である、
極端紫外光生成システム。
【請求項11】
請求項9に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記目標照射位置を前記基準位置から前記改善照射位置に近づく方向に離れたレーザ照射位置に設定する、
極端紫外光生成システム。
【請求項12】
請求項11に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、
前記基準位置と前記改善照射位置との距離が許容値以下であれば、前記目標照射位置を前記改善照射位置に設定し、
前記基準位置と前記改善照射位置との距離が前記許容値よりも大きければ、前記目標照射位置を前記基準位置から前記改善照射位置に近づく方向に前記許容値離れた位置に設定する、
極端紫外光生成システム。
【請求項13】
請求項9に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記EUVセンサによりそれぞれ計測される前記放射エネルギーのいずれかを補正して得られる前記放射エネルギーの補正平均値が前記基準位置に前記パルスレーザ光が照射された場合よりも大きくなるレーザ照射位置に前記パルスレーザ光が照射されるように、前記照射位置調整機構を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項14】
請求項13に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記補正平均値が最大となるレーザ照射位置に前記パルスレーザ光が照射されるように、前記照射位置調整機構を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項15】
請求項13に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記基準位置に前記パルスレーザ光が照射された場合よりも前記目標照射位置に前記パルスレーザ光が照射された場合の方が前記補正平均値が大きくなるように、前記放射エネルギーのいずれかを補正する、
極端紫外光生成システム。
【請求項16】
請求項13に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記基準位置と前記目標照射位置との位置偏差に基づいて、前記放射エネルギーのいずれかを補正するための補正係数を算出する、
極端紫外光生成システム。
【請求項17】
請求項16に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記補正平均値が最大となるレーザ照射位置と、前記目標照射位置と、の距離が閾値以上である場合に前記補正係数を修正する、
極端紫外光生成システム。
【請求項18】
請求項9に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記パルスレーザ光が前記ターゲットに照射される前に前記ターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置をさらに備え、
前記プリパルスレーザ光は前記パルスレーザ光のレーザ照射位置よりも前記基準位置に近い位置に照射される、
極端紫外光生成システム。
【請求項19】
電子デバイスの製造方法であって、
第1領域を含むチャンバと、
前記第1領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、
パルスレーザ光を出力するレーザ装置と、
前記パルスレーザ光を前記第1領域に導く光学素子を含む光学系と、
前記光学素子の位置又は姿勢を変化させることにより、前記第1領域に入射する前記パルスレーザ光の光路軸に直交し前記第1領域と交差する平面内で前記ターゲットに対するレーザ照射位置を調整する照射位置調整機構と、
前記第1領域から放射されるEUV光を反射して第2領域に集光するEUV集光ミラーであって、前記パルスレーザ光が前記EUV集光ミラーの外側を通過して前記第1領域に導かれるように配置された前記EUV集光ミラーと、
前記第1領域から互いに異なる放射方向に放射されたEUV光の放射エネルギーを計測する複数のEUVセンサであって、前記光路軸から前記EUV集光ミラーに近づく方向に離れた位置に前記EUVセンサの幾何重心がある、前記EUVセンサと、
前記パルスレーザ光の目標照射位置を前記EUVセンサで計測される前記放射エネルギーに基づいて設定して前記照射位置調整機構を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成システムによって極端紫外光を生成し、
前記極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記極端紫外光を露光する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
第1領域を含むチャンバと、
前記第1領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、
パルスレーザ光を出力するレーザ装置と、
前記パルスレーザ光を前記第1領域に導く光学素子を含む光学系と、
前記光学素子の位置又は姿勢を変化させることにより、前記第1領域に入射する前記パルスレーザ光の光路軸に直交し前記第1領域と交差する平面内で前記ターゲットに対するレーザ照射位置を調整する照射位置調整機構と、
前記第1領域から放射されるEUV光を反射して第2領域に集光するEUV集光ミラーであって、前記パルスレーザ光が前記EUV集光ミラーの外側を通過して前記第1領域に導かれるように配置された前記EUV集光ミラーと、
前記第1領域から互いに異なる放射方向に放射されたEUV光の放射エネルギーを計測する複数のEUVセンサであって、前記光路軸から前記EUV集光ミラーに近づく方向に離れた位置に前記EUVセンサの幾何重心がある、前記EUVセンサと、
前記パルスレーザ光の目標照射位置を前記EUVセンサで計測される前記放射エネルギーに基づいて設定して前記照射位置調整機構を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成システムによって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成システム、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/410262号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/333718号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成システムは、第1領域を含むチャンバと、第1領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、パルスレーザ光を出力するレーザ装置と、パルスレーザ光を第1領域に導く光学素子を含む光学系と、光学素子の位置又は姿勢を変化させることにより、第1領域に入射するパルスレーザ光の光路軸に直交し第1領域と交差する平面内でターゲットに対するレーザ照射位置を調整する照射位置調整機構と、第1領域から放射されるEUV光を反射して第2領域に集光するEUV集光ミラーであって、パルスレーザ光がEUV集光ミラーの外側を通過して第1領域に導かれるように配置されたEUV集光ミラーと、第1領域から互いに異なる放射方向に放射されたEUV光の放射エネルギーを計測する複数のEUVセンサであって、光路軸からEUV集光ミラーに近づく方向に離れた位置にEUVセンサの幾何重心がある、EUVセンサと、パルスレーザ光の目標照射位置を複数のEUVセンサで計測される放射エネルギーに基づいて設定して照射位置調整機構を制御するプロセッサと、を備える。
【0006】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、第1領域を含むチャンバと、第1領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、パルスレーザ光を出力するレーザ装置と、パルスレーザ光を第1領域に導く光学素子を含む光学系と、光学素子の位置又は姿勢を変化させることにより、第1領域に入射するパルスレーザ光の光路軸に直交し第1領域と交差する平面内でターゲットに対するレーザ照射位置を調整する照射位置調整機構と、第1領域から放射されるEUV光を反射して第2領域に集光するEUV集光ミラーであって、パルスレーザ光がEUV集光ミラーの外側を通過して第1領域に導かれるように配置されたEUV集光ミラーと、第1領域から互いに異なる放射方向に放射されたEUV光の放射エネルギーを計測する複数のEUVセンサであって、光路軸からEUV集光ミラーに近づく方向に離れた位置にEUVセンサの幾何重心がある、EUVセンサと、パルスレーザ光の目標照射位置を複数のEUVセンサで計測される放射エネルギーに基づいて設定して照射位置調整機構を制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成システムによって極端紫外光を生成し、極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、第1領域を含むチャンバと、第1領域にターゲットを供給するターゲット供給部と、パルスレーザ光を出力するレーザ装置と、パルスレーザ光を第1領域に導く光学素子を含む光学系と、光学素子の位置又は姿勢を変化させることにより、第1領域に入射するパルスレーザ光の光路軸に直交し第1領域と交差する平面内でターゲットに対するレーザ照射位置を調整する照射位置調整機構と、第1領域から放射されるEUV光を反射して第2領域に集光するEUV集光ミラーであって、パルスレーザ光がEUV集光ミラーの外側を通過して第1領域に導かれるように配置されたEUV集光ミラーと、第1領域から互いに異なる放射方向に放射されたEUV光の放射エネルギーを計測する複数のEUVセンサであって、光路軸からEUV集光ミラーに近づく方向に離れた位置にEUVセンサの幾何重心がある、EUVセンサと、パルスレーザ光の目標照射位置を複数のEUVセンサで計測される放射エネルギーに基づいて設定して照射位置調整機構を制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成システムによって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、比較例に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図2図2は、比較例におけるレーザ照射位置調整の処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、レーザ照射位置マップの例を示す。
