(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008203
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】液晶素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109881
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金城 拓海
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩之
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AB11
2H149AB26
2H149BA05
2H149DA02
2H149DB03
2H149EA05
2H149EA17
2H149EA22
2H149FA01Z
2H149FA27W
2H149FA27Y
2H149FA40W
2H149FA40Y
2H149FA42Z
2H149FA56W
2H149FA56Y
2H149FA58W
2H149FA58Y
2H149FA63
2H149FA66
2H149FA67
2H149FA68
2H149FD33
(57)【要約】
【課題】コレステリック液晶層の転写回数を削減することが可能な液晶素子の製造方法を提供する。
【解決手段】支持体の上に第1配向層を形成し、前記第1配向層の上に第1コレステリック液晶層を形成し、第1接着層を介して仮基板を前記第1コレステリック液晶層に接着し、前記仮基板に接着された前記第1コレステリック液晶層を前記第1配向層から剥離し、基板の上に第2配向層を形成し、前記第2配向層の上に第2コレステリック液晶層を形成し、前記第1コレステリック液晶層を前記第2コレステリック液晶層に貼合し、前記仮基板と前記第1接着層を除去する、液晶素子の製造方法。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の上に第1配向層を形成し、
前記第1配向層の上に第1コレステリック液晶層を形成し、
第1接着層を介して仮基板を前記第1コレステリック液晶層に接着し、
前記仮基板に接着された前記第1コレステリック液晶層を前記第1配向層から剥離し、
基板の上に第2配向層を形成し、
前記第2配向層の上に第2コレステリック液晶層を形成し、
前記第1コレステリック液晶層を前記第2コレステリック液晶層に貼合し、
前記仮基板と前記第1接着層を除去する、液晶素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1コレステリック液晶層を前記第2コレステリック液晶層に貼合する工程は、第2接着層を介して前記第1コレステリック液晶層と前記第2コレステリック液晶層を接着する工程である、請求項1に記載の液晶素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1配向層と前記第1コレステリック液晶層との間の接着力は、前記第1接着層と前記第1コレステリック液晶層との間の接着力より小さく、
前記第2接着層と前記第1コレステリック液晶層との間の接着力は、前記第1接着層と前記第1コレステリック液晶層との間の接着力より大きい、請求項2に記載の液晶素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1コレステリック液晶層を前記第2コレステリック液晶層に貼合する工程は、前記第1コレステリック液晶層と前記第2コレステリック液晶層を密着させる工程である、請求項1に記載の液晶素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1コレステリック液晶層及び前記第2コレステリック液晶層の各々に含まれるコレステリック液晶は、互いに逆回りに旋回する、請求項1に記載の液晶素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1コレステリック液晶層及び前記第2コレステリック液晶層の各々に含まれるコレステリック液晶は、異なる螺旋ピッチを有している、請求項1に記載の液晶素子の製造方法。
【請求項7】
前記仮基板と前記第1接着層を除去する工程は、加熱や光照射などによって前記第1接着層の接着力を低減させ、前記第1コレステリック液晶層と前記第1接着層との間の界面を剥離する工程である、請求項1に記載の液晶素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、コレステリック液晶を用いた各種液晶素子が検討されている。コレステリック液晶は、螺旋ピッチに応じて特定波長の光を反射する性質を有している。一例では、一対の基板の間にコレステリック液晶エラストマーを備えた複合構造体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、コレステリック液晶層の転写回数を削減することが可能な液晶素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る液晶素子の製造方法は、
