(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081599
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】接着剤層組成物、積層体、積層体の製造方法および積層体の処理方法
(51)【国際特許分類】
C09J 201/02 20060101AFI20240611BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20240611BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240611BHJP
H01L 21/02 20060101ALN20240611BHJP
H01L 21/50 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
C09J201/02
C09J4/00
C09J163/00
H01L21/02 C
H01L21/50 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193784
(22)【出願日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2022194915
(32)【優先日】2022-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 一幸
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC061
4J040FA132
4J040GA11
4J040JA01
4J040KA23
4J040NA20
(57)【要約】
【課題】レーザー照射により他の基板から転写された被着体のキャッチ性が高く、一方でレーザー照射によるさらに別の基板への被着体の転写性も高い接着剤層を形成することができる接着剤層組成物を提供すること。
【解決手段】(A)不飽和基含有重合性樹脂、(B)少なくとも2個の不飽和結合を有する重合性化合物、(C)少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物、および(D)溶剤を含み、前記(A)成分は、(A)成分の固形分濃度を50質量%に調整した、(A)成分のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の23℃における粘度が50mPa・s以上2000mPa・s以下であり、かつ光路長1cm石英セル中にて測定した、0.01重量%濃度の(A)成分のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の波長266nmの光の吸光度が、0.5以上である、接着剤層組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写元基板への光の照射により前記転写元基板から剥離した被着体を保持するための接着剤層を、前記剥離された被着体を保持する保持基板に形成するための接着剤層組成物であって、
(A)不飽和基含有重合性樹脂、
(B)少なくとも2個の不飽和結合を有する重合性化合物、
(C)少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物、および
(D)溶剤
を含み、
前記(A)成分は、
(A)成分の固形分濃度を50質量%に調整した、(A)成分のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の23℃における粘度が50mPa・s以上2000mPa・s以下であり、かつ
光路長1cm石英セル中にて測定した、0.01重量%濃度の(A)成分のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の波長266nmの光の吸光度が、0.5以上である、
接着剤層組成物。
【請求項2】
前記(A)成分は、
(A)成分の溶液を基板に塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間プリベークして得られた、乾燥膜厚10.0μmの乾燥膜のマルテンス硬度が、2.0N/mm2以上150N/mm2以下である、
請求項1に記載の接着剤層組成物。
【請求項3】
前記(A)成分は、重量平均分子量が1000以上40000以下であり、酸価が20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、請求項1に記載の接着剤層組成物。
【請求項4】
前記(B)成分は、23℃における粘度が2000mPa・s以下である、請求項1に記載の接着剤層組成物。
【請求項5】
保持基板と、
被着体と、
前記保持基板と前記被着体との間に配置された、請求項1~4のいずれか1項に記載の接着剤層組成物により形成された接着剤層と、
を有する、
積層体。
【請求項6】
保持基板の表面に、請求項1~4のいずれか1項に記載の接着剤層組成物を付与して接着剤層を形成する工程と、
前記保持基板の前記接着剤層と対向する位置に、被着体が付着された転写元基板を配置する工程と、
前記転写元基板に光を照射して前記被着体を剥離させ、剥離した前記被着体を前記接着剤層に保持させる工程と、
を有する、積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の積層体を用意する工程と、
前記積層体に、前記保持基板を介して接着剤層に光を照射して、前記被着体を前記保持基板から剥離する工程と、
を有する、
積層体の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤層組成物、積層体、積層体の製造方法および積層体の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル機器などの高機能化に伴い、搭載されるフレキシブルディスプレイ、半導体チップなどは薄型化されており、薄型化によって強度が低下したフレキシブルディスプレイ、半導体チップなどを従来の自動搬送で搬送することは困難であった。
【0003】
そこで、薄型化されたフレキシブルディスプレイ、半導体チップなどを容易に搬送するための方法が検討されている。たとえば、支持体上に接着剤層を介して多数の半導体ウエハ等の素子が固定された積層体を形成し、この積層体を搬送する。その後、光を支持体側から接着剤層に向けて照射することにより、接着剤層を変質または分解して接着力を低減させて、支持体から素子を剥離して、他の基板に素子を転写する。
【0004】
この方法を実施するに際して、支持体から剥離された素子を位置ずれ等なく保持するための衝撃吸収層を他の基板に設けることで、素子の転写効率を高めることができると、引用文献1には記載されている。引用文献1にはさらに、上記衝撃吸収層を有する基板に保持された素子を、同様の転写方法で回路基板等のさらに別の基板に転写することもできると記載されている。特許文献1には、衝撃吸収層は粘着性を有する層であり、シリコーン樹脂またはアクリル系樹脂からなる層にすることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの知見によると、特許文献1に記載のように従来公知のシリコーン樹脂やアクリル系樹脂を衝撃吸収層(接着剤層)に用いると、クッション性・粘着性は高く、素子等の被着体を位置ずれなく保持するキャッチ性に優れているが、さらに別の基板に被着体を転写しようとするとき、レーザー等の光を照射しても衝撃吸収層から被着体が剥離されにくく、転写性は高められなかった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、光照射(レーザー照射)により他の基板から転写された被着体のキャッチ性が高く、一方で光照射によるさらに別の基板への被着体の転写性も高い接着剤層を形成することができる接着剤層組成物、当該接着剤層組成物を用いて形成された積層体、ならびに当該積層体の製造方法および処理方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、下記[1]~[4]の接着剤層組成物に関する。
【0009】
[1]転写元基板への光の照射により前記転写元基板から剥離した被着体を保持するための接着剤層を、前記剥離された被着体を保持する保持基板に形成するための接着剤層組成物であって、
(A)不飽和基含有重合性樹脂、
(B)少なくとも2個の不飽和結合を有する重合性化合物、
(C)少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物、および
(D)溶剤
を含み、
前記(A)成分は、
(A)成分の固形分濃度を50質量%に調整した、(A)成分のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の23℃における粘度が50mPa・s以上2000mPa・s以下であり、かつ
光路長1cm石英セル中にて測定した、0.01重量%濃度の(A)成分のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の波長266nmの光の吸光度が、0.5以上である、
接着剤層組成物。
[2]前記(A)成分は、(A)成分の溶液を基板に塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間プリベークして得られた、乾燥膜厚10.0μmの乾燥膜のマルテンス硬度が、2.0N/mm2以上150N/mm2以下である、[1]に記載の接着剤層組成物。
[3]前記(A)成分は、重量平均分子量が1000以上40000以下であり、酸価が20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、[1]または[2]に記載の接着剤層組成物。
[4]前記(B)成分は、23℃における粘度が2000mPa・s以下である、[1]~[3]に記載の接着剤層組成物。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明の他の態様は、下記[5]の積層体に関する。
[5]保持基板と、
被着体と、
前記保持基板と前記被着体との間に配置された、[1]~[4]のいずれかに記載の接着剤層組成物により形成された接着剤層を含む接着剤層と、
を有する、
積層体。
【0011】
また、上記課題を解決するための本発明の他の態様は、下記[6]に記載の積層体の製造方法に関する。
[6]保持基板の表面に、[1]~[4]のいずれかに記載の接着剤層組成物を付与して接着剤層を形成する工程と、
前記保持基板の前記接着剤層と対向する位置に、被着体が付着された転写元基板を配置する工程と、
前記転写元基板に光を照射して前記被着体を剥離させ、剥離した前記被着体を前記接着剤層に保持させる工程と、
を有する、積層体の製造方法。
【0012】
また、上記課題を解決するための本発明の他の態様は、下記[7]に記載の積層体の処理方法に関する。
[7][5]に記載の積層体を用意する工程と、