図4図4は、比較例におけるEUVセンサの配置と、各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーの大きさとを示す。
図5図5は、レーザ照射位置マップに含まれるマトリクスのすべての要素を放射エネルギーの平均値の計測結果で埋めた例を示す。
図6図6は、レーザ照射位置マップに含まれるマトリクスのうちのX=0の要素とY=0の要素だけを放射エネルギーの平均値の計測結果で埋めた例を示す。
図7図7は、X方向に沿ったレーザ照射位置ごとの放射エネルギーの平均値の分布を示すグラフである。
図8図8は、Y方向に沿ったレーザ照射位置ごとの放射エネルギーの平均値の分布を示すグラフである。
図9図9は、中心座標を更新して新たに読み込まれたレーザ照射位置マップの例を示す。
図10図10は、本開示で使用する極座標系の定義を示す。
図11図11は、プラズマ生成領域から各放射方向に放射されるEUV光の光強度分布を示すグラフである。
図12図12は、EUVセンサ及びEUV集光ミラーの配置と、各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーの大きさとを示す。
図13図13は、EUVセンサ及びEUV集光ミラーの配置と、各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーの大きさとを示す。
図14図14は、第1の実施形態に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図15図15は、第1の実施形態におけるEUVセンサ及びEUV集光ミラーの配置と、各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーの大きさとを示す。
図16図16は、第1の実施形態におけるEUVセンサ及びEUV集光ミラーの配置と、各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーの大きさとを示す。
図17図17は、第1の実施形態の第1の変形例におけるEUVセンサの幾何重心の位置を示す。
図18図18は、第1の実施形態の第2の変形例におけるEUVセンサの幾何重心の位置を示す。
図19図19は、EUVセンサの幾何重心を決定するために用いられるEUVセンサの位置を示す。
図20図20は、EUVセンサの幾何重心を決定するために用いられるEUVセンサの位置を示す。
図21図21は、EUVセンサの幾何重心を決定するために用いられるEUVセンサの位置を示す。
図22図22は、第2の実施形態におけるEUVセンサの幾何重心の位置を示す。
図23図23は、第3の実施形態に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図24図24は、第3の実施形態におけるレーザ照射位置調整の処理手順を示すフローチャートである。
図25図25は、補正係数を算出する処理の詳細を示すフローチャートである。
図26図26は、改善照射位置にパルスレーザ光が照射された場合の各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーの大きさを示す。
図27図27は、ターゲットとパルスレーザ光の光路軸との位置関係を示す。
図28図28は、目標照射位置にパルスレーザ光が照射された場合の各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーの大きさを示す。
図29図29は、目標照射位置にパルスレーザ光が照射された場合の各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーの大きさを示す。
図30図30は、基準位置から目標照射位置までの位置偏差とEUV放射方向との関係を示す。
図31図31は、EUVセンサの配置を示す。
図32図32は、第4の実施形態に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図33図33は、EUV光生成システムに接続された露光装置の構成を概略的に示す。
図34図34は、EUV光生成システムに接続された検査装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.比較例
1.1 構成
1.2 動作
1.3 レーザ照射位置調整
1.3.1 レーザ照射位置マップSm(x,y)の取得
1.3.2 レーザ照射位置ごとの平均値Eavgの取得
1.3.3 最適位置の計算
1.3.4 アクチュエータ344の調整
1.3.5 さらなる最適化
2.比較例の課題
3.EUVセンサES1~ES3の幾何重心GをずらしたEUV光生成システム11c
3.1 構成及び動作
3.2 変形例
3.3 EUVセンサES1~ES3の位置
3.4 作用
4.デブリの発生を抑制する構成
4.1 構成及び動作
4.2 作用
5.EUV光の出力エネルギーに基づいて放射エネルギーE1~E3を補正するEUV光生成システム11a
5.1 構成
5.2 レーザ照射位置調整
5.2.1 基準位置Pstの決定
5.2.2 改善照射位置Pmaxの決定
5.2.3 目標照射位置Popの決定
5.2.4 補正係数k1~k3の算出
5.2.5 補正係数k1~k3の算出の詳細
5.2.5.1 補正係数k1~k3の説明
5.2.5.2 補正係数k1~k3の算出方法
5.2.5.3 補正係数k1~k3の検証及び修正
5.3 作用
6.プリパルスレーザ装置PPLを含むEUV光生成システム11b
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用
7.その他
7.1 EUV光利用装置6の例
7.2 補足
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.比較例
1.1 構成
図1に、比較例に係るEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、レーザシステム3とともに用いられる。本開示においては、EUV光生成装置1及びレーザシステム3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。
【0012】
レーザシステム3は、メインパルスレーザ装置MPLと、高反射ミラー301、302、及び304と、ビームスプリッタ303と、エネルギーセンサ305と、を含む。メインパルスレーザ装置MPLは本開示におけるレーザ装置に相当し、パルスレーザ光31を出力する。エネルギーセンサ305によるパルスエネルギーの計測結果に基づいてパルスレーザ光31のパルスエネルギーが制御される。
【0013】
EUV光生成装置1は、チャンバ2及びターゲット供給部26を含む。チャンバ2は、密閉可能な容器である。ターゲット供給部26は、ターゲット物質を含むターゲット27をチャンバ2内部に供給する。ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよい。
【0014】
チャンバ2の壁には、貫通孔が備えられている。その貫通孔は、ウインドウ21によって塞がれ、ウインドウ21をレーザシステム3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、回転楕円面形状の反射面を備えたEUV集光ミラー23が配置される。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を備える。EUV集光ミラー23の表面には、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV集光ミラー23は、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点292に位置するように配置される。プラズマ生成領域25は本開示における第1領域に相当し、中間集光点292は本開示における第2領域に相当する。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が備えられ、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。