支持体の上に第1配向層を形成し、前記第1配向層の上に第1コレステリック液晶層を形成し、第1接着層を介して仮基板を前記第1コレステリック液晶層に接着し、前記仮基板に接着された前記第1コレステリック液晶層を前記第1配向層から剥離し、基板の上に第2配向層を形成し、前記第2配向層の上に第2コレステリック液晶層を形成し、前記第1コレステリック液晶層を前記第2コレステリック液晶層に貼合し、前記仮基板と前記第1接着層を除去する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る液晶素子を示す断面図である。
【
図2】
図2は、コレステリック液晶層に含まれるコレステリック液晶の一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、コレステリック液晶層に含まれるコレステリック液晶の他の例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した液晶分子の配向パターンの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、支持体からコレステリック液晶層を剥離する工程を示す図である。
【
図6】
図6は、コレステリック液晶層をコレステリック液晶層に貼合する工程を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る液晶素子の他の例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る液晶素子を示す断面図である。
【
図9】
図9は、コレステリック液晶層をコレステリック液晶層に貼合する工程を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る液晶素子の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。X軸に沿った方向をX方向または第1方向と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向と称し、Z軸に沿った方向をZ方向または第3方向と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称する。X-Y平面を見ることを平面視という。第1方向X及び第2方向Yは、例えば液晶素子100に含まれる基板の主面に平行な方向に相当し、また、第3方向Zは、液晶素子100の厚さ方向に相当する。
【0009】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る液晶素子100を示す断面図である。
図1(a)に示すように、液晶素子100は、基板10と、配向層AL1と、コレステリック液晶層(第2コレステリック液晶層)CLC1と、接着層AD1と、コレステリック液晶層(第1コレステリック液晶層)CLC2と、を備えている。
【0010】
基板10は、例えば、ガラス基板や樹脂基板である。また、基板10は、例えば、透明である。基板10は、主面(内面)10Aと、主面10Aの反対側の主面(外面)10Bと、を有している。主面10A及び主面10Bは、X-Y平面に平行な面である。
配向層AL1は、基板10の上に位置し、主面10Aに接している。
【0011】
コレステリック液晶層CLC1は、配向層AL1の上に位置している。コレステリック液晶層CLC1は、例えば、重合性液晶モノマー、重合性キラル液晶モノマー、及び、光開始剤に、架橋剤を添加した混合物を用いて形成される。コレステリック液晶層CLC1は、主面(内面)S11と、主面S11の反対側の主面(外面)S12と、を有している。主面S12は、配向層AL1に接している。主面S11及び主面S12は、X-Y平面にほぼ平行な面である。
【0012】
コレステリック液晶層CLC1は、拡大して模式的に示すように、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶311を有している。コレステリック液晶311は、第3方向Zにほぼ平行な螺旋軸AX1を有し、また、第3方向Zに沿った螺旋ピッチP11を有している。螺旋ピッチP11は、螺旋の1周期(液晶分子が360度回転するのに要する螺旋軸AX1に沿った層厚)を示す。
【0013】
