(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081913
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】酸化物蛍光体、発光装置及び酸化物蛍光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/59 20060101AFI20240612BHJP
C09K 11/66 20060101ALI20240612BHJP
C09K 11/67 20060101ALI20240612BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20240612BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240612BHJP
【FI】
C09K11/59
C09K11/66
C09K11/67
C09K11/08 B
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195494
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村▲崎▼ 嘉典
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CF02
4H001XA11
4H001XA12
4H001XA14
4H001XA19
4H001XA20
4H001XA22
4H001XA30
4H001XA32
4H001XA37
4H001XA38
4H001XA40
4H001XA50
4H001XA55
4H001XA56
4H001XA72
4H001YA24
4H001YA25
4H001YA26
4H001YA28
4H001YA60
4H001YA63
4H001YA67
4H001YA68
4H001YA69
4H001YA70
5F142AA22
5F142BA02
5F142BA24
5F142BA32
5F142CA02
5F142CA11
5F142CB01
5F142CB03
5F142CC01
5F142CD02
5F142CG01
5F142CG24
5F142DA01
5F142DA12
5F142DA13
5F142DA14
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5F142DA73
5F142DB02
5F142DB18
5F142DB24
5F142FA28
5F142GA08
5F142GA21
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】赤色光から近赤外光の波長範囲に発光ピークを有する酸化物蛍光体を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される組成を有する、酸化物蛍光体。
(Li
1-uM
1
u)
2M
2
vM
3
wO
x:Cr
y,M
4
z (1)
(前記式(1)中、M
1は、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M
2は、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M
3は、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M
4はNi,Eu,Fe,Mn,Nd,Tm,Ho,Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の元素u、v、w、x、y及びzは、それぞれ0≦u≦1.0、1≦v≦3.0、2.5≦w≦6、4≦x≦16、0.005≦y≦1.0、0≦z≦0.5を満たす。)
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される組成を有する、酸化物蛍光体。
(Li1-uM1
u)2M2
vM3
wOx:Cry,M4
z (1)
(前記式(1)中、M1は、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M3は、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、Ni、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、u、v、w、x、y及びzは、それぞれ0≦u≦1.0、0.8≦v≦3.0、1.8≦w≦6、5.4≦x≦16、0.005≦y≦1.0、0≦z≦0.5を満たす。)
【請求項2】
前記式(1)中、M2はMgを含み、M3はSiを含む請求項1に記載の酸化物蛍光体。
【請求項3】
前記式(1)中、0.02≦y≦0.2である請求項2に記載の酸化物蛍光体。
【請求項4】
前記式(1)中、M2はZnを含む請求項1に記載の酸化物蛍光体。
【請求項5】
前記式(1)中、0.03≦y≦0.2である請求項4に記載の酸化物蛍光体。
【請求項6】
酸化物蛍光体は、680nm以上1050nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する請求項1に記載の酸化物蛍光体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の酸化物蛍光体と、365nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記酸化物蛍光体を照射する発光素子と、を備える、発光装置。
【請求項8】
Liを含む第1化合物と、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の第2元素M2を含む第2化合物と、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の第3元素M3を含む第3化合物と、Crを含む第4化合物とを含み、必要に応じてNa、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の第1元素M1を含む第5化合物と、必要に応じてNi、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の第4元素M4を含む第6化合物と、を準備することと、
酸化物蛍光体の組成1モルにおける前記Li及び必要に応じて含まれる第1原子M1の合計のモル比を2としたときに、前記Liのモル比が0以上1.0以下の範囲内の数値と2の積であり、前記第1元素M1のモル比が0以上1.0以下の範囲内の変数uと2の積であり、前記第2元素M2の合計のモル比が0.8以上3.0以下の範囲内の変数vであり、前記第3元素M3のモル比が1.8以上6以下の範囲内の変数wであり、前記Crのモル比が0.005以上1.0以下の変数yであり、前記第4元素M4のモル比が0以上0.5以下の変数zとなるように前記前記第1化合物と、前記第2化合物と、前記第3化合物と、前記第4化合物と、必要に応じて、前記第5化合物又は前記第6化合物と、を調整して混合した原料混合物を準備することと、
前記原料混合物を、酸素を含む雰囲気中で、800℃以上1200℃以下の範囲内の温度で熱処理して、酸化物蛍光体を得ることと、を含み、前記第1化合物、前記第2化合物、前記第3化合物及び前記第4化合物からなる群から選択される少なくとも1種が酸化物である、酸化物蛍光体の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理する温度が、900℃以上1050℃以下の範囲内である、請求項8に記載の酸化物蛍光体の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理する雰囲気が大気雰囲気である、請求項8又は9に記載の酸化物蛍光体の製造方法。
【請求項11】
下記式(1)で表される組成となるように、前記原料混合物を準備する、請求項8又は9に記載の酸化物蛍光体の製造方法。
(Li1-uM1
u)2M2
vM3
wOx:Cry,M4
z (1)
(前記式(1)中、M1は、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M3は、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、Ni、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、u、v、w、x、y及びzは、それぞれ0≦u≦1.0、0.8≦v≦3.0、1.8≦w≦6、5.4≦x≦16、0.005≦y≦1.0、0≦z≦0.5を満たす。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化物蛍光体、発光装置及び酸化物蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色光から近赤外光の波長範囲に発光強度を有する発光装置は、例えば赤外線カメラ、赤外線通信、植物育成、栽培用の光源、生体認証の1種である静脈認証、青果等の食品の糖度を非破壊で測定する食品成分分析機器等への使用が望まれている。赤色光から近赤外光の波長範囲とともに、可視光の波長範囲においても発光する発光装置も望まれている。
【0003】
このような発光装置として、発光ダイオード(LED)と蛍光体とを組み合わせた発光装置が挙げられる。