前記積層体に、前記保持基板を介して前記接着剤層に光を照射して、前記被着体を前記保持基板から剥離する工程と、
を有する、
積層体の処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光照射により他の基板から転写された被着体のキャッチ性が高く、一方で光照射によるさらに別の基板への被着体の転写性も高い接着剤層を形成することができる接着剤層組成物、当該接着剤層組成物を用いて形成された積層体、ならびに当該積層体の製造方法および処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1Aは、光の照射により、被着体を付着させている樹脂を変質・分解させて、転写元基板から保持基板上に被着体を転写する工程を示す模式図である。
図1Bは、転写元基板から剥離された被着体を、保持基板の表面に付与された接着剤層でキャッチさせて、複数の被着体を接着させた接着剤層を含む積層体を得る工程を示す模式図である。
【
図2】
図2Aは、光(またはレーザー)の照射により、接着剤層から被着体を剥離させて、保持基板からさらに別の基板上に被着体を転写する工程を示す模式図である。
図2Bは、保持基板から剥離させた被着体を、別の基板の表面に付与された接着剤層でキャッチさせて、複数の被着体を接着させた接着剤層を得る工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本発明において、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0016】
1.接着剤層組成物
本発明の一実施形態は、転写元基板への光の照射により転写元基板から剥離した被着体を保持するための接着剤層を、上記剥離された被着体を保持する保持基板に形成するための接着剤層組成物に関する。
【0017】
接着剤層組成物は、
(A)不飽和基含有重合性樹脂、
(B)少なくとも2個の不飽和結合を有する重合性化合物、
(C)少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物、および
(D)溶剤
を含む。
【0018】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0019】
[(A)成分]
(A)成分は、以下2つの要件を満たす、不飽和基含有重合性樹脂である。
(要件1)(A)成分の固形分濃度を50質量%に調整した、(A)成分のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の23℃における粘度が50mPa・s以上2000mPa・s以下である
(要件2)光路長1cm石英セル中にて測定した、0.01重量%濃度の(A)成分のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の波長266nmの光の吸光度が、0.5以上である
【0020】
要件1は、プリベーク時にさほど硬くならない樹脂を(A)成分として用いることを特定する。本発明者の知見によると、要件1を満たす柔軟な樹脂を(A)成分として用いると、転写元基板から剥離され保持基板上に到達した被着体の接着剤層によるキャッチ性が高まり、位置ズレなく被着体を保持基板に転写しやすくなる。上記観点から、(A)成分の上記粘度は、100mPa・s以上1800mPa・s以下であることが好ましく、150mPa・s以上1500mPa・s以下であることがより好ましく150mPa・s以上1000mPa・s以下であることがさらに好ましい。上記粘度がより低いほど、転写元基板から剥離され保持基板上に到達した被着体の接着剤層によるキャッチ性が高まり、位置ズレなく被着体を保持基板に転写しやすくなる。本明細書において、(A)成分の23℃における粘度は、BF型粘度計(B型粘度計)により測定された値とすることができる。
【0021】
また、上記の要件を満たす(A)成分の特徴としては、(A)成分の溶液を基板に塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間プリベークして得られた、乾燥膜厚10.0μmの乾燥膜のマルテンス硬度が、150N/mm2以下であることが好ましく、140N/mm2以下であることがより好ましく、125N/mm2以下であることがさらに好ましい。上記マルテンス硬度がより低いほど、上記粘度がより低くなり、被着体のキャッチ性を高めることができる。
【0022】
本明細書において、マルテンス硬度は、ビッカース圧子を負荷速度1.0mN/秒で押し込み、荷重を5.0mNまで負荷した後、5秒間クリープし、1.0mN/秒で除荷したときの荷重変位曲線から求めた値とすることができる。
【0023】
要件2は、波長266nmの光を吸収しやすい樹脂を(A)成分として使用することを特定する。本発明者の知見によると、要件1とともに要件2を満たす樹脂を使用することで、転写された被着体の接着剤層によるキャッチ性を高め、かつ保持された被着体をさらに別の基板に転写するときの光照射による接着剤層からの剥離性をも高めることができる。上記観点から、(A)成分の上記吸光度は、1.0以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましい。(A)成分の上記吸光度の上限値は特に限定されないが、3.0以下とすることができる。
【0024】
(A)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、1000以上40000以下であることが好ましく、1500以上30000以下であることがより好ましく、2000以上15000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)が1000以上であると、接着剤層と被着体との密着性を向上させることができる。また、重量平均分子量(Mw)が40000以下であると、接着剤層組成物の溶液粘度を塗布に好適な範囲に調整しやすく、保持基板の表面への塗布が容易である。また、重量平均分子量(Mw)が40000以下であると、プリベークした後の接着剤層の流動性を向上させ、接着剤層による被着体のキャッチ性をより高めることができる。
【0025】
(A1)成分の酸価は20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、25mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が20mgKOH/g以上であると、アルカリ現像時に残渣が残りにくくなる。酸価が200mgKOH/g以下であると、アルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎないので、剥離現像を生じにくくすることができる。酸価が20mgKOH/g以上であると、(C)成分との架橋反応を経て接着剤層の強度を向上させ、光を照射した際の残渣を低減することができる。なお、酸価は、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めることができる。
【0026】
(A)成分は、上記の要件1および要件2を満たす不飽和基含有重合性樹脂であればよい。
【0027】
たとえば、樹脂の主鎖および/または側鎖に飽和脂肪族からなる鎖状構造を導入することで樹脂の流動性を向上し、(A)成分の粘度やマルテンス硬度を上記範囲に調整しやすくすることができる。具体的な鎖状構造については、直鎖状、分岐構造を有するアルキル基や、アルキレンオキサイド構造を有することが好ましい。
【0028】
また、樹脂の主鎖および/または側鎖に波長266nmの光の吸光度が高い芳香族骨格を導入することで、波長266nmの光の吸光度を上記範囲に調整しやすくすることができる。具体的な波長266nmの光の吸光度が高い芳香族骨格としては、ビフェニル骨格や縮合多環芳香族骨格を有することが好ましい。
【0029】
波長266nmの光の吸光度をより高める観点からは、(A)成分は複数個の芳香環を有することが好ましく、フルオレン構造を含む繰り返し単位を有するアルカリ可溶性樹脂であることがより好ましく、ビスアリールフルオレン骨格を含む繰り返し単位を有するアルカリ可溶性樹脂であることがさらに好ましい。たとえば、(A)成分は、下記一般式(1)で表される樹脂であることが好ましい。
【0030】
【0031】
式(1)中、Arは、独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。R1は、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。Gは、独立して(メタ)アクリロイル基、または下記一般式(2)もしくは下記一般式(3)で表される置換基である。Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、独立して水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、Zの少なくとも1個は下記一般式(4)で表される置換基である。nは、平均値が1以上20以下の数である。
【0032】
【0033】
【0034】
式(2)および(3)中、R2は、水素原子またはメチル基であり、R3は、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R4は、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。*は、一般式(1)への結合部位を示す。
【0035】
【0036】
式(4)中、Wは、2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。*は、一般式(1)への結合部位を示す。
【0037】
式(1)および(4)中、R5は水素原子ならびに下記一般式(5)、(6)、および(7)で表される置換基のいずれかである。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
式(5)、(6)、および(7)中、R6は炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐鎖を有してもよい脂肪族炭化水素基、R7は2価の炭素数2以上10以下のアルキレン基、R8は水素原子またはメチル基を示し、qは0以上3以下の数である。*は、一般式(1)または(4)への結合部位を示す。
【0042】
一般式(1)で表される樹脂は、以下の方法で合成することができる。
【0043】
まず、下記一般式(8)で表される、1分子内にいくつかのアルキレンオキサイド変性基を有してもよい、ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a-1)(以下、単に「エポキシ化合物(a-1)」ともいう。)に、(メタ)アクリル酸、下記一般式(9)で表される(メタ)アクリル酸誘導体、および下記一般式(10)で表される(メタ)アクリル酸誘導体の少なくとも1種を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレートであるジオール化合物を得る。なお、上記ビスアリールフルオレン骨格は、ビスナフトールフルオレン骨格またはビスフェノールフルオレン骨格であることが好ましい。