【0015】
第1の焦点から第2の焦点へ向かう方向をZ方向とする。Z方向に垂直なターゲット27の進行方向を-Y方向とし、その反対の方向をY方向とする。Y方向とZ方向との両方に垂直な方向をX方向とする。
【0016】
EUV光生成装置1は、プロセッサ5、ターゲットセンサ4、EUVセンサES1~ES3等を含む。プロセッサ5は、制御プログラムが記憶されたメモリ501と、制御プログラムを実行するCPU(central processing unit)502と、を含む処理装置である。プロセッサ5は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。ターゲットセンサ4は、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度の内の少なくとも1つを検出する。ターゲットセンサ4は、撮像機能を備えてもよい。EUVセンサES1~ES3の各々はプラズマ生成領域25に向けて配置され、プラズマ生成領域25から互いに異なる放射方向に放射されたEUV光の放射エネルギーを計測する。
【0017】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部とEUV光利用装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。EUV光利用装置6は、図33に示される露光装置6aでもよいし図34に示される検査装置6bでもよい。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が備えられる。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点に位置するように配置される。
【0018】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光伝送装置34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含む。レーザ光伝送装置34は、高反射ミラー341、342、及び343と、アクチュエータ344と、を含む。高反射ミラー341、342、及び343はレーザ光の伝送状態を規定し、アクチュエータ344は高反射ミラー341の位置、姿勢等を変化させることによりレーザ照射位置を調整する。アクチュエータ344は、高反射ミラー301からレーザ光集光ミラー22までの光学素子のいずれかに配置されてもよい。アクチュエータ344は本開示における照射位置調整機構に相当し、高反射ミラー301からレーザ光集光ミラー22までの光学素子は本開示における光学系に相当する。
【0019】
1.2 動作
図1を参照して、EUV光生成システム11の動作を説明する。レーザシステム3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光伝送装置34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、レーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33としてプラズマ生成領域25に導かれる。
【0020】
ターゲット供給部26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光33が照射される。パルスレーザ光33が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。放射光251に含まれるEUV光は、EUV集光ミラー23によって他の波長域の光に比べて高い反射率で反射される。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光を含む反射光252は、中間集光点292で集光され、EUV光利用装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0021】
プロセッサ5は、EUV光生成システム11全体を制御する。プロセッサ5は、ターゲットセンサ4の検出結果を処理する。ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて、プロセッサ5は、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御する。さらに、プロセッサ5は、レーザシステム3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御する。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0022】
1.3 レーザ照射位置調整
図2は、比較例におけるレーザ照射位置調整の処理手順を示すフローチャートである。図2に示される処理は、EUV光生成システム11の初期設定時に、あるいはキャリブレーション時に行われる。
【0023】
1.3.1 レーザ照射位置マップSm(x,y)の取得
S11において、プロセッサ5は、レーザ照射位置マップSm(x,y)をメモリ501等の記憶装置から読み込む。
【0024】
図3は、レーザ照射位置マップSm(x,y)の例を示す。レーザ照射位置マップSm(x,y)は、Z方向に進むパルスレーザ光33の光路軸に直交しプラズマ生成領域25と交差するXY平面内でのレーザ照射位置を規定するマトリクスの情報を含む。図3においては、x=y=0の位置を中心座標とし、±X方向及び±Y方向に20μmごとにレーザ照射位置を規定した例が示されている。x=y=0の位置は過去に設定した最適位置でもよいし、設計上の最適位置でもよい。以下のS12からS15までの処理において、例えば図3の左上の位置から順番にパルスレーザ光33が照射される。
【0025】
1.3.2 レーザ照射位置ごとの平均値Eavgの取得
図2を再び参照し、S12において、プロセッサ5は、レーザ照射位置マップSm(x,y)の1つのレーザ照射位置にパルスレーザ光33が照射されるようにアクチュエータ344を駆動する。
【0026】
S14において、プロセッサ5は、パルスレーザ光33をターゲット27に照射させ、複数のEUVセンサES1~ES3で計測される放射エネルギーE1~E3の平均値Eavgを取得する。
【0027】
図4は、比較例におけるEUVセンサES1~ES3の配置と、各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーEの大きさとを示す。図4に示されるEUVセンサES1~ES3は、例えば、パルスレーザ光33の光路軸周りに回転対称の位置に配置される。図4において、放射エネルギーEを示す破線の円の半径は、放射光251の到達距離を示すのではなく、各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーEの大きさを概念的に示す。放射エネルギーE1~E3を示す矢印の長さは、EUVセンサES1~ES3で計測される放射光251の放射エネルギーE1~E3の大きさを示す。
【0028】
パルスレーザ光33の光路軸がターゲット27の中心に一致したと仮定すると、放射エネルギーEの分布はパルスレーザ光33の光路軸に対して軸対称の分布になる。このとき、以下の式で計算される平均値Eavgは最大値になると考えられる。
Eavg=(E1+E2+E3)/3
【0029】
一方、パルスレーザ光33の光路軸がターゲット27の中心からずれると、放射エネルギーEの分布はパルスレーザ光33の光路軸に対して非対称の分布になり、平均値Eavgは低下すると考えられる。
【0030】
そこで、レーザ照射位置マップSm(x,y)に含まれるレーザ照射位置の各々において平均値Eavgを算出することで、レーザ照射の最適位置を算出し得る。
【0031】
図2を再び参照し、S15において、プロセッサ5は、レーザ照射位置マップSm(x,y)に含まれるレーザ照射位置のすべてにパルスレーザ光33を照射したか否かを判定する。レーザ照射位置のすべてにパルスレーザ光33を照射した場合(S15:YES)、プロセッサ5は、S16に処理を進める。未照射のレーザ照射位置がある場合(S15:NO)、プロセッサ5は、S12に処理を戻し、未照射のレーザ照射位置への照射を行う。
【0032】
図5は、レーザ照射位置マップSm(x,y)に含まれるマトリクスのすべての要素を平均値Eavgの計測結果で埋めた例を示す。図6は、レーザ照射位置マップSm(x,y)に含まれるマトリクスのうちのX=0の要素とY=0の要素だけを平均値Eavgの計測結果で埋めた例を示す。図5に示されるように平均値Eavgのデータをすべて取得する場合は、レーザ照射の最適位置をより正確に求め得る。図6に示されるように一部の平均値Eavgのデータだけを取得する場合は、データ取得及び計算に要する時間を低減し得る。
【0033】
1.3.3 最適位置の計算
図2を再び参照し、S16において、プロセッサ5は、平均値Eavgの分布に基づいてレーザ照射の最適位置を計算する。
【0034】
図7は、X方向に沿ったレーザ照射位置ごとの平均値Eavgの分布を示すグラフである。図8は、Y方向に沿ったレーザ照射位置ごとの平均値Eavgの分布を示すグラフである。X方向及びY方向の各々において、平均値Eavgの分布から近似曲線を求め、そのピーク位置を最適位置とすることができる。なお、平均値Eavgに限らず、合計値が用いられてもよい。