また、発光装置に組み合わされる蛍光体として、赤色光から近赤外光の波長範囲に比較的大きな発光スペクトルの発光強度を有する蛍光体(以下、「近赤外発光蛍光体」ともいう。)が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、近赤外発光蛍光体として、680nm以上760nm以下の波長範囲内に発光ピーク波長を有し、組成が例えばCaYAlO4:Mn4+で表される蛍光体が開示されている。上述したような各用途に適した、より半値全幅が広く、発光ピーク波長がより長い波長範囲にある発光スペクトルを有する近赤外発光蛍光体が求められる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、赤色光から近赤外光の波長範囲に発光ピーク波長を有し、発光スペクトルの半値全幅が広い酸化物蛍光体、それを用いた発光装置及び酸化物蛍光体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様は、下記式(1)で表される組成を有する、酸化物蛍光体である。
(Li1-uM1
u)2M2
vM3
wOx:Cry,M4
z (1)
(前記式(1)中、M1は、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M3は、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、Ni、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、u、v、w、x、y及びzは、それぞれ0≦u≦1.0、0.8≦v≦3.0、1.8≦w≦6、5.4≦x≦16、0.005≦y≦1.0、0≦z≦0.5を満たす。)
【0008】
第二態様は、前記酸化物蛍光体と、365nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記酸化物蛍光体を照射する発光素子とを備える発光装置である。
【0009】
第三態様は、Liを含む第1化合物と、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の第2元素M2を含む第2化合物と、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の第3元素M3を含む第3化合物と、Crを含む第4化合物とを含み、必要に応じてNa、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の第1元素M1を含む第5化合物と、必要に応じてNi、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の第4元素M4を含む第6化合物と、を準備することと、酸化物蛍光体の組成1モルにおける前記Li及び必要に応じて含まれる第1原子M1の合計のモル比を2としたときに、前記Liのモル比が0以上1.0以下の範囲内の数値と2の積であり、前記第1元素M1のモル比が0以上1.0以下の範囲内の変数uと2の積であり、前記第2元素M2の合計のモル比が0.8以上3.0以下の範囲内の変数vであり、前記第3元素M3のモル比が1.8以上6以下の範囲内の変数wであり、前記Crのモル比が0.005以上1.0以下の変数yであり、前記第4元素M4のモル比が0以上0.5以下の変数zとなるように前記前記第1化合物と、前記第2化合物と、前記第3化合物と、前記第4化合物と、必要に応じて、前記第5化合物又は前記第6化合物と、を調整して混合した原料混合物を準備することと、前記原料混合物を、酸素を含む雰囲気中で、800℃以上1200℃以下の範囲内の温度で熱処理して、酸化物蛍光体を得ることと、を含み、前記第1化合物、前記第2化合物、前記第3化合物及び前記第4化合物からなる群から選択される少なくとも1種が酸化物である、酸化物蛍光体の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、赤色光から近赤外光の波長範囲に発光ピーク波長を有し、発光スペクトルの半値全幅が広い酸化物蛍光体、それを用いた発光装置及び酸化物蛍光体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、発光装置の第1構成例の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、発光装置の第1構成例の他の例を示す概略断面図である。
【
図3A】
図3Aは、発光装置の第2構成例を示す概略平面図である。
【
図3B】
図3Bは、発光装置の第2構成例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1から5に係る酸化物蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【
図5】
図5は、実施例6から11に係る酸化物蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【
図6】
図6は、実施例12から16に係る酸化物蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る酸化物蛍光体、それを用いた発光装置及び酸化物蛍光体の製造方法を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の酸化物蛍光体、発光装置及び酸化物蛍光体の製造方法に限定されない。なお、可視光について、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。
【0013】
蛍光体を用いた発光装置には、視認対象や使用状況に応じて、最適な波長範囲の光を出射することが求められる。例えば医療現場等においては、生体内の情報を簡易に得ることが求められる場合がある。生体内には、光吸収体として例えば水、ヘモグロビン、メラニン等が含まれる。例えばヘモグロビンは、波長が650nm未満の可視光の波長範囲の光の吸収率が高く、可視光の波長範囲の光を出射する発光装置では、生体内に可視光の波長範囲の光が透過し難く、生体内の情報を得難い。そのため、生体内を光が透過しやすい「生体の窓」と呼ばれる波長範囲がある。その「生体の窓」と呼ばれる波長範囲の少なくとも一部を含む、例えば650nm以上1050nm以下の近赤外光の波長範囲の光を出射する発光装置が求められる場合がある。例えば生体内の血液中の酸素濃度の増減を、酸素と結合するヘモグロビンの光の吸収の増減によって測定することが可能であれば、発光装置からの光の照射によって生体内の情報を簡易に得ることが可能となる。そのため、発光装置に用いられる蛍光体は、650nm以上1050nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体が求められる場合がある。
【0014】
例えば食品分野においては、青果物の糖度を非破壊で測定する非破壊糖度計等が求められている。青果物の糖度、酸度、熟度、内部損傷等の内部品質や、異常乾燥等の青果物の果皮表面やその果皮表面近くの果皮表層に現れる表層品質を、非破壊で測定する方法として、近赤外分光法が用いられる場合がある。近赤外分光法は、青果物に近赤外光の波長範囲の光を照射して、青果物を透過した透過光や、青果物が反射した反射光を受光して、光の強度の減少(光の吸収)により青果物の品質を測定する。このような食品分野において使用される近赤外分光法の分析装置には、タングステンランプやキセノンランプのような光源が用いられている。本明細書において、赤色光の波長範囲は、JIS Z8110に従う。
【0015】
また、気候変動等の環境変化が起こる中で、野菜等の植物を安定的に供給し、植物の生産効率を高めることが望まれている。人為的な管理が可能となる植物工場は、安全な野菜を市場に安定的に供給することが可能であり、次世代の産業として期待されている。このような植物工場においては、植物の成長を促進し得る光を照射する発光装置が求められる。植物の光に対する反応は、光合成と光形態形成に分けられる。光合成は、光エネルギーを利用して水を分解し、酸素を発生して二酸化炭素を有機物に固定する反応であり、植物の成長のために必要な反応である。光形態形成は、光を信号として利用し、種子の発芽、分化(発芽形成、葉の形成等)、運動(気孔開閉、葉緑体運動)、光屈折等を行う形態的な反応である。光形態形成反応には、690nm以上800nm以下の波長範囲の光が植物の光受容体に影響を及ぼすことが分かってきている。そのため、植物工場等で使用する発光装置には、植物の光受容体(クロロフィルa、クロロフィルb、カロテノイド、フィトクロム、クリプトクロム、フォトトロピン)に影響を及ぼし、植物の成長を促進する波長範囲の光の照射が可能であることが求められる場合がある。
上述した近赤外発光蛍光体についても、紫色から青色に発光する青色発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等の発光素子を励起光源として発光装置としたとき、用途に適した発光が可能になるように、蛍光体としての発光特性を改良する余地がある。
【0016】
また、680nm以上1050nm以下の波長範囲の発光とともに、365nm以上680nm未満の波長範囲でも発光する発光装置が求められる場合もある。例えば生体や青果物の内部情報を得るためのみならず、対象物の視認性を高めるために可視光の波長範囲の発光が必要な場合がある。
【0017】
また、680nm以上1050nm以下の波長範囲の発光を熱源として用いて、信号機や車載用照明装置の着雪対策に使用可能な発光装置も望まれている。
【0018】
酸化物蛍光体は、下記式(1)で表される組成を有することが好ましい。
(Li1-uM1
u)2M2
vM3
wOx:Cry,M4
z (1)
(前記式(1)中、M1は、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M3は、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、Ni、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、u、v、w、x、y及びzは、それぞれ0≦u≦1.0、0.8≦v≦3.0、1.8≦w≦6、4≦x≦16、0.005≦y≦1.0、0≦z≦0.5を満たす。)