【0044】
【0045】
式(8)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。R1は、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。
【0046】
【0047】
【0048】
式(9)、(10)中、R2は、水素原子またはメチル基であり、R3は、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R4は、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。
【0049】
上記エポキシ化合物(a-1)と(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4-355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。本実施形態において、上記反応で得られる化合物は、下記一般式(11)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(d)(以下、単に「ジオール(d)」ともいう。)である。
【0050】
【0051】
式(11)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Gは、それぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基、一般式(2)または一般式(3)で表される置換基であり、R1は、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。
【0052】
【0053】
【0054】
式(2)および(3)中、R2は、水素原子またはメチル基であり、R3は、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R4は、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。*は、一般式(11)への結合部位を示す。
【0055】
次に、上記得られるジオール(d)と、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはその酸一無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを反応させて、一般式(12)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有する不飽和基含有重合性樹脂を得ることができる。
【0056】
【0057】
上記酸成分は、ジオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分である。一般式(1)で表される樹脂を得るためには、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)と、を併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には-O-、-S-、カルボニル基などのヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0058】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、およびこれらの酸一無水物などが含まれる。
【0059】
上記鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、およびジグリコール酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸などが含まれる。
【0060】
上記脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、ヘキサヒドロトリメリット酸およびノルボルナンジカルボン酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸などが含まれる。
【0061】
上記芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、フタル酸、イソフタル酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、およびトリメリット酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸が含まれる。
【0062】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸は、これらのうち、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、およびトリメリット酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、およびテトラヒドロフタル酸がより好ましい。
【0063】
上記ジカルボン酸またはトリカルボン酸は、その酸一無水物を用いることが好ましい。
【0064】
上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、およびこれらの酸二無水物などが含まれる。
【0065】
上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、ならびに、脂環式炭化水素基および不飽和炭化水素基などの置換基が導入されたこれらの鎖式炭化水素テトラカルボン酸などが含まれる。
【0066】
上記脂環式炭化水素テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、およびノルボルナンテトラカルボン酸、ならびに、鎖式炭化水素基および不飽和炭化水素基などの置換基が導入されたこれらの脂環式テトラカルボン酸などが含まれる。
【0067】
上記芳香族炭化水素テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、およびナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸などが含まれる。
【0068】
上記テトラカルボン酸は、これらのうち、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸が好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸がより好ましい。
【0069】
上記テトラカルボン酸は、その酸二無水物を用いることが好ましい。
【0070】
また、上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)のかわりに、ビス無水トリメリット酸アリールエステル類を用いることもできる。ビス無水トリメリット酸アリールエステル類とは、たとえば国際公開第2010/074065号に記載された方法で製造される化合物であり、構造的には芳香族ジオール(ナフタレンジオール、ビフェノール、およびターフェニルジオールなど)の2個のヒドロキシ基と2分子の無水トリメリット酸のカルボキシ基がそれぞれ反応してエステル結合した形の酸二無水物である。
【0071】
ジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9-325494号公報には、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0072】
このとき、化合物の末端がカルボキシ基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート(ジオール(d))、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、およびテトラカルボン酸二無水物(c)のモル比が、(d):(b):(c)=1.0:0.01~1.0:0.2~1.0となるように反応させることが好ましい。
【0073】
たとえば、酸一無水物(b)、酸二無水物(c)を用いる場合には、ジオール(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[〔(b)/2+(c)〕/(d)]が0.5より大きく1.0以下となるように反応させることが好ましい。上記モル比が0.5より大きいと、一般式(1)で表される不飽和基含有重合性樹脂の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大するのを抑制して、接着剤層組成物の経時安定性を高めることができる。また、上記モル比が1.0以下だと、重合性不飽和基を含有するジオール(d)のうち未反応の成分の残存量が増大するのを抑制して、接着剤層組成物の経時安定性を高めることができる。なお、一般式(1)で表される不飽和基含有重合性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(b)、(c)および(d)の各成分のモル比を、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0074】
一般式(12)で表される不飽和基含有重合性樹脂は、Gが一般式(3)で表される置換基を有するときはそのまま(A)成分として用いてもよいし、一般式(5)、(6)、または(7)で表される置換基を導入するために、エポキシ化合物(e)を反応させてもよい。エポキシ化合物(e)は、エポキシ基を1つ含有する化合物であることが好ましい。エポキシ化合物(e)の例には、1,2-ブチレンオキサイド、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタデカン、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、4―ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が含まれる。
【0075】
一般式(12)で表される不飽和基含有重合性樹脂とエポキシ化合物(e)との反応方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、前述の特開平9-325494号公報に記載されているようなビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂とアクリル酸を、テトラエチルアンモニウムブロマイド等を触媒として用いて100℃で反応させるような、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応によるエポキシ(メタ)アクリレート化合物の製造方法も参考にすることができる。一般式(1)で表される化合物を合成する際の反応温度としては、40~120℃の範囲が好ましく、より好ましくは、60~110℃である。