コレステリック液晶層CLC1は、反射面321を有している。反射面321では、コレステリック液晶層CLC1への入射光のうち、螺旋ピッチ及び屈折率異方性に応じて決定する選択反射波長帯の円偏光が反射される。例えば、第1旋回方向が右回りの場合、右回りの円偏光が反射面321で反射され、第1旋回方向が左回りの場合、左回りの円偏光が反射面321で反射される。なお、本明細書において、コレステリック液晶層CLC1における「反射」とは、コレステリック液晶層CLC1の内部における回折を伴うものである。また、本明細書において、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
【0014】
接着層AD1は、コレステリック液晶層CLC1の上に配置され、主面S11に接している。また、接着層AD1は、例えば、透明である。接着層AD1は、第3方向Zにおいて、コレステリック液晶層CLC1とコレステリック液晶層CLC2との間に位置している。接着層AD1を形成するための材料としては、例えば、アクリル系樹脂、エンチオール系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などの接着剤、光学粘着シートなどが適用可能である。
【0015】
コレステリック液晶層CLC2は、接着層AD1に接着されている。コレステリック液晶層CLC2は、コレステリック液晶層CLC1の上に位置している。コレステリック液晶層CLC2は、コレステリック液晶層CLC1と同様の材料によって形成されている。コレステリック液晶層CLC2は、主面(内面)S21と、主面S21の反対側の主面(外面)S22と、を有している。主面S22は、接着層AD1に接している。主面S21及び主面S22は、X-Y平面にほぼ平行な面である。
【0016】
コレステリック液晶層CLC2は、拡大して模式的に示すように、第1旋回方向とは逆回りの第2旋回方向に旋回したコレステリック液晶312を有している。コレステリック液晶312は、第3方向Zにほぼ平行な螺旋軸AX2を有し、また、第3方向Zに沿った螺旋ピッチP12を有している。螺旋軸AX2は、螺旋軸AX1に平行である。螺旋ピッチP12は、螺旋ピッチP11と同等である。
コレステリック液晶層CLC2は、反射面322を有している。
【0017】
このような例の液晶素子100では、コレステリック液晶層CLC1の反射面321は、選択反射波長帯のうち、コレステリック液晶311の第1旋回方向に対応した第1円偏光を反射する。また、コレステリック液晶層CLC2の反射面322は、選択反射波長帯のうち、コレステリック液晶312の第2旋回方向に対応した第2円偏光を反射する。
【0018】
図1(a)に示すように、螺旋ピッチP11及び螺旋ピッチP12が互いに同等である場合、コレステリック液晶311の選択反射波長帯は、コレステリック液晶312の選択反射波長帯と同等である。このため、選択反射波長帯の第1円偏光及び第2円偏光を反射することができ、選択反射波長帯の反射率を向上することができる。
【0019】
図1(b)に示す構成は、
図1(a)に示した構成と比較して、コレステリック液晶層CLC2に含まれるコレステリック液晶313が異なっている。
コレステリック液晶層CLC2は、拡大して模式的に示すように、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶313を有している。すなわち、コレステリック液晶313は、コレステリック液晶311と同一方向に旋回している。コレステリック液晶313は、第3方向Zにほぼ平行な螺旋軸AX3を有し、また、第3方向Zに沿った螺旋ピッチP13を有している。螺旋軸AX3は、螺旋軸AX1に平行である。螺旋ピッチP13は、螺旋ピッチP11とは異なっている。
コレステリック液晶層CLC2は、反射面323を有している。
【0020】
図1(b)に示すように、螺旋ピッチP11及び螺旋ピッチP13が互いに異なる場合、コレステリック液晶311の選択反射波長帯は、コレステリック液晶313の選択反射波長帯とは異なる。このため、液晶素子100の選択反射波長帯を広帯域化することができる。
【0021】
なお、主面10Bは、基板10の屈折率より小さい屈折率を有する低屈折率媒体に接している。同様に、主面S21は、コレステリック液晶層CLC2の屈折率より小さい屈折率を有する低屈折率媒体に接している。低屈折率媒体は、例えば空気である。これらの主面10B及び主面S21は、液晶素子100の入光面を形成し得る。
【0022】
図2は、コレステリック液晶層CLC1に含まれるコレステリック液晶311の一例を説明するための図である。なお、コレステリック液晶層CLC2に含まれるコレステリック液晶312については、コレステリック液晶311と同様であるため、その説明を省略する。
【0023】