【0035】
1.3.4 アクチュエータ344の調整
図2を再び参照し、S17において、プロセッサ5は、最適位置にパルスレーザ光33が照射されるようにアクチュエータ344を調整する。
【0036】
S18において、プロセッサ5は、S17における調整量が閾値未満か否かを判定する。調整量は、レーザ照射位置マップSm(x,y)の中心座標からの調整量である。調整量が閾値未満である場合(S18:YES)、レーザ照射位置調整が完了し、プロセッサ5は本フローチャートの処理を終了する。調整量が閾値以上である場合(S18:NO)、プロセッサ5はS19に処理を進める。
【0037】
1.3.5 さらなる最適化
S19において、プロセッサ5は、レーザ照射位置マップSm(x,y)の中心座標を最適位置に更新する。S19の後、プロセッサ5は、S11に処理を戻す。
【0038】
図9は、中心座標を更新して新たに読み込まれたレーザ照射位置マップSm(x,y)の例を示す。図9においては、x=-5[μm]、y=-10[μm]の位置を中心座標とし、±X方向及び±Y方向に20μmごとにレーザ照射位置を規定した例が示されている。最適位置を中心としたレーザ照射位置マップSm(x,y)を用いて平均値Eavgを取得し直すことで、さらなる最適化を行うことができる。
【0039】
2.比較例の課題
図10は、本開示で使用する極座標系の定義を示す。プラズマ生成領域25内の1つの点を原点とし、原点からの距離をrとする。Y軸周りの回転角度をθとする。XZ面に対する傾斜角度をφとする。θ=φ=0となる方向は-Z方向に一致する。
【0040】
図11は、プラズマ生成領域25から各放射方向に放射されるEUV光の光強度分布を示すグラフである。傾斜角度φを0とし、回転角度θを0からπ[rad]まで変化させると、ターゲット27に対するパルスレーザ光33の入射方向と反対の方向、すなわち、θ=0の方向に放射されるEUV光の光強度が最も高くなる。そして、ターゲット27に対するパルスレーザ光33の入射方向と同じ方向、すなわち、θ=πの方向に放射されるEUV光の光強度が最も低くなる。
【0041】
図12及び図13は、EUVセンサES1~ES3及びEUV集光ミラー23aの配置と、各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーEの大きさとを示す。但し、図12において、EUVセンサES3はEUVセンサES2とY方向に重なるため図示されていない。パルスレーザ光33の光路軸をターゲット27の中心に一致させた場合、図13に示されるように、放射エネルギーEの分布はZ軸に対して軸対称の分布になり、この点は図4を参照しながら説明したのと同様である。
【0042】
しかし、図11を参照しながら説明した通り、Y軸周りの回転角度θが変わると光強度が変わる。このため図12に示されるように、-Z方向の放射エネルギーEは大きいが、-Z方向から離れるに従って放射エネルギーEが低下し得る。-Z方向から離れた位置にEUV集光ミラー23aを配置すると、各放射方向に放射されるEUV光のうちの放射エネルギーEがピーク値を示す部分はEUV集光ミラー23aに入射せず、放射エネルギーEがピーク値より小さい部分がEUV集光ミラー23aに入射する。このため、プラズマ生成領域25から放射されたEUV光のうちのEUV集光ミラー23aに入射する部分の割合が低く、EUV光利用装置6に出力されるEUV光の出力エネルギーが不十分となり得る。
【0043】
以下に説明する本開示の実施形態は、パルスレーザ光33の光路軸を、ターゲット27の中心からEUV集光ミラー23aに近づく方向に離れた位置にずらすことで、EUV光の出力エネルギーを向上することに関連している。
【0044】
3.EUVセンサES1~ES3の幾何重心GをずらしたEUV光生成システム11c
3.1 構成及び動作
図14は、第1の実施形態に係るEUV光生成システム11cの構成を概略的に示す。EUV集光ミラー23aはパルスレーザ光33の光路軸からずれた位置に配置されている。比較例においては図1に示されるようにパルスレーザ光33がEUV集光ミラー23の貫通孔24を通過してプラズマ生成領域25に集光されるのに対し、第1の実施形態においてはパルスレーザ光33がEUV集光ミラー23aの外側を通過してプラズマ生成領域25に集光される。
【0045】
図15及び図16は、第1の実施形態におけるEUVセンサES1~ES3及びEUV集光ミラー23aの配置と、各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーEの大きさとを示す。但し、図15において、EUVセンサES3はEUVセンサES2とY方向に重なるため図示されていない。
【0046】
EUV集光ミラー23aは、パルスレーザ光33の光路軸からX方向にずれた位置に配置されている。この点は図13に示される例と同様である。第1の実施形態においては、パルスレーザ光33の光路軸をターゲット27の中心よりもわずかにX方向にずらすことによって、EUV光の放射エネルギーEの分布をEUV集光ミラー23aに近づく方向に傾ける。このときのレーザ照射位置を基準位置Pstとする。レーザ照射位置を基準位置Pstに制御するために、第1の実施形態は以下のように構成される。
【0047】
まず、1つのEUVセンサES1に注目すると、EUVセンサES1で計測される放射エネルギーE1が最大となるのは、EUV光の放射エネルギーEが最大となる方向にEUVセンサES1が位置するときである。2つのEUVセンサES1及びES2に注目すると、EUVセンサES1及びES2で計測される放射エネルギーE1及びE2の平均値が最大となるのは、EUV光の放射エネルギーEが最大となる方向にEUVセンサES1及びES2の中点が位置するときである。3つ以上のEUVセンサES1~ES3で計測される放射エネルギーE1~E3の平均値Eavgが最大となるのは、EUV光の放射エネルギーEが最大となる方向にEUVセンサES1~ES3の幾何重心が位置するときである。
【0048】
図13に示される例においてはEUVセンサES1~ES3の幾何重心がZ軸上に位置しており、ターゲット27がZ軸の付近に供給される。このため図13においては、EUVセンサES1~ES3で計測される放射エネルギーE1~E3の平均値Eavgが最大となるようにパルスレーザ光33の光路軸を制御したとき、パルスレーザ光33の光路軸がターゲット27の中心に一致し、EUV光の放射エネルギーEが最大となるのは-Z方向となる。
【0049】
これに対し、第1の実施形態におけるEUVセンサES1~ES3は、それらの幾何重心Gがパルスレーザ光33の光路軸からEUV集光ミラー23aに近づく方向に離れて位置するように配置される。
【0050】
そこで、平均値Eavgが最大となるようにパルスレーザ光33の光路軸を制御することで、EUVセンサES1~ES3の幾何重心が位置する方向においてEUV光の放射エネルギーEが最大となるようにEUV光の放射エネルギーEの分布を傾けることができる。平均値Eavgが最大となるようにパルスレーザ光33の光路軸を制御する処理は、図2を参照しながら説明した比較例における処理と同様である。光路軸を制御することにより、基準位置Pstが決まる。
【0051】
EUVセンサES1~ES3の幾何重心Gは、プラズマ生成領域25からEUV集光ミラー23aに近づく方向に離れて位置するように配置されることが望ましい。
【0052】
さらに、EUVセンサES1~ES3の幾何重心Gは、プラズマ生成領域25内の点を頂点とし、EUV集光ミラー23aの外縁を含む側面を有する錐体状の領域内部に配置されることが望ましい。これにより、EUV光の放射エネルギーEのピークがEUV集光ミラー23aに向くように放射エネルギーEの分布を傾けることができる。図15に錐体状の領域が斜線で示されている。EUV集光ミラー23aの外縁が円形であれば、錐体状の領域は円錐状又は楕円錐状の領域となる。図15及び図16においてはEUVセンサES2及びES3の位置を比較例におけるこれらの位置よりもX方向にずらすことで幾何重心Gを所望の領域に配置した場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、プラズマ生成領域25からEUVセンサES1~ES3の受光面までの距離r1~r3は変えずに、Y軸周りの回転角度θ1~θ3及びXZ面に対する傾斜角度φ1~φ3を変えることで幾何重心Gを配置してもよい。
【0053】
3.2 変形例
図17は、第1の実施形態の第1の変形例におけるEUVセンサES1~ES3の幾何重心Gの位置を示す。幾何重心Gは、プラズマ生成領域25内の点を頂点とし、この頂点からEUV集光ミラー23aへ入射する光の中心軸Mからの半頂角を5°とする円錐の内部に配置されることが望ましい。図17に円錐の位置が斜線で示されている。
【0054】
図18は、第1の実施形態の第2の変形例におけるEUVセンサES1~ES3の幾何重心Gの位置を示す。幾何重心Gは、プラズマ生成領域25内の点からEUV集光ミラー23aへ入射する光の中心軸Mに配置されることが望ましい。
【0055】
3.3 EUVセンサES1~ES3の位置
図19図21は、EUVセンサES1~ES3の幾何重心Gを決定するために用いられるEUVセンサES1の位置P1を示す。これらの図を用いてEUVセンサES1の位置P1について説明するが、EUVセンサES2及びES3の位置についても同様である。
【0056】