【0076】
また、一般式(12)で表される不飽和基含有重合性樹脂のカルボキシ基に対するエポキシ化合物(e)の比率〔(e)/((b)+2×(c))〕が、0.2より大きく0.8以下となるように反応させることが好ましく、0.3より大きく0.7以下となるように反応させることがより好ましい。上記モル比が0.2より大きいと、一般式(1)で表される不飽和基含有重合性樹脂の粘度やマルテンス硬度を低下させることができ、被着体転写時に位置ズレを抑制できる。また、上記モル比を0.8以下とすると、(C)成分との架橋反応を経て接着剤層の強度を向上させることができる。
【0077】
なお、ジオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物の反応、オキシラン化合物との反応は、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて行う。
【0078】
上記溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、およびブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの高沸点のエーテル系またはエステル系の溶媒、ならびに、シクロヘキサノン、およびジイソブチルケトンなどのケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、たとえば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0079】
また、エポキシ基とカルボキシ基またはヒドロキシ基との反応は、触媒を使用して行うことが好ましい。上記触媒として、特開平9-325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、およびトリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィンなどのホスフィン類などが記載されている。
【0080】
(A)成分の含有量は、固形分の全質量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、光照射による剥離性を重視する場合には30質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。(A)成分の上記含有量が10質量%以上であると、保持基板に対する接着剤層の接着性が高まり、かつ、接着剤層が、照射されるレーザー(たとえば紫外線)を吸収して変質または分解しやすいため、保持基板と被着体とをより分離しやすくなる。また、90質量%以下であると、接着剤層のマルテンス硬度が高くなりすぎないため、被着体の転写時に位置ズレが生じにくい。
【0081】
[(B)成分]
(B)成分は、少なくとも2個の不飽和結合を有する重合性化合物である。
【0082】
(B)成分は、接着剤層組成物をプリベークしてなる接着剤層の、塗布した際の平坦性を高め、かつ接着剤層のマルテンス硬度を低減して被着体の転写時に位置ズレを生じにくくする。(B)成分は、(A)成分が有する重合性不飽和基と反応(重合)し得る重合性不飽和基を少なくとも2個以上有すればよい。上記重合性不飽和基は、(A)成分が有する重合性不飽和基と同一の官能基であることが好ましい。具体的には、上記重合性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。なお、(B)成分は、モノマーであってもよいし、オリゴマー、ポリマーであってもよいが、モノマーまたはオリゴマーであることが好ましい。
【0083】
(B)成分の例には、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、の(メタ)アクリル酸エステル類;
ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、およびジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどのウレタンアクリレートモノマー類;
ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート、ジフェニルフルオレン型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールアラルキル型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート;ならびに
エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマーなどが含まれる。
【0084】
(B)成分は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましく、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましい。(B)成分が、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有すると、架橋密度が向上し、接着剤層の耐溶剤性が向上する。
【0085】
(B)成分は、23℃における粘度が2000mPa・s以下であることが好ましく、1500mPa・s以下であることがより好ましく、1000mPa・s以下であることがさらに好ましい。(B)成分の上記粘度が2000mPa・s以下であると、プリベークした後の接着剤層の流動性を向上させ、接着剤層による被着体のキャッチ性をより高めることができる。本明細書において、(B)成分の23℃における粘度は、BF型粘度計(B型粘度計)により測定された値とすることができる。
【0086】
上記粘度をより低くする観点からは、(B)成分は、アルキレンオキサイド変性またはラクトン変性された化合物であることが好ましい。
【0087】
上記アルキレンオキサイド変性物は、炭素数2以上6以下のアルキレンオキサイド基を有する化合物であることが好ましく、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド基を有する化合物であることがより好ましく、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイド基を有する化合物であることがさらに好ましい。
【0088】
上記ラクトン変性物は、炭素数2以上6以下のラクトンが開環した構造(-C(=O)-(CH2)k-O-、kはラクトンの炭素数より1少ない数)を有する化合物であることが好ましく、炭素数4以上6以下のラクトンが開環した構造を有する化合物であることがより好ましく、炭素数6のラクトンが開環した構造を有する化合物であることがさらに好ましい。
【0089】
上記アルキレンオキサイド基およびラクトンが開環した構造は、分子内に単独で存在してもよいし、2個以上6個以下の上記アルキレンオキサイド基またはラクトンが連続していてもよいが、単独で存在するか、2個の上記アルキレンオキサイド基またはラクトンが連続していることが好ましい。
【0090】
上記変性物は、たとえば下記一般式(13)で表される化合物とすることができる。
【0091】
【0092】
式(13)中、Vは、独立してアルキレンオキサイド基またはラクトンが開環した構造を有する基である。a~eは独立に0~6の整数であり、ただしa~eのうち少なくとも1つは1~6の整数である。a~eは、1または2が好ましい。R9~R13は、独立して(メタ)アクリロイル基またはヒドロキシ基が好ましく、ただしR9~R13の少なくとも2つは(メタ)アクリロイル基である。R9~R13は、すべて(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。Tは、置換または非置換の1~4価の炭化水素基、-O-および-S-からなる群から選択される基であり、置換または非置換の2価の炭化水素基、-O-および-S-が好ましく、-O-がより好ましい。qは独立に0または1であり、0が好ましい。rはZの価数と同じ1~4の整数であり、2が好ましい。
【0093】
一般式(13)で表される変性物の例には、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールジカプロラクトンヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールトリカプロラクトンヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサカプロラクトンヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールポリカプロラクトンヘキサアクリレート(いずれも日本化薬株式会社製)、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、およびトリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート(いずれも東亞合成株式会社製)などが含まれる。
【0094】
一般式(13)で表される化合物以外の上記変性物の例には、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジおよびトリアクリレート、ジグリセリンエチレンオキサイド変性アクリレート(いずれも東亞合成株式会社製)、ならびにフォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0095】
(B)成分の含有量は、(A)成分の全質量を100質量部としたときに5質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上600質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上300質量部以下であることがさらに好ましい。(B)成分の上記含有量が5質量部以上であると、接着剤層組成物の流動性が高まり、塗布した際の接着剤層の平坦性が向上する。また、1000質量部以下であると、接着剤層の光吸収性が十分であるため、光を照射された際に剥離が容易になる。
【0096】
光加工性が求められる場合、(B)成分の含有量は、(A)成分の全質量を100質量部としたときに20質量部以上100質量部以下であることが好ましい。
【0097】
[(C)成分]
(C)成分は、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物である。
【0098】
(C)成分は、(A)成分との反応により接着剤層の強度(架橋密度)を高め、光照射により剥離する際の残渣を低減する。
【0099】