図2では、コレステリック液晶層CLC1を第3方向Zに拡大して図示している。また、簡略化のため、コレステリック液晶311を構成する液晶分子LM1として、X-Y平面に平行な同一平面に位置する複数の液晶分子のうちの1つの液晶分子LM1を図示している。図示した液晶分子LM1の配向方向は、同一平面に位置する複数の液晶分子の平均的な配向方向に相当する。
【0024】
1つのコレステリック液晶311に着目すると、コレステリック液晶311は、旋回しながらZ方向に沿って螺旋状に積み重ねられた複数の液晶分子LM1によって構成されている。複数の液晶分子LM1は、コレステリック液晶311の一端側の液晶分子LM11と、コレステリック液晶311の他端側の液晶分子LM12と、を有している。液晶分子LM11は、主面S12あるいは配向層AL1に近接している。液晶分子LM12は、主面S11に近接している。
【0025】
図示した例のコレステリック液晶層CLC1において、第1方向Xに沿って隣接する複数のコレステリック液晶311は、配向方向が一方向に揃っている。つまり、第1方向Xに沿って隣接する複数の液晶分子LM11の配向方向は、互いにほぼ一致している。また、第1方向Xに沿って隣接する複数の液晶分子LM12の配向方向も、互いにほぼ一致している。
【0026】
コレステリック液晶層CLC1の反射面321は、X-Y平面に沿って延びた平面状に形成される。ここでの反射面321は、液晶分子LM1の配向方向が揃った面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。
【0027】
このようなコレステリック液晶層CLC1は、液晶分子LM1の配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LM1の配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、液晶素子100は、コレステリック液晶層CLC1に電界を形成するための電極を備えていない。
【0028】
一般的に、垂直入射した光に対するコレステリック液晶311の選択反射波長帯Δλは、コレステリック液晶311の螺旋ピッチP、屈折率異方性Δn(異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)に基づいて、「Δn*P」で示される。選択反射波長帯Δλの具体的な波長範囲は、(no*P~ne*P)の範囲である。
【0029】
図3は、コレステリック液晶層CLC1に含まれるコレステリック液晶311の他の例を説明するための図である。
図3に示す例は、
図2に示した例と比較して、第1方向Xに沿って隣接する複数のコレステリック液晶311の配向方向が互いに異なっている点で相違している。そして、複数の液晶分子LM11の配向方向は、第1方向Xに沿って連続的に変化している。また、複数の液晶分子LM12の配向方向も、第1方向Xに沿って連続的に変化している。これらの配向方向については、後述する。
コレステリック液晶層CLC1の反射面321は、X-Y平面に対して傾斜している。反射面321とX-Y平面とのなす角度θは、鋭角である。
【0030】
図4は、
図3に示した液晶分子LM11の配向パターンの一例を示す図である。
コレステリック液晶層CLC1において、第1方向Xに並んだ液晶分子LM11の各々の配向方向は、互いに異なる。例えば、A-A’線に沿って並んだ5つの液晶分子LM11に着目すると、液晶分子LM11の各々の配向方向は、第1方向Xに沿って(図の左から右に向かって)、時計回りに一定角度ずつ変化している。ここでは、互いに隣接する液晶分子LM11の配向方向の変化量は、第1方向Xに沿って一定であるが、徐々に増大したり、徐々に減少したりしてもよい。
【0031】
ここで、第1方向Xに沿って液晶分子LM11の配向方向が180度だけ変化するときの2つの液晶分子LM11の間隔を配向ピッチα1と定義する。
【0032】
一方、コレステリック液晶層CLC1において、第2方向Yに並んだ液晶分子LM11の各々の配向方向は略一致する。つまり、コレステリック液晶層CLC1のX-Y平面における空間位相は、第1方向Xに沿って連続的に変化し、第2方向Yにおいて略一定である。
【0033】
次に、第1実施形態に係る液晶素子100の製造方法について、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
【0034】
図5は、支持体20からコレステリック液晶層CLC2を剥離する工程を示す図である。
図5(a)に示すように、まず、洗浄した支持体20を用意する。支持体20は、例えば、ガラスによって形成されているが、樹脂など他の材料によって形成されていてもよい。
【0035】
続いて、支持体20の上に配向層(第1配向層)AL2を形成し、配向層AL2に配向処理を行う。配向処理としては、ラビング処理や光配向処理などが適用可能である。