図19に示されるように、プラズマ生成領域25から放射された放射光251がEUVセンサES1に直接入射する場合を考える。この場合、プラズマ生成領域25からEUVセンサES1の受光面までの距離rに応じて、プラズマ生成領域25からみたEUVセンサES1の受光面の立体角が変化する。そこで、EUVセンサES1~ES3の幾何重心Gを決定するためのEUVセンサES1の位置P1は、EUVセンサES1の受光面の中心位置とすることが望ましい。
【0057】
図20に示されるように、プラズマ生成領域25から放射された放射光251がチャンバ2の壁面に形成されたアパーチャ20aを介してEUVセンサES1に入射する場合であって、アパーチャ20aの開口の大きさがEUVセンサES1の受光面に入射する光の光量を規定している場合を考える。この場合、プラズマ生成領域25からアパーチャ20aまでの距離rに応じて、プラズマ生成領域25からみたEUVセンサES1の受光面の立体角が変化する。そこで、EUVセンサES1~ES3の幾何重心Gを決定するためのEUVセンサES1の位置P1は、アパーチャ20aの中心位置とすることが望ましい。
【0058】
図21に示されるように、プラズマ生成領域25から放射された放射光251がEUV反射ミラー20bを介してEUVセンサES1に入射する場合であって、EUV反射ミラー20bの大きさがEUVセンサES1の受光面に入射する光の光量を規定している場合を考える。この場合、プラズマ生成領域25からEUV反射ミラー20bまでの距離rに応じて、プラズマ生成領域25からみたEUVセンサES1の受光面の立体角が変化する。そこで、EUVセンサES1~ES3の幾何重心Gを決定するためのEUVセンサES1の位置P1は、EUV反射ミラー20bの中心位置とすることが望ましい。
【0059】
3.4 作用
(1)第1の実施形態によれば、EUV光生成システム11cは、チャンバ2と、ターゲット供給部26と、メインパルスレーザ装置MPLと、高反射ミラー341を含む光学系と、アクチュエータ344と、EUV集光ミラー23aと、複数のEUVセンサES1~ES3と、プロセッサ5と、を含む。チャンバ2はプラズマ生成領域25を含む。ターゲット供給部26はプラズマ生成領域25にターゲット27を供給する。メインパルスレーザ装置MPLはパルスレーザ光33を出力する。高反射ミラー341を含む光学系はパルスレーザ光33をプラズマ生成領域25に導く。アクチュエータ344は、高反射ミラー341の位置又は姿勢を変化させることにより、プラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の光路軸に直交しプラズマ生成領域25と交差するXY平面内でターゲット27に対するレーザ照射位置を調整する。EUV集光ミラー23aは、プラズマ生成領域25から放射されるEUV光を反射して中間集光点292に集光するEUV集光ミラー23aであって、パルスレーザ光33がEUV集光ミラー23aの外側を通過してプラズマ生成領域25に導かれるように配置される。EUVセンサES1~ES3は、プラズマ生成領域25から互いに異なる放射方向に放射されたEUV光の放射エネルギーE1~E3を計測するもので、パルスレーザ光33の光路軸からEUV集光ミラー23aに近づく方向に離れた位置にEUVセンサES1~ES3の幾何重心Gがある。プロセッサ5は、パルスレーザ光33の目標照射位置PopをEUVセンサES1~ES3で計測される放射エネルギーE1~E3に基づいて設定してアクチュエータ344を制御する。
【0060】
これによれば、放射エネルギーE1~E3に基づいてパルスレーザ光33の目標照射位置Popを設定して光路軸を制御することで、EUVセンサES1~ES3の幾何重心Gに向かうEUV光の放射エネルギーEが大きくなるように、EUV光の放射エネルギー分布を傾けることができる。EUVセンサES1~ES3の幾何重心Gは、パルスレーザ光33の光路軸からEUV集光ミラー23aに近づく方向に離れた位置にあるので、EUV集光ミラー23aを介して中間集光点292に到達するEUV光の出力エネルギーを大きくすることができる。
【0061】
(2)第1の実施形態によれば、幾何重心Gは、プラズマ生成領域25からEUV集光ミラー23aに近づく方向に離れた位置にある。
【0062】
これによれば、プラズマ生成領域25からEUV集光ミラー23aに近づく方向にEUV光の放射エネルギー分布を傾けることができる。従って、EUV集光ミラー23aを介して中間集光点292に到達するEUV光の出力エネルギーを大きくすることができる。
【0063】
(3)第1の実施形態によれば、幾何重心Gは、プラズマ生成領域25内の点を頂点としEUV集光ミラー23aの外縁を含む側面を有する錐体状の領域内部に位置する。
【0064】
これによれば、プラズマ生成領域25内の点を頂点としEUV集光ミラー23aの外縁を含む側面を有する錐体状の領域内部に向けてEUV光の放射エネルギー分布を傾けることができる。従って、EUV集光ミラー23aを介して中間集光点292に到達するEUV光の出力エネルギーを大きくすることができる。
【0065】
(4)第1の実施形態によれば、幾何重心Gは、プラズマ生成領域25内の点を頂点とし、この頂点からEUV集光ミラー23aへ入射する光の中心軸Mからの半頂角を5°とする円錐の内部に位置する。
【0066】
これによれば、プラズマ生成領域25内の点を頂点とし、この頂点からEUV集光ミラー23aへ入射する光の中心軸Mからの半頂角を5°とする円錐内の領域に向けてEUV光の放射エネルギー分布を傾けることができる。従って、EUV集光ミラー23aを介して中間集光点292に到達するEUV光の出力エネルギーを大きくすることができる。
【0067】
(5)第1の実施形態によれば、幾何重心Gは、プラズマ生成領域25内の点からEUV集光ミラー23aへ入射する光の中心軸Mに位置する。
【0068】
これによれば、プラズマ生成領域25内の点からEUV集光ミラー23aへ入射する光の中心軸Mの方向にEUV光の放射エネルギー分布を傾けることができる。従って、EUV集光ミラー23aを介して中間集光点292に到達するEUV光の出力エネルギーを大きくすることができる。
【0069】
(6)第1の実施形態によれば、プロセッサ5は、目標照射位置PopをEUVセンサES1~ES3でそれぞれ計測される放射エネルギーE1~E3の平均値Eavgが最大となる基準位置Pstに設定する。
【0070】
これによれば、目標照射位置Popを平均値Eavgが最大となるように設定することで、EUV光の放射エネルギーEのピークがEUVセンサES1~ES3の幾何重心Gに向くように放射エネルギーEの分布を傾けることができる。
【0071】
その他の点については、第1の実施形態は比較例と同様である。
【0072】
4.デブリの発生を抑制する構成
4.1 構成及び動作
図22は、第2の実施形態におけるEUVセンサES1~ES3の幾何重心Gの位置を示す。EUVセンサES1~ES3の幾何重心Gは、プラズマ生成領域25内の点を頂点とし、パルスレーザ光33の光路軸からの半頂角Afrgを40°以下とする円錐の内部に位置する。
【0073】
上述のように、幾何重心Gが決まれば光路軸の制御により基準位置Pstが決まる。半頂角Afrgを40°とする円錐の内部に幾何重心Gが位置する場合は、ターゲット27の中心と基準位置Pstとの距離は8μm以下となり得る。ターゲット27の中心からのずれを抑制することで、ターゲット27に由来するデブリの発生を抑制し得る。半頂角Afrgを15°とする円錐の内部に幾何重心Gが位置する場合は、ターゲット27の中心と基準位置Pstとの距離は3μm以下となり得る。これにより、ターゲット27に由来するデブリの発生をさらに抑制し得る。
【0074】
第1の実施形態と同様に、第2の実施形態においても、EUVセンサES1~ES3の幾何重心Gは、プラズマ生成領域25内の点を頂点とし、EUV集光ミラー23aの外縁を含む側面を有する錐体状の領域内部に位置することが望ましい。これにより、EUV光の放射エネルギーEのピークがEUV集光ミラー23aに向くように放射エネルギーEの分布を傾けることができる。図22に、パルスレーザ光33の光路軸からの半頂角Afrgを40°以下とする円錐と、EUV集光ミラー23aの外縁を含む側面を有する錐体状の領域内部と、が重なる領域が斜線で示されている。
【0075】
4.2 作用
(7)第2の実施形態によれば、幾何重心Gは、プラズマ生成領域25内の点を頂点とし、パルスレーザ光33の光路軸からの半頂角Afrgを40°とする円錐の内部に位置する。
【0076】
これによれば、ターゲット27の中心からのパルスレーザ光33の光路軸のずれを抑制することで、ターゲット27に由来するデブリの発生を抑制し得る。
【0077】
(8)第2の実施形態によれば、幾何重心Gは、プラズマ生成領域25内の点を頂点としEUV集光ミラー23aの外縁を含む側面を有する錐体状の領域内部に位置する。
【0078】
これによれば、ターゲット27に由来するデブリの発生を抑制し得るだけでなく、EUV光の放射エネルギーEの分布をEUV集光ミラー23aの方向に傾けることができる。
【0079】
その他の点については、第2の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0080】
5.EUV光の出力エネルギーに基づいて放射エネルギーE1~E3を補正するEUV光生成システム11a
5.1 構成