(C)成分の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-7000L:日本化薬株式会社製)、ビフェニル型エポキシ化合物(例えば、jERYX4000:三菱ケミカル株式会社製)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリル基を有するモノマーの共重合体、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、セロキサイド 2021P:株式会社ダイセル製)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(例えば、エポリードGT401:株式会社ダイセル製)、四国化成工業株式会社製のHiREM-1に代表されるエポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えば、HP7200シリーズ:DIC株式会社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、EHPE3150:株式会社ダイセル製)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、NISSO-PB・JP-100:日本曹達株式会社製)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が含まれる。なお、これらの化合物は、その1種類の化合物のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物が好ましく、ビフェニル型エポキシ化合物がより好ましい。ビフェニル型のエポキシ化合物を用いることにより、接着剤の光吸収能をより高めてレーザー照射により被着体をより剥離しやすくしつつ、光硬化時の接着剤層組成物のパターニング性をも高めることができ、接着剤層組成物を設計する自由度を大きくできる。
【0101】
(C)成分のエポキシ当量は100g/eq以上300g/eq以下であることが好ましく、100g/eq以上250g/eq以下であることがより好ましい。また、(C)成分の数平均分子量(Mn)は100以上5000以下であることが好ましい。上記エポキシ当量が100g/eq以上300g/eq以下であり、上記エポキシ化合物の数平均分子量(Mn)は100~5000であると、良好な耐溶剤性を有する硬化膜となり得る。また、エポキシ当量が300g/eq以下であると、後工程でアルカリ性の薬液を使う場合でも十分な耐アルカリ性を維持することができる。
【0102】
(C)成分の含有量は、固形分の全質量に対して5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。(C)成分の含有量が固形分の全質量に対して5質量%以上であると、十分な架橋構造を形性できるので光照射により剥離する際の残渣が低減できる。また、60質量%以下であると、硬化後の接着剤層の架橋密度が過剰に高くなるのを抑制するので、光を照射された際に剥離が容易になる。
【0103】
接着剤層組成物は、必要に応じて硬化剤および硬化促進剤を併用してもよい。硬化剤の例には、エポキシ樹脂の硬化に寄与するアミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれる。硬化促進剤の例には、エポキシ樹脂の硬化促進に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。
【0104】
[(D)成分]
(D)成分は、溶剤である。
【0105】
(D)成分は、接着剤層組成物に含まれる各成分を溶解または分散させ、保持基板への接着剤層組成物の塗布性を高める。
【0106】
(D)成分の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、およびジアセトンアルコールなどのアルコール類;α-もしくはβ-テルピネオールなどのテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、およびN-メチル-2-ピロリドンなどのケトン類;トルエン、キシレン、およびテトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、およびトリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-ブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、およびプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類などが含まれる。これらを用いて溶解、混合させることにより、接着剤層組成物を均一な溶液状にすることができる。
【0107】
(D)成分の含有量は、接着剤層組成物の目標とする粘度などによって変化するものの、接着剤層組成物の全質量に対して50質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0108】
[その他の成分]
接着剤層組成物は、必要に応じて、光重合開始剤、光増感剤、熱重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、およびカップリング剤などを配合することができる。
【0109】
光重合開始剤の例には、2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、および2、4,5-トリアリールビイミダゾールなどのビイミダゾール系化合物類;2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾ-ル、2-トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、および2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾールなどのハロメチルジアゾール化合物類;2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、および2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどのハロメチル-s-トリアジン系化合物類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)(イルガキュアOXE01)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾア-ト、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-ビシクロヘプチル-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ビシクロヘプタンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-トリシクロデカンカルボシキレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-アダマンタンカルボシキレート、1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-O-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エタノン-O-アセチルオキシム、(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-1-(o-アセチルオキシム)、エタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-1-O-アセチルオキシム、およびエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(イルガキュアOXE02)などのO-アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、および2-イソプロピルチオキサントンなどのイオウ化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、および2,3-ジフェニルアントラキノンなどのアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、およびクメンパーオキシドなどの有機過酸化物;ならびに、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、および2-メルカプトベンゾチアゾールなどのチオール化合物などが含まれる。
【0110】
光重合開始剤の含有量は、(A)成分および(B)成分の合計質量を100質量部としたときに0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤の上記含有量が0.1質量部以上であると、光重合を促進して、光重合の速度を速めることができる。また、光重合開始剤の上記含有量が30質量部以下であると、感度の過剰な高まりを抑制して、光を照射してアブレーションする際に、焦げ、剥離カスなどを生じにくくすることができる。なお、接着剤層組成物は、フォトリソグラフィーによりパターンを形成する場合には光重合開始剤を含有することが好ましいが、パターンを形成しない場合またはフォトリソグラフィー以外の方法でパターンを形成する場合には光重合開始剤を含有しなくてもよい。
【0111】
光増感剤の例には、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ベンゾフェノン、4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、およびp-tert-ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、および2,4-ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系;4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどのアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンが含まれる。
【0112】
光増感剤の含有量は、光重合開始剤の全質量を100質量部としたときに0.5質量部以上400質量部以下であることが好ましく、1質量部以上300質量部以下であることがより好ましい。光増感剤の上記含有量が0.5質量部以上であると、光重合開始剤の感度を向上させて、光重合の速度を速めることができる。また、光増感剤の上記含有量が400質量部以下であると、感度の過剰な高まりを抑制して、光を照射してアブレーションする際に、焦げ、剥離カスなどを生じにくくすることができる。