光配向処理の一つの方法としては、直線偏光の紫外線を配向層AL2に照射する方法がある。この方法を適用することにより、
図2を参照して説明したように、配向層AL2に近接する液晶分子の配向方向が一方向に揃うような配向パターンを形成することができる。
【0036】
また、光配向処理の他の方法としては、右円偏光の紫外線と左円偏光の紫外線との干渉パターンを薄膜に照射する方法がある。この方法を適用することにより、
図3を参照して説明したように、配向層AL2に近接する液晶分子の配向方向が連続的に変化するような複雑な配向パターンを形成することができる。
【0037】
続いて、配向層AL2の上にコレステリック液晶層CLC2を形成する。
具体的には、コレステリック液晶層CLC2を形成するための液晶混合物を用意する。液晶混合物は、溶媒に、液晶モノマー、キラルモノマー、及び、光開始剤を混合したものである。溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ヘプタン、トルエン、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などの有機溶媒が適用可能である。
【0038】
そして、配向層AL2の上に液晶混合物を塗布する。塗布した液晶混合物の上に、他の部材を重ねる必要はない。配向層AL2に近接する液晶分子は、配向層AL2の配向規制力によって所定の方向に配向する。その後、液晶混合物がコレステリック液晶相を呈した状態で、溶媒を除去して液晶混合物を仮硬化し、紫外線を照射する。これにより、コレステリック液晶層CLC2が形成される。
【0039】
続いて、接着層21が接着された仮基板FLを用意する。接着層21は、仮基板FLの一方の主面S31に接着されている。主面S31がコレステリック液晶層CLC2と対向するように、すなわち、接着層21がコレステリック液晶層CLC2と対向するように、仮基板FLを配置する。
【0040】
次に、
図5(b)に示すように、接着層(第1接着層)21を介して仮基板FLをコレステリック液晶層CLC2に接着する。つまり、接着層21をコレステリック液晶層CLC2に接着させる。
図5(b)に示す状態では、支持体20、配向層AL2、コレステリック液晶層CLC2、接着層21、及び、仮基板FLがこの順に積層されている。
【0041】
続いて、
図5(c)に示すように、仮基板FLに接着されたコレステリック液晶層CLC2を配向層AL2から剥離する。ここで、配向層AL2とコレステリック液晶層CLC2との間の接着力は、接着層21とコレステリック液晶層CLC2との間の接着力より小さい。このため、光や熱などのエネルギーを印加することなく、コレステリック液晶層CLC2を配向層AL2から容易に剥離することができる。
【0042】
図6は、コレステリック液晶層CLC2をコレステリック液晶層CLC1に貼合する工程を示す図である。
図6(a)に示すように、まず、洗浄した基板10を用意する。上述したように、基板10は、例えば、ガラス基板や樹脂基板である。
【0043】
続いて、基板10の上に配向層(第2配向層)AL1を形成し、配向層AL1に配向処理を行う。配向層AL1の形成方法は、上述した配向層AL2の形成方法と同様である。
【0044】
続いて、配向層AL1の上にコレステリック液晶層CLC1を形成する。コレステリック液晶CLC1の形成方法は、上述したコレステリック液晶層CLC2の形成方法と同様である。
【0045】
続いて、コレステリック液晶層CLC1の上に接着層(第2接着層)AD1を形成する。接着層AD1に用いられる材料は、例えば、接着層21に用いられる材料とは異なっている。
【0046】
続いて、
図5に示した工程によりコレステリック液晶層CLC2が接着された仮基板FLを用意する。コレステリック液晶層CLC2が接着層AD1と対向するように、仮基板FLを配置する。
【0047】
次に、
図6(b)に示すように、コレステリック液晶層CLC2をコレステリック液晶層CLC1に貼合する。
第1実施形態においては、コレステリック液晶層CLC2をコレステリック液晶層CLC1に貼合する工程は、接着層AD1を介してコレステリック液晶層CLC2とコレステリック液晶層CLC1とを接着する工程に相当する。つまり、コレステリック液晶層CLC2を接着層AD1に接着する。
図6(b)に示す状態では、基板10、配向層AL1、コレステリック液晶層CLC1、接着層AD1、コレステリック液晶層CLC2、接着層21、及び、仮基板FLがこの順に積層されている。
【0048】
続いて、