図23は、第3の実施形態に係るEUV光生成システム11aの構成を概略的に示す。第3の実施形態においては、EUV光利用装置6とプロセッサ5とを結ぶ信号線が追加されている。EUV光利用装置6は、中間集光点292に到達するEUV光の出力エネルギーを計測し、信号線を介してプロセッサ5に送信する。プロセッサ5は、EUV光利用装置6から出力エネルギーを受信する。EUV光利用装置6は、露光装置6aでも検査装置6bでもよく、中間集光点292に到達するEUV光の出力エネルギーを計測するための計測器でもよい。
【0081】
5.2 レーザ照射位置調整
図24は、第3の実施形態におけるレーザ照射位置調整の処理手順を示すフローチャートである。図24に示される処理は、EUV光生成システム11aの初期設定時に、あるいはキャリブレーション時に行われる。
【0082】
5.2.1 基準位置Pstの決定
S31において、プロセッサ5は、パルスレーザ光33をターゲット27に照射させ、複数のEUVセンサES1~ES3で計測される放射エネルギーE1~E3の平均値Eavgが最大となるレーザ照射位置を基準位置Pstとする。この処理は、図2を参照しながら説明したレーザ照射位置調整の処理と同様である。但し、図2においてはEUVセンサES1~ES3がパルスレーザ光33の光路軸周りに回転対称に配置された比較例について説明したので(図4参照)、図2において計算される最適位置はターゲット27の中心に一致する。これに対し、第3の実施形態においては第1又は第2の実施形態と同様にEUVセンサES1~ES3の幾何重心Gがパルスレーザ光33の光路軸からずれているので、図2において計算される最適位置は図15図17図18図22に示される基準位置Pstに相当する。
【0083】
5.2.2 改善照射位置Pmaxの決定
S32において、プロセッサ5は、EUV光をEUV光利用装置6に向けて出力させ、中間集光点292に到達するEUV光の出力エネルギーの計測結果をレーザ照射位置ごとに受信する。このときのレーザ照射位置は、例えば、基準位置PstからXY平面内で少しずつ移動するように設定される。プロセッサ5は、基準位置Pstにパルスレーザ光33が照射された場合よりも出力エネルギーが大きくなるレーザ照射位置を改善照射位置Pmaxとする。改善照射位置Pmaxは、好ましくは出力エネルギーが最大となるレーザ照射位置である。
【0084】
図26は、改善照射位置Pmaxにパルスレーザ光33が照射された場合の各放射方向における放射エネルギーEの大きさを示す。レーザ照射位置をずらすことで、放射エネルギーEの分布を傾けることができる。各放射方向に放射されるEUV光のうちの放射エネルギーEがピーク値を示す部分EmaxがEUV集光ミラー23aの中心付近に入射するときに、出力エネルギーが最大となる。
【0085】
5.2.3 目標照射位置Popの決定
図24を再び参照し、S33において、プロセッサ5は、基準位置Pstと改善照射位置Pmaxとの距離が許容値dPfrg以下であるか否かを判定する。許容値dPfrgは、ターゲット27に由来するデブリの発生量が許容値以下になるかどうかを基準として予め設定される。許容値dPfrgはターゲット27の半径未満、例えば3μm以上8μm以下に設定される。基準位置Pstと改善照射位置Pmaxとの距離が許容値dPfrg以下である場合(S33:YES)、プロセッサ5はS34に処理を進める。基準位置Pstと改善照射位置Pmaxとの距離が許容値dPfrgより大きい場合(S33:NO)、プロセッサ5はS35に処理を進める。
【0086】
図27は、ターゲット27とパルスレーザ光33の光路軸との位置関係を示す。図27は、図26と見ている方向は同じであるが、図26より狭い範囲を拡大して示している。図27に示されるように、基準位置Pstから許容値dPfrg離れた位置まではデブリの発生量が許容値以下であり、その場合はS34の処理が行われる。基準位置Pstから許容値dPfrg離れた位置よりさらに離れると、デブリの発生が急激に増加する場合があり、S35の処理が行われる。
【0087】
図24を再び参照し、S34において、プロセッサ5は、目標照射位置Popを改善照射位置Pmaxに設定する。S35において、プロセッサ5は、目標照射位置Popを基準位置Pstから改善照射位置Pmaxに近づく方向に許容値dPfrg離れた位置に設定する。いずれの場合も、目標照射位置Popは基準位置Pstから改善照射位置Pmaxに近づく方向に離れた位置に設定される。いずれの場合も、基準位置Pstと目標照射位置Popとの距離は許容値dPfrg以下となる。
【0088】
5.2.4 補正係数k1~k3の算出
S34又はS35の後、S36において、プロセッサ5は、複数のEUVセンサES1~ES3の補正係数k1~k3を算出する。補正係数k1~k3は、平均値Eavgの代わりに補正平均値Ewavgを算出するために用いられる。第1の実施形態においては平均値Eavgが大きくなるようにレーザ照射位置を制御することでパルスレーザ光33の光路軸を基準位置Pstに近づけるのに対し、第3の実施形態においては補正平均値Ewavgが大きくなるようにレーザ照射位置を制御することで光路軸を目標照射位置Popに近づける。具体的には、補正平均値Ewavgが最大となるようにレーザ照射位置を制御する。S36の詳細については図25を参照しながら説明する。S36の処理が終了するとレーザ照射位置調整が完了し、プロセッサ5は、本フローチャートの処理を終了する。
【0089】
5.2.5 補正係数k1~k3の算出の詳細
図25は、補正係数k1~k3を算出する処理の詳細を示すフローチャートである。図25に示される処理は、図24のS36のサブルーチンに相当する。
【0090】
5.2.5.1 補正係数k1~k3の説明
S361において、プロセッサ5は、基準位置Pstにパルスレーザ光33が照射された場合よりも目標照射位置Popにパルスレーザ光33が照射された場合の方が放射エネルギーE1~E3の補正平均値Ewavgが大きくなるように、補正係数k1~k3を算出する。具体的には、目標照射位置Popにパルスレーザ光33が照射された場合の補正平均値Ewavgが最大となる補正係数k1~k3を算出する。
【0091】
図28及び図29は、目標照射位置Popにパルスレーザ光33が照射された場合の各放射方向におけるEUV光の放射エネルギーEの大きさを示す。EUVセンサES1~ES3及びEUV集光ミラー23aの配置は図15及び図16と同様である。レーザ照射位置を変えることで放射エネルギーEの分布を傾けることができ、放射エネルギーEの分布の傾きを変えることで、図29に示されるようにEUVセンサES1~ES3で計測される放射エネルギーE1~E3の比率が変わる。従って、補正係数k1~k3を適切に設定しておけば、補正平均値Ewavgが最大となるようにレーザ照射位置を制御したときに目標照射位置Popにパルスレーザ光33を照射できるようになる。補正平均値Ewavgは以下の式により算出される。
Ewavg=(k1・E1+k2・E2+k3・E3)/3
【0092】
例えば、補正係数k1よりも補正係数k2及びk3が大きな値に設定された場合には、放射エネルギーE1を大きくするよりも放射エネルギーE2及びE3を大きくする方が、補正平均値Ewavgがより大きくなる。そのように設定された補正平均値Ewavgを最大化することで、放射エネルギーE2及びE3が大きくなり、EUV光の放射エネルギーEのピークがX方向、すなわちEUV集光ミラー23aに近づく方向に傾けられるので、EUV集光ミラー23aに入射するEUV光のエネルギーを大きくすることができる。なお、放射エネルギーE1~E3の補正平均値Ewavgが用いられる場合に限らず、放射エネルギーE1~E3に補正係数k1~k3による重み付けをした合計値が用いられてもよい。
【0093】
5.2.5.2 補正係数k1~k3の算出方法
補正係数k1~k3は、基準位置Pstから目標照射位置Popまでの位置偏差dP(dx,dy)に基づいて以下のように算出することができる。
【0094】
図30は、位置偏差dP(dx,dy)とEUV放射方向R(θt,φt)との関係を示す。図30は、図28と見ている方向は同じであるが、図28より狭い範囲を拡大して示している。EUV放射方向は、各放射方向に放射されるEUV光のうちの放射エネルギーEが-Z方向の放射エネルギーよりも大きい部分の放射方向であり、好ましくは、放射エネルギーEがピーク値を示す部分Emaxの放射方向である。基準位置Pstにパルスレーザ光33を照射したときのEUV放射方向をR(θg,φg)とし、EUV放射方向R(θg,φg)は極座標の原点からEUVセンサES1~ES3の幾何重心Gへ向かう方向に一致する。目標照射位置Popにパルスレーザ光33を照射したときのEUV放射方向をR(θt,φt)とする。レーザ照射位置の変化とEUV放射方向の変化との間には一定範囲内で線形性があるとみなすことができる。その係数は、予め計測したデータから得ることができ、行列αで表せる。例えば、レーザ照射位置を1μm移動すると、放射エネルギーEがピーク値を示す部分Emaxの放射方向は5°~6°程度変化する。基準位置Pstにパルスレーザ光33を照射したときのEUV放射方向R(θg,φg)から目標照射位置Popにパルスレーザ光33を照射したときのEUV放射方向R(θt,φt)までの角度変化量R(θt,φt)-R(θg,φg)は、行列αを用いて以下の式で算出できる。
R(θt,φt)-R(θg,φg)=α・dP(dx,dy)
【0095】
図31は、EUVセンサES1~ES3の配置を示す。EUVセンサES1~ES3の位置は、以下のように極座標を用いた位置ベクトルP1~P3で表せる。
P1[r1,θ1,φ1]
P2[r2,θ2,φ2]