【0019】
酸化物蛍光体は、前記式(1)で表される組成において、必要に応じて含まれる第1元素M1がNa、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の元素でもよい。酸化物蛍光体は、近赤外の波長領域において、使用目的に応じて望ましい範囲に発光ピーク波長を有し、より半値全幅の広い発光スペクトルを得るために、酸化物蛍光体は、前記式(1)で表される組成において、第2元素M2がMg又はZnのいずれかの元素であることが好ましい。酸化物蛍光体は、前記式(1)で表される組成において、第3元素M3は、Si又はGeのいずれかの元素であることが好ましい。酸化物蛍光体は、前記式(1)で表される組成において、第4元素M4は、Ni、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素でもよい。
【0020】
各酸化物蛍光体の発光スペクトルにおける面積比は、相対発光強度比が0%の直線をベースラインとし、各酸化物蛍光体の発光スペクトルで囲われた領域、又は、直線のベースライト、酸化物蛍光体の発光スペクトルと、2つの特定の波長においてベースラインと垂直となる2つの直線で囲われた領域を各酸化物蛍光体の発光スペクトルにおける面積として導き出し、特定の酸化物蛍光体の面積を100%として、酸化物蛍光体の発光スペクトルにおける面積比として導き出すことができる。具体的には、後述した実施例に記載した方法で酸化物蛍光体の発光スペクトルにおける面積比を導き出すことができる。
【0021】
酸化物蛍光体は、酸化物蛍光体の組成1モルにおいて、賦活元素であるCrのモル比を表す前記式(1)中の変数yが0.005以上1.0以下(0.005≦y≦1.0)の範囲内であり、好ましくは0.005以上0.2以下(0.005≦y≦0.2)の範囲内であれば、近赤外の波長領域において、使用目的に応じて望ましい範囲に、面積比が大きく、高い発光強度を有し、半値全幅の比較敵広い発光スペクトルを得ることができる。酸化物蛍光体の組成1モルにおいて、賦活元素であるCrのモル比を表す前記式(1)中の変数yは、0.01以上であってよく、0.1以上であってよい。また、yは0.5以下であってよく、0.3以下であってよく、0.15以下であってよく、0.12以下であってよい。
【0022】
酸化物蛍光体は、前記式(1)で表される組成において、必要に応じて含まれる第1元素M1のモル比を表す変数uが、0≦u≦0.2でもよく、0≦u≦0.1でもよい。酸化物蛍光体は、前記式(1)で表される組成において、元素M1を実質的に含んでいなくてもよく、変数uが実質的に0でもよい(実質的にu=0)。本明細書において、組成における元素のモル比を表す変数の数値が「実質的に0」とは、その元素が意図的に含まれていないことを意味する。組成における元素を表すモル比を表す変数の数値が実質的に0とは、具体的には1000質量ppm以下である場合をいい、500質量ppm以下である場合も含まれ、1質量ppm以上である場合も含まれる。
【0023】
酸化物蛍光体は、前記式(1)で表される組成において、第2元素M2のモル比を表す変数vが、1より大きくてもよく、1.5以上でもよい。第2元素M2のモル比を表す変数vは、2.8以下でもよく、2.5以下でもよく、2.0未満でもよい。
【0024】
酸化物蛍光体は、前記式(1)で表される組成において、第3元素M3のモル比を表す変数wが、2.0以上でもよく、2.5以上でもよく、3以上でもよく、3.5以上でもよい。第3元素M3のモル比を表す変数wは、5.5以下でもよく、5.0以下でもよい。
【0025】
酸化物蛍光体は、前記式(1)で表される組成において、酸素元素のモル比を表す変数xが、6.0以上でもよく、7.0以上でもよい。酸素元素のモル比を表す変数xは、14.0以下でもよく、12.0以下でもよい。
【0026】
酸化物蛍光体は、前記式(1)で表される組成において、Crとともに賦活元素であり必要に応じて含まれる第4元素M4のモル比を表す変数zが、0≦z≦0.4でもよく、0≦z≦0.3でもよく、0≦z≦0.2でもよく、0≦z≦0.1でもよい。酸化物蛍光体は、前記式(1)で表される組成において、元素M4を実質的に含んでいなくてもよく、変数zが実質的に0でもよい(実質的にz=0)。
【0027】
酸化物蛍光体は、680nm以上1050nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅が80nm以上であることが好ましく、100nm以上であることが更に好ましい。680nm以上1000nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよく、680nm以上950nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよく、680nm以上900nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよい。酸化物蛍光体の発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅は、120nm以上であることがより好ましく、130nm以上であることがさらに好ましく、140nm以上であることがよりさらに好ましい。酸化物蛍光体は、発光スペクトルにおいて、680nm以上1050nm以下の範囲内において所望の発光ピーク波長を有し、半値全幅がより広いことが好ましい。発光ピーク波長を有する発光スペクトルの半値全幅は300nm以下であってよく、280nm以下であってもよく、260nm以下であってもよく、250nm以下であってもよい。本明細書において、半値全幅は、発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す発光ピーク波長における発光強度に対して50%となる波長幅をいう。生体内では、光の吸収と散乱が生じ、生体内の血液中の微妙な光の伝播挙動の変化を測定するためには、半値全幅が広い発光ピークを有する光が照射されることが好ましい。また、青果物や米等の食品を非破壊で測定する場合おいても食品内部の情報を得るために、半値全幅が広い発光スペクトルを有する光が照射されることが好ましい。また、光で照射した場合の物体の色の見え方(以下、「演色性」ともいう。)は、広い波長範囲に発光スペクトルを有することが望ましく、半値全幅が広い方が演色性に優れた光を出射できる。例えば植物工場において、植物の成長に影響を与える波長範囲の光を出射する場合においても、作業者が作業しやすいように光のスペクトルバランスを崩すことのない光を出射することが求められる場合もある。
【0028】
発光装置は、酸化物蛍光体と、365nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、酸化物蛍光体を照射する発光素子と、を備える。酸化物蛍光体は、透光性材料とともに波長変換部材を構成する部材として用いることができる。
【0029】
発光装置は、酸化物蛍光体を照射する発光素子として、例えば窒化物系半導体を用いたLEDチップ又はLDチップを備えることが好ましい。
【0030】
発光素子は、365nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、好ましくは370nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、さらに好ましくは375nm以上480nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。発光素子を酸化物蛍光体の励起光源として用いることにより、発光素子からの光と酸化物蛍光体を含む蛍光体からの蛍光との所望の波長範囲の混色光を発する発光装置を構成することが可能となる。発光素子の発光スペクトルにおける発光ピークの半値全幅は、例えば、30nm以下とすることができる。発光素子として、例えば、窒化物系半導体を用いた発光素子を用いることが好ましい。励起光源として窒化物系半導体を用いた発光素子を使用することによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
【0031】
発光装置は、上述した酸化物蛍光体を含む第1蛍光体を必須とし、さらに異なる蛍光体を含んでいてもよい。発光装置は、第1蛍光体の他に、それぞれ蛍光体の発光スペクトルにおいて、455nm以上495nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第2蛍光体、495nm以上610nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第3蛍光体、610nm以上680nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第4蛍光体、及び680nm以上1050nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第5蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を備えることが好ましい。発光装置は、発光素子と、上述した酸化物蛍光体を含む第1蛍光体を備え、第2蛍光体、第3蛍光体、第4蛍光体及び第5蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を備えることにより、可視光から近赤外光の一部を含む波長範囲に発光スペクトルを有する光を出射する光源として使用することができる。発光装置は、従来使用されていたタングステンランプやキセノンランプと比較して小型化が可能である光源として使用できる。小型の発光装置は、スマートフォンやスマートウォッチ等の小型モバイルに搭載することができ、生体内の情報が得られると体調管理等に使用することができる。ここで、「発光素子の発光ピーク波長以上1050nm以下の範囲内」とは、例えば発光素子の発光ピーク波長が420nmである場合には、420nm以上1050nm以下の範囲内をいう。