図6(c)に示すように、仮基板FLと接着層21を除去する。すなわち、加熱や光照射などによって接着層21の接着力を低減させ、コレステリック液晶層CLC2と接着層21との間の界面を剥離する。接着層21は、例えば、熱や紫外線、その他の外部刺激により、化学構造の変化やガス等を生じ接着力が低下するテープ、又は、接着剤である。そのため、加熱や光照射などによって、接着層21とコレステリック液晶層CLC2との間の接着力を、接着層AD1とコレステリック液晶層CLC2との間の接着力より小さくすることができる。
【0049】
以上のような工程を経て、
図1を参照して説明した液晶素子100が製造される。
【0050】
本実施形態によれば、1層のコレステリック液晶層CLC1が形成されている基板10の上にコレステリック液晶層CLC2を転写することによって液晶素子100を形成する。つまり、2層以上のコレステリック液晶層を備える液晶素子100において、最も基板10側に位置するコレステリック液晶層は転写によって積層されず、基板10の上に予め形成される。そのため、コレステリック液晶層の層数に対して転写回数を削減することができる。したがって、転写プロセスによるコレステリック液晶層の異物の噛みこみ、皺、クラックなどの不良が発生するリスクを低減し、歩留まりを向上することができる。
【0051】
また、コレステリック液晶層は、例えば、100μm以下の薄膜であり、転写プロセスにおいて容易にクラック等が発生することが想定されるが、本実施形態においては、コレステリック液晶層はいずれの工程においても支持体20、仮基板FL、及び、基板10に保持されているため、クラックや屈曲の発生を抑制することができる。
【0052】
図7は、第1実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図7に示す液晶素子100は、
図1に示した液晶素子100と比較して、3層のコレステリック液晶層を備えている点で相違している。
液晶素子100は、さらに、接着層AD2と、接着層AD2によってコレステリック液晶層CLC2に接着されたコレステリック液晶層CLC3と、を備えている。
【0053】
接着層AD2は、コレステリック液晶層CLC2の上に配置され、主面S21に接している。また、接着層AD2は、例えば、透明である。接着層AD2は、第3方向Zにおいて、コレステリック液晶層CLC2とコレステリック液晶層CLC3との間に位置している。接着層AD2は、例えば、接着層AD1と同一材料によって形成されている。
【0054】
コレステリック液晶層CLC3は、接着層AD2に接着されている。コレステリック液晶層CLC3は、コレステリック液晶層CLC2の上に位置している。コレステリック液晶層CLC3は、コレステリック液晶層CLC1と同様の材料によって形成されている。コレステリック液晶層CLC3は、主面(内面)S41と、主面S41の反対側の主面(外面)S42と、を有している。主面S42は、接着層AD2に接している。主面S41及び主面S42は、X-Y平面にほぼ平行な面である。
【0055】
なお、主面S41は、コレステリック液晶層CLC3の屈折率より小さい屈折率を有する低屈折率媒体に接している。低屈折率媒体は、上述したように例えば空気である。主面S41は、液晶素子100の入光面を形成し得る。
【0056】
コレステリック液晶層CLC3に含まれるコレステリック液晶は、第1旋回方向もしくは第2旋回方向のどちらに旋回していてもよい。また、その螺旋ピッチは、螺旋ピッチP11及びP12と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
コレステリック液晶層CLC3は、反射面323を有している。
【0057】
このように、液晶素子100は、3層以上のコレステリック液晶層を備えていてもよい。コレステリック液晶層CLC3は、コレステリック液晶層CLC2と同様の転写プロセスによって、基板10に積層されている。コレステリック液晶層CLC2より上層に位置するコレステリック液晶層は転写プロセスによって形成される。
このような変形例においても上記したのと同様の効果を得ることができる。
【0058】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係る液晶素子100を示す断面図である。
図8に示す液晶素子100は、
図1に示した液晶素子100と比較して、コレステリック液晶層CLC1とコレステリック液晶層CLC2との間に接着層AD1が形成されていない点で相違している。
【0059】
コレステリック液晶層CLC1とコレステリック液晶層CLC2は、互いに密着している。すなわち、主面S11と主面S22とは互いに接している。このような構成では、コレステリック液晶層CLC1とコレステリック液晶層CLC2との間に接着層AD1が形成されている場合と比較して、液晶素子100を薄型化することができる。また、接着層AD1に用いられる材料のコストを削減することができる。また、接着層AD1での光の散乱などが生じないため良好な光学特性を得ることができる。
【0060】