【0113】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、およびヒンダードフェノール系化合物などが含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、およびリン酸トリクレジルなどが含まれる。充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、およびアルミナなどが含まれる。消泡剤およびレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、およびアクリル系の化合物が含まれる。界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤などが含まれる。カップリング剤の例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、および3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが含まれる。
【0114】
[調製方法]
接着剤層組成物は、上記各成分を混合して、調製することができる。
【0115】
[使用方法]
接着剤層組成物は、保持基板の表面のうち必要な部分に付与して用いることができ、フォトリソグラフィーにより必要なパターンを形成するプロセスを経て用いることもできる。
【0116】
2.積層体およびその製造方法
[接着剤層を有する保持基板]
上述した接着剤層組成物を、転写元基板から剥離された被着体をキャッチして保持する保持基板の表面に付与(塗布)し、プリベークすることで、剥離された被着体を保持する接着剤層を上記保持基板の表面に形成することができる。
【0117】
接着剤層組成物の付与方法の例には、公知の溶液浸漬法、スピンコート法、インクジェット法、スプレー法、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法などが含まれる。
【0118】
上記付与方法で、接着剤層組成物を付与した後、溶剤を乾燥させる(プリベーク)ことにより、接着剤層が形成される。なお、プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば、60~110℃の温度で1~10分間行われる。
【0119】
接着剤層の厚さは、任意に選択することができる。接着剤層の厚さは、1μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましい。接着剤層の厚さが1μm以上であると、接着剤層が被着体をキャッチするための十分な保持力を有することができる。また、50μm以下であると、光または熱硬化により十分に接着剤層を硬化させることができる。
【0120】
プリベークの後に、接着剤層にパターニングを施すための露光工程および現像工程を有していてもよい。接着剤層にパターニングを施すことにより、接着剤層が必要な部分にのみ接着剤層を形成することができる。
【0121】
露光工程に使用する光の例には、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等が含まれる。これらのうち、紫外線(波長250~400nm)が好ましい。また、現像工程では、アルカリ現像に適した現像液を用いる。上記現像液の例には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の水溶液が含まれる。これらの現像液は、樹脂層の特性に合わせて適宜選択されうるが、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。現像温度は、20~35℃であることが好ましく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗される。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0122】
[保持基板による被着体の保持]
上記接着剤層を有する保持基板は、転写元基板から剥離された被着体を保持することができる。
【0123】
このとき、転写元基板を、そのうち被着体が付着された表面が保持基板の接着剤層と対向する位置に、好ましくは転写元基板の被着体が付着された表面が鉛直方向上方となるように配置する。なお、転写元基板は、光照射により変質・分解する樹脂により、複数の被着体を上記表面に付着させている。
【0124】
被着体をより高速で転写する観点からは、転写元基板上に付着された被着体と、保持基板上に形成された接着剤層との間に間隔(ギャップ)を設けるように配置する。上記間隔(ギャップ)は、10μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0125】
この状態で例えば、
図1Aに示すように転写元基板201を介して樹脂202に光を照射し、被着体を付着させている樹脂202を変質・分解させると、転写元基板201から被着体101、102が剥離され、保持基板104に転写される。転写された被着体101、102は、接着剤層103によりキャッチされ、位置ズレなく保持基板上に接着する。
【0126】
このようにして、例えば、
図1Bに示すような、保持基板104と、被着体101、102と、保持基板104と被着体101、102との間に配置された、上記接着剤層組成物により形成された接着剤層103と、を有する積層体100が製造される。
【0127】
[積層体の用途および処理方法]
この積層体は、保持基板に保持された複数の被着体を搬送するために使用することができる。搬送後、例えば、
図2Aに示すように光(またはレーザー)の照射により接着剤層103から被着体101、102を剥離させて、保持基板104からさらに別の基板302上に被着体101、102を転写してもよい。このとき、例えば、
図2Bに示すように保持基板104から被着体101、102を転写される別の基板302は、保持基板104から剥離した被着体101、102をキャッチする表面に、上記接着剤層組成物の付与およびプリベークにより形成された接着剤層301を有してもよい。これにより、保持基板104から別の基板302への被着体101、102の転写時の、別の基板302による被着体101、102のキャッチ性を高めることもできる。
【0128】
照射される光またはレーザーは、保持基板と被着体とを分離できれば、特に限定されない。本発明においては、上記光またはレーザーは紫外線であることが好ましく、上記紫外線の波長は、10nm以上400nm以下であることがより好ましく、100nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。上記紫外線の波長が10nm以上であると、接着剤層の成分が光を吸収することで変質を起こして、強度および接着力が低下させるので、保持基板と被着体とを容易に分離することができる。また、波長が400nm以下であると、加工部の接着剤層が光を吸収するので、硬化膜の残渣が生じるのを抑制することができる。
【0129】
この光またはレーザーの照射による別の基板への転写効率を高める観点から、保持基板は、光透過性を有することが好ましい。とくに、保持基板は、10nm以上400nm以下の波長の光(レーザー)を透過させることがより好ましく、100nm以上400nm以下の波長の光(レーザー)を透過させることがさらに好ましい。上記レーザー透過性を有する基板の例には、ガラス基板、アクリル基板、サファイヤ基板、石英基板などが含まれる。ただし、ガラス基板、アクリル基板については、使用する光の波長(特には波長266nm)の透過率が十分である組成の基板を用いることが望ましい。これらのうち、サファイヤ基板および石英基板が好ましい。
【0130】
上記紫外線の光源の例には、低水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、遠紫外線灯レーザーが含まれる。
【0131】
上記レーザーの例には、固体レーザー、液体レーザー、気体レーザーが含まれる。また、上記固体レーザーの例には、半導体励起レーザーなどが含まれる。液体レーザーの例には、色素レーザーなどが含まれる。気体レーザーの例には、エキシマレーザーなどが含まれる。上記レーザーの中では、半導体励起レーザーであることが好ましい。
【0132】
上記半導体励起レーザーの例には、Nd:YAGレーザー、Nd:YLFレーザー、Nd:ガラスレーザー、Nd:YVO4レーザー、Yb:YAGレーザー、Ybドープファイバーレーザー、Er:YAGレーザー、Tm:YAGレーザーなどが含まれる。エキシマレーザーの例には、KrFレーザー、XeClレーザー、ArFレーザー、F2レーザーなどが含まれる。上記レーザーの中では、Nd:YAGレーザーであることが好ましい。
【0133】
また、接着剤層に照射する光の出力および積算光量は、光源等の種類によって異なるが、照射する光がレーザーである場合には、上記出力は、0.1mW以上200W以下であるものを用いることができる。また、上記積算光量は、1mJ/cm2以上50J/cm2以下であることが好ましい。積算光量が、0.1mJ/cm2以上であると、アブレーションの際に生じる焦げ、剥離カスなどが生じにくい。50J/cm2以下であるとアブレーションの速度を適正に制御して適正な加工をすることができる。
【0134】
接着剤層には、基板側から光(レーザー)を接着剤層の全面に照射、または転写すべき被着体を接着している部位に選択的に照射することが好ましい。
【0135】
なお、保持基板から被着体を剥離する前に、積層体を加工する工程を含んでもよい。
【0136】
上記加工の例には、ダイシング、裏面研削などの被着体の薄膜化、フォトファブリケーション、半導体チップの積層、各種被着体の搭載、樹脂封止などが含まれる。
【0137】
なお、被着体の種類は特に限定されない。被着体の例には、半導体ウエハ、半導体チップ、発光素子、光学系ガラスウエハ、金属箔、研磨パッド、樹脂塗膜、および配線層などが含まれる。
【0138】
なお、保持基板に被着体を保持させて上記積層体を形成した後、接着剤層を本硬化(ポストベーク)させて、保持基板に被着体を強固に接着させてもよい。ポストベークにより、光照射により剥離する際の残渣を低減することができる。
【0139】
上記ポストベークは、たとえば、接着剤層に被着体を加圧しながら加熱して行うことができる。このときの温度は、室温以上200℃以下であることが好ましく、30℃以上150℃以下であることがより好ましい。このときの圧力は、0.01MPa以上20MPa以下であることが好ましく、0.03MPa以上15MPa以下であることがより好ましい。上記条件で、保持基板と被着体とを接着させることにより、被着体が接着剤層を介して保持基板の表面により強固に固定される。
【0140】
また、光硬化で接着剤を硬化させてもよい。光硬化により、接着剤層に被着体が埋まり込まないようにして、光照射による剥離性を高めることができる。接着剤層の光硬化は、高圧水銀ランプを用いて光を照射する方法などにより行うことができる。このとき照射する光の波長は、200~500nmであることが好ましい。このとき照射する光の露光量は、25mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下であることが好ましく、50mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下であることがより好ましい。光硬化を行うときは、背着剤層組成物は光縦走開始剤を有することが好ましい。