【0032】
発光装置は、発光素子の発光ピーク波長以上1050nm以下の範囲内で連続する発光スペクトルを有し、可視光から近赤外までの幅広い波長範囲で発光する。このような発光装置は、例えば反射分光式の測定装置や、生体内や青果物等を非破壊で測定可能となるとともに演色性にも優れた光が求められる照明装置に使用することができる。
【0033】
上述した酸化物蛍光体を含む第1蛍光体とは組成が異なる、第2蛍光体は、下記式(2a)で表される組成を有するリン酸塩蛍光体、下記式(2b)で表される組成を有するアルミニウム酸塩蛍光体及び下記式(2c)で表される組成を有するアルミニウム酸塩蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含むことが好ましく、2種以上の蛍光体を含んでいてもよい。
(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO4)6(F,Cl,Br,I)2:Eu (2a)
(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu (2b)
Sr4Al14O25:Eu (2c)
本明細書において、組成式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これらの複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含有することを意味する。また、本明細書において、蛍光体の組成を表す組成式中、コロン(:)の前は母体結晶を構成する元素及びそのモル比を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
【0034】
第3蛍光体は、下記式(3a)で表される組成を有するケイ酸塩蛍光体、下記式(3b)で表される組成を有するアルミニウム酸塩蛍光体又はガリウム酸塩蛍光体、下記式(3c)で表される組成を有するβサイアロン蛍光体、下記式(3d)で表される組成を有するハロゲン化セシウム鉛蛍光体、及び下記式(3e)で表される組成を有する窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含むことが好ましく、2種以上の蛍光体を含んでいてもよい。第3蛍光体が2種以上の蛍光体を含む場合は、2種以上の第3蛍光体のそれぞれが495nm以上610nm未満の範囲内でそれぞれ異なる範囲に発光ピーク波長を有する蛍光体であることが好ましい。
(Ca,Sr,Ba)8MgSi4O16(F,Cl,Br)2:Eu (3a)
(Lu,Y,Gd,Tb)3(Al,Ga)5O12:Ce (3b)
Si6-zAlzOzN8-z:Eu (0<z≦4.2) (3c)
CsPb(F,Cl,Br)3 (3d)
(La,Y,Gd)3Si6N11:Ce (3e)
【0035】
第4蛍光体は、下記式(4a)で表される組成を有する窒化物蛍光体、下記式(4b)で表される組成を有するフルオロゲルマン酸塩蛍光体、下記式(4c)で表される組成を有する酸窒化物蛍光体、下記式(4d)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、下記式(4e)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、下記式(4f)で表される組成を有する窒化物蛍光体、及び下記式(4g)で表される組成を有する窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含むことが好ましく、2種以上の蛍光体を含んでいてもよい。第4蛍光体が2種以上の蛍光体を含む場合は、2種以上の第4蛍光体のそれぞれが610nm以上700nmm未満の範囲内でそれぞれ異なる範囲に発光ピーク波長を有する蛍光体であることが好ましい。
(Sr,Ca)AlSiN3:Eu (4a)
3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn (4b)
(Ca,Sr,Mg)kSi12-(m+n)Alm+nOnN16-n:Eu (4c)
(前記式(4c)中、k、m、nは、0<k≦2.0、2.0≦m≦6.0、0≦n≦2.0を満たす。)
A1
c1[M5
1-b1Mn4+
b1Fd1] (4d)
(前記式(4d)中、A1は、K+、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4
+からなる群から選択される少なくとも1種を含み、その中でもK+が好ましい。M5は、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、その中でもSi、Geが好ましい。b1は、0<b1<0.2を満たし、c1は、[M5
1-b1Mn4+
b1Fd1]イオンの電荷の絶対値であり、d1は、5<d1<7を満たす。)
A2
c2[M6
1-b2Mn4+
b2Fd2] (4e)
(前記式(4e)中、A2は、K+、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4
+からなる群から選択される少なくとも1種を含み、その中でもK+が好ましい。M6は、第13族元素を含み、更に第4族元素、第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでもよい。前記第13族元素はAlが好ましく、前記第14元素はSiが好ましい。b2は、0<b2<0.2を満たし、c2は、[M6
1-b2Mn4+
b2Fd2]イオンの電荷の絶対値であり、d2は、5<d2<7を満たす。)
(Ba,Sr,Ca)2Si5N8:Eu (4f)
(Sr,Ca)LiAl3N4:Eu (4g)
【0036】
第5蛍光体は、下記式(5a)で表される組成を有するガリウム酸塩蛍光体、下記式(5b)で表される組成を有するアルミニウム酸塩蛍光体、下記式(5c)で表される組成を有するガリウム酸塩蛍光体、下記式(5d)で表される組成を有するアルミニウム酸塩蛍光体、及び上記酸化物蛍光体とは組成の異なる下記式(5e)、(5f)及び(5g)で表される組成を有する蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含むことが好ましく、2種以上の蛍光体を含んでいてもよい。
Ga2O3:Cr (5a)
Al2O3:Cr (5b)
ZnGa2O4:Cr (5c)
(Lu,Y,Gd,Tb)3(Al,Ga)5O12:Ce,Cr (5d)
M7
gM8
hM9
iM10
5Oj:Cre、M11
f (5e)
(前記式(5e)中、M7は、Li、Na、Ka、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M8は、Mg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M9は、Ba、Al、Ga、In及び希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M10は、Si、Ti、Ge、Zr、Sn、Hf及びPbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M11は、Eu、Ce、Tb、Pr、Nd、Sm、Yb、Ho、Er、Tm、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、e、f、g、h、i及びjは、0<e≦0.2、0≦f≦0.1、f<e、0.7≦g≦1.3、1.5≦h≦2.5、0.7≦i≦1.3、12.9≦j≦15.1を満たす。)
(Mg1-tM12
t)u(Ga1-v-x-yM13
v)2Ow:Crx,M14
y (5f)
(前記式(5f)中、M12は、Ca、Sr、Ba、Ni及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M13は、B、Al、Sc及びInからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M14は、Eu、Ce、Tb、Pr、Nd、Sm、Yb、Ho、Er、Tm及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、t、u、v、w、x及びyは、0≦t≦0.8、0.7≦u≦1.3、0≦v≦0.8、3.7≦w≦4.3、0.02<x≦0.3、0≦y≦0.2、y<xを満たす。)
(Li1-tM15
t)u(Ga1-vM16
v)5Ow:Crx,Niy,M17
z (5g)
(前記式(5h)中、M15は、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M16は、B、Al、Sc、In及び希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M17は、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hf、Bi、V、Nb及びTaからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、t、u、v、w、x、y及びzは、それぞれ0≦t≦1.0、0.7≦u≦1.6、0≦v<1.0、7.85≦w≦11.5、0.05≦x≦1.2、0≦y≦0.5、0.25<x+y≦1.2、y<x、0≦z≦0.5を満たす。)
【0037】
発光装置の一例を図面に基づいて説明する。
図1は、発光装置の第1構成例の一例を示す概略断面図である。
図2は、発光装置の第1構成例の他の例を示す概略断面図である。
【0038】
発光装置100は、