P3[r3,θ3,φ3]
【0096】
これらの位置ベクトルP1~P3に補正係数k1~k3による重み付けをしたとき、以下の補正位置ベクトルPw1~Pw3が与えられる。
Pw1[k1・r1,θ1,φ1]
Pw2[k2・r2,θ2,φ2]
Pw3[k3・r3,θ3,φ3]
【0097】
例えば、補正係数k2及びk3を大きくすることは、補正位置ベクトルPw2及びPw3の和をX方向及び-Z方向に伸長することに相当する。
【0098】
補正位置ベクトルPw1~Pw3の幾何重心をEUVセンサES1~ES3の補正幾何重心ベクトルCと呼ぶことにし、補正幾何重心ベクトルCは以下のように表すことができる。
C=[rc(k1,k2,k3),θc(k1,k2,k3),φc(k1,k2,k3)]
【0099】
例えば、補正係数k1よりも補正係数k2及びk3を大きくすることは、補正幾何重心ベクトルCをX方向に傾けることに相当する。図28及び図29を参照しながら説明したように、補正係数k1よりも補正係数k2及びk3を大きな値に設定して補正平均値Ewavgを最大化することで、EUV光の放射エネルギーEのピークをX方向に傾けることができる。補正幾何重心ベクトルCのパルスレーザ光33の光路軸と垂直な方向成分は、この光路軸からEUV集光ミラー23aに近づく方向であることが望ましい。
【0100】
以上の説明から、補正幾何重心ベクトルCがX方向に傾くように補正係数k1~k3を設定することは、EUV光の放射エネルギーEのピークをX方向に傾けることに相当する。補正幾何重心ベクトルCの方向がEUV放射方向R(θt,φt)に近づけば補正平均値Ewavgが大きくなり、補正幾何重心ベクトルCの方向がEUV放射方向R(θt,φt)に一致するときに補正平均値Ewavgが最大となる。そこで、次の式で与えられる目的関数Oが最小となるように、補正係数k1~k3を算出することができる。
O=(θt-θc(k1,k2,k3))+(φt-φc(k1,k2,k3))
【0101】
但し、補正係数k1~k3はいずれも1以上とし、補正幾何重心ベクトルCの大きさrc(k1,k2,k3)は0以上とし、θc(k1,k2,k3)は-π以上π以下とし、φc(k1,k2,k3)は-π/2以上π/2以下とする。
【0102】
ここでは3つのEUVセンサES1~ES3を用いて補正平均値Ewavgを算出するための補正係数k1~k3が算出される場合について説明したが、3つ以上のEUVセンサES1,ES2,・・・,ESiを用いて補正平均値Ewavgを算出するための補正係数k1,k2,・・・,kiが算出されてもよい。
【0103】
5.2.5.3 補正係数k1~k3の検証及び修正
図25を再び参照し、算出された補正係数k1~k3が適切か否かを検証して、補正係数k1~k3を修正する処理について説明する。
【0104】
S362において、プロセッサ5は、パルスレーザ光33をターゲット27に照射させ、補正係数k1~k3を用いて算出される補正平均値Ewavgが最大となるようにレーザ照射位置を制御する。プロセッサ5は、そのレーザ照射位置を調整後照射位置Padjとする。
【0105】
S363において、プロセッサ5は、調整後照射位置Padjと目標照射位置Popとの距離が閾値未満であるか否かを判定する。距離が閾値未満である場合(S363:YES)、プロセッサ5は本フローチャートの処理を終了して図24に示される処理に戻る。距離が閾値以上である場合(S363:NO)、プロセッサ5はS364に処理を進める。
【0106】
S364において、プロセッサ5は、調整後照射位置Padjが目標照射位置Popに近づくように補正係数k1~k3を修正する。例えば、調整後照射位置Padjが目標照射位置Popに対して-X方向にずれていた場合には、調整後照射位置PadjをX方向に調整するためEUVセンサES1の補正係数k1を小さくし、あるいはEUVセンサES2及びES3の補正係数k2及びk3を大きくする。
【0107】
S364の後、プロセッサ5はS362に処理を戻し、修正された補正係数k1~k3が適切か否かを再度検証する。
【0108】
5.3 作用
(9)第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、平均値Eavgが最大となる基準位置Pstにパルスレーザ光33が照射された場合よりも中間集光点292に到達するEUV光の出力エネルギーが大きくなるレーザ照射位置を改善照射位置Pmaxとして取得する。プロセッサ5は、改善照射位置Pmaxに基づいて目標照射位置Popを設定する。
【0109】
これによれば、基準位置Pstにパルスレーザ光33が照射された場合よりも出力エネルギーが大きくなるように目標照射位置Popを設定することができる。
【0110】
第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、レーザ照射位置を変えてパルスレーザ光33をターゲット27に照射させ、出力エネルギーの計測結果をレーザ照射位置ごとに取得し、計測結果に基づいて改善照射位置Pmaxを取得する。
【0111】
これによれば、実際の計測結果に基づいて改善照射位置Pmaxを取得することで、出力エネルギーが大きくなる改善照射位置Pmaxを正確に求めることができる。
【0112】
(10)第3の実施形態によれば、改善照射位置Pmaxは、中間集光点292に到達するEUV光の出力エネルギーが最大となるレーザ照射位置である。
【0113】
これによれば、EUV光の出力エネルギーを大きくすることができる。
【0114】
(11)第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、目標照射位置Popを基準位置Pstから改善照射位置Pmaxに近づく方向に離れたレーザ照射位置に設定する。
【0115】
これによれば、EUV光の出力エネルギーが大きくなるように目標照射位置Popを設定することができる。
【0116】
(12)第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、基準位置Pstと改善照射位置Pmaxとの距離が許容値dPfrg以下であれば、目標照射位置Popを改善照射位置Pmaxに設定する。プロセッサ5は、基準位置Pstと改善照射位置Pmaxとの距離が許容値dPfrgよりも大きければ、目標照射位置Popを基準位置Pstから改善照射位置Pmaxに近づく方向に許容値dPfrg離れた位置に設定する。
【0117】
これによれば、EUV光の出力エネルギーをできるだけ大きくしつつ、レーザ照射位置が基準位置Pstからずれることによる不具合を抑制し得る。
【0118】
第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、基準位置Pstと目標照射位置Popとの距離が、ターゲット27の半径未満に設定された許容値dPfrg以下となるように、目標照射位置Popを設定する。
【0119】
これによれば、レーザ照射位置が基準位置Pstからずれることによる不具合を抑制し得る。
【0120】
第3の実施形態によれば、許容値dPfrgは3μm以上8μm以下である。
【0121】
これによれば、EUV光の出力エネルギーを大きくしつつ、レーザ照射位置が基準位置Pstからずれることによる不具合を抑制し得る。
【0122】
第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、ターゲット27に由来するデブリの発生量が許容値以下となるように、目標照射位置Popを設定する。
【0123】
これによれば、レーザ照射位置が基準位置Pstからずれることによるデブリの発生を抑制し得る。
【0124】
(13)第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、EUVセンサES1~ES3によりそれぞれ計測される放射エネルギーE1~E3のいずれかを補正して得られる補正平均値Ewavgが、基準位置Pstにパルスレーザ光33が照射された場合よりも大きくなるレーザ照射位置にパルスレーザ光33が照射されるように、アクチュエータ344を制御する。
【0125】
これによれば、補正平均値Ewavgが大きくなるようにレーザ照射位置を制御することで、補正結果を反映してEUV光の出力エネルギーを向上することができる。
【0126】
(14)第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、補正平均値Ewavgが最大となるレーザ照射位置にパルスレーザ光33が照射されるように、アクチュエータ344を制御する。
【0127】
これによれば、補正平均値Ewavgを最大とすることで、最適なレーザ照射位置にパルスレーザ光33を照射することができる。
【0128】
(15)第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、基準位置Pstにパルスレーザ光33が照射された場合よりも目標照射位置Popにパルスレーザ光33が照射された場合の方が補正平均値Ewavgが大きくなるように、放射エネルギーE1~E3のいずれかを補正する。
【0129】
これによれば、目標照射位置Popにパルスレーザ光33を照射した場合の補正平均値Ewavgが大きくなるように補正を行うことで、補正平均値Ewavgに基づく制御において最適なレーザ照射位置に照射できる。
【0130】