なお、コレステリック液晶層CLC1及びCLC2の各々に含まれるコレステリック液晶は、
図1(a)及び(b)に示した例と同様である。
【0061】
図9は、コレステリック液晶層CLC2をコレステリック液晶層CLC1に貼合する工程を示す図である。なお、
図9に示す工程は、
図5に示した工程の次の工程を示している。
図5に示した工程、すなわち、支持体20からコレステリック液晶層CLC2を剥離する工程については、説明を省略する。
【0062】
図9(a)に示すように、まず、基板10の上に配向層AL1を形成し、配向層AL1の上にコレステリック液晶層CLC1を形成する。配向層AL1及びコレステリック液晶層CLC1の形成方法については、
図6に示した形成方法と同様である。
【0063】
続いて、
図5に示した工程によりコレステリック液晶層CLC2が接着された仮基板FLを用意する。コレステリック液晶層CLC2がコレステリック液晶層CLC1と対向するように、仮基板FLを配置する。
【0064】
次に、
図9(b)に示すように、コレステリック液晶層CLC2をコレステリック液晶層CLC1に貼合する。
第2実施形態においては、コレステリック液晶層CLC2をコレステリック液晶層CLC1に貼合する工程は、コレステリック液晶層CLC2とコレステリック液晶層CLC1を密着させる工程に相当する。
コレステリック液晶層CLC1に用いられる液晶モノマーとコレステリック液晶層CLC2に用いられる液晶モノマーは、例えば同一である。この場合、螺旋ピッチや円偏光性、配向構造が異なっていたとしても、基本骨格の類似した液晶同士を用いることで高い密着性を得ることができ、接着層AD1を省略することができる。また、加熱や紫外線照射などにより、未重合の液晶モノマーをコレステリック液晶層間の界面を跨いで重合させることで、より強力な密着力を付与することができる。
図9(b)に示す状態では、基板10、配向層AL1、コレステリック液晶層CLC1、コレステリック液晶層CLC2、接着層21、及び、仮基板FLがこの順に積層されている。
【0065】
続いて、
図9(c)に示すように、仮基板FLと接着層21を除去する。加熱や光照射などによって、接着層21とコレステリック液晶層CLC2との間の接着力を、コレステリック液晶層CLC1とコレステリック液晶層CLC2との間の密着力より小さくすることができる。
【0066】
以上のような工程を経て、
図8を参照して説明した液晶素子100が製造される。
【0067】
図10は、第2実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図10に示す液晶素子100は、
図8に示した液晶素子100と比較して、3層のコレステリック液晶層を備えている点で相違している。
液晶素子100は、さらに、コレステリック液晶層CLC2に密着したコレステリック液晶層CLC3を備えている。
【0068】
コレステリック液晶層CLC3は、コレステリック液晶層CLC2の上に位置している。コレステリック液晶層CLC3は、コレステリック液晶層CLC1と同様の材料によって形成されている。主面S42は、主面S21に接している。
【0069】
コレステリック液晶層CLC3に含まれるコレステリック液晶は、第1旋回方向もしくは第2旋回方向のどちらに旋回していてもよい。また、その螺旋ピッチは、螺旋ピッチP11及びP12と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0070】
このように、第2実施形態においても、液晶素子100は、3層以上のコレステリック液晶層を備えていてもよい。コレステリック液晶層CLC3は、コレステリック液晶層CLC2と同様の転写プロセスによって、基板10に積層されている。コレステリック液晶層CLC2より上層に位置するコレステリック液晶層は転写プロセスによって形成される。
このような変形例においても上記したのと同様の効果を得ることができる。
【0071】
なお、液晶素子100は、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた構成を有していてもよい。つまり、コレステリック液晶層同士の接着に接着層を用いる場合と接着層を用いずに密着させる場合とが混在していてもよい。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、コレステリック液晶層の転写回数を削減することが可能な液晶素子の製造方法を得ることができる。
【0073】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
100…液晶素子、10…基板、20…支持体、
AL1、AL2…配向層、CLC1、CLC2、CLC3…コレステリック液晶層、
21、AD1、AD2…接着層、FL…仮基板。