図1に示されるように、凹部を有する成形体40と、励起光源となる発光素子10と、発光素子10を被覆する波長変換部材50と、を備える。成形体40は、第1リード20及び第2リード30と、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂部42と、が一体的に成形されてなるものである。成形体40は、凹部の底面を構成する第1リード20及び第2リード30が配置され、凹部の側面を構成する樹脂部42が配置されている。成形体40の凹部の底面に、発光素子10が載置されている。発光素子10は、一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極は、第1リード20及び第2リード30とそれぞれワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は、波長変換部材50により被覆されている。波長変換部材50は、発光素子10から出射された光の波長変換をする蛍光体70と、透光性材料を含む。蛍光体70は、酸化物蛍光体を含む第1蛍光体71を必須として含む。蛍光体70は、第1蛍光体71の発光ピーク波長とは異なる波長範囲に発光ピーク波長を有する蛍光体を含んでいてもよい。
図2に示されるように、蛍光体70は、それぞれ上述した、第2蛍光体72、第3蛍光体73、第4蛍光体74、及び第5蛍光体75からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含むことが好ましく、2種以上を含んでいてもよい。蛍光体70は、第1蛍光体71を必須として含み、第2蛍光体72、第3蛍光体73、第4蛍光体74、及び第5蛍光体75を含んでいてもよい。波長変換部材50は、発光素子10、ワイヤ60及び蛍光体70等を外部環境から保護するための部材としても機能する。発光装置100は、第1リード20及び第2リード30を介して、外部からの電力の供給を受けて発光する。
【0039】
図3A及び
図3Bは、発光装置の第2構成例を示す。
図3Aは、発光装置200の概略平面図である。
図3Bは、
図3Aに示す発光装置200のIII-III’線の概略断面図である。発光装置200は、365nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子10と、発光素子10からの光により励起されて発光する第1蛍光体71を含む波長変換体52とその波長変換体52に配置された透光体53とを含む波長変換部材51と、を備える。発光素子10は、基板1上に導電部材61であるバンプを介してフリップチップ実装されている。波長変換部材51の波長変換体52は、接着層80を介して発光素子10の発光面上に配置されている。発光素子10及び波長変換部材52は、その側面が光を反射する被覆部材90によって覆われている。波長変換体52は、発光素子10からの光により励起されて、酸化物蛍光体を含む第1蛍光体71を必須として含む。波長変換体52は、第2蛍光体、第3蛍光体、第4蛍光体、及び第5蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。発光素子10は、基板1上に形成された配線及び導電部材61を介して、発光装置200の外部からの電力の供給を受けて、発光装置200を発光させることができる。発光装置200は、発光素子10を過大な電圧の印加による破壊から防ぐための保護素子等の半導体素子11を含んでいてもよい。被覆部材90は、例えば半導体素子11を覆うように配置される。以下、発光装置に用いる各部材について説明する。なお、詳細は、例えば特開2014-112635号公報の開示を参照することもできる。
【0040】
蛍光体とともに波長変換体を構成する透光性材料は、樹脂、ガラス及び無機物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、及びこれらの変性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を用いることができる。シリコーン樹脂及び変性シリコーン樹脂は、耐熱性及び耐光性に優れている点で、好ましい。波長変換部材には、蛍光体と透光性材料の他に、必要に応じてフィラー、着色剤、光拡散材を含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0041】
透光体は、ガラスや樹脂のような透光性材料からなる板状体を用いることができる。ガラスは、例えばホウ珪酸ガラスや石英ガラスが挙げられる。樹脂は、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂が挙げられる。波長変換部材が基板を備える場合は、基板は、絶縁性材料であって、発光素子からの光や外光を透過し難い材料からなることが好ましい。基板の材料としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等のセラミックス、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフタルアミド(PPA)樹脂等の樹脂を挙げることができる。発光素子と波長変換部材の間には、接着層が介在する場合、接着層を構成する接着剤は、発光素子と波長変換部材を光学的に連結できる材料からなることが好ましい。接着層を構成する材料としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。透光体は、波長変換部材に備えられていなくてもよい。
【0042】
発光装置に必要に応じて設けられる半導体素子は、例えば発光素子を制御するためのトランジスタや、過大な電圧印加による発光素子の破壊や性能劣化を抑制するための保護素子が挙げられる。保護素子としてはツェナーダイオード(Zener Diode)が挙げられる。発光装置が被覆部材を備える場合には、被覆部材の材料としては、絶縁性材料を用いることが好ましい。より具体的には、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフタルアミド(PPA)樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。被覆部材には、必要に応じて着色剤、蛍光体、フィラーを添加してもよい。発光装置は、導電部材として、バンプを用いてもよい。バンプの材料としては、Auあるいはその合金、他の導電部材として、共晶ハンダ(Au―Sn)、Pb―
Sn、鉛フリーハンダ等を用いることができる。
【0043】
第1構成例の発光装置の製造方法の一例を説明する。なお、詳細は、例えば特開2010-062272号公報の開示を参照することもできる。発光装置の製造方法は、成形体の準備工程と、発光素子の配置工程と、波長変換部材形成用組成物の配置工程と、樹脂パッケージ形成工程とを含むことが好ましい。成形体として、複数の凹部を有する集合成形体を用いる場合には、樹脂パッケージ形成工程後に、各単位領域の樹脂パッケージごとに分離する個片化工程を含んでいてもよい。
【0044】
成形体の準備工程において、複数のリードを熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いて一体成形し、側面と底面とを有する凹部を有する成形体を準備する。成形体は、複数の凹部を含む集合基体からなる成形体であってもよい。
発光素子の配置工程において、成形体の凹部の底面に発光素子が配置され、発光素子の正負の電極が第1リード及び第2リードにワイヤにより接続される。
波長変換部材形成用組成物の配置工程において、成形体の凹部に波長変換部材形成用組成物が配置される。
樹脂パッケージ成形工程において、成形体の凹部に配置された波長変換部材形成用組成物を硬化させて、樹脂パッケージが形成され、発光装置が製造される。複数の凹部を含む集合基体からなる成形体を用いた場合は、樹脂パッケージの形成工程後に、個片化工程において、複数の凹部を有する集合基体の各単位領域の樹脂パッケージごとに分離され、個々の発光装置が製造される。以上のようにして、
図1又は
図2に示す発光装置を製造することができる。
【0045】
第2構成例の発光装置の製造方法の一例を説明する。なお、詳細は、例えば特開2014-112635号公報、又は、特開2017-117912号公報の開示を参照することもできる。発光装置の製造方法は、発光素子の配置工程、必要に応じて半導体素子の配置工程、波長変換体を含む波長変換部材の形成工程、発光素子と波長変換部材の接着工程、被覆部材の形成工程を含むことが好ましい。
【0046】
例えば、発光素子の配置工程において、基板上に発光素子を配置する。発光素子と半導体素子とは、例えば、基板上にフリップチップ実装される。次に、波長変換体を含む波長変換部材の形成工程において、波長変換体は、透光体の一面に印刷法、接着法、圧縮成形法又は電着法により、板状、シート状又は層状の波長変換体を形成することによって得てもよい。例えば、印刷法は、蛍光体と、バインダー又は溶剤となる樹脂とを含む波長変換体用組成物を透光体の一面に印刷し、波長変換体を含む波長変換部材を形成することができる。次に、発光素子と波長変換部材の接着工程において、波長変換部材を発光素子の発光面に対向させて、発光素子上に波長変換部材を接着層により接合する。次に、被覆部材の形成工程において、発光素子及び波長変換部材の側面が被覆部材用組成物で覆われる。この被覆部材は、発光素子から出射された光を反射させるためのものであり、発光装置が半導体素子も備える場合は、その半導体素子が被覆部材で埋設されるように形成することが好ましい。以上のようにして、
図3A及び
図3Bに示す発光装置を製造することができる。
【0047】