【0141】
上記ポストベークおよび光照射は、いずれか一方のみを行ってもよいし、両方を行ってもよいし、いずれも行わなくてもよい。
【0142】
このようにして被着体を強固に接着させた保持基板は、そのまま実装基板として製品に用いることができる。
【0143】
被着体の形状および大きさは特に限定されない。たとえば、被着体の接着剤層に付着する面が長方形であるとき、当該長方形の長辺の長さ(正方形であるときは任意の1辺の長さ)は、1μm以上500μm以下であることが好ましく、5μm以上300μm以下であることがより好ましい。被着体の接着剤層に付着する面が好適な例としては、半導体素子が挙げられる。
【実施例0144】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0145】
なお、各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例において、測定用硬化膜付き基板の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施して使用している。また、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0146】
1.樹脂の合成
以下の合成例に記載した方法で、不飽和基含有重合性樹脂(A)-1~(A)-5および(A)’-6~(A)’-8を合成した。これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0147】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
【0148】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0149】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0150】
[マルテンス硬度]
樹脂溶液を、ガラス基板「#1737」上に、乾燥後の膜厚が10.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間プリベークをして乾燥膜を作製した。
【0151】
得られた乾燥膜を、超微小硬度計「フィッシャースコープHM2000Xyp」(フィッシャーインストルメンツ社製)を用いて、ビッカース圧子を負荷速度1.0mN/秒で押し込んだ。荷重を5.0mNまで負荷した後、5秒間クリープし、1.0mN/秒で除荷して、乾燥膜のマルテンス硬度を測定した。
【0152】
[波長266nmの光の吸光度]
紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、(A)成分の0.01重量%濃度のPGMEA溶液の波長266nmの光の吸光度を、光路長1cm石英セル中にて測定した。
【0153】
[(A)成分の50質量部希釈時の粘度]
(A)成分の固形分濃度が50質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を添加し、BF型粘度計「DV-II+Pro」(ブルックフィールド社製)を用いて、(A)成分の23℃における50質量%に希釈したときの粘度を測定した。
【0154】
合成例で記載する略号は次のとおりである。
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(一般式(8)でArがベンゼン環で、lが0のエポキシ樹脂、エポキシ当量256g/eq)
HOA-MS :2-アクリロイロキシエチル-コハク酸(共栄社化学株式会社製、HOA-MS(N))
TPP :トリフェニルホスフィン
AA :アクリル酸
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
4HBAGE :4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(三菱ケミカル株式会社製)
AA :アクリル酸
HOA-HH :2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(共栄社化学株式会社製、ライトアクリレートHOA-HH(N))
DCPMA :ジシクロペンタニルメタクリレート
GMA :グリシジルメタクリレート
St :スチレン
AIBN :アゾビスイソブチロニトリル
TDMAMP :トリスジメチルアミノメチルフェノール
HQ :ハイドロキノン
SA :無水コハク酸
TEA :トリエチルアミン
【0155】
[合成例1]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、HOA-MS(43.24g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(16.50g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(77.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0156】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(14.75g、0.05mol)およびTHPA(7.63g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有重合性樹脂(A)-1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.3質量%であり、酸価(固形分換算)は73mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4800であった。
【0157】
[合成例2]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.41g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(11.40g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(53.30g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0158】
次いで、得られた反応生成物に1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(9.95g、0.05mol)およびTHPA(7.64g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌した。その後、反応生成物に4HBAGE(15.08g、0.08mol)を仕込み、105~115℃で8時間攪拌し、不飽和基含有重合性樹脂(A)-2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は60.1質量%であり、酸価(固形分換算)は43mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5800であった。
【0159】
[合成例3]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、HOA-MS(43.24g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(16.50g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(77.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0160】
次いで、得られた反応生成物に1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(9.93g、0.05mol)およびTHPA(7.63g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有重合性樹脂(A)-3を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は54.3質量%であり、酸価(固形分換算)は76mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは6300であった。
【0161】
[合成例4]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、HOA-MS(43.24g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(16.50g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(77.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0162】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(14.75g、0.05mol)およびTHPA(7.63g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌した。その後、反応生成物に4HBAGE(15.06g、0.08mol)を仕込み、105~115℃で8時間攪拌し、不飽和基含有重合性樹脂(A)-4を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は58.4質量%であり、酸価(固形分換算)は32mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4000であった。
【0163】
[合成例5]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、HOA-MS(43.24g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(16.50g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(77.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0164】
次いで、得られた反応生成物に1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(9.93g、0.05mol)およびTHPA(7.63g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌した。その後、反応生成物に4HBAGE(15.06g、0.08mol)を仕込み、105~115℃で8時間攪拌し、不飽和基含有重合性樹脂(A)-5を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57.5質量%であり、酸価(固形分換算)は33mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5600であった。