(16)第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、基準位置Pstと目標照射位置Popとの位置偏差dP(dx,dy)に基づいて、放射エネルギーE1~E3のいずれかを補正するための補正係数k1、k2、又はk3を算出する。
【0131】
これによれば、位置偏差dP(dx,dy)に基づいて補正係数k1、k2、又はk3を算出することで、目標照射位置Popに照射できるように放射エネルギーE1~E3のいずれかを補正することができる。
【0132】
第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、位置偏差dP(dx,dy)に基づいて、放射エネルギーEがプラズマ生成領域25に入射するパルスレーザ光33の入射方向と反対の-Z方向よりも大きくなるEUV放射方向R(θt,φt)を算出する。プロセッサ5は、EUVセンサES1~ES3の位置を示す第1~第3の位置ベクトルP1~P3のいずれかに補正係数k1~k3による重み付けをして得られる補正幾何重心ベクトルCの方向が、入射方向と反対の-Z方向よりもEUV放射方向R(θt,φt)に近くなるように、補正係数k1~k3を算出する。
【0133】
これによれば、EUVセンサES1~ES3の補正幾何重心ベクトルCの方向がEUV放射方向R(θt,φt)に近くなるように補正係数k1~k3を算出することで、補正平均値Ewavgに基づくレーザ照射位置の制御において放射エネルギーEをEUV放射方向R(θt,φt)に傾けることができる。
【0134】
第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、位置偏差dP(dx,dy)に基づいて、放射エネルギーEが最大となるEUV放射方向R(θt,φt)を最大放射方向として算出する。プロセッサ5は、EUVセンサES1~ES3の位置を示す第1~第3の位置ベクトルP1~P3のいずれかに補正係数k1~k3による重み付けをして得られる補正幾何重心ベクトルCの方向が、最大放射方向に一致するように、補正係数k1~k3を算出する。
【0135】
これによれば、EUVセンサES1~ES3の補正幾何重心ベクトルCの方向がEUV光の最大放射方向に一致するように補正係数k1~k3を算出することで、補正平均値Ewavgに基づくレーザ照射位置の制御において放射エネルギーEを最大放射方向に傾けることができる。
【0136】
第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、EUVセンサES1~ES3の位置を示す第1~第3の位置ベクトルP1~P3のいずれかに補正平均値Ewavgを得るための補正係数k1~k3による重み付けをして得られる補正幾何重心ベクトルCのパルスレーザ光33の光路軸と垂直な方向成分が、光路軸からEUV集光ミラー23aに近づく方向となるように、補正係数k1~k3を算出する。
【0137】
これによれば、EUVセンサES1~ES3の補正幾何重心ベクトルCの方向がEUV集光ミラー23aに近づく方向となるように補正係数k1~k3を算出することで、補正平均値Ewavgに基づくレーザ照射位置の制御において放射エネルギーEをEUV集光ミラー23aに近づく方向に傾けることができる。
【0138】
(17)第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、補正平均値Ewavgが最大となるレーザ照射位置と、目標照射位置Popと、の距離が閾値以上である場合に補正係数k1、k2、又はk3を修正する。
【0139】
これによれば、算出された補正係数k1、k2、又はk3が適切か否かを判定し、補正係数k1、k2、又はk3を修正することができる。
【0140】
その他の点については、第3の実施形態は第1又は第2の実施形態と同様である。
【0141】
6.プリパルスレーザ装置PPLを含むEUV光生成システム11b
6.1 構成
図32は、第4の実施形態に係るEUV光生成システム11bの構成を概略的に示す。図32において、レーザシステム3はメインパルスレーザ装置MPLの他にプリパルスレーザ装置PPLを含む。また、図14に示される高反射ミラー304の代わりにビームコンバイナ304bを含む。高反射ミラー302にはアクチュエータ306bが配置されている。
【0142】
プリパルスレーザ装置PPLは、メインパルスレーザ装置MPLから出力されたパルスレーザ光33がターゲット27に照射される前に、そのターゲット27に照射されるプリパルスレーザ光を出力する。プリパルスレーザ光は液滴状のターゲット27を拡散させてターゲット27の密度を低減させることで、メインパルスレーザ装置MPLから出力されたパルスレーザ光33がターゲット27を効率よく励起してプラズマ化させることを可能にする。
【0143】
ビームコンバイナ304bは、メインパルスレーザ装置MPLから出力されたパルスレーザ光31とプリパルスレーザ装置PPLから出力されたプリパルスレーザ光との一方を反射して他方を透過させることによりこれらの光路をほぼ一致させる。その結果、プリパルスレーザ光はメインパルスレーザ装置MPLから出力されたパルスレーザ光31、32、及び33と共通の光路を通ってプラズマ生成領域25に入射する。
【0144】
アクチュエータ306bは、メインパルスレーザ装置MPLから出力されたパルスレーザ光31がプリパルスレーザ光と合流する前に入射する高反射ミラー302の位置又は姿勢を制御する。これにより、プリパルスレーザ光とは別にパルスレーザ光31の光路軸を調整することができる。アクチュエータ344は、パルスレーザ光31の光路軸とプリパルスレーザ光の光路軸とを併せて調整できるようになっている。
【0145】
6.2 動作
メインパルスレーザ装置MPLから出力されたパルスレーザ光33はターゲット27の中心からEUV集光ミラー23aに近づく方向に離れたレーザ照射位置に照射されるのに対し、プリパルスレーザ光は、パルスレーザ光33のレーザ照射位置よりもターゲット27の中心に近い位置に照射される。好ましくは、プリパルスレーザ光の光路軸は液滴状のターゲット27の中心と一致する。これにより、プリパルスレーザ光の光路軸に対してほぼ軸対称にターゲット27を拡散させることができる。
【0146】
6.3 作用
(18)第4の実施形態によれば、EUV光生成システム11bは、パルスレーザ光33がターゲット27に照射される前にターゲット27に照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置PPLを備える。プリパルスレーザ光は、パルスレーザ光33のレーザ照射位置よりもターゲット27の中心に近い位置に照射される。
【0147】
これによれば、プリパルスレーザ光をターゲット27の中心に近い位置に照射することで、ターゲット27の拡散状態を良好にすることができる。
【0148】
その他の点については、第4の実施形態は第1~第3の実施形態の1つと同様である。
【0149】
7.その他
7.1 EUV光利用装置6の例
図33は、EUV光生成システム11cに接続された露光装置6aの構成を概略的に示す。
【0150】
図33において、EUV光利用装置6(図1参照)としての露光装置6aは、マスク照射部608とワークピース照射部609とを含む。マスク照射部608は、EUV光生成システム11cから入射したEUV光によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部609は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置6aは、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造できる。
【0151】
図34は、EUV光生成システム11cに接続された検査装置6bの構成を概略的に示す。
【0152】
図34において、EUV光利用装置6(図1参照)としての検査装置6bは、照明光学系603と検出光学系606とを含む。照明光学系603は、EUV光生成システム11cから入射したEUV光を反射して、マスクステージ604に配置されたマスク605を照射する。ここでいうマスク605はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系606は、照明されたマスク605からのEUV光を反射して検出器607の受光面に結像させる。EUV光を受光した検出器607はマスク605の画像を取得する。検出器607は例えばTDI(time delay integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク605の画像により、マスク605の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置6aを用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。
【0153】
図33及び図34には第1及び第2の実施形態に係るEUV光生成システム11cが示されているが、第3及び第4の実施形態に係るEUV光生成システム11a及び11bが用いられてもよい。
【0154】
7.2 補足
上述の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0155】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきであり、さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34