酸化物蛍光体の製造方法は、Liを含む第1化合物と、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の第2元素M2を含む第2化合物と、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の第3元素M3を含む第3化合物と、Crを含む第4化合物とを含み、必要に応じてNa、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の第1元素M1を含む第5化合物と、必要に応じてNi、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の第4元素M4を含む第6化合物と、を準備することと、酸化物蛍光体の組成1モルにおける前記Li及び必要に応じて含まれる第1原子M1の合計のモル比を2としたときに、前記Liのモル比が0以上1.0以下の範囲内の数値と2の積であり、前記第1元素M1のモル比が0以上1.0以下の範囲内の変数uと2の積であり、前記第2元素M2の合計のモル比が0.8以上3.0以下の範囲内の変数vであり、前記第3元素M3のモル比が1.8以上6以下の範囲内の変数wであり、前記Crのモル比が0.005以上1.0以下の変数yであり、前記第4元素M4のモル比が0以上0.5以下の変数zとなるように前記前記第1化合物と、前記第2化合物と、前記第3化合物と、前記第4化合物と、必要に応じて、前記第5化合物又は前記第6化合物と、を調整して混合した原料混合物を準備することと、前記原料混合物を、酸素を含む雰囲気中で、800℃以上1200℃以下の範囲内の温度で熱処理して、酸化物蛍光体を得ることと、を含み、前記第1化合物、前記第2化合物、前記第3化合物及び前記第4化合物からなる群から選択される少なくとも1種が酸化物を用いる。
【0048】
酸化物蛍光体を製造するための原料は、Liを含む第1化合物と、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の第2元素M2を含む第2化合物と、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の第3元素M3を含む第3化合物と、Crを含む第4化合物とを含み、必要に応じて含まれる第1元素M1を含む第5化合物と、必要に応じて含まれる第4元素M4を含む第6化合物とが含まれてもよい。第1化合物、第2化合物、第3化合物、第4化合物、第5化合物及び第6化合物は、それぞれ酸化物、炭酸塩、塩化物及びこれらの水和物等が挙げられる。第1化合物、第2化合物、第3化合物及び第4化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物は酸化物であり、2種以上が酸化物でもよい。必要に応じて含まれる第1元素M1を含む第5化合物、第4元素M4を含む第6化合物が酸化物でもよい。第1化合物、第2化合物、第3化合物、第4化合物、第5化合物及び第6化合物は粉体であることが好ましい。
【0049】
第1化合物は、具体的には、Li2O、Li2CO3、及びLiCl等が挙げられる。Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の第2元素M2を含む第2化合物は、具体的には、MgO、MgCl2、MgCO3、CaO、CaCl2、CaCO3、SrO、SrCl2、SrCO3、BaO、BaCl2、BaCO3が挙げられる。Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の第3元素M3を含む第3化合物は、具体的には、SiO2、SiCl4、TiO2、TiCl4、GeO2、GeCl4、ZrO2、ZrCl4、SnO2、SnCl2、HfO2、HfCl4等が挙げられる。第4化合物は、具体的には、Cr2O3、Cr2(CO3)3、CrCl3が挙げられる。第1化合物、第2化合物、第3化合物及び第4化合物は、水和物でもよい。
【0050】
Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の第1元素M1を含む第5化合物は、酸化物、塩化物、炭酸塩及びこれらの水和物が挙げられる。第5化合物は、具体的には、Na2O、Na2CO3、NaCl、K2O、K2CO3、KCl、Rb2O、Rb2CO3、RbCl、Cs2O、Cs2CO3、CsCl等が挙げられる。これらの水和物でもよい。
【0051】
Ni、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の第4元素M4を含む第6化合物は酸化物、炭酸塩、塩化物及びこれらの水和物等が挙げられる。第6化合物は酸化物でもよい。第6化合物は、具体的には、NiO、NiCl2、Eu2O3、EuCl3、Fe2O3、Fe3O4、FeCl2、FeCl3、FeCO3、Fe2(CO3)3、MnO、MnO2、Mn2O3、Mn3O4、Nd2(CO3)3、Nd2O3、NdCl3、Tm2O3、TmCl3、Ho2O3、HoCl3、Er2O3、ErCl3、Yb2O3、YbCl3、が挙げられる。これらの化合物は水和物でもよい。
【0052】
原料混合物は、下記式(1)で表される組成となるように、各原料を調整し、混合して準備することが好ましい。
(Li1-uM1
u)2M2
vM3
wOx:Cry,M4
z (1)
(前記式(1)中、M1は、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M3は、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、Ni、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、u、v、w、x、y及びzは、それぞれ0≦u≦1.0、0.8≦v≦3.0、1.8≦w≦6、4≦x≦16、0.005≦y≦1.0、0≦z≦0.5を満たす。)
【0053】
原料混合物は、前記式(1)で表される組成において、第2元素M2がMg又はZnのいずれかの元素でもよく、第3元素M3はSi又はGeでもよい。
【0054】
原料の各化合物に含まれる元素が前述の組成を満たすように、計量した第1化合物、第2化合物、第3化合物及び第4化合物、必要に応じて含まれる、第5化合物及び第6化合物は、湿式又は乾式で混合し、原料混合物を得る。計量された各化合物は、混合機を用いて混合してもよい。混合機は工業的に通常用いられているボールミルの他、振動ミル、ロールミル、ジェットミル等を用いることができる。
【0055】
原料混合物は、フラックスを含んでいてもよい。原料混合物がフラックスを含むことで、原料間の反応がより促進され、さらには固相反応がより均一に進行するために粒径が大きく、発光特性により優れた蛍光体を得ることができる。蛍光体を得るための熱処理の温度が、フラックスとして用いた化合物の液相の生成温度と同程度の温度であると、フラックスによって原料間の反応が促進される。フラックスとしては、希土類元素、アルカリ土類金属元素、及びアルカリ金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むホウ酸塩、又は、希土類元素、アルカリ土類金属元素、及びアルカリ金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むハロゲン化物を用いることができる。フラックスとしては、ハロゲン化物の中でも、フッ化物を用いることができる。フラックスに含まれる元素が、酸化物蛍光体を構成する元素の少なくとも一部と同一の元素である場合には、目的とする組成を有する酸化物蛍光体の原料の一部として、酸化物蛍光体の組成が目的の組成となるようにフラックスを加えることもでき、目的の組成となるように原料を混合した後、さらに添加するようにフラックスを加えることもできる。
【0056】
原料混合物は、黒鉛等の炭素、窒化ホウ素(BN)、アルミナ(Al2O3)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の材質の坩堝やボートに載置して、炉内で熱処理することができる。
【0057】
原料混合物の熱処理は、酸素を含む雰囲気中で行う。雰囲気中の酸素の含有率は特に制限されない。酸素を含む雰囲気中の酸素の含有率は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上である。熱処理は、大気雰囲気(酸素含有率が20体積%以上)で行うことが好ましい。酸素の含有率が1体積%未満の酸素を含まない雰囲気であると、望ましい組成を有する酸化物蛍光体が得られない場合がある。
【0058】
原料混合物を熱処理する温度は、800℃以上1200℃以下の範囲内であり、好ましくは850℃以上1150℃以下の範囲内であり、より好ましくは870℃以上1100℃以下の範囲内であり、より好ましくは900℃以上1050℃以下の範囲内である。熱処理温度が800℃以上1200℃以下であれば、熱による分解が抑制され、目的とする組成を有し、安定した結晶構造を有する蛍光体が得られる。
【0059】
熱処理においては、所定温度で保持時間を設けてもよい。保持時間は、例えば0.5時間以上48時間以内でもよく、1時間以上40時間以内でもよく、2時間以上30時間以内でもよい。保持時間を0.5時間以上48時間以内で設けることによって、結晶成長を促進することができる。
【0060】
熱処理雰囲気の圧力は、標準気圧(0.101MPa)でもよく、0.101MPa以上でもよく、0.11MPa以上200MPa以下の加圧雰囲気で行ってもよい。熱処理によって得られる熱処理物は、熱処理温度が高温になる場合には、結晶構造が分解され易くなるが、加圧雰囲気にした場合には、結晶構造の分解が抑制することができる。
【0061】
熱処理時間は、熱処理温度、熱処理時の雰囲気の圧力によって適宜選択することができ、好ましくは0.5時間以上20時間以内である。二段階以上の熱処理を行なう場合でも、一回の熱処理時間は0.5時間以上20時間以内であることが好ましい。熱処理時間が0.5時間以上20時間以内であると、得られる熱処理物の分解が抑制され、安定した結晶構造を有し、所望の発光強度を有する蛍光体を得ることができる。また、生産コストも低減でき、製造時間を比較的短くすることができる。熱処理時間は、より好ましくは1時間以上10時間以内であり、さらに好ましくは1.5時間以上9時間以内である。