【0165】
[合成例6]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、AA(14.41g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(11.40g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(53.30g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0166】
次いで、得られた反応生成物にピロメリット酸二無水物(10.95g、0.05mol)およびTHPA(7.64g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有重合性樹脂(A)’-6を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57.4質量%であり、酸価(固形分換算)は101mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3500であった。
【0167】
[合成例7]
還流冷却機付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(50.00g、0.10mol)、HOA-HH(54.06g、0.20mol)、TPP(0.26g)、およびPGMEA(18.40g)を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(86.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0168】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(14.75g、0.05mol)およびTHPA(7.63g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有重合性樹脂(A)’-7を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は54.8質量%であり、酸価(固形分換算)は67mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4900であった。
【0169】
[合成例8]
還流冷却機付き1Lの四つ口フラスコ中に、PGMEA(300g)を入れ、フラスコ系内を窒素置換した後120℃に昇温した。フラスコ内にモノマー混合物(DCPMA(77.1g、0.35mol)、GMA(49.8g、0.35mol)、St(31.2g、0.30mol)にAIBN(10g)を溶解した混合物を滴下ロートから2時間かけて滴下し、さらに120℃で2時間攪拌し、共重合体溶液を得た。
【0170】
次いで、フラスコ系内を空気に置換した後、得られた共重合体溶液にAA(24.0g、グリシジル基の95%)、TDMAMP(0.8g)およびHQ(0.15g)を添加し、120℃で6時間攪拌し、重合性不飽和基含有共重合体溶液を得た。得られた重合性不飽和基含有共重合体溶液にSA(30.0g、AA添加モル数の90%)、TEA(0.5g)を加え120℃で4時間反応させ、不飽和基含有重合性樹脂(A)’-8を得た。樹脂溶液の固形分濃度は46.0質量%であり、酸価(固形分換算)は76mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは5300であった。
【0171】
2.重合性化合物の粘度測定
BF型粘度計「DV-II+Pro」(ブルックフィールド社製)を用いて、(B)成分の23℃における粘度を測定した。
【0172】
3.接着剤層組成物の調製
表1および表2に記載の配合量(単位は質量%)で実施例1~10、および比較例1~3の接着剤層形成用の接着剤層組成物を調製した。表1および表2で使用した配合成分は以下のとおりである。
【0173】
(不飽和基含有重合性樹脂)
(A)-1:合成例1で得られた樹脂溶液(固形分濃度55.3質量%)
(A)-2:合成例2で得られた樹脂溶液(固形分濃度60.1質量%)
(A)-3:合成例3で得られた樹脂溶液(固形分濃度54.3質量%)
(A)-4:合成例4で得られた樹脂溶液(固形分濃度58.4質量%)
(A)-5:合成例5で得られた樹脂溶液(固形分濃度57.5質量%)
(A)’-6:合成例6で得られた樹脂溶液(固形分濃度57.4質量%)
(A)’-7:合成例7で得られた樹脂溶液(固形分濃度54.8質量%)
(A)’-8:合成例8で得られた樹脂溶液(固形分濃度46.0質量%)
【0174】
(重合性化合物)
(B)-1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬株式会社製)
(B)-2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε-カプロラクトン12モル付加物(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA-120)
(B)-3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのエチレンオキサイド12モル付加物(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPEA-12、)
(B)-4:トリメチロールプロパントリアクリレートのエチレンオキサイド6モル付加物(東亞合成株式会社製、アロニックスM-360)
【0175】
(エポキシ化合物)
(C)-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、jER 828、「jER」は同社の登録商標、エポキシ当量120~150g/eq)
(C)-2:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、jER YX4000、エポキシ当量180~192g/eq)
【0176】
(溶剤)
(D):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0177】
【0178】
【0179】
4.評価
表1および表2に記載した組成物について、以下の評価を行った。
【0180】
[半導体素子のキャッチ性評価]
(キャッチ性評価用基板の作製)
表1および表2に示した組成物を、ガラス基板「#1737」上に、乾燥後の膜厚が4.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間プリベークをして乾燥膜を作製し、この乾燥膜つきガラス基板をキャッチ性評価用基板とした。
【0181】
(評価方法)
支持体(保持基板)である合成石英ガラス基板上に、表1および表2に記載した組成物と同じ材料から調製した下記組成のレーザー剥離性仮接着剤層用の組成物を塗布し、プリベークして得られたレーザー剥離性仮接着剤層を介して、μ-LEDチップ(30μm×15μm)を接着した転写元基板を用意した。次いで、μ-LEDと、キャッチ性評価用基板上の乾燥膜を対向するように配置し、μ-LEDとキャッチ性評価用基板上の乾燥膜の間の転写ギャップが50μmとなるよう設定した。
【0182】
(レーザー剥離性仮接着剤層用の組成物)
(A)’-6: 41.8質量%
(B)-1: 12.0質量%
(C)-1: 4.0質量%
(D): 42.2質量%
【0183】
μ-LEDを固定するレーザー剥離用接着剤に対して、フラッシュランプ励起Nd:YAGQ-SWレーザー発振器「Callisto」(株式会社ブイ・テクノロジー製)を用いて、レーザー(レーザー波長:266nm)を50mJ/cm2支持体側から照射し、μ-LEDをキャッチ性評価用基板上の乾燥膜に転写した。転写時の位置ズレがなかったとき転写成功、位置ズレがあったとき転写失敗として、下記基準で評価した。なお、評価は20個のμ-LEDチップを転写して行い、△以上を合格とした。
【0184】
(評価基準)
◎:すべてのμ-LEDが、位置ズレなく転写される(転写成功率:100%)
○:転写成功率が、90%以上、100%未満である
△:転写成功率が、80%以上、90%未満である
×:転写成功率が、80%未満である
【0185】
[レーザー加工性評価]
(レーザー加工性評価用基板の作製)
表1および表2に示した組成物を、ガラス基板「#1737」上に、乾燥後の膜厚が1.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて100℃で5分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、硬化膜付き基板を得た。
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後の硬化膜に対して、フラッシュランプ励起Nd:YAGQ-SWレーザー発振器「Callisto」(株式会社ブイ・テクノロジー製)を用いて、レーザー(レーザー波長:266nm)を照射した。3~550mJ/cm2のレーザーエネルギーで硬化膜の加工(塗膜除去)を行い、レーザー照射部の減膜量を非接触三次元光干渉型顕微鏡「WYKO Contour-GT」(ブルカージャパン製)にて測定した。減膜量が0.1μmとなるためのレーザー照射量をもとに、下記基準で評価した。なお、△以上を合格とした。
【0186】
(評価基準)
◎:50mJ/cm2以下で、減膜量が0.1μmとなる
○:50mJ/cm2超100mJ/cm2以下で、減膜量が0.1μmとなる
△:100mJ/cm2超200mJ/cm2以下で、減膜量が0.1μmとなる
×:200mJ/cm2超で、硬化膜の減膜量が0.1μmに満たない
【0187】
評価結果を表3に示す。
【0188】
【0189】
実施例1~10から明らかなように、本発明の接着剤層組成物から得られる乾燥膜は、μ-LEDチップを効率的に転写できることがわかった。これは、主成分である(A)成分の23℃における粘度を50mPa・s以上2000mPa・s以下とすることで、μ-LEDチップが乾燥膜に衝突した際の衝撃を緩和でき、μ-LEDチップの跳ね返りによる反転や位置ずれを抑制できたためと考えられる。
【0190】
また、(A)成分として、波長266nmの光の吸光度が0.5以上である不飽和基含有重合性樹脂を用いることで、硬化膜のレーザー光の吸収性を向上することができ、より低エネルギーで分解することができることがわかった。
【0191】
実施例1と、実施例6~8との比較から明らかなように、(B)成分の23℃における粘度を2000mPa・s以下とすることで、接着剤層組成物から得られる乾燥膜の柔軟性を向上させることができ、μ-LEDチップのキャッチ性を向上させることができることがわかった。
本発明は、様々な製品の製造時に使用され得る接着剤層組成物を提供することができる。特に、半導体素子を光照射により転写する用途において、好適な接着剤層を提供することができる。