【0062】
熱処理して得られた熱処理物は、粉砕、分散、固液分離、乾燥等の後処理を行ってもよい。固液分離は濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心分離、デカンテーション等の工業的に通常用いられる方法により行うことができる。乾燥は、真空乾燥機、熱風加熱乾燥機、コニカルドライヤー、ロータリーエバポレーター等の工業的に通常用いられる装置により行うことができる。
【0063】
本発明に係る実施形態は、以下の酸化物蛍光体、発光装置及び酸化物蛍光体の製造方法を含む。
【0064】
[項1]
下記式(1)で表される組成を有する、酸化物蛍光体。
(Li1-uM1
u)2M2
vM3
wOx:Cry,M4
z (1)
(前記式(1)中、M1は、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M3は、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、Ni、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、u、v、w、x、y及びzは、それぞれ0≦u≦1.0、0.8≦v≦3.0、1.8≦w≦6、5.4≦x≦16、0.005≦y≦1.0、0≦z≦0.5を満たす。)
[項2]
前記式(1)中、M2はMgを含み、M3はSiを含む項1に記載の酸化物蛍光体。
[項3]
前記式(1)中、0.02≦y≦0.2である項1又は2に記載の酸化物蛍光体。
[項4]
前記式(1)中、M2はZnを含む項1から3のいずれかに記載の酸化物蛍光体。
[項5]
前記式(1)中、0.03≦y≦0.2である項1から4のいずれかに記載の酸化物蛍光体。
[項6]
酸化物蛍光体は、680nm以上1050nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する項1から5のいずれかに記載の酸化物蛍光体。
[項7]
項1から6のいずれかに記載の酸化物蛍光体と、365nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、前記酸化物蛍光体を照射する発光素子と、を備える、発光装置。
[項8]
Liを含む第1化合物と、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の第2元素M2を含む第2化合物と、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の第3元素M3を含む第3化合物と、Crを含む第4化合物とを含み、必要に応じてNa、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の第1元素M1を含む第5化合物と、必要に応じてNi、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の第4元素M4を含む第6化合物と、を準備することと、
酸化物蛍光体の組成1モルにおける前記Li及び必要に応じて含まれる第1原子M1の合計のモル比を2としたときに、前記Liのモル比が0以上1.0以下の範囲内の数値と2の積であり、前記第1元素M1のモル比が0以上1.0以下の範囲内の変数uと2の積であり、前記第2元素M2の合計のモル比が0.8以上3.0以下の範囲内の変数vであり、前記第3元素M3のモル比が1.8以上6以下の範囲内の変数wであり、前記Crのモル比が0.005以上1.0以下の変数yであり、前記第4元素M4のモル比が0以上0.5以下の変数zとなるように前記前記第1化合物と、前記第2化合物と、前記第3化合物と、前記第4化合物と、必要に応じて、前記第5化合物又は前記第6化合物と、を調整して混合した原料混合物を準備することと、
前記原料混合物を、酸素を含む雰囲気中で、800℃以上1200℃以下の範囲内の温度で熱処理して、酸化物蛍光体を得ることと、を含み、前記第1化合物、前記第2化合物、前記第3化合物及び前記第4化合物からなる群から選択される少なくとも1種が酸化物である、酸化物蛍光体の製造方法。
[項9]
前記熱処理する温度が、900℃以上1050℃以下の範囲内である、項8に記載の酸化物蛍光体の製造方法。
[項10]
前記熱処理する雰囲気が大気雰囲気である、項8又は9に記載の酸化物蛍光体の製造方法。
[項11]
下記式(1)で表される組成となるように、前記原料混合物を準備する、項8から10のいずれか1項に記載の酸化物蛍光体の製造方法。
(Li1-uM1
u)2M2
vM3
wOx:Cry,M4
z (1)
(前記式(1)中、M1は、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M2は、Mg,Ca,Sr,Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M3は、Si、Ge、Ti、Zr、Sn及びHfからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、M4は、Ni、Eu、Fe、Mn、Nd、Tm、Ho、Er及びYbからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、u、v、w、x、y及びzは、それぞれ0≦u≦1.0、0.8≦v≦3.0、1.8≦w≦6、4≦x≦16、0.005≦y≦1.0、0≦z≦0.5を満たす。)
【実施例0065】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
酸化物蛍光体
実施例1
原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが4.03g、第3化合物であるSiO2が12.0g、第4化合物であるCr2O3が0.05gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比がLi2Mg2Si4O11:Cr0.013になるように計量した。メノウ乳鉢とメノウ乳棒を用いて、10分間、各原料を混合して、原料混合物を得た。得られた原料混合物をアルミナルツボに配置し、930℃、標準気圧(0.101MPa)の大気雰囲気中で8時間焼成した。熱処理後、得られた熱処理物を粉砕して、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例1の酸化物蛍光体を得た。
【0067】
実施例2
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが4.03g、第3化合物であるSiO2が12.0g、第4化合物であるCr2O3が0.13gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比がLi2Mg2Si4O11:Cr0.033になるように計量した。その他は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例2の酸化物蛍光体を得た。
【0068】
実施例3
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが4.03g、第3化合物であるSiO2が12.0g、第4化合物であるCr2O3が0.20gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比がLi2Mg2Si4O11:Cr0.053になるように計量した。その他は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例3の酸化物蛍光体を得た。
【0069】
実施例4
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが4.03g、第3化合物であるSiO2が12.0g、第4化合物であるCr2O3が0.30gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比がLi2Mg2Si4O11:Cr0.079になるように計量した。その他は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例4の酸化物蛍光体を得た。
【0070】
実施例5
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが4.03g、第3化合物であるSiO2が12.0g、第4化合物であるCr2O3が0.45gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比がLi2Mg2Si4O11:Cr0.12になるように計量した。その他は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例5の酸化物蛍光体を得た。
【0071】
実施例6
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが4.03g、第3化合物であるGeO2が20.9g、第4化合物であるCr2O3が0.20gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比がLi2Mg2Ge4O11:Cr0.053になるように計量した。その他は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例6の酸化物蛍光体を得た。
【0072】
実施例7
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが4.03g、第3化合物であるGeO2が20.9g、第4化合物であるCr2O3が0.20gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比がLi2Mg2Ge4O11:Cr0.079になるように計量した。その他は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例7の酸化物蛍光体を得た。
【0073】
実施例8
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが4.03g、第3化合物であるGeO2が20.9g、第4化合物であるCr2O3が0.45gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比がLi2Mg2Ge4O11:Cr0.12になるように計量した。その他は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例8の酸化物蛍光体を得た。
【0074】
実施例9
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが2.01g、第3化合物であるSiO2が6.0g、第4化合物であるCr2O3が0.20gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比がLi2MgSi2O6:Cr0.053になるように計量した。その他は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例9の酸化物蛍光体を得た。
【0075】
実施例10
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが2.01g、第3化合物であるGeO2が10.5g、第4化合物であるCr2O3が0.20gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比が約Li2MgGe2O6:Cr0.053になるように計量した。熱処理温度を1000℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例10の酸化物蛍光体を得た。
【0076】
実施例11
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが2.02g、第3化合物であるSiO2が15.0g、第4化合物であるCr2O3が0.20gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比がLi2MgSi5O12:Cr0.053になるように計量した。その他は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例11の酸化物蛍光体を得た。
【0077】
実施例12
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるZnOが8.14g、第3化合物であるGeO2が20.9g、第4化合物であるCr2O3が0.10gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比が約Li2Zn2Ge4O11:Cr0.027になるように計量した。熱処理温度を1000℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例12の酸化物蛍光体を得た。
【0078】
実施例13
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるZnOが8.14g、第3化合物であるGeO2が20.9g、第4化合物であるCr2O3が0.20gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比が約Li2Zn2Ge4O11:Cr0.053になるように計量した。その他は、実施例10と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例13の酸化物蛍光体を得た。
【0079】
実施例14
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるZnOが8.14g、第3化合物であるGeO2が20.9g、第4化合物であるCr2O3が0.30gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比が約Li2Zn2Ge4O11:Cr0.079になるように計量した。その他は、実施例10と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例14の酸化物蛍光体を得た。
【0080】
実施例15
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるZnOが8.14g、第3化合物であるGeO2が20.9g、第4化合物であるCr2O3が0.45gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比が約Li2Zn2Ge4O11:Cr0.12になるように計量した。その他は、実施例10と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例15の酸化物蛍光体を得た。
【0081】
実施例16
蛍光体原料の原料として第1化合物であるLi2CO3が3.69g、第2化合物であるMgOが2.01g、第2化合物であるZnOが4.07g、第3化合物であるGeO2が20.9g、第4化合物であるCr2O3が0.20gになるように計量した各原料を用いた。得られる酸化物蛍光体の組成1モルにおける各元素は、仕込み組成における各元素のモル比が約Li2MgZnGe4O11:Cr0.053になるように計量した。熱処理温度を980℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、仕込み組成のモル比となる表1に示す組成を有する実施例16の酸化物蛍光体を得た。
【0082】
発光スペクトル及び発光特性の測定
実施例及び参考例の各酸化物蛍光体について、量子効率測定システム(QE-2000、大塚電子株式会社製)を用いて発光スペクトルを測定した。量子効率測定システムで用いた励起光の発光ピーク波長は450nmであった。得られた各蛍光体の発光スペクトルから、発光特性として、相対発光強度、発光ピーク波長及び半値全幅を求めた。すなわち、各蛍光体の発光スペクトルにおいて、650nm以上1050nm以下の範囲内の発光ピークにおける発光ピーク波長(λp)(nm)と、半値全幅(FWHM)(nm)を求めた。また、各酸化物蛍光体の発光スペクトルは、横軸を光の波長(nm)とし、縦軸を実施例1の酸化物蛍光体の発光ピーク波長(820nm)のピークトップを100%とした相対発光強度比(%)で表した。酸化物蛍光体の発光スペクトルにおいて、実施例1に係る酸化物蛍光体の発光スペクトルの面積を100%とし、各実施例の酸化物蛍光体の650nm以上1050nmの波長範囲における発光スペクトルの面積を、前述の面積100%に対する、発光スペクトルにおける面積比(%)として表した。各酸化物蛍光体の発光スペクトルにおいて、相対発光強度比が0%の直線をベースラインとし、各酸化物蛍光体の発光スペクトルで囲われた領域を各酸化物蛍光体の650nm以上1050nm以下の範囲内の発光スペクトルにおける面積として算出した。酸化物蛍光体の発光スペクトルが650nm以下の波長範囲から相対発光強度比が0%以上であり、1050nm以上の波長範囲でも相対発光強度比が0%ではない場合には、相対発光強度比が0%の直線のベースラインと、650nmにおけるベースラインに垂直な直線と、各酸化物蛍光体の発光スペクトル、1050nmおけるベースラインに垂直な直線で囲われた領域の面積を酸化物蛍光体の発光スペクトルにおける面積として算出した。結果を表1に示す。
図4から
図6に、実施例1から16に係る酸化物蛍光体の発光スペクトルを示した。
【0083】
【0084】
表1又は
図4から
図6に示すように、実施例1から16に係る酸化物蛍光体は、発光スペクトルにおいて、680nm以上1050nm以下の範囲内、具体的には702nm以上876nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有した。実施例1から16に係る酸化物蛍光体は、赤色光から近赤外光の波長範囲に発光ピーク波長を有し、80nm以上であり、220nm以下の半値全幅が広い発光スペクトルを有していた。仕込み組成において、第2元素M
2にMgを含み、第3元素M
3にSiを含む組成を有する酸化物蛍光体は、より面積比の大きい発光スペクトルが得られた。面積比の大きい発光スペクトルを有する蛍光体は、発光強度が高くなる。また、仕込み組成において、第2元素M
2にZnを含み、賦活元素であるCrのモル比を表す変数yが0.03以上0.2以下(0.03≦y≦0.2)である組成を有する酸化物蛍光体は、より面積比の大きい発光スペクトルが得られた。
本開示に係る酸化物蛍光体は、生体内の情報を得るための医療用の発光装置、スマートフォンやスマートウォッチ等の小型モバイル機器に搭載して体調管理するための発光装置、医療装置に用いられる発光装置、青果物や米等の食品の内部情報を非破壊で測定する分析装置用の発光装置、植物の光受容体に影響を与える植物栽培用の発光装置、膜厚等の測定に使用される反射分光式測定装置の発光装置にも用いることができる。また、本開示に係る酸化物蛍光体は、発光を熱源として用いて、信号機や車載用照明装置の着雪対策に使用できる。
10:発光素子、11:半導体素子、20:第1リード、30:第2リード、40:成形体、42:樹脂部、50、51:波長変換部材、52:波長変換体、53:透光体、60:ワイヤ、61:導電部材、70:蛍光体、71:第1蛍光体、72:第2蛍光体、73:第3蛍光体、74:第4蛍光体、75:第5蛍光体、80:接着層、90:被覆部材、100、200:発光